説明

集束イオンビームによる加工方法及び集束イオンビーム加工装置

【課題】 その大きさが集束イオンビームの照射幅より小さなものである場合にあっても、その加工を行いたい個所を好ましく加工することができる。
【解決手段】 集束イオンビームを被加工体90に照射して該被加工体90にデポジション加工またはエッチング加工を行う集束イオンビームIによる加工方法であって、前記被加工体90のエッジEに前記集束イオンビームIを照射して、かつ、前記集束イオンビームのドーズ量を制御することにより、ドーズ量を増加させるに従って、エッジから徐々に加工される領域が広がって、該被加工体90をデポジション加工またはエッチング加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集束イオンビームによる加工方法及び集束イオンビーム加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、集束イオンビーム(Focused Ion Beam)加工装置を用いて、半導体デバイスのフォトマスク等をリペアする加工方法が提供されている(例えば、特許文献1参照)。この開示される加工方法は、イオン源から発せられたイオンビームを、イオン光学系(コンデンサレンズ、ブランキング電極、アライナ電極、アパーチャー、対物レンズ等を備える)を介して集束イオンビームとし、加工したい半導体デバイスのフォトマスクに照射する(特許文献1の図4参照)。そして、この集束イオンビームの照射と共にガスを吹付け、この半導体デバイスのフォトマスクを、デポジション加工またはエッチング加工する。従来においては、集束イオンビーム装置を用いて所定パターンのデポジション加工またはエッチング加工を施すときに、該所定パターン加工領域を微小領域(ピクセル)に区分し、区分された各ピクセルに集束イオンビームを照射して加工を実行していた。そしてこの時に走査回数を調整するなどして該微小なピクセル毎に照射する集束イオンビームのドーズ量が等しくなるように集束イオンビームの照射を行っていた。
【特許文献1】特開2002−184342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この従来から提供されている集束イオンビームによる加工方法にあっては、例えば、次のような問題が残されていた。たとえば、図6(a)に示すように、フォトマスクパターン100から裾に向かって拡がるような形状の凸状部101を、上記のように微小なピクセルに区分して、区分された各ピクセルに集束イオンビームを走査してエッチング加工する方法では、図6(b)に示すように、加工エリアFからはずれ、微小な裾の一部102が残されてしまうことがあった。この裾の一部102を除去してパターン100のエッジ線103と面一となるようエッチング加工するには、この残された裾の一部102に、スポット的に照射可能な集束イオンビームを照射することが求められる。つまり、この残された裾の一部102に合わされた照射幅の集束イオンビームを用いることが必要とされる。しかし、この照射幅に対応する微小なビーム径を有する集束イオンビームを得るには技術的限界があり、またこの裾の一部102のみをエッチングするために1ピクセル以下の照射幅にすることもできないという問題があった。
【0004】
本発明は、このような事情を鑑みなされたものであって、その目的は、加工を行いたい個所が、半導体デバイスのフォトマスクにおける正常パターンから伸びる黒欠陥部分のようなものであって、その大きさが集束イオンビームの照射幅より小さなものである場合にあっても、その加工を行いたい個所を好ましく加工することができる集束イオンビームによる加工方法及び集束イオンビーム加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するための手段として以下の集束イオンビームによる加工方法及び集束イオンビーム加工装置を提供する。
本発明の集束イオンビームによる加工方法は、集束イオンビームを被加工体に照射して該被加工体にデポジション加工またはエッチング加工を行う集束イオンビームによる加工方法であって、前記被加工体のエッジに前記集束イオンビームを照射して、かつ、前記集束イオンビームのドーズ量を制御することにより該被加工体をデポジション加工またはエッチング加工することを特徴とする。
【0006】
本発明の集束イオンビームによる加工方法にあっては、被加工体の端部のうち角部とされるエッジに、集束イオンビームを照射する。このエッジ照射とは、被加工体の所望の加工個所の端部とされるエッジに集束イオンビームを照射する照射を意味するものである。このとき、エッジに集束イオンビームを照射することで、ドーズ量を増加させるに従って、エッジから徐々に加工される領域が広がっていく。つまり、照射する集束イオンビームのドーズ量を制御することにより、その加工量を微細に制御できる。
【0007】
従って、集束イオンビームの照射幅が大きい場合であっても、この集束イオンビームを被加工体のエッジに照射すれば、被加工体の照射幅よりも小さな領域を制御性よくデポジション加工またはエッチング加工することができる。
【0008】
本発明の集束イオンビームによる加工方法は、前記被加工体の加工範囲の縁部の内側に入った実加工範囲に前記集束イオンビームを面照射して該被加工体をデポジション加工またはエッチング加工を行う第1加工工程と、前記第1加工工程後に前記被加工体に残された縁部若しくは縁部近傍のエッジに前記集束イオンビームの一部をエッジ照射して該被加工体をデポジション加工またはエッチング加工を行う第2加工工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の集束イオンビームによる加工方法にあっては、まず、第1加工工程において、被加工体の加工範囲の縁部の内側に入った実加工範囲のビットマップが作成され、このビットマップに合わせ且つ上面とされた個所に集束イオンビームの全てを照射する。この面照射とは、被加工体の所望の加工個所の上面に集束イオンビームを照射する照射を意味するものであって、このイオンビーム方向に沿ってデポジション加工またはエッチング加工を行うものである。このように集束イオンビームを照射した場合には、通常のように実加工範囲に沿って、デポジション加工またはエッチング加工がされる。なお、この実加工範囲は、被加工体の加工範囲の縁部の内側に入った範囲とされているので、この縁部若しくは縁部近傍にあっては、これらのデポジション加工またはエッチング加工がされてないままのものとなる。そして、以下記載の第2加工工程に移る。
【0010】
この第2加工工程においては、被加工体に残された縁部若しくは縁部近傍のエッジに、集束イオンビームをエッジ照射して、被加工体をデポジション加工またはエッチング加工を行う。この縁部とは、被加工体の所望加工個所のうち最終的に加工が終了する個所を意味する。つまり、縁部が、この第2加工工程において、前記エッジ照射してデポジション加工またはエッチング加工した時の終点となっている。そして、この縁部の内側とは、第2加工工程において加工する方向とは逆方向側であることを意味する。
【0011】
ここで、この残された縁部若しくは縁部近傍にあっては、集束イオンビームをエッジ照射してデポジション加工またはエッチング加工されるので、上述したように、これらの加工面が加工調節され易いものとなる。また、この残された縁部若しくは縁部近傍は、集束イオンビームの照射幅より小さいものであるが、この集束イオンビームを被加工体のエッジに照射すれば、この集束イオンビームの照射幅を小さくすることなく、この残された縁部若しくは縁部近傍を制御性よくデポジション加工またはエッチング加工することができる。
【0012】
また、集束イオンビームを被加工体に照射して該被加工体にデポジション加工またはエッチング加工を行う集束イオンビーム加工装置に、上述したような、前記被加工体の加工範囲の縁部の内側に入った実加工範囲に前記集束イオンビームを面照射して該被加工体をデポジション加工またはエッチング加工を行い、次いで前記第1加工後に前記被加工体に残された縁部のエッジに前記集束イオンビームをエッジ照射して該被加工体をデポジション加工またはエッチング加工を行うように制御する制御手段を設けた場合には、上述したような作用を奏する集束イオンビーム加工装置とすることができる。
【0013】
本発明の集束イオンビームによる加工方法は、照射する前記集束イオンビームのイオンドーズ総量を、前記被加工体の前記エッジの加工量に対応させて設定することを特徴とする。なお、この集束イオンビームが被加工体を加工する加工量は、被加工体に照射する集束イオンビームに含まれるイオンドーズの総量に依存するものである。
【0014】
本発明の集束イオンビームによる加工方法にあっては、被加工体の前記エッジの加工に合わせて、換言すれば好ましくこのエッジが加工される所望量に合わせて、照射される集束イオンビームのイオンドーズ総量を設定する。これによって、この被加工体のエッジは、所望量だけ好ましくデポジション加工またはエッチング加工される。なおさらに、この集束イオンビームの単位時間当たりのドーズ量を、イオンドーズ総量が所望の加工量に合わせたイオンドーズ総量に近くなるに従って減少させた場合には、この被加工体の加工個所をより精度よく仕上げることができる。
【0015】
本発明の集束イオンビームによる加工方法は、前記集束イオンビームを所定のドーズ量とされたパルスで構成し、該パルスを前記イオンドーズ総量となるまで照射しつづけることを特徴とする。
【0016】
本発明の集束イオンビームによる加工方法にあっては、集束イオンビームをドーズ量が予め定めた量とされるパルスで構成し、好ましくエッジが加工される所望量に合わせたイオンドーズ総量となるまで、このパルスによって集束イオンビームを照射するので、この照射するパルスの回数を制御すれば、この集束イオンビームを好ましく加工可能なイオンドーズ総量とすることができる。従って、パルスの照射回数で好ましく加工可能なイオンドーズ総量に調節とすることができるので、集束イオンビームの照射量を好ましく制御することができる。なおさらに、このパルスを、照射しはじめは連続的に、また、イオンドーズ総量の近くなるに従っては適宜の時間間隔を入れて、被加工体に照射した場合には、この被加工体の加工個所を精度よく仕上げることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る集束イオンビームによる加工方法及び集束イオンビーム加工装置によれば、加工を行いたい個所が集束イオンビームの照射幅より小さなものである場合にあっても、その加工を行いたい個所を精度よく加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る集束イオンビーム加工装置、及び、この集束イオンビーム加工装置による加工方法についての実施の形態について、図を参照しながら説明する。図1は本発明に係るイオンビーム加工装置の模式図、図2はビットマップによる加工個所を示す図、図3は第1加工工程を示す図、図4は第2加工工程を示す図、図5はドーズ量とエッジの移動量(被加工体の加工量)との関係を示すグラフである。
【0019】
図1のブロック図に示す符号1は、本発明に係る集束イオンビーム加工装置であり、SiOからなる基板上にCrやMoSiからなるパターンが形成された半導体デバイスのフォトマスクをはじめとした被加工体90を加工するものである。この集束イオンビーム加工装置1は、イオンビームIを発生するイオン源10と、このイオンビームを集束するイオン光学系20と、被加工体を支持し且つXY移動機構を備えたステージ40とから大略構成されている。さらに、この集束イオンビーム加工装置1は、前記ステージ40によって支持される被加工体90に向けて放つガス銃45と、この被加工体90から発生する二次荷電粒子91を検出する荷電粒子検出器47と、帯電した被加工体90を中和する中和器49とが設けられている。なお、前記イオン源10、イオン光学系20、ガス銃45、荷電粒子検出器47、中和器49のそれぞれは、コンピュータ(制御手段)50と接続されており、このコンピュータ50によって適宜の制御がなされている。
【0020】
前記イオン源10は、イオンビームI(図4参照)を発生する源であり、例えば、液体金属とされるガリウムイオンが用いられる。このガリウムイオンは、融点が低い等の理由からイオン源として設計し易く、イオン源10の選択として好ましい。さらに、このイオン源10から発生するイオンビームIを集束するイオン光学系20は、イオン源10で発生されたイオンビームIを集束するためのコンデンサレンズ21、イオンビームIを被加工体90に照射させないようにするためにビームを偏向するブランキング電極22、電場を形成してイオンビームIを集束させるコンデンサレンズ21、集束イオンビームIを被加工体90の所望加工個所に集束する対物レンズ23等が含まれてなる。また図示はしていないが、集束イオンビームを偏向走査させるデフレクタも有する。なお、このイオン光学系20は、これらの配置を適宜に変更してもよく、さらに適宜のアライナ、アパーチャー等を設けるものであってもよい。また、この集束イオンビーム加工装置1が発して被加工体90に照射する集束イオンビームIは、パルスで構成されており、1パルスは所定のドーズ量に設定されている。
【0021】
ガス銃45は、集束イオンビームIを照射してデポジション加工を行う際に、被加工体90の所望のデポジション加工個所に向けてガスを吹き付けるものであって、適宜のノズルを備え、デポジション膜を形成する適宜のガスを吹き出す。荷電粒子検出器47は、集束イオンビームIを被加工体90に照射して走査した場合に、この被加工体90から発生する二次荷電粒子91を検出する。中和器49は、集束イオンビームIが照射されることによって帯電した被加工体90を中和するものであって、電子ビームを照射する電子銃等で構成される。ステージ40は、被加工体90を載置して支持するものであって、図示されていないが、互いに直交して2次元を構成するXY軸方向に移動可能な移動機構が設けられている。
【0022】
また、コンピュータ50は、制御部、記憶部、入力部、表示部等を備えてなる。このコンピュータ50は、この集束イオンビーム加工装置1の各部を制御するほか、被加工体90に集束イオンビームIを走査照射した時に発生する二次荷電粒子91を検出する荷電粒子検出器47からの信号に基づいて被加工体90の画像を表示する。また、コンピュータ50は、該画像の情報に基づき、被加工体90のパターン加工領域を微小領域(ピクセル)に区分したビットマップMを作成する。
【0023】
このように構成された集束イオンビーム加工装置1は、集束イオンビームIを被加工体90に照射して、次のように被加工体90を加工する。なお、このような加工の際にあっては、上述した集束イオンビーム加工装置1を構成する各部は、コンピュータ50によって制御されるものとなっており、その制御には、第1加工工程と、第2加工工程とが含まれている。なお、図2(a)及び図3(a)はデポジション加工に関する図面、図2(b)及び図3(b)はエッチング加工に関する図面である。
【0024】
第1加工工程においては、まず、被加工体90の加工範囲の縁部の内側に入った範囲を、実際に第1加工工程において加工する実加工範囲として決定し、この実加工範囲についてのビットマップMを作成する。具体的には、まず、図2(a)及び図2(b)に示すように、イオン源10とイオン光学系20とによって、集束イオンビームIを被加工体(フォトマスクパターン)90に走査照射させる。集束イオンビームIが被加工体90に照射された場合、図1にも示すように、この被加工体90から二次荷電粒子91が発生する。この発生する二次荷電粒子91は、荷電粒子検出器47によって検出され、この二次荷電粒子91の検出される二次荷電粒子91の強度およびイオンビームIの位置情報に基づいてコンピュータ50は、被加工体90の画像化処理を行う。コンピュータ50は、この画像情報に基づいて被加工体90のビットマップMを作成する。すなわち、図2(a)及び図2(b)に示すように、被加工体90が所定の範囲単位でマッピングされたビットマップMが形成される。なお、図2(a)中の凹部92が、デポジション加工を行いたい所望個所となっており、図2(b)中の凸部93が、エッチング加工を行いたい所望個所となっており、これらの凹部92若しくは凸部93を被加工体(フォトマスクパターン)90のエッジ部96と面一に平滑化させようとデポジション加工またはエッチング加工するものである。
【0025】
また、図3(a)及び図3(b)に示すように、集束イオンビーム照射点Bが、図2に示すビットマップMの単位範囲ごとに照射するものとなっている。この集束イオンビーム照射点間隔の長さは、図3(a)及び図3(b)に示すように、W1となっている。このイオンビームIの照射によって、被加工体90は好ましく加工されるものとなっている。
【0026】
この集束イオンビーム加工装置1は、このようにビットマップMが作成された後に、次いで、このビットマップMに合わせて集束イオンビームIを順に各ピクセル位置に走査させ、各ピクセル位置を面照射する。この面照射とは、この作成されたビットマップMの単位範囲毎にイオンビームIが照射されるように、被加工体90の所望の加工個所の上面に集束イオンビームIを照射する照射を意味するものであって、このイオンビーム方向に沿ってデポジション加工またはエッチング加工を行うものである。すなわち、この第1加工工程においてのデポジション加工にあっては、ガス銃45からデポジション用ガスを供給しながら、前記凹部92の各ピクセル位置にこの集束イオンビームIを走査照射することで徐々にデポジション膜が積層されていき、全ての凹部が埋まる僅か内までを埋めるものとなっている。また、この第1加工工程においてのエッチング加工にあっては、前記凸部93が、この集束イオンビームIを走査照射することで徐々に切削されていき、全ての凸部が削除される僅か内まで切削するものとなっている。
【0027】
このようにして、デポジション加工にあっては、図3(a)に示すように、縁部若しくは縁部近傍とされる個所に僅かな極小凹部94が残され、エッチング加工にあっては、図3(b)に示すように、縁部若しくは縁部の近傍とされる個所に僅かな極小凸部95が残されることとなる。これらの僅かに残される極小凹部94及び極小凸部95の微小部の幅の長さは、図4(a)及び図4(b)に示すように、W2となっている。この微小部の幅の長さW2は、図示されるように、上述した集束イオンビーム照射点間隔の長さW1に比して、小さなものとなっている。また、この僅かに残される極小凹部94及び極小凸部95は、被加工体の所望加工個所のうち最終的に加工する個所となっている。このようにして、この第1加工工程は終了し、次いで第2加工工程に移る。
【0028】
この第2加工工程においては、図3(a)に示すように、デポジション加工においては、上述した第1加工工程において僅かに残された極小凹部94をさらにデポジション加工する。また、エッチング加工においては、図3(b)に示すように、上述した第1加工工程において僅かに残された極小凸部95をさらにエッチング加工する。具体的には、この第2加工工程においては、図4(a)に示す極小凹部94または図4(b)に示す極小凸部95の端部の角部とされたエッジEに集束イオンビームIをエッジ照射する。このエッジ照射とは、上述した面照射と全く異なり、被加工体の所望の加工個所の端部であるエッジEに集束イオンビームIを照射する照射を意味するものであり、集束イオンビームIをエッジEに照射することで、デポジション加工またはエッチング加工を行うものである。なお、図3(a)及び図3(b)中、図4(a)及び図4(b)中の符号Cが、本発明における縁部に相当する個所であり、この縁部Cとは、被加工体90の所望加工個所のうち最終的に加工が終わる個所を意味する。つまり、縁部Cが、この第2加工工程において、前記エッジ照射してデポジション加工またはエッチング加工する終点となっている。
【0029】
また、この第2加工工程において照射される集束イオンビームIは、ドーズ量がコントロールされたものとなっている。すなわち、上述した第1加工工程において残された極小凹部94若しくは極小凸部95に合わせて、ドーズ量が任意に選択可能なものとなっている。このドーズ量は、集束イオンビームの電流量と照射時間との積で決定されるものであって、集束イオンビームの電流量が安定的なものであれば照射時間に対応する物理量として導き出されるものである。なお、この集束イオンビームIは、所定の集束イオンビームの電流量に設定されたパルスで構成しても良い。この場合、照射されるドーズ量は、この照射されるパルスの回数で決定されるものとなっている。
【0030】
そして、デポジション加工またはエッチング加工の加工量は、この照射する集束イオンビームIのドーズ量に依存するものとなっている。つまり、図5のドーズ量とエッジの移動量(つまりエッジから徐々に加工される領域が広がっていくことによって、エッジの位置が移動する量)との関係を示すグラフに示すように、ドーズ量が増すにつれて加工されるエッジの移動量も増している。具体的には、集束イオンビームIのドーズ量が400CST(CST:ドーズ量に比例するある単位)である場合にはエッジの移動量が3.5nmとなっており、集束イオンビームBのドーズ量が500CSTである場合にはエッジの移動量が11nm近いものとなっている。
【0031】
なお、このエッジの移動量は、この集束イオンビームIが加工する加工量と同じくされる。第2加工工程においては、この図5のように、エッジの移動量に対するドーズ量を予め測定しているので、このエッジを加工する場合に、所望のエッジ移動量を得るためのドーズ量に対応した集束イオンビームIを照射することができる。つまり、上述した極小凹部94または極小凸部95の加工量を鑑みて任意にドーズ量を選択して設定することができ、これにより精度よく加工できる。
【0032】
このようにドーズ量が選択されて設定された集束イオンビームIが、図4(a)及び図4(b)に示すように、被加工体90に対して縁部Cの近傍のエッジEに照射される。そうすると、図4(a)のデポジション加工にあっては、このエッジEにデポジション膜が形成されていき、この極小凹部94が埋まるものとなる。つまり、このデポジション加工によって、エッジEに図中の右方に向いてデポジション膜が形成されていき、この極小凹部94を埋める。また、図4(b)のエッチング加工にあっては、このエッジEが切削されていき、この極小凸部95が削除されるものとなる。つまり、このエッチング加工によって、エッジEが図中の左方に向いて切削されていき、この極小凸部94を削除する。このようにして、加工を行いたい個所が集束イオンビームIの照射幅より小さなものである場合にあっても、その加工を行いたい個所を好ましく加工することができる。
【0033】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述の実施の形態においては、集束イオンビームを所定のドーズ量とされたパルスで構成したが、これに限定されることなく、集束イオンビームを連続的に照射し、その照射時間でドーズ量を調整することもできる。また、イオン源としてガリウムイオンを用いたが、これに限定されることなく、適宜のイオン源を用いることができる。また、被加工体にあってもフォトマスクに限定されるものではなく、極小に構成される適宜の被加工体を加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るイオンビーム加工装置の模式図である。
【図2】ビットマップによる加工個所を示す図である。
【図3】第1加工工程を示す図である。
【図4】第2加工工程を示す図である。
【図5】ドーズ量とエッジの移動量(被加工体の加工量)との関係を示すグラフである。
【図6】従来のイオンビームによる加工方法によって加工された例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1 集束イオンビーム加工装置
10 イオン源
20 イオン光学系
21 コンデンサレンズ
22 ブランキング電極
23 対物レンズ
40 ステージ
45 ガス銃
47 荷電粒子検出器
49 中和器
50 コンピュータ
90 被加工体
91 二次荷電粒子
92 凹部
93 凸部
94 微小凹部
95 微小凸部
96 エッジ部
100 フォトマスクパターン
101 凸状部
102 裾の一部
103 エッジ線
B 集束イオンビーム照射点
C 縁部
E エッジ
F 加工エリア
I 集束イオンビーム
M ビットマップ
W1 集束イオンビーム照射点間隔の長さ
W2 微小部の幅の長さ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
集束イオンビームを被加工体に照射して該被加工体にデポジション加工またはエッチング加工を行う集束イオンビームによる加工方法であって、
前記被加工体のエッジに前記集束イオンビームを照射し、かつ、前記集束イオンビームのドーズ量を制御することにより該被加工体をデポジション加工またはエッチング加工することを特徴とする集束イオンビームによる加工方法。
【請求項2】
請求項1の集束イオンビームによる加工方法において、
前記被加工体の加工範囲の縁部の内側に入った実加工範囲に前記集束イオンビームを面照射して該被加工体をデポジション加工またはエッチング加工を行う第1加工工程と、
前記第1加工工程後に前記被加工体に残された縁部若しくは縁部近傍のエッジに前記集束イオンビームを照射して該被加工体をデポジション加工またはエッチング加工を行う第2加工工程とを含むことを特徴とする集束イオンビームによる加工方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の集束イオンビームによる加工方法において、
照射する前記集束イオンビームのイオンドーズ総量を、前記被加工体の前記エッジの加工量に対応して設定することを特徴とする集束イオンビームによる加工方法。
【請求項4】
請求項3に記載の集束イオンビームによる加工方法において、
前記集束イオンビームを所定のドーズ量とされたパルスで構成し、該パルスを前記イオンドーズ総量となるまで照射しつづけることを特徴とする集束イオンビームによる加工方法。
【請求項5】
集束イオンビームを被加工体に照射して該被加工体にデポジション加工またはエッチング加工を行う集束イオンビーム加工装置であって、
前記被加工体の加工範囲の縁部の内側に入った実加工範囲に前記集束イオンビームを面照射して該被加工体をデポジション加工またはエッチング加工を行い、次いで前記第1加工後に前記被加工体に残された縁部のエッジに前記集束イオンビームを照射して前記集束イオンビームのドーズ量を制御することにより該被加工体をデポジション加工またはエッチング加工を行うように制御する制御手段を備えたことを特徴とする集束イオンビーム加工装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−301406(P2006−301406A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124942(P2005−124942)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】