説明

離型紙の製造方法および離型紙の製造装置

【課題】高いコントラストを有する模様を転写し得る離型紙を高い生産効率で製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】製造方法40は、原反20に凹凸模様12を形成して離型紙10を製造する方法である。製造方法40は、ラビング処理により前記原反の表面を粗化する工程と、エンボス加工により、粗化された前記原反の前記表面に前記凹凸模様を形成する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原反に凹凸模様を形成して離型紙を製造する製造方法に係り、とりわけ、優れたコントラストを有する模様を転写することができる離型紙を製造する製造方法に関する。また、本発明は、原反に凹凸模様を形成して離型紙を製造する製造装置に係り、とりわけ、優れたコントラストを有する模様を転写することができる離型紙を製造する製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合皮製品、化粧シート、内装材等に用いられるシート状材料は、離型紙を型紙として、離型紙に形成された凹凸模様を転写されることによって製造され得る。離型紙は、一般的に、原反にエンボス加工を施すことによって作製され得る(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−205311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、エンボス加工によって離型紙を作製する場合、エンボス加工中に大きな圧力が加わりやすいことから、離型紙の凹部を精度良く形成することができる。その一方で、加工圧力が比較的小さくなりやすいことから、離型紙の凸部を精度良く形成することは難しい。したがって、離型紙上の凹部と凸部とのギャップを大きくすることには限界がある。この結果、離型紙を用いて作製されたシート状材料のコントラスト(明暗の差)が十分ではない、つまり、シート状材料の模様が平坦化して視認される、という不具合が生じてしまう。
【0004】
また、加工圧力を増大することにより、離型紙上の凹部と凸部とのギャップをいくらか大きくすることができる。しかしながら、加工圧力を増大させると、生産効率を悪化させることになり、また、加工装置や原反への負荷も増大することとなる。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、原反に凹凸模様を形成して離型紙を製造する製造方法であって、優れたコントラストを有する模様を転写し得る離型紙を高い生産効率で製造することができる製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、原反に凹凸模様を転写する離型紙の製造装置であって、優れたコントラストを有する模様を転写し得る離型紙を高い生産効率で製造することができる離型紙の製造装置を提供することを目的とする。
【0006】
ところで、昨今においては、特殊な用途に応じた離型紙(典型的には、過酷な使用条件に耐え得る離型紙)を製造するため、基材と、基材上に接合された樹脂層と、を有する原反が用いられることもある。このような原反は、通常、基材上に樹脂をコーティングすることにより製造され、樹脂層は光沢を有するようになる。そして、このような原反を用いて得られた離型紙によりシート状材料を作製した場合、シート状材料のコントラストが不十分であるという上述の不具合が顕著に現れやすくなる。本発明による離型紙の製造方法および離型紙の製造装置によって、このような原反から、優れたコントラストを有する模様を転写し得る離型紙を製造することができるようになれば都合が良い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による離型紙の製造方法は、原反に凹凸模様を形成して離型紙を製造する方法であって、ラビング処理により、前記原反の表面を粗化する工程と、エンボス加工により、粗化された前記原反の前記表面に前記凹凸模様を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明による離型紙の製造方法において、前記原反の前記表面にラビングロールを擦りつけることにより、ラビング処理を行うようにしてもよい。このような離型紙の製造方法において、互いに異なる方向に延びる回転軸線を有した複数のラビングロールを、それぞれ前記原反の前記表面に擦りつけることにより、原反をラビング処理するようにしてもよい。
【0009】
また、本発明による離型紙の製造方法の前記微小な凹凸を形成する工程において、前記原反の前記表面での光沢度の値が、エンボス加工において用いられるエンボス型の表面での光沢度の値、好ましくは少なくともエンボス型の凹凸部の凸部の表面での光沢度の値よりも小さくなるように、ブラスト加工を行ってもよい。
【0010】
さらに、本発明による離型紙の製造方法の前記粗化する工程において、前記原反の前記表面での光沢度が4以上8以下となるように、ラビング処理を行うようにしてもよい。このような離型紙の製造方法の前記粗化する工程において、前記原反の前記表面での平均長さSmが30μm以上80μm以下となり、前記原反の前記表面での十点平均粗さRzが5μm以上20μm以下となるように、ラビング処理を行うようにしてもよい。
【0011】
さらに、本発明による第1の離型紙の製造方法の前記粗化する工程において、前記原反の前記表面のうちの前記凹凸模様が形成されるようになる領域を粗化するようにしてもよい。
【0012】
さらに、本発明による離型紙の製造方法において、前記原反は、基材と、前記基材に積層された合成樹脂層と、を有し、前記合成樹脂層が、前記原反の粗化される表面をなすようにしてもよい。
【0013】
さらに、本発明による離型紙の製造方法の前記凹凸模様を形成する工程において、前記凹凸模様の凸部に位置するようになる前記原反の表面を粗化された状態に保ちながら、前記凹凸模様の凹部に位置するようになる前記原反の粗化された表面をならすようにしてもよい。
【0014】
本発明による離型紙の製造装置は、原反に凹凸模様を形成して離型紙を製造する製造装置であって、前記原反の表面を擦りつけて当該表面を粗化するラビング装置と、前記ラビング装置の下流側に配置され、前記原反に前記凹凸模様を形成するエンボス装置と、を備えるようにしてもよい。
【0015】
本発明による離型紙の製造装置において、前記ラビング装置は複数のラビングロールを有し、前記複数のラビングロールは互いに異なる方向に延びる回転軸線を中心として回転可能であるようにしてもよい。
【0016】
また、本発明による離型紙の製造装置において、前記エンボス装置が、前記凹凸模様に対応した凹凸部であって前記原反に当接するようになる凹凸部を含むエンボス型を有し、前記ブラスト装置が、前記原反の前記表面での光沢度の値が、前記エンボス型の前記凹凸部での光沢度、好ましくは少なくともエンボス型の凹凸部の凸部の表面での光沢度の値よりも小さくなるように、前記原反の前記表面に微小な凹凸を形成してもよい。
【0017】
さらに、本発明による離型紙の製造装置において、前記ラビング装置は、前記原反の前記表面での光沢度が4以上8以下となるように、前記原反の前記表面を粗化するようにしてもよい。このような離型紙の製造装置において、前記ラビング装置は、前記原反の前記表面での平均長さSmが30μm以上80μm以下となり、前記原反の前記表面での十点平均粗さRzが5μm以上20μm以下となるように、前記原反の前記表面を粗化するようにしてもよい。
【0018】
さらに、本発明による離型紙の製造装置において、前記ラビング装置は、前記原反の前記表面のうちの前記エンボス装置によって前記凹凸模様が形成されるようになる領域を粗化するようにしてもよい。
【0019】
さらに、本発明による離型紙の製造装置において、前記原反は、原反の表面をなす合成樹脂層と、前記合成樹脂層に積層された基材と、を有し、前記ラビング装置は、前記原反の前記合成樹脂層に擦りつけられるラビング部材を有し、前記エンボス装置は、前記凹凸模様に対応した凹凸部であって前記合成樹脂層に当接するようになる凹凸部を含むエンボス型を有するようにしてもよい。
【0020】
さらに、本発明による離型紙の製造装置において、前記エンボス装置は、前記凹凸模様に対応した凹凸部を有するエンボス型と、前記エンボス型に対向して配置され、前記エンボス型との間で前記原反を圧するようになるバックアップ体と、を有し、前記エンボス型の前記凹凸部の凸部は、前記バックアップ体との間で原反を圧して前記原反の前記表面をなだらかにするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、優れたコントラストを有する模様を転写し得る離型紙を高い生産効率で製造することができる
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
【0023】
図1乃至図6は本発明による離型紙の製造方法および離型紙の製造装置の一実施の形態を説明するための図である。このうち、図1は離型紙の製造装置および離型紙の製造方法を示す斜視図であり、図2は離型紙の製造に用いられる原反の一例を示す断面図であり、図3および図4は離型紙の製造方法を説明するための図であり、図5は離型紙を示す断面図であり、図6は図5に示す離型紙を型紙として用いて作製されたシート状部材の作用を説明するための図である。
【0024】
まず、主に図5を参照しながら、本実施の形態において製造され得る離型紙について説明する。図5に示すように、離型紙10は、凹部12bと凸部12aとを有する凹凸模様12が一方の表面20aに形成された原反20を備えている。
【0025】
また、凹凸模様12の凸部12a上には、凹凸模様12よりも微小な凹凸(微小凹凸形状とも呼ぶ)16が形成されている。一方、凹凸模様12の凹部12bの底面は、平坦面として形成されている。
【0026】
このような離型紙10は、ビニールレザーや壁紙等のシート状部材30を作製するための型紙として用いられる。具体的には、離型紙10の凹凸面側を熱硬化性樹脂等からなる塗料でコーティングし、さらに基布38をラミネートする。その後、塗料を硬化させて塗料からなる塗料層37を形成し、次に、塗料層37から離型紙10を剥離させることにより、基布38と塗料層37とを有したシート状部材30を得ることができる。得られたシート状部材30の塗料層37には、離型紙10の凹凸模様12および微小凹凸形状16が転写されており、転写された凹凸模様32により、シート状部材30の意匠性を向上させている。なお、離型紙10は繰り返し用いられ、複数枚のシート状部材30を作製することができる。
【0027】
本実施の形態において、離型紙10は、合成皮革として用いられるシート状部材30を作製するための型紙として機能するようになっている。この場合、シート状部材30の塗料層37は、例えば、ポリウレタン樹脂に着色剤を配合してなる塗料によって形成され得る。また、本実施の形態において、離型紙10は、紙等からなる基材24と、基材24上に積層され合成樹脂からなる合成樹脂層22と、を有している。図5に示すように、凹凸模様12および微小凹凸形状16は、離型紙10の合成樹脂層22側の表面から形成されている。
【0028】
次に、このような構成からなる離型紙10の作用について説明する。
【0029】
上述したように、このような離型紙10においては、凹凸模様12の凸部12a上に微小凹凸形状16が形成されている。したがって、この離型紙10を型紙として用いた場合、図6に示すように、離型紙10の凹凸模様12の凸部12aが転写されてなるシート状部材30の模様32の凹部32b内に、離型紙10の微小凹凸形状16が転写されてなる微小な凹凸36が形成されるようになる。このため、図6に示すように、シート状部材30の凹部32b内に入射する光L66は乱反射して散乱するようになり、凹部32bからの反射光L67は非常に少ない光量でのみ視認されるようになる。
【0030】
一方、上述したように、凹凸模様12の凹部12b内は、平坦面として形成されている。したがって、この離型紙10を型紙として用いた場合、図6に示すように、離型紙10の凹凸模様12の凹部12bが転写されてなるシート状部材30の模様32の凸部32aの上面は、平坦面として形成されるようになる。このため、図6に示すように、シート状部材30の凸部32a上に入射する光L61は正反射され、凸部32aからの反射光L62は明瞭に視認されるようになる。
【0031】
これらの結果、転写されたシート状部材30の模様32は、凸部32aと凹部32bとの間で極めて高いコントラストを有するようになり、また、凸部上32aに光沢を有するようになる。すなわち、本実施の形態による離型紙10によれば、優れた光沢とコントラストとを有する模様を転写することができる。
【0032】
次に、主に図1乃至図4を参照して、上述した離型紙を作製し得る、本発明による離型紙の製造方法および離型紙の製造装置の一実施の形態について説明する。
【0033】
図1乃至図4に示すように、製造装置40は、原反20の一方の表面20aを擦りつけて当該表面を粗化するラビング装置41と、ラビング装置41の下流側に配置され、原反20に凹凸模様12を形成するエンボス装置51と、を備えている。また、製造装置40は、エンボス加工を施されていない帯状に延びる原反20を連続的に供給する原反供給装置(図示せず)と、原反20に凹凸模様12を形成してなる離型紙10を巻き取って回収する離型紙回収装置(図示せず)と、をさらに備えている。
【0034】
ラビング装置41は、前記原反の前記合成樹脂層に擦りつけられるラビング部材42と、ラビング部材42に対向して配置された第1バックアップ体46と、を有している。本実施の形態において、ラビング部材42は、ロール状のブラシとして形成されている。より具体的には、ラビング部材42は、回転駆動されるロール本体42aと、ロール本体42aの外周面に植設されたパイル(毛)42bと、を含むラビングロール42として構成されている。一方、本実施の形態において、第1バックアップ体46は、ラビングロール42に対向して配置され、原反20の移動速度に同期して回転可能な第1バックアップロール47として構成されている。第1バックアップロール47は、ラビングロール42との間で原反20を支持することができる。
【0035】
ラビング装置41は、ラビングロール42のロール本体42aに連結され、ロール本体42aを回転駆動する駆動機構(図示せず)をさらに有している。ラビングロール42は、駆動機構によって回転駆動されながら、第1バックアップロール47との間で支持する原反20の一方の表面20aに擦りつけられる。この結果、原反20の表面20aは、ラビング装置41によってラビング処理されることによって、粗化される。粗化された原反20の一方の表面20aには上述した微小凹凸形状16が形成される。
【0036】
ところで、原反20の一方の表面20aにおける光沢度が4以上8以下となるよう、ラビング装置41によって原反20を粗化することが有効である。本件発明者が種々の実験を行ったところ、粗化された原反20の表面20aがこの範囲内の光沢度を有する場合、最終的に得られるシート状部材30が上述した作用効果を効果的に奏することができる、との知見が得られた。なお、本件における「光沢度」とは、JISS6007に準拠して測定される光沢度のことである。
【0037】
また、本件発明者が調査したところ、原反20の一方の表面20aにおいて4以上8以下の光沢度を得るためには、ラビング処理によって粗化された原反20の表面20aの平均長さSmが30μm以上80μm以下となり、ラビング処理によって粗化された原反20の表面20aの十点平均粗さRzが5μm以上20μm以下となるように、ブラスト加工することが有効である、との知見が得られた。そして、本実施の形態においては、原反20の表面20aでの平均長さSmおよび十点平均粗さRzを、それぞれ所望の範囲内の値とすることができるよう、ラビングロール42の構成、例えばパイルの種類、長さ、密度等が適宜設定されている。なお、ここでいう「平均長さSm」および「十点平均粗さRz」とは、JISB0401に準拠して測定される値のことである。
【0038】
次に、エンボス装置51について説明する。図1によく示されているように、エンボス装置51は、原反20に形成されるべき凹凸模様12に対応した凹凸部54を有するエンボス型52と、エンボス型52に対向して配置され、エンボス型52との間で原反20を圧するようになる第2バックアップ体56と、を有している。本実施の形態において、エンボス型52は、ロール状のエンボスロールとして構成されている。エンボスロール52は回転駆動されるロール本体53を有し、ロール本体53の外周面には凹凸部54が形成されている。本実施の形態においては、合成皮革用の離型紙10を作製することができるよう、凹凸部54は、原反20の表面20aに皮模様を付与し得るように形成されている。
【0039】
また、本実施の形態において、第2バックアップ体56は、エンボスロール52に対向して配置され、原反20の移動速度に同期して回転可能な第2バックアップロール57として構成されている。第2バックアップロール57は、エンボスロール52との間で原反20を挟圧する。
【0040】
エンボス装置51は、エンボスロール52のロール本体53に連結され、ロール本体53を回転駆動する駆動機構(図示せず)をさらに有している。この駆動機構によって、エンボスロール52は、原反20の搬送速度に同期するようにして回転し、凹凸部54の凹凸模様を原反20に転写していく。
【0041】
図1に示すように、エンボスロール52および第2バックアップロール57は、ラビングロール42および第1バックアップロール47の下流側に配置されている。したがって、原反供給装置から供給される原反20は、まず、ラビングロール42と第1バックアップロール47との間を通過し、その後、エンボスロール52と第2バックアップロール57との間を通過するようになる。また、原反20の搬送経路に沿ったラビングロール42とエンボスロール52との間に、原反20の移動を案内する案内ロール59が設けられている。
【0042】
本実施の形態において、原反供給装置から供給される原反20は、上述したように、紙からなる基材24と、基材24上に積層された合成樹脂層22と、からなっている(図2参照)。このような原反20は、例えば、所望の合成樹脂を溶剤と配合して基材24上にコーティングすることにより、製造され得る。この場合、原反20の合成樹脂層22は基材24上に平たく延び広がるとともに、優れた光沢を有するようになる。このような製造方法によって製造された原反20において、合成樹脂層22は、通常、少なくとも10以上の光沢度を有するようになる。
【0043】
合成樹脂層22は、原反20の一方の側の表面20aをなすようになる。そして、合成樹脂層22に含まれる樹脂は、例えばポリプロピレン等、製造されるべき離型紙10に対する要求に応じて種々選択される。また、基材24は、合成樹脂層22の変形を拘束することによって、エンボス加工中に合成樹脂層22の塑性変形、すなわち凹凸模様の転写を促進すること、および、エンボス加工によって合成樹脂層22に形成された凹凸12,16がその後の取扱中に損なわれないようにすること等を目的として設けられている。図1に示すように、ラビング装置41のラビングロール42およびエンボス装置51のエンボスロール52は、原反20の合成樹脂層22に当接するように配置されている。
【0044】
次に、このような構成からなる製造装置40を用い、離型紙10を製造する方法について説明する。
【0045】
まず、ラビングロール42と第1バックアップロール47との間において、原反20にラビング処理を適切に施すことができるとともに、原反20を適切に支持することができるよう、ラビングロール42と第1バックアップロール47との相対位置を調節しておく。また、エンボスロール52と第2バックアップロール57との間において、原反20を適切にエンボス加工することができるとともに、原反20を適切に支持することができるよう、エンボスロール52と第2バックアップロール57との相対位置を調節しておく。さらに、ラビングロール42によって原反20にラビング処理を適切に施すことができるとともに、エンボスロール52によって原反20を適切にエンボス加工することができるよう、ラビングロール42およびエンボスロール52に対する案内ロール59の位置を調節しておく。その後、原反供給装置から原反20を供給する。
【0046】
原反供給装置から供給される原反20は、まず、ラビング装置41のラビングロール42および第1バックアップロール47の間に送り込まれ、ラビングロール42と第1バックアップロール47との間で支持されるようになる。このとき、図3に示すように、原反20の合成樹脂層22がラビングロール42に対面し、原反20の基材24が第1バックアップロール47に対面するようになる。ラビングロール42は、図示しない駆動機構により、原反20への接触領域が当該原反20の移動方向と逆方向に進むよう、回転駆動される。これにより、ラビングロール42のパイル42bが、第1バックアップロール47上に支持された原反20の合成樹脂層22に擦りつけられ、原反20の一方の表面20aがラビング処理される。
【0047】
なお、上述したように、ラビング処理によって、原反20の表面20aでのJISS6007に基づく光沢度が4以上8以下となるように、原反20が粗化されることが好ましい。また、ラビング処理によって粗化される原反20の表面20aの平均長さSmおよび十点平均粗さRzを管理することによって、原反20がおおよそこのような範囲の光沢度を有するようにすることができる。具体的には、原反20の表面20aでのJISB0601に基づく平均長さSmが30μm以上80μm以下となり、原反20の表面20aでのJISB0601に基づく十点平均粗さRzが5μm以上20μm以下となるように、原反20をラビング処理することが、上述した範囲内の光沢度を得るうえで有効である。
【0048】
また、本実施の形態においては、図1に示すように、原反20の一方の側の全表面20aがラビング処理により粗化され、当該原反20の全表面20aに微小凹凸形状16が形成される(マット化される)。その後、原反20は、案内ロール59に案内されて、エンボス装置51へと搬送される。
【0049】
図4に示すように、原反20は、エンボス装置51のエンボスロール52と第2バックアップロール57との間に送り込まれ、エンボスロール52と第2バックアップロール57との間で挟圧される。なお、図4に示すように、原反20の合成樹脂層22がエンボス装置51のエンボスロール52に対面し、原反20の基材24が第2バックアップロール57に対面するようになる。これにより、エンボスロール52の凹凸部54の形状に対応した凹凸模様(皮模様)12が原反20の合成樹脂層22の表面に形成される。
【0050】
ところで、凹凸模様12を形成する際、凹凸模様12の凹部12bが形成される領域に、大きな加工圧力が付加される。すなわち、エンボスロール52の凹凸部54の凸部54aは大きな圧力で原反20を押圧する。そして、一般的に、エンボス型(エンボス版)52の凹凸部54は平滑に形成されており、凹凸部54(例えば凸部54a)でのJISS6007に準拠した光沢度は、通常、少なくとも8より大きく、多くの場合は15以上となっている。したがって、図4に示すように、凹凸模様12の凹部12bが形成されるようになる原反20の表面上にそれまで形成されていた微小な凹凸形状16は、押圧されてなだらかになる。すなわち、凹凸模様12の凹部12bが形成されるようになる原反20の表面での光沢度は上昇する。本実施の形態においては、さらに、原反20上の凹凸模様12の凹部12bの底面が平坦化されるようになる。
【0051】
とりわけ、上述したように、ラビング処理によって粗化された原反20の表面20aの平均長さSmが30μm以上であるとともに表面20aの十点平均粗さRzが20μm以下であり、ラビング処理によって粗化された原反20の表面20aの光沢度が4以上となっている場合、原反20上の凹凸模様12の凹部12b内を十分になだらかにすることができ、これにより、この原反20(離型紙10)を用いて製造されるシート状部材30の凸部32aの上面が十分な光沢を有するようにすることができる。
【0052】
一方、凹凸模様12を形成する際、凹凸模様12の凸部12aが形成される領域には、比較的小さな加工圧力しか付加されない。したがって、凹凸模様12の凸部12a上に位置するようになる微小な凹凸16を、そのままの状態で(図4参照)、あるいは若干なだらかにした状態で残留させることができる。とりわけ、エンボスロール52の凹凸部54の凹部54bの深さ(ギャップ)を、深くしておく、具体的には、図4に示すように、形成されるべき凹凸模様12の凸部12aの高さの値よりも深くしておくことにより、凹凸模様12の凸部12a上に位置するようになる微小な凹凸16を潰してしまうことなくそのままの状態で残留させることができる。
【0053】
とりわけ、上述したように、ラビング処理によって粗化された原反20の表面20aの平均長さSmが80μm以下であるとともに表面20aの十点平均粗さRzが5μm以上であり、ラビング処理によって粗化された原反20の表面20aの光沢度が8以下となっている場合、原反20上の凹凸模様12の凸部12a上に有効な微小凹凸形状16を残すことができ、これにより、この原反20(離型紙10)を用いて製造されるシート状部材30の凹部32bへ入射する光を十分に散乱させることができる。
【0054】
このようにして、凹部12bと凸部12aとを有する粗大な凹凸模様12が表面に形成された原反20を備えた離型紙10であって、凸部12a上に微小な凹凸形状16が形成され、凹部12b内が平滑化された離型紙10を製造することができる。製造された離型紙10は、図示しない回収装置に巻き取られていく。
【0055】
以上のように本実施の形態によれば、まず、ラビング装置41のラビングロール42を原反20に擦りつけることによって、原反20の一方の表面20aをラビング処理し、当該表面20aに微小な凹凸16を形成する。これによって、原反20の凹凸模様12を形成されるべき表面20aの光沢度が、たとえ当初は大きな値を有していたとしても、所定の値以下まで、例えばエンボス型(エンボス版)52の凹凸部(凹凸面、転写面)54の光沢度より小さい値まで、低下するようにすることができる。そしてその後に、エンボス装置51のエンボスロール52により、原反20の一方の表面20a上に微小な凹凸16よりも粗大な凹凸模様12を形成する。そして、凹凸模様12を形成する際、凹凸模様12の凹部12bが形成される領域に大きな加工圧力が付加され、その一方で、凹凸模様12の凸部12aが形成される領域には比較的小さな加工圧力しか付加されない。したがって、凹凸模様12の凸部12a上に位置するようになる微小な凹凸16をそのまま又は若干なだらかにして残留させることができる。同時に、凹凸模様12の凹部12b上に位置するようになる微小な凹凸16をなだらかにすることもできる。この結果、この離型紙10を型紙として用いてシート状部材30を作製した場合、シート状部材30に転写された模様32の凸部32aの表面はなだらかとなり優れた光沢を有するようになる。その一方で、シート状部材30に転写された模様32の凹部32bの底面には微小な凹凸36が形成される。これにより、シート状部材30に転写された模様32は、模様32の凸部32aと凹部32bとの間で高いコントラストを有し、また、凸部32a上に優れた光沢を有するようになる。すなわち、本実施の形態によれば、優れた光沢とコントラストとを有する模様32をシート状部材30に転写することができる。また、本実施の形態によれば、離型紙10の凹凸模様12の凹部12bと凸部12aとのギャップではなく、凹凸模様12の凸部12a上に残存する微小な凹凸16によって、シート状部材30に転写される模様32のコントラストを高めるようになっている。したがって、離型紙10の製造中に、原反20に高い加工圧力を付加する必要がない。これにより、離型紙10を高い生産効率で製造することができるとともに、原反20、とりわけ基材24へのダメージを低減することができる。また、製造装置40の製造コストおよび維持コストを低減することができる。さらに、本実施の形態によれば、原反20が当初有している光沢度の程度によらず、優れた光沢とコントラストとを有する模様32をシート状部材30に転写することができる離型紙を、安定して製造することができる。
【0056】
また、本実施の形態によれば、ラビングロール42を用いたラビング処理により、原反20の表面20aを粗化している。したがって、容易かつ迅速に原反20の表面20aに微小な凹凸16を形成することができる。
【0057】
さらに、本実施の形態によれば、凹凸模様12の凹部12bの底面を平坦化するようになっている。このような離型紙によれば、極めて優れた光沢を有する模様をシート状部材30に転写することができるようになる。
【0058】
さらに、凹凸模様12を形成する工程において、原反20の凹凸模様12が形成されるようになる全領域に、微小な凹凸16が形成されるようになっている。このような本実施の形態によれば、原反20上における微小な凹凸16の配置位置と、原反20上における凹凸模様12と、を厳密に位置合わせする必要がない。また、原反20上に形成された不用な微小な凹凸16は、凹凸模様12の形成中になだらかにされるようになっている。したがって、所望の位置にのみに微小な凹凸16が存在する離型紙10を高い生産効率で製造することができる。
【0059】
なお、上述した実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0060】
例えば、上述した実施の形態において、合成皮革用の離型紙10を製造する例を示したが、これに限られず、その他の用途に用いられる離型紙(一例として、壁紙用の離型紙)を製造するようにしてもよい。
【0061】
また、上述した実施の形態において、原反20の合成樹脂層22側の全表面20aをラビング処理にて粗化する例を示したが、これに限られず、例えば、原反20上の凹凸模様12が形成される領域のみを、あるいは、原反20上の凹凸模様12の凸部12aが形成される領域のみを、ラビング処理にて粗化するようにしてもよい。
【0062】
さらに、上述した実施の形態において、ラビング装置41が一本のラビングロール42を有する例を示したが、これに限られない。例えば、図7に示すように、ラビング装置141が複数のラビングロール42を有し、複数のラビングロール42が互いに異なる方向に延びる回転軸線L1,L2,L3を中心として回転駆動されるようにしてもよい。図7に示すラビング装置141によれば、原反20の表面20aをより均一に粗化することができる。これにより、より優れた光沢とコントラストとを有する模様32をシート状部材30に転写することができる離型紙10を安定して製造することができる。なお、図7に示す製造装置40は、ラビング装置141の構成が上述した点において異なるのみであり、他は上述した実施の形態と略同一となっている。
【0063】
さらに、上述した実施の形態において、ラビング装置41のラビングロール42が回転可能である例を示したが、これに限られず、ラビングロール42がさらにその回転方向に沿って移動可能、好ましくは繰り返し往復移動可能(振動可能)であるようにしてもよい。このようなラビングロールを用いた場合においても、原反20の表面20aをより均一に粗化することができる。
【0064】
さらに、上述した実施の形態において、ラビング装置41がラビングロール42からなる例を示したが、これに限られず、種々の既知なラビング装置を採用することができる。例えば、ラビング装置41として、ベルト式または平板式のラビング布を振動させながら被処理体に擦りつけるラビング装置を用いるようにしてもよい。
【0065】
さらに、上述した実施の形態において、第1バックアップ体46が第1バックアップロール47として構成された例を示したが、これに限られず、ラビング部材42との間で原反20を安定して支持することができる公知の装置類、例えば受け台を第1バックアップ体46として採用することができる。
【0066】
さらに、上述した実施の形態において、エンボス装置51がエンボスロール52を有する例を示したが、これに限られず、種々の既知なエンボス装置を採用することができる。例えば、ベルト式や平板式のエンボス型を被加工体に押圧するプレス装置を、エンボス装置として採用することができる。
【0067】
さらに、上述した実施の形態において、第2バックアップ体56の第2バックアップロール57の外周面が凹凸の無い平坦な曲面状に形成される例を示したが、これに限られず、エンボスロール52の凹凸部54に対応した凹凸を有するようにしてもよい。
【0068】
さらに、上述した実施の形態において、第2バックアップ体56が第2バックアップロール57として構成された例を示したが、これに限られず、エンボス型52との間で原反20を安定して支持することができる公知の装置類、例えば受け台を第2バックアップ体56として採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、本発明による離型紙の製造装置および製造方法の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図2は、離型紙の製造に用いられる原反の一例を示す断面図である。
【図3】図3は、図1に示された離型紙の製造装置および製造方法を説明するための図である。
【図4】図4は、図1に示された離型紙の製造装置および製造方法を説明するための図である。
【図5】図5は、図1に示された離型紙の製造装置および製造方法により製造される離型紙の一例を示す断面図である。
【図6】図6は、図5に示された離型紙を型紙として用いて作製されたシート状部材の作用を説明するための図である。
【図7】図7は、図1に示された離型紙の製造装置および製造方法の一変形例を示す上面図である。
【符号の説明】
【0070】
10 離型紙
12 凹凸模様
12a 凹凸模様の凸部
12b 凹凸模様の凹部
16 微小な凹凸(微小凹凸形状)
20 原反
22 基材
24 合成樹脂層
40 製造装置
41 ラビング装置
42 ラビング部材(ラビングロール)
46 バックアップ体
47 バックアップロール
51 エンボス装置
52 エンボス型(エンボスロール、エンボス版)
54 凹凸部
54a 凹凸部の凸部
54b 凹凸部の凹部
56 バックアップ体
57 バックアップロール
141 ラビング装置
L1,L2,L3 回転軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原反に凹凸模様を形成して離型紙を製造する方法であって、
ラビング処理により、前記原反の表面を粗化する工程と、
エンボス加工により、粗化された前記原反の前記表面に前記凹凸模様を形成する工程と、を備える
ことを特徴とする離型紙の製造方法。
【請求項2】
前記原反の前記表面にラビングロールを擦りつけることにより、ラビング処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の離型紙の製造方法。
【請求項3】
互いに異なる方向に延びる回転軸線を有した複数のラビングロールを、それぞれ前記原反の前記表面に擦りつけることにより、原反をラビング処理する
ことを特徴とする請求項2に記載の離型紙の製造方法。
【請求項4】
前記微小な凹凸を形成する工程において、前記原反の前記表面での光沢度の値が、エンボス加工において用いられるエンボス型の表面での光沢度の値よりも小さくなるように、ブラスト加工を行う
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の離型紙の製造方法。
【請求項5】
前記粗化する工程において、前記原反の前記表面での光沢度が4以上8以下となるように、ラビング処理を行う
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の離型紙の製造方法。
【請求項6】
前記粗化する工程において、前記原反の前記表面での平均長さSmが30μm以上80μm以下となり、前記原反の前記表面での十点平均粗さRzが5μm以上20μm以下となるように、ラビング処理を行う
ことを特徴とする請求項5に記載の離型紙の製造方法。
【請求項7】
前記粗化する工程において、前記原反の前記表面のうちの前記凹凸模様が形成されるようになる領域を粗化する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の離型紙の製造方法。
【請求項8】
前記原反は、基材と、前記基材に積層された合成樹脂層と、を有し、
前記合成樹脂層が、前記原反の粗化される表面をなす
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の離型紙の製造方法。
【請求項9】
前記凹凸模様を形成する工程において、前記凹凸模様の凸部に位置するようになる前記原反の表面を粗化された状態に保ちながら、前記凹凸模様の凹部に位置するようになる前記原反の粗化された表面をならす
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の離型紙の製造方法。
【請求項10】
原反に凹凸模様を形成して離型紙を製造する製造装置であって、
前記原反の表面を擦りつけて当該表面を粗化するラビング装置と、
前記ラビング装置の下流側に配置され、前記原反に前記凹凸模様を形成するエンボス装置と、を備える
ことを特徴とする離型紙の製造装置。
【請求項11】
前記ラビング装置は複数のラビングロールを有し、前記複数のラビングロールは互いに異なる方向に延びる回転軸線を中心として回転可能である
ことを特徴とする請求項10に記載の離型紙の製造装置。
【請求項12】
前記エンボス装置は、前記凹凸模様に対応した凹凸部であって前記原反に当接するようになる凹凸部を含むエンボス型を有し、
前記ブラスト装置は、前記原反の前記表面での光沢度の値が、前記エンボス型の前記凹凸部での光沢度の値よりも小さくなるように、前記原反の前記表面に微小な凹凸を形成する
ことを特徴とする請求項10または11に記載の離型紙の製造装置。
【請求項13】
前記ラビング装置は、前記原反の前記表面での光沢度が4以上8以下となるように、前記原反の前記表面を粗化する
ことを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一項に記載の離型紙の製造装置。
【請求項14】
前記ラビング装置は、前記原反の前記表面での平均長さSmが30μm以上80μm以下となり、前記原反の前記表面での十点平均粗さRzが5μm以上20μm以下となるように、前記原反の前記表面を粗化する
ことを特徴とする請求項13に記載の離型紙の製造装置。
【請求項15】
前記ラビング装置は、前記原反の前記表面のうちの前記エンボス装置によって前記凹凸模様が形成されるようになる領域を粗化する
ことを特徴とする請求項10乃至14のいずれか一項に記載の離型紙の製造装置。
【請求項16】
前記原反は、表面をなす合成樹脂層と、前記合成樹脂層に積層された基材と、を有し、
前記ラビング装置は、前記原反の前記合成樹脂層に擦りつけられるラビング部材を有し、
前記エンボス装置は、前記凹凸模様に対応した凹凸部であって前記合成樹脂層に当接するようになる凹凸部を含むエンボス型を有する
ことを特徴とする請求項10乃至15のいずれか一項に記載の離型紙の製造装置。
【請求項17】
前記エンボス装置は、前記凹凸模様に対応した凹凸部を有するエンボス型と、前記エンボス型に対向して配置され、前記エンボス型との間で前記原反を圧するようになるバックアップ体と、を有し、
前記エンボス型の前記凹凸部の凸部は、前記バックアップ体との間で原反を圧して前記原反の前記表面をなだらかにする
ことを特徴とする請求項10乃至16のいずれか一項に記載の離型紙の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−24303(P2009−24303A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191115(P2007−191115)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】