説明

離型剤再生装置

【課題】再生液を効率良く生成できるようにして使用済み離型剤の利用促進を図ることができる離型剤再生装置の提供。
【解決手段】金型Dに塗布されて使われた使用済み離型剤を、離型剤原液や希釈液の濃度調整液と混合することによって所定濃度の再生液を生成する再生液生成手段3を設けて、再生液生成手段3において、再生液を生成するための回収液混合タンクに供給する濃度調整液の流量を、使用済み離型剤の濃度に応じて調整可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み離型剤を再利用可能にするための離型剤再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金型に塗布されて使われた使用済み離型剤は、回収ピット等に集められて廃液として処分されている。このように、一度使われた離型剤は全て廃棄処分されるため、多量の離型剤を必要とするばかりでなく、多量の廃液を産業廃棄物として処分しなければならない問題を有している。
【0003】
そこで、回収した使用済み離型剤を再生利用する提案がなされている。それは、使用済み離型剤から混入しているバリや油分等の夾雑物を除去し、離型剤原液や希釈液などの濃度調整液を加えて所定濃度にして、再び金型に塗布して使用するというものである。
【0004】
この提案によれば、離型剤を繰り返し使うことができるため、離型剤原液の消費量を抑制することができるとともに、廃液の量を減らすことができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−965号公報(第2〜5頁、第1及び2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、使用済み離型剤を濃度調整液と混合して再生液を生成する際、生成用の回収混合タンクに供給する濃度調整液の流量が一定であるため、回収された使用済み離型剤の濃度が極端に低い場合や極端に高い場合などは、大量の濃度調整液が必要になることから、必要量の濃度調整液を供給するのに時間がかかるという問題がある。このため、所定濃度の再生液が生成されるまでに時間を要し、再生液を、タイミング良く金型に供給できない不都合がある。
【0006】
そこで本発明は、再生液を効率良く生成できるようにして使用済み離型剤の利用促進を図ることができる離型剤再生装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため本発明にかかる請求項1記載の離型剤再生装置は、金型に塗布されて使われた使用済み離型剤を、離型剤原液や希釈液などの濃度調整液と混合することによって所定濃度の再生液を生成する再生液生成手段を備えた離型剤再生装置であって、前記再生液生成手段において、前記再生液を生成するためのタンクに供給する前記濃度調整液の流量を、前記使用済み離型剤の濃度に応じて調整可能にすることを特徴としている。
【0008】
請求項1記載の離型剤再生装置によると、前記使用済み離型剤の濃度に応じて前記濃度調整液の流量を調整できるため、前記使用済み離型剤が極端に低濃度あるいは高濃度になっている場合でも、前記濃度調整液の流量を増加させる調整を行って前記濃度調整液の必要量を短い時間で供給することができるため、前記再生液を短時間で生成できるようになる。
【0009】
なお、前記濃度調整液は、離型剤原液や希釈液の他に、例えば、離型剤新液を用いることもできる。
【0010】
請求項2記載の離型剤再生装置は、再生液生成手段で生成した再生液を貯留するための再生液貯留手段を設け、この再生液貯留手段の再生液を、金型に送給することを特徴としている。
【0011】
請求項2記載の離型剤再生装置によると、前記再生液を前記再生液貯留手段に貯留しておいて、前記再生液を、必要応じて前記再生液貯留手段から前記金型に送給することができるので、前記再生液の安定供給を図ることができる。
【0012】
つまり、従来の離型剤再生装置は、夾雑物を除去した使用済み離型剤を、混合タンク内において離型剤原液や希釈液と混合し濃度調整を行うことによって再生しており、この混合タンク内で生成した再生液を金型に戻して使用している。したがって、生成中の再生液は濃度が一様でないために、無理に使用するとワークの張り付き等の不具合が発生するおそれがあり、生成中は再生液を使用することができない。このため、再生液を生成している最中は、離型剤原液を希釈液で薄めて所定濃度にした新液を使用しなればならず、使用済み離型剤を有効に利用しているとは言い難い面がある。
【0013】
一方、本請求項2記載の離型剤再生装置は、前記再生液貯留手段に貯留されている均一濃度の前記再生液を使用することができるので、前記離型剤再生手段で前記再生液を生成中か否かに関係なく、濃度にバラつきのない前記再生液が利用可能になる。言いかえれば、所定濃度の前記再生液を前記金型に送給しながら、前記使用済み離型剤を再生することが可能になる。
【0014】
請求項3記載の離型剤再生装置は、再生液を、再生液生成手段と再生液貯留手段とから、選択的に前記金型に送給することを特徴としている。このようにすると、前記再生液貯留手段の前記再生液が上限レベルに近い場合等、再生液生成手段から前記再生液貯留手段へ送給する前記再生液の量を減らし、前記再生液貯留手段の貯留量を調整することができる。
【0015】
請求項4記載の離型剤再生装置は、再生液貯留手段の再生液を、再生液生成手段に戻すことができる返送手段を設けることを特徴としている。このような前記返送手段を設けると、前記再生液貯留手段の前記再生液を、前記再生液生成手段に戻して濃度調整を行うことが可能になる。
【0016】
請求項5記載の離型剤再生装置は、離型剤原液と希釈液とを混合して離型剤新液を生成するための新液生成手段を設け、この新液生成手段の前記離型剤新液を、金型に送給可能にすることを特徴としている。このようにして前記新液生成手段を設けると、離型剤新液を用いることもできるため、ワークに応じて前記再生液と前記離型剤新液との使い分けが可能になる。
【0017】
請求項6記載の離型剤再生装置は、濃度調整液として、新液生成手段で生成される前記離型剤新液を用いることを特徴としている。このように、前記濃度調整液として、前記離型剤新液を用いることにより、前記使用済み離型剤の濃度が再利用可能な範囲内にある場合、前記再生液を手っ取り早く生成することができる。つまり、前記使用済み離型剤の濃度が再利用可能な範囲、即ち、前記再生液の濃度として許容可能な範囲内にある場合、前記離型剤新液を供給することで、前記離型剤原液と前記希釈液とをそれぞれ供給する手間が省けるからである。前記使用済み離型剤は、夾雑物が除去され、且つ、濃度が再利用可能な範囲内にあるといっても、前記金型で熱せれられたりすることで質が低下しており、前記離型剤新液を供給することで、質的に前記離型剤新液に近い前記再生液を生成することができる。
【0018】
請求項7記載の離型剤再生装置は、再生液貯留手段に貯留している再生液を攪拌するための攪拌手段を設けることを特徴としている。このように前記攪拌手段を設けると、前記再生液を前記再生液貯留手段で長期間貯留した場合でも、濃度の偏りを防ぎ均一な状態を保つことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の離型剤再生装置の効果は、
1.再生液を効率良く生成して利用できるため、使用済み離型剤の利用を促進することができる。これにより、離型剤原液の消費を抑えることが可能になり、且つ、廃液の排出量の低減を図ることができる。
【0020】
2.生成した再生液を再生液貯留手段で蓄えておけるため、使用済み離型剤の利用が促進される。しかも、再生液を安定的供給することができ、ワーク離型時の不具合の発生率が減り製品の歩留まりが向上する。
【0021】
3.離型剤再生手段で生成した再生液を再生液貯留手段で蓄えておけるため、離型剤再生手段を常に稼動させておく必要がなく、再生液の生成にかかるランニングコストを抑えることができる。
【0022】
4.新液生成手段を設けて離型剤新液を使用可能にすることで、ワークの種類等に応じて離型剤を使い分けることができ、ワークの離型作業をスムーズに、且つ、離型剤を浪費することなく行える。
【0023】
5.再生液貯留手段及び再生液生成手段の再生液と離型剤新液とのいずれかを選んで使用できるようになるため、ワークの種類やシステムの状態に柔軟に対応でき、離型剤の安定供給を維持することができる。したがって、離型剤のトラブルによる成形の不具合が減少し、歩留まりを向上させることができる。
【0024】
6.離型剤の濃度を変更した場合でも、再生液貯留手段に貯留している再生液の濃度を変更することができるので、使用済み離型剤をより効率良く使用できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明にかかる離型剤再生装置の実施形態について図1〜6を参照しつつ説明する。図1は、離型剤再生装置の概略図を示している。
【0026】
離型剤再生装置1は、主に、各金型装置から排出された使用済みの離型剤に混入している油分やバリ等の夾雑物を除去する夾雑物除去手段2と、夾雑物が取り除かれた使用済み離型剤に原液や希釈液などの濃度調整液を混合して再生する離型剤再生手段3と、離型剤再生手段3で生成された再生液を貯留する再生液貯留手段4とを備えている。なお、この実施形態で使用する希釈液は水を用いている。
【0027】
この離型剤再生装置1で再生される使用済み離型剤は、各金型装置Dから回収されて回収ピット6に集約されたものである。各金型装置Dから回収ピット6へは、回収液送給配管h1,h2によって送給され、回収ピット内の回収液は、回収液送給配管h3によって夾雑物除去手段2へと送給される。また、回収ピット6には返送用配管h4の一端が接続されており、夾雑物除去手段2で生じたオーバーフロー液やドレン等が戻されるようになっている。
【0028】
夾雑物除去手段2は、油分除去タンク7と沈静タンク8とで構成されている。油分除去タンク7は、タンク内が縦板7aで第一室7bと第二室7cとに仕切られており、第一室7bの上部に回収液送給配管h3の一端が接続されている。
【0029】
第一室7bの室内には、回収液送給配管h3の接続口の直下にストレーナ7dが配置されており、オイルスキマー7eが、下部を液中に沈めた状態で配設されている。第二室7cの室内には、液面高さを検出するためのフロート式のレベル計LVが設けられており、室内の回収液を後段の沈静タンク8へ送るための回収液送給配管h5が、一方の開口端をタンク底部に位置させた状態で配管されている。また、油分除去タンク7の側面上部には、オーバーフロー配管h6の一端が接続されており、底部には沈殿している夾雑物を排出するためのドレン配管h7の一端が接続されている。
【0030】
第一室7bと第二室7cとを仕切る縦板7aは、タンク底面と隙間が生じるように設けられており、この隙間を通じて第一室7bの液が第二室7c側へと流通可能になっている。
【0031】
一方、沈静タンク8は、内部が二つの槽に区切られており、第一槽8aの上部に、回収液送給管h5の一端が接続され、第二槽8bの側面底部に、回収液を後段の離型剤再生手段3に送るための回収液送給配管h8の一端が接続されている。
【0032】
第一槽8aは、縦板8cによって第一室8dと第二室8eとに仕切られており、第一室8cの室内には、一方の開口端を液面の上限レベルに位置させて配管しているオーバーフロー配管h9が設けられている。
【0033】
また、第二槽8bの室内には、第一槽8aと同様にしてオーバーフロー配管h10が配置されるともに、液面を検出するためのフロート式のレベル計LVが設けられている。
【0034】
第一槽8aと第二槽8bとを仕切る仕切板8fには、下部に連通口が設けられており、この連通口に、回収液送給配管h11の一端部が第二層側から接続されている。この回収液送給配管h11はL型に形成されて、下側の開口端部が連通口に接続されており、上側の開口端がオーバーフロー配管h10の上端よりも高い位置になるように配管されている。これにより、回収液が、第一槽8aと第二槽8bとの液面差により、第一槽8aから第二槽8b側へと送られるようになっている。
【0035】
第一槽8a及び第二槽8bの底部には、それぞれドレン配管h12,h13の一端部が接続されており、これらのドレン配管h12,h13及び油分除去タンク7のドレン配管h7の他端部は、合流させられたのち返送用配管h4に接続されている。これにより、沈殿している夾雑物が回収ピット6に戻される。
【0036】
また、オーバーフロー配管h9,h10の他端部が、合流させられたあと返送用配管h4に接続されており、沈静タンク8のオーバーフロー液が、回収ピット6に戻されるようになっている。
【0037】
そして、離型剤再生手段3は、回収液を離型剤原液や希釈液と混合して再生するための回収液混合タンク3aを備えており、沈静タンク8の回収液が、回収液送給配管h8を通じて供給されるようになっている。
【0038】
回収液混合タンク3aは、タンク内に攪拌機3bと超音波濃度測定器3c及びフロート式のレベル計LVが配設されている。攪拌機3bは、離型剤再生装置1の稼動中、継続的に運転されているため、タンク内は常に攪拌されており、また、タンク内の濃度は、超音波濃度測定器3cによって常時監視されている。
【0039】
そして、タンク上部には、回収液送給配管h8とともに、離型剤原液を供給するための原液送給配管h14と、希釈液を供給するための希釈液送給配管h15との一端が接続されている。原液送給配管h14と希釈液送給配管h15とにはエアバルブが介設されており、このバルブの開度を調節することによって、回収液混合タンク3aに供給する離型剤原液及び希釈液の流量を、回収液の濃度に応じて調整可能になっている。
【0040】
さらに、タンク上部には、オーバーフロー液を沈静タンク8に戻すためのオーバーフロー配管h16の一端部が接続されており、その他端部は、沈静タンク8の第一槽8aの第一室8dに接続されている。
【0041】
また、タンク底部には、再生された離型剤を取り出して後段の再生液貯留手段4に送給するための再生液送給配管h17と、再生液を金型装置Dに直接送給するための再生液送給配管h26の一端が接続されるとともに、沈殿している夾雑物を排出するためのドレン配管h18が接続されている。
【0042】
なお、原液送給配管h14の他端部は、離型剤の原液が貯留されている原液留タンク9に接続されており、原液タンク9には、フロート式のレベル計LVが設けられていて、液面が下限レベルになると、原液が入っているドラム缶Sから原液が供給されるようになっている。
【0043】
そして、再生液貯留手段4は、回収液混合タンク3aで生成された再生液を貯留するための再生液貯留タンク4aを備えており、このタンクにはフロート式のレベル計LVと、貯留中の再生液の濃度を均一に保つための攪拌機4bとが設けられている。再生液送給配管h17はタンク上部に接続されていて、タンク底部には、再生液を後段に送る再生液送給配管h19と、沈殿している夾雑物を排出するためのドレン配管h20との一端が接続されている。
【0044】
また、この離型剤再生装置1は、使用済み離型剤を回収して再利用可能にするだけでなく、離型剤新液を供給することもできる。離型剤新液は新液生成タンク10で、原液と希釈液とを所定量ずつ混合することで生成される。新液生成タンク10には、攪拌機10aとフロート式のレベル計LVが設けられており、タンク上部に、離型剤原液を供給する原液送給配管h21と希釈液を供給する希釈液送給配管h22との一端が接続されており、底部に、離型剤新液を後段に送る新液送給配管h23とドレン配管h24との一端が接続されている。
【0045】
原液送給配管h21は、原液タンク9と回収液混合タンク3a間に配管されている回収液送給配管h14の途中から分岐されており、エアバルブの切替操作によって原液タンク9の離型剤原液を、新液貯留タンク10に送給することができる。
【0046】
また、新液送給配管h23と再生液貯留タンク4aの再生液送給配管h19及び再生液送給配管h26はエアバルブ17を介して連結されており、このバルブを切り替えることによって新液生成タンク10の離型剤新液か、或いは、再生液貯留タンク4a又は回収液混合タンク3aの再生液のいずれかを選んで金型装置Dに送れるようになっている。
【0047】
次に、離型剤再生装置1の作用について説明する。
【0048】
各金型装置Dから排出された使用済みの離型剤は系列(この実施形態では二系列)ごとに回収されて、回収液送給配管h1,h2を通じて回収ピット6に集約される。回収ピット6に集約された回収液は汲み上げられて、回収液送給配管h3を通じて油分除去タンク7に送給される。
【0049】
油分除去タンク7に送給された回収液は、ストレーナ7dによりバリなどの塊の大きな夾雑物が除去されて第一室7bに供給される。第一室7bに供給された回収液は、オイルスキマー7eによって浮上油が除去され、浮上油が取り除かれた回収液は、縦板7aの下を通過して第二室7cに流入する。第二室7cの回収液は低層から汲み上げられ、回収液送給配管h5を通じて沈静タンク8へ送給される。
【0050】
沈静タンク8へ送給された回収液は、第一槽8aの第一室8dに供給されて所定の時間静置され、混入している油分を浮上させて分離させるとともに、夾雑物の固形分が沈殿物として分離される。この際に分離された油分は、オーバーフロー配管h9に流れ込むオーバーフロー液とともに、返送用配管h4によって回収ピット6に戻される。こうして、油分や夾雑物の固形分が分離された回収液は、縦板8cの下を通過して第二室8eに入り、回収液送給配管h11で第二槽8bに送られる。
【0051】
第二槽8bに送られた回収液は、さらに油分と夾雑物の固形分とが分離された後、回収液送給配管h8を通じて定期的に定量ずつ回収液混合タンク3aに供給される。回収液が回収液混合タンク3aに供給されると、攪拌機3bによって攪拌されるとともに、超音波濃度測定器3cによって濃度が測定される。
【0052】
そして、測定された濃度に基づいて必要な量の離型剤原液や水を、原液送給配管h14や希釈液供給配管h15からそれぞれ供給して所定濃度の再生液を生成する。
【0053】
回収液の濃度が極端に低い場合(例えば、所定濃度の1/3〜1/2倍)や高すぎる場合(例えば、所定濃度の1.5〜1.7倍)に、タンク内の濃度が、設定した範囲から大きく外れると、回収液の送給を停止したうえで、再度、濃度の測定を行う。
【0054】
それから、測定された濃度に基づいて必要な量の離型剤原液や水を供給するが、その際、離型剤原液や水の流量を増加させることにより、必要量の離型剤原液や水を短い時間で供給し、再生液を短時間で生成できるようにしている。これにより、再生液の生成に要する時間を七割程度に短縮することができる。なお、離型剤原液や水の流量を制御する機能のほかに、従来から行われているような、供給時間を制御して供給量を調整する機能も有している。再生液の濃度が設定範囲に戻ったら、回収液の送給を再開し、回収液を定期的に供給する通常運転に戻す。
【0055】
回収液混合タンク3aは、離型剤再生装置1が稼動している間は、タンク内の濃度が超音波測定器3cによって常時監視されているため、濃度に影響を及ぼすような不具合、例えば、原液送給配管h14や希釈液供給配管h15からの液漏れなどが生じて濃度が設定範囲外になった場合でも、即座に濃度の復元が行われる。
【0056】
なお、回収液混合タンク3aの余剰液は、オーバーフロー配管h16によって沈静タンク8の第一槽8aの第一室8dに戻される。
【0057】
こうして回収液混合タンク3aで生成された再生液は、再生液送給配管h17を通じて再生液貯留タンク4aに送給されて貯留される。貯留タンク4aの再生液の濃度は、攪拌機4bが継続的に運転されているため、一様な状態に保たれている。
【0058】
この再生液貯留タンク4aの再生液を、再生液送給配管h19から取り出してポンプ13,14により適宜各金型装置Dに供給する。通常、二台のポンプのうち一台のみが運転されており、残りの一台は、金型装置Dでの使用量が多くなって一台では供給不足となる場合や、ポンプのメンテンスを行う場合に用いられる。なお、ポンプ13,14から金型装置Dに至る流路には、圧送タンク15が設けられており、金型装置Dに送給される再生液や離型剤新液等を、一時的に貯留できるようになっている。この圧送タンク15は、主に、金型装置Dに大量の再生液や離型剤新液を供給する必要がある場合、これらの液を貯留するための予備タンクとして使用される。
【0059】
こうして貯留タンク4aの再生液を、各金型装置Dに供給して使用すると、回収液混合タンク3aの状態、つまり、再生液の生成中か否かに関係なく再生液を使用することができるので、離型剤新液の使用量を抑えることができる。また、再生液の濃度も安定していため、ワークの張り付き等の不具合が減り、歩留まりが向上する。
【0060】
貯留タンク4aに貯留されている再生液が上限レベルに近い場合など、エアバルブを切り替えて、回収液混合タンク3aで生成された再生液を金型装置Dに直接送ることで、タンク内の液量を調整することができる。
【0061】
ワークによっては離型剤新液を使用した方が良い場合があり、その場合は、エアバルブ17の切り替えによって、新液生成タンク10の離型剤新液を金型装置Dに送給する。新液生成タンク10では、原液タンク9に貯留されている離型剤原液を、原液送給配管h21と通じて所定量供給するとともに、希釈液である水を希釈液送給配管h22から所定量供給し、攪拌機10aで攪拌して濃度が一様な離型剤新液を生成している。
【0062】
この際、離型剤原液と水との供給を少量ずつ交互に行って二液が混ざりやすくし、離型剤新液の濃度を一様にさせやすくしている。離型剤原液は、一定のストロークを有する定量シリンダを使って供給しており、一方、水の供給は、流量計で測定して電磁弁を開閉することにより行っている。そして、レベル計LVで上限を検知すると、離型剤原液と水とを一回ずつ供給する一工程の動作が終了したのちに、離型剤原液及び水の供給を停止する。
【0063】
この新液生成タンク10の離型剤新液を、回収液混合タンク3aに供給し、回収液と離型剤新液とを混合して再生液を生成することができる。新液生成タンク10の離型剤新液を再生液の生成に用いるのは、回収液の濃度が再利用可能な範囲内にある場合、つまり、回収液が、再生液の濃度として許容されている範囲の濃度になっている場合である。こうすると、離型剤原液と水とをそれぞれ供給する手間が省け、再生液を手っ取り早く生成することが可能になる。回収液は、夾雑物が除去され、且つ、濃度が再利用可能な範囲内にあるといっても、金型装置Dで熱せれられたりすることで質が低下しており、離型剤新液を供給することで、質的に離型剤新液に近い再生液を生成することができる。離型剤新液は、図4に示すように、新液生成タンク10から送給されて新液供給配管h27から回収液混合タンク3aに供給される。
【0064】
また、新液生成タンク10の離型剤新液を、貯留タンク4aに供給することもできる。この場合、新液生成タンク10から送給された離型剤新液は、新液供給配管h28で貯留タンク4aに供給される。こうして、貯留タンク4aの液量の不足分を補うことができる。なお、新液供給配管h28と新液供給配管h27とはエアバルブ16に接続されており、このバルブを切り替えることによって、離型剤新液を、回収液混合タンク3aと貯留タンク4aの一方に送るか、両方に送るかを選択することができる。
【0065】
それから、図4に示すように、離型剤再生装置1に、再生液貯留タンク4aの再生液を回収液混合タンク3aに返送するための回収液返送配管h25(返送手段)を設けると、ワークに塗布する離型剤の濃度を変更する場合など、再生液貯留タンク4aの再生液を、再び回収液混合タンク3aに戻して濃度調整できるため、貯留している再生液を廃棄する等の無駄を避けることができる。この回収液搬送配管h25の一端部は、切替バルブ11を介して再生液送給配管h19に接続されており、他端部は、回収液送給配管h8に接続されている。
【0066】
次に、離型剤再生装置1を搭載した離型剤再生装置の具体例について説明する。符号については、図1で示したのと同等の機能を有するものは同一の符号で表している。図5に示すように、離型剤再生装置Aは上面が長方形状の低い共通架台R1上に、油分除去タンク7,沈静タンク8,回収液混合タンク3a,圧送タンク12が配置されている。また、再生液を送り出す圧送ポンプP1と回収液を油分除去タンク7に送給する圧送ポンプP2と制御盤C1が設けられており、さらに原液タンク9が設けられている。この原液タンク9は回収液混合タンク3aの上部に配置されており、ポンプ等を用いずに液を流下させることによって回収液混合タンク3aに供給できるようになっている。沈静タンク8,回収液混合タンク3a,圧送タンク12,原液タンク9にはそれぞれフロート式のレベル計LVが設けられており、回収液混合タンク3aと圧送タンク12とには攪拌機3b,12bが設けられている。また、回収液混合タンク3aの内部には超音波濃度測定器が取り付けられている(図示は省略している)。
【0067】
また、図6で示している離型剤再生装置Bは共通架台R2上に、内部に油分除去タンク7と沈静タンク8が設けられているシステムタンクTが配置され、回収液混合タンク3aと再生液貯留タンク4aとが上下二段の配置で設けられ、原液タンク9と新液生成タンク10とが上下二段の配置で設けられている。また、原液タンク9に離型剤原液を補充する圧送ポンプP2と、再生液貯留タンク4aと新液生成タンク10から液を送り出す圧送ポンプP3と、回収液をシステムタンクTの油分除去タンク7に送給する圧送ポンプP4と、沈静タンク8の回収液を回収液混合タンク3aに送給する圧送ポンプP5とが設けられている。回収液混合タンク3a及び原液タンク9の中の液は、ポンプ等を使用せず下部のタンクへ流下させることによって供給される。
【0068】
回収液混合タンク3aと再生液貯留タンク4a、原液タンク9と新液生成タンク10とにはフロート式のレベル計LVがそれぞれ設けられるとともに、原液タンク9以外の回収液混合タンク3a、再生液貯留タンク4a、新液生成タンク10には攪拌機3b,4b,10aがそれぞれ設けられている。さらに、回収液混合タンク3aには超音波濃度測定器3cが設けられている。そして、これらの装置を制御するための制御盤C2が共通架台R2の端に設置されている。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明にかかる離型剤再生装置の実施形態を含む離型剤再生装置の概念図を示している。
【図2】図1において夾雑物除去手段を示す概念図である。
【図3】(a)は図1において離型剤再生手段3を示す概念図であり、(b)は再生液貯留手段4の概念図を示している。
【図4】本発明にかかる離型剤再生装置の離型剤再生手段3の別の実施形態を示す概念図である。
【図5】本発明にかかる離型剤再生装置の別の実施形態を示しており、(a)は正面図であり、(b)は平面図である。
【図6】本発明にかかる離型剤再生装置のさらに別の実施形態を示しており、(a)は正面図であり、(b)は平面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 離型剤再生装置
2 夾雑物除去手段
3 再生液生成手段
3a 回収液混合タンク
3c 超音波濃度測定器
4 再生液貯留手段
4a 再生液貯留タンク
10 新液生成タンク
10a 攪拌機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に塗布されて使われた使用済み離型剤を、離型剤原液や希釈液などの濃度調整液と混合することによって所定濃度の再生液を生成する再生液生成手段を備えた離型剤再生装置であって、
前記再生液生成手段において、前記再生液を生成するためのタンクに供給する前記濃度調整液の流量が、前記使用済み離型剤の濃度に応じて調整可能になっていることを特徴とする離型剤再生装置。
【請求項2】
前記再生液生成手段で生成した前記再生液を貯留するための再生液貯留手段が設けられ、この再生液貯留手段の再生液が、前記金型に送給されることを特徴とする請求項1記載の離型剤再生装置。
【請求項3】
前記再生液が、前記再生液生成手段と前記再生液貯留手段とから、選択的に前記金型に送給されることを特徴とする請求項2記載の離型剤再生装置。
【請求項4】
前記再生液貯留手段の前記再生液を、前記再生液生成手段に戻すことができる返送手段が設けられていることを特徴とする請求項2又は3記載の離型剤再生装置。
【請求項5】
前記離型剤原液と前記希釈液とを混合して離型剤新液を生成するための新液生成手段が設けられ、この新液生成手段の前記離型剤新液を、前記金型に送給可能になっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の離型剤再生装置。
【請求項6】
前記濃度調整液が、前記新液生成手段で生成された前記離型剤新液であることを特徴とする請求項5記載の離型剤再生装置。
【請求項7】
前記再生液貯留手段に貯留している前記再生液を攪拌するための攪拌手段を設けていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の離型剤再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−175752(P2007−175752A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379557(P2005−379557)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(506004333)阪神テック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】