離型剤を有するオクトレオチドインプラント
被験体においてオクトレオチド、例えば、酢酸オクトレオチド、の放出制御を可能にする方法、処方物およびキットを開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年6月25日出願の米国特許仮出願第61/075625号、および2008年7月11日出願の米国特許仮出願第61/080144号の利益を主張する。これらの特許出願のそれぞれの全内容は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
先端巨大症は、脳下垂体が過剰な成長ホルモン(GH)を産生する場合に結果的に生じるホルモン障害である。先端巨大症は一般に中年の成人に発症し、重篤な疾病および早期の死亡をもたらし得る。ひとたび診断されれば、先端巨大症は大部分の患者において治療可能であるが、その発症が遅発性であり、多くの場合潜行性であるために、正確に診断されない場合が多い。先端巨大症の最も重篤な健康結果は、真性糖尿病、高血圧症および心血管疾患のリスク増加である。また、先端巨大症の患者は、癌に発展し得る結腸のポリープのリスクも高い。GH産生腫瘍が小児期に発生すると、その結果生じる疾患は、先端巨大症ではなく巨人症と呼ばれる。長骨の成長板の融合は思春期後に起こるので、成人での過度のGH産生の発達は身長の増加をもたらさない。成長板の融合前に過剰なGHに長期に曝露されることが、長骨の成長を増大させ、身長を伸ばす。
【0003】
先端巨大症は、脳下垂体による成長ホルモン(GH)の長期にわたる過剰産生に起因する。下垂体は、脳の底部にある小さな腺であり、数種類の重要なホルモンを産生して、成長および発達、生殖、ならびに代謝などの身体機能を制御する。GHは、ホルモンのカスケードの一部であり、名前が意味するように、身体の物理的な成長を調節する。このカスケードは、下垂体を調節するホルモンを産生する視床下部と呼ばれる脳の部分で始まる。これらのホルモンの一つであるGH放出ホルモン(GHRH)は、脳下垂体を刺激してGHを産生する。もう一つの視床下部ホルモンであるソマトスタチンは、GHの産生および放出を阻害する。下垂体によるGHの血流中への分泌は、肝臓においてインスリン様成長因子I(IGF−1)と呼ばれるもう一つのホルモンの産生を引き起こす。IGF−1は、身体の骨およびその他の組織の成長を引き起こす因子である。また、IGF−1は、下垂体にGH産生を低下させる信号を伝達する。身体中のGHRHレベル、ソマトスタチンレベル、GHレベルおよびIGF−1レベルは、相互に緊密に調節され、それらのレベルは、睡眠、運動、ストレス、食物摂取および血糖値などの環境刺激により影響を受ける。もし下垂体が正常な調節機構から独立してGHを産生するならば、IGF−1のレベルは上昇し、骨成長および器官拡張が引き起こされることになる。過剰なGHは、糖および脂質代謝の変化をも引き起こし、糖尿病を引き起こす可能性がある。
【0004】
90%超の先端巨大症患者において、GHの過剰産生は、腺腫と呼ばれる脳下垂体の良性腫瘍により引き起こされる。これらの腫瘍は過剰なGHを産生し、腫瘍が拡大するにつれて、周囲の脳組織、例えば視神経などを圧迫する。この拡大により、しばしば先端巨大症の症状である頭痛および視覚障害が引き起こされる。その上、周囲の正常な下垂体組織の圧迫は、その他のホルモンの産生を変化させる可能性があり、女性において月経変化および乳汁分泌ならびに男性において性交不能症を導く。
【0005】
一部の患者において、先端巨大症は、下垂体腫瘍によるのではなく、膵臓、肺および副腎の腫瘍により引き起こされる。これらの腫瘍がGH自体を産生するためか、または、さらに頻繁に、これらの腫瘍がGHを製造するよう下垂体を刺激するホルモンであるGHRHを産生するために、これらの腫瘍は過度のGHを導く。これらの患者において、過剰なGHRHは血液中で測定され、先端巨大症の原因が下垂体の異常に起因するものでないことを示す。これらの非下垂体腫瘍が外科的に切除されると、GHレベルは低下し、先端巨大症の症状は好転する。
【0006】
先端巨大症の治療計画には、GH産生を正常レベルまで低下させて、増殖する下垂体腫瘍が周囲の脳領域に及ぼす圧力を軽減すること、正常な下垂体機能を保つこと、および、先端巨大症の症状を逆行または寛解させることが含まれる。治療の選択肢には、腫瘍の外科的除去、薬物療法および下垂体の放射線療法が含まれる。
【0007】
オクトレオチドは、先端巨大症の管理に有効であることが実証されている。GHレベルは、通常、オクトレオチドの皮下注射後2時間以内に低下する。オクトレオチドは、患者の大部分においてGHおよびIGF−1レベルの低下をもたらし、60%までの患者においてIGF−1レベルが正常化し、生化学的な緩解が示される。大部分の患者は、オクトレオチド治療を開始してまもなく、頭痛、関節痛および発汗を含む、自身の先端巨大症の症状の顕著な改善に気付く。オクトレオチドは、現在Sandostatin LAR(登録商標)Depotとして入手可能であり、これは、再構成すると、酢酸オクトレオチドを含有するミクロスフェアの懸濁液である。Sandostatin LAR(登録商標)Depotは、先端巨大症の患者における長期の維持療法に用いられる唯一の薬物療法である。それは、転移性カルチノイド腫瘍に関連する重度の下痢および潮紅症状の発現ならびにVIP産生腫瘍に関連する大量の水下痢の長期治療にも用いられる。Sandostatin LAR(登録商標)Depotは、4週ごとの筋肉注射により投与され、その後に用量設定期間が続く。酢酸オクトレオチドも、即時放出製剤、Sandostatin(登録商標)注射液として入手可能であり、これは1日3回、注射により投与することが必要である。間欠的なオクトレオチド注射に対してGHレベルが有意に低下しない患者では、より頻繁なオクトレオチドの投薬により一層の臨床応答がもたらされる可能性がある。注射と注射の間のGHのエスケープを避けるために、難治性の先端巨大症の患者に皮下ポンプにより継続的にオクトレオチドを投与することもできる。
【0008】
先端巨大症を治療するためのオクトレオチドの有効性、ならびに放出制御治療法およびオクトレオチド処方物のないことを踏まえると、例えば、複数回の定期的な注射に耐えることになる患者の煩わしさを回避するために、一定時間にわたって制御された速度でオクトレオチドを送達することのできる処方物および送達法が必要とされる。また、GHおよびIGF−1のレベルの増加を特徴とするかまたはそれらのレベルの増加に関連する状態および疾患を含む、他の疾患および状態ならびに/またはそれらの関連症状を効果的に治療するために、一定時間にわたって制御された速度でオクトレオチドを送達することのできる処方物および送達法が明らかに必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一般に、ホルモン障害に罹患した個体を治療するために使用することのできるオクトレオチド医薬組成物に関する。本明細書に記載される処方物は、1種類以上の活性薬剤、例えば、オクトレオチドの放出制御を可能にする。本明細書に記載される実施形態は、埋め込み可能なデバイスを用いて、オクトレオチドを制御された速度で放出することができるという予期せぬ発見に基づくものである。本明細書に記載される処方物および方法は、治療有効量のオクトレオチドを長期間、例えば、約2ヶ月、約6ヶ月および約2年までにわたって提供する。
【0010】
一態様は、被験体への埋め込み後におけるオクトレオチドの放出制御のための処方物に関し、この処方物は、ポリウレタン系ポリマーおよびメタクリレート系ポリマーから選択される親水性ポリマー内に実質的に収容される調製物を含み、この調製物はオクトレオチドを含み、この処方物は、インビボで約6ヶ月にわたり1日あたり約30μg〜約800μgの速度でのオクトレオチドの放出を許容するうえで効果的であり、かつ、調製物でなく親水性ポリマーは、少なくとも約1000ダルトンの分子量をもつ離型剤をさらに含む。特定の態様では、離型剤は、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール親水性尾部および親油性頭部である。特定の態様では、離型剤は、Brij35、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート、Tween20、Tween80、ビタミンE TPGS、およびそれらの任意の2またはそれ以上の混合物からなる群から選択される。特定の態様では、離型剤は、少なくとも約1200ダルトンの分子量を有する。特定の態様では、親水性ポリマーは、約350mm2またはそれ以上、例えば、約350mm2〜約1500mm2の外部表面積を有する。特定の態様では、処方物は、インビボで1日あたり約75μg〜1日あたり約300μgの範囲の平均速度でのオクトレオチドの放出を許容する。特定の態様では、オクトレオチドは酢酸オクトレオチドである。特定の態様では、親水性ポリマーは、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびヒドロキシプロピルメタクリレートの混合物を含む。特定の態様では、処方物は、被験体において約0.1ng/mL〜約9ng/mLのオクトレオチドのインビボ平均Cssをもたらす。特定の態様では、処方物は、被験体において約1ng/mL〜約4ng/mLのオクトレオチドのインビボ平均Cssをもたらす。特定の態様では、調製物は、約40mg〜約120mgのオクトレオチド、例えば、約50mgの酢酸オクトレオチド、約85mgの酢酸オクトレオチドを含む。特定の態様では、親水性ポリマーは、約20%の2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび約80%のヒドロキシプロピルメタクリレートの混合物を含む。特定の態様では、親水性ポリマーは、約40%の2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび約60%のヒドロキシプロピルメタクリレートの混合物を含む。特定の態様では、調製物は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、植物性ステアリン、タルクおよびシリカからなる群から選択される補形剤をさらに含む。特定の態様では、調製物は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、加工デンプンおよび架橋ポリビニルピロリドンからなる群から選択される化合物をさらに含む。特定の態様では、親水性ポリマーは、ポリウレタン系ポリマーを含む。
【0011】
一態様は、被験体においてGHレベルまたはIGF−1レベルを低下させ、および/または、オクトレオチド感受性の(octreotide−sensiteve)疾患、障害または症状、例えば、先端巨大症または先端巨大症に関連する症状、カルチノイド腫瘍に関連する症状、VIP産生腫瘍または神経内分泌腫瘍、カルチノイド症状群、増殖性糖尿病性網膜症、酒さ、膵炎、消化管出血、膵瘻および腸瘻、グレーブス眼症およびバセドウ眼症、緑内障、および/または血管新生(vasularization)に関連する角膜疾患を治療する方法に関し、この方法は、親水性ポリマーに収容される調製物を含む少なくとも1つの乾燥した埋め込み可能なデバイスを皮下に埋め込むことを含み、この調製物はオクトレオチドを含み、この調製物でなくこの親水性ポリマーは、少なくとも1000の分子量を有する離型剤、例えば、ビタミンE TPGSをさらに含む。特定の態様では、調製物は、約40mg〜約120mgの酢酸オクトレオチドを含む。特定の態様では、2つの埋め込み可能なデバイスが皮下に埋め込まれる。特定の態様では、埋め込み可能なデバイスは、約6ヶ月〜約2年の範囲の連続的な期間、患者の体内に埋め込まれたままである。特定の態様では、埋め込み可能なデバイスは、約6ヶ月〜約1年の範囲の連続的な期間、患者の体内に埋め込まれたままである。特定の態様では、埋め込み可能なデバイスは、照射により滅菌される。
【0012】
特定の態様では、処方物および方法は、例えば、重度の下痢、水様下痢、潮紅症状の発現および/または喘息を治療するために使用される。
【0013】
一態様は、本明細書に記載される処方物のいずれかを含むキットに関する。このキットは、処方物の埋め込みおよび使用に必要な材料および説明書をさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】平衡含水量(EWC)と、最大水和状態の架橋HEMA/HPMAポリマー中のヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)単位の重量パーセント含量との間の直線関係を示すグラフである。
【図2】インプラント処方物からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図3】インプラント処方物からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図4】6種類の異なるインプラント処方物からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図5】異なるインプラント処方物からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図6】オクトレオチド処方物を埋め込んだ健常なイヌにおけるオクトレオチドおよびIGF−1血清レベルを示すグラフである。
【図7】オクトレオチドインプラント処方物1つを6ヶ月の期間にわたり埋め込まれた、健常なイヌ3匹の群におけるオクトレオチドおよびIGF−1血清レベルを示すグラフである。
【図8】オクトレオチドインプラント処方物2つを6ヶ月の期間にわたり埋め込まれた、健常なイヌ3匹の群におけるオクトレオチドおよびIGF−1血清レベルを示すグラフである。
【図9A】6ヶ月にわたりオクレオチド処方物を埋め込まれた11名の先端巨大症のヒト被験体におけるIGF−1血清レベルおよび変化率を表すグラフである。
【図9B】6ヶ月にわたりオクレオチド処方物を埋め込まれた11名の先端巨大症のヒト被験体におけるIGF−1血清レベルおよび変化率を表すグラフである。
【図10】オクレオチド処方物を6ヶ月にわたり埋め込まれた11名の先端巨大症のヒト被験体におけるオクトレオチド血清レベルを表すグラフである。
【図11】6ヶ月にわたりオクレオチド処方物を埋め込まれた2匹のイヌにおけるオクトレオチド血清レベルを表すグラフである。
【図12】6ヶ月にわたりオクレオチド処方物を埋め込まれた2匹のイヌにおけるIGF−1血清レベルを表すグラフである。
【図13】水和インプラント送達および乾燥インプラント送達後の血清中オクトレオチド濃度を示すグラフである(表6も参照)。
【図14】水和インプラント送達および乾燥インプラント送達後の血清中オクトレオチド濃度を示すグラフである(表6も参照)。
【図15A】水和インプラントおよび乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後の成長ホルモンのレベルを示すグラフである(GH濃度)。
【図15B】水和インプラントおよび乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後の成長ホルモンのレベルを示すグラフである(GH低下%)。
【図16A】水和インプラントおよび乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後のIGF−1のレベルを示すグラフである(IGF−1濃度)。
【図16B】水和インプラントおよび乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後のIGF−1のレベルを示すグラフである(標準偏差)。
【図17A】水和インプラントおよび乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後のIGF−1のレベルを示すグラフである(調査から得たデータを示し、値は通常のIGF−1レベルに対するパーセントとして表される)。
【図17B】水和インプラントおよび乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後のIGF−1のレベルを示すグラフである(調査から得たデータを示し、値は通常のIGF−1レベルに対するパーセントとして表される)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本組成物および方法を説明する前に、本組成物および方法が、記載される特定の分子、組成物、方法論またはプロトコルに限定されない(これらは変化する可能性があるため)ことは当然理解される。また、この詳細な説明において用いられる用語は、特定の変形または実施形態を記載することだけを目的とするものであり、添付される特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図しないことも当然理解される。本明細書において使用される用語は、当業者に認識され、公知である意味を有するが、しかし、便宜上および完全を期すために、特定の用語とその意味を以下に述べる。
【0016】
単数形「a」、「an」、および「the」には、文脈上明らかに指示されている場合を除いて、複数形への言及が含まれる。別途定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料に類似するかまたは同等のいずれの方法および材料も、本明細書に記載される実施形態の実践または試験で使用してよいが、好ましい方法、デバイス、および材料を以下に説明する。本明細書において記載される全ての刊行物は、それらが本発明を支持する範囲で参照により援用される。本明細書において、先行発明のために本発明がかかる開示に先行する権利を有さないことを認めるものとして解釈されるものは何もない。
【0017】
本明細書において、用語「約」は、その用語と共に使用される数に10%を加えたかまたは10%を引いた数値を意味する。例えば、約50%は、40%〜60%の範囲を意味する。
【0018】
「放出制御処方物」とは、所定の治療有効量の薬物またはその他の活性薬剤、例えばポリペプチドまたは合成化合物を長期間にわたり一貫して放出するよう設計された処方物をさし、その結果、所望の治療効果を達成するために必要な治療の数が減少する。本明細書に記載されるように、制御された処方物は、成長ホルモン(GH)レベルの低下またはIGF−1レベルの低下、または先端巨大症に関連する症状改善(限定されるものではないが成長異常を含む)に関して、所望の効果を達成するために必要な治療の数を減少させる。本放出制御処方物は、被験体において望ましい薬物動態プロフィール、好ましくは送達環境の配置の実質的に直後に活性薬剤の放出を開始し、続いて活性薬剤の一貫した持続性の、好ましくはゼロ次、実質的にゼロ次、またはゼロ次に近い放出を達成する。
【0019】
本明細書において、用語「放出制御」には、活性薬剤の毒性レベルよりも低い治療上有益な血中濃度が、例えば、少なくとも約2ヶ月、約6ヶ月またはそれ以上(例えば、約2年まで)の期間にわたり維持されるような速度での、投薬処方物からの所定の一貫した活性薬剤の放出が含まれる。
【0020】
用語「患者」および「被験体」は、ヒトを含む全ての動物を意味する。患者または被験体の例としては、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジおよびブタが挙げられる。
【0021】
用語「製薬上許容される塩、エステル、アミド、およびプロドラッグ」は、本明細書において、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激作用、アレルギー応答などがなく、患者の組織に接触しての使用に適した、本発明の化合物のカルボン酸塩、アミノ酸付加塩、エステル、アミド、およびプロドラッグをさす。その使用は、妥当な利益/リスク比に見合うものであり、その意図される使用に効果的である。可能である場合、双性イオン形態を用いてもよい。本明細書に記載される化合物は、例えば、非溶媒和形態、および製薬上許容される溶媒、例えば、水、エタノールなどを含む、溶媒和形態で存在することができる。一般に、溶媒和形態は、本発明の目的において非溶媒和形態と同等と考えられる。
【0022】
用語「プロドラッグ」とは、例えば、血液中の加水分解により、インビボで迅速に変換されて、上式の親化合物を生じる化合物をさす。T.Higuchi and V.Stella,「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series中、およびBioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987中に考察が記載され、その両方が参照によりその全文が本明細書に援用される。
【0023】
用語「塩」とは、本発明の化合物の比較的無毒の無機および有機酸付加塩をさす。これらの塩は、化合物の最終の単離および精製の間に、あるいは、遊離塩基形態の精製化合物と、適した有機酸または無機酸を別々に反応させ、このようにして生じた塩を単離することにより、現場で調製することができる。代表的な塩としては、酢酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチ酸塩メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸およびラウリル硫酸塩などが挙げられる。これらには、アルカリおよびアルカリ土類金属に基づく陽イオン、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、ならびに無毒のアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなど(例えば、参照によりその全文が本明細書に援用される、S.M.Barge et al.,「Pharmaceutical Salts」J.Pharm.Sci,1977,66:1−19参照)が含まれ得る。
【0024】
「治療」とは、予防(防止)のためか、または患者が罹患している事例において虚弱質または病弊を治癒させるための、患者への医薬の投与または医療手順の実行をさす。
【0025】
「治療有効量」は、医学的状態に関連する症状を減少させる、防ぐ、または寛解させるために十分な量である。ホルモン療法の状況では、疾患または障害における身体機能またはホルモンレベルを正常化するために十分な量も意味し得る。治療有効量のオクトレオチドの放出制御処方物は、例えば、患者において所望の効果を達成するように、例えば、GHまたはIGF−1レベルを効果的に低下させるように計算された所定の量である。
【0026】
本発明を利用して、例えば、先端巨大症および巨人症を含む、多様なホルモン障害、あるいは、例えば、オクトレオチドを用いて効果的に治療されるその他の疾患または障害を治療することができる。先端巨大症は、手足の拡大、前頭隆起、拡大した下顎骨および歯の間隔の増大を含む顔面の変化、関節痛、発汗、睡眠時無呼吸、高血圧症、真性糖尿病および肥大性心筋症を含む、多数の臨床徴候を特徴とする。先端巨大症を引き起こす腫瘍は、高い頻度で局所的な解剖学的圧迫を引き起こし、その結果、例えば、視野欠損、頭痛、下垂体機能低下症、および脳神経麻痺が起こる。先端巨大症の患者の死亡率は、主に心血管および脳血管疾患に起因して、2倍から5倍増加する。また、先端巨大症に関連する悪性腫瘍の割合も増加し、結腸癌が最も特徴的である。
【0027】
オクトレオチドは、次のアミノ酸配列を含むオクタペプチドである:L−システインアミド、D−フェニルアラニル−L−システイニ(cysteiny)−L−フェニルアラニル−D−トリプトフィル−L−リシル−L−トレオニル−N−[2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]−,環状(2→7)−ジスルフィド;[R−−(R*,R*)]。オクトレオチドの構造を以下に示す。
【0028】
【化1】
【0029】
オクトレオチドは、GH、グルカゴンおよびインスリンを阻害する。また、それはGnRHに対するLH応答を抑制し、ガストリンの放出を阻害し、内臓の血流を低下させ、かつ、セロトニン、セクレチン、モチリン、血管作用性小腸ペプチド、および膵ポリペプチドの放出を阻害する。オクトレオチドはまた、TSH(甲状腺刺激ホルモン)を阻害する。結果として、オクトレオチドは、例えば、先端巨大症、糖尿病、ならびにカルチノイド腫瘍、VIP産生腫瘍(血管作用性小腸ペプチド分泌腺腫)、および神経内分泌腫瘍に関連する重度の下痢および潮紅症状の発現、特に、VIP産生腫瘍に関連する水様下痢を含む、多数の状態および症状を治療するために用いることができ、加えて、化学療法およびAIDSに関連する症状を治療する際にも有用であり得る。オクトレオチドはまた、多数のその他の状態、例えば、増殖性糖尿病性網膜症 (Palii,S.et al.,Expert Opin.Investig.Drugs,16:73−82,2007)、酒さ(Pierard−Franchimont,C.et al.,Dermatology,206:249−251,2003)、膵炎、消化管出血、膵瘻および腸瘻、グレーブス眼症およびバセドウ眼症、緑内障、および血管新生(vasularization)に関連する角膜疾患(Pawlikowski,M.and Melen−Mucha,G.,Neuro.Endocrinol.Lett.,24:21−27,2003)などの治療においても有用である。
【0030】
化学式は、C49H66N10O10S2であり、その分子量は1019.3Daである。その薬効分類は、胃液分泌抑制薬である。本発明のオクトレオチドは、例えば、遊離形態、塩形態またはその複合体の形態で存在してよい。酸付加塩は、例えば、有機酸、ポリマー酸、および無機酸で形成されてよい。酸付加塩には、例えば、塩酸塩および酢酸塩が含まれる。複合体は、例えば、オクトレオチドから、無機物、例えば無機塩、または水酸化物、例えば、Ca塩、Zn塩および酢酸塩の添加により、さらに/あるいはポリマー有機物質の添加により形成される。
【0031】
実施形態は、次の目的を達成することのできる薬物送達デバイスを提供する:治療効果を最大化し、望まない副作用を最小化するための放出制御速度(ゼロ次または実質的にゼロ次の放出速度);治療を終了するために必要な場合にデバイスを回収するための便宜な方法;および吸収のばらつきが少なく初回通過代謝のない、バイオアベイラビリティの増加。
【0032】
酢酸オクトレオチドを含む放出制御医薬組成物は、放出制御ヒドロゲルデバイスまたは親水性ポリマーデバイスの一部であり得る。本発明の組成物は、患者に投与されると、少なくとも約2ヶ月、好ましくは少なくとも約6ヶ月またはそれ以上、例えば、約1年まで、または約2年までに及ぶオクトレオチドの放出プロフィールを提供する能力がある。オクトレオチドは、例えばヒドロゲルとともに収容されてよく、処方物は治療有効量のオクトレオチドを長期間にわたって放出する。ヒドロゲルは、例えば、メタクリレート系ポリマー、ポリウレタン系ポリマーおよびそれらの組合せなどの親水性ポリマーを含んでよい。治療有効量は、患者または被験体に投与されると、先端巨大症の1以上の症状を寛解させる、オクトレオチド、好ましくは酢酸オクトレオチドの量である。処方物は、製薬上許容される補形剤をさらに含むことができる。
【0033】
本発明の組成物を患者に投与すると、例えば、経時的に患者の血漿中のオクトレオチドの濃度として測定される、オクトレオチドの放出(放出プロフィール)は、少なくとも約2ヶ月、約6ヶ月、約1年まで、少なくとも約12ヶ月すなわち1年、および/または約2年までの期間にわたり延長することができる。本組成物は、ヒト患者における定常状態でのオクトレオチドの約0.1〜約9ng/mL、約0.5ng/mL〜約1ng/mL、約1〜約2ng/mL、約0.5ng/mL〜約2ng/mL、約1.2〜約1.6ng/mL、または約0.8ng/mL〜約1.8ng/mLの平均血漿中濃度を提供する。定常状態は、投薬間隔の間に投与される薬物の量が、その同じ期間の間に除去される薬物の量と等しくなる時点である。
【0034】
オクトレオチド処方物を含む親水性インプラントは、水を容易に吸収するようにキセロゲルから形成することができる。水和状態では、キセロゲルはヒドロゲルと呼ばれる。いずれの形態(水和形態または非水和形態)においても、それは生体適合性であり、ホストに対して無毒であり、かつ生分解性でない。それは水膨潤性かつ水不溶性である。ヒドロゲルがその水和の最大レベルに達すると、ヒドロゲルの含水量は、「平衡含水量」(EWC)と呼ばれる。ヒドロゲルの含水率(いずれの水和状態でも)は、次のように求められる:
【0035】
【数1】
【0036】
ヒドロゲルは、エチレン性不飽和モノマーAとエチレン性不飽和モノマーB、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)とヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)の混合物の重合により形成される、所定のEWC値を有する、均一なホモポリマーまたはコポリマーであってよい。所定のEWCは、親水性モノマーAのヒドロゲルホモポリマー(ホモポリマーA)のEWC値および親水性モノマーBのヒドロゲルホモポリマー(ホモポリマーB)のEWC値を決定すること;均一なコポリマーABのEWC値の該コポリマーABの化学組成に対する関係を決定すること;目標とするEWC値を選択し、目標とするEWC値を有するコポリマーABの化学組成を決定すること;モノマーAとモノマーBの重合可能な混合物を、目標とするEWC値を有するコポリマーABを生じるために十分な量で形成すること;および、重合反応をもたらして目標とするEWC値を特徴とするコポリマーABを生じること、により算出することができる。
【0037】
本明細書において、「コポリマーAB」または「モノマーA単位およびモノマーB単位から本質的になるコポリマーAB」は、モノマーAとモノマーBの付加共重合が、該モノマーの重合可能なエチレン結合によってもたらされることを意味する。例として、モノマーAが2−ヒドロキシエチルメタクリレートであり、モノマーBがN−メチルアクリルアミドである場合、コポリマーABは、繰り返しモノマーA単位及び繰り返しモノマーB単位を含む。
【0038】
文脈が別に指示しない限り、用語「コポリマー」には、少なくとも2つのエチレン不飽和モノマーの混合物を重合させることにより作成されるポリマーが含まれる。
【0039】
本明細書において、「HEMA単位(群)」とは、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)を含有する親水性材料を重合することにより得られるポリマー中に繰り返される構造をさす。用語「HEMA単位(群)」は、次の構造を意味する。
【0040】
【化2】
【0041】
本明細書において、「HPMA単位(群)」とは、ヒドロキシプロピルメタクリレート(「HPMA」)を含有する親水性材料を重合することにより得られる構造をさす。用語「HPMA単位(群)」は、次の構造を意味する。
【0042】
【化3】
【0043】
親水性生成物において有用な液体の重合可能な材料としては、幅広い種類の重合可能な親水性のエチレン性不飽和化合物、特に、親水性モノマーであって、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸と、エステル化可能な水酸基および少なくとも1つの追加の水酸基を有するポリヒドロキシ化合物のモノエステル、例えば、メタクリル酸およびアクリル酸のモノアルキレンポリオールおよびポリアルキレンポリオールなど、(例、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレートおよびアクリレート、プロピレングリコールメタクリレートおよびアクリレート、ジプロピレングリコールメタクリレートおよびアクリレート、グリシジルメタクリレートおよびアクリレート、グリセリルメタクリレートおよびアクリレートなど);2−アルケンアミド(例、アクリルアミド、メタクリルアミドなど);N−アルキルおよびN,N−ジアルキル置換アクリルアミドおよびメタクリルアミド、例えばN−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなど;N−ビニルピロリドン;アルキル置換N−ビニルピロリドン(例、メチル置換N−ビニルピロリドン);N−ビニルカプロラクタム;アルキル置換N−ビニルカプロラクタム(例、N−ビニル−2−メチルカプロラクタム、N−ビニル−3,5−ジメチルカプロラクタムなど)が挙げられる。アクリルおよびメタクリル酸も、これらの処方物において有用であり得る。
【0044】
親水性モノマーの混合物が重合反応において使用される。モノマーの種類および割合は、水和により企図される適用または使用に望ましいEWC値を有する均一なポリマー、好ましくは架橋された均一なポリマーを生じるよう選択される。この値は、所定の様々なモノマー比を用いて一連のコポリマー(例、様々な比のHEMAとHPMAの混合物)を調製すること、コポリマーのEWC値を確認すること、および、HPMA/HEMAコポリマーの%HPMA(または%HEMA)単位の、該コポリマーのEWC重量パーセントに対する関係をプロットすることにより、予め決定することができる(図1)。
【0045】
一部の例では、特定の親水性モノマー混合物の重合により、水性媒体中に様々な程度まで溶解する均一な親水性コポリマーがもたらされる。そのような場合、少量の、例えば3パーセントまでの共重合可能なポリエチレン性不飽和架橋剤をモノマー混合物に含めて、水不溶性であると同時に水膨潤性である均一な架橋コポリマーを得ることができる。HEMAのわずかに架橋したホモポリマーは、例えば約38%のEWC値を有することができる。HEMAおよびHPMAの架橋コポリマーは、約38%より低いEWC値を有する。一方、HEMAおよびアクリルアミドの架橋コポリマーは、38%(w/v)より高いEWC値、例えばもっと高く約75%、およびそれ以上を提示する。そのため、特定の適用のためのヒドロゲル送達系に必要な活性化合物、例えば薬物の有用または効果的な溶出速度に応じて、当業者は、本明細書に開示される教示に従って、望ましい速度で薬物を溶出するコポリマーヒドロゲル膜を目的に応じて作ることができる。コポリマーは、例えば、約15%〜約70%(重量)のHEMA単位および約85〜30%(重量)の単位の第2のエチレンモノマーを含み、約20%〜約75%の範囲、好ましくは約25%の所定のEWC値を有することができる。均一なコポリマーには、約60%からのHPMA(重量)、および約20%からのHEMA(重量)を含有する親水性モノマー混合物から作成されるコポリマーが含まれてよい。例えば、均一なコポリマーには、約60%のHPMA(重量)および約40%のHEMA(重量)を含有する、または、約80%のHPMA(重量)および約20%のHEMA(重量)を含有する親水性モノマー混合物から作成されるコポリマーが含まれてよい。さらなる実施形態では、混合物は、少量のポリエチレン性不飽和架橋剤、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート(「TMPTMA」)をさらに含んでよい。
【0046】
一部の実施形態には、親水性モノマーの混合物の重合により形成される均一なポリマー構造をもつ均一な親水性コポリマー;および、送達系において均一なポリマーカートリッジを利用する薬物送達デバイスが含まれる。親水性モノマーと疎水性モノマーの混合物の重合は、不均一なポリマーを生じる。疎水性セグメントがポリマー中に存在する場合、界面の自由エネルギーは増大し、従って動物への埋め込み後のタンパク質吸着および鉱化が強化される。ポリHEMAのヒドロゲルを、例えば、ゼロに近い界面自由エネルギーを有するように測定した。界面自由エネルギーの解釈によれば、厳密に親水性の成分のヒドロゲルは、身体組織に生体適合性である。わずかに架橋したポリHEMAは、比較的一定の特徴または値をもつ、均一で親水性の「ホモポリマー」(その中の比較的少量の重合架橋剤は無視する)。「ホモポリマー」ポリHEMAを変更してそれに付加的な特徴または特性を付与する技法は、困難であり、時間がかかり、多くの場合一貫性のない特性挙動をもたらす。一方、HEMAと様々な量のその他の重合可能な親水性コモノマー(1または複数)との混合物は、重合させて、(所定の)目的に応じて作られた特性を有する、予測可能な均一な親水性コポリマーを得ることができる。
【0047】
重合可能な反応媒質に含めることのできる有用な架橋剤としては、例えば、少なくとも2つの重合可能なエチレン部位を有するポリエチレン性不飽和化合物、例えばジ−、トリ−およびテトラ−エチレン性不飽和化合物、特に、二不飽和架橋化合物、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレートおよびジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレートおよびジアクリレートを含む/含まない三不飽和架橋剤;ならびに、次のポリオールのジ−、トリ−およびテトラ−アクリレートまたはメタクリレートエステル:トリエタノールアミン、グリセロール、ペンタエリトリトール、1,1,1トリメチロールプロパンおよびその他のものが挙げられる。
【0048】
重合反応は、バルクで、または不活性溶媒と共に実行してよい。適した溶媒としては、例えば、水;有機溶媒(例えば、水溶性低級脂肪族一価アルコールならびに多価アルコール、例えば、グリコール、グリセリン、ジオキサンなど;およびそれらの混合物)が挙げられる。
【0049】
重合可能なエチレン性不飽和化合物の触媒作用において有用な化合物としては、フリーラジカル化合物、ならびに/または、有機過酸化物、過炭酸塩、過酸化水素、およびアルカリ金属硫酸塩などのビニル重合において一般に用いられる種類の開始剤が挙げられる。説明となる例としては、限定されるものではないが、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、過酸化水素、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、および硫酸ナトリウムが挙げられる。一実施形態では、触媒は、中程度に低い温度、例えば、約20〜80℃などで効果的である(例えば、tert−ブチルペルオクトエート、過酸化ベンゾイル、およびジ(secブチル)ペルオキシジカーボネート)。
【0050】
従来のレドックス重合触媒も用いることができる。エチレン性化合物の重合は、例えば、放射線、例えば、紫外線、X線、ガンマ線、マイクロ波またはその他の公知の形態の放射線を用いて達成することができる。紫外線硬化のための触媒の例は、ベンゾインメチルエーテルである。触媒および/または開始剤および/または放射線は、重合反応を最適化する触媒有効量で用いられる。
【0051】
一部の実施形態は、生物学活性化合物を制御された速度で長期間にわたって送達するための埋め込み可能な薬物デバイスの創製のために、ポリウレタン系ポリマー、熱可塑性物質または熱硬化性物質の適用に焦点を合わせている。ポリウレタンポリマーは、用いるポリウレタンの種類に応じて、好ましくは、押出、(反応)射出成形、圧縮成形、またはスピンキャスティングによって1または2の開口末端を含む円筒型の中空管にすることができる(参照によりそれらの全文が本明細書に援用される、米国特許第5,266,325号および同第5,292,515号)。
【0052】
熱可塑性ポリウレタンは、押出、射出成形または圧縮成形によって加工することができる。熱硬化性ポリウレタンは、反応射出成形、圧縮成形またはスピンキャスティングによって加工することができる。円筒形の中空管の寸法は、決定可能であり、精密に調整することができる。
【0053】
ポリウレタン系ポリマーは、多官能性ポリオール、イソシアネートおよび連鎖延長剤から合成される。それぞれのポリウレタンの特徴は、その構造に起因し得る。
【0054】
熱可塑性ポリウレタンは、マクロジオール、ジイソシアネートおよび二官能性連鎖延長剤から作成される(参照によりそれらの全文が本明細書に援用される、米国特許第4,523,005号および同第5,254,662号)。マクロジオールは、軟質の(soft)ドメインを構成する。ジイソシアネートおよび連鎖延長剤は硬質の(hard)ドメインを構成する。硬質のドメインは、ポリマーの物理的な架橋部位としてとして役割を果たす。これらの2種類のドメインの比を変化させることにより、ポリウレタンの物理的特徴を変えることができる。
【0055】
熱硬化性ポリウレタンは、多官能性(二官能性より多い)ポリオールおよび/またはイソシアネートおよび/または連鎖延長剤から作成することができる(参照によりそれらの全文が本明細書に援用される、米国特許第4,386,039号及び同第4,131,604号)。熱硬化性ポリウレタンはまた、ポリマー鎖および適切な架橋剤および/または開始剤に不飽和結合を導入して化学架橋を行うことによっても作成することができる(参照によりその全文が本明細書に援用される、米国特許第4,751,133号)。架橋部位の量およびそれらの分布を制御することにより、活性物質の放出速度を制御することができる。
【0056】
所望の特性に応じてポリオールの主鎖を変更することによって、様々な官能基をポリウレタンポリマー鎖に導入することができる。デバイスが水溶性の薬物の送達に使用される場合、親水性のペンダント基、例えばイオン基、カルボキシル基、エーテル基、およびヒドロキシ基などをポリオールに組み込んで、ポリマーの親水性を増加させる(参照によりそれらの全文が本明細書に援用される、米国特許第4,743,673号および同第5,354,835号)。デバイスが疎水性の薬物の送達に使用される場合、疎水性ペンダント基、例えばアルキル基、シロキサン基などをポリオールに組み込んで、ポリマーの疎水性を増加させる(参照によりその全文が本明細書に援用される、米国特許第6,313,254号)。活性物質の放出速度はまた、ポリウレタンポリマーの親水性/疎水性により制御することもできる。
【0057】
1種類以上の離型剤は、所望により本明細書に記載される埋め込み可能な薬物送達デバイスのポリマーに含められる。カートリッジが型を用いて製造される実施形態に関して、例えば、カートリッジを型から取り出すのに役立つように、1種類以上の離型剤が所望によりカートリッジのポリマーマトリックス中に存在する。
【0058】
離型剤は、一般に、成形品を型から効果的に開放させる能力のある化合物である。本明細書に記載されるデバイスに関して、離型剤は、一般に、重合可能な反応媒質と、該重合可能な材料を型に導入する前に組み合わされる。
【0059】
埋め込み可能なデバイスでの使用に適した離型剤は、患者への導入に対して安全であり、成形品のポリマーと例えば、物品の構造の弱体化を引き起こすことにより不利に反応せず、かつ、所望によりポリマーカートリッジを滅菌の有害作用から保護する。理論に縛られるものではないが、分子量のより大きい離型剤のほうが、分子量のより小さい離型剤によりもたらされる放出特性よりも改良された放出特性をもたらすと考えられる。したがって離型剤は、約1000を超える分子量(MW)を有してよい。他の実施形態では、離型剤は、約1200を超える、約1000〜約2000、または約1200〜約1800の間のMWを有する。
【0060】
適した離型剤には、非イオン性界面活性剤が含まれる。一部の実施形態では、例えば、離型剤は、ビタミンE TPGSである。ビタミンE TPGSは、D−α−トコフェロール(ビタミンE)ポリエチレングリコール1000コハク酸エステルの略語である。非イオン性界面活性剤離型剤は、優れた開放特性を提供し、成形品と非反応性であると同時にインプラントに適した安全性プロフィールを提供する。これらの離型剤は、その上、抗酸化剤またはフリーラジカルスカベンジャーとしての役割を果たすことができ、そのために、成形品の滅菌、特に放射線照射法を含むフリーラジカルを生成し得る滅菌方法に関連する成形品への有害作用を阻止または低減することができる。特定の実施形態では、離型剤は所望のモノマー混合物に溶解する。親水性モノマー材料、例えばHEMA、HPMAおよびHBMAの組合せなどは、成形プロセスの間に、両親媒性離型剤、例えばビタミンE TPGSなどと組み合わせて使用することができる。
【0061】
非イオン性界面活性剤は、当技術分野で公知であり、一般にポリエチレングリコール親水性尾部および親油性頭部からなってよい。例えばビタミンE TPGSに関して、親油性頭部は、トコフェロールコハク酸エステルであり、Triton X−100に関して、それはイソオクチルフェニル基である。非イオン性界面活性剤は、いくつかのパラメータ、例えば、ポリエチレングリコール尾部の親油性頭部に対するサイズに関連する親水性−親油性バランス(HLB);ミセルが形成される界面活性剤の濃度である、臨界ミセル濃度(CMC);および、同様の特性をもつその他の界面活性剤に対する、親水性部分および親油性部分のサイズを表す、MWにより特徴付けることができる。その上、CMCは界面活性剤の表面活性を示し、低いCMCは、より強い結合力のためにより安定したミセルを示す。下の表は、いくつかの界面活性剤およびその物理的特性を記載する。
【0062】
【表1】
【0063】
埋め込み可能なデバイスと組み合わせて使用するためのさらなる離型剤としては、限定されるものではないが、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(5)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(etheylene)(20)ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン(10)イソオクチルフェニルエーテルなど、またはこれらの離型剤の組合せが挙げられる。
【0064】
ある種の実施形態では、離型剤は、脂肪酸またはその他の疎水性化合物のポリオキシエチレンエステルである。これらの化合物は、当技術分野で公知であり、ポリオキシエチレン尾部および飽和もしくは不飽和疎水性頭部を含む。様々な実施形態の疎水性部分には、任意の芳香族基含有部分または多環式芳香族部分、例えば、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、トコフェロール、ビタミンEなどが含まれてよく、イソプレノイドであっても非イソプレノイドであってもよい。これらの芳香族部分に結合する側鎖は任意の長さであってよく、その上に任意の数の二重結合および/または置換を含むことができる。例えば、非イオン性界面活性剤としては、限定されるものではないが、任意のイソ型、ラセミ化合物、または化学修飾された誘導体を含む天然に存在するかまたは商業的に製造されるトコフェロール、例えば、ビタミンE TPGSなどを挙げることができる。トコフェロールとしては、トコフェロールの酸化生成物、例えばα−トコフェロール、トコフェロールキノン、トコフェロールヒドロキノン、エポキシトコフェロール、およびニトロトコフェロールの酸化生成物なども挙げることができる。
【0065】
小型の円筒状の形状のインプラントは、そのコアの内部に、オクトレオチド、例えば酢酸オクトレオチド、および必要により製薬上許容される担体を含有することができる。インプラントの膜厚(内側表面と外側表面との間の厚さ)は、実質的に均一であり、収容される薬剤の放出のための速度制御バリアとしての役割を果たす。かかるインプラントは、可塑化されるかまたは水和されて、様々な医学的適用で使用するためのその他の幾何学的に成形された物品に再形成することができる。
【0066】
埋め込み可能な処方物の製造では、いくつかの要因が考慮され得る。放出プロフィール(遅延時間、放出速度、および持続時間)を決定し、親水性ポリマー材料を特定し、そして、処方物を通しての(速度制御膜としての)活性薬剤の拡散率を測定する。所与活性薬剤に対する速度制御膜の水和プロフィールは、選択されるポリマーのフィルムを調製し、当技術分野で公知のように、2区画の垂直ガラスセルを用いてそれを拡散試験に供することにより、容易に決定することができる。
【0067】
拡散開始時の拡散係数および含水量(それより低いと実質的に拡散は起こらない−以降、「%Hd」)を決定する。一連の膜を、様々なポリマーから調製する。次に、それらの最大収容能力まで膜を水和し、それらのEWCを測定する。完全に水和した膜を、測定するための2区画の垂直ガラスセルに入れ、膜材料を通した高分子組成物の拡散を様々なEWCでプロットする。それを通して拡散が検出されない(例えば、活性薬剤が全くレセプターセルに拡散しない)、最も水和した膜のEWCが、試験される系の%Hdである。これは、透過性のEWCに対する曲線をプロットすることにより達成することができる。
【0068】
透過性の結果(拡散係数)は、フィックの拡散に関する第一法則に従って、次の方程式を用いることにより得られる。
【0069】
【数2】
【0070】
〔式中、dQ/dtは、膜材料を通した流量(μg/時)であり;それは累積輸送の時間に対する曲線の直線部分の傾きとして測定され;Aは、膜の面積(cm2)であり;Pは、膜の透過係数(cm2/時)であるか、またはDKdであり、Dは、膜の拡散率(cm2/時)であり、Kdは、膜/ドナー溶液の分配係数であり;lは、実験の終わりに測定される膜厚(cm)であり;かつ、Cdは、ドナー溶液の濃度(μg/cm3)である〕
【0071】
次に、放出遅延プロフィールを決定することができる。別の一連のポリマー膜を、この場合もやはり架橋剤およびモノマーの量を変化させて、調製してよい。次に、これらの膜を水和させるが、ほんの一部分、例えば、%Hd未満かまたはそれに等しい含水量まで水和させる。部分的に水和させた膜を、測定するための2区画の垂直ガラスセルに入れて、膜を通した活性化合物の拡散を時間に対してプロットする。ドナーセルおよびレセプターセルの緩衝液は、部分的に水和した膜に接触し、さらに送達環境で膜が水和する速度とほぼ同じ速度で膜を水和するように選択することができる。拡散実験の開始時点、すなわち活性薬剤をドナーセルに添加する時点と、レセプターセル中の活性薬剤の薬剤的に有効な濃度の検出時点との間の時間が、ポリマーと初期水和率のその組合せに対する放出遅延時間である。
【0072】
円筒状の形状のデバイスの物理的寸法を決定するため、送達される予定の活性薬剤の総量を決定する。これは、所望の1日投与量と送達の持続時間の積である。好ましい実施形態では、送達の持続時間は、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約6ヶ月、または約2年までである。所望の1日投与量は、例えば、1日あたり約10〜約1000μgのオクトレオチド、約1日あたり20〜約800μgのオクトレオチド、1日あたり約75〜約300μgのオクトレオチド、または1日あたり約30〜約300μgのオクトレオチドであってよい。
【0073】
円筒状の形状のデバイスの円筒状のリザーバ(コア)の容積は、Πri2hに等しく、この際、riは、リザーバの半径であり、hはその高さである。シリンダーからの定常状態での放出のための式は:
【0074】
【数3】
【0075】
〔式中、roは、円筒状のデバイスの外側半径であり;かつ、Cdは、ドナー溶液、すなわち担体中の薬物の濃度である〕である。定常状態での放出は、Cdが飽和状態で維持されているときに得られる。所望の持続放出に必要な膜の厚さは、そのため、ro−riとなる。
【0076】
用いる活性薬剤の量は、所望の日用量だけでなく、用量レベルを維持する日数にも依存する。この量は経験的に算出することができるが、送達される実際の用量は、デバイスに用いる場合、材料および担体との任意の相互作用の関数である。
【0077】
ひとたび適切なポリウレタンポリマーが選択されれば、円筒状の形状のインプラントを作製するための最善の方法は、本明細書に記載されるような好適な送達特性を達成するように当業者が決定することができる。
【0078】
熱可塑性ポリウレタンに関して、精密な押出および射出成形を用いて、2つの開口末端をもつ一貫した物理的寸法の中空管を製造することができる。リザーバは、活性薬剤(「活性物質」)および担体を含有する適切な処方物を自由に装入してもよいし、予め加工されたペレットで満たして活性物質を最大限に装入してもよい。2つの開口末端を密封するため、予め加工された2つの末端プラグを使用してよい。密封工程は、熱または溶媒あるいは好ましくは永久的に両端を密封するための任意のその他の手段の適用により達成してよい。
【0079】
熱硬化性ポリウレタンに関して、精密な反応射出成形またはスピンキャスティングを硬化機構に応じて使用することができる。反応射出成形は、硬化機構が熱によって実施される場合に使用され、スピンキャスティングは、光および/または熱によって実施される場合に使用される。1つの開口末端をもつ中空管は、例えば、スピンキャスティングにより製造することができる。2つの開口末端をもつ中空管は、例えば、反応射出成形により製造することができる。リザーバは、熱可塑性ポリウレタンと同じ方法で装入されてよい。
【0080】
適切な光開始および/または熱開始熱硬化性ポリウレタン処方物を用いて開口部を塞ぐことができる。この処方物は、光および/または熱によって硬化され、それにより事前に開口末端を密封する。適切な光開始および/または熱開始熱硬化性ポリウレタン処方物を予め加工された末端プラグと開口末端との間の界面に適用することにより、予め加工された末端プラグを用いても開口末端を密封することができる。このプラグは、光および/または熱若しくは任意のその他の両端部を密封する手段によって、好ましくは永久に、硬化することができる。固体の活性薬剤および任意選択の担体を、ペレット形態に圧縮して、活性物質を最大限に装入することができる。
【0081】
インプラントの外部表面積、例えば、ポリマーカートリッジすなわち中空管の外部表面積は、変動し得る。一部の実施形態では、ポリマーカートリッジの表面積は、約350cm2〜約1500cm2の表面積を有し得る。水和インプラントと、キセロゲル(例えば、非水和または乾燥)インプラントは、異なる寸法を有し、そのために、異なる表面積を有する。一部の実施形態では、離型剤は、より大きなインプラントデバイスの調製物中で使用される。キセロゲルの、非水和または乾燥、インプラントは、例えば約350cm2またはそれ以上の表面積を有してよい。あるいは、キセロゲルの、非水和または乾燥インプラントは、約350cm2〜約1500cm2、または約350cm2〜約600cm2の表面積を有してよい。乾燥インプラントは、例えば、378cm2〜660cm2の表面積を有してよい。その上、水和インプラントは、約500cm2またはそれ以上の表面積を有してよい。あるいは、水和インプラントは、約600cm2〜約1500cm2、または約600cm2〜約800cm2の表面積を有してよい。本明細書において、用語「水和インプラント」とは、含水量が5%(重量)、またはそれ以上であり、従って軟質で柔軟なインプラントをさす。本明細書において、「乾燥インプラント」とは、硬質で柔軟性のない、一部の実施形態では5%(重量)未満、その他の実施形態では1%(重量)未満の含水量を有するインプラントをさす。
【0082】
埋め込み可能なデバイスは、当技術分野で公知の任意の適した手段により、例えば、穿孔処理により(皮下埋め込み用)またはその他の手段により、例えば、開腹手術(open surgery)によりヒトまたはその他の動物の皮下に挿入されてよい(米国特許第5,266,325号、デバイスを埋め込むために使用することのできる方法およびデバイスの例を開示する;米国特許第5,266,325号の全内容は、参照により本明細書に援用される)。埋め込み可能なデバイスは、ヒトまたは動物の皮下に、例えば穿孔処理により挿入されてよい。その上、2つ以上のデバイスを、一度に、例えば、実質的に同時にヒトまたは動物に埋め込んで、複数のデバイスがヒトまたは動物にインプラントとして存在するようにすることができる。従って、一部の実施形態では、少なくとも1つのデバイスがヒトまたは動物に埋め込まれる。あるいは、複数のデバイスを順次に埋め込んで、常に一つのデバイスだけがヒトまたは動物に存在するようにすることができる。
【0083】
埋め込みの前に、埋め込み可能な処方物は、必要に応じて所定の期間水和する、すなわち「プライミングする(priming)」ことができる。プライミングは、活性成分がヒドロゲルの壁に浸透し、飽和し始め、さらに、インプラントをプライミングする時間の量に応じて埋め込みの前にヒドロゲルから潜在的に浸出し始めさせることを可能にすることができる。プライミングしたインプラントは、活性成分を実質的に埋め込みによって放出し始め、結果として埋め込みのすぐ後に薬物のピーク放出をもたらすことができる。対照的に、少ししかプライミングされていないか全くプライミングされていない状態では、インプラントが水和した状態になり有効成分が放出され始めるまでの時間、埋め込みによって活性成分が実質的に放出されないという結果になり得る。これらのプライミング特性は、使用される具体的な処方物によって決まる。
【0084】
活性成分の種類(親水性または疎水性)によって、適切なコンディショニングおよびプライミング媒体が選択される。水系媒体は、親水性の活性物質に好ましく、油系媒体は、疎水性の活性物質に好ましい。あるいは、特定のインプラントは、埋め込みの前にプライミングされる必要がない。一部の例では、プライミングは、活性薬剤の送達を制御された様式で改良するが、その他の例では、被験体への埋め込みの前のプライミングは、インプラントをプライミングするために必要な追加された時間および煩わしさを正当化するほど送達に影響を及ぼさない。
【0085】
本発明の実施に有用な水和液は、一般に活性化合物が放出されることになる環境、例えば、体液、滅菌水、涙液、生理食塩水溶液、リン酸緩衝溶液などを模した液体である。水以外の液体が水和液として有用であるが、親水性の膜が水和する程度は、その「含水量」と呼ばれる。
【0086】
薬物送達デバイスのプライミングおよびコンディショニングは、リザーバを取り巻くポリマーの中に活性物質(薬物)を装入し、従ってインプラントを実際に使用する前に活性物質の損失を防ぐことを伴う。コンディショニングおよびプライミング工程に用いる条件は、活性薬剤、それが実施される温度および媒体によって決まる。コンディショニングおよびプライミングのための条件は、一部の例で同じであってよい。
【0087】
薬物送達デバイスの作製プロセス中のコンディショニングおよびプライミング工程は、具体的な薬物の所定の放出速度を得るために行われる。親水性薬物を含有するインプラントのコンディショニングおよびプライミング工程は、水性媒体中、例えば生理食塩水中で行うことができる。疎水性薬物については、媒体は、例えば、シクロデキストリンを含む、血漿様媒体とすることができる。コンディショニングおよびプライミング工程は、3つの具体的な要因、すなわち温度、媒体および期間を制御することにより実施される。
【0088】
薬物送達デバイスのコンディショニングおよびプライミング工程が、デバイスが入れられる媒体により影響されることを当業者は理解するであろう。
【0089】
薬物送達デバイスのコンディショニングおよびプライミングの用いる温度は、広い温度範囲にわたって変動する可能性があるが、一部の実施形態では、37℃が用いられる。
【0090】
薬物送達デバイスのコンディショニングおよびプライミングに用いられる時間は、具体的なインプラントまたは薬物に望ましい放出速度に応じて、約1時間から、約1〜約12時間、約2〜約24時間、約1日、または数週まで、例えば6週まで、様々であり得る。
【0091】
インプラントをコンディショニングおよびプライミングする工程は、適切であるかまたは必要である場合、インプラントの内部に収容される薬物の放出速度を最適化させるためのものであることを当業者は理解するであろう。そのようなものとして、薬物送達デバイスのコンディショニングおよびプライミングに費やす時間が短いほど、例えば、長いコンディショニングおよびプライミング工程を受けた同様の薬物送達デバイスと比較して、薬物の放出速度が遅くなり得る。しかし、プライミングしないと、意外にも、より長い期間(例えば、28週およびそれ以上)にわたり効果的な放出が起こることが見出され、より低い有効成分の血清濃度が改善効果を有することが見出された。
【0092】
コンディショニングおよびプライミング工程中の温度も放出速度に影響を及ぼし得て、低い温度のほうが、高い温度で処置を受けた同様の薬物送達デバイスと比較した場合に、薬物送達デバイスに含められる薬物の放出速度が遅くなる。同様に、水溶液、例えば生理食塩水の場合、該溶液の塩化ナトリウム含量が、薬物送達デバイスの放出速度を決定する。より具体的には、塩化ナトリウム含量の高いコンディショニングおよびプライミング工程を受けた薬物送達デバイスと比較した場合に、塩化ナトリウムの含量が低いほど薬物の放出速度が高くなり得る。
【0093】
インプラントの位置を特定するため、放射不透過性材料をリザーバの中に挿入することにより、またはカートリッジを密封するために使用される末端プラグの中に放射不透過性材料を入れることにより、放射不透過性材料を送達デバイスに組み込んでよい。
【0094】
本発明の処方物は、製薬上許容される担体を含んでよく、担体には、例えば、懸濁媒体、溶媒、水系および固体基質またはマトリックスが挙げられる。担体として有用な懸濁媒体および溶媒としては、例えば、油類、例えば、シリコーン油(特に医療等級のもの)、トウモロコシ油、ヒマシ油、ピーナッツ油およびゴマ油;ヒマシ油とエチレンオキシドの縮合生成物;低分子量脂肪酸の液体グリセリルトリエステル類;低級アルカノール類;グリコール類;およびポリアルキレングリコール類が挙げられる。水系としては、例えば、滅菌水、生理食塩水、デキストロース、水または生理食塩水中のデキストロースなどが挙げられる。水系に電解質が存在すると、水系中の高分子薬物の溶解度を低下させる傾向があり得る。固体基質またはマトリックスとしては、例えば、デンプン、ゼラチン、糖類(例えば、グルコース)、天然ゴム類(例えば、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム)、修飾されたセルロース類(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、加工デンプン、架橋ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。一部の実施形態では、本医薬処方物は、約2%〜約20%(例えば、約10%)のヒドロキシプロピルセルロースをさらに含む。
【0095】
また、担体は、アジュバント;保存剤、安定化剤、湿潤剤および乳化剤など;あるいはその他の補形剤、例えば、流動促進剤(glidant)、溶解剤、界面活性剤、希釈剤、結合剤、崩壊剤、および/または滑沢剤なども含むことができる。一部の実施形態について、例えば、担体は、補形剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、植物性ステアリン、タルクまたはシリカを含む。
【0096】
一部の実施形態では、本医薬処方物は、HEMAとHPMAのコポリマー、例えば約20%のHEMAと約80%のHPMAの混合物中に酢酸オクトレオチドの処方物を含む。本医薬処方物は、例えば、約20〜約150mgのオクトレオチド、約40〜約120mg、または約40〜約90mgのオクトレオチドを含むことができる。一部の実施形態では、例えば、本医薬処方物は、約50mgのオクトレオチド、または約85mgのオクトレオチドを含む。本処方物は、約2%〜約20%の間の補形剤をさらに含むことができる。本処方物はまた、約10%のヒドロキシプロピルセルロースおよび/または約2%のステアリン酸マグネシウムを含むことができる。
【0097】
医薬処方物は、例えば、HEMAとHPMAのコポリマー、例えば、約40%のHEMAと約60%のHPMAの混合物中の約83mgのオクトレオチドの処方物を含むことができる。さらなる実施形態では、本処方物は、さらに約10%のヒドロキシプロピルセルロースおよび2%のステアリン酸マグネシウムを酢酸オクトレオチドとともに含む。
【0098】
また、医薬処方物は、ポリウレタン系ポリマー中約20mg〜約150mg、約40〜約120mg、または約40mg〜約90mgのオクトレオチドの処方物を含むことができる。
【0099】
疾患または障害を治療する、またはその症状を軽減する方法、例えば、ホルモン障害に関連する疾患、例えばGHまたはIGF−1ホルモン障害またはその症状を治療する方法、が提供される。この方法には、オクトレオチドを、それを必要とする被験体に、被験体に投与されるオクトレオチドの用量が約0.8ng/mL〜約1.8ng/mLの範囲のオクトレオチド血清レベルをもたらすように、あるいは被験体に投与されるオクトレオチドの用量が約1.3ng/mLよりも低くなるCmaxを有するオクトレオチド血清レベル、または約1.0ng/mLよりも低くなるCmaxを有するオクトレオチド血清レベルをもたらすように投与することが含まれ得る。一部の実施形態では、本明細書に記載される少なくとも1つの埋め込み可能なデバイスは、それを必要とする被験体に埋め込まれ、そのデバイスはオクトレオチドを被験体に実質的にゼロ次放出プロフィールで長期間にわたり、例えば6ヶ月以上にわたり、送達する。そのデバイスは、皮下に、水和状態または乾燥状態で埋め込むことができる。そのデバイスはまた、親水性ポリマーに収容されたオクトレオチド含有調製物を含んでよく、親水性ポリマーは1以上のポリウレタン系ポリマー、または1以上のメタクリレート系ポリマーを含んでよい。一部の実施形態では、オクトレオチドの放出の遅延が観察され、それは埋め込みの日から約1日またはそれ以上持続する。
【0100】
一部の実施形態では、オクトレオチドを、実質的にゼロ次放出プロフィールで長期間、但し6ヶ月以上にわたって、それを必要とする被験体に送達するための方法が提供され、その方法は、障害を治療するかまたはその症状を軽減するために効果的な用量のオクトレオチドを被験体が毎日少なくとも約6ヶ月の期間にわたって投与されるように、親水性ポリマーに入れられたオクトレオチド含有調製物を含む少なくとも1つの埋め込み可能なデバイスを、それを必要とする被験体の皮下に乾燥状態で埋め込むことを含む。
【0101】
この方法はまた、オクトレオチドを投与すること、それにより、例えば、GHおよび/またはIGF−1を低下させること、および、定常状態でのオクトレオチドの血漿中濃度を約0.1ng/mL〜約9ng/mLの間で長期間、例えば、少なくとも約2ヶ月、約6ヶ月、約1年まで、少なくとも約12ヶ月すなわち1年の間、および/または約2年まで維持することが含まれ得る。定常状態でのオクトレオチドの血漿中濃度は、例えば、約1ng/mL〜約4ng/mLの間、約1ng/mL〜約2ng/mLの間、または約1.2ng/mL〜約1.6ng/mLの間で、長期間、例えば少なくとも約2ヶ月、および約6ヶ月、および約2年まで維持することができる。ホルモン障害には、例えば、先端巨大症が含まれる。
【0102】
本発明はさらに、本明細書に記載される少なくとも1つのインプラント、2つのインプラント、あるいは2以上のインプラントを投与することを含む、先端巨大症を治療する方法に関する。投与されるそれぞれのインプラントは、約20〜約150mgのオクトレオチド、約40〜約90mgのオクトレオチド、または約50mgのオクトレオチドを含むことができ、治療有効量のオクトレオチドを少なくとも2ヶ月、約6ヶ月、または約2年までの期間にわたって放出することができる。
【0103】
本発明はさらに、カルチノイド腫瘍、VIP産生腫瘍、および神経内分泌腫瘍に関連する症状、例えば、重度の下痢、水様下痢、および潮紅などを治療する方法に関し、ならびにカルチノイド症状群を治療する方法に関する。本発明はさらに、化学療法およびAIDSに関連する症状を治療する方法に関する。
【0104】
カルチノイド腫瘍は通常、虫垂、気管支、結腸、または小腸に現れ、血管の拡張を引き起こす化学物質−例えばセロトニンなどを分泌する。血管拡張は、通常カルチノイド腫瘍に観察される症状、例えば下痢、潮紅、および喘息などの原因であり得る。カルチノイド腫瘍により分泌されるホルモンおよび生化学物質によって、まとめてカルチノイド症状群として公知の、多数の症状が存在する。生化学的に、カルチノイド腫瘍を持つ人々は、アミノ酸トリプトファンをベースとして用いてより多くのセロトニンを産生する傾向がある。セロトニンは、身体内でさらに分解されて5−ヒドロキシインドール酢酸(5−HIAA)を産生し、それはそのような患者の尿中に見られる。
【0105】
本発明はまた、治療有効量のオクトレオチドを少なくとも約2ヶ月、約6ヶ月および約2年まで放出する、オクトレオチドの埋め込み可能な処方物を投与することによる、カルチノイド腫瘍に関連する水様下痢、重度の下痢および潮紅症状の発現を治療する方法にも関する。
【0106】
本発明はまた、増殖性糖尿病性網膜症、酒さ、膵炎、消化管出血、膵瘻および腸瘻、グレーブス眼症およびバセドウ眼症、緑内障、および血管新生に関連する角膜疾患からなる群から選択される状態を治療する方法にも関し、該方法は親水性ポリマーに収容されたオクトレオチド含有調製物を含む少なくとも1つの埋め込み可能なデバイスを皮下に乾燥状態で埋め込むことを含み、オクトレオチド含有調製物ではなく親水性ポリマーは、ビタミンE TPGSをさらに含む。
【0107】
本明細書に記載される処方物は、インプラントの治療効果を最大化すると同時に有害な副作用を最小化する、特定の望ましい放出プロフィールを提示する。所望の放出プロフィールは、薬物または活性薬剤の最大血漿中濃度(Cmax)および定常状態での薬物または活性薬剤の血漿中濃度(Css)で表すことができる。例えば、処方物の投与によって被験体の受け取るオクトレオチドの用量は、Cmaxが約1.3ng/mLよりも低い被験体のオクトレオチド血清レベルをもたらすか、または、Cmaxが約1.0ng/mLよりも低いオクトレオチド血清レベルをもたらす用量となる。
【0108】
また、本発明は、埋め込みによって、オクトレオチドが、約0.1ng/mL〜約9ng/mL、約0.5ng/mL〜約1ng/mL、約1ng/mLおよび約4ng/mL、約1ng/mL〜約2ng/mL、または約1.2ng/mL〜約1.6ng/mLのCssを提供および/または維持する速度で放出される、ヒドロゲルおよびオクトレオチドの治療組成物に関する。さらなる実施形態は、埋め込みによって、オクトレオチドが、長期間にわたって1日あたり約10μg〜約1000μg、例えば、1日あたり約20μg〜約800μg、約30μg〜約800μg、約75μg〜約300μgまたは1日あたり約30μg〜約300μgの速度で放出される、ヒドロゲルおよびオクトレオチドの治療組成物である。オクトレオチドは、少なくとも約2ヶ月、約6ヶ月、少なくとも約12ヶ月すなわち1年、または約2年まで期間にわたって放出することができる。ヒドロゲルは、メタクリレート系ポリマーまたはポリウレタン系ポリマーを含むことができる。
【0109】
その他の実施形態は、オクトレオチドおよび親水性ポリマーを含む放出制御処方物(例えば、親水性ポリマーに収容されたオクトレオチド含有調製物を含む放出制御処方物)であり、この放出制御処方物は、1日あたり約30μg〜約800μgの速度で少なくとも約2ヶ月、約6ヶ月、約1年、少なくとも12ヶ月すなわち1年、または約2年にわたりインビトロでオクトレオチドの放出を許容するうえで効果的である。一部の実施形態では、送達は、1日あたり約100μg〜約250μg、または1日あたり約100μg〜約130μgである。さらなる実施形態では、処方物の親水性ポリマーは、インビトロで1日あたり約100μgの平均速度でオクトレオチドの放出を許容する。一部の実施形態では、放出制御処方物は、少なくとも1000の分子量(MW)を有する離型剤をさらに含む。親水性ポリマーは、ポリウレタン系ポリマーおよびメタクリレート系ポリマーから選択することができる。
【0110】
本発明のさらなる実施形態は、親水性ポリマー、例えば、ポリウレタン系ポリマーおよびメタクリレート系ポリマーなどに収容されたオクトレオチド含有調製物を含む埋め込み用の放出制御処方物に関し、前記放出制御処方物は、インビボで約6ヶ月にわたり1日あたり約30μg〜約800μgの速度でオクトレオチドの放出を許容するうえで効果的であり、オクトレオチド含有調製物でなくて親水性ポリマーは、少なくとも1000の分子量(MW)を有する離型剤をさらに含む。
【0111】
本発明のなおさらなる実施形態は、オクトレオチドを含む埋め込みのための放出制御処方物であり、この処方物は、約6週間後に処方物からの約20%以下のオクトレオチドのインビトロ放出;および、約6ヶ月後に処方物からの約60%のオクトレオチドのインビトロ放出を許容するうえで効果的なオクトレオチドを親水性ポリマー中に含む。
【0112】
本発明の医薬組成物に含められる製薬上許容されるオクトレオチド(例えば、その様々な塩、溶媒和状態(salvation states)、またはプロドラッグ)の量は、多様な要因によって変化し、それには、例えば、用いる具体的なオクトレオチド、所望の投薬レベル、用いるヒドロゲルの種類および量、ならびに、組成物に含められる追加の材料の存在、種類および量が含まれる。処方物中のオクトレオチドまたはその誘導体の量は、化合物の効果的な薬物送達のための所望の用量、化合物の分子量、および化合物の活性によって変化する。用いる薬物の実際量は、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、疾患または任意のその他の医学的判定基準によって変化し得る。実際の薬物量は、当技術分野で公知の技法により意図される医学的用途に従って決定される。本発明に従って処方された医薬品投薬量は、主治医に決定されるとおり例えば約6ヶ月ごとに1回投与することができる。
【0113】
オクトレオチドは、インプラントまたはその他の医薬組成物中に、約20mg〜約150mg、例えば、約40〜約120mgのオクトレオチド、約40〜約90mgのオクトレオチド、または約50〜約85mgの量で処方されてよい。成人に関して、先端巨大症の治療のための日用量は、一般に1日あたり約300μg〜約600μgの即時放出オクトレオチド(100μgまたは200μgのSandostatin(登録商標))である。組成物中のオクトレオチドの量は、例えば、長期間にわたって1日あたり約10μg〜約1000μg、1日あたり約20μg〜約800μg、または1日あたり約30μg〜約300μgを放出する様に選択することができる。そのような放出速度は、長期間にわたり約0.1〜約9ng/mLの患者の血液中の望ましい治療レベルを維持する。
【0114】
オクトレオチドが含められているヒドロゲルデバイスは、患者の血漿中へのオクトレオチドの放出制御を提供する。本発明の医薬組成物における使用のためのオクトレオチドの放出速度を制御するために適したヒドロゲルには、親水性モノマーのポリマーが含まれ、それには、限定されるものではないが、HPMA、HEMAなどが挙げられる。そのようなヒドロゲルはまた、オクトレオチドの分解およびその組成物からの損失を防ぐ能力がある。
【0115】
医薬処方物は、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとヒドロキシプロピルメタクリレートの親水性コポリマーの中に酢酸オクトレオチドを含んでよい。本医薬処方物のコポリマーは、例えば、約20%のHEMAおよび約80%のHPMAを含んでよい。本医薬処方物のコポリマーは、あるいは、例えば、約40%のHEMAおよび約60%のHPMAを含んでよい。
【0116】
インプラントのサイズ、形状および表面積を変更して、インプラントからのオクトレオチドの放出速度を増加または低下させることができる。
【0117】
本医薬組成物には、助剤または補形剤、例えば、流動促進剤、溶解剤、界面活性剤、希釈剤、低温溶融結合剤を含む結合剤、崩壊剤および/または滑沢剤も含まれてよい。溶解剤は、投薬処方物からのオクトレオチドの溶解速度を増加させ、オクトレオチドの溶解度を増大させることにより機能することができる。適した溶解剤としては、例えば、クエン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸、酢酸、リンゴ酸、グルタル酸およびアジピン酸などの有機酸が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし組み合わせて用いてもよい。これらの物質は、緩衝系を作るために、該酸の塩と組み合わせてもよい(例えばクエン酸ナトリウムとクエン酸)。
【0118】
オクトレオチドの治療上有効な血漿中濃度プロフィールの溶解および確立の際の微小環境のpHを変更することのできるその他の物質には、無機酸の塩および水酸化マグネシウムが含まれる。使用することのできるその他の物質は、界面活性剤およびその他の可溶化材料である。本発明の医薬組成物での使用に適した界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ポリエチレン、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、安息香酸ベンジル、セトリミド、セチルアルコール、ドクサートナトリウム、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、レシチン、中鎖トリグリセリド、モノエタノールアミン、オレイン酸、ポロキサマー、ポリビニルアルコールおよびソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0119】
本明細書に記載される医薬組成物での使用に適した希釈剤としては、例えば、製薬上許容される不活性増量剤、例えば、微晶質セルロース、ラクトース、スクロース、フルクトース、グルコースデキストロース、またはその他の糖類、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、セルロース、エチルセルロース、セルロース誘導体、カオリン、マンニトール、ラクチトール、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、またはその他の糖アルコール類、乾燥デンプン、サッカリド、デキストリン、マルトデキストリンまたはその他の多糖類、イノシトールあるいはそれらの混合物などが挙げられる。希釈剤は、水溶性希釈剤であってよい。希釈剤の例としては、例えば、FMC Corporationより入手可能なAvicel PH112、Avicel PH101およびAvicel PH102などの微晶質セルロース;ラクトース一水和物、無水ラクトース、およびPharmatose DCL21などのラクトース;Penwest Pharmaceuticalsより入手可能なEmcompressなどの第二リン酸カルシウム;マンニトール;デンプン;ソルビトール;スクロース;ならびにグルコースが挙げられる。希釈剤は、具体的な組成物に合わせるために圧縮特性に注意を払って慎重に選択される。希釈剤は、放出制御組成物の約2%〜約80重量%、例えば、約20%〜約50重量%の量で使用することができる。
【0120】
流動促進剤は、加工の間の流動性および成分の圧縮性を改良するために使用される。適した流動促進剤としては、例えば、コロイド状二酸化ケイ素、例えば、四塩化ケイ素などのケイ素化合物の、例えば、気相加水分解により調製することのできるサブミクロンのヒュームドシリカが挙げられる。コロイド状二酸化ケイ素は、Cabot Corporation(商品名:Cab−O−Sil(登録商標));Degussa,Inc.(商品名:Aerosil(登録商標));およびE.I.DuPont & Co.を含む多数の供給源から市販されているサブミクロンの非晶質粉末である。コロイド状二酸化ケイ素は、数ある中で、コロイド状シリカ、ヒュームドシリカ、軽質無水ケイ酸、無水ケイ酸およびヒュームド二酸化ケイ素としても公知である。一実施形態では、流動促進剤は、Aerosil(登録商標)200を含む。
【0121】
本発明の医薬組成物での使用に適した崩壊剤としては、例えば、デンプン、グリコール酸ナトリウムデンプン、クロスポビドン、クロスカルメロース、微晶質セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、メタクリル酸カリウム−ジビニルベンゼンコポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、チラミド(thylamide)、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、デンプン誘導体、デキストリン、βシクロデキストリン、デキストリン誘導体、酸化マグネシウム、クレイ、ベントナイトおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0122】
活性成分、例えば、オクトレオチドまたはその塩は、製薬上許容され、かつ活性成分に適合する補形剤とともに、本明細書に記載される治療方法での使用に適した量で混合することができる。当業者に公知であるように様々な補形剤をオクトレオチドと均一に混合することができる。例えば、オクトレオチドは、限定されるものではないが、微晶質セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、ラクトース、デンプン、ソルビトール、シクロデキストリンおよびそれらの組合せなどの補形剤と混合するかまたは組み合わせることができる。
【0123】
本発明の医薬組成物での使用に適した滑沢剤には、圧縮されるべき粉末の流動性に作用する薬剤が含まれ、それには、限定されるものではないが、二酸化ケイ素、例えば、Aerosil(登録商標)200、タルク、シリカ、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、植物性ステアリン、硬化植物油、安息香酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシンカーボワックス、ラウリル硫酸マグネシウム、およびモノステアリン酸グリセリルなどが挙げられる。
【0124】
本発明は、さらに、有効量のオクトレオチドをヒドロゲル中に含み、かつ、患者への投与によって、または治療計画の一部として、少なくとも約2ヶ月、約6ヶ月または約2年までの期間にわたる(オクトレオチドの治療上有効な血漿レベルの)放出プロフィールを提供する、放出制御埋め込み可能投薬処方物に関する。
【0125】
投与処方物は、1以上の製薬上許容される補形剤を含んでよい。例えば、投与処方物は、希釈剤および滑沢剤をオクトレオチド単位用量および速度制御ポリマーに加えて含んでよい。この目的において、ステアリン酸マグネシウムが適した補形剤である。これらの材料を使用する場合、ステアリン酸マグネシウム成分は、投薬処方物の約0.5〜約5%w/w(例えば、約2%)を構成してよく、処方物の残りはヒドロゲルおよびオクトレオチドが構成する。
【0126】
その他の適した補形剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである。使用する場合、ヒドロキシプロピルセルロース成分は、投薬処方物の約0.5〜約20%w/w(例えば、約10%)を構成してよく、処方物の残りはヒドロゲルおよびオクトレオチドが構成する。
【0127】
一実施形態では、処方物は、ステアリン酸マグネシウムとヒドロキシプロピルセルロースの両方で構成され(例えば約2%のステアリン酸マグネシウムと約10%のヒドロキシプロピルセルロース)、処方物の残りはヒドロゲルおよびオクトレオチドが構成する。
【0128】
本明細書に記載される組成物は、GHおよびIGF−1のレベルの増加を特徴とするホルモン疾患、例えば、先端巨大症の治療のために、患者に本発明の埋め込み可能な処方物を投与することにより、使用することができる。インプラントは、例えば、約6ヶ月ごとに投与され、治療有効量のオクトレオチドを放出することができる。埋め込み可能な組成物は、ホルモン障害を寛解させる最小限の治療上有効なくらいのレベルであって、それでもその日の間に患者にとって安息な期間を促進する最大濃度と比較して相対的に低いレベルの濃度のオクトレオチドを患者において放出する。組成物は、被験体が副作用を示すことなくその用量に耐えることのできる十分な用量および期間で被験体に投与されてよく、その後に必要に応じて被験体において治療用量が達成されるまで選択された時間間隔で活性薬剤の用量を増加してよい。活性薬剤は、例えば、毎日約10μg〜約1000μg、約20μg〜約800μg、または約30μg〜約300μgのオクトレオチド用量で少なくとも約2ヶ月、約6ヶ月、または約2年までの期間投与されてよい。本発明に従う酢酸オクトレオチド薬剤も、カルチノイド症状群およびVIP産生腫瘍に関連する症状の治療に適している。
【0129】
本発明のさらなる特徴および実施形態を、以下の限定されない例により説明する。
【実施例】
【0130】
実施例1.インビトロでのオクトレオチド放出速度
本実施例は、本発明の埋め込み可能なオクトレオチド処方物の調製およびそれらのインビトロでのオクトレオチドの放出を説明する。一連のインプラントを試験して、約22週(146番)、28週(136番)および33週(他の処方物すべて)にわたる安定性およびヒドロゲル処方物からのオクトレオチドのインビトロ放出特性を得た。各々のインプラントは、約50mgの酢酸オクトレオチドおよび約2%のステアリン酸を含んでいたが、ポリマーカートリッジは、様々な量のHEMAおよびHPMAを含み、それ故に表1に表されるように様々な%EWCを示した。
【0131】
【表2】
【0132】
図2、3および4は、上記で提供される処方物のそれぞれについての1日あたりのインプラントからのオクトレオチドの放出を表す。図2示しているように、処方物番号136については、初期放出は比較的高く、比較的急速に低下する。図3に示されるように、処方物番号146の初期放出速度は比較的低い。図4は、処方物番号:145、147、133、144、143および142についての放出プロフィールを示す。図4に示されるように、初期放出速度は、%EWCとの良好な関係を示し、22.9〜27.6%の%EWCに対して1日あたり20〜450μgの範囲であった。しかし、インプラントおよび溶出媒体内部の浸透圧差に関して問題に直面した。オクトレオチド処方物を安定化させるため、「選択的水和」の原則に基づいてより良好な安定性を提供し得る補形剤を用いて多数の実験を計画した。
【0133】
実施例2.仔ウシ血清での処方物試験
膨潤問題への浸透圧の影響を調べるため、処方物番号136および処方物番号143に対応する2つのインプラントを、仔ウシ血清中に溶出した。特に、約40%のHEMAおよび60%のHPMAで構成され、酢酸オクトレオチドを2%のステアリン酸とともに含有する処方物番号136、ならびに、約30%のHEMAおよび70%のHPMAで構成され、20%のPEG3300および80%の酢酸オクトレオチドの混合物を含有する処方物番号143を試験した。3ヶ月後、インプラントは通常の外観を示し、比較的一直線でわずかに膨潤していただけであった。
【0134】
実施例3.処方物試験
浸透圧差に起因して、実施例1に記載したインプラントは著しく膨潤して見え、最終的にインプラントの崩壊という結果となった。本実施例は、オクトレオチドインプラントの安定化に有用な物質を選別するよう設計された処方物を説明する。一連のインプラントをモニターしてインプラント形状および耐久性への補形剤の効果を調べた。各々のポリマーカートリッジは、約28%のHEMA、約66.5%のHPMAおよび5%のグリセリンで構成された。この内容物は、酢酸オクトレオチドを表2に示される様々な補形剤とともに含んでいた。
【0135】
【表3】
【0136】
ゴマ油およびMCCなどの疎水性物質は、処方物中で分離し、「選択的水和」をもたらさなかった。PEG3300のような親水性物質は、浸透圧差を増加させ、膨潤を増加させた。マンニトールおよびグリコール酸のような低分子量添加剤は、安定化効果をもたらさず、完全性の低下を結果的にもたらした。これらの物質はいずれも、満足できるオクトレオチド処方物の安定化をもたらさなかった。
【0137】
実施例4.処方物試験およびインビトロでのオクトレオチド放出速度
本研究は、表3に示される様々な補形剤を用いて、ヒドロゲルインプラントにおけるオクトレオチドの安定性を評価するために行った。補形剤は、高分子量でいくらかの親水性の性質を有するように選択した。それぞれのインプラントは、約20%HEMAおよび約80%HPMAで構成されるポリマーカートリッジから製造した。生理食塩水中のインプラントの外観を9週にわたってモニターし、評価した。結果を表3に示す。
【0138】
【表4】
【0139】
図5に表されるように、デキストランを含有する処方物が最も速い溶出速度を有した。ペクチン、AcDiSolおよびCarbopolを含有する処方物は、2週の水和および9週の溶出の後に満足でない放出を提示した。したがって、例えば、優れた安定化効果、良好な溶出と外観の組合せを含む、望ましい特性は、ヒドロキシプロピルセルロースにより達成された。
【0140】
実施例5.健常なイヌにおける1ヶ月の埋め込み試験
本実施例は、本発明の処方物の調製物およびそれらのオクトレオチドまたはその製薬上許容される塩の放出を説明する。健常なイヌにオクトレオチド皮下インプラント1つを埋め込んだ。オクトレオチド皮下インプラント処方物は含水量が26.6%であり、44mgの酢酸オクトレオチドを含有した。インビトロでの放出速度は、この試験の継続期間にわたる約10mgのオクトレオチドの全放出について、1週目に約500μg/日と測定され、4週目までに約300μg/日に低下した。インプラントは埋め込みの28日後に取り出した。この試験で用いたインプラントは、長さが約3.5cmであった。酢酸オクトレオチド、IGF−IおよびGHの血清濃度を得るための血液試料(1.5mL)は、0日、1〜7日、11日、14日、18日、21日、25日および28日に麻酔をせず絶食せずに頸静脈穿刺により採取した。
【0141】
オクトレオチドインプラント処方物は十分に許容され、食物摂取は正常であり、異常な行動は観察されなかった。
【0142】
血清分析により、酢酸オクトレオチドのピークが4日目に示され、検出可能な量の酢酸オクトレオチドが測定したすべての間隔で示された。IGF−1濃度は、埋め込み後4日目まで低下し、その後25日までに投与前のレベルに戻った。IGF−1レベルは、図6に見られるように、埋め込み前のレベルの40から90%まで低下した。
【0143】
実施例6.6匹の健常なイヌにおける6ヶ月の埋め込み試験
本実施例は、本発明の処方物の調製物およびそれらのオクトレオチドまたはその製薬上許容される塩の放出を説明する。6匹の健常なイヌを2つの群に分け、1または2のオクトレオチド皮下インプラントをそれぞれ埋め込んだ。オクトレオチド皮下インプラントは含水量が約25.2%であり、約60mgの酢酸オクトレオチドを含んでいた。インプラントは埋め込みの6ヶ月後に取り出した。酢酸オクトレオチド、IGF−IおよびGHの血清濃度を得るための血液試料(10mL)は、埋め込みの後の最初の7日間は1日1回採取し、その後3週間は週に2回試料を採取し、その後に6ヶ月の期間が終了するまで週に1回採取した。埋め込みの4日前、ベースラインの血清試料を対照として採取した。
【0144】
結果からは、オクトレオチド血清レベルは、インプラント1つを投与されたイヌにおいて200〜700μg/mLの範囲であり、インプラント2つを投与されたイヌにおいて400〜1000μg/mLの範囲であることが示された。IGF−1レベルは、図7および8から分かるように、両方の処置群で90%程度低下した。血清GHレベルの測定は、健常な動物におけるレベルがさらなる低下を検出するには低すぎるため、試験の最初の1ヶ月後頃に中止した。臨床観察により、オクトレオチドインプラント処方物は十分に許容され、食物摂取は正常であり、異常な行動は観察されないことが記された。
【0145】
実施例7.ヒトにおける6ヶ月の埋め込み試験
本実施例は、本発明の処方物の調製物およびそれらのオクトレオチドまたはその製薬上許容される塩の放出を説明する。11名の先端巨大症患者において6ヶ月の試験を行った。1または2のインプラントを、商業的に入手可能なオクトレオチドLAR製剤で事前に処置された、先端巨大症と診断された11名の患者の皮下に埋め込んだ。ベースラインのGHおよびIGF−1のレベルを測定し、それ以来6ヶ月間で1ヶ月おきにGHおよびIGF−1のレベルを測定した。それぞれのインプラントは、20%HEMAと79.5%HPMAのコポリマー中に約60mgの酢酸オクトレオチドを含み、EWCは約25.2%であった。この試験で使用したインプラントは、乾燥状態で長さが約44mmであり、水和状態で長さが50mmであった。インプラントの直径は、乾燥状態で約2.8mm、水和状態で約3.5〜約3.6mmであった。インプラントは埋め込みの前に約1週間水和させた。
【0146】
GHの参照範囲は、年齢に関わらず2.5mg/Lまでである。表4は、オクトレオチドインプラントの埋め込み後6ヶ月にわたる基底レベルのGH(mg/L)を説明する。患者番号11は、スクリーニング基準に適合しなかったためにこの試験に参加しなかった。
【0147】
【表5】
【0148】
6ヶ月までに、被験体の89%が、正常化された成長ホルモンレベルを提示した。IGF−1に対する参照範囲は次の通りである:(i)17〜24歳、約180〜780ng/mL;(ii)25〜39歳、約114〜400ng/mL;(iii)40〜54歳、約90〜360ng/mL;および(iv)>54歳、約70〜290ng/mL。
【0149】
表5は、本発明のオクトレオチドインプラントの埋め込み後6ヶ月にわたるIGF−1の基底レベル(ng/mL)を説明する。
【0150】
【表6】
【0151】
6ヶ月までに、22%の被験体が正常化されたIGF−1レベルを提示した。
【0152】
図9Aおよび9Bは、オクトレオチドインプラントと商業的に入手可能な酢酸オクトレオチドの処方物との比較を明示する。インプラントの有効性は、商業的に入手可能なオクトレオチドLAR製剤の有効性と少なくとも同程度に良好である。これらのインプラントの治療効果は、試験持続時間の全6ヶ月の間、首尾よく持続した。
【0153】
IGF−1レベルはすべての患者において低下し、2名の患者において正常化された。この低下は治療の1ヶ月目で既に観察され、平均IGF−1レベルはその後の5ヶ月間安定していた。市販のオクトレオチドLAR製剤治療の間、同じ患者において以前に観察された低下との比較は、9名の患者のうち8名で可能であった。8名の患者のうち6名において、インプラントの間のIGF−1の低下率は、商業的に入手可能なオクトレオチドLAR製剤での間の低下率より大きかったが、一方2名において、低下率は小さかった。インプラントでの治療の6ヶ月後、3名の患者におけるGHレベルは、1ng/mLより小さく、他の5名においては、2.5ng/mLより小さかった。これは、たった2名の患者においてGHレベルが1ng/mLより小さく、他の2名において、2.5ng/mLより小さかった商業的に入手可能なオクトレオチドLAR製剤の結果に有利に匹敵する。
【0154】
表6に示されるように、患者の血清中のオクトレオチドのレベルも測定した。
【0155】
【表7】
【0156】
1および2のインプラントによって達成されたオクトレオチドレベルの比較を、図10のグラフに表す。全体的に、結果は、先端巨大症の患者においてGHレベルおよびIGF−1レベルを低下させる際にオクトレオチドインプラントが少なくとも市販の酢酸オクトレオチドのLAR製剤と同程度に効果的であることを示す。
【0157】
実施例8.乾燥インプラントを用いるインビトロのオクトレオチド送達
本実施例は、処方物の調製物およびそれらのオクトレオチドまたはその製薬上許容される塩の放出を説明する。2匹の健常なイヌに、本発明のオクトレオチド皮下インプラント1つを埋め込んだ。インプラントは埋め込みの前に水和させなかった。オクトレオチド皮下インプラントは、約59.5%のHPMAおよび約40%のHEMAで構成され、平衡含水量は約27.6%であった。インプラントは、約84mgの酢酸オクトレオチド、ヒドロキシプロピルセルロースおよびステアリン酸マグネシウムを含んでいた。インプラントは埋め込みの6ヶ月後に取り出した。血液試料(10mL)は、酢酸オクトレオチドおよびIGF−1の血清濃度を得るために、埋め込みの後の最初の4週間は1日おきに1日1回採取し、その後4週間は週に2回試料を採取し、その後に6ヶ月の期間が終了するまで週に1回採取した。埋め込みの2日前、ベースラインの血清試料を対照として採取した。
【0158】
図11は、イヌの血清中のオクトレオチドレベルを示し、図12は、イヌにおけるIGF−1のレベルを示す。
【0159】
実施例9.インプラント組成物
インプラントのために可能性のある組成物、例えば、表7に記載される組成物を試験した。形成プロセスの間、離型剤、例えば、ビタミンE TPGSを用いることにより、約3.2〜3.4mm(乾燥)よりも大きいインプラントカートリッジを助けた。
【0160】
【表8】
【0161】
実施例10.先端巨大症の患者における水和および非水和84mgオクトレオチドインプラントの薬物動態および薬力学的応答を評価するためのオープンラベル試験
およそ30名の先端巨大症の患者を、書面によるインフォームド・コンセントを得た後に登録した。試験ランダム化スケジュールごとに患者を2つの群に分けた:15名の患者が水和84mgオクトレオチドインプラント1つを投与され、15名の患者が非水和84mgオクトレオチドインプラント1つを投与された。適格患者らは、自身のスクリーニングのための来院の7日以内にインプラントを投与された。オクトレオチドインプラントは、局所麻酔下、患者らの利き腕でない腕の内側面の皮下に挿入された。IGF−1、GHおよびオクトレオチド血清濃度を測定するための血液試料を、埋め込み後最初の6週以内の所定の時点で採取した。その後患者らは8週、12週、16週、20週および24週に外来通院して、血液試料をIGF−1、GHおよびオクトレオチド血清濃度の測定、ならびに安全性評価のために採取される。6ヶ月(24週)の治療期(treatment phase)の終わりに、インプラントを取り出す。インプラントを除去した後、治験来院終了(End of Study Visit)(28週)のために4週後に来院するよう患者に指示をする。試験を通じて、安全性および有効性を注意深く監視する。
〔治験薬〕
皮下埋め込み用の水和オクトレオチドインプラント(酢酸オクトレオチド84mg)
皮下埋め込み用の非水和オクトレオチドインプラント(酢酸オクトレオチド84mg)
【0162】
〔治療の継続期間〕
適格患者は、水和または非水和の、インプラント1つを投与される。6ヶ月(24週)の治療期の終わりに、インプラントを取り出す。
〔試験対象患者基準〕
1.男性および女性の先端巨大症の患者
2.年齢は18歳以上でなければならない
3.成長ホルモン分泌腫瘍の診断が確定していること(IGF−1レベルが年齢および性別を考慮した正常値の上限よりも20%以上高く、かつ、グルコース後(post−glucose)GHが1.0ng/mL以上であるかまたは下垂体腫瘍がMRIで実証できるかのいずれかである)。患者が下垂体手術を受けていて残存腫瘍を有する場合、それは視交叉からの距離が少なくとも3mmでなければならず(患者が手術の候補である場合)、IGF−1レベルは上記のように上昇しなければならない。残存腫瘍が存在しないか、または患者が手術不能である場合には、患者は上記のIGF−1とGHの両方の基準を満たす必要がある。
4.下に規定されるように、これまでの臨床検査値(historical laboratory values)により明示される、オクトレオチドに対する完全応答者かまたは部分応答者のいずれかでなければならない:
a.完全応答者:血清IGF−1を通常の年齢および性別を考慮したレベルに抑制し、OGTT後、血清GHを1.0ng/mLより低く抑制する
b.部分応答者:治療前の値と比較した場合にIGF−1およびGH値が30%以上低下するが、完全応答者の基準を満たさない
または
c.オクトレオチドで未処置の患者またはオクトレオチドに対する応答のわからない患者のスクリーニングのための来院の間に、鋭敏な水性試験(acute aqueous test)を介して得られる臨床検査値に明示される、オクトレオチドの応答者でなければならない:
d.鋭敏な水性試験による応答者:100∝γの水性オクトレオチドの皮下注射に応答して、4時間の試験期間のどの時点でもGH値が30%以上低下する
5.意思疎通が可能で、書面によるインフォームド・コンセントを提供でき、かつ、参加する意思があって試験要件に適合していなければならない
6.患者は、研究者の意見に参加する資格がある
〔除外基準〕
1.妊娠している、授乳中である、または、医学的に容認される受胎調節の方法をおこなっておらず、妊娠している可能性のある女性
2.スクリーニング前の12週間以内に下垂体手術をした患者
3.肝疾患のある患者(例えば、肝硬変、慢性活動性肝炎または持続性肝炎あるいはALT、AST(通常の2倍より大きいレベル)、アルカリホスファターゼ(通常の2倍より大きいレベル)、または直接ビリルビン(通常の1.5倍より大きいレベル)の持続性異常
4.研究者またはスポンサーにより臨床的に重要と考えられるその他の臨床検査値
5.不安定狭心症、持続性心室性不整脈、心不全(NYHA IIIおよびIV)の患者、またはスクリーニングの3ヶ月以内に急性心筋梗塞の病歴のある患者
6.症候性胆石症の患者
7.スクリーニングの6ヶ月以内に薬物またはアルコール乱用の病歴のある患者
8.スクリーニングの1ヶ月以内にどのような治験薬でも投与されたことのある患者
9.スクリーニングの前のどの時点でもその下垂体腫瘍のために放射線療法を受けている患者
10.耐容性または有効性の問題によりオクトレオチドを中断した患者。
【0163】
オクトレオチドの血清レベルを測定した(図面データは図13および14参照)。オクトレオチドインプラント(乾燥形態のものまたは水和後のもの)を挿入した後のサイトカイン濃度調節の有効性を、図15、16および17に示す。
【0164】
実施例11.カルチノイド症状群の患者における水和および非水和84mgオクトレオチドインプラントの薬物動態および薬力学的応答を評価するためのオープンラベル試験
カルチノイド症状群の患者を、書面によるインフォームド・コンセントを得た後に登録した。試験ランダム化スケジュールごとに患者を2つの群に分け、最初の群に水和84mgオクトレオチドインプラント1つを投与し、2番目の群に非水和84mgオクトレオチドインプラント1つを投与した。適格患者らは、自身のスクリーニングのための来院の7日以内にインプラントを投与された。オクトレオチドインプラントは、局所麻酔下、患者らの利き腕でない腕の内側面の皮下に挿入された。IGF−1、GHおよびオクトレオチド血清濃度を測定するための血液試料を、埋め込み後最初の6週以内の所定の時点で採取した。その後患者らは8週、12週、16週、20週および24週に外来通院して、血液試料をIGF−1、GHおよびオクトレオチド血清濃度の測定、ならびに安全性評価のために採取される。6ヶ月(24週)の治療期の終わりに、インプラントを取り出す。インプラントを除去した後、治験来院終了(28週)のために4週後に来院するよう患者に指示をする。試験を通じて、安全性および有効性を注意深く監視する。
〔治験薬〕
皮下埋め込み用の水和オクトレオチドインプラント(酢酸オクトレオチド84mg)
皮下埋め込み用の非水和オクトレオチドインプラント(酢酸オクトレオチド84mg)
【0165】
〔治療の継続期間〕
適格患者は、水和または非水和の、インプラント1つを投与される。6ヶ月(24週)の治療期の終わりに、インプラントを取り出す。インプラントを除去した後、治験来院終了のために4週後に来院するよう患者に指示をする。
〔試験対象患者基準〕
1.男性および女性のカルチノイド症状群の患者
2.年齢は18歳以上でなければならない
3.カルチノイド症状群の診断が確定していて、患者が、標準的な医学診断検定法により判断して尿中5−HIAA(5−ヒドロキシインドール酢酸)レベルの上昇、低い血中トリプトファン、および高い血中クロモグラニンA(chromaogranin A)およびセロトニンを示していること。
4.意思疎通が可能で、書面によるインフォームド・コンセントを提供でき、かつ、参加する意思があって試験要件に適合していなければならない
5.患者は、研究者の意見に参加する資格がある
〔除外基準〕
1.妊娠している、授乳中である、または、医学的に容認される受胎調節の方法をおこなっておらず、妊娠している可能性のある女性
2.スクリーニング前の12週間以内に下垂体手術をした患者
3.肝疾患のある患者(例えば、肝硬変、慢性活動性肝炎または持続性肝炎あるいはALT、AST(通常の2倍より大きいレベル)、アルカリホスファターゼ(通常の2倍より大きいレベル)、または直接ビリルビン(通常の1.5倍より大きいレベル)の持続性異常
4.研究者またはスポンサーにより臨床的に重要と考えられるその他の臨床検査値
5.不安定狭心症、持続性心室性不整脈、心不全(NYHA IIIおよびIV)の患者、またはスクリーニングの3ヶ月以内に急性心筋梗塞の病歴のある患者
6.症候性胆石症の患者
7.スクリーニングの6ヶ月以内に薬物またはアルコール乱用の病歴のある患者
8.スクリーニングの1ヶ月以内にどのような治験薬でも投与されたことのある患者
9.スクリーニングの前のどの時点でもその下垂体腫瘍のために放射線療法を受けている患者
10.耐容性または有効性の問題によりオクトレオチドを中断した患者。
【0166】
オクトレオチドの血清レベルをそれぞれの患者について測定する。治療の間、それぞれの患者は、治療前に患者が提示したカルチノイド症状群の特徴である潮紅症状の発現およびその他の症状の減少について調べられ、かつ24時間尿中5−HIAAレベル中央値の低下について調べられる。
【0167】
本発明は、その特定の好ましい実施形態に関して相当詳細に説明されたが、その他の変形形態も可能である。そのため、添付される特許請求の範囲の精神および範囲は、この説明に制限されるものでなく、好ましい変形形態は本明細書に含まれるものである。
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年6月25日出願の米国特許仮出願第61/075625号、および2008年7月11日出願の米国特許仮出願第61/080144号の利益を主張する。これらの特許出願のそれぞれの全内容は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
先端巨大症は、脳下垂体が過剰な成長ホルモン(GH)を産生する場合に結果的に生じるホルモン障害である。先端巨大症は一般に中年の成人に発症し、重篤な疾病および早期の死亡をもたらし得る。ひとたび診断されれば、先端巨大症は大部分の患者において治療可能であるが、その発症が遅発性であり、多くの場合潜行性であるために、正確に診断されない場合が多い。先端巨大症の最も重篤な健康結果は、真性糖尿病、高血圧症および心血管疾患のリスク増加である。また、先端巨大症の患者は、癌に発展し得る結腸のポリープのリスクも高い。GH産生腫瘍が小児期に発生すると、その結果生じる疾患は、先端巨大症ではなく巨人症と呼ばれる。長骨の成長板の融合は思春期後に起こるので、成人での過度のGH産生の発達は身長の増加をもたらさない。成長板の融合前に過剰なGHに長期に曝露されることが、長骨の成長を増大させ、身長を伸ばす。
【0003】
先端巨大症は、脳下垂体による成長ホルモン(GH)の長期にわたる過剰産生に起因する。下垂体は、脳の底部にある小さな腺であり、数種類の重要なホルモンを産生して、成長および発達、生殖、ならびに代謝などの身体機能を制御する。GHは、ホルモンのカスケードの一部であり、名前が意味するように、身体の物理的な成長を調節する。このカスケードは、下垂体を調節するホルモンを産生する視床下部と呼ばれる脳の部分で始まる。これらのホルモンの一つであるGH放出ホルモン(GHRH)は、脳下垂体を刺激してGHを産生する。もう一つの視床下部ホルモンであるソマトスタチンは、GHの産生および放出を阻害する。下垂体によるGHの血流中への分泌は、肝臓においてインスリン様成長因子I(IGF−1)と呼ばれるもう一つのホルモンの産生を引き起こす。IGF−1は、身体の骨およびその他の組織の成長を引き起こす因子である。また、IGF−1は、下垂体にGH産生を低下させる信号を伝達する。身体中のGHRHレベル、ソマトスタチンレベル、GHレベルおよびIGF−1レベルは、相互に緊密に調節され、それらのレベルは、睡眠、運動、ストレス、食物摂取および血糖値などの環境刺激により影響を受ける。もし下垂体が正常な調節機構から独立してGHを産生するならば、IGF−1のレベルは上昇し、骨成長および器官拡張が引き起こされることになる。過剰なGHは、糖および脂質代謝の変化をも引き起こし、糖尿病を引き起こす可能性がある。
【0004】
90%超の先端巨大症患者において、GHの過剰産生は、腺腫と呼ばれる脳下垂体の良性腫瘍により引き起こされる。これらの腫瘍は過剰なGHを産生し、腫瘍が拡大するにつれて、周囲の脳組織、例えば視神経などを圧迫する。この拡大により、しばしば先端巨大症の症状である頭痛および視覚障害が引き起こされる。その上、周囲の正常な下垂体組織の圧迫は、その他のホルモンの産生を変化させる可能性があり、女性において月経変化および乳汁分泌ならびに男性において性交不能症を導く。
【0005】
一部の患者において、先端巨大症は、下垂体腫瘍によるのではなく、膵臓、肺および副腎の腫瘍により引き起こされる。これらの腫瘍がGH自体を産生するためか、または、さらに頻繁に、これらの腫瘍がGHを製造するよう下垂体を刺激するホルモンであるGHRHを産生するために、これらの腫瘍は過度のGHを導く。これらの患者において、過剰なGHRHは血液中で測定され、先端巨大症の原因が下垂体の異常に起因するものでないことを示す。これらの非下垂体腫瘍が外科的に切除されると、GHレベルは低下し、先端巨大症の症状は好転する。
【0006】
先端巨大症の治療計画には、GH産生を正常レベルまで低下させて、増殖する下垂体腫瘍が周囲の脳領域に及ぼす圧力を軽減すること、正常な下垂体機能を保つこと、および、先端巨大症の症状を逆行または寛解させることが含まれる。治療の選択肢には、腫瘍の外科的除去、薬物療法および下垂体の放射線療法が含まれる。
【0007】
オクトレオチドは、先端巨大症の管理に有効であることが実証されている。GHレベルは、通常、オクトレオチドの皮下注射後2時間以内に低下する。オクトレオチドは、患者の大部分においてGHおよびIGF−1レベルの低下をもたらし、60%までの患者においてIGF−1レベルが正常化し、生化学的な緩解が示される。大部分の患者は、オクトレオチド治療を開始してまもなく、頭痛、関節痛および発汗を含む、自身の先端巨大症の症状の顕著な改善に気付く。オクトレオチドは、現在Sandostatin LAR(登録商標)Depotとして入手可能であり、これは、再構成すると、酢酸オクトレオチドを含有するミクロスフェアの懸濁液である。Sandostatin LAR(登録商標)Depotは、先端巨大症の患者における長期の維持療法に用いられる唯一の薬物療法である。それは、転移性カルチノイド腫瘍に関連する重度の下痢および潮紅症状の発現ならびにVIP産生腫瘍に関連する大量の水下痢の長期治療にも用いられる。Sandostatin LAR(登録商標)Depotは、4週ごとの筋肉注射により投与され、その後に用量設定期間が続く。酢酸オクトレオチドも、即時放出製剤、Sandostatin(登録商標)注射液として入手可能であり、これは1日3回、注射により投与することが必要である。間欠的なオクトレオチド注射に対してGHレベルが有意に低下しない患者では、より頻繁なオクトレオチドの投薬により一層の臨床応答がもたらされる可能性がある。注射と注射の間のGHのエスケープを避けるために、難治性の先端巨大症の患者に皮下ポンプにより継続的にオクトレオチドを投与することもできる。
【0008】
先端巨大症を治療するためのオクトレオチドの有効性、ならびに放出制御治療法およびオクトレオチド処方物のないことを踏まえると、例えば、複数回の定期的な注射に耐えることになる患者の煩わしさを回避するために、一定時間にわたって制御された速度でオクトレオチドを送達することのできる処方物および送達法が必要とされる。また、GHおよびIGF−1のレベルの増加を特徴とするかまたはそれらのレベルの増加に関連する状態および疾患を含む、他の疾患および状態ならびに/またはそれらの関連症状を効果的に治療するために、一定時間にわたって制御された速度でオクトレオチドを送達することのできる処方物および送達法が明らかに必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一般に、ホルモン障害に罹患した個体を治療するために使用することのできるオクトレオチド医薬組成物に関する。本明細書に記載される処方物は、1種類以上の活性薬剤、例えば、オクトレオチドの放出制御を可能にする。本明細書に記載される実施形態は、埋め込み可能なデバイスを用いて、オクトレオチドを制御された速度で放出することができるという予期せぬ発見に基づくものである。本明細書に記載される処方物および方法は、治療有効量のオクトレオチドを長期間、例えば、約2ヶ月、約6ヶ月および約2年までにわたって提供する。
【0010】
一態様は、被験体への埋め込み後におけるオクトレオチドの放出制御のための処方物に関し、この処方物は、ポリウレタン系ポリマーおよびメタクリレート系ポリマーから選択される親水性ポリマー内に実質的に収容される調製物を含み、この調製物はオクトレオチドを含み、この処方物は、インビボで約6ヶ月にわたり1日あたり約30μg〜約800μgの速度でのオクトレオチドの放出を許容するうえで効果的であり、かつ、調製物でなく親水性ポリマーは、少なくとも約1000ダルトンの分子量をもつ離型剤をさらに含む。特定の態様では、離型剤は、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール親水性尾部および親油性頭部である。特定の態様では、離型剤は、Brij35、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート、Tween20、Tween80、ビタミンE TPGS、およびそれらの任意の2またはそれ以上の混合物からなる群から選択される。特定の態様では、離型剤は、少なくとも約1200ダルトンの分子量を有する。特定の態様では、親水性ポリマーは、約350mm2またはそれ以上、例えば、約350mm2〜約1500mm2の外部表面積を有する。特定の態様では、処方物は、インビボで1日あたり約75μg〜1日あたり約300μgの範囲の平均速度でのオクトレオチドの放出を許容する。特定の態様では、オクトレオチドは酢酸オクトレオチドである。特定の態様では、親水性ポリマーは、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびヒドロキシプロピルメタクリレートの混合物を含む。特定の態様では、処方物は、被験体において約0.1ng/mL〜約9ng/mLのオクトレオチドのインビボ平均Cssをもたらす。特定の態様では、処方物は、被験体において約1ng/mL〜約4ng/mLのオクトレオチドのインビボ平均Cssをもたらす。特定の態様では、調製物は、約40mg〜約120mgのオクトレオチド、例えば、約50mgの酢酸オクトレオチド、約85mgの酢酸オクトレオチドを含む。特定の態様では、親水性ポリマーは、約20%の2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび約80%のヒドロキシプロピルメタクリレートの混合物を含む。特定の態様では、親水性ポリマーは、約40%の2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび約60%のヒドロキシプロピルメタクリレートの混合物を含む。特定の態様では、調製物は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、植物性ステアリン、タルクおよびシリカからなる群から選択される補形剤をさらに含む。特定の態様では、調製物は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、加工デンプンおよび架橋ポリビニルピロリドンからなる群から選択される化合物をさらに含む。特定の態様では、親水性ポリマーは、ポリウレタン系ポリマーを含む。
【0011】
一態様は、被験体においてGHレベルまたはIGF−1レベルを低下させ、および/または、オクトレオチド感受性の(octreotide−sensiteve)疾患、障害または症状、例えば、先端巨大症または先端巨大症に関連する症状、カルチノイド腫瘍に関連する症状、VIP産生腫瘍または神経内分泌腫瘍、カルチノイド症状群、増殖性糖尿病性網膜症、酒さ、膵炎、消化管出血、膵瘻および腸瘻、グレーブス眼症およびバセドウ眼症、緑内障、および/または血管新生(vasularization)に関連する角膜疾患を治療する方法に関し、この方法は、親水性ポリマーに収容される調製物を含む少なくとも1つの乾燥した埋め込み可能なデバイスを皮下に埋め込むことを含み、この調製物はオクトレオチドを含み、この調製物でなくこの親水性ポリマーは、少なくとも1000の分子量を有する離型剤、例えば、ビタミンE TPGSをさらに含む。特定の態様では、調製物は、約40mg〜約120mgの酢酸オクトレオチドを含む。特定の態様では、2つの埋め込み可能なデバイスが皮下に埋め込まれる。特定の態様では、埋め込み可能なデバイスは、約6ヶ月〜約2年の範囲の連続的な期間、患者の体内に埋め込まれたままである。特定の態様では、埋め込み可能なデバイスは、約6ヶ月〜約1年の範囲の連続的な期間、患者の体内に埋め込まれたままである。特定の態様では、埋め込み可能なデバイスは、照射により滅菌される。
【0012】
特定の態様では、処方物および方法は、例えば、重度の下痢、水様下痢、潮紅症状の発現および/または喘息を治療するために使用される。
【0013】
一態様は、本明細書に記載される処方物のいずれかを含むキットに関する。このキットは、処方物の埋め込みおよび使用に必要な材料および説明書をさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】平衡含水量(EWC)と、最大水和状態の架橋HEMA/HPMAポリマー中のヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)単位の重量パーセント含量との間の直線関係を示すグラフである。
【図2】インプラント処方物からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図3】インプラント処方物からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図4】6種類の異なるインプラント処方物からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図5】異なるインプラント処方物からのオクトレオチドの放出を示すグラフである。
【図6】オクトレオチド処方物を埋め込んだ健常なイヌにおけるオクトレオチドおよびIGF−1血清レベルを示すグラフである。
【図7】オクトレオチドインプラント処方物1つを6ヶ月の期間にわたり埋め込まれた、健常なイヌ3匹の群におけるオクトレオチドおよびIGF−1血清レベルを示すグラフである。
【図8】オクトレオチドインプラント処方物2つを6ヶ月の期間にわたり埋め込まれた、健常なイヌ3匹の群におけるオクトレオチドおよびIGF−1血清レベルを示すグラフである。
【図9A】6ヶ月にわたりオクレオチド処方物を埋め込まれた11名の先端巨大症のヒト被験体におけるIGF−1血清レベルおよび変化率を表すグラフである。
【図9B】6ヶ月にわたりオクレオチド処方物を埋め込まれた11名の先端巨大症のヒト被験体におけるIGF−1血清レベルおよび変化率を表すグラフである。
【図10】オクレオチド処方物を6ヶ月にわたり埋め込まれた11名の先端巨大症のヒト被験体におけるオクトレオチド血清レベルを表すグラフである。
【図11】6ヶ月にわたりオクレオチド処方物を埋め込まれた2匹のイヌにおけるオクトレオチド血清レベルを表すグラフである。
【図12】6ヶ月にわたりオクレオチド処方物を埋め込まれた2匹のイヌにおけるIGF−1血清レベルを表すグラフである。
【図13】水和インプラント送達および乾燥インプラント送達後の血清中オクトレオチド濃度を示すグラフである(表6も参照)。
【図14】水和インプラント送達および乾燥インプラント送達後の血清中オクトレオチド濃度を示すグラフである(表6も参照)。
【図15A】水和インプラントおよび乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後の成長ホルモンのレベルを示すグラフである(GH濃度)。
【図15B】水和インプラントおよび乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後の成長ホルモンのレベルを示すグラフである(GH低下%)。
【図16A】水和インプラントおよび乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後のIGF−1のレベルを示すグラフである(IGF−1濃度)。
【図16B】水和インプラントおよび乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後のIGF−1のレベルを示すグラフである(標準偏差)。
【図17A】水和インプラントおよび乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後のIGF−1のレベルを示すグラフである(調査から得たデータを示し、値は通常のIGF−1レベルに対するパーセントとして表される)。
【図17B】水和インプラントおよび乾燥インプラントによるオクトレオチドの送達後のIGF−1のレベルを示すグラフである(調査から得たデータを示し、値は通常のIGF−1レベルに対するパーセントとして表される)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本組成物および方法を説明する前に、本組成物および方法が、記載される特定の分子、組成物、方法論またはプロトコルに限定されない(これらは変化する可能性があるため)ことは当然理解される。また、この詳細な説明において用いられる用語は、特定の変形または実施形態を記載することだけを目的とするものであり、添付される特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図しないことも当然理解される。本明細書において使用される用語は、当業者に認識され、公知である意味を有するが、しかし、便宜上および完全を期すために、特定の用語とその意味を以下に述べる。
【0016】
単数形「a」、「an」、および「the」には、文脈上明らかに指示されている場合を除いて、複数形への言及が含まれる。別途定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料に類似するかまたは同等のいずれの方法および材料も、本明細書に記載される実施形態の実践または試験で使用してよいが、好ましい方法、デバイス、および材料を以下に説明する。本明細書において記載される全ての刊行物は、それらが本発明を支持する範囲で参照により援用される。本明細書において、先行発明のために本発明がかかる開示に先行する権利を有さないことを認めるものとして解釈されるものは何もない。
【0017】
本明細書において、用語「約」は、その用語と共に使用される数に10%を加えたかまたは10%を引いた数値を意味する。例えば、約50%は、40%〜60%の範囲を意味する。
【0018】
「放出制御処方物」とは、所定の治療有効量の薬物またはその他の活性薬剤、例えばポリペプチドまたは合成化合物を長期間にわたり一貫して放出するよう設計された処方物をさし、その結果、所望の治療効果を達成するために必要な治療の数が減少する。本明細書に記載されるように、制御された処方物は、成長ホルモン(GH)レベルの低下またはIGF−1レベルの低下、または先端巨大症に関連する症状改善(限定されるものではないが成長異常を含む)に関して、所望の効果を達成するために必要な治療の数を減少させる。本放出制御処方物は、被験体において望ましい薬物動態プロフィール、好ましくは送達環境の配置の実質的に直後に活性薬剤の放出を開始し、続いて活性薬剤の一貫した持続性の、好ましくはゼロ次、実質的にゼロ次、またはゼロ次に近い放出を達成する。
【0019】
本明細書において、用語「放出制御」には、活性薬剤の毒性レベルよりも低い治療上有益な血中濃度が、例えば、少なくとも約2ヶ月、約6ヶ月またはそれ以上(例えば、約2年まで)の期間にわたり維持されるような速度での、投薬処方物からの所定の一貫した活性薬剤の放出が含まれる。
【0020】
用語「患者」および「被験体」は、ヒトを含む全ての動物を意味する。患者または被験体の例としては、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジおよびブタが挙げられる。
【0021】
用語「製薬上許容される塩、エステル、アミド、およびプロドラッグ」は、本明細書において、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激作用、アレルギー応答などがなく、患者の組織に接触しての使用に適した、本発明の化合物のカルボン酸塩、アミノ酸付加塩、エステル、アミド、およびプロドラッグをさす。その使用は、妥当な利益/リスク比に見合うものであり、その意図される使用に効果的である。可能である場合、双性イオン形態を用いてもよい。本明細書に記載される化合物は、例えば、非溶媒和形態、および製薬上許容される溶媒、例えば、水、エタノールなどを含む、溶媒和形態で存在することができる。一般に、溶媒和形態は、本発明の目的において非溶媒和形態と同等と考えられる。
【0022】
用語「プロドラッグ」とは、例えば、血液中の加水分解により、インビボで迅速に変換されて、上式の親化合物を生じる化合物をさす。T.Higuchi and V.Stella,「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」Vol.14 of the A.C.S.Symposium Series中、およびBioreversible Carriers in Drug Design,ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987中に考察が記載され、その両方が参照によりその全文が本明細書に援用される。
【0023】
用語「塩」とは、本発明の化合物の比較的無毒の無機および有機酸付加塩をさす。これらの塩は、化合物の最終の単離および精製の間に、あるいは、遊離塩基形態の精製化合物と、適した有機酸または無機酸を別々に反応させ、このようにして生じた塩を単離することにより、現場で調製することができる。代表的な塩としては、酢酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチ酸塩メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸およびラウリル硫酸塩などが挙げられる。これらには、アルカリおよびアルカリ土類金属に基づく陽イオン、例えばナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど、ならびに無毒のアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンなど(例えば、参照によりその全文が本明細書に援用される、S.M.Barge et al.,「Pharmaceutical Salts」J.Pharm.Sci,1977,66:1−19参照)が含まれ得る。
【0024】
「治療」とは、予防(防止)のためか、または患者が罹患している事例において虚弱質または病弊を治癒させるための、患者への医薬の投与または医療手順の実行をさす。
【0025】
「治療有効量」は、医学的状態に関連する症状を減少させる、防ぐ、または寛解させるために十分な量である。ホルモン療法の状況では、疾患または障害における身体機能またはホルモンレベルを正常化するために十分な量も意味し得る。治療有効量のオクトレオチドの放出制御処方物は、例えば、患者において所望の効果を達成するように、例えば、GHまたはIGF−1レベルを効果的に低下させるように計算された所定の量である。
【0026】
本発明を利用して、例えば、先端巨大症および巨人症を含む、多様なホルモン障害、あるいは、例えば、オクトレオチドを用いて効果的に治療されるその他の疾患または障害を治療することができる。先端巨大症は、手足の拡大、前頭隆起、拡大した下顎骨および歯の間隔の増大を含む顔面の変化、関節痛、発汗、睡眠時無呼吸、高血圧症、真性糖尿病および肥大性心筋症を含む、多数の臨床徴候を特徴とする。先端巨大症を引き起こす腫瘍は、高い頻度で局所的な解剖学的圧迫を引き起こし、その結果、例えば、視野欠損、頭痛、下垂体機能低下症、および脳神経麻痺が起こる。先端巨大症の患者の死亡率は、主に心血管および脳血管疾患に起因して、2倍から5倍増加する。また、先端巨大症に関連する悪性腫瘍の割合も増加し、結腸癌が最も特徴的である。
【0027】
オクトレオチドは、次のアミノ酸配列を含むオクタペプチドである:L−システインアミド、D−フェニルアラニル−L−システイニ(cysteiny)−L−フェニルアラニル−D−トリプトフィル−L−リシル−L−トレオニル−N−[2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)プロピル]−,環状(2→7)−ジスルフィド;[R−−(R*,R*)]。オクトレオチドの構造を以下に示す。
【0028】
【化1】
【0029】
オクトレオチドは、GH、グルカゴンおよびインスリンを阻害する。また、それはGnRHに対するLH応答を抑制し、ガストリンの放出を阻害し、内臓の血流を低下させ、かつ、セロトニン、セクレチン、モチリン、血管作用性小腸ペプチド、および膵ポリペプチドの放出を阻害する。オクトレオチドはまた、TSH(甲状腺刺激ホルモン)を阻害する。結果として、オクトレオチドは、例えば、先端巨大症、糖尿病、ならびにカルチノイド腫瘍、VIP産生腫瘍(血管作用性小腸ペプチド分泌腺腫)、および神経内分泌腫瘍に関連する重度の下痢および潮紅症状の発現、特に、VIP産生腫瘍に関連する水様下痢を含む、多数の状態および症状を治療するために用いることができ、加えて、化学療法およびAIDSに関連する症状を治療する際にも有用であり得る。オクトレオチドはまた、多数のその他の状態、例えば、増殖性糖尿病性網膜症 (Palii,S.et al.,Expert Opin.Investig.Drugs,16:73−82,2007)、酒さ(Pierard−Franchimont,C.et al.,Dermatology,206:249−251,2003)、膵炎、消化管出血、膵瘻および腸瘻、グレーブス眼症およびバセドウ眼症、緑内障、および血管新生(vasularization)に関連する角膜疾患(Pawlikowski,M.and Melen−Mucha,G.,Neuro.Endocrinol.Lett.,24:21−27,2003)などの治療においても有用である。
【0030】
化学式は、C49H66N10O10S2であり、その分子量は1019.3Daである。その薬効分類は、胃液分泌抑制薬である。本発明のオクトレオチドは、例えば、遊離形態、塩形態またはその複合体の形態で存在してよい。酸付加塩は、例えば、有機酸、ポリマー酸、および無機酸で形成されてよい。酸付加塩には、例えば、塩酸塩および酢酸塩が含まれる。複合体は、例えば、オクトレオチドから、無機物、例えば無機塩、または水酸化物、例えば、Ca塩、Zn塩および酢酸塩の添加により、さらに/あるいはポリマー有機物質の添加により形成される。
【0031】
実施形態は、次の目的を達成することのできる薬物送達デバイスを提供する:治療効果を最大化し、望まない副作用を最小化するための放出制御速度(ゼロ次または実質的にゼロ次の放出速度);治療を終了するために必要な場合にデバイスを回収するための便宜な方法;および吸収のばらつきが少なく初回通過代謝のない、バイオアベイラビリティの増加。
【0032】
酢酸オクトレオチドを含む放出制御医薬組成物は、放出制御ヒドロゲルデバイスまたは親水性ポリマーデバイスの一部であり得る。本発明の組成物は、患者に投与されると、少なくとも約2ヶ月、好ましくは少なくとも約6ヶ月またはそれ以上、例えば、約1年まで、または約2年までに及ぶオクトレオチドの放出プロフィールを提供する能力がある。オクトレオチドは、例えばヒドロゲルとともに収容されてよく、処方物は治療有効量のオクトレオチドを長期間にわたって放出する。ヒドロゲルは、例えば、メタクリレート系ポリマー、ポリウレタン系ポリマーおよびそれらの組合せなどの親水性ポリマーを含んでよい。治療有効量は、患者または被験体に投与されると、先端巨大症の1以上の症状を寛解させる、オクトレオチド、好ましくは酢酸オクトレオチドの量である。処方物は、製薬上許容される補形剤をさらに含むことができる。
【0033】
本発明の組成物を患者に投与すると、例えば、経時的に患者の血漿中のオクトレオチドの濃度として測定される、オクトレオチドの放出(放出プロフィール)は、少なくとも約2ヶ月、約6ヶ月、約1年まで、少なくとも約12ヶ月すなわち1年、および/または約2年までの期間にわたり延長することができる。本組成物は、ヒト患者における定常状態でのオクトレオチドの約0.1〜約9ng/mL、約0.5ng/mL〜約1ng/mL、約1〜約2ng/mL、約0.5ng/mL〜約2ng/mL、約1.2〜約1.6ng/mL、または約0.8ng/mL〜約1.8ng/mLの平均血漿中濃度を提供する。定常状態は、投薬間隔の間に投与される薬物の量が、その同じ期間の間に除去される薬物の量と等しくなる時点である。
【0034】
オクトレオチド処方物を含む親水性インプラントは、水を容易に吸収するようにキセロゲルから形成することができる。水和状態では、キセロゲルはヒドロゲルと呼ばれる。いずれの形態(水和形態または非水和形態)においても、それは生体適合性であり、ホストに対して無毒であり、かつ生分解性でない。それは水膨潤性かつ水不溶性である。ヒドロゲルがその水和の最大レベルに達すると、ヒドロゲルの含水量は、「平衡含水量」(EWC)と呼ばれる。ヒドロゲルの含水率(いずれの水和状態でも)は、次のように求められる:
【0035】
【数1】
【0036】
ヒドロゲルは、エチレン性不飽和モノマーAとエチレン性不飽和モノマーB、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)とヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)の混合物の重合により形成される、所定のEWC値を有する、均一なホモポリマーまたはコポリマーであってよい。所定のEWCは、親水性モノマーAのヒドロゲルホモポリマー(ホモポリマーA)のEWC値および親水性モノマーBのヒドロゲルホモポリマー(ホモポリマーB)のEWC値を決定すること;均一なコポリマーABのEWC値の該コポリマーABの化学組成に対する関係を決定すること;目標とするEWC値を選択し、目標とするEWC値を有するコポリマーABの化学組成を決定すること;モノマーAとモノマーBの重合可能な混合物を、目標とするEWC値を有するコポリマーABを生じるために十分な量で形成すること;および、重合反応をもたらして目標とするEWC値を特徴とするコポリマーABを生じること、により算出することができる。
【0037】
本明細書において、「コポリマーAB」または「モノマーA単位およびモノマーB単位から本質的になるコポリマーAB」は、モノマーAとモノマーBの付加共重合が、該モノマーの重合可能なエチレン結合によってもたらされることを意味する。例として、モノマーAが2−ヒドロキシエチルメタクリレートであり、モノマーBがN−メチルアクリルアミドである場合、コポリマーABは、繰り返しモノマーA単位及び繰り返しモノマーB単位を含む。
【0038】
文脈が別に指示しない限り、用語「コポリマー」には、少なくとも2つのエチレン不飽和モノマーの混合物を重合させることにより作成されるポリマーが含まれる。
【0039】
本明細書において、「HEMA単位(群)」とは、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)を含有する親水性材料を重合することにより得られるポリマー中に繰り返される構造をさす。用語「HEMA単位(群)」は、次の構造を意味する。
【0040】
【化2】
【0041】
本明細書において、「HPMA単位(群)」とは、ヒドロキシプロピルメタクリレート(「HPMA」)を含有する親水性材料を重合することにより得られる構造をさす。用語「HPMA単位(群)」は、次の構造を意味する。
【0042】
【化3】
【0043】
親水性生成物において有用な液体の重合可能な材料としては、幅広い種類の重合可能な親水性のエチレン性不飽和化合物、特に、親水性モノマーであって、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸と、エステル化可能な水酸基および少なくとも1つの追加の水酸基を有するポリヒドロキシ化合物のモノエステル、例えば、メタクリル酸およびアクリル酸のモノアルキレンポリオールおよびポリアルキレンポリオールなど、(例、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびアクリレート、ジエチレングリコールメタクリレートおよびアクリレート、プロピレングリコールメタクリレートおよびアクリレート、ジプロピレングリコールメタクリレートおよびアクリレート、グリシジルメタクリレートおよびアクリレート、グリセリルメタクリレートおよびアクリレートなど);2−アルケンアミド(例、アクリルアミド、メタクリルアミドなど);N−アルキルおよびN,N−ジアルキル置換アクリルアミドおよびメタクリルアミド、例えばN−メチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなど;N−ビニルピロリドン;アルキル置換N−ビニルピロリドン(例、メチル置換N−ビニルピロリドン);N−ビニルカプロラクタム;アルキル置換N−ビニルカプロラクタム(例、N−ビニル−2−メチルカプロラクタム、N−ビニル−3,5−ジメチルカプロラクタムなど)が挙げられる。アクリルおよびメタクリル酸も、これらの処方物において有用であり得る。
【0044】
親水性モノマーの混合物が重合反応において使用される。モノマーの種類および割合は、水和により企図される適用または使用に望ましいEWC値を有する均一なポリマー、好ましくは架橋された均一なポリマーを生じるよう選択される。この値は、所定の様々なモノマー比を用いて一連のコポリマー(例、様々な比のHEMAとHPMAの混合物)を調製すること、コポリマーのEWC値を確認すること、および、HPMA/HEMAコポリマーの%HPMA(または%HEMA)単位の、該コポリマーのEWC重量パーセントに対する関係をプロットすることにより、予め決定することができる(図1)。
【0045】
一部の例では、特定の親水性モノマー混合物の重合により、水性媒体中に様々な程度まで溶解する均一な親水性コポリマーがもたらされる。そのような場合、少量の、例えば3パーセントまでの共重合可能なポリエチレン性不飽和架橋剤をモノマー混合物に含めて、水不溶性であると同時に水膨潤性である均一な架橋コポリマーを得ることができる。HEMAのわずかに架橋したホモポリマーは、例えば約38%のEWC値を有することができる。HEMAおよびHPMAの架橋コポリマーは、約38%より低いEWC値を有する。一方、HEMAおよびアクリルアミドの架橋コポリマーは、38%(w/v)より高いEWC値、例えばもっと高く約75%、およびそれ以上を提示する。そのため、特定の適用のためのヒドロゲル送達系に必要な活性化合物、例えば薬物の有用または効果的な溶出速度に応じて、当業者は、本明細書に開示される教示に従って、望ましい速度で薬物を溶出するコポリマーヒドロゲル膜を目的に応じて作ることができる。コポリマーは、例えば、約15%〜約70%(重量)のHEMA単位および約85〜30%(重量)の単位の第2のエチレンモノマーを含み、約20%〜約75%の範囲、好ましくは約25%の所定のEWC値を有することができる。均一なコポリマーには、約60%からのHPMA(重量)、および約20%からのHEMA(重量)を含有する親水性モノマー混合物から作成されるコポリマーが含まれてよい。例えば、均一なコポリマーには、約60%のHPMA(重量)および約40%のHEMA(重量)を含有する、または、約80%のHPMA(重量)および約20%のHEMA(重量)を含有する親水性モノマー混合物から作成されるコポリマーが含まれてよい。さらなる実施形態では、混合物は、少量のポリエチレン性不飽和架橋剤、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート(「TMPTMA」)をさらに含んでよい。
【0046】
一部の実施形態には、親水性モノマーの混合物の重合により形成される均一なポリマー構造をもつ均一な親水性コポリマー;および、送達系において均一なポリマーカートリッジを利用する薬物送達デバイスが含まれる。親水性モノマーと疎水性モノマーの混合物の重合は、不均一なポリマーを生じる。疎水性セグメントがポリマー中に存在する場合、界面の自由エネルギーは増大し、従って動物への埋め込み後のタンパク質吸着および鉱化が強化される。ポリHEMAのヒドロゲルを、例えば、ゼロに近い界面自由エネルギーを有するように測定した。界面自由エネルギーの解釈によれば、厳密に親水性の成分のヒドロゲルは、身体組織に生体適合性である。わずかに架橋したポリHEMAは、比較的一定の特徴または値をもつ、均一で親水性の「ホモポリマー」(その中の比較的少量の重合架橋剤は無視する)。「ホモポリマー」ポリHEMAを変更してそれに付加的な特徴または特性を付与する技法は、困難であり、時間がかかり、多くの場合一貫性のない特性挙動をもたらす。一方、HEMAと様々な量のその他の重合可能な親水性コモノマー(1または複数)との混合物は、重合させて、(所定の)目的に応じて作られた特性を有する、予測可能な均一な親水性コポリマーを得ることができる。
【0047】
重合可能な反応媒質に含めることのできる有用な架橋剤としては、例えば、少なくとも2つの重合可能なエチレン部位を有するポリエチレン性不飽和化合物、例えばジ−、トリ−およびテトラ−エチレン性不飽和化合物、特に、二不飽和架橋化合物、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレートおよびジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレートおよびジアクリレートを含む/含まない三不飽和架橋剤;ならびに、次のポリオールのジ−、トリ−およびテトラ−アクリレートまたはメタクリレートエステル:トリエタノールアミン、グリセロール、ペンタエリトリトール、1,1,1トリメチロールプロパンおよびその他のものが挙げられる。
【0048】
重合反応は、バルクで、または不活性溶媒と共に実行してよい。適した溶媒としては、例えば、水;有機溶媒(例えば、水溶性低級脂肪族一価アルコールならびに多価アルコール、例えば、グリコール、グリセリン、ジオキサンなど;およびそれらの混合物)が挙げられる。
【0049】
重合可能なエチレン性不飽和化合物の触媒作用において有用な化合物としては、フリーラジカル化合物、ならびに/または、有機過酸化物、過炭酸塩、過酸化水素、およびアルカリ金属硫酸塩などのビニル重合において一般に用いられる種類の開始剤が挙げられる。説明となる例としては、限定されるものではないが、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、過酸化水素、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−sec−ブチルペルオキシジカーボネート、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、および硫酸ナトリウムが挙げられる。一実施形態では、触媒は、中程度に低い温度、例えば、約20〜80℃などで効果的である(例えば、tert−ブチルペルオクトエート、過酸化ベンゾイル、およびジ(secブチル)ペルオキシジカーボネート)。
【0050】
従来のレドックス重合触媒も用いることができる。エチレン性化合物の重合は、例えば、放射線、例えば、紫外線、X線、ガンマ線、マイクロ波またはその他の公知の形態の放射線を用いて達成することができる。紫外線硬化のための触媒の例は、ベンゾインメチルエーテルである。触媒および/または開始剤および/または放射線は、重合反応を最適化する触媒有効量で用いられる。
【0051】
一部の実施形態は、生物学活性化合物を制御された速度で長期間にわたって送達するための埋め込み可能な薬物デバイスの創製のために、ポリウレタン系ポリマー、熱可塑性物質または熱硬化性物質の適用に焦点を合わせている。ポリウレタンポリマーは、用いるポリウレタンの種類に応じて、好ましくは、押出、(反応)射出成形、圧縮成形、またはスピンキャスティングによって1または2の開口末端を含む円筒型の中空管にすることができる(参照によりそれらの全文が本明細書に援用される、米国特許第5,266,325号および同第5,292,515号)。
【0052】
熱可塑性ポリウレタンは、押出、射出成形または圧縮成形によって加工することができる。熱硬化性ポリウレタンは、反応射出成形、圧縮成形またはスピンキャスティングによって加工することができる。円筒形の中空管の寸法は、決定可能であり、精密に調整することができる。
【0053】
ポリウレタン系ポリマーは、多官能性ポリオール、イソシアネートおよび連鎖延長剤から合成される。それぞれのポリウレタンの特徴は、その構造に起因し得る。
【0054】
熱可塑性ポリウレタンは、マクロジオール、ジイソシアネートおよび二官能性連鎖延長剤から作成される(参照によりそれらの全文が本明細書に援用される、米国特許第4,523,005号および同第5,254,662号)。マクロジオールは、軟質の(soft)ドメインを構成する。ジイソシアネートおよび連鎖延長剤は硬質の(hard)ドメインを構成する。硬質のドメインは、ポリマーの物理的な架橋部位としてとして役割を果たす。これらの2種類のドメインの比を変化させることにより、ポリウレタンの物理的特徴を変えることができる。
【0055】
熱硬化性ポリウレタンは、多官能性(二官能性より多い)ポリオールおよび/またはイソシアネートおよび/または連鎖延長剤から作成することができる(参照によりそれらの全文が本明細書に援用される、米国特許第4,386,039号及び同第4,131,604号)。熱硬化性ポリウレタンはまた、ポリマー鎖および適切な架橋剤および/または開始剤に不飽和結合を導入して化学架橋を行うことによっても作成することができる(参照によりその全文が本明細書に援用される、米国特許第4,751,133号)。架橋部位の量およびそれらの分布を制御することにより、活性物質の放出速度を制御することができる。
【0056】
所望の特性に応じてポリオールの主鎖を変更することによって、様々な官能基をポリウレタンポリマー鎖に導入することができる。デバイスが水溶性の薬物の送達に使用される場合、親水性のペンダント基、例えばイオン基、カルボキシル基、エーテル基、およびヒドロキシ基などをポリオールに組み込んで、ポリマーの親水性を増加させる(参照によりそれらの全文が本明細書に援用される、米国特許第4,743,673号および同第5,354,835号)。デバイスが疎水性の薬物の送達に使用される場合、疎水性ペンダント基、例えばアルキル基、シロキサン基などをポリオールに組み込んで、ポリマーの疎水性を増加させる(参照によりその全文が本明細書に援用される、米国特許第6,313,254号)。活性物質の放出速度はまた、ポリウレタンポリマーの親水性/疎水性により制御することもできる。
【0057】
1種類以上の離型剤は、所望により本明細書に記載される埋め込み可能な薬物送達デバイスのポリマーに含められる。カートリッジが型を用いて製造される実施形態に関して、例えば、カートリッジを型から取り出すのに役立つように、1種類以上の離型剤が所望によりカートリッジのポリマーマトリックス中に存在する。
【0058】
離型剤は、一般に、成形品を型から効果的に開放させる能力のある化合物である。本明細書に記載されるデバイスに関して、離型剤は、一般に、重合可能な反応媒質と、該重合可能な材料を型に導入する前に組み合わされる。
【0059】
埋め込み可能なデバイスでの使用に適した離型剤は、患者への導入に対して安全であり、成形品のポリマーと例えば、物品の構造の弱体化を引き起こすことにより不利に反応せず、かつ、所望によりポリマーカートリッジを滅菌の有害作用から保護する。理論に縛られるものではないが、分子量のより大きい離型剤のほうが、分子量のより小さい離型剤によりもたらされる放出特性よりも改良された放出特性をもたらすと考えられる。したがって離型剤は、約1000を超える分子量(MW)を有してよい。他の実施形態では、離型剤は、約1200を超える、約1000〜約2000、または約1200〜約1800の間のMWを有する。
【0060】
適した離型剤には、非イオン性界面活性剤が含まれる。一部の実施形態では、例えば、離型剤は、ビタミンE TPGSである。ビタミンE TPGSは、D−α−トコフェロール(ビタミンE)ポリエチレングリコール1000コハク酸エステルの略語である。非イオン性界面活性剤離型剤は、優れた開放特性を提供し、成形品と非反応性であると同時にインプラントに適した安全性プロフィールを提供する。これらの離型剤は、その上、抗酸化剤またはフリーラジカルスカベンジャーとしての役割を果たすことができ、そのために、成形品の滅菌、特に放射線照射法を含むフリーラジカルを生成し得る滅菌方法に関連する成形品への有害作用を阻止または低減することができる。特定の実施形態では、離型剤は所望のモノマー混合物に溶解する。親水性モノマー材料、例えばHEMA、HPMAおよびHBMAの組合せなどは、成形プロセスの間に、両親媒性離型剤、例えばビタミンE TPGSなどと組み合わせて使用することができる。
【0061】
非イオン性界面活性剤は、当技術分野で公知であり、一般にポリエチレングリコール親水性尾部および親油性頭部からなってよい。例えばビタミンE TPGSに関して、親油性頭部は、トコフェロールコハク酸エステルであり、Triton X−100に関して、それはイソオクチルフェニル基である。非イオン性界面活性剤は、いくつかのパラメータ、例えば、ポリエチレングリコール尾部の親油性頭部に対するサイズに関連する親水性−親油性バランス(HLB);ミセルが形成される界面活性剤の濃度である、臨界ミセル濃度(CMC);および、同様の特性をもつその他の界面活性剤に対する、親水性部分および親油性部分のサイズを表す、MWにより特徴付けることができる。その上、CMCは界面活性剤の表面活性を示し、低いCMCは、より強い結合力のためにより安定したミセルを示す。下の表は、いくつかの界面活性剤およびその物理的特性を記載する。
【0062】
【表1】
【0063】
埋め込み可能なデバイスと組み合わせて使用するためのさらなる離型剤としては、限定されるものではないが、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(5)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(etheylene)(20)ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン(10)イソオクチルフェニルエーテルなど、またはこれらの離型剤の組合せが挙げられる。
【0064】
ある種の実施形態では、離型剤は、脂肪酸またはその他の疎水性化合物のポリオキシエチレンエステルである。これらの化合物は、当技術分野で公知であり、ポリオキシエチレン尾部および飽和もしくは不飽和疎水性頭部を含む。様々な実施形態の疎水性部分には、任意の芳香族基含有部分または多環式芳香族部分、例えば、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、トコフェロール、ビタミンEなどが含まれてよく、イソプレノイドであっても非イソプレノイドであってもよい。これらの芳香族部分に結合する側鎖は任意の長さであってよく、その上に任意の数の二重結合および/または置換を含むことができる。例えば、非イオン性界面活性剤としては、限定されるものではないが、任意のイソ型、ラセミ化合物、または化学修飾された誘導体を含む天然に存在するかまたは商業的に製造されるトコフェロール、例えば、ビタミンE TPGSなどを挙げることができる。トコフェロールとしては、トコフェロールの酸化生成物、例えばα−トコフェロール、トコフェロールキノン、トコフェロールヒドロキノン、エポキシトコフェロール、およびニトロトコフェロールの酸化生成物なども挙げることができる。
【0065】
小型の円筒状の形状のインプラントは、そのコアの内部に、オクトレオチド、例えば酢酸オクトレオチド、および必要により製薬上許容される担体を含有することができる。インプラントの膜厚(内側表面と外側表面との間の厚さ)は、実質的に均一であり、収容される薬剤の放出のための速度制御バリアとしての役割を果たす。かかるインプラントは、可塑化されるかまたは水和されて、様々な医学的適用で使用するためのその他の幾何学的に成形された物品に再形成することができる。
【0066】
埋め込み可能な処方物の製造では、いくつかの要因が考慮され得る。放出プロフィール(遅延時間、放出速度、および持続時間)を決定し、親水性ポリマー材料を特定し、そして、処方物を通しての(速度制御膜としての)活性薬剤の拡散率を測定する。所与活性薬剤に対する速度制御膜の水和プロフィールは、選択されるポリマーのフィルムを調製し、当技術分野で公知のように、2区画の垂直ガラスセルを用いてそれを拡散試験に供することにより、容易に決定することができる。
【0067】
拡散開始時の拡散係数および含水量(それより低いと実質的に拡散は起こらない−以降、「%Hd」)を決定する。一連の膜を、様々なポリマーから調製する。次に、それらの最大収容能力まで膜を水和し、それらのEWCを測定する。完全に水和した膜を、測定するための2区画の垂直ガラスセルに入れ、膜材料を通した高分子組成物の拡散を様々なEWCでプロットする。それを通して拡散が検出されない(例えば、活性薬剤が全くレセプターセルに拡散しない)、最も水和した膜のEWCが、試験される系の%Hdである。これは、透過性のEWCに対する曲線をプロットすることにより達成することができる。
【0068】
透過性の結果(拡散係数)は、フィックの拡散に関する第一法則に従って、次の方程式を用いることにより得られる。
【0069】
【数2】
【0070】
〔式中、dQ/dtは、膜材料を通した流量(μg/時)であり;それは累積輸送の時間に対する曲線の直線部分の傾きとして測定され;Aは、膜の面積(cm2)であり;Pは、膜の透過係数(cm2/時)であるか、またはDKdであり、Dは、膜の拡散率(cm2/時)であり、Kdは、膜/ドナー溶液の分配係数であり;lは、実験の終わりに測定される膜厚(cm)であり;かつ、Cdは、ドナー溶液の濃度(μg/cm3)である〕
【0071】
次に、放出遅延プロフィールを決定することができる。別の一連のポリマー膜を、この場合もやはり架橋剤およびモノマーの量を変化させて、調製してよい。次に、これらの膜を水和させるが、ほんの一部分、例えば、%Hd未満かまたはそれに等しい含水量まで水和させる。部分的に水和させた膜を、測定するための2区画の垂直ガラスセルに入れて、膜を通した活性化合物の拡散を時間に対してプロットする。ドナーセルおよびレセプターセルの緩衝液は、部分的に水和した膜に接触し、さらに送達環境で膜が水和する速度とほぼ同じ速度で膜を水和するように選択することができる。拡散実験の開始時点、すなわち活性薬剤をドナーセルに添加する時点と、レセプターセル中の活性薬剤の薬剤的に有効な濃度の検出時点との間の時間が、ポリマーと初期水和率のその組合せに対する放出遅延時間である。
【0072】
円筒状の形状のデバイスの物理的寸法を決定するため、送達される予定の活性薬剤の総量を決定する。これは、所望の1日投与量と送達の持続時間の積である。好ましい実施形態では、送達の持続時間は、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約6ヶ月、または約2年までである。所望の1日投与量は、例えば、1日あたり約10〜約1000μgのオクトレオチド、約1日あたり20〜約800μgのオクトレオチド、1日あたり約75〜約300μgのオクトレオチド、または1日あたり約30〜約300μgのオクトレオチドであってよい。
【0073】
円筒状の形状のデバイスの円筒状のリザーバ(コア)の容積は、Πri2hに等しく、この際、riは、リザーバの半径であり、hはその高さである。シリンダーからの定常状態での放出のための式は:
【0074】
【数3】
【0075】
〔式中、roは、円筒状のデバイスの外側半径であり;かつ、Cdは、ドナー溶液、すなわち担体中の薬物の濃度である〕である。定常状態での放出は、Cdが飽和状態で維持されているときに得られる。所望の持続放出に必要な膜の厚さは、そのため、ro−riとなる。
【0076】
用いる活性薬剤の量は、所望の日用量だけでなく、用量レベルを維持する日数にも依存する。この量は経験的に算出することができるが、送達される実際の用量は、デバイスに用いる場合、材料および担体との任意の相互作用の関数である。
【0077】
ひとたび適切なポリウレタンポリマーが選択されれば、円筒状の形状のインプラントを作製するための最善の方法は、本明細書に記載されるような好適な送達特性を達成するように当業者が決定することができる。
【0078】
熱可塑性ポリウレタンに関して、精密な押出および射出成形を用いて、2つの開口末端をもつ一貫した物理的寸法の中空管を製造することができる。リザーバは、活性薬剤(「活性物質」)および担体を含有する適切な処方物を自由に装入してもよいし、予め加工されたペレットで満たして活性物質を最大限に装入してもよい。2つの開口末端を密封するため、予め加工された2つの末端プラグを使用してよい。密封工程は、熱または溶媒あるいは好ましくは永久的に両端を密封するための任意のその他の手段の適用により達成してよい。
【0079】
熱硬化性ポリウレタンに関して、精密な反応射出成形またはスピンキャスティングを硬化機構に応じて使用することができる。反応射出成形は、硬化機構が熱によって実施される場合に使用され、スピンキャスティングは、光および/または熱によって実施される場合に使用される。1つの開口末端をもつ中空管は、例えば、スピンキャスティングにより製造することができる。2つの開口末端をもつ中空管は、例えば、反応射出成形により製造することができる。リザーバは、熱可塑性ポリウレタンと同じ方法で装入されてよい。
【0080】
適切な光開始および/または熱開始熱硬化性ポリウレタン処方物を用いて開口部を塞ぐことができる。この処方物は、光および/または熱によって硬化され、それにより事前に開口末端を密封する。適切な光開始および/または熱開始熱硬化性ポリウレタン処方物を予め加工された末端プラグと開口末端との間の界面に適用することにより、予め加工された末端プラグを用いても開口末端を密封することができる。このプラグは、光および/または熱若しくは任意のその他の両端部を密封する手段によって、好ましくは永久に、硬化することができる。固体の活性薬剤および任意選択の担体を、ペレット形態に圧縮して、活性物質を最大限に装入することができる。
【0081】
インプラントの外部表面積、例えば、ポリマーカートリッジすなわち中空管の外部表面積は、変動し得る。一部の実施形態では、ポリマーカートリッジの表面積は、約350cm2〜約1500cm2の表面積を有し得る。水和インプラントと、キセロゲル(例えば、非水和または乾燥)インプラントは、異なる寸法を有し、そのために、異なる表面積を有する。一部の実施形態では、離型剤は、より大きなインプラントデバイスの調製物中で使用される。キセロゲルの、非水和または乾燥、インプラントは、例えば約350cm2またはそれ以上の表面積を有してよい。あるいは、キセロゲルの、非水和または乾燥インプラントは、約350cm2〜約1500cm2、または約350cm2〜約600cm2の表面積を有してよい。乾燥インプラントは、例えば、378cm2〜660cm2の表面積を有してよい。その上、水和インプラントは、約500cm2またはそれ以上の表面積を有してよい。あるいは、水和インプラントは、約600cm2〜約1500cm2、または約600cm2〜約800cm2の表面積を有してよい。本明細書において、用語「水和インプラント」とは、含水量が5%(重量)、またはそれ以上であり、従って軟質で柔軟なインプラントをさす。本明細書において、「乾燥インプラント」とは、硬質で柔軟性のない、一部の実施形態では5%(重量)未満、その他の実施形態では1%(重量)未満の含水量を有するインプラントをさす。
【0082】
埋め込み可能なデバイスは、当技術分野で公知の任意の適した手段により、例えば、穿孔処理により(皮下埋め込み用)またはその他の手段により、例えば、開腹手術(open surgery)によりヒトまたはその他の動物の皮下に挿入されてよい(米国特許第5,266,325号、デバイスを埋め込むために使用することのできる方法およびデバイスの例を開示する;米国特許第5,266,325号の全内容は、参照により本明細書に援用される)。埋め込み可能なデバイスは、ヒトまたは動物の皮下に、例えば穿孔処理により挿入されてよい。その上、2つ以上のデバイスを、一度に、例えば、実質的に同時にヒトまたは動物に埋め込んで、複数のデバイスがヒトまたは動物にインプラントとして存在するようにすることができる。従って、一部の実施形態では、少なくとも1つのデバイスがヒトまたは動物に埋め込まれる。あるいは、複数のデバイスを順次に埋め込んで、常に一つのデバイスだけがヒトまたは動物に存在するようにすることができる。
【0083】
埋め込みの前に、埋め込み可能な処方物は、必要に応じて所定の期間水和する、すなわち「プライミングする(priming)」ことができる。プライミングは、活性成分がヒドロゲルの壁に浸透し、飽和し始め、さらに、インプラントをプライミングする時間の量に応じて埋め込みの前にヒドロゲルから潜在的に浸出し始めさせることを可能にすることができる。プライミングしたインプラントは、活性成分を実質的に埋め込みによって放出し始め、結果として埋め込みのすぐ後に薬物のピーク放出をもたらすことができる。対照的に、少ししかプライミングされていないか全くプライミングされていない状態では、インプラントが水和した状態になり有効成分が放出され始めるまでの時間、埋め込みによって活性成分が実質的に放出されないという結果になり得る。これらのプライミング特性は、使用される具体的な処方物によって決まる。
【0084】
活性成分の種類(親水性または疎水性)によって、適切なコンディショニングおよびプライミング媒体が選択される。水系媒体は、親水性の活性物質に好ましく、油系媒体は、疎水性の活性物質に好ましい。あるいは、特定のインプラントは、埋め込みの前にプライミングされる必要がない。一部の例では、プライミングは、活性薬剤の送達を制御された様式で改良するが、その他の例では、被験体への埋め込みの前のプライミングは、インプラントをプライミングするために必要な追加された時間および煩わしさを正当化するほど送達に影響を及ぼさない。
【0085】
本発明の実施に有用な水和液は、一般に活性化合物が放出されることになる環境、例えば、体液、滅菌水、涙液、生理食塩水溶液、リン酸緩衝溶液などを模した液体である。水以外の液体が水和液として有用であるが、親水性の膜が水和する程度は、その「含水量」と呼ばれる。
【0086】
薬物送達デバイスのプライミングおよびコンディショニングは、リザーバを取り巻くポリマーの中に活性物質(薬物)を装入し、従ってインプラントを実際に使用する前に活性物質の損失を防ぐことを伴う。コンディショニングおよびプライミング工程に用いる条件は、活性薬剤、それが実施される温度および媒体によって決まる。コンディショニングおよびプライミングのための条件は、一部の例で同じであってよい。
【0087】
薬物送達デバイスの作製プロセス中のコンディショニングおよびプライミング工程は、具体的な薬物の所定の放出速度を得るために行われる。親水性薬物を含有するインプラントのコンディショニングおよびプライミング工程は、水性媒体中、例えば生理食塩水中で行うことができる。疎水性薬物については、媒体は、例えば、シクロデキストリンを含む、血漿様媒体とすることができる。コンディショニングおよびプライミング工程は、3つの具体的な要因、すなわち温度、媒体および期間を制御することにより実施される。
【0088】
薬物送達デバイスのコンディショニングおよびプライミング工程が、デバイスが入れられる媒体により影響されることを当業者は理解するであろう。
【0089】
薬物送達デバイスのコンディショニングおよびプライミングの用いる温度は、広い温度範囲にわたって変動する可能性があるが、一部の実施形態では、37℃が用いられる。
【0090】
薬物送達デバイスのコンディショニングおよびプライミングに用いられる時間は、具体的なインプラントまたは薬物に望ましい放出速度に応じて、約1時間から、約1〜約12時間、約2〜約24時間、約1日、または数週まで、例えば6週まで、様々であり得る。
【0091】
インプラントをコンディショニングおよびプライミングする工程は、適切であるかまたは必要である場合、インプラントの内部に収容される薬物の放出速度を最適化させるためのものであることを当業者は理解するであろう。そのようなものとして、薬物送達デバイスのコンディショニングおよびプライミングに費やす時間が短いほど、例えば、長いコンディショニングおよびプライミング工程を受けた同様の薬物送達デバイスと比較して、薬物の放出速度が遅くなり得る。しかし、プライミングしないと、意外にも、より長い期間(例えば、28週およびそれ以上)にわたり効果的な放出が起こることが見出され、より低い有効成分の血清濃度が改善効果を有することが見出された。
【0092】
コンディショニングおよびプライミング工程中の温度も放出速度に影響を及ぼし得て、低い温度のほうが、高い温度で処置を受けた同様の薬物送達デバイスと比較した場合に、薬物送達デバイスに含められる薬物の放出速度が遅くなる。同様に、水溶液、例えば生理食塩水の場合、該溶液の塩化ナトリウム含量が、薬物送達デバイスの放出速度を決定する。より具体的には、塩化ナトリウム含量の高いコンディショニングおよびプライミング工程を受けた薬物送達デバイスと比較した場合に、塩化ナトリウムの含量が低いほど薬物の放出速度が高くなり得る。
【0093】
インプラントの位置を特定するため、放射不透過性材料をリザーバの中に挿入することにより、またはカートリッジを密封するために使用される末端プラグの中に放射不透過性材料を入れることにより、放射不透過性材料を送達デバイスに組み込んでよい。
【0094】
本発明の処方物は、製薬上許容される担体を含んでよく、担体には、例えば、懸濁媒体、溶媒、水系および固体基質またはマトリックスが挙げられる。担体として有用な懸濁媒体および溶媒としては、例えば、油類、例えば、シリコーン油(特に医療等級のもの)、トウモロコシ油、ヒマシ油、ピーナッツ油およびゴマ油;ヒマシ油とエチレンオキシドの縮合生成物;低分子量脂肪酸の液体グリセリルトリエステル類;低級アルカノール類;グリコール類;およびポリアルキレングリコール類が挙げられる。水系としては、例えば、滅菌水、生理食塩水、デキストロース、水または生理食塩水中のデキストロースなどが挙げられる。水系に電解質が存在すると、水系中の高分子薬物の溶解度を低下させる傾向があり得る。固体基質またはマトリックスとしては、例えば、デンプン、ゼラチン、糖類(例えば、グルコース)、天然ゴム類(例えば、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム)、修飾されたセルロース類(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、加工デンプン、架橋ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。一部の実施形態では、本医薬処方物は、約2%〜約20%(例えば、約10%)のヒドロキシプロピルセルロースをさらに含む。
【0095】
また、担体は、アジュバント;保存剤、安定化剤、湿潤剤および乳化剤など;あるいはその他の補形剤、例えば、流動促進剤(glidant)、溶解剤、界面活性剤、希釈剤、結合剤、崩壊剤、および/または滑沢剤なども含むことができる。一部の実施形態について、例えば、担体は、補形剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、植物性ステアリン、タルクまたはシリカを含む。
【0096】
一部の実施形態では、本医薬処方物は、HEMAとHPMAのコポリマー、例えば約20%のHEMAと約80%のHPMAの混合物中に酢酸オクトレオチドの処方物を含む。本医薬処方物は、例えば、約20〜約150mgのオクトレオチド、約40〜約120mg、または約40〜約90mgのオクトレオチドを含むことができる。一部の実施形態では、例えば、本医薬処方物は、約50mgのオクトレオチド、または約85mgのオクトレオチドを含む。本処方物は、約2%〜約20%の間の補形剤をさらに含むことができる。本処方物はまた、約10%のヒドロキシプロピルセルロースおよび/または約2%のステアリン酸マグネシウムを含むことができる。
【0097】
医薬処方物は、例えば、HEMAとHPMAのコポリマー、例えば、約40%のHEMAと約60%のHPMAの混合物中の約83mgのオクトレオチドの処方物を含むことができる。さらなる実施形態では、本処方物は、さらに約10%のヒドロキシプロピルセルロースおよび2%のステアリン酸マグネシウムを酢酸オクトレオチドとともに含む。
【0098】
また、医薬処方物は、ポリウレタン系ポリマー中約20mg〜約150mg、約40〜約120mg、または約40mg〜約90mgのオクトレオチドの処方物を含むことができる。
【0099】
疾患または障害を治療する、またはその症状を軽減する方法、例えば、ホルモン障害に関連する疾患、例えばGHまたはIGF−1ホルモン障害またはその症状を治療する方法、が提供される。この方法には、オクトレオチドを、それを必要とする被験体に、被験体に投与されるオクトレオチドの用量が約0.8ng/mL〜約1.8ng/mLの範囲のオクトレオチド血清レベルをもたらすように、あるいは被験体に投与されるオクトレオチドの用量が約1.3ng/mLよりも低くなるCmaxを有するオクトレオチド血清レベル、または約1.0ng/mLよりも低くなるCmaxを有するオクトレオチド血清レベルをもたらすように投与することが含まれ得る。一部の実施形態では、本明細書に記載される少なくとも1つの埋め込み可能なデバイスは、それを必要とする被験体に埋め込まれ、そのデバイスはオクトレオチドを被験体に実質的にゼロ次放出プロフィールで長期間にわたり、例えば6ヶ月以上にわたり、送達する。そのデバイスは、皮下に、水和状態または乾燥状態で埋め込むことができる。そのデバイスはまた、親水性ポリマーに収容されたオクトレオチド含有調製物を含んでよく、親水性ポリマーは1以上のポリウレタン系ポリマー、または1以上のメタクリレート系ポリマーを含んでよい。一部の実施形態では、オクトレオチドの放出の遅延が観察され、それは埋め込みの日から約1日またはそれ以上持続する。
【0100】
一部の実施形態では、オクトレオチドを、実質的にゼロ次放出プロフィールで長期間、但し6ヶ月以上にわたって、それを必要とする被験体に送達するための方法が提供され、その方法は、障害を治療するかまたはその症状を軽減するために効果的な用量のオクトレオチドを被験体が毎日少なくとも約6ヶ月の期間にわたって投与されるように、親水性ポリマーに入れられたオクトレオチド含有調製物を含む少なくとも1つの埋め込み可能なデバイスを、それを必要とする被験体の皮下に乾燥状態で埋め込むことを含む。
【0101】
この方法はまた、オクトレオチドを投与すること、それにより、例えば、GHおよび/またはIGF−1を低下させること、および、定常状態でのオクトレオチドの血漿中濃度を約0.1ng/mL〜約9ng/mLの間で長期間、例えば、少なくとも約2ヶ月、約6ヶ月、約1年まで、少なくとも約12ヶ月すなわち1年の間、および/または約2年まで維持することが含まれ得る。定常状態でのオクトレオチドの血漿中濃度は、例えば、約1ng/mL〜約4ng/mLの間、約1ng/mL〜約2ng/mLの間、または約1.2ng/mL〜約1.6ng/mLの間で、長期間、例えば少なくとも約2ヶ月、および約6ヶ月、および約2年まで維持することができる。ホルモン障害には、例えば、先端巨大症が含まれる。
【0102】
本発明はさらに、本明細書に記載される少なくとも1つのインプラント、2つのインプラント、あるいは2以上のインプラントを投与することを含む、先端巨大症を治療する方法に関する。投与されるそれぞれのインプラントは、約20〜約150mgのオクトレオチド、約40〜約90mgのオクトレオチド、または約50mgのオクトレオチドを含むことができ、治療有効量のオクトレオチドを少なくとも2ヶ月、約6ヶ月、または約2年までの期間にわたって放出することができる。
【0103】
本発明はさらに、カルチノイド腫瘍、VIP産生腫瘍、および神経内分泌腫瘍に関連する症状、例えば、重度の下痢、水様下痢、および潮紅などを治療する方法に関し、ならびにカルチノイド症状群を治療する方法に関する。本発明はさらに、化学療法およびAIDSに関連する症状を治療する方法に関する。
【0104】
カルチノイド腫瘍は通常、虫垂、気管支、結腸、または小腸に現れ、血管の拡張を引き起こす化学物質−例えばセロトニンなどを分泌する。血管拡張は、通常カルチノイド腫瘍に観察される症状、例えば下痢、潮紅、および喘息などの原因であり得る。カルチノイド腫瘍により分泌されるホルモンおよび生化学物質によって、まとめてカルチノイド症状群として公知の、多数の症状が存在する。生化学的に、カルチノイド腫瘍を持つ人々は、アミノ酸トリプトファンをベースとして用いてより多くのセロトニンを産生する傾向がある。セロトニンは、身体内でさらに分解されて5−ヒドロキシインドール酢酸(5−HIAA)を産生し、それはそのような患者の尿中に見られる。
【0105】
本発明はまた、治療有効量のオクトレオチドを少なくとも約2ヶ月、約6ヶ月および約2年まで放出する、オクトレオチドの埋め込み可能な処方物を投与することによる、カルチノイド腫瘍に関連する水様下痢、重度の下痢および潮紅症状の発現を治療する方法にも関する。
【0106】
本発明はまた、増殖性糖尿病性網膜症、酒さ、膵炎、消化管出血、膵瘻および腸瘻、グレーブス眼症およびバセドウ眼症、緑内障、および血管新生に関連する角膜疾患からなる群から選択される状態を治療する方法にも関し、該方法は親水性ポリマーに収容されたオクトレオチド含有調製物を含む少なくとも1つの埋め込み可能なデバイスを皮下に乾燥状態で埋め込むことを含み、オクトレオチド含有調製物ではなく親水性ポリマーは、ビタミンE TPGSをさらに含む。
【0107】
本明細書に記載される処方物は、インプラントの治療効果を最大化すると同時に有害な副作用を最小化する、特定の望ましい放出プロフィールを提示する。所望の放出プロフィールは、薬物または活性薬剤の最大血漿中濃度(Cmax)および定常状態での薬物または活性薬剤の血漿中濃度(Css)で表すことができる。例えば、処方物の投与によって被験体の受け取るオクトレオチドの用量は、Cmaxが約1.3ng/mLよりも低い被験体のオクトレオチド血清レベルをもたらすか、または、Cmaxが約1.0ng/mLよりも低いオクトレオチド血清レベルをもたらす用量となる。
【0108】
また、本発明は、埋め込みによって、オクトレオチドが、約0.1ng/mL〜約9ng/mL、約0.5ng/mL〜約1ng/mL、約1ng/mLおよび約4ng/mL、約1ng/mL〜約2ng/mL、または約1.2ng/mL〜約1.6ng/mLのCssを提供および/または維持する速度で放出される、ヒドロゲルおよびオクトレオチドの治療組成物に関する。さらなる実施形態は、埋め込みによって、オクトレオチドが、長期間にわたって1日あたり約10μg〜約1000μg、例えば、1日あたり約20μg〜約800μg、約30μg〜約800μg、約75μg〜約300μgまたは1日あたり約30μg〜約300μgの速度で放出される、ヒドロゲルおよびオクトレオチドの治療組成物である。オクトレオチドは、少なくとも約2ヶ月、約6ヶ月、少なくとも約12ヶ月すなわち1年、または約2年まで期間にわたって放出することができる。ヒドロゲルは、メタクリレート系ポリマーまたはポリウレタン系ポリマーを含むことができる。
【0109】
その他の実施形態は、オクトレオチドおよび親水性ポリマーを含む放出制御処方物(例えば、親水性ポリマーに収容されたオクトレオチド含有調製物を含む放出制御処方物)であり、この放出制御処方物は、1日あたり約30μg〜約800μgの速度で少なくとも約2ヶ月、約6ヶ月、約1年、少なくとも12ヶ月すなわち1年、または約2年にわたりインビトロでオクトレオチドの放出を許容するうえで効果的である。一部の実施形態では、送達は、1日あたり約100μg〜約250μg、または1日あたり約100μg〜約130μgである。さらなる実施形態では、処方物の親水性ポリマーは、インビトロで1日あたり約100μgの平均速度でオクトレオチドの放出を許容する。一部の実施形態では、放出制御処方物は、少なくとも1000の分子量(MW)を有する離型剤をさらに含む。親水性ポリマーは、ポリウレタン系ポリマーおよびメタクリレート系ポリマーから選択することができる。
【0110】
本発明のさらなる実施形態は、親水性ポリマー、例えば、ポリウレタン系ポリマーおよびメタクリレート系ポリマーなどに収容されたオクトレオチド含有調製物を含む埋め込み用の放出制御処方物に関し、前記放出制御処方物は、インビボで約6ヶ月にわたり1日あたり約30μg〜約800μgの速度でオクトレオチドの放出を許容するうえで効果的であり、オクトレオチド含有調製物でなくて親水性ポリマーは、少なくとも1000の分子量(MW)を有する離型剤をさらに含む。
【0111】
本発明のなおさらなる実施形態は、オクトレオチドを含む埋め込みのための放出制御処方物であり、この処方物は、約6週間後に処方物からの約20%以下のオクトレオチドのインビトロ放出;および、約6ヶ月後に処方物からの約60%のオクトレオチドのインビトロ放出を許容するうえで効果的なオクトレオチドを親水性ポリマー中に含む。
【0112】
本発明の医薬組成物に含められる製薬上許容されるオクトレオチド(例えば、その様々な塩、溶媒和状態(salvation states)、またはプロドラッグ)の量は、多様な要因によって変化し、それには、例えば、用いる具体的なオクトレオチド、所望の投薬レベル、用いるヒドロゲルの種類および量、ならびに、組成物に含められる追加の材料の存在、種類および量が含まれる。処方物中のオクトレオチドまたはその誘導体の量は、化合物の効果的な薬物送達のための所望の用量、化合物の分子量、および化合物の活性によって変化する。用いる薬物の実際量は、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、疾患または任意のその他の医学的判定基準によって変化し得る。実際の薬物量は、当技術分野で公知の技法により意図される医学的用途に従って決定される。本発明に従って処方された医薬品投薬量は、主治医に決定されるとおり例えば約6ヶ月ごとに1回投与することができる。
【0113】
オクトレオチドは、インプラントまたはその他の医薬組成物中に、約20mg〜約150mg、例えば、約40〜約120mgのオクトレオチド、約40〜約90mgのオクトレオチド、または約50〜約85mgの量で処方されてよい。成人に関して、先端巨大症の治療のための日用量は、一般に1日あたり約300μg〜約600μgの即時放出オクトレオチド(100μgまたは200μgのSandostatin(登録商標))である。組成物中のオクトレオチドの量は、例えば、長期間にわたって1日あたり約10μg〜約1000μg、1日あたり約20μg〜約800μg、または1日あたり約30μg〜約300μgを放出する様に選択することができる。そのような放出速度は、長期間にわたり約0.1〜約9ng/mLの患者の血液中の望ましい治療レベルを維持する。
【0114】
オクトレオチドが含められているヒドロゲルデバイスは、患者の血漿中へのオクトレオチドの放出制御を提供する。本発明の医薬組成物における使用のためのオクトレオチドの放出速度を制御するために適したヒドロゲルには、親水性モノマーのポリマーが含まれ、それには、限定されるものではないが、HPMA、HEMAなどが挙げられる。そのようなヒドロゲルはまた、オクトレオチドの分解およびその組成物からの損失を防ぐ能力がある。
【0115】
医薬処方物は、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとヒドロキシプロピルメタクリレートの親水性コポリマーの中に酢酸オクトレオチドを含んでよい。本医薬処方物のコポリマーは、例えば、約20%のHEMAおよび約80%のHPMAを含んでよい。本医薬処方物のコポリマーは、あるいは、例えば、約40%のHEMAおよび約60%のHPMAを含んでよい。
【0116】
インプラントのサイズ、形状および表面積を変更して、インプラントからのオクトレオチドの放出速度を増加または低下させることができる。
【0117】
本医薬組成物には、助剤または補形剤、例えば、流動促進剤、溶解剤、界面活性剤、希釈剤、低温溶融結合剤を含む結合剤、崩壊剤および/または滑沢剤も含まれてよい。溶解剤は、投薬処方物からのオクトレオチドの溶解速度を増加させ、オクトレオチドの溶解度を増大させることにより機能することができる。適した溶解剤としては、例えば、クエン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸、酢酸、リンゴ酸、グルタル酸およびアジピン酸などの有機酸が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし組み合わせて用いてもよい。これらの物質は、緩衝系を作るために、該酸の塩と組み合わせてもよい(例えばクエン酸ナトリウムとクエン酸)。
【0118】
オクトレオチドの治療上有効な血漿中濃度プロフィールの溶解および確立の際の微小環境のpHを変更することのできるその他の物質には、無機酸の塩および水酸化マグネシウムが含まれる。使用することのできるその他の物質は、界面活性剤およびその他の可溶化材料である。本発明の医薬組成物での使用に適した界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ポリエチレン、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、安息香酸ベンジル、セトリミド、セチルアルコール、ドクサートナトリウム、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、レシチン、中鎖トリグリセリド、モノエタノールアミン、オレイン酸、ポロキサマー、ポリビニルアルコールおよびソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0119】
本明細書に記載される医薬組成物での使用に適した希釈剤としては、例えば、製薬上許容される不活性増量剤、例えば、微晶質セルロース、ラクトース、スクロース、フルクトース、グルコースデキストロース、またはその他の糖類、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、セルロース、エチルセルロース、セルロース誘導体、カオリン、マンニトール、ラクチトール、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、またはその他の糖アルコール類、乾燥デンプン、サッカリド、デキストリン、マルトデキストリンまたはその他の多糖類、イノシトールあるいはそれらの混合物などが挙げられる。希釈剤は、水溶性希釈剤であってよい。希釈剤の例としては、例えば、FMC Corporationより入手可能なAvicel PH112、Avicel PH101およびAvicel PH102などの微晶質セルロース;ラクトース一水和物、無水ラクトース、およびPharmatose DCL21などのラクトース;Penwest Pharmaceuticalsより入手可能なEmcompressなどの第二リン酸カルシウム;マンニトール;デンプン;ソルビトール;スクロース;ならびにグルコースが挙げられる。希釈剤は、具体的な組成物に合わせるために圧縮特性に注意を払って慎重に選択される。希釈剤は、放出制御組成物の約2%〜約80重量%、例えば、約20%〜約50重量%の量で使用することができる。
【0120】
流動促進剤は、加工の間の流動性および成分の圧縮性を改良するために使用される。適した流動促進剤としては、例えば、コロイド状二酸化ケイ素、例えば、四塩化ケイ素などのケイ素化合物の、例えば、気相加水分解により調製することのできるサブミクロンのヒュームドシリカが挙げられる。コロイド状二酸化ケイ素は、Cabot Corporation(商品名:Cab−O−Sil(登録商標));Degussa,Inc.(商品名:Aerosil(登録商標));およびE.I.DuPont & Co.を含む多数の供給源から市販されているサブミクロンの非晶質粉末である。コロイド状二酸化ケイ素は、数ある中で、コロイド状シリカ、ヒュームドシリカ、軽質無水ケイ酸、無水ケイ酸およびヒュームド二酸化ケイ素としても公知である。一実施形態では、流動促進剤は、Aerosil(登録商標)200を含む。
【0121】
本発明の医薬組成物での使用に適した崩壊剤としては、例えば、デンプン、グリコール酸ナトリウムデンプン、クロスポビドン、クロスカルメロース、微晶質セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、メタクリル酸カリウム−ジビニルベンゼンコポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、チラミド(thylamide)、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、デンプン誘導体、デキストリン、βシクロデキストリン、デキストリン誘導体、酸化マグネシウム、クレイ、ベントナイトおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0122】
活性成分、例えば、オクトレオチドまたはその塩は、製薬上許容され、かつ活性成分に適合する補形剤とともに、本明細書に記載される治療方法での使用に適した量で混合することができる。当業者に公知であるように様々な補形剤をオクトレオチドと均一に混合することができる。例えば、オクトレオチドは、限定されるものではないが、微晶質セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、ラクトース、デンプン、ソルビトール、シクロデキストリンおよびそれらの組合せなどの補形剤と混合するかまたは組み合わせることができる。
【0123】
本発明の医薬組成物での使用に適した滑沢剤には、圧縮されるべき粉末の流動性に作用する薬剤が含まれ、それには、限定されるものではないが、二酸化ケイ素、例えば、Aerosil(登録商標)200、タルク、シリカ、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、植物性ステアリン、硬化植物油、安息香酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシンカーボワックス、ラウリル硫酸マグネシウム、およびモノステアリン酸グリセリルなどが挙げられる。
【0124】
本発明は、さらに、有効量のオクトレオチドをヒドロゲル中に含み、かつ、患者への投与によって、または治療計画の一部として、少なくとも約2ヶ月、約6ヶ月または約2年までの期間にわたる(オクトレオチドの治療上有効な血漿レベルの)放出プロフィールを提供する、放出制御埋め込み可能投薬処方物に関する。
【0125】
投与処方物は、1以上の製薬上許容される補形剤を含んでよい。例えば、投与処方物は、希釈剤および滑沢剤をオクトレオチド単位用量および速度制御ポリマーに加えて含んでよい。この目的において、ステアリン酸マグネシウムが適した補形剤である。これらの材料を使用する場合、ステアリン酸マグネシウム成分は、投薬処方物の約0.5〜約5%w/w(例えば、約2%)を構成してよく、処方物の残りはヒドロゲルおよびオクトレオチドが構成する。
【0126】
その他の適した補形剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである。使用する場合、ヒドロキシプロピルセルロース成分は、投薬処方物の約0.5〜約20%w/w(例えば、約10%)を構成してよく、処方物の残りはヒドロゲルおよびオクトレオチドが構成する。
【0127】
一実施形態では、処方物は、ステアリン酸マグネシウムとヒドロキシプロピルセルロースの両方で構成され(例えば約2%のステアリン酸マグネシウムと約10%のヒドロキシプロピルセルロース)、処方物の残りはヒドロゲルおよびオクトレオチドが構成する。
【0128】
本明細書に記載される組成物は、GHおよびIGF−1のレベルの増加を特徴とするホルモン疾患、例えば、先端巨大症の治療のために、患者に本発明の埋め込み可能な処方物を投与することにより、使用することができる。インプラントは、例えば、約6ヶ月ごとに投与され、治療有効量のオクトレオチドを放出することができる。埋め込み可能な組成物は、ホルモン障害を寛解させる最小限の治療上有効なくらいのレベルであって、それでもその日の間に患者にとって安息な期間を促進する最大濃度と比較して相対的に低いレベルの濃度のオクトレオチドを患者において放出する。組成物は、被験体が副作用を示すことなくその用量に耐えることのできる十分な用量および期間で被験体に投与されてよく、その後に必要に応じて被験体において治療用量が達成されるまで選択された時間間隔で活性薬剤の用量を増加してよい。活性薬剤は、例えば、毎日約10μg〜約1000μg、約20μg〜約800μg、または約30μg〜約300μgのオクトレオチド用量で少なくとも約2ヶ月、約6ヶ月、または約2年までの期間投与されてよい。本発明に従う酢酸オクトレオチド薬剤も、カルチノイド症状群およびVIP産生腫瘍に関連する症状の治療に適している。
【0129】
本発明のさらなる特徴および実施形態を、以下の限定されない例により説明する。
【実施例】
【0130】
実施例1.インビトロでのオクトレオチド放出速度
本実施例は、本発明の埋め込み可能なオクトレオチド処方物の調製およびそれらのインビトロでのオクトレオチドの放出を説明する。一連のインプラントを試験して、約22週(146番)、28週(136番)および33週(他の処方物すべて)にわたる安定性およびヒドロゲル処方物からのオクトレオチドのインビトロ放出特性を得た。各々のインプラントは、約50mgの酢酸オクトレオチドおよび約2%のステアリン酸を含んでいたが、ポリマーカートリッジは、様々な量のHEMAおよびHPMAを含み、それ故に表1に表されるように様々な%EWCを示した。
【0131】
【表2】
【0132】
図2、3および4は、上記で提供される処方物のそれぞれについての1日あたりのインプラントからのオクトレオチドの放出を表す。図2示しているように、処方物番号136については、初期放出は比較的高く、比較的急速に低下する。図3に示されるように、処方物番号146の初期放出速度は比較的低い。図4は、処方物番号:145、147、133、144、143および142についての放出プロフィールを示す。図4に示されるように、初期放出速度は、%EWCとの良好な関係を示し、22.9〜27.6%の%EWCに対して1日あたり20〜450μgの範囲であった。しかし、インプラントおよび溶出媒体内部の浸透圧差に関して問題に直面した。オクトレオチド処方物を安定化させるため、「選択的水和」の原則に基づいてより良好な安定性を提供し得る補形剤を用いて多数の実験を計画した。
【0133】
実施例2.仔ウシ血清での処方物試験
膨潤問題への浸透圧の影響を調べるため、処方物番号136および処方物番号143に対応する2つのインプラントを、仔ウシ血清中に溶出した。特に、約40%のHEMAおよび60%のHPMAで構成され、酢酸オクトレオチドを2%のステアリン酸とともに含有する処方物番号136、ならびに、約30%のHEMAおよび70%のHPMAで構成され、20%のPEG3300および80%の酢酸オクトレオチドの混合物を含有する処方物番号143を試験した。3ヶ月後、インプラントは通常の外観を示し、比較的一直線でわずかに膨潤していただけであった。
【0134】
実施例3.処方物試験
浸透圧差に起因して、実施例1に記載したインプラントは著しく膨潤して見え、最終的にインプラントの崩壊という結果となった。本実施例は、オクトレオチドインプラントの安定化に有用な物質を選別するよう設計された処方物を説明する。一連のインプラントをモニターしてインプラント形状および耐久性への補形剤の効果を調べた。各々のポリマーカートリッジは、約28%のHEMA、約66.5%のHPMAおよび5%のグリセリンで構成された。この内容物は、酢酸オクトレオチドを表2に示される様々な補形剤とともに含んでいた。
【0135】
【表3】
【0136】
ゴマ油およびMCCなどの疎水性物質は、処方物中で分離し、「選択的水和」をもたらさなかった。PEG3300のような親水性物質は、浸透圧差を増加させ、膨潤を増加させた。マンニトールおよびグリコール酸のような低分子量添加剤は、安定化効果をもたらさず、完全性の低下を結果的にもたらした。これらの物質はいずれも、満足できるオクトレオチド処方物の安定化をもたらさなかった。
【0137】
実施例4.処方物試験およびインビトロでのオクトレオチド放出速度
本研究は、表3に示される様々な補形剤を用いて、ヒドロゲルインプラントにおけるオクトレオチドの安定性を評価するために行った。補形剤は、高分子量でいくらかの親水性の性質を有するように選択した。それぞれのインプラントは、約20%HEMAおよび約80%HPMAで構成されるポリマーカートリッジから製造した。生理食塩水中のインプラントの外観を9週にわたってモニターし、評価した。結果を表3に示す。
【0138】
【表4】
【0139】
図5に表されるように、デキストランを含有する処方物が最も速い溶出速度を有した。ペクチン、AcDiSolおよびCarbopolを含有する処方物は、2週の水和および9週の溶出の後に満足でない放出を提示した。したがって、例えば、優れた安定化効果、良好な溶出と外観の組合せを含む、望ましい特性は、ヒドロキシプロピルセルロースにより達成された。
【0140】
実施例5.健常なイヌにおける1ヶ月の埋め込み試験
本実施例は、本発明の処方物の調製物およびそれらのオクトレオチドまたはその製薬上許容される塩の放出を説明する。健常なイヌにオクトレオチド皮下インプラント1つを埋め込んだ。オクトレオチド皮下インプラント処方物は含水量が26.6%であり、44mgの酢酸オクトレオチドを含有した。インビトロでの放出速度は、この試験の継続期間にわたる約10mgのオクトレオチドの全放出について、1週目に約500μg/日と測定され、4週目までに約300μg/日に低下した。インプラントは埋め込みの28日後に取り出した。この試験で用いたインプラントは、長さが約3.5cmであった。酢酸オクトレオチド、IGF−IおよびGHの血清濃度を得るための血液試料(1.5mL)は、0日、1〜7日、11日、14日、18日、21日、25日および28日に麻酔をせず絶食せずに頸静脈穿刺により採取した。
【0141】
オクトレオチドインプラント処方物は十分に許容され、食物摂取は正常であり、異常な行動は観察されなかった。
【0142】
血清分析により、酢酸オクトレオチドのピークが4日目に示され、検出可能な量の酢酸オクトレオチドが測定したすべての間隔で示された。IGF−1濃度は、埋め込み後4日目まで低下し、その後25日までに投与前のレベルに戻った。IGF−1レベルは、図6に見られるように、埋め込み前のレベルの40から90%まで低下した。
【0143】
実施例6.6匹の健常なイヌにおける6ヶ月の埋め込み試験
本実施例は、本発明の処方物の調製物およびそれらのオクトレオチドまたはその製薬上許容される塩の放出を説明する。6匹の健常なイヌを2つの群に分け、1または2のオクトレオチド皮下インプラントをそれぞれ埋め込んだ。オクトレオチド皮下インプラントは含水量が約25.2%であり、約60mgの酢酸オクトレオチドを含んでいた。インプラントは埋め込みの6ヶ月後に取り出した。酢酸オクトレオチド、IGF−IおよびGHの血清濃度を得るための血液試料(10mL)は、埋め込みの後の最初の7日間は1日1回採取し、その後3週間は週に2回試料を採取し、その後に6ヶ月の期間が終了するまで週に1回採取した。埋め込みの4日前、ベースラインの血清試料を対照として採取した。
【0144】
結果からは、オクトレオチド血清レベルは、インプラント1つを投与されたイヌにおいて200〜700μg/mLの範囲であり、インプラント2つを投与されたイヌにおいて400〜1000μg/mLの範囲であることが示された。IGF−1レベルは、図7および8から分かるように、両方の処置群で90%程度低下した。血清GHレベルの測定は、健常な動物におけるレベルがさらなる低下を検出するには低すぎるため、試験の最初の1ヶ月後頃に中止した。臨床観察により、オクトレオチドインプラント処方物は十分に許容され、食物摂取は正常であり、異常な行動は観察されないことが記された。
【0145】
実施例7.ヒトにおける6ヶ月の埋め込み試験
本実施例は、本発明の処方物の調製物およびそれらのオクトレオチドまたはその製薬上許容される塩の放出を説明する。11名の先端巨大症患者において6ヶ月の試験を行った。1または2のインプラントを、商業的に入手可能なオクトレオチドLAR製剤で事前に処置された、先端巨大症と診断された11名の患者の皮下に埋め込んだ。ベースラインのGHおよびIGF−1のレベルを測定し、それ以来6ヶ月間で1ヶ月おきにGHおよびIGF−1のレベルを測定した。それぞれのインプラントは、20%HEMAと79.5%HPMAのコポリマー中に約60mgの酢酸オクトレオチドを含み、EWCは約25.2%であった。この試験で使用したインプラントは、乾燥状態で長さが約44mmであり、水和状態で長さが50mmであった。インプラントの直径は、乾燥状態で約2.8mm、水和状態で約3.5〜約3.6mmであった。インプラントは埋め込みの前に約1週間水和させた。
【0146】
GHの参照範囲は、年齢に関わらず2.5mg/Lまでである。表4は、オクトレオチドインプラントの埋め込み後6ヶ月にわたる基底レベルのGH(mg/L)を説明する。患者番号11は、スクリーニング基準に適合しなかったためにこの試験に参加しなかった。
【0147】
【表5】
【0148】
6ヶ月までに、被験体の89%が、正常化された成長ホルモンレベルを提示した。IGF−1に対する参照範囲は次の通りである:(i)17〜24歳、約180〜780ng/mL;(ii)25〜39歳、約114〜400ng/mL;(iii)40〜54歳、約90〜360ng/mL;および(iv)>54歳、約70〜290ng/mL。
【0149】
表5は、本発明のオクトレオチドインプラントの埋め込み後6ヶ月にわたるIGF−1の基底レベル(ng/mL)を説明する。
【0150】
【表6】
【0151】
6ヶ月までに、22%の被験体が正常化されたIGF−1レベルを提示した。
【0152】
図9Aおよび9Bは、オクトレオチドインプラントと商業的に入手可能な酢酸オクトレオチドの処方物との比較を明示する。インプラントの有効性は、商業的に入手可能なオクトレオチドLAR製剤の有効性と少なくとも同程度に良好である。これらのインプラントの治療効果は、試験持続時間の全6ヶ月の間、首尾よく持続した。
【0153】
IGF−1レベルはすべての患者において低下し、2名の患者において正常化された。この低下は治療の1ヶ月目で既に観察され、平均IGF−1レベルはその後の5ヶ月間安定していた。市販のオクトレオチドLAR製剤治療の間、同じ患者において以前に観察された低下との比較は、9名の患者のうち8名で可能であった。8名の患者のうち6名において、インプラントの間のIGF−1の低下率は、商業的に入手可能なオクトレオチドLAR製剤での間の低下率より大きかったが、一方2名において、低下率は小さかった。インプラントでの治療の6ヶ月後、3名の患者におけるGHレベルは、1ng/mLより小さく、他の5名においては、2.5ng/mLより小さかった。これは、たった2名の患者においてGHレベルが1ng/mLより小さく、他の2名において、2.5ng/mLより小さかった商業的に入手可能なオクトレオチドLAR製剤の結果に有利に匹敵する。
【0154】
表6に示されるように、患者の血清中のオクトレオチドのレベルも測定した。
【0155】
【表7】
【0156】
1および2のインプラントによって達成されたオクトレオチドレベルの比較を、図10のグラフに表す。全体的に、結果は、先端巨大症の患者においてGHレベルおよびIGF−1レベルを低下させる際にオクトレオチドインプラントが少なくとも市販の酢酸オクトレオチドのLAR製剤と同程度に効果的であることを示す。
【0157】
実施例8.乾燥インプラントを用いるインビトロのオクトレオチド送達
本実施例は、処方物の調製物およびそれらのオクトレオチドまたはその製薬上許容される塩の放出を説明する。2匹の健常なイヌに、本発明のオクトレオチド皮下インプラント1つを埋め込んだ。インプラントは埋め込みの前に水和させなかった。オクトレオチド皮下インプラントは、約59.5%のHPMAおよび約40%のHEMAで構成され、平衡含水量は約27.6%であった。インプラントは、約84mgの酢酸オクトレオチド、ヒドロキシプロピルセルロースおよびステアリン酸マグネシウムを含んでいた。インプラントは埋め込みの6ヶ月後に取り出した。血液試料(10mL)は、酢酸オクトレオチドおよびIGF−1の血清濃度を得るために、埋め込みの後の最初の4週間は1日おきに1日1回採取し、その後4週間は週に2回試料を採取し、その後に6ヶ月の期間が終了するまで週に1回採取した。埋め込みの2日前、ベースラインの血清試料を対照として採取した。
【0158】
図11は、イヌの血清中のオクトレオチドレベルを示し、図12は、イヌにおけるIGF−1のレベルを示す。
【0159】
実施例9.インプラント組成物
インプラントのために可能性のある組成物、例えば、表7に記載される組成物を試験した。形成プロセスの間、離型剤、例えば、ビタミンE TPGSを用いることにより、約3.2〜3.4mm(乾燥)よりも大きいインプラントカートリッジを助けた。
【0160】
【表8】
【0161】
実施例10.先端巨大症の患者における水和および非水和84mgオクトレオチドインプラントの薬物動態および薬力学的応答を評価するためのオープンラベル試験
およそ30名の先端巨大症の患者を、書面によるインフォームド・コンセントを得た後に登録した。試験ランダム化スケジュールごとに患者を2つの群に分けた:15名の患者が水和84mgオクトレオチドインプラント1つを投与され、15名の患者が非水和84mgオクトレオチドインプラント1つを投与された。適格患者らは、自身のスクリーニングのための来院の7日以内にインプラントを投与された。オクトレオチドインプラントは、局所麻酔下、患者らの利き腕でない腕の内側面の皮下に挿入された。IGF−1、GHおよびオクトレオチド血清濃度を測定するための血液試料を、埋め込み後最初の6週以内の所定の時点で採取した。その後患者らは8週、12週、16週、20週および24週に外来通院して、血液試料をIGF−1、GHおよびオクトレオチド血清濃度の測定、ならびに安全性評価のために採取される。6ヶ月(24週)の治療期(treatment phase)の終わりに、インプラントを取り出す。インプラントを除去した後、治験来院終了(End of Study Visit)(28週)のために4週後に来院するよう患者に指示をする。試験を通じて、安全性および有効性を注意深く監視する。
〔治験薬〕
皮下埋め込み用の水和オクトレオチドインプラント(酢酸オクトレオチド84mg)
皮下埋め込み用の非水和オクトレオチドインプラント(酢酸オクトレオチド84mg)
【0162】
〔治療の継続期間〕
適格患者は、水和または非水和の、インプラント1つを投与される。6ヶ月(24週)の治療期の終わりに、インプラントを取り出す。
〔試験対象患者基準〕
1.男性および女性の先端巨大症の患者
2.年齢は18歳以上でなければならない
3.成長ホルモン分泌腫瘍の診断が確定していること(IGF−1レベルが年齢および性別を考慮した正常値の上限よりも20%以上高く、かつ、グルコース後(post−glucose)GHが1.0ng/mL以上であるかまたは下垂体腫瘍がMRIで実証できるかのいずれかである)。患者が下垂体手術を受けていて残存腫瘍を有する場合、それは視交叉からの距離が少なくとも3mmでなければならず(患者が手術の候補である場合)、IGF−1レベルは上記のように上昇しなければならない。残存腫瘍が存在しないか、または患者が手術不能である場合には、患者は上記のIGF−1とGHの両方の基準を満たす必要がある。
4.下に規定されるように、これまでの臨床検査値(historical laboratory values)により明示される、オクトレオチドに対する完全応答者かまたは部分応答者のいずれかでなければならない:
a.完全応答者:血清IGF−1を通常の年齢および性別を考慮したレベルに抑制し、OGTT後、血清GHを1.0ng/mLより低く抑制する
b.部分応答者:治療前の値と比較した場合にIGF−1およびGH値が30%以上低下するが、完全応答者の基準を満たさない
または
c.オクトレオチドで未処置の患者またはオクトレオチドに対する応答のわからない患者のスクリーニングのための来院の間に、鋭敏な水性試験(acute aqueous test)を介して得られる臨床検査値に明示される、オクトレオチドの応答者でなければならない:
d.鋭敏な水性試験による応答者:100∝γの水性オクトレオチドの皮下注射に応答して、4時間の試験期間のどの時点でもGH値が30%以上低下する
5.意思疎通が可能で、書面によるインフォームド・コンセントを提供でき、かつ、参加する意思があって試験要件に適合していなければならない
6.患者は、研究者の意見に参加する資格がある
〔除外基準〕
1.妊娠している、授乳中である、または、医学的に容認される受胎調節の方法をおこなっておらず、妊娠している可能性のある女性
2.スクリーニング前の12週間以内に下垂体手術をした患者
3.肝疾患のある患者(例えば、肝硬変、慢性活動性肝炎または持続性肝炎あるいはALT、AST(通常の2倍より大きいレベル)、アルカリホスファターゼ(通常の2倍より大きいレベル)、または直接ビリルビン(通常の1.5倍より大きいレベル)の持続性異常
4.研究者またはスポンサーにより臨床的に重要と考えられるその他の臨床検査値
5.不安定狭心症、持続性心室性不整脈、心不全(NYHA IIIおよびIV)の患者、またはスクリーニングの3ヶ月以内に急性心筋梗塞の病歴のある患者
6.症候性胆石症の患者
7.スクリーニングの6ヶ月以内に薬物またはアルコール乱用の病歴のある患者
8.スクリーニングの1ヶ月以内にどのような治験薬でも投与されたことのある患者
9.スクリーニングの前のどの時点でもその下垂体腫瘍のために放射線療法を受けている患者
10.耐容性または有効性の問題によりオクトレオチドを中断した患者。
【0163】
オクトレオチドの血清レベルを測定した(図面データは図13および14参照)。オクトレオチドインプラント(乾燥形態のものまたは水和後のもの)を挿入した後のサイトカイン濃度調節の有効性を、図15、16および17に示す。
【0164】
実施例11.カルチノイド症状群の患者における水和および非水和84mgオクトレオチドインプラントの薬物動態および薬力学的応答を評価するためのオープンラベル試験
カルチノイド症状群の患者を、書面によるインフォームド・コンセントを得た後に登録した。試験ランダム化スケジュールごとに患者を2つの群に分け、最初の群に水和84mgオクトレオチドインプラント1つを投与し、2番目の群に非水和84mgオクトレオチドインプラント1つを投与した。適格患者らは、自身のスクリーニングのための来院の7日以内にインプラントを投与された。オクトレオチドインプラントは、局所麻酔下、患者らの利き腕でない腕の内側面の皮下に挿入された。IGF−1、GHおよびオクトレオチド血清濃度を測定するための血液試料を、埋め込み後最初の6週以内の所定の時点で採取した。その後患者らは8週、12週、16週、20週および24週に外来通院して、血液試料をIGF−1、GHおよびオクトレオチド血清濃度の測定、ならびに安全性評価のために採取される。6ヶ月(24週)の治療期の終わりに、インプラントを取り出す。インプラントを除去した後、治験来院終了(28週)のために4週後に来院するよう患者に指示をする。試験を通じて、安全性および有効性を注意深く監視する。
〔治験薬〕
皮下埋め込み用の水和オクトレオチドインプラント(酢酸オクトレオチド84mg)
皮下埋め込み用の非水和オクトレオチドインプラント(酢酸オクトレオチド84mg)
【0165】
〔治療の継続期間〕
適格患者は、水和または非水和の、インプラント1つを投与される。6ヶ月(24週)の治療期の終わりに、インプラントを取り出す。インプラントを除去した後、治験来院終了のために4週後に来院するよう患者に指示をする。
〔試験対象患者基準〕
1.男性および女性のカルチノイド症状群の患者
2.年齢は18歳以上でなければならない
3.カルチノイド症状群の診断が確定していて、患者が、標準的な医学診断検定法により判断して尿中5−HIAA(5−ヒドロキシインドール酢酸)レベルの上昇、低い血中トリプトファン、および高い血中クロモグラニンA(chromaogranin A)およびセロトニンを示していること。
4.意思疎通が可能で、書面によるインフォームド・コンセントを提供でき、かつ、参加する意思があって試験要件に適合していなければならない
5.患者は、研究者の意見に参加する資格がある
〔除外基準〕
1.妊娠している、授乳中である、または、医学的に容認される受胎調節の方法をおこなっておらず、妊娠している可能性のある女性
2.スクリーニング前の12週間以内に下垂体手術をした患者
3.肝疾患のある患者(例えば、肝硬変、慢性活動性肝炎または持続性肝炎あるいはALT、AST(通常の2倍より大きいレベル)、アルカリホスファターゼ(通常の2倍より大きいレベル)、または直接ビリルビン(通常の1.5倍より大きいレベル)の持続性異常
4.研究者またはスポンサーにより臨床的に重要と考えられるその他の臨床検査値
5.不安定狭心症、持続性心室性不整脈、心不全(NYHA IIIおよびIV)の患者、またはスクリーニングの3ヶ月以内に急性心筋梗塞の病歴のある患者
6.症候性胆石症の患者
7.スクリーニングの6ヶ月以内に薬物またはアルコール乱用の病歴のある患者
8.スクリーニングの1ヶ月以内にどのような治験薬でも投与されたことのある患者
9.スクリーニングの前のどの時点でもその下垂体腫瘍のために放射線療法を受けている患者
10.耐容性または有効性の問題によりオクトレオチドを中断した患者。
【0166】
オクトレオチドの血清レベルをそれぞれの患者について測定する。治療の間、それぞれの患者は、治療前に患者が提示したカルチノイド症状群の特徴である潮紅症状の発現およびその他の症状の減少について調べられ、かつ24時間尿中5−HIAAレベル中央値の低下について調べられる。
【0167】
本発明は、その特定の好ましい実施形態に関して相当詳細に説明されたが、その他の変形形態も可能である。そのため、添付される特許請求の範囲の精神および範囲は、この説明に制限されるものでなく、好ましい変形形態は本明細書に含まれるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体への埋め込み後におけるオクトレオチドの放出制御のための処方物であって、
ポリウレタン系ポリマーおよびメタクリレート系ポリマーから選択される親水性ポリマー内に実質的に収容される調製物を含み、
前記調製物が、オクトレオチドを含み、
前記処方物が、インビボで約6ヶ月にわたり1日あたり約30μg〜約800μgの速度でオクトレオチドの放出を許容するうえで効果的であり、
前記調製物ではなく前記親水性ポリマーが、少なくとも約1000ダルトンの分子量を有する離型剤をさらに含む、
処方物。
【請求項2】
前記離型剤が、非イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の処方物。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリエチレングリコール親水性尾部および親油性頭部を含む、請求項2に記載の処方物。
【請求項4】
前記離型剤が、Brij35、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート、Tween20、Tween80、ビタミンE TPGS、およびそれらの任意の2またはそれ以上の混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の処方物。
【請求項5】
前記離型剤が、少なくとも約1200ダルトンの分子量を有する、請求項1に記載の処方物。
【請求項6】
前記親水性ポリマーが、約350mm2またはそれ以上の外部表面積を有する、請求項1に記載の処方物。
【請求項7】
前記親水性ポリマーが、約350mm2〜約1500mm2の範囲の外部表面積を有する、請求項6に記載の処方物。
【請求項8】
前記処方物が、インビボで1日あたり約75μg〜約300μgの範囲の平均速度でのオクトレオチドの放出を許容する、請求項1に記載の処方物。
【請求項9】
前記オクトレオチドが、酢酸オクトレオチドである、請求項9に記載の処方物。
【請求項10】
前記親水性ポリマーが、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびヒドロキシプロピルメタクリレートの混合物を含む、請求項1に記載の処方物。
【請求項11】
前記処方物が、前記被験体において約0.1ng/mL〜約9ng/mLのオクトレオチドのインビボ平均Cssをもたらす、請求項8に記載の処方物。
【請求項12】
前記処方物が、前記被験体において約1ng/mL〜約4ng/mLのオクトレオチドのインビボ平均Cssをもたらす、請求項11に記載の処方物。
【請求項13】
前記調製物が、約40mg〜約120mgのオクトレオチドを含む、請求項1に記載の処方物。
【請求項14】
調製物が、約50mgの酢酸オクトレオチドを含む、請求項13に記載の処方物。
【請求項15】
前記調製物が、約85mgの酢酸オクトレオチドを含む、請求項13に記載の処方物。
【請求項16】
前記親水性ポリマーが、約20%の2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび約80%のヒドロキシプロピルメタクリレートの混合物を含む、請求項10に記載の処方物。
【請求項17】
前記親水性ポリマーが、約40%の2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび約60%のヒドロキシプロピルメタクリレートの混合物を含む、請求項10に記載の処方物。
【請求項18】
前記調製物が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、植物性ステアリン、タルクおよびシリカからなる群から選択される補形剤をさらに含む、請求項1に記載の処方物。
【請求項19】
前記調製物が、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、加工デンプンおよび架橋ポリビニルピロリドンからなる群から選択される化合物をさらに含む、請求項1に記載の処方物。
【請求項20】
被験体におけるGHレベルまたはIGF−1レベルを低下させ、および/またはオクトレオチド感受性の疾患、障害もしくは症状を治療する方法であって、
親水性ポリマーに収容される調製物を含む少なくとも1つの乾燥した埋め込み可能なデバイスを皮下に埋め込むことを含み、
前記調製物が、オクトレオチドを含み、
前記調製物ではなく前記親水性ポリマーが、少なくとも1000の分子量を有する離型剤をさらに含む、
方法。
【請求項21】
前記調製物が、約40mg〜約120mgの酢酸オクトレオチドを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
2つの埋め込み可能なデバイスが皮下に埋め込まれる、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記埋め込み可能なデバイスが、約6ヶ月〜約2年の範囲の連続的な期間、患者に埋め込まれたままである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記埋め込み可能なデバイスが、約6ヶ月〜約1年の範囲の連続的な期間、前記患者に埋め込まれたままである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記埋め込み可能なデバイスが、照射により滅菌される、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記オクトレオチド感受性の疾患、障害または症状が、先端巨大症もしくは先端巨大症に関連する症状、カルチノイド腫瘍に関連する症状、VIP産生腫瘍もしくは神経内分泌腫瘍、カルチノイド症状群、増殖性糖尿病性網膜症、酒さ、膵炎、消化管出血、膵瘻および腸瘻、グレーブス眼症およびバセドウ眼症、緑内障、ならびに/または、先端巨大症もしくは先端巨大症に関連する症状を治療する血管新生(vasularization)に関連する角膜疾患からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
カルチノイド腫瘍、VIP産生腫瘍または神経内分泌腫瘍に関連する症状が、重度の下痢、水様下痢または潮紅症状の発現からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
a)ポリウレタン系ポリマーおよびメタクリレート系ポリマーから選択される親水性ポリマー内に実質的に収容される調製物を含む、被験体への埋め込み後におけるオクトレオチドの放出制御のための処方物、
を含むキットであって、
前記調製物が、オクトレオチドを含み、
前記処方物が、インビボで約6ヶ月にわたり1日あたり約30μg〜約800μgの速度でオクトレオチドの放出を許容するうえで効果的であり、
前記調製物ではなく前記親水性ポリマーが、少なくとも約1000ダルトンの分子量を有する離型剤をさらに含む、
キット。
【請求項1】
被験体への埋め込み後におけるオクトレオチドの放出制御のための処方物であって、
ポリウレタン系ポリマーおよびメタクリレート系ポリマーから選択される親水性ポリマー内に実質的に収容される調製物を含み、
前記調製物が、オクトレオチドを含み、
前記処方物が、インビボで約6ヶ月にわたり1日あたり約30μg〜約800μgの速度でオクトレオチドの放出を許容するうえで効果的であり、
前記調製物ではなく前記親水性ポリマーが、少なくとも約1000ダルトンの分子量を有する離型剤をさらに含む、
処方物。
【請求項2】
前記離型剤が、非イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の処方物。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリエチレングリコール親水性尾部および親油性頭部を含む、請求項2に記載の処方物。
【請求項4】
前記離型剤が、Brij35、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート、Tween20、Tween80、ビタミンE TPGS、およびそれらの任意の2またはそれ以上の混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の処方物。
【請求項5】
前記離型剤が、少なくとも約1200ダルトンの分子量を有する、請求項1に記載の処方物。
【請求項6】
前記親水性ポリマーが、約350mm2またはそれ以上の外部表面積を有する、請求項1に記載の処方物。
【請求項7】
前記親水性ポリマーが、約350mm2〜約1500mm2の範囲の外部表面積を有する、請求項6に記載の処方物。
【請求項8】
前記処方物が、インビボで1日あたり約75μg〜約300μgの範囲の平均速度でのオクトレオチドの放出を許容する、請求項1に記載の処方物。
【請求項9】
前記オクトレオチドが、酢酸オクトレオチドである、請求項9に記載の処方物。
【請求項10】
前記親水性ポリマーが、2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよびヒドロキシプロピルメタクリレートの混合物を含む、請求項1に記載の処方物。
【請求項11】
前記処方物が、前記被験体において約0.1ng/mL〜約9ng/mLのオクトレオチドのインビボ平均Cssをもたらす、請求項8に記載の処方物。
【請求項12】
前記処方物が、前記被験体において約1ng/mL〜約4ng/mLのオクトレオチドのインビボ平均Cssをもたらす、請求項11に記載の処方物。
【請求項13】
前記調製物が、約40mg〜約120mgのオクトレオチドを含む、請求項1に記載の処方物。
【請求項14】
調製物が、約50mgの酢酸オクトレオチドを含む、請求項13に記載の処方物。
【請求項15】
前記調製物が、約85mgの酢酸オクトレオチドを含む、請求項13に記載の処方物。
【請求項16】
前記親水性ポリマーが、約20%の2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび約80%のヒドロキシプロピルメタクリレートの混合物を含む、請求項10に記載の処方物。
【請求項17】
前記親水性ポリマーが、約40%の2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび約60%のヒドロキシプロピルメタクリレートの混合物を含む、請求項10に記載の処方物。
【請求項18】
前記調製物が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、植物性ステアリン、タルクおよびシリカからなる群から選択される補形剤をさらに含む、請求項1に記載の処方物。
【請求項19】
前記調製物が、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、加工デンプンおよび架橋ポリビニルピロリドンからなる群から選択される化合物をさらに含む、請求項1に記載の処方物。
【請求項20】
被験体におけるGHレベルまたはIGF−1レベルを低下させ、および/またはオクトレオチド感受性の疾患、障害もしくは症状を治療する方法であって、
親水性ポリマーに収容される調製物を含む少なくとも1つの乾燥した埋め込み可能なデバイスを皮下に埋め込むことを含み、
前記調製物が、オクトレオチドを含み、
前記調製物ではなく前記親水性ポリマーが、少なくとも1000の分子量を有する離型剤をさらに含む、
方法。
【請求項21】
前記調製物が、約40mg〜約120mgの酢酸オクトレオチドを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
2つの埋め込み可能なデバイスが皮下に埋め込まれる、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記埋め込み可能なデバイスが、約6ヶ月〜約2年の範囲の連続的な期間、患者に埋め込まれたままである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記埋め込み可能なデバイスが、約6ヶ月〜約1年の範囲の連続的な期間、前記患者に埋め込まれたままである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記埋め込み可能なデバイスが、照射により滅菌される、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記オクトレオチド感受性の疾患、障害または症状が、先端巨大症もしくは先端巨大症に関連する症状、カルチノイド腫瘍に関連する症状、VIP産生腫瘍もしくは神経内分泌腫瘍、カルチノイド症状群、増殖性糖尿病性網膜症、酒さ、膵炎、消化管出血、膵瘻および腸瘻、グレーブス眼症およびバセドウ眼症、緑内障、ならびに/または、先端巨大症もしくは先端巨大症に関連する症状を治療する血管新生(vasularization)に関連する角膜疾患からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
カルチノイド腫瘍、VIP産生腫瘍または神経内分泌腫瘍に関連する症状が、重度の下痢、水様下痢または潮紅症状の発現からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
a)ポリウレタン系ポリマーおよびメタクリレート系ポリマーから選択される親水性ポリマー内に実質的に収容される調製物を含む、被験体への埋め込み後におけるオクトレオチドの放出制御のための処方物、
を含むキットであって、
前記調製物が、オクトレオチドを含み、
前記処方物が、インビボで約6ヶ月にわたり1日あたり約30μg〜約800μgの速度でオクトレオチドの放出を許容するうえで効果的であり、
前記調製物ではなく前記親水性ポリマーが、少なくとも約1000ダルトンの分子量を有する離型剤をさらに含む、
キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【公表番号】特表2011−526289(P2011−526289A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516611(P2011−516611)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/048484
【国際公開番号】WO2009/158415
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(509297680)エンド ファーマスーティカルズ ソリューションズ インコーポレイテッド. (9)
【氏名又は名称原語表記】ENDO PHARMACEUTICALS SOLUTIONS INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/048484
【国際公開番号】WO2009/158415
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(509297680)エンド ファーマスーティカルズ ソリューションズ インコーポレイテッド. (9)
【氏名又は名称原語表記】ENDO PHARMACEUTICALS SOLUTIONS INC.
【Fターム(参考)】
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