説明

難燃共重合体組成物及び樹脂シート

【課題】熱伝導率、難燃性に優れ、かつ表面平滑性、シート加工性、柔軟性に優れた難燃共重合体組成物及びそれを用いた放熱性に優れる樹脂シート並びに難燃放熱性成形体を提供する。
【解決手段】特定の構造を有する水添共重合体(1)及び/又は変性水添共重合体(2)、核部とこの核部からなる4軸方向に伸びた針状結晶部を有する酸化亜鉛(3)、ハロゲン系難燃剤(4)、及びパラフィン系難燃剤(5)より、特定の配合量かなる難燃共重合体組成物及び該難燃共重合体組成物からなる樹脂シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等の部品からの発熱を放熱させるために、優れた熱伝導性と難燃性を備え、更にシート加工性、表面平滑性、柔軟性の優れた難燃共重合体組成物及びそれを用いた放熱性に優れた樹脂シート、並びに難燃放熱用成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からデジタル家電の普及に伴い、電気部品・電子機器の高速化や高機能化の要求が高まってきている。しかしながら、これら電子部品や電子機器において、電子制御を行うLSIやCPU等の電子素子は、コンピュータの集積度の増大及び動作の高速化により消費電力が増大し、それ故発熱量の増大により電子素子の不具合が生じる等問題を抱えており、放熱対策は不可欠なものとなっている。一般の電子機器における放熱は、ヒートシンクなどが取り付けられ、さらにヒートシンクを冷却ファン等により強制的に空冷することも行われている。ノート型パーソナルコンピュータを始めとする小型機器や、高密度実装される電子部品においては、冷却ファンなど設置する空間が小さいなど制約があり、シリコングリースを塗布することにより放熱対策が行われていた。また電子部品に対する高性能化の要求に対応するため放熱シートを使用するケースが増加してきている。放熱シートはヒートシンクなどの冷却部品を発熱体に取り付ける際、両者間の接触を密にして熱を有効に冷却部品へ伝達させる目的で使用されている。
【0003】
そこで近年、上記各用途において、熱を拡散させるとした放熱性に優れた樹脂シートが求められている。
これまで放熱シートはシリコンゴムやシリコンゲルシートをベースとした材料に、比較的熱伝導性の高い充填材を充填させたものが使用されている。
しかしながら、シリコン系グリスは高粘度の液状であるため、発熱部品に塗布する場合、塗布量の制御が難しく、また場合によっては発熱部品以外への付着、汚染の懸念がある。また、シリコン樹脂は樹脂中に低分子シロキサンが含まれていることから、発熱体に取り付けて使用する場合、低分子シロキサンガスが発生し、該ガスが電極接点などへ付着して二酸化珪素が生成することが原因となって、接点不良を発生する可能性があることから、低分子シロキサンを含まない材料が望まれている。
【0004】
さらに、シリコンゴムシートはシリコン樹脂そのものが高価である他、加硫工程が必要であるため、シート製造の時に生じる余分なシートや、一度流通した使用済みのシートをリサイクルのため回収したとしても再度溶融成形加工して使用することは困難であることから、リサイクルが可能な放熱シートが望まれている。
一方、樹脂に機械的強度を向上する目的として金属酸化物を配合することが提案されている。
【0005】
特許文献1では、共役ジエンとビニル芳香族からなる共重合体に水素添加してなる水添共重合体に酸化亜鉛を充填した樹脂組成物が提案されている。これは材料の機械的強度の向上を目的としたものであり、補強性充填剤として通常の酸化亜鉛を使用した場合、放熱性の効果は不十分であり、難燃性を付与していない。
特許文献2では、スチレン系熱可塑性エラストマーとポリプロピレン系重合体の併用系に、パラフィン系オイルと熱伝導性充填剤及び難燃剤を充填した樹脂組成物が提案されている。
これは、加工性と耐熱性を向上させるためポリプロピレン系重合体を必須成分としているが、スチレン系エラストマーとプロピレン系重合体は、パラフィン系オイルの添加有無に関わらず、非相溶であるため、材料として靭性が不足し、またシート又は成形体に加工した場合、脆いという欠点が生じる場合があり、放熱性と靭性、柔軟性を両立することが困難である。
【0006】
また放熱シートは、電気部品や電子機器において、安全性の観点から難燃性が求められている。例えば、ノンハロゲン系難燃剤として金属水酸化物系難燃剤を配合することが知られており、放熱シートの難燃性を発揮させるために、この金属水酸化物系難燃剤を多量に配合させる手法が取られているが、熱伝導性、表面平滑性、柔軟性が低下し、シートを加工するときに、シートが破断する等、シート加工性が劣る。
【特許文献1】特開2003−277560号公報
【特許文献2】特開2003−049046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の如き熱伝導性材料の抱える問題を解決するためになされたものであって、熱伝導性と難燃性、及びシート加工性、表面平滑性、柔軟性に優れた難燃共重合体組成物及びそれを用いた放熱性に優れた樹脂シート、並びに難燃放熱用成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前期課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の水添共重合体及び/又は編成水添共重合体、核部と該核部から4軸方向に伸びた針状結晶部を有する酸化亜鉛、ハロゲン系難燃剤及びパラフィン系オイルを配合した難燃共重合体組成物及び該難燃共重合体組成物からなる樹脂シートが、熱伝導性、難燃性に優れ、かつシート加工性、表面平滑性、柔軟性を保持しながら、放熱用シート並びに放熱用成形体に適することを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
即ち、本発明は、
1.共役ジエンとビニル芳香族からなる共重合体に水素を添加してなる下記(a)から(d)を満たす水添共重合体(1)及び/又は共重合体ジエンとビニル芳香族からなる共重合体に水素を添加してなり、かつ官能基を少なくとも1個結合する下記(a)から(d)を満たす変性水添共重合体(2)と、核部と該核部から異なる4軸方向に伸びた針状結晶部を有する酸化亜鉛(3)、及びハロゲン系難燃剤(4)及びパラフィン系オイル(5)とからなり、
下記(A)〜(E)を満たすことを特徴とする難燃共重合体組成物。
(a)ビニル芳香族単位の含有量が50質量%を越え、90質量%以下。
(b)ビニル芳香族からなる重合体ブロックの量が40質量%以下。
(c)重量平均分子量が5万〜100万。
(d)共役ジエンに基づく二重結合の10%以上が水添されている。
(1)+(2)+(3)+(4)+(5)=100質量%に対し、
(A) (1)+(2)+(5)=9〜85質量%
(B) (3)=10〜90質量%
(C) (4)=1〜40質量%
(D) 0<(5)/[(1)+(2)]≦2(質量比)
(E) 0.05≦(4)/[(1)+(2)+(5)]≦2
【0010】
2.成分(2)が、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、及びアルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個勇する原子団が少なくとも1個結合していることを特徴とする1.に記載の難燃共重合体組成物、
3.成分(1)及び/又は成分(2)中のビニル芳香族からなる重合体ブロックの量が10質量%未満であることを特徴とする1.又は2.に記載の難燃共重合体組成物、
4.成分(1)及び/又は成分(2)中のビニル芳香族からなる重合体ブロックの量が10〜40質量%であることを特徴とする1.又は2.に記載の難燃共重合体組成物、
5.成分(1)及び/又は成分(2)が下記一般式(イ)〜(ホ)から選ばれる少なくとも一つの構造を有する共重合体の水素添加物であることを特徴とする1.〜4.のいずれか1つに記載の難燃共重合体組成物。
(イ)B
(ロ)B-A
(ハ)B-A-B
(ニ)(B-A)m-X
(ホ)(B-A)n-X-Ap
(ここで、Bは共役ジエンとビニル芳香族化合物とのランダム共重合体ブロックであり、Aはビニル芳香族化合物重合体ブロックである。mは2以上の整数であり、n及びpはそれぞれ1以上の整数である。Xはカップリング剤残基を示す。)
6.成分(2)が、下記式から選ばれる少なくとも1個であることを特徴とする1.〜5.のいずれか1つに記載の難燃共重合体組成物、
【0011】
【化1】

【0012】
(上式で、R1〜R4は、水素又は炭素数1〜24の炭化水素基、あるいは水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜24の炭化水素基。R5は炭素数1〜48の炭化水素鎖、あるいは水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜48の炭化水素鎖。なおR1〜R4の炭化水素基、及びR5の炭化水素鎖中には、水酸基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基以外の結合様式で、酸素、窒素、シリコン等の元素が結合しもよい。R6は水素又は炭素数1〜8のアルキル基。)
【0013】
7.成分(2)が、有機リチウム化合物を重合触媒として得た共役ジエンとビニル芳香族化合物からなる共重合体のリビング末端に、官能基を含有する変性剤を付加反応させてなる変性共重合体に水素添加してなることを特徴とする1.〜6.のいずれか1つに記載の難燃共重合体組成物、
8.成分(4)が臭素系難燃剤であることを特徴とする1.〜7.のいずれか1つに記載の難燃共重合体組成物、
9.前記臭素系難燃剤の融点が50〜150℃であることを特徴とする8.に記載の難燃重合体組成物、
【0014】
10.成分(1)及び/または成分(2)、成分(3)、成分(4)、成分(5)にさらにリン系難燃剤(6)及び/又は金属水酸化物(7)を含有し、下記(A)〜(F)を満たすことを特徴とする1.〜9.のいずれか1つに記載の難燃共重合体組成物、
(1)〜(7)の合計100質量%に対し、
(A) (1)+(2)+(5)=9〜85質量%
(B) (3)=10〜90質量%
(C) 0< (5)/[(1)+(2)] ≦2(質量比)
(D) (4)+(6)+(7)=1〜40質量%
(E) 0< [(6)+(7)]/(4) ≦15(質量比)
(F) 0.05≦[(4)+(6)+(7)]/[(1)+(2)+(5)]≦2
11.さらに10W/m・K以上の熱伝導性充填剤を添加してなることを特徴とする1.〜10のいずれか1つに記載の難燃共重合体組成物、
12.前記10W/m・K以上の熱伝導性充填剤が、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする11.に記載の難燃共重合体組成物、
13.1.〜12.のいずれか1つに記載の難燃共重合体組成物からなる樹脂シート、
14.1.〜12.のいずれか1つに記載の難燃共重合体組成物の難燃放熱用成形体への使用、
である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、熱伝導性、難燃性に優れ、更にシート加工性、表面平滑性、柔軟性に優れた難燃共重合体組成物及びそれを用いた放熱性に優れる樹脂シート並びに難燃放熱用成形体の提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、特定の構造と配合量を有する水添共重合体(1)及び/又は変性水添共重合体(2)、核部とこの核部から異なる4軸方向に伸びた針状結晶部を有する酸化亜鉛(3)、ハロゲン難燃剤(4)、及びパラフィン系オイル(5)からなる難燃共重合体組成物及び該難燃共重合体からなる樹脂シート並びに難燃放熱用成形体である。
本発明の水添共重合体又は変性水添共重合体(以下、「水添共重合体等」という場合もある。)は、共役ジエンとビニル芳香族からなる共重合体に、水素を添加してなる水添共重合体等である。
【0017】
本発明において、水添共重合体等におけるビニル芳香族単位の含有量は50質量%を越え90質量%以下、好ましくは50質量%を越え88質量%以下、さらに好ましくは50質量%を越え86質量%以下である。ビニル芳香族単位の含有量が本発明で規定する範囲のものを使用することは、柔軟性に富み、耐摩耗性、耐傷付き性、強度などに優れた共重合体組成物を得るために必要である。なお、該水添共重合体等において、水素添加されたビニル芳香族化合物が含まれている場合があるが、この水素添加されたビニル芳香族単位も同じく水添共重合体等中のビニル芳香族含有量に含まれるものとする。本発明においては、水添共重合体等におけるビニル芳香族化合物の含有量は、水素添加前の共重合体中のビニル芳香族化合物含有量で把握してもよい。
【0018】
本発明に用いる水添共重合体等において、ビニル芳香族からなる重合体ブロックの含有量は40質量%以下、好ましくは3〜40質量%、さらに好ましくは5〜35質量%である。ビニル芳香族からなる重合体ブロックが柔軟なため、組成物の柔軟性が向上する。本発明において、柔軟性の良好な組成物を得たい場合、ビニル芳香族からなる重合体ブロックの含有量は10質量%未満、好ましくは8質量%未満、さらに好ましくは5質量%未満であることが奨励される。また、本発明の難燃共重合体組成物を得るうえで、水添共重合体等として耐ブロッキング性に優れたものが好ましい場合、ビニル芳香族からなる重合体ブロックは10〜40質量%、好ましくは13〜37質量%、さらに好ましくは15〜35質量%であることが奨励される。
【0019】
ビニル芳香族からなる重合体ブロックの含有量の測定は、例えば四酸化オスミウムを触媒として水素添加前の共重合体をターシャルブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法)により得たビニル芳香族重合体ブロック成分の重量(但し平均重合度が約30以下のビニル芳香族重合体成分は除かれている)を用いて、次の式から求めることができる。
ビニル芳香族のブロック重量(質量%)
={(水素添加前の共重合体中のビニル芳香族からなる重合体ブロック重量/水素添加前の共重合体の重量)}×100
なお、本発明において水添共重合体等におけるビニル芳香族のブロック率(ブロック率とは、該共重合体中の全ビニル芳香族量に対するビニル芳香族重合体ブロックの含有量の割合をいう)は、50質量%未満が好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは18質量%以下であることがより柔軟性の良好な組成物を得る上で奨励される。
【0020】
本発明に用いる水添共重合体等の重量平均分子量は5〜100万であり、好ましくは10〜80万、より好ましくは13〜50万である。ビニル芳香族からなる重合体ブロックの含有量が10〜40質量%の水添共重合体等を使用する場合、その重量平均分子量は10万を越え、50万未満、好ましくは13万〜40万、さらに好ましくは15万から30万であることが奨励される。重量平均分子量が5万未満の場合は靭性に劣り、また100万を越える場合は成形加工性に劣るため好ましくない。さらに重量平均分子量の場合、低分子量成分の含有量が少ないため揮発成分が少ない。
【0021】
本発明に用いる水添共重合体等の分子量分布(Mw/Mn)(重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比)は、成形加工性の点で、1.01〜8.0が好ましく、より好ましくは1.1〜6.0、さらに好ましくは1.1〜5.0であることが奨励される。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布の形状は特に制限はなく、山(ピーク)が二ヶ所以上存在するポリモーダルの分子量分布を持つものでもよいが、山が一つであるモノモーダルの分子量分布を持つ水添共重合体又は変性水添共重合体が好ましい。
【0022】
本発明に用いる水添共重合体等は共役ジエンとビニル芳香族からなる共重合体の水素添加物であり、共重合体中の共役ジエンに基づく不飽和二重結合のトータル水素添加率は、10%以上、好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上である。水添率は10%以下の場合、熱劣化による組成物マトリックスの柔軟性、強度、伸びが低下する等耐熱性に劣る場合があり、好ましくない。
特に耐候性に優れた組成物を得る場合は、水素添加率が75%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上であることが奨励される。また、加硫物特性の良好な加硫組成物を得る場合には、水素添加率は98%以下、好ましくは95%以下、さらに好ましくは90%以下であることが奨励される。
【0023】
さらに、本発明に用いる水添共重合体等において、特に熱安定性に優れた組成物を得る場合は、ビニル結合の水素添加率が好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であることが奨励される。
ここで、ビニル結合の水素添加率とは、水素添加前の共重合体中に組み込まれている共役ジエン中のビニル結合の内、水素添加されたビニル結合の割合をいう。
なお、共重合体中のビニル芳香族に基づく芳香族二重結合の水添率については特に制限はないが、水添率は好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下にすることが好ましい。
【0024】
本発明に用いる水添共重合体等は、示差走査熱量測定法(DSC法)において、-50〜100℃の温度範囲において結晶化ピークが実質的に存在しない水素添加物が好ましい。ここで、-50〜100℃の温度範囲において結晶化ピークが実質的に存在しないとは、この温度範囲において結晶化に起因するピークが現れない、もしくは結晶化に起因するピークが認められる場合においても、その結晶化における結晶化ピーク熱量が3J/g未満、好ましくは2J/g未満、さらに好ましくは1J/g未満であり、特に好ましくは結晶化ピーク熱量が無いものである。
【0025】
本発明において、水添共重合体又は変性水添共重合体の構造は特に制限はなく、いかなる構造のものでも使用できるが、特に奨励されるものは、下記一般式(イ)〜(ホ)から選ばれる少なくとも一つの構造を有する共重合体の水素添加物である。本発明で使用する水添共重合体又は変性水添共重合体は、下記一般式(イ)〜(ホ)で表される構造を有する共重合体の水素添加物からなる任意の混合物でもよい。また、水添共重合体等にビニル芳香族からなる重合体が混合されてもよい。
(イ)B
(ロ)B-A
(ハ)B-A-B
(ニ)(B-A)m-X
(ホ)(B-A)n-X-Ap
(ここで、Bは共役ジエンとビニル芳香族とのランダム共重合体ブロックであり、Aはビニル芳香族重合体ブロックである。mは2以上の整数であり、n及びpはそれぞれ1以上の整数である。Xはカップリング剤残基を示す。)
【0026】
一般式において、ランダム共重合体ブロックB中のビニル芳香族は均一に分布していても、またはテーパー状に分布していてもよい。また該共重合体ブロックBには、ビニル芳香族が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。また、mは2以上、好ましくは2〜10の整数であり、n及びpはそれぞれ1以上、好ましくは1〜10の整数である。
【0027】
また、本発明において、水素添加前の共重合体鎖中におけるビニル結合含量の最大値と最小値との差が好ましくは10%未満、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下であることが奨励される。共重合体鎖中のビニル結合は、均一に分布していてもテーパー状に分布していてもよい。ここで、ビニル結合含量の最大値と最小値との差とは、重合条件、すなわちビニル量調整剤の種類、量及び重合温度で決定されるビニル量の最大値と最小値である。
【0028】
共役ジエン重合体鎖中のビニル結合含量の最大値と最小値との差は、例えば共役ジエンの重合時又は共役ジエンとビニル芳香族の共重合時の重合温度によって制御することができる。第3級アミン化合物またはエーテル化合物のようなビニル量調整剤の種類と量が一定の場合、重合中のポリマー鎖に組み込まれるビニル結合含量は、重合温度によって決まる。従って、等温で重合した重合体はビニル結合が均一に分散した重合体となる。これに対し、昇温で重合した重合体は、初期(低温で重合)が高ビニル結合含量、後半(高温で重合)が低ビニル結合含量といった具合にビニル結合含量に差のある重合体となる。かかる構造を有する共重合体に、水素を添加することにより特異構造の水添共重合体等が得られる。
【0029】
本発明において、ビニル芳香族単位の含有量は、紫外分光光度計、赤外分光光度計や核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて知ることができる。また、ビニル芳香族からなる重合体ブロックの量は、前述したKOLTHOFFの方法等で知ることができる。水素添加前の共重合体中の共役ジエンに基づくビニル結合含量は、赤外分光光度計(例えば、ハンプトン法)や核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて知ることができる。また、水添共重合体又は変性水添共重合体の水添率は、赤外分光光度計や核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて知ることができる。
【0030】
また、本発明において、水添共重合体又は変性水添共重合体の分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量である。水添共重合体又は変性水添共重合体の分子量分布は、同様にGPCによる測定から求めることができる。
【0031】
本発明において共役ジエンは1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンなどであるが、特に一般的なものとしては、1,3-ブタジエン、イソプレンが挙げられる。これらは一種のみならず二種以上を使用してもよい。
また、ビニル芳香族としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルエチレン、N、N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N、N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン等があげられ、これらは一種のみならず二種以上を使用してもよい。
【0032】
本発明において、水素添加前の共重合体において共役ジエン部分のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、後述する極性化合物等の使用により任意に変えることができ、特に制限はない。一般的に共役ジエンとして1,3-ブタジエンを使用した場合には、1,2-ビニル結合は5〜80%、好ましくは10〜60%、共役ジエンとしてイソプレンを使用した場合又は1,3-ブタジエンとイソプレンを併用した場合には、1,2-ビニル結合と3,4-ビニル結合の合計量は一般に3〜75%、好ましくは5〜60%であることが推奨される。なお、本発明においては、1,2-ビニル結合と3,4-ビニル結合の合計量(但し、共役ジエンとして1,3-ブタジエンを使用した場合には、1,2-ビニル結合量)を以後ビニル結合と呼ぶ。
【0033】
本発明において、水素添加前の共重合体は、例えば、炭化水素溶媒中で有機アルカリ金属化合物等の開始剤を用いてアニオンリビング重合により得られる。
炭化水素溶媒としては、例えばn-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンの如き脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタンの如き脂環式炭化水素類、また、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンの如き芳香族炭化水素類である。
【0034】
また、開始剤としては、一般的に共役ジエン及びビニル芳香族に対し、アニオン重合活性があることが知られている脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等が含まれ、アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等である。好適な有機アルカリ金属化合物としては、炭素数1から20の脂肪族および芳香族炭化水素リチウム化合物であり、1分子中に1個のリチウムを含む化合物、1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物が含まれる。
【0035】
具体的にはn-プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-ペンチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec-ブチルリチウムの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec-ブチルリチウムと少量の1,3-ブタジエンの反応生成物等があげられる。さらに、米国特許5,708,092号明細書に開示されている1-(t-ブトキシ)プロピルリチウムおよびその溶解性改善のために1〜数分子のイソプレンモノマーを挿入したリチウム化合物、英国特許2,241,239号明細書に開示されている1-(t-ブチルジメチルシロキシ)ヘキシルリチウム等のシロキシ基含有アルキルリチウム、米国特許5,527,753号明細書に開示されているアミノ基含有アルキルリチウム、ジイソプロピルアミドリチウムおよびヘキサメチルジシラジドリチウム等のアミノリチウム類も使用することができる。
【0036】
本発明において有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエンとビニル芳香族を共重合する際に、重合体に組み込まれる共役ジエンに起因するビニル結合(1,2または3,4結合)の含有量の調整や共役ジエンとビニル芳香族とのランダム共重合性を調整するために、調整剤として第3級アミン化合物またはエーテル化合物を添加することができる。
【0037】
第3級アミン化合物としては一般式R1R2R3N(ただしR1、R2、R3は炭素数1から20の炭化水素基または第3級アミノ基を有する炭化水素基である。)の化合物である。
例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N-エチルピペリジン、N-メチルピロリジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、1,2-ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルエチレントリアミン、N,N’-ジオクチル-p-フェニレンジアミン等である。
【0038】
また、エーテル化合物としては、直鎖状エーテル化合物および環状エーテル化合物から選ばれ、直鎖状エーテル化合物としてはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類が挙げられる。また、環状エーテル化合物としてはテトラヒドロフラン、ジオキサン、2,5-ジメチルオキソラン、2,2,5,5-テトラメチルオキソラン、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン、フルフリルアルコールのアルキルエーテル等が挙げられる。
【0039】
本発明において有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエンとビニル芳香族を共重合する方法は、バッチ重合であっても連続重合であっても、或いはそれらの組み合わせであってもよい。特に分子量分布を好ましい適正範囲に調整する上で連続重合方法が推奨される。重合温度は、一般に0℃から180℃、好ましくは30℃から150℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、特に好適には0.1時間から10時間である。また、重合系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。更に、重合系内は触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガスなどが混入しないように留意する必要がある。
【0040】
本発明において、前記重合終了時に2官能以上のカップリング剤を必要量添加してカップリング反応を行うことができる。
2官能カップリング剤としては公知のものいずれでも良く、特に限定されない。例えば、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類等が挙げられる。
【0041】
また、3官能以上の多官能カップリング剤としては公知のものいずれでも良く、特に限定されない。例えば、3価以上のポリアルコール類、エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA等の多価エポキシ化合物、一般式R4-nSiXn(ただし、Rは炭素数1から20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3または4)で示されるハロゲン化珪素化合物、例えばメチルシリルトリクロリド、t-ブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素およびこれらの臭素化物等、一般式R4-nSnXn(ただし、Rは炭素数1から20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3または4)で示されるハロゲン化錫化合物、例えばメチル錫トリクロリド、t-ブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物が挙げられる。炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等も使用できる。
【0042】
本発明において、共重合体として重合体の少なくとも1つの重合体鎖に極性基含有原子団が結合した変性共重合体を使用することができる。極性基含有原子団としては、例えば水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、カルボン酸基、チオカルボン酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、シラノール基、アルコキシケイ素基、ハロゲン化スズ基、アルコキシスズ基、フェニルスズ基等から選ばれる極性基を少なくとも1種含有する原子団が挙げられる。
【0043】
変性共重合体(2)は、共重合体の重合終了時にこれらの極性基含有原子団を有する化合物を反応させることにより得られる。極性基含有原子団を有する化合物としては、具体的には、特公平4-39495号公報に記載された変性剤を使用できる。
本発明で用いる好ましい変性水添共重合体(2)は、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性水添共重合体(2)であり、より好ましい変性水添共重合体(2)は、水酸機、エポキシ基、およびアミノ基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性水添共重合体(2)である。
【0044】
かかる変性水添共重合体(2)は、有機リチウム化合物を重合触媒として上述のような方法で得た共重合体のリビング末端に、官能基含有の変性剤を付加反応させることにより、共重合体に水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合している変性共重合体に水素を添加することにより得ることができる。
変性共重合体を得る他の方法として、変性前の水添共重合体に有機リチウム化合物等の有機アルカリ金属化合物を反応(メタレーション反応)させ、有機アルカリ金属が付加した共重合体に官能基含有の変性剤を付加反応させる方法が挙げられる。なお、変性剤の種類により、変性剤を反応させた段階で一般に水酸基やアミノ基等は有機金属塩となっていることもあるが、その場合には水やアルコール等活性水素を有する化合物で処理することにより、水酸基やアミノ基等にすることができる。
【0045】
本発明において、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団として好ましい原子団は、下記一般式で示されるものから選ばれる原子団が挙げられる。
【0046】
【化2】

【0047】
(上式で、R1〜R4は、水素又は炭素数1〜24の炭化水素基、あるいは水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜24の炭化水素基。R5は炭素数1〜48の炭化水素鎖、あるいは水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜48の炭化水素鎖。 なおR1〜R4の炭化水素基、及びR5の炭化水素鎖中には、水酸基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基以外の結合様式で、酸素、窒素、シリコン等の元素が結合していてもよい。R6は水素又は炭素数1〜8のアルキル基。)
【0048】
本発明において、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合している変性水添共重合体を得るために使用される変性剤としては、下記のものが挙げられる。
【0049】
例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0050】
また、γ-グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペンオキシシラン等が挙げられる。
【0051】
また、ビス(γ-グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)ジエトキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)ジプロポキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)ジブトキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)ジフェノキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)メチルメトキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)メチルエトキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)メチルブトキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)メチルフェノキシシラン等が挙げられる。
【0052】
また、トリス(γ-グリシドキシプロピル)メトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、ビス(γ-メタクリロキシプロピル)ジメトキシシラン、トリス(γ-メタクリロキシプロピル)メトキシシラン等が挙げられる。
【0053】
また、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-トリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-トリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-トリプロポキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-トリブトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-トリフェノキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル-トリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-メチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-エチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0054】
また、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-エチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-メチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-メチルジプロポキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-メチルジブトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-メチルジフェノキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-ジメチルメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-ジエチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0055】
さらにまた、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-ジメチルエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-ジメチルプロポキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-ジメチルブトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-ジメチルフェノキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-ジエチルメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-メチルジイソプロペンオキシシラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレンウレア、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0056】
有機リチウム化合物を重合触媒として上述のような方法で得た共重合体のリビング末端に上記の変性剤を反応させることにより、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が結合している変性剤の残基が結合している変性共重合体(2)が得られる。
本発明において、水添共重合体等は、上記で得られた水素添加前の共重合体又は変性共重合体を水素添加することにより得られる。
【0057】
水添触媒としては、特に制限されず、従来から公知である(i)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(ii)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(iii)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒が用いられる。
【0058】
具体的な水添触媒としては、特公昭42-8704号公報、特公昭43-6636号公報、特公昭63-4841号公報、特公平1-37970号公報、特公平1-53851号公報、特公平2-9041号公報に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒としてはチタノセン化合物および/または還元性有機金属化合物との混合物があげられる。チタノセン化合物としては、特開平8-109219号公報に記載された化合物が使用できるが、具体例としては、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上もつ化合物があげられる。また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物あるいは有機亜鉛化合物等があげられる。
【0059】
水添反応は一般的に0〜200℃が好ましく、より好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は好ましくは0.1〜15MPa、より好ましくは0.2〜10MPa、更に好ましくは0.3〜5MPaが推奨される。また、水添反応時間は通常3分〜10時間、好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
本発明における変性水添共重合体の場合、一部変性されていない水添共重合体が変性水添共重合体に混在してもよい。変性水添共重合体に混在する未変性の水添共重合体の割合は、70質量%以下が好ましく、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下であることが推奨される。
【0060】
上記のようにして得られた水添共重合体又は変性水添共重合体の溶液は、必要に応じて触媒残査を除去し、水添共重合体又は変性水添共重合体を溶液から分離することができる。溶媒の分離の方法としては、例えば水添後の溶液にアセトンまたはアルコール等の重合体に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法、水添共重合体等の溶液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、または直接重合体溶液を加熱して溶媒を留去する方法等を挙げることができる。
なお、本発明で用いる水添共重合体等には、各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤を添加することができる。
【0061】
本発明で用いる水添共重合体(1)と変性水添共重合体(2)は任意で混合することができる。付着性に優れた共重合体組成物を得たい場合は、変性水添共重合体(2)の含有量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であることが奨励される。また、耐食性に優れた共重合体組成物を得たい場合は、変性水添共重合体(2)の含有量が好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下であることが奨励される。
【0062】
本発明に用いる酸化亜鉛(3)は、核部を有し、この核部からテトラポット状に異なる4軸方向に伸びた針状結晶部を有する酸化亜鉛であり(以下、酸化亜鉛(3)という)、例えば、株式会社アムテック社製「パナテトラ(登録商標)」等が挙げられる。
このような核部と核部から異なる4軸方向に伸びた針状結晶部を有する酸化亜鉛の場合、樹脂中の酸化亜鉛の接触点が多くなり、伝熱経路が形成されやすく、共重合体組成物として優れる熱伝導率を発現することが可能となる。
【0063】
また、本発明に用いる酸化亜鉛(3)の針状結晶部の基部の径は、0.7〜14μmが好ましく、針状結晶部の基部から先端までの長さが3〜200μmであることが好ましい。より好ましくは針状結晶部の基部の径が1〜14μmであり、針状結晶部の基部から先端までの長さが10〜200μmである。なお、ここでいう基部の径とは、核部と針状結晶部の連結部における針状結晶部の径のことをいう。
本発明に用いる酸化亜鉛(3)の構造として、針状結晶部がテトラポット状に4軸に均等に伸びたもの(後記記載の角度として109.5°)が最も好ましいが、核部から伸びた針状結晶部の一つを基準として、その針状結晶部とは別の方向に伸びた各針状結晶部との角度がそれぞれ90゜以上140゜以下、好ましくは100゜以上120゜以下の場合でも本発明に含まれる。
【0064】
酸化亜鉛はカップリング剤で表面処理された酸化亜鉛でもよく、ここで用いるカップリング剤はシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が好適に用いられる。
本発明の難燃共重合体組成物中に針状の酸化亜鉛が存在することがあるが、これはテトラポット状構造の酸化亜鉛の複数方向に伸びた針状結晶部が折損したものであり、本発明の主要な特性を何ら損なうものではない。
【0065】
本発明に用いる酸化亜鉛(3)の配合割合は、難燃共重合体組成物100質量%に対し、10〜90質量%であり、この範囲であると、放熱性、柔軟性、柔軟性が優れる。35〜90質量%であることが好ましく、65〜90質量%であることがより好ましく、70〜85質量%であることがさらに好ましい。酸化亜鉛(3)が特に65〜90質量%とすることにより、柔軟性を保持しながら、熱伝導率が著しく向上する。
【0066】
本発明の共重合体組成物は、酸化亜鉛(3)の他に、さらに熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導性充填剤を添加することが望ましい。熱伝導率が10W/m・K以上の熱伝導性充填剤とは、日本熱物性学会編「熱物性ハンドブック」に記載されている充填剤の熱伝導率を参考にできるが、例えば金属粉、金属窒化物、金属炭化物、金属酸化物等が挙げられる。
金属粉としては、金、銀、銅、アルミニウム等が挙げられる。金属窒化物としては、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。金属炭化物としては炭化ケイ素等が挙げられる。また金属酸化物は、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0067】
また、これら熱伝導性充填剤の形状は繊維状及び/または非繊維状(板状、鱗片状、粒状、不定形状、球状)であってもよい。
また、酸化亜鉛(3)以外の酸化亜鉛、例えば粒状酸化亜鉛、球状酸化亜鉛を用いることも可能である。
この中でも、水添共重合体(1)及び/または変性水添共重合体(2)、酸化亜鉛(3)、ハロゲン系難燃剤(4)に充填する時の作業性、及び本発明の難燃共重合体組成物の熱伝導率の向上からみて金属窒化物、金属酸化物、金属炭化物が好ましく、より好ましくは金属窒化物、金属炭化物であり、さらに好ましくは、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素である。
【0068】
本発明で用いられる熱伝導性充填剤の添加量は、難燃共重合体組成物100質量部に対し、1〜30質量部が好ましく、より好ましくは1〜20質量部であり、さらに好ましくは1〜15質量部である。熱伝導性充填剤の添加量が1質量部未満だと、本発明の難燃共重合体組成物に添加した際、十分な熱伝導率改良効果が得られない可能性がある。また、30質量部を超えると難燃共重合体組成物のシート加工性が困難になる可能性がある。
【0069】
本発明で用いるハロゲン系難燃剤(4)としては、塩素系難燃剤として塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、パークロロシクロペンタデカン等が挙げられ、臭素系難燃剤として、ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)、デカブロモジフェニルオキサイド(DBDPO)、オクタブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン(BPBPE)、テトラブロモビスフェノールAエポキシ樹脂(TBBAエポキシ)、テトラブロモビスフェノールAカーボネート(TBBA-PC)、エチレン(ビステトラブロモフタル)イミド(EBTBPI)、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(トリブロモフェノキシ)トリアジン(TTBPTA)、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールA(DBP-TBBA)、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールS(DBP-TBBS)、テトラブロモビスフェノールS(TBBS)、トリス(トリブロモネオペンチル)フォスフェート(TTBNPP)、ポリブロモトリメチルフェニルインダン(PBPI)、トリス(ジブロモプロピル)-イソシアヌレート(TDBPIC)等が挙げられる。
【0070】
上記ハロゲン系難燃剤の中でも、臭素系難燃剤が好ましく、さらに好ましくは、共重合体組成物を溶融加工する際、溶融状態であることが好ましいことから、臭素系難燃剤の融点が50℃〜150℃の範囲である臭素系難燃剤がより好ましい。
これらを満足する臭素系難燃剤としては、テトラブロモビスフィエノールAエポキシ樹脂(TBBAエポキシ)、ビス(ジブロモプロピル)テトラブロモビスフェノールA(DBP−TBBA)、テトラブロモビスフェノールS(DBP−TBBS)、トリス(ジブロモプロピル)-イソシアヌレート(TDBPIC)等が挙げられる。
【0071】
ハロゲン系難燃剤(4)の配合割合は、難燃共重合体組成物100質量%に対し、ハロゲン系難燃剤(4)が1〜40質量%、かつ水添共重合体(1)、変性水添共重合体(2)とパラフィン系オイル(5)に対するハロゲン系難燃剤(4)の配合割合が、0.05≦(4)/[(1)+(2)+(5)]≦2(質量比)であり、好ましくは1〜35質量%、より好ましくは1〜30質量%である。40質量%を超えると柔軟性が不足し、1質量%より少ないと難燃性の効果が不十分となる。
【0072】
本発明で用いるパラフィン系オイル(5)とは、石油留分又は残油を水素添加し、精製したもの又は分解により得られる潤滑油基油のことである。これは溶融混練した共重合体組成物や樹脂シートを製造した時に生じる余分なシートやリサイクルのために回収したシートを再びシート製造する際、溶融混練して得られる共重合体組成物、並びに樹脂シートの特性が低下することを防止することを目的として用いられる。
本発明のパラフィン系オイルは40℃における動粘度が100mm2/sec以上のものが好ましく、より好ましくは100〜10000mm2/sec、さらに好ましくは200〜5000mm2/secである。
【0073】
本発明に用いるパラフィン系オイル(5)の配合割合は、水添共重合体(1)及び変性水添共重合体(2)に対する、柔軟性の観点から、難燃共重合体組成物100質量%に対し、(1)+(2)+(5)=9〜85質量%、かつ酸化亜鉛(3)の高充填化、柔軟性、及びパラフィン系オイル(5)のブリードアウト防止の観点から、水添共重合体(1)と変性水添共重合体(2)の合計に対するパラフィン系オイル(5)の割合として、0<(5)/[(1)+(2)]≦2であり、好ましくは(1)+(2)+(5)=15〜60質量%であり、より好ましくは(1)+(2)+(5)=15〜30質量%である。
このようなパラフィン系オイル(5)として、例えば、日本油脂株式会社製のNAソルベント、出光興産株式会社製「ダイアナ(登録商標) プロセスオイル PW-90、PW-380」、出光石油化学株式会社製「IP-ソルベント2835(商標)」、三光化学工業株式会社製「ネオチオゾール(商標)」等が挙げられる。
【0074】
本発明に用いるパラフィン系オイル(5)以外に、柔軟性付与の目的で、ナフテン環炭素数が30〜45%のナフテン系オイル、芳香族炭素数が30%を超える芳香族系オイル、ヒマシ油、アマニ油、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン、流動パラフィン等を本発明の目的に損なわない量を用いることが可能である。
【0075】
本発明に用いるハロゲン系難燃剤(4)にリン系難燃剤(6)を併用することができる。リン系難燃剤を用いることで、臭素系難燃剤を減量することができる。
リン系難燃剤として一例を挙げると、リン酸エステル、縮合リン酸エステル等のリン酸エステル系化合物、ホスファゼン化合物、赤燐系化合物、ホスフィン酸塩、ホスホン酸塩、リン酸エステルアミド、リン含有ポリマー、ホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィドや、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン、ビス(ジアリールホスフィノ)ベンゼン、トリス(ジアリールホスフィノ)ベンゼン等の三級ホスフィン類等を挙げることができる。
これらは一種単独又は二種以上の混合物として使用することができる。
【0076】
(6-1)ホスファゼン化合物
本発明で用いることができるホスファゼン化合物としては、従来公知のものを広く用いることができる。本発明で好適に用いられるホスファゼン化合物の構造は、例えばJames E. Mark,Harry R. Allcock, Robert West 著、”Inorganic Polymers” Pretice-HallInternational, Inc., 1992, p61-p140に記載されている。例えば、下記一般式(15)で示される環状ホスファゼン化合物及び/又は下記一般式(16)で示される鎖状ホスファゼン化合物が挙げられ、その中でもこれらの構造を有するホスファゼン化合物を95質量%以上含有するものが好ましい。
【0077】
【化3】

【0078】
【化4】

【0079】
(式中のnは3〜25の整数、mは3〜10000の整数であり、置換基Xは、炭素数が1〜6のアルキル基、炭素数が6〜11のアリール基、フッ素原子、下記一般式(17)で示される置換基を有するアリールオキシ基、ナフチルオキシ基、炭素数が1〜6のアルコキシ基およびアルコキシ置換アルコキシ基で表される置換基から選ばれる置換基であり、それぞれ異なっていても、同じでもよい。置換基上の水素は一部又は全部がフッ素に置換されていても構わない。また、式中のYは-N=P(O)(X)又は-N=P(X)3を表し、Zは-P(X)4又は-P(O)(X)2を表す。)
【0080】
【化5】

【0081】
(式中のY1、Y2、Y3、Y4及びY5は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、炭素数が1〜5のアルキル基またはアルコキシ基、フェニル基、ヘテロ元素含有基の中からなる群より選ればれる置換基を表す。)
【0082】
これらの化合物は、一種単独で用いても、二種以上の混合物として用いてもよい。
難燃性を決める因子の一つとして、分子中に含有するリン原子の濃度が挙げられる。ホスファゼン化合物において、鎖状構造を有する鎖状ホスファゼンは分子末端に置換基を有することから、環状ホスファゼン化合物よりもリン含有率が低くなり、同量を添加する場合、鎖状ホスファゼン化合物よりも環状ホスファゼン化合物の方がより難燃性付与効果が高いと考えられることから、本発明においては、環状構造を有するホスファゼン化合物の使用が好ましく、環状ホスファゼン化合物を95質量%以上含有するものが好ましい。
【0083】
ホスファゼン化合物中の置換基Xは特に制限はなく、一例として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、tert-ブチル基、n-アミル基、イソアミル基等のアルキル基、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、4-ターシャリーブチルフェニル基、2-メチル-4-ターシャリーブチルフェニル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、s-ブチルオキシ基、n-アミルオキシ基、イソアミルオキシ基、tert-アミルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシエトキシメトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、メトキシプロピルオキシ基等のアルコキシ置換アルコキシ基、フェノキシ基、2-メチルフェノキシ基、3-メチルフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、2,5-ジメチルフェノキシ基、2,4-ジメチルフェノキシ基、3,5-ジメチルフェノキシ基、3,4-ジメチルフェノキシ基、2,3,4-トリメチルフェノキシ基、2,3,5-トリメチルフェノキシ基、2,3,6-トリメチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基、2,4,5-トリメチルフェノキシ基、3,4,5-トリメチルフェノキシ基、2-エチルフェノキシ基、3-エチルフェノキシ基、4-エチルフェノキシ基、2,6-ジエチルフェノキシ基、2,5-ジエチルフェノキシ基、2,4-ジエチルフェノキシ基、3,5-ジエチルフェノキシ基、3,4-ジエチルフェノキシ基、4-n-プロピルフェノキシ基、4-イソプロピルフェノキシ基、4-ターシャリーブチルフェノキシ基、2-メチル-4-ターシャリーブチルフェノキシ基、2-フェニルフェノキシ基、3-フェニルフェノキシ基、4-フェニルフェノキシ基等のアルキル置換フェノキシ基、アリール置換フェノキシ基ナフチル基、ナフチルオキシ基等が挙げられ、これらの基の一部又は全部の水素がフッ素及び/又はヘテロ元素を含有する基に置き換わっていても構わない。ここで、ヘテロ元素を含有する基とは、B、N、O、Si、P、S原子を含有する基であり、一例を挙げると、アミノ基、アミド基、アルデヒド基、グリシジル基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、シリル基等を含有する基が挙げられる。
【0084】
さらに、これらの化合物は国際公開番号WO00/09518号に開示されている技術により、フェニレン基、ビフェニレン基および下記に示す基(18)からなる群より選ばれた架橋基によって架橋されていてもよい。
【0085】
【化6】

【0086】
(式中、Xは、―C(CH3)2-、-SO2-、-S-、または-O-を、yは0又は1を表す。)
これらの架橋構造を有するホスファゼン化合物は、具体的にはジクロルホスファゼンオリゴマーにフェノールのアルカリ金属塩および芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩を反応させることにより製造される。これらのアルカリ金属塩は、ジクロロホスファゼンオリゴマーに対して理論量よりもやや過剰に添加される。
これらのホスファゼン化合物は一種単独で用いても、二種以上の混合物として用いてもよい。
【0087】
また、ホスファゼン化合物は環状三量体、環状四量体等の環状体や鎖状ホスファゼンといった構造の異なる混合物であるが、樹脂に添加した場合の加工性は環状三量体、四量体含有率が高いほど好ましい傾向にあり、具体的には環状三量体及び/又は四量体化合物を80質量%以上含むホスファゼン化合物、より好ましくは三量体及び/又は四量体化合物を85質量%以上、さらに好ましくは93質量%以上含有するホスファゼン化合物が好ましい。
また、本発明においてフェノール系樹脂と組み合わせて使用する場合、三量体を好ましくは70質量%以上、より好ましくは三量体を76質量%以上、更に好ましくは三量体を80質量%以上、特に好ましくは三量体を85質量%以上含有するホスファゼン化合物を用いる場合、特に優れた難燃性付与効果が得られる上、優れた機械特性の向上効果が得られる。
【0088】
また、ホスファゼン化合物は、置換基の種類や構造の違いによっても異なるが、液状、ワックス状、固体状等、さまざまな形態を取ることができ、本発明の効果を損なわないものであれば、どのような形状でも構わない。固体状態の場合、嵩密度が好ましくは0.45g/cm以上、より好ましくは0.45g/cm以上、さらに好ましくは0.75g/cm以下である。
該ホスファゼン化合物中に含有するナトリウム、カリウム等のアルカリ金属成分はそれぞれ好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下であり、より好ましくは、全アルカリ金属成分が50ppm以下である。
【0089】
また、一般式(15)中の置換基Xのうち少なくとも一つが水酸基であるホスファゼン化合物、即ちP-OH結合を含有するホスファゼン化合物の含有量が1質量%未満であることが望ましく、且つ、塩素含有量が1000ppm以下、好ましくは500ppm以下、さらに好ましくは300ppm以下であることが望ましい。
【0090】
置換基Xのうち少なくとも一つが水酸基であるホスファゼン化合物は、下記一般式(19)で表されるオキソ体構造をとることもあるが、このようなオキソ体化合物も水酸基含有ホスファゼン化合物と同様に1質量%未満であることが望ましい。上記一般式(16)で表される鎖状構造を有するホスファゼン化合物でも同様である。
【0091】
【化7】

【0092】
(式中のa+b=nであり、nは3以上の整数である。また、式中のXは同じであっても異なってもよいアリールオキシ基、及び/又はアルコキシ基を示す。)
【0093】
(6-2)リン酸エステル
本発明で好適に用いられるリン酸エステルは従来公知のものを広く用いることができる。一例を挙げると、トリフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジキシレニルフェニルホスフェート、クレジルジキシレニルホスフェート、ジクレジルキシレニルホスフェート等が挙げられる。
【0094】
(6-3)縮合リン酸エステル
本発明で好適に用いられる縮合燐酸エステルとは、例えばペンタエリスリトールジホスフェートや、下記一般式(20)、(21)を有する燐酸エステル化合物である。
【0095】
【化8】

【0096】
【化9】

【0097】
(ここで、Q1、Q2、Q3、Q4、Q9、Q10、Q11、Q12は、独立に水素原子又は炭素数1から6のアルキル基を表し、Q5,Q6、Q7、Q8、Q13は独立に水素原子、またはメチル基を表す。m1、m2、m3、m4、m7、m8、m9、m10は、独立に0から3の整数を示し、m5、m6は独立に0から2の整数を表し、m11は独立に0から4の整数を表す。)
【0098】
(6-4)ホスフィン酸塩
本発明で用いることができるホスフィン酸塩は、下記一般式(22)及び/又は(23)で表されるホスフィン酸塩及び/又はこれらのポリマーから選ばれる少なくとも一種である。
【0099】
【化10】

【0100】
【化11】

【0101】
(式中、Q1、Q2、Q3、Q4は、水素原子、炭素数が1〜12のアルキル基、炭素数が1〜12のアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基を表し、Q5は炭素数が1〜18のアルキレン、アリールアルキレン、アリーレン、アルキルアリーレン、ジアリーレンから選ばれる基を表す。式中n、mはそれぞれ1〜3の整数であり、xは1又は2である。また、Mは、周期表第四周期以降の金属原子、アミド、アンモニウム基及びメラミン誘導体から選ばれる基を表し、xが2の場合は同じ基であっても異なる基であってもよい。)
【0102】
(6-5)三級ホスフィン類
本発明で用いることができる三級ホスフィン類としては、従来公知のものを好適に用いることができるが、耐熱性及び、難燃性、機械特性のバランスを考慮すると、TGAによる不活性ガス雰囲気下、昇温速度10℃/minで常温から600℃まで加熱した時の10%減量温度が、150℃〜320℃であることが好ましい。一例を挙げると、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン、トリアリールオキシホスフィン、トリアルコキシホスフィン等が挙げられる。より具体的には、その中でも、下記一般式(24)で表されるトリアリールホスフィン類が好適に用いられる。
【0103】
【化12】

【0104】
(式中、T1、T2、T3、T4は、それぞれ、独立に水素原子又は炭素数1から12のアルキル基又はアリール基を表し、T5は水素原子又はメチル基を表す。m1、m2、m3、m4は、それぞれ、独立に0から5の整数を示し、m5は独立に0から4の整数を表す。また、式中のnは、0〜3の整数を表す。また、アリール基として、ナフチル基も好適に用いることができる。また、リン原子上の三つのアリール基は、すべて同じ基であっても、それぞれ異なる基であってもよい。)
【0105】
本発明において好適に使用されるリン系難燃剤(6)に含有する水分量は、電気特性、耐加水分解性等を考慮した場合、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは800ppm以下、さらに好ましくは650ppm以下、さらには500ppm以下、より好ましくは300ppm以下であり、且つJIS K6751に基づき測定された酸価が好ましくは1.0以下、より好ましくは0.5以下である。
また、本発明で好適に使用されるリン系難燃剤(6)は、耐加水分解性、耐吸湿性の観点から、水への溶解度(サンプルを0.1g/mLの濃度で蒸留水に混合し、室温で1時間攪拌後に水中に溶け込んだサンプルの量を指す)が好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm、さらに好ましくは、25ppm以下であるものがよい。
【0106】
本発明で好適に用いられるリン系難燃剤(6)は、含有する置換基の種類や構造の違いによっても異なるが、液状、ワックス状、固体状等、さまざまな形態を取ることができ、本発明の効果を損なわないものであれば、どのような形状でも構わない。
本発明において好適に用いられるリン系難燃剤の中で、リン化合物自体の耐熱性や、低揮発性を考慮する必要がある場合、ホスファゼン化合物、ビスフェノールAとフェノールを原料として合成される縮合燐酸エステル、ビスフェノールAまたはレゾルシンと2,6-キシレノールを原料として得られる縮合燐酸エステル、ホスフィン酸塩が特に好適に用いられる。また、更に耐加水分解性を考慮する必要がある場合、ホスファゼン化合物が特に好適に用いられる。
【0107】
また、ハロゲン系難燃剤と併用してアンチモン系化合物を併用することも可能である。アンチモン化合物の具体例としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン類やアンチモン酸ソーダ等が挙げられる。
本発明で用いるハロゲン系難燃剤(4)に金属水酸化物(7)を併用することができる。
本発明で用いる金属水酸化物の具体例としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。好ましくは水酸化アルミニウムである。またこれら金属水酸化物は、脂肪酸処理、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤などで表面処理された金属水酸化物も好適に用いられる。
【0108】
本発明で用いるハロゲン系難燃剤(4)と、リン系難燃剤(6)及び/又は金属水酸化物(7)を併用する場合の配合割合は難燃共重合体組成物100質量%に対し、(4)+(6)+(7)=1〜40質量%、かつ水添共重合体(1)、変性水添共重合体(2)とパラフィン系オイル(5)に対するハロゲン系難燃剤(4)、リン系難燃剤(6)、金属水酸化物(7)の配合割合が、0.05≦[(4)+(6)+(7)]/[(1)+(2)+(5)]≦2の範囲であることが好ましく、かつ難燃性の効果を維持しつつ、ハロゲン系難燃剤の減量が可能な範囲として、ハロゲン系難燃剤(4)、リン系難燃剤(6)、金属水酸化物(7)の配合割合が、0<[(6)+(7)]/(4)≦15(質量比)であることが好ましく、より好ましくは(4)+(6)+(7)が1〜35質量%、さらに好ましくは1〜30質量%である。40質量%以下の場合柔軟性が向上し、1質量%以上の場合は難燃性の効果が向上する。
【0109】
本発明では、難燃助剤としてポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂がドリップ防止剤として配合することもできる。
具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体、ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ビニリデンフルオライド/エチレン共重合体等が挙げられる。中でもポリテトラフルオロエチレンが好ましい。またポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合紛体も好ましく用いることができる。このポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合紛体の例として、三菱レイヨン社製「メタブレン(登録商標) A−3000」、「メタブレン(登録商標) A−3800」等が挙げられる。
【0110】
このポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂の分子量は、10万以上、好ましくは20万から300万程度のものが望ましい。これより、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂が配合された共重合体組成物は、燃焼時のドリップが抑制される。
また、本発明の共重合体組成物は酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤やアミン系やヒドロキシルアミン系の酸化防止剤が挙げられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート〕、及びペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。
【0111】
本発明の共重合体組成物は、アクリル系樹脂を含有してもよい。
本発明に用いてもよいアクリル系樹脂とは、具体的には(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の重合体又は共重合体である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート等が挙げられ、これら化合物を単独で、または2種上組み合わせて重合させて得られる共重合体であれば使用することができ、例えば、ゼオン化成株式会社製「ハイブレン(商標)」等が挙げられる。また、アクリル酸アルキルエステルを重合して得られるアクリル系ゴム粒子に(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として得られるグラフト共重合体も使用することができ、例えば、三菱レイヨン社製「メタブレン(登録商標)」等が挙げられる。
本発明で用いられるアクリル系樹脂の配合割合は、難燃共重合体組成物100質量%に対し、5質量%以下が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、さらに好ましくは0.05〜2質量%である。
【0112】
本発明の共重合体組成物は、脂肪酸又は脂肪酸塩を含有してもよい。
本発明に用いてもよい脂肪酸又は脂肪酸塩とは、飽和あるいは不飽和の脂肪酸及び脂肪酸塩であってもよく、炭素数8〜34であることがより好ましく、炭素数14〜22であることがさらに好ましく、さらに好ましくは飽和脂肪酸及び脂肪酸塩である。具体的には、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、オレイン酸、カプリン酸、ベヘニン酸、リノール酸等の脂肪酸、又は上記脂肪酸の金属塩として、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩の他、亜鉛金属塩等を挙げることができ、これらの中でもステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、又はそのアルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩)、亜鉛金属塩が好適に用いられる。
【0113】
本発明に用いる脂肪酸及び/又は脂肪酸塩の配合割合は、難燃共重合体組成物100質量%に対し、5質量%以下が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.05〜2質量%がさらに好ましい。
本発明の難燃共重合体組成物は、紫外線吸収剤を添加することができる。紫外線吸収剤の具体例としては、ベンゾトリアゾ-ル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩紫外線吸収剤が挙げられる。特に好ましいのはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とベンゾフェノン系紫外線吸収剤である。
【0114】
本発明の難燃共重合体組成物は、機械的強度を持たせるため充填剤を配合することができる。充填剤として具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。
本発明の難燃共重合体組成物は、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤の他の添加剤として、例えば、熱安定剤、耐電防止剤、光安定剤、老化防止剤、着色剤等の添加物を配合することができる。
これらの添加物は混練時に添加しても、水添共重合体(1)及び/又は変性水添共重合体(2)の製造時に予め該共重合体の中に含ませておいてもよい。
これらの添加物の配合割合は、難燃共重合体組成物100質量%に対し、10質量%を越えない範囲である。
【0115】
本発明の難燃共重合体組成物は、ブラベンダー、ニーダー、バンバリーミキサー、二軸あるいは一軸押出機など従来の公知技術によって容易に製造できる。
本発明の難燃共重合体組成物は、熱可塑性であり加熱可塑化させた溶融物を型に注入することによる賦型が容易なこと、及び組成物自体の熱伝導性が優れることにより、放熱用成形体として好適に使用される。
このような特性を有する放熱用成形体は、本発明の難燃共重合体組成物を加熱溶融可塑化して成形することにより得られる。具体的には、射出成形、インジェクションプレス成形、またはガスインジェクション成形など公知の成形方法にて成形体を製造することが可能である。
【0116】
本発明の難燃共重合体組成物をシート状として得る時の成形方法としては、上記の方法で混練した後、押出シート成形、Tダイシート成形、カレンダー成形、ロール成形、プレス成形、インフレーション成形等により成形することができる。本発明における放熱性に優れた樹脂シートの厚みは、通常0.005〜3mmであり、好ましくは0.01〜1mmである。またCPU等の発熱体とヒートシンク等の放熱部品の間に距離があるスペーサ−用途の場合、厚いシートが好ましく、具体的にシート厚みとして1mm〜3cmがより好ましい。この用途の場合、熱伝導性、柔軟性が必要であり、本発明が好適である。
本発明の樹脂シートは表面の平滑であることが好ましく、JIS K7105に準拠して測定した樹脂シートの表面における60度表面グロスの値が10以上であることが好ましい。
【0117】
本発明における難燃共重合体組成物並びに樹脂シートは廃棄物等の環境問題の観点からリサイクル(再利用)することができる。具体的には、1)溶融混練した難燃共重合体組成物並びにこれをシート状に成形した樹脂シートや一度市場に流通などした後に回収された該樹脂シートを必要に応じ破砕した後そのまま溶融し再度シート化するか、或いは2)回収された該樹脂シートと、難燃共重合体ペレット或いは成分(1)〜(7)の原材料と共に再度溶融混練して難燃共重合体組成物を製造した後、この難燃共重合体組成物をシート状に成形して樹脂シートを製造することができる。回収された樹脂シートの、シート化前の難燃共重合体組成物ペレット或いは成分(1)〜(7)の原材料に対する好ましい割合は、全体の質量割合で100質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下であることが好ましい。この範囲であれば難燃共重合体組成物及び該難燃共重合体組成物からなる樹脂シートの特性を維持しつつ、難燃共重合体組成物及び/または樹脂シートの再利用を図ることができる。
【0118】
本発明の樹脂シートは、熱伝導性、リサイクル性に優れ、かつ加熱による揮発成分が少なくシート表面の平滑性に優れており、パソコン、家庭用ゲーム機等のコンピュータ類の放熱部品、DVDプレーヤー、DVDレコーダー用の放熱部品、HDDレコーダー用放熱部品、家庭用テレビ、プラズマディスプレイ、液晶テレビ等のディスプレイ電源ユニット等の放熱部品、携帯電話、各種コンピュータ類、各種AV機器、OA機器等に用いられる放熱部品、カーステレオ、カーナビゲーションシステム、インバーター、照明、エアコンの自動車電装部材に用いられる放熱部品等など高熱伝導性が必要とされる用途に好適に使われる。
【0119】
また、本発明の難燃共重合体樹脂組成物から放熱用成形体として得ることも可能であり、この成形体を得る方法は、特に制限されるものでなく、熱可塑性樹脂組成物について一般的に用いられている成形法、たとえば、射出成形、中空成形、押し出し成形、熱成形、回転成形等の成形方法が適用できる。本発明の放熱用成形体は、上記に挙げた各種コンピュータ類、各種AV機器、OA機器、自動車電装部材等の筐体として好適に使われる。
【実施例】
【0120】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、重合体の特性や物性の測定は次のようにして行った。
1)ビニル芳香族単位の含有量
紫外分光光度計((株)島津製作所製、UV-2450)を用いて測定した。
2)ビニル芳香族からなる重合体ブロックの含有量
水添前の重合体を用い、I.M.Kolthoff,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法で測定した。
3)ビニル結合量及び水添率
核磁気共鳴装置(BRUKER社製、DPX-400)を用いて測定した。
【0121】
4)分子量及び分子量分布
GPC〔装置は、ウォーターズ製〕で測定し、溶媒にはテトラヒドロフランを用い、測定条件は、温度35℃で行った。分子量は、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量である。尚、クロマトグラム中にピークが複数有る場合の分子量は、各ピークの分子量と各ピークの組成比(クロマトグラムのそれぞれのピークの面積比より求める)から求めた平均分子量をいう。また,分子量分布は,得られた重量平均分子量と数平均分子量の比である。
【0122】
5)結晶化ピーク及び結晶化ピーク熱量
DSC[マックサイエンス社製、DSC3200S]で測定した。室温から30℃/分の昇温速度で150℃まで昇温させ、その後10℃/分の降温速度で-100℃まで降温して結晶化カーブを測定して結晶化ピークの有無を確認した。また、結晶化ピークがある場合、そのピークが出る温度を結晶化ピーク温度とし、結晶化ピーク熱量を測定した。
【0123】
6)変性率
シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに、変性した成分が吸着する特性を応用し、試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液に関して、上記4)のポリスチレン系ゲル(昭和電工製:Shodex)のGPCと、シリカ系カラムGPC(デュポン社製Zorbax)の両クロマトグラムを測定し、それらの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定し変性率を求めた。
【0124】
7)樹脂シートの熱伝導率
京都電子工業株式会社製薄膜測定用ソフト(SOFT-QTM5W)を備えた迅速熱伝導率測定機QTM-500(細線加熱法)を用いて、上記で得たシートの熱伝導率を測定した。測定は、熱伝導率が既知であるレファレインスプレート(発泡ポリエチレン、シリコンゴム、石英ガラス、ムライト、ジルコニア)を用いてボックス式プローブ(PD-11)で熱伝導率を求める方法(特公平5-12361号公報記載)で行った。
8)難燃性評価
上記で得た該難燃共重合体組成物を200℃で加熱したプレス成形にて厚み2mmのシートを作成し、UL94規格(米国Under Writera Laboratories Incで定められた規格)の方法に従って測定した。
9)硬度
上記で得た該難燃共重合体組成物を200℃で加熱したプレス成形にて2mm(縦120mm×横220mm)プレスシートを作成し、硬度の測定は、Aタイプ硬度計を用い、JIS K6301に準じた方法で硬度を測定した。
【0125】
10)シート加工性
上記で得た難燃共重合体組成物ペレットを、190℃に設定された単軸押出機(25mmφ、L/D=20 東洋精機社製 ラボプラストミル 形式50M、及び単軸押出機 形式 D2020)及び190℃に設定されたダイス(リップ開口部の厚み1mm、幅60mm 東洋精機社製 形式T60F)を用いてシート成形を行った。吐出量は1kg/hrに設定し、シートが幅40〜45mm、厚さ0.5〜1.0mmの範囲になるようコンベア式引取り装置(東洋精機社製 形式コンベア CON型)の速度を調整し、シート加工性を評価した。
評価方法は、シートを引き取る際、シートの破れが生じた場合を×、シートは引き取れることができるが、シートの表面がブツブツした感触が得られる等とした表面平滑性が劣るものを△、シートは引き取れ、かつ表面が滑らかな感触が得られたものを○として判定した。
【0126】
また、実施例で用いた各成分は以下のとおりである。
<水添共重合体(1)及び変性水添共重合体(2)>
水添共重合体等は以下の方法で調製した。なお、下記の実施例において、水添反応に用いた水添触媒は、下記の方法で調製した。
<水添触媒の調製>
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn-ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。
【0127】
<水添共重合体(1)の調整>
水添共重合体(1)(ポリマー1とする)の調整は、内容積が10Lの撹拌装置及びジャケット付き槽型反応器を用いて、共重合を以下の方法で行った。
シクロヘキサン10質量部を反応器に仕込んで温度70℃に調整した後、n-ブチルリチウムを全モノマー(反応器に投入したブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)の質量に対して0.076質量%、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.4モル添加し、その後モノマーとしてスチレン8質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を約3分間かけて添加し、反応器内温を70℃に調整しながら30分間反応させた。
【0128】
次にブタジエン48質量部とスチレン36質量部とを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を60分かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、その後、30分間反応させた。この間、反応器内温は約70℃になるように調整した。尚、供給終了直後にサンプリングしたポリマー溶液を解析したところ、ブタジエンの重合転化率;90%、スチレンの重合転化率;100%、ポリマー中のスチレン含量は47.8質量%であった(ブロックBのスチレン含量は42.9質量%となる)。
その後、更にモノマーとしてスチレン8質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を約3分間かけて添加し、反応器内温を約70℃に調整しながら30分間反応させ、共重合体を得た。得られた共重合体のビニル芳香族単位の含有量は52質量%であり、ビニル芳香族からなる重合体ブロックの含有量は16質量%、ブタジエン部のビニル結合量は21質量%、重量平均分子量は16.5万、分子量分布は1.2であった。
【0129】
次に、得られた共重合体に、上記水添触媒を共重合体の質量に対してチタンとして100質量ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。反応終了後にメタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体の質量に0.3質量%添加し、水添共重合体(以下ポリマー1とする)を得た。ポリマー1の水添率は99%であった。また動的粘弾性測定の結果、tanδのピーク温度は-15℃に存在した。また、DSC測定の結果、結晶化ピークは無かった。
【0130】
水添共重合体(1)(ポリマー2とする)の調整は、1段目:スチレン4.5質量部、2段目:ブタジエン49質量部とスチレン42質量部、3段目:スチレン4.5質量部を使用し、ポリマー1と同様の方法で共重合体を得た。得られた共重合体のビニル芳香族単位の含有量は51質量%であり、ビニル芳香族からなる重合体ブロックの含有量は9質量%、ブタジエン部のビニル結合量は21質量%、重量平均分子量は17.5万、分子量分布は1.2であった。次にポリマー1と同様に水添して、水添共重合体(以下ポリマー2とする)を得た。ポリマー2の水添率は99%であった。また動的粘弾性測定の結果、tanδのピーク温度は-14℃に存在した。また、DSC測定の結果、結晶化ピークは無かった。
【0131】
<変性水添共重合体(2)の調整>
変性水添共重合体(2)(ポリマー3とする)の調整は、2基目から出たリビングポリマーの溶液に変性剤として、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサンを重合に使用し、n-ブチルリチウムに対して等モル反応させる以外は、ポリマー1と同様の方法で変性共重合体を得た。得られた変性共重合体のビニル芳香族の含有量は52質量%であり、ビニル芳香族からなる重合体ブロックの含有量は16質量%、ブタジエン部のビニル結合量は21質量%、重量平均分子量は16.5万、分子量分布は1.2であった。
【0132】
次にポリマー1と同様に、上記の変性共重合体に、上記水添触媒を共重合体の質量に対してチタンとして100質量ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。反応終了後にメタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体の質量に対し
て0.3質量%添加し、変性水添共重合体(以下ポリマー3とする)を得た。ポリマー3の水添率は99%であった。また動的粘弾性測定の結果、tanδのピーク温度は-15℃に存在した。また、DSC測定の結果、結晶化ピークは無かった。
【0133】
<酸化亜鉛(3)>
核部と核部から異なる4軸方向に伸びた針状結晶部を有する酸化亜鉛(3)として株式会社アムテック社製、[パナテトラ(登録商標)、WZ-0501](表面処理なし、針状結晶部の基部の径が0.7〜14μm、針状結晶部の基部から先端までの長さが3〜200μm)を用いた。
<熱伝導性充填剤>
熱伝導性充填剤として、窒化ホウ素である昭和電工株式会社製[ショウビーエヌ(登録商標)、UHP(登録商標)−1](平均粒度10μm、熱伝導率:約130W/m・K、熱伝導性充填剤1とする)を、窒化アルミニウムである株式会社トクヤマ製[シェイパル(登録商標)高純度窒化アルミニウム粉末、Hグレード](平均粒度1.13μm、熱伝導率:約200W/m・K、熱伝導性充填剤2とする)を、また窒化ケイ素である宇部興産株式会社製[高純度窒化珪素粉末SN−E03(商標)](平均粒度1.0μm、熱伝導率:約80W/m・K、熱伝導性充填剤3とする)を用いた。
【0134】
<ハロゲン系難燃剤(4)>
ハロゲン系難燃剤として、臭素系難燃剤である鈴裕化学社製[ファイアカット(商標)P680(融点90〜105℃、ハロゲン系難燃剤4−1とする)、及び大八化学社製 CR−900(商標)(融点180℃以上、ハロゲン系難燃剤4−2とする)を用いた。
また、難燃助剤として三酸化アンチモンは鈴裕化学社製、[FIRE CUT AT−3(商標)]を、ポリテトラフルオロエチレンは三菱レーヨン社製、[メタブレン(登録商標) A−3800]を用いた。
<パラフィン系オイル(5)>
パラフィン系オイル(5)は、出光興産株式会社製 [ダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW380](40℃における動粘度が382mm2/sec)を用いた。
【0135】
<リン系難燃剤(6)>
リン系難燃剤として、フォスファゼン化合物である大塚化学社製[SPS−100(商標)]を用いた。
<金属水酸化物(7)>
金属水酸化物として、水酸化アルミニウムである昭和電工株式会社製[ハイジライト(登録商標) H−21平均粒子径26μm)を用いた。
<アクリル系樹脂>
アクリル系樹脂は、ゼオン化成株式会社製[ハイブレン(商標) B403」を用いた。
<脂肪酸(塩)>
脂肪酸塩は、株式会社ADEKA製 [エフコケム(商標) ZNS-F」(ステアリン酸亜鉛)を用いた。
【0136】
≪実施例1〜12、及び比較例1〜4≫
各成分を表1及び表2に示す配合組成にて、シリンダー温度200℃、スクリュウー回転数500rpmに設定した二軸押出機(ZSK-25 25mmφ、L/D=52、加熱部分の全長1300mm、WERNER&PFLEIDERE社製 )にて溶融混練を行い、難燃共重合体組成物を得た。但し、比較例5は、パラフィン系オイル(5)がブリードアウトしたため、予定した配合の組成物を得ることができなかった。
得られた該難燃共重合体組成物を200℃で加熱したプレス成形にて厚み2mm、縦120mm×横220mmの樹脂シートとして試験片を得た。
結果を表1及び表2に示す。
【0137】
【表1】

【0138】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明における難燃共重合体組成物及びこれを用いて成形して得られる樹脂シート並びに難燃放熱性成形体は、熱伝導性、難燃性に優れ、かつシート加工性、表面平滑性、柔軟性に優れており、パソコン、家庭用ゲーム機等のコンピュータ類の放熱部品、DVDプレーヤー、DVDレコーダー用の放熱部品、HDDレコーダー用放熱部品、家庭用テレビ、プラズマディスプレイ、液晶テレビ等のディスプレイ電源ユニット等の放熱部品、携帯電話、各種コンピュータ類、各種AV機器、OA機器等に用いられる放熱部品、カーステレオ、カーナビゲーショシステム、インバーター、照明、エアコンの自動車電装部材に用いられる放熱部品等など高熱伝導性が必要とされる用途に好適に使われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエンとビニル芳香族からなる共重合体に水素を添加してなる下記(a)〜(d)を満たす水添共重合体(1)及び/又は共役ジエンとビニル芳香族からなる共重合体に水素を添加してなり、かつ官能基を少なくとも1個結合する下記(a)〜(d)を満たす変性水添共重合体(2)と、核部と該核部から異なる4軸方向に伸びた針状結晶部を有する酸化亜鉛(3)と、ハロゲン系難燃剤(4)と、パラフィン系オイル(5)とからなり、下記(A)〜(E)を満たすことを特徴とする難燃共重合体組成物。
(a)ビニル芳香族単位の含有量が50質量%を越え、90質量%以下。
(b)ビニル芳香族からなる重合体ブロックの量が40質量%以下。
(c)重量平均分子量が5万〜100万。
(d)共役ジエンに基づく二重結合の10%以上が水添されている。
(1)+(2)+(3)+(4)+(5)=100質量%に対し、
(A) (1)+(2)+(5)=9〜85質量%
(B) (3)=10〜90質量%
(C) (4)=1〜40質量%
(D) 0<(5)/[(1)+(2)]≦2(質量比)
(E) 0.05≦(4)/[(1)+(2)+(5)]≦2
【請求項2】
変性水添共重合体(2)が、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、及びアルコキシシラン基から選ばれる官能基を少なくとも1個有する原子団が少なくとも1個結合していることを特徴とする請求項1記載の難燃共重合体組成物。
【請求項3】
成分(1)及び/又は成分(2)中のビニル芳香族からなる重合体ブロックの量が10質量%未満であることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃共重合体組成物。
【請求項4】
成分(1)及び/又は成分(2)中のビニル芳香族からなる重合体ブロックの量が10〜40質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃共重合体組成物。
【請求項5】
成分(1)及び/又は成分(2)が下記一般式(イ)〜(ホ)から選ばれる少なくとも一つの構造を有する共重合体の水素添加物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの1項に記載の難燃共重合体組成物。
(イ)B
(ロ)B-A
(ハ)B-A-B
(ニ)(B-A)m-X
(ホ)(B-A)n-X-Ap
(ここで、Bは共役ジエンとビニル芳香族とのランダム共重合体ブロックであり、Aはビニル芳香族重合体ブロックである。mは2以上の整数であり、n及びpはそれぞれ1以上の整数である。Xはカップリング剤残基を示す。)
【請求項6】
成分(2)が、下記式から選ばれる少なくとも1個であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の変性水添共重合体組成物。
【化1】

(上式で、R1〜R4は、水素又は炭素数1〜24の炭化水素基、あるいは水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜24の炭化水素基。
R5は炭素数1〜48の炭化水素鎖、あるいは水酸基、エポキシ基、アミノ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜48の炭化水素鎖。なおR1〜R4の炭化水素基、及びR5の炭化水素鎖中には、水酸基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基以外の結合様式で、酸素、窒素、シリコン等の元素が結合してもよい。R6は水素又は炭素数1〜8のアルキル基。)
【請求項7】
成分(2)が、有機リチウム化合物を重合触媒として得た共役ジエンとビニル芳香族からなる共重合体のリビング末端に、官能基を含有する変性剤を付加反応させてなる変性共重合体に水素添加してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃共重合体組成物。
【請求項8】
成分(4)が臭素系難燃剤であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の難燃共重合体組成物。
【請求項9】
前記臭素系難燃剤の融点が50〜150℃であることを特徴とする請求項8に記載の難燃共重合体組成物。
【請求項10】
成分(1)及び/又は成分(2)、成分(3)、成分(4)、成分(5)に、さらにリン系難燃剤(6)及び/又は金属水酸化物(7)を含有し、下記(A)〜(F)を満たすことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の難燃共重合体組成物。
(1)〜(7)の合計100質量%に対し、
(A) (1)+(2)+(5)=9〜85質量%
(B) (3)=10〜90質量%
(C) 0<(5)/[(1)+(2)]≦2(質量比)
(D) (4)+(6)+(7)=1〜40質量%
(E) 0<[(6)+(7)]/(4)≦15(質量比)
(F) 0.05≦[(4)+(6)+(7)]/[(1)+(2)+(5)]≦2
【請求項11】
さらに10W/m・K以上の熱伝導性充填剤を添加してなることを特徴とする請求項1
〜10のいずれか1項に記載の難燃共重合体組成物。
【請求項12】
前記10W/m・K以上の熱伝導性充填剤が、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項11に記載の難燃共重合体組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の難燃共重合体組成物からなる樹脂シート。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の難燃共重合体組成物の難燃放熱用成形体への使用。

【公開番号】特開2008−127482(P2008−127482A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314876(P2006−314876)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】