説明

離型剤噴霧装置

【課題】離型剤噴霧ノズルを移動させるタイミングと離型剤を噴霧するタイミングとを合わせるためのシーケンス制御が不要で、装置構成が簡易な離型剤噴霧装置を提供する。
【解決手段】第1圧縮空気供給源38と、第1圧縮空気供給源38から供給される圧縮空気により離型剤を可動金型11の型面17に向けて噴霧する離型剤噴霧ノズル32と、離型剤噴霧ノズル32を移動させる直線運動エアシリンダ31と、離型剤の噴霧の開始と連動させて直線運動エアシリンダ31を第1圧縮空気供給源38から供給される圧縮空気により駆動する手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アルミニウム等のダイカストにおいて、金型の型面に離型剤を均一に噴霧する離型剤噴霧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイカストでは、金型の焼き付きを防止し、鋳造された成形品を金型から取り出しやすくするために、金型の型面に離型剤を噴霧しておくことが必要である。従来の離型剤噴霧装置では、離型剤を均一に噴霧するため、離型剤の噴霧中にスプレーノズルをアクチュエータによって移動させていた。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−312251号公報(第3頁、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような離型剤噴霧装置にあっては、金型の型面に均一に離型剤を噴霧するため、スプレーノズルを移動させるタイミングと離型剤を噴霧するタイミングを合わせる必要があり、シーケンス制御が必要であった。よって、シーケンス制御用の制装回路が必要となり、装置が複雑化するという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような問題を解決するためになされたもので、スプレーノズルを移動させるタイミングと離型剤を噴霧するタイミングとを合わせるためのシーケンス制御が不要で、装置構成が簡易な離型剤噴霧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る離型剤噴霧装置は、第1圧縮ガス供給源と、第1圧縮ガス供給源から供給される圧縮ガスにより離型剤を金型の型面に向けて噴霧する噴霧ノズルと、噴霧ノズルを移動させるエアシリンダと、離型剤の噴霧の開始と連動させてエアシリンダを第1圧縮ガス供給源から供給される圧縮ガスによって駆動する手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、噴霧ノズルを移動させるエアシリンダと、離型剤の噴霧の開始と連動させてエアシリンダを第1圧縮ガス供給源から供給される圧縮ガスによって駆動する手段と、を備えたことにより、噴霧ノズルを移動させるタイミングと離型剤を噴霧するタイミングを合わせるためのシーケンス制御が不要となり、装置構成を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1における離型剤噴霧装置を備えたダイカストマシンを示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1における離型剤噴霧装置の圧縮空気、水および離型剤の供給系を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1における可動金型を示す正面図である。
【図4】この発明の実施の形態1における図3のP−Q断面図である。
【図5】この発明の実施の形態2における離型剤噴霧装置の圧縮空気および離型剤の供給系を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
まず、この発明の実施の形態1における離型剤噴霧装置1aを備えたダイカストマシン2の構成を説明する。図1は、この発明の実施の形態1における離型剤噴霧装置1aを備えたダイカストマシン2を示す構成図である。尚、図1は、離型剤噴霧時の様子を示し、また、ダイカストマシン2の要部のみを示している。
【0010】
図1において、ダイカストマシン2のベース部(図示せず)上に固定側ダイプレート3が固定され、この固定側ダイプレート3には複数のタイバー6が固定されている。タイバー6は、可動側ダイプレート7を貫通し、固定側ダイプレート3と対向するように可動側ダイプレート7を支持している。可動側ダイプレート7はタイバー6に沿って移動可能となっている。そして、固定側ダイプレート3と可動側ダイプレート7の互いに対向する面には、それぞれ固定金型8と可動金型11とが固定されており、可動側ダイプレート7を移動させることによって型閉および型開が可能である。尚、図1はタイバー6の一部を省略して示している。
【0011】
また、固定側ダイプレート3および固定金型8を貫通して射出プランジャスリーブ12が固定されており、この射出プランジャスリーブ12の内部には射出プランジャ13が配置されている。この射出プランジャ13によって、型閉時に互いに対向する固定金型8の型面16と可動金型11の型面17とによって形成された空間内に、アルミニウムやマグネシウムなどの溶融金属を高圧で射出することができる。
【0012】
固定側ダイプレート3上には旋回機構部18を有するスタンド21が固定され、この旋回機構部18には水平方向に延びるアーム22が固定され、このアーム22には離型剤噴霧装置1aを昇降可能に保持する昇降用エアシリンダ23が固定されている。アーム22にはハンドル26が設けられ、このハンドル26を回すことによってアーム22をアーム22の長手方向に移動させることができるようになっている。
【0013】
離型剤噴霧装置1aは、型開時に、旋回機構部18および昇降用エアシリンダ23の動作によって、固定金型8の型面16および可動金型11の型面17に対向するように配置される。各型面と離型剤噴霧装置1aとの距離は、アーム22に設けられたハンドル26を回してアーム22をアーム22の長手方向に移動させることによって調整できる。
【0014】
次に、離型剤噴霧装置1aの構成について説明する。尚、ここでは、可動金型11の型面17の形状が複雑で、固定金型8の型面16の形状が平板に近いような場合を想定して説明する。図1において、昇降用エアシリンダ23にはホルダ27が固定され、ホルダ27には固定用治具28が固定され、固定用治具28には直線運動エアシリンダ31が固定されている。そして、直線運動エアシリンダ31には複数の離型剤噴霧ノズル32を可動金型11の型面17に向けて保持するノズルホルダ33が固定されており、直線運動エアシリンダ31によってノズルホルダ33が図1における紙面垂直方向に移動可能となっている。
【0015】
尚、図1には、3個の離型剤噴霧ノズル32が上下方向に並んで配置されている場合を示したが、これに限ることは無く、離型剤噴霧ノズル32の個数は、1個や2個、また、4個以上でもよい。複数の離型剤噴霧ノズル32の配置についても、図1における上下方向に並べることに限らず、紙面垂直方向や斜め方向に並べてもよく、また、直線状に並べる必要もなく、例えば円状などに配置してもよい。
【0016】
ホルダ27にはさらに、可動金型11の型面17に向けて圧縮空気を噴霧する圧縮空気噴霧ノズル36と、可動金型11の型面17および固定金型8の型面16に圧縮空気および水を噴霧する水噴霧ノズル37と、が固定されている。圧縮空気噴霧ノズル36および水噴霧ノズル37としては、例えば銅製の配管を屈曲させたものが用いられる。尚、圧縮空気噴霧ノズル36および水噴霧ノズル37の個数および配置についても、離型剤噴霧ノズル32の場合と同様に、図1に示した個数および配置に限らない。
【0017】
また、ここでは離型剤噴霧ノズル32は、可動金型11の型面17の方に向くようにし、固定金型8の型面16には向けなかったが、これは、可動金型11の型面17が複雑な形状で、固定金型8の型面16の形状が平板に近いような場合を想定しており、固定金型8の型面16には特に離型剤を噴霧しなくてもよいからである。逆に固定金型8の型面16の形状が複雑な場合は、離型剤噴霧ノズル32を固定金型8の型面16に向ければよいし、固定金型8および可動金型11の両型面の形状が共に複雑な場合は、両型面に向ければよい。
【0018】
離型剤噴霧装置1aは、以上に説明した構成に加えて、圧縮空気、水および離型剤の供給系を備えている。次に、この発明の実施の形態1における離型剤噴霧装置1aの圧縮空気、水および離型剤の供給系について説明する。図2は、この発明の実施の形態1における離型剤噴霧装置1aの圧縮空気、水および離型剤の供給系を示す構成図である。
【0019】
図2において、ノズルホルダ33に、第1圧縮空気供給源38から第1圧縮空気供給路41を通して圧縮空気が供給され、離型剤供給源42から離型剤が供給される。離型剤と圧縮空気とはノズルホルダ33内で混合され、離型剤噴霧ノズル32から離型剤が噴霧される。つまり、離型剤噴霧ノズル32は、第1圧縮空気供給源38から供給される圧縮空気により離型剤を噴霧することとなる。尚、離型剤供給源42から離型剤噴霧ノズル32へ離型剤を供給したり止めたりするために、離型剤の供給路には離型剤用ソレノイドバルブ43が設けられている。
【0020】
また、第1圧縮空気供給路41には、第1圧縮空気供給源38から離型剤噴霧ノズル32へ圧縮空気を供給したり止めたりするために、第1圧縮空気供給路41を開閉する第1ソレノイドバルブ44が設けられている。そして、第1圧縮空気供給路41は、離型剤噴霧ノズル32と第1ソレノイドバルブ44との間に分岐部46を有し、この分岐部46において、第1流路47、第2流路48および第3流路51に分岐されている。第1流路47は、ノズルホルダ33に接続され、離型剤噴霧ノズル32と繋がっている。
【0021】
第2流路48は直線運動エアシリンダ31に接続され、供給される圧縮空気により、直線運動エアシリンダ31が図2における右方向であるA方向に駆動される。これにより、直線運動エアシリンダ31に固定されたノズルホルダ33を、即ち、ノズルホルダ33に保持された離型剤噴霧ノズル32を図2におけるA方向に移動させることができる。直線運動エアシリンダ31の移動速度は、第2流路48に設けられた第1速度制御弁52によって制御することができる。尚、図2における右方向であるA方向は、図1における紙面垂直方向の紙面手前側方向に対応している。また、図2では図示の都合上、直線運動エアシリンダ31にノズルホルダ33が固定されていないかのように示されているが、実際は固定されており、直線運動エアシリンダ31によってノズルホルダ33が移動可能となっている。
【0022】
さらに、直線運動エアシリンダ31には、第2圧縮空気供給源53から第2圧縮空気供給路56を通して圧縮空気を供給することができる。この圧縮空気の供給によって、第2流路48から圧縮空気が供給されたときとは逆方向の、図2における左方向であるB方向に直線運動エアシリンダ31を駆動し、離型剤噴霧ノズル32をB方向に移動させることができる。このときの直線運動エアシリンダ31の移動速度は、第2圧縮空気供給路56に設けられた第2速度制御弁57によって制御することができる。尚、図2における左方向であるB方向は、図1における紙面垂直方向の紙面奥側方向に対応している。
【0023】
第2圧縮空気供給路56には、第2圧縮空気供給源53から直線運動エアシリンダ31へ圧縮空気を供給したり止めたりするために、第2圧縮空気供給路56を開閉するエアオペレートバルブ58が設けられている。このエアオペレートバルブ58は、第3流路51と接続されており、第3流路51から圧縮空気が供給されると第2圧縮空気供給路56を閉じ、第3流路51からの圧縮空気の供給を止めると第2圧縮空気供給路56を開くようになっている。
【0024】
また、第1圧縮空気供給路41は、第1ソレノイドバルブ44と第1圧縮空気供給源38との間で分岐されて、圧縮空気噴霧ノズル36と水噴霧ノズル37に接続されている。そして、圧縮空気噴霧ノズル36へ圧縮空気を供給したり止めたりするために供給路を開閉する第2ソレノイドバルブ61と、水噴霧ノズル37へ圧縮空気を供給したり止めたりするために供給路を開閉する第3ソレノイドバルブ62と、が設けられている。
【0025】
さらに、水噴霧ノズル37には水供給源63から水が供給される。この水と第1圧縮空気供給源38から供給される圧縮空気とは、ミキシングユニット66で混合され、水と圧縮空気が混合されたものが水噴霧ノズル37に供給されることによって、水が水噴霧ノズル37から噴霧されることとなる。水供給源63から水噴霧ノズル37へ水を供給したり止めたりするために、供給路には水用ソレノイドバルブ67が設けられている。尚、水噴霧ノズル37は、水の供給を止めて圧縮空気のみを供給することにより、圧縮空気を噴霧することもできる。
【0026】
次に、図1および図2を参照して、この発明の実施の形態1における離型剤噴霧装置1aの動作について説明する。
【0027】
溶融金属の凝固が完了すると、型開して成形品を取り出した後、旋回機構部18および昇降用エアシリンダ23の動作により、可動金型11の型面17に圧縮空気噴霧ノズル36、水噴霧ノズル37および離型剤噴霧ノズル32が対向するように、そして固定金型8の型面16に水噴霧ノズル37が対向するように離型剤噴霧装置1aを配置する。そして、ハンドル26を回してアーム22を移動させ、圧縮空気噴霧ノズル36、水噴霧ノズル37および離型剤噴霧ノズル32と、各型面との距離を調整する。このとき、全てのバルブは閉じられている。
【0028】
離型剤噴霧装置1aが所定の位置に配置されると、まず、予め設定された時間、第2ソレノイドバルブ61および第3ソレノイドバルブ62が開弁される。すると、第1圧縮空気供給源38から供給される圧縮空気が、圧縮空気噴霧ノズル36および水噴霧ノズル37から、固定金型8の型面16および可動金型11の型面17へ向けて噴霧される。この圧縮空気の噴霧により、固定金型8の型面16および可動金型11の型面17に残存したバリが除去される。所定時間経過後、第2ソレノイドバルブ61および第3ソレノイドバルブ62は閉弁される。
【0029】
次に、予め設定された時間、第3ソレノイドバルブ62および水用ソレノイドバルブ67が開弁される。すると、第1圧縮空気供給源38から供給された圧縮空気と、水供給源63から供給された水と、はミキシングユニット66で混合され、水が水噴霧ノズル37から、固定金型8の型面16および可動金型11の型面17へ向けて噴霧される。この水の噴霧により、固定金型8および可動金型11の表面温度が、予め設定された温度にまで冷却される。所定時間経過後、第3ソレノイドバルブ62および水用ソレノイドバルブ67は閉弁される。
【0030】
次に、予め設定された時間、第2ソレノイドバルブ61および第3ソレノイドバルブ62が開弁され、第1圧縮空気供給源38から供給される圧縮空気が、圧縮空気噴霧ノズル36および水噴霧ノズル37から、固定金型8の型面16および可動金型11の型面17へ向けて噴霧される。この圧縮空気の噴霧により、固定金型8の型面16および可動金型11の型面17に残存した水が除去される。所定時間経過後、第2ソレノイドバルブ61および第3ソレノイドバルブ62は閉弁される。
【0031】
次に、予め設定された時間、第1ソレノイドバルブ44および離型剤用ソレノイドバルブ43が開弁される。すると、第1圧縮空気供給源38から第1流路47を通して供給された圧縮空気と、離型剤供給源42から供給された離型剤と、はノズルホルダ33内で混合され、離型剤が離型剤噴霧ノズル32から、可動金型11の型面17へ向けて噴霧される。
【0032】
このとき、第1圧縮空気供給源38から供給される圧縮空気は、第1圧縮空気供給路41の分岐部46で分岐され、第2流路48を通して直線運動エアシリンダ31に供給される。さらに、第1圧縮空気供給源38から供給される圧縮空気は、同じく分岐部46で分岐され、第3流路51を通してエアオペレートバルブ58に供給され、エアオペレートバルブ58を閉弁する。エアオペレートバルブ58の閉弁により、第2圧縮空気供給源53から直線運動エアシリンダ31への圧縮空気の供給が止まる。
【0033】
これにより、直線運動エアシリンダ31が、図1における紙面垂直方向の紙面手前側方向、即ち、図2における右方向であるA方向に駆動され、離型剤噴霧ノズル32が離型剤を噴霧しながら直線運動エアシリンダ31の駆動方向に移動することとなる。つまり、第1ソレノイドバルブ44の開弁動作によって、離型剤の噴霧と離型剤噴霧ノズル32の移動を連動させて開始することができる。
【0034】
所定時間経過後、第1ソレノイドバルブ44および離型剤用ソレノイドバルブ43は閉弁される。すると、第1圧縮空気供給源38から離型剤噴霧ノズル32および直線運動エアシリンダ31への圧縮空気の供給が止まり、離型剤の噴霧および離型剤噴霧ノズル32の移動が停止する。その一方で、第1圧縮空気供給源38からエアオペレートバルブ58への圧縮空気の供給が止まるため、エアオペレートバルブ58が開弁し、第2圧縮空気供給源53から直線運動エアシリンダ31への圧縮空気の供給が開始される。
【0035】
これにより、直線運動エアシリンダ31が、図1における紙面垂直方向の紙面奥側方向、即ち、図2における左方向であるB方向に駆動されるため、離型剤噴霧ノズル32も移動して最初の位置に戻る。つまり、第1ソレノイドバルブ44の閉弁動作によって、離型剤の噴霧終了と離型剤噴霧ノズル32の移動の停止を連動させて行うことができ、さらに、離型剤噴霧時と逆方向への離型剤噴霧ノズル32の移動開始も連動させて行うことができる。以上のようにして、離型剤噴霧装置1aの一連の動作が終了する。
【0036】
次に、この離型剤噴霧装置1aを用いて、実際に離型剤を可動金型11の型面17に噴霧してダイカストを行った実験結果について説明する。図3は、この発明の実施の形態1における可動金型11を示す正面図であり、図4は、この発明の実施の形態1における図3のP−Q断面図である。
【0037】
図3および図4において、可動金型11は、例えば工作機械用モジュールの冷却に用いられるようなヒートシンクであって、アスペクト比が高く薄肉であるスパイラルフィンを多数有するものを成形するために使用するものである。この可動金型11の寸法は、縦が約600mm、横が約700mm、厚さが約150mmであり、型面17において、スパイラルフィンの肉厚Tは約1mm、スパイラルフィン部分の型面17の深さは約30mmである。
【0038】
一方、固定金型8の寸法は、縦が約600mm、横が約700mm、厚さが約140mmであり、固定金型8の型面16の形状は、ほぼ平板のようになっている。
【0039】
上記の可動金型11および固定金型8を用いて、可動金型11の型面17に離型剤を噴霧してダイカストを行った。離型剤の噴霧中に離型剤噴霧ノズルを移動させずに位置を固定したままである代わりに可動金型11の型面17全体に離型剤を噴霧できるように離型剤噴霧ノズルを2次元状に複数配置した離型剤噴霧装置を用いて離型剤を噴霧してダイカストを行った場合は、成形品を多段押しによって押し出さなければ取り出すことはできなかった。
【0040】
これに対して、この発明の実施の形態1における離型剤噴霧装置1aを用いて、離型剤の噴霧開始と同時に離型剤噴霧ノズル32を可動金型11の型面17の図3における左端から右端まで移動させて離型剤を噴霧してダイカスト行った場合は、成形品は1回のみの押し出しで取り出すことができた。よって、離型剤噴霧装置1aを用いて型面17に充分均一に離型剤を噴霧できたと言える。
【0041】
この発明の実施の形態1では、以上のような構成としたことにより、第1圧縮空気供給源38からの圧縮空気の供給を開始するだけで、離型剤の噴霧開始と連動して離型剤噴霧ノズル32の移動が開始する。これにより、離型剤噴霧ノズル32の移動を開始するタイミングと離型剤の噴霧を開始するタイミングとを合わせるためのシーケンス制御が不要となって装置構成を簡素化できるという効果がある。
【0042】
また、第1圧縮空気供給路41を開閉する第1ソレノイドバルブ44を備え、第1圧縮空気供給路41が離型剤噴霧ノズル32と第1ソレノイドバルブ44との間の分岐部46で第1流路47と第2流路48とに分岐されて、直線運動エアシリンダ31に圧縮空気が供給されることにより、第1ソレノイドバルブ44の開閉動作によって離型剤の噴霧と離型剤噴霧ノズル32の移動とを連動させて開始および停止することができる。
【0043】
離型剤を噴霧するときとは逆方向に直線運動エアシリンダ31を駆動するために直線運動エアシリンダ31に圧縮空気を供給する第2圧縮空気供給源53を備えたことにより、離型剤の噴霧後に直線運動エアシリンダ31を離型剤の噴霧開始時の位置へ戻すことができる。これにより、離型剤噴霧ノズル32を離型剤の噴霧開始時の位置へ戻すことができる。
【0044】
さらに、第2圧縮空気供給路56を開閉するエアオペレートバルブ58を備え、このエアオペレートバルブ58に第1圧縮空気供給源38から圧縮空気が供給されると第2圧縮空気供給路56を閉じ、圧縮空気の供給を止めると第2圧縮空気供給路56を開くようにしたことにより、第1圧縮空気供給源38からの圧縮空気の供給を開始するだけで、第2圧縮空気供給源53から直線運動エアシリンダ31への圧縮空気を停止し、離型剤の噴霧と離型剤噴霧ノズル32の移動を連動させて開始することができる。また、第1圧縮空気供給源38からの圧縮空気の供給を停止するだけで、離型剤の噴霧停止と離型剤噴霧ノズル32の移動停止、さらに離型剤噴霧ノズル32の離型剤噴霧時とは逆方向への移動を開始することができる。これにより、これらの動作タイミングを合わせるシーケンス制御が不要となって装置構成を簡素化できる。
【0045】
加えて、第1圧縮空気供給路41が離型剤噴霧ノズル32と第1ソレノイドバルブ44との間の分岐部46で第1流路47、第2流路48および第3流路51に分岐されて、エアオペレートバルブ58に圧縮空気が供給されることにより、第1ソレノイドバルブ44の開閉動作によって離型剤の噴霧と離型剤噴霧ノズル32の移動を連動させて開始および停止することができ、さらには離型剤噴霧ノズル32の離型剤噴霧時と逆方向への移動も連動させて開始することも可能となる。
【0046】
また、図1における紙面垂直方向、即ち、図2における左右方向に離型剤噴霧ノズル32を直線運動させたことによって、広範囲に離型剤を噴霧できるため、離型剤噴霧ノズル32の本数を少なくしても可動金型11の型面17に離型剤を均一に噴霧することができる。
【0047】
尚、この発明の実施の形態1では、第1圧縮空気供給路41を分岐部46で第1流路47、第2流路48および第3流路51に分岐して、離型剤噴霧ノズル32、直線運動エアシリンダ31およびエアオペレートバルブ58に圧縮空気を供給した。しかし、分岐部46を備えずに、第1圧縮空気供給源38からそれぞれ別の供給路を設けて離型剤噴霧ノズル32、直線運動エアシリンダ31およびエアオペレートバルブ58に直接接続して圧縮空気を供給してもよい。この場合は、第1ソレノイドバルブ44を設けずとも、第1圧縮空気供給源38の電源のON/OFF動作によって、離型剤噴霧ノズル32、直線運動エアシリンダ31およびエアオペレートバルブ58に同時に圧縮空気の供給開始および供給停止を行うことができる。
【0048】
また、第1圧縮空気供給路41に分岐部46を備えている場合でも、第1ソレノイドバルブ44を備えずに、第1圧縮空気供給源38の電源のON/OFF動作によって、離型剤噴霧ノズル32、直線運動エアシリンダ31およびエアオペレートバルブ58への圧縮空気の供給開始および供給停止を行ってもよい。
【0049】
さらに、この発明の実施の形態1では、第1圧縮空気供給路41を分岐部46で第1流路47、第2流路48および第3流路51に分岐させた。しかし、1つの分岐部46において第1流路47、第2流路48および第3流路51の3流路に分岐する必要は無く、分岐部46において第1流路47と第2流路48に分岐させて、もう1つ別の分岐部を第1流路47または第2流路48に設けて第3流路51を分岐させてもよい。最終的に3流路に分岐できれば、分岐のさせ方は適宜決定すればよい。
【0050】
この発明の実施の形態1では、離型剤を噴霧するときとは逆方向であるB方向に直線運動エアシリンダ31を駆動するために、第2圧縮空気供給源53を備え、第2圧縮空気供給源53と直線運動エアシリンダ31とを第2圧縮空気供給路56で接続し、第2圧縮空気供給路56にエアオペレートバルブ58を設けた。しかし、第2圧縮空気供給源53を備えずに、B方向に直線運動エアシリンダ31を駆動するように第1圧縮空気供給源38と直線運動エアシリンダ31とを第2圧縮空気供給路56で接続し、第2圧縮空気供給路56にエアオペレートバルブ58を設けてもよい。
【0051】
尚、この発明の実施の形態1では、離型剤と圧縮空気はノズルホルダ33に供給されて混合され、ノズルホルダ33に保持された複数の離型剤噴霧ノズル32から離型剤が噴霧されるようにした。しかし、これに限ることは無く、ノズルホルダ33を介さずに離型剤噴霧ノズル32に離型剤と圧縮空気を直接供給してもよい。
【0052】
また、この発明の実施の形態1では、直線運動エアシリンダ31によって離型剤噴霧ノズル32を図2における左右方向に移動させた。しかし、離型剤噴霧ノズル32を移動させる方向は、これに限ることは無く、図2における上下方向や斜め方向、紙面垂直方向などでもよい。離型剤噴霧ノズル32を移動させる方向は、可動金型11の型面17や離型剤噴霧ノズル32の配置などを考慮して適宜決定すればよい。
【0053】
この発明の実施の形態1では、第1圧縮空気供給路41や第2圧縮空気供給路56など、それぞれの供給源から供給先までに供給路を設けたが、供給源を供給先に直接接続すれば、第1圧縮空気供給路41や第2圧縮空気供給路56などの各供給路は不要となる。
【0054】
また、この発明の実施の形態1では、直線運動エアシリンダ31を第1圧縮空気供給源38および第2圧縮空気供給源53から供給される圧縮空気を用いて駆動した。しかし、直線運動エアシリンダ31の駆動手段は圧縮空気に限ることは無く、他の気体の圧縮ガスを用いてもよい。
【0055】
さらに、この発明の実施の形態1では、第1ソレノイドバルブ44など、各供給路の開閉を行うためにソレノイドバルブを設けた。しかし、供給路の開閉を行うことができれば、モータで駆動するバルブやエアオペレートバルブなどでもよく、ソレノイドバルブに限らない。
【0056】
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2における離型剤噴霧装置1bの圧縮空気および離型剤の供給系を示す構成図である。図5において、図2と同じ符号を付けたものは、同一または相当の構成を示しており、その説明を省略する。この発明の実施の形態1とは、直線運動エアシリンダ31の替わりに回転エアシリンダ68をノズルホルダ33に取り付けた構成が相違している。ただし、図5においては、図を簡略化するため、圧縮空気の供給系のうちの離型剤の噴霧に関与しない部分および水の供給系は省略している。
【0057】
次に、このような構成の離型剤噴霧装置1bの離型剤を噴霧する動作について説明する。
【0058】
予め設定された時間、第1ソレノイドバルブ44および離型剤用ソレノイドバルブ43が開弁される。すると、第1圧縮空気供給源38から第1流路47を通して供給された圧縮空気と、離型剤供給源42から供給された離型剤と、はノズルホルダ33内で混合され、離型剤が離型剤噴霧ノズル32から、可動金型11の型面17へ向けて噴霧される。
【0059】
このとき、第1圧縮空気供給源38から供給される圧縮空気は、第1圧縮空気供給路41の分岐部46で分岐され、第2流路48を通して回転エアシリンダ68に供給される。さらに、第1圧縮空気供給源38から供給される圧縮空気は、同じく分岐部46で分岐され、第3流路51を通してエアオペレートバルブ58に供給され、エアオペレートバルブ58を閉弁する。エアオペレートバルブ58の閉弁により、第2圧縮空気供給源53から回転エアシリンダ68への圧縮空気の供給が止まる。
【0060】
これにより、回転エアシリンダ68が、図5における紙面と垂直な平面内で離型剤噴霧ノズル32に向かって反時計回りであるC方向に回転し、離型剤噴霧ノズル32が離型剤を噴霧しながらノズルホルダ33と一緒にC方向に180°回転することとなる。この回転速度は、第1速度制御弁52によって制御される。尚、図5における紙面と垂直な平面は、図1における紙面と平行な平面に対応している。
【0061】
所定時間経過後、第1ソレノイドバルブ44および離型剤用ソレノイドバルブ43は閉弁される。すると、第1圧縮空気供給源38から離型剤噴霧ノズル32および回転エアシリンダ68への圧縮空気の供給が止まり、離型剤の噴霧および離型剤噴霧ノズル32の回転が停止する。その一方で、第1圧縮空気供給源38からエアオペレートバルブ58への圧縮空気の供給が止まるため、エアオペレートバルブ58が開弁し、第2圧縮空気供給源53から回転エアシリンダ68への圧縮空気の供給が開始される。
【0062】
これにより、回転エアシリンダ68が、図5における紙面と垂直な平面内で離型剤噴霧ノズル32に向かって時計回りであるD方向に回転するため、離型剤噴霧ノズル32がD方向へ180°回転して最初の位置に戻る。以上のようにして、離型剤噴霧装置1bの離型剤の噴霧動作が終了する。
【0063】
この離型剤噴霧装置1bを用いて、図3および図4に示す可動金型11の型面17に離型剤を噴霧してダイカストを行った場合についても、成形品は1回のみの押し出しで取り出すことができた。よって、離型剤噴霧装置1bを用いて型面17に充分均一に離型剤を噴霧できたと言える。
【0064】
この発明の実施の形態2では、以上のような構成としたことにより、離型剤噴霧ノズル32がノズルホルダ33と平行な面内を回転するため、広範囲に離型剤を噴霧でき、離型剤噴霧ノズル32の本数を少なくしても可動金型11の型面17に離型剤を均一に噴霧することができる。
【0065】
尚、この発明の実施の形態2では、離型剤噴霧ノズル32を図5における紙面と垂直な面内で回転させた。しかし、これに限ることは無く、図5における紙面と垂直な面から傾いた面内で回転させてもよい。
【0066】
以上、この発明の実施の形態1〜2について説明した。これらの、この発明の実施の形態1〜2で説明した構成は互いに組合せることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 離型剤噴霧装置
11 可動金型
17 可動金型の型面
31 直線運動エアシリンダ
32 離型剤噴霧ノズル
38 第1圧縮空気供給源
41 第1圧縮空気供給路
44 第1ソレノイドバルブ
46 第1圧縮空気供給路の分岐部
47 第1流路
48 第2流路
51 第3流路
53 第2圧縮空気供給源
56 第2圧縮空気供給路
58 エアオペレートバルブ
68 回転エアシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1圧縮ガス供給源と、
前記第1圧縮ガス供給源から供給される圧縮ガスにより離型剤を金型の型面に向けて噴霧する噴霧ノズルと、
前記噴霧ノズルを移動させるエアシリンダと、
前記離型剤の噴霧の開始と連動させて前記エアシリンダを前記圧縮ガスにより駆動する手段と、
を備えた離型剤噴霧装置。
【請求項2】
第1圧縮ガス供給源と噴霧ノズルとを接続する第1圧縮ガス供給路と、
前記第1圧縮ガス供給路を開閉する第1バルブと、を備え、
前記第1圧縮ガス供給路が前記噴霧ノズルと前記第1バルブとの間で分岐されてエアシリンダに接続され、圧縮ガスが前記エアシリンダに供給されることを特徴とする請求項1記載の離型剤噴霧装置。
【請求項3】
離型剤を噴霧するときとは逆方向にエアシリンダを駆動するために前記エアシリンダに圧縮ガスを供給する第2圧縮ガス供給源を備えたことを特徴とする請求項2記載の離型剤噴霧装置。
【請求項4】
第2圧縮ガス供給源とエアシリンダとを接続する第2圧縮ガス供給路と、
前記第2圧縮ガス供給路を開閉する第2バルブと、を備え、
前記第2バルブは、第1圧縮ガス供給源から圧縮ガスが供給されると前記第2圧縮ガス供給路を閉じ、前記圧縮ガスの供給を止めると前記第2圧縮ガス供給路を開くエアオペレートバルブであることを特徴とする請求項3記載の離型剤噴霧装置。
【請求項5】
第1圧縮ガス供給路が噴霧ノズルと第1バルブとの間で分岐されて第2バルブに接続され、圧縮ガスが第2バルブに供給されることを特徴とする請求項4記載の離型剤噴霧装置。
【請求項6】
エアシリンダは、直線運動するエアシリンダであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の離型剤噴霧装置。
【請求項7】
エアシリンダは、回転運動するエアシリンダであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の離型剤噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−218382(P2011−218382A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87817(P2010−87817)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】