説明

難燃剤を有する耐熱老化性ポリアミド

A)ポリアミド10〜98質量%、B)最大10μm(d50値)の粒度を有する鉄粉末0.001〜20質量%、C)燐含有または窒素含有化合物、またはP−N−縮合体、またはこれらの混合物の群からのハロゲン不含難燃剤1〜40質量%、D)他の添加剤0〜60質量%を含有する熱可塑性成形材料であって、この場合、成分A)〜D)の質量%の合計は、100%となる、上記の熱可塑性成形材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
A)ポリアミド10〜98質量%、
B)最大10μm(d50値)の粒度を有する鉄粉末0.001〜20質量%、
C)燐含有または窒素含有化合物、またはP−N−縮合体、またはこれらの混合物の群からのハロゲン不含難燃剤1〜40質量%、
D)他の添加剤0〜70質量%、
を含有する熱可塑性成形材料であって、この場合、成分A)〜D)の質量%の合計は、100%となる、上記の熱可塑性成形材料に関する。
【0002】
更に、本発明は、全ての種類の繊維、シートおよび成形品を製造するための本発明による成形材料の使用ならびにその際に得られる成形品に関する。
【0003】
熱可塑性ポリアミド、例えばPA6およびPA66は、構造部材の寿命の間に高められた温度に晒される構造部材のための構成材料としてガラス繊維強化された成形材料の形でしばしば使用され、その際この高められた温度は、熱酸化損傷をまねく。この熱酸化損傷の発生は、公知の耐熱材の添加によって実際に遅延させることができるが、しかし、持続的に阻止することはできず、このことは、例えば機械的な特性値の減少で表される。ポリアミドの耐熱老化性(WAB)の改善は、極めて望まれている。それというのも、それによって熱負荷された構造部材に対してよりいっそう長い寿命を達成することができるか、または前記構造部材の損傷に対する危険性を低下させることができるからである。他の選択可能な方法によれば、改善されたWABは、よりいっそう高い温度での構造部材の使用も可能にすることができる。
【0004】
ポリアミド中の元素状の鉄粉末の使用は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2602449号明細書、特開平09−221590号公報、特開2000−86889号公報(それぞれ充填剤として)、特開2000−256123号公報(装飾添加剤として)ならびにWO 2006/074912およびWO 2005/007727(安定剤)の記載から公知である。
【0005】
欧州特許出願公開第1846506号明細書の記載から、ポリアミドのためのCu含有安定剤と酸化鉄との組合せは、公知である。
【0006】
耐熱老化性は、公知の成形材料において、殊によりいっそう長い熱負荷時間に亘って依然として不十分である。
【0007】
成形体の表面は、改善を必要とする。それというのも、熱老化の際に多孔質の箇所が形成され、ならびに気泡形成が生じるからである。
【0008】
よりいっそう若い欧州特許出願番号:08171803.3において、WABの改善のために、ポリエチレンイミンと鉄粉末との組合せが提案されている。
【0009】
難燃剤は、前記刊行物中に一般的に述べられているだけである。
【0010】
従って、本発明は、改善されたWABおよび熱老化後の良好な表面ならびにメカニズムを有する、難燃化された熱可塑性ポリアミド成形材料を提供するという課題に基づくものであった。
【0011】
それに応じて、冒頭に定義された成形材料が見出された。好ましい実施態様は、引用形式請求項の記載から確認することができる。
【0012】
本発明による成形材料は、成分A)として少なくとも1つのポリアミドを10〜98質量%、特に20〜97質量%、殊に25〜90質量%含有する。
【0013】
本発明による成形材料のポリアミドは、一般にISO 307の記載により25℃で96質量%の硫酸中の0.5質量%の溶液中で測定された、90〜350ml/g、特に110〜240ml/gの粘度数を有する。
【0014】
例えば、米国特許第2071250号明細書、米国特許第2071251号明細書、米国特許第2130523号明細書、米国特許第2130948号明細書、米国特許第2241322号明細書、米国特許第2312966号明細書、米国特許第2512606号明細書および米国特許第3393210号明細書に記載されているような少なくとも5000の分子量(質量平均値)を有する半結晶性または非晶質の樹脂は、好ましい。
【0015】
これらの例は、7〜13個の環員を有するラクタムから誘導されるポリアミド、例えばポリカプロラクタム、ポリカプリルラクタムおよびポリラウリンラクタムならびにジカルボン酸とジアミンとの反応によって得られるポリアミドである。
【0016】
ジカルボン酸として、炭素原子6〜12個、特に6〜10個を有するアルカンジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸が使用可能である。この場合には、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸およびテレフタル酸および/またはイソフタル酸が酸として挙げられる。
【0017】
ジアミンとして、特に、6〜12個、特に6〜8個の炭素原子を有するアルカンジアミンならびにm−キシリレンジアミン(例えば、BASF SE社のUltramid(登録商標)X17、MXDAとアジピン酸とのモル比1:1)、ジ−(4−アミノフェニル)メタン、ジ−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ジ−(4−アミノフェニル)−プロパン、2,2−ジ−(4−アミノシクロヘキシル)プロパンまたは1,5−ジアミノ−2−メチル−ペンタンが適している。
【0018】
好ましいポリアミドは、ポリヘキサメチレンアジピン酸アミド、ポリヘキサメチレンセバシン酸アミドおよびポリカプロラクタムならびに殊にカプロラクタム単位5〜95質量%の割合を有するコポリアミド6/66(例えば、BASF SE社のUltramid(登録商標)C31)である。
【0019】
更に、適当なポリアミドは、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第10313681号明細書、欧州特許出願公開第1198491号明細書および欧州特許第922065号明細書に記載されているように、ω−アミノアルキルニトリル、例えばアミノカプロニトリル(PA 6)およびアジポニトリルとヘキサメチレンジアミン(PA 66)とから、所謂直接重合によって水の存在で得ることができる。
【0020】
更に、なお例えば1,4−ジアミノブタンをアジピン酸と高められた温度で縮合させることによって得られるポリアミドが挙げられる(ポリアミド4,6)。前記構造のポリアミドの製造法は、例えば欧州特許出願公開第38094号明細書、欧州特許出願公開第38582号明細書および欧州特許出願公開第39524号明細書に記載されている。
【0021】
さらに、前記のモノマーの2つまたはそれ以上の共重合によって得ることができるポリアミド、または複数のポリアミドの混合物も適しており、その際に混合比は任意である。ポリアミド 66と別のポリアミド、殊にコポリアミド 6/66との混合物は、特に好ましい。
【0022】
さらに、このような部分芳香族コポリアミド、例えばPA 6/6TおよびPA 66/6Tが特に有利であることが判明しており、それらのトリアミン含量は0.5質量%未満、好ましくは0.3質量%未満である(欧州特許出願公開第299444号明細書参照)。更に、高耐熱性ポリアミドは、欧州特許出願公開第1994075号明細書の記載から公知である(PA 6T/6I/MXD6)。
【0023】
低いトリアミン含量を有する、有利に部分芳香族のコポリアミドの製造は、欧州特許出願公開第129195号明細書および欧州特許出願公開第129196号明細書に記載の方法により行なうことができる。
【0024】
次のリストは、総括的なものではないが、本発明の範囲内で記載されたポリアミドA)および他のポリアミドA)ならびに存在するモノマーを含む。
【0025】
ABポリマー:
PA4 ピロリドン
PA6 ε−カプロラクタム
PA7 エタノラクタム
PA8 カプリルラクタム
PA9 9−アミノペラルゴン酸
PA11 11−アミノウンデカン酸、
PA12 ラウリンラクタム
AA/BBポリマー
PA46 テトラメチレンジアミン、アジピン酸
PA66 ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
PA69 ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸
PA610 ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸
PA612 ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸
PA613 ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA1212 1,12−ドデカンジアミン、デカンジカルボン酸
PA1313 1,13−ジアミノトリデカン、ウンデカンジカルボン酸
PA6T ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PAMXD6 m−キシリレンジアミン、アジピン酸
PA9 T 1,9−ノナンジアミン、アジピン酸
PA6I ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸
PA 6−3−T トリメチルヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA 6/6T (PA 6およびPA 6T参照)
PA 6/66 (PA 6およびPA 66参照)
PA 6/12 (PA 6およびPA 12参照)
PA 66/6/610 (PA 66、PA 6およびPA 610参照)
PA 6I/6T (PA 6IおよびPA 6T参照)
PA PACM 12 ジアミノジシクロヘキシルメタン、ラウリンラクタム、
PA 6I/6T/PACM 例えば、PA 6I/6T+ジアミノジシクロヘキシルメタン、
PA 12/MACMI ラウリンラクタム、ジメチル−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソフタル酸
PA 12/MACMT ラウリンラクタム、ジメチル−ジアミノジシクロヘキシルメタン、テレフタル酸
PA PDA−T フェニレンジアミン、テレフタル酸。
【0026】
成分B)として、本発明による成形材料は、鉄ペンタカルボニルの熱分解によって得られる、最大10μm(d50値)の粒度(粒径とも呼称される)を有する鉄粉末を0.001〜20質量%、特に0.05〜10質量%、殊に0.1〜5質量%含有する。
【0027】
鉄は、多数の同素体変化で存在する:
1.α−Fe(フェライト)は、体心立方格子を形成し、磁化可能であり、殆ど炭素を溶解せず、928℃まで純粋な鉄の形で存在する。このα−Fe(フェライト)は、770℃(キュリー温度)で強磁性の性質を失い、常磁性になり;770〜928℃の温度範囲内の鉄は、β−Feとも呼称される。普通の温度および少なくとも13000MPaの圧力でα−Feは、約0.20cm3/molの体積減少下でε−Feに移行し、この場合密度は、(20000MPaで)7.85から9.1へ上昇する。
2.γ−Fe(オーステナイト)は、面心立方格子を形成し、非磁性であり、大量の炭素を溶解し、そして928〜1398℃の温度範囲内でのみ観察することができる。
3.δ−Feは、体心立方格子を形成し、そして1398℃と融点1539℃との間で存在する。
【0028】
金属鉄は、一般に銀白色であり、密度7.874(重金属)、融点1539℃、沸点2880℃、比熱(18〜100℃で)約0.5g-1-1、引張強度220〜280N/mm2を有する。前記値は、化学的に純粋な鉄に当てはまる。
【0029】
鉄は、大工業的には鉄鉱石、鉄スラッグ、焙焼された硫化鉄鉱、炉頂粉塵の精錬によって、およびスクラップおよび合金の再溶融によって製造される。
【0030】
本発明による鉄粉末は、特に150℃〜350℃の温度で鉄ペンタカルボニルを熱分解することによって製造される。この場合得られた粒子は、特に球面形、即ち球状を有するかまたは殆ど球状の形(スフェロリチックspheroliticとも呼称される)を有する。
【0031】
好ましい鉄粉末は、次に記載したような粒度分布(粒径分布)を有し、この場合粒度分布は、レーザー回折により、高度に希釈された水性懸濁液中で(例えば、Beckmann LS13320機器を用いて)測定される。場合によっては、以下記載される粒度(および分布)は、微粉砕および/または篩別によって調節されることができる。
【0032】
この場合、dxx=粒子の全体積XX%は、前記値より小さいことを意味する。
50値:最大10μm、特に1.6〜8、殊に2.9〜7.5μm、特に有利に3.4〜5.2μm。
10値:特に1〜5μm、殊に1〜3、特に有利に1.4〜2.7μm。
90値:特に3〜35μm、殊に3〜12、特に有利に6.4〜9.2μm。
【0033】
好ましくは、成分B)は、97〜99.8g/100g、特に97.5〜99.6g/100gの鉄含量を有する。さらなる金属の含量は、特に1000ppm未満、殊に100ppm未満、特に有利に10ppm未満である。
【0034】
Fe含量は、通常、赤外分光分析法によって測定される。
【0035】
C含量は、特に0.01〜1.2g/100g、有利に0.05〜1.1g/100g、殊に0.4〜1.1g/100gである。このC含量は、好ましい鉄粉末の際に、熱分解に引き続いて水素で還元されないようなものに相当する。
【0036】
C含量は、通常、ASTM E 1019に準拠して酸素流中の試料量を燃焼させ、引続き生じたCO2ガスをIR検出する(Juwe社のLeco CS230またはCS−mat 6250を用いて)ことによって測定される。
【0037】
窒素含量は、特に最大1.5g/100g、有利に0.01〜1.2g/100gである。
【0038】
酸素含量は、特に最大1.3g/100g、有利に0.3〜0.65g/100gである。
【0039】
NおよびOの測定は、試料をグラファイト炉中で約2100℃に加熱することによって行なわれる。この場合、試料中で得られた酸素は、COに変換され、IR検出器により測定される。N含有化合物から反応条件下で遊離されるNは、キャリヤーガスと一緒に搬出され、WLD(熱伝導率検出器/TC)を用いて検出され、そして把握される(ASTM E1019に準拠した2つの方法)。
【0040】
タップ密度は、特に2.5g/cm3、殊に2.7〜4.4g/cm3である。このタップ密度は、一般的に、コンパクト化を達成させるために、粉末を例えば容器中に充填し、そして振盪させた場合の密度である。更に、好ましい鉄粉末は、燐酸鉄、亜燐酸鉄またはSiO2で表面被覆されていてよい。
【0041】
DIN ISO 9277によるBET表面積は、特に0.1〜10m2/g、殊に0.1〜5m2/g、有利に0.2〜1m2/g、殊に0.4〜1m2/gである。
【0042】
鉄粒子の特に良好な分布を達成させるために、ポリマーを用いるバッチ法を使用することができる。このために、ポリマー、例えばポリオレフィン、ポリエステルまたはポリアミドが適しており、この場合には、特にバッチポリマーは、成分A)と同一である。ポリマー中の鉄の質量割合は、一般的に15〜80質量%、特に20〜40質量%である。
【0043】
成分C)として、本発明による成形材料は、窒素含有化合物または燐含有化合物またはP−N縮合体またはこれらの混合物の群から選択されたハロゲン不含の難燃剤1〜40質量%、有利に2〜30質量%、特に有利に5〜20質量%を含有する。
【0044】
本発明によれば(成分C)有利に適したメラミンシアヌラートは、有利に等モル量のメラミン(式V)およびシアヌル酸またはイソシアヌル酸(式IaおよびIb)からなる反応生成物である。
【0045】
【化1】

【0046】
前記化合物は、例えば、出発化合物の水溶液を90〜100℃で反応させることによって得られる。この市販の製品は、平均粒度d501.5〜7μmを有する白色粉体である。
【0047】
更に、適した化合物(しばしば塩またはアダクトとも呼称される)は、メラミン、メラミンボレート、−オキサレート、−第一級ホスフェート、−第二級ホスフェート、および−第二級ピロホスフェート、ネオペンチルグリコールホウ酸メラミンならびにポリマー状メラミンホスフェート(CAS番号56386−64−2)である。
【0048】
適したグアニジン塩は、次の通りである。
【0049】
CAS番号
G−カーボネート 593−85−1
G−第一級シアヌレート 70285−19−7
G−第一級ホスフェート 5423−22−3
G−第二級ホスフェート 5423−23−4
G−第一級スルフェート 646−34−4
G−第二級スルフェート 594−14−9
ペンタエリトリットホウ酸グアニジン N.A.
ネオペンチルグルコールホウ酸グアニジン N.A.
ならびに尿素ホスフェートグリーン(Harnstoffphosphat
gruen) 4861−19−2
尿素シアヌレート 57517−11−0
アンメリン 645−92−1
アンメリド 645−93−2
メレム 1502−47−2
メロン 32518−77−7
メラム 3576−88−3
【0050】
本発明の範囲内で化合物とは、例えばベンゾグアナミン自体およびこのアダクトまたは塩ならびに窒素で置換された、前記化合物の誘導体およびこのアダクトまたは塩であることも理解されたい。
【0051】
更に、nが約200〜1000、有利に600〜800であるポリ燐酸アンモニウム(NH4PO3n、および式(II)
【化2】

で示されるトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(THEIC)またはこのイソシアヌレートと、場合により混合物で互いに存在していてよい芳香族カルボン酸Ar(COOH)mとの反応生成物が適しており、この場合Arは、単核、二核または三核の芳香族六環系であり、およびmは、2、3または4である。
【0052】
適したカルボン酸は、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,3,5−ベンゾトリカルボン酸、1,2,4−ベンゾトリカルボン酸、ピロメリット酸、メロファン酸、プレーニット(Prehnit)酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、ナフタレンジカルボン酸およびアントラセンカルボン酸である。
【0053】
この製造は、欧州特許出願公開第584567号明細書に記載の方法により、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートと、酸、このアルキルエステルまたはこのハロゲン化物とを反応させることによって行なわれる。
【0054】
この種の反応生成物は、架橋されていてもよい、モノマーおよびオリゴマーのエステルの混合物を製出する。このオリゴマー化度は、通常、2〜約100、有利に2〜20である。好ましくは、THEICおよび/またはこの反応生成物と、燐含有窒素化合物、特に(NH4PO3nまたはメラミンピロホスフェートまたはポリマーのメラミンホスフェートとの混合物が使用される。この混合比、例えば(NH4PO3n対THEICの混合比は、この種の成分B)の混合物に対して、特に90〜50:10〜50質量%、殊に80〜50:50〜20質量%である。
【0055】
更に、式(III)
【化3】

[式中、R、R’は、1〜10個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状アルキル基、有利に水素である]で示されるベンゾグアナミン化合物および殊にこの化合物と燐酸、硼酸および/またはピロリン酸とのアダクトが適している。
【0056】
更に、式(IV)
【化4】

[式中、R、R’は、式III中に記載された意味を有する]で示されるアラントイン化合物ならびにこの化合物と燐酸、硼酸および/またはピロリン酸との塩ならびに式(V)のグリコルリルまたはこのグリコルリルと上記酸
【化5】

[この場合Rは、式(III)中に記載の意味を有する]との塩は、好ましい。
【0057】
適した生成物は市販されているか、またはドイツ連邦共和国特許出願公開第19614424号明細書の記載により得ることができる。
【0058】
本発明により使用可能なシアングアニジン(式VI)は、例えば、石灰窒素(カルシウムシアナミド)と炭酸との反応により得られ、その際この生じるシアナミドは、pH9〜10でシアングアニジンへと二量体化する。
【0059】
【化6】

【0060】
市場で入手可能な製品は、209℃〜211℃の融点を有する白色粉末である。
【0061】
燐含有無機化合物として、式(I)のホスフィン酸塩および/または式(II)のジホスフィン酸塩
【化7】

[式中、置換基は、次の意味を有する:
1、R2は、水素、直鎖状または分枝鎖状のC1〜C6−アルキル、特にC1〜C4−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第三ブチル、n−ペンチル;フェニルであり;この場合基R1またはR2の少なくとも1つ、殊にR1およびR2は、水素であり;
3は、直鎖状または分枝鎖状のC1〜C10−アルキレン、例えばメチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、tert−ブチレン、n−ペンチレン、n−オクチレン、n−ドデシレン;アリーレン、例えばフェニレン、ナフチレン;
アルキルアリーレン、例えばメチルフェニレン、エチルフェニレン、第三ブチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレン、第三ブチルナフチレン:
アリールアルキレン、例えばフェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレン、フェニルブチレンであり;
Mは、アルカリ土類金属、アルカリ金属、Al、Zn、Fe、ホウ素であり;
mは、1〜3の整数であり;
nは、1〜3の整数であり、および
xは、1または2である]、および/またはこれらのポリマーは、好ましい。
【0062】
1およびR2が水素であり、MがZnまたはAlであるような式IIの化合物は、特に好ましく、とりわけ好ましいのは、ホスフィン酸カルシウムである。
【0063】
この種の生成物は、市場で、例えばカルシウムホスフィネートとして入手可能である。
【0064】
基R1またはR2が水素を表わすような式IまたはIIの適した塩は、例えばフェニルホスフィン酸の塩であり、この場合これらのNa−および/またはCa塩が好ましい。
【0065】
特に有利には、R1およびR2がエチル基であり、Mが特にZnまたはCaであるような式IIの化合物であり、特に好ましいのは、Al−ジエチルホスフィネートである。殊に、Al−ジエチルホスフィネートは、メラミンシアヌレートおよび/またはメラミンポリホスフェートとの混合物(3:1〜1.5:1)で難燃剤系として好ましい。この難燃剤系は、特に硼酸塩を相乗剤として(上記の混合物100質量%に対して)10質量%まで、特に6質量%まで含有する。
【0066】
適した金属硼酸塩は、周期律表の第1〜3主族ならびに第1〜8副族の金属の硼酸塩であり、この場合一般式
2Zn0.323xH2
[式中、xは、3.3〜3.7である]で示される無水硼酸亜鉛または硼酸亜鉛が好ましい。この硼酸亜鉛は、本質的に部分芳香族ポリアミドの高い加工温度の際に安定性であり、非本質的にのみ水和水の脱離傾向を有する。それに応じて、高い割合の水和水を有する硼酸亜鉛は、一般的に相乗剤としてあまり適当ではない。金属硼酸塩と金属酸化物との混合物が使用されてもよく、この場合この混合比は任意である。
【0067】
成分C)の燐含有化合物とは、有利には、有機及び無機の燐含有化合物であり、この際この燐は、−3〜+5の原子価状態を有する。原子価状態とは、概念"酸化状態"であることを理解されたく、例えばこれは、教科書Anorganischen Chemie,A.F.HollemannおよびE.Wiberg,Walter des Gruyter und Co.(1964,第57版ないし第70版),第166〜177頁に記載されている。原子価状態−3〜+5の燐化合物は、ホスフィン(−3)、ジホスフィン(−2)、ホスフィンオキシド(−1)、燐原子(+0)、次亜燐酸(+1)、亜燐酸(+3)、次燐酸(hypodiphosphoric acid)(+4)および燐酸(+5)から誘導される。
【0068】
多数の燐含有化合物から、いくつかの例のみを言及する。
【0069】
原子価状態−3を有するホスフィン分類の燐化合物のための例は、芳香族ホスフィン、例えばトリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリノニルホスフィン、トリナフチルホスフィンおよびトリスノニルフェニルホスフィン等である。特に好適なのは、トリフェニルホスフィンである。
【0070】
原子価状態−2を有するジホスフィン分類の燐含有化合物のための例は、テトラフェニルジホスフィン、テトラナフチルジホスフィン等である。特に好適なのは、テトラナフチルジホスフィンである。
【0071】
原子価状態−1の燐化合物は、ホスフィンオキシドから誘導される。
【0072】
一般式(III)
【化8】

[式中、R1、R2およびR3は、8〜40個のC原子を有する同一かまたは異なるアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはシクロアルキル基である]で示されるホスフィンオキシドが適している。
【0073】
ホスフィンオキシドのための例は、トリフェニルホスフィンオキシド、トリトリルホスフィンオキシド、トリスノニルフェニルホスフィンオキシド、トリシクロヘキシルホスフィンオキシド、トリス−(n−ブチル)−ホスフィンオキシド、トリス−(n−ヘキシル)−ホスフィンオキシド、トリス−(n−オクチル)−ホスフィンオキシド、トリス−(シアノエチル)−ホスフィンオキシド、ベンジルビス−(シクロヘキシル)−ホスフィンオキシド、ベンジルビスフェニルホスフィンオキシド、フェニルビス−(n−ヘキシル)−ホスフィンオキシドである。更に、好ましいのは、ホスフィンとアルデヒドとからの、特にt−ブチルホスフィンとグリオキサールとからの酸化した反応生成物である。トリフェニル−ホスフィンオキシド、トリシクロヘキシルホスフィンオキシド、トリス−(n−オクチル)−ホスフィンオキシドおよびトリス−(シアノエチル)ホスフィンオキシドは、特に有利に使用される。
【0074】
同様に適しているのは、トリフェニル−ホスフィンスルフィドおよびホスフィンオキシドの上記したような前記トリフェニル−ホスフィンスルフィドの誘導体である。
【0075】
原子価状態+0の燐は、原子燐である。赤燐および黒燐がこれに該当する。有利には、赤燐である。
【0076】
"酸化状態"+1の燐化合物は、例えば純粋に有機の性質のハイポホスフィット(Hypophosphite)、例えば有機ハイポホスフィット、例えばセルロースハイポホスフィットエステル、次亜燐酸とジオール、例えば1,10−ドデシルジオールとのエステルである。また、置換されたホスフィン酸およびこの無水物、例えばジフェニルホスフィン酸が使用されてよい。更に、ジフェニルホスフィン、ジ−p−トリルホスフィン酸、ジクレシルホスフィン酸無水物がこれに該当する。しかしながら、化合物、例えばヒドロキノン−、エチレングリコール−、プロピレングリコール−ビス(ジフェニルホスフィン酸)−エステル等もこれに該当する。更に適しているのは、アリール(アルキル)ホスフィン酸アミド、例えばジフェニルホスフィン酸−ジメチルアミドおよびスルホンアミドアリール(アルキル)ホスフィン酸誘導体、例えばp−トリルスルホンアミドジフェニルホスフィン酸である。ヒドロキノン−およびエチレングリコール−ビス−(ジフェニルホスフィン酸)エステルおよびヒドロキノンのビスジフェニルホスフィネートが有利に使用される。
【0077】
酸化状態+3の燐化合物は、亜燐酸から誘導される。ペンタエリトリット、ネオペンチルグリコールまたはピロカテコールから誘導される環式ホスホネート、例えば
【化9】

[この場合、Rは、C1〜C4アルキル基、有利にメチル基であり、xは、0または1である]が適している(Albright & Wilson社のAmgard(登録商標)P 45)。
【0078】
更に、原子価状態+3の燐は、トリアリール(アルキル)ホスフィット、例えばトリフェニルホスフィット、トリス(4−デシルフェニル)ホスフィット、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィットまたはフェニルジデシルホスフィット等中に含有されている。しかし、またペンタエリトリット、ネオペンチルグリコールまたはピロカテコールから誘導されるジホスフィット、例えばプロピレングリコール−1,2−ビス(ジホスフィット)または環式ホスフィットがこれに該当する。
【0079】
メチルネオペンチルグリコールホスホネートおよび−ホスフィットならびにジメチルペンタエリトリットジホスホネートおよび−ホスフィットは、特に有利である。
【0080】
酸化状態+4を有する燐化合物として、特にハイポジホスフェート(Hypodiphosphat)、例えばテトラフェニルハイポジホスフェートまたはビスネオペンチルハイポホスフェートがこれに該当する。
【0081】
酸化状態+5を有する燐化合物として、特にアルキル置換およびアリール置換されたホスフェートがこれに該当する。例は、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニル−エチルヒドロゲンホスフェート、フェニル−ビス(3,5,5−トリメチルヘキシル)ホスフェート、エチルジフェニル−ホスフェート、2−エチルヘキシルジ(トリル)ホスフェート、ジフェニルヒドロゲンホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)−p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)フェニルホスフェート、ジ(ノニル)フェニル−ホスフェート、フェニルメチルヒドロゲンホスフェート、ジ(ドデシル)−p−トリルホスフェート、p−トリル−ビス(2,5,5−トリメチルヘキシル)ホスフェートまたは2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートである。特に好適なのは、全ての基がアリールオキシ基である燐化合物である。特に好適なのは、トリフェニルホスフェートおよびレソルシノール−ビス−(ジフェニルホスフェート)および一般式Vの前記化合物の核置換された誘導体である:
【化10】

【0082】
上記式中、置換基は、次の意味を有する:
4〜R7は、1〜4個のC原子を有するアルキル基、有利にメチルで置換されていてよい、6〜20個のC原子を有する芳香族基、有利にフェニル基であり、
8は、二価フェノール基、有利に
【化11】

であり、nは、0.1〜100、有利に0.5〜50、殊に0.8〜10、特に有利に1〜5の平均値である。
【0083】
商標Fyroflex(登録商標)またはFyrol(登録商標) −RDP(Akzo)ならびにCR 733−S(Daihachi)で市販されているRPD製品は、製造方法により条件付けられて、約2.5%のトリフェニルホスフェートならびに約12.5%オリゴマーの割合を有する約85%のRDP(n=1)からなる混合物であり、この場合、このオリゴマー化度は大抵10未満である。
【0084】
更に、環式ホスフェートが使用されてもよい。この場合、特に好適なのは、ジフェニルペンタエリトリットジホスフェートおよびフェニルネオペンチルホスフェートである。
【0085】
上記で挙げた低分子量燐化合物の他にさらに、オリゴマーおよびポリマーの燐化合物も該当する。
【0086】
ポリマー鎖中に燐を有する、このようなポリマーの、ハロゲン不含の有機燐化合物は、例えば五環系の、不飽和のホスフィン二ハロゲン化物の製造の際に生じ、これは例えば、ドイツ連邦共和国特許出願公開第2036173号明細書中に記載されている。ジメチルホルムアミド中で蒸気圧浸透法により測定された、ポリホスホリンオキシド(Polyphospholinoxide)の分子量は、500〜7000の範囲内、有利に700〜2000の範囲内にある。
【0087】
この場合、燐は、酸化状態−1を有する。
【0088】
更に、アリール(アルキル)ホスフィン酸の無機の配位高分子、例えばポリ−β−ナトリウム(I)−メチルフェニルホスフィネートが使用されてよい。この化合物の製造は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第3140520号明細書中に記載されている。この燐は、酸化数+1を有する。
【0089】
更に、このようなハロゲン不含のポリマーの燐化合物は、ホスホン酸クロリド、例えばフェニル−、メチル−、プロピル−、スチレン−、およびビニルホスホン酸ジクロリドと、二官能性フェノール、例えばヒドロキノン、レゾルシン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールAとの反応によって生じてよい。
【0090】
本発明による成形材料中に含有されていてよい更なるハロゲン不含のポリマーの燐化合物は、オキシ三塩化燐または燐酸エステルジクロリドと、一官能性フェノール、二官能性フェノールおよび三官能性フェノールおよび別のヒドロキシル基含有化合物からなる混合物との反応によって製造される(Houben−Weyl−Mueller,Thieme−Verlag Stuttgart,Organische Phosphorverbindungen 第II部(1963)参照)。更に、ポリマーのホスホネートは、ホスホン酸エステルと二官能性フェノールとのエステル交換反応(ドイツ連邦共和国特許出願公開第2925208号明細書参照)によって、またはホスホン酸エステルとジアミンまたはジアミドまたはヒドラジドとの反応(米国特許第4403075号明細書参照)によって製造されてよい。しかしながら、無機のポリ(アンモニウムホスフェート)も該当する。
【0091】
欧州特許第8486号明細書に記載のオリゴマーのペンタエリトリットホスフィット、−ホスフェート、および−ホスホネート、例えばMobil Antiblaze(登録商標)19(Mobil Oil社の登録商標)が使用されてもよい。
【0092】
更に、一般式VI
【化12】

[式中、置換基は、次の意味を有する:
1〜R20は、互いに独立して、水素、C原子数6までの直鎖状または分枝鎖状アルキル基であり、
nは、0.5〜50の平均の値であり、および
Xは、単結合、C=O、S、SO2、C(CH32である]で示される燐化合物は、好ましい。
【0093】
有利な化合物C)は、R1〜R20が互いに独立して、水素および/またはメチル基を表わす化合物である。R1〜R20が互いに独立してメチル基を表わす場合には、ホスフェート基の酸素に対してオルト位にある基R1、R5、R6、R10、R11、R15、R16、R20が、少なくとも1個のメチル基である化合物C)が有利である。更に有利には、芳香環1個当たり1つのメチル基が、特にオルト位に存在し、かつその別の基が水素を表わす化合物C)である。
【0094】
置換基としてSO2およびSは、殊に有利であり、ならびにとりわけ有利には、上記式(VI)中のXのためのC(CH32である。
【0095】
nは、特に平均の値として0.5〜5、特に0.7〜2、特に約1である。
【0096】
平均の値としてのnの記述は、上記した化合物の製造方法によって生じ、この結果オリゴマー化度は、大抵は10未満であり、かつトリフェニルホスフェートに関する少ない割合(大抵は5質量%未満)が含有されており、その際これはバッチ毎に相違している。化合物C)は、Daihachi社のCR−741として市販されている。
【0097】
更に、P−N縮合体が適し、特に、WO 2002/96976に記載されているP−N縮合体が適している。
【0098】
特に好ましい組合せ物C)は、燐含有化合物と窒素含有化合物との混合物であり、この場合、1:10〜10:1、有利に1:9〜9:1の混合比が有利である。
【0099】
本発明による成形材料は、成分D)として他の添加剤を70質量%まで、特に50質量%まで含有する。
【0100】
繊維状または粒子状の充填剤D1)として、炭素繊維、ガラス繊維、ガラス球、アモルファスシリカ、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、白亜、粉末状石英、雲母、硫酸バリウムおよび長石が挙げられ、これらは、1〜50質量%、殊に1〜40質量%、特に有利に10〜40質量%の量で使用される。
【0101】
有利な繊維状充填剤としては、炭素繊維、アラミド繊維およびチタン酸カリウム繊維が挙げられ、この場合Eガラスであるガラス繊維は、特に有利である。
【0102】
このガラス繊維は、ロービングまたはチョップトガラス(Schnittglas)として市販の形で使用されてよい。
【0103】
繊維状充填剤は、熱可塑性樹脂とのより良好な相容性のためのシラン化合物で表面前処理されていてよい。
【0104】
適当なシラン化合物は、一般式
(X−(CH2nk−Si−(O−Cm2m+14-k
[式中、置換基は、次の意味を有する:
Xは、
【化13】

であり、
nは、2〜10、有利に3〜4の整数であり、
mは、1〜5、有利に1〜2の整数であり、
kは、1〜3、有利に1の整数である]で示されるかかるシラン化合物である。
【0105】
有利なシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシランならびに置換基Xとしてグリシジル基を含有する相応するシランである。
【0106】
シラン化合物は、一般に0.01〜2質量%、特に0.025〜1.0質量%、殊に0.05〜0.5質量%(E)に対して)の量で表面被覆のために使用される。
【0107】
針状の鉱物質の充填剤も適当である。
【0108】
針状の鉱物質の充填剤は、本発明の範囲内で著しく顕著な針状特性を有する鉱物質の充填剤である。例として、針状の珪灰石が挙げられる。特に、この鉱物は、8:1〜35:1、有利に8:1〜11:1のL/D(長さ直径)比を有する。鉱物質の充填剤は、場合によっては前記のシラン化合物で前処理されていてよいが;しかし前処理は、必ずしも必要ではない。
【0109】
他の充填剤として、カオリン、焼成カオリン、珪灰石、タルクおよび白亜が挙げられ、ならびに付加的に小板状または針状のナノ充填剤は、有利に0.1〜10%の量で使用される。このために、好ましくは、ベーム石、ベントナイト、モンモリロン石、バーミキュライト、ヘクトライトおよびラポナイトが使用される。有機結合剤との小板状のナノ充填剤の良好な相容性を得るために、小板状のナノ充填剤は、公知技術水準により有機的に変性される。本発明によるナノ複合材への小板状または針状のナノ充填剤の添加は、機械的強度のさらなる上昇を生じる。
【0110】
本発明による成形材料は、成分D2)として滑剤を0.05〜3質量%、特に0.1〜1.5質量%、殊に0.1〜1質量%含有することができる。
【0111】
好ましいのは、10〜44個のC原子%、特に12〜44個のC原子を有する脂肪酸のAl塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、またはエステルまたはアミドである。
【0112】
金属イオンは、特にアルカリ土類金属およびAlであり、この場合CaまたはMgは、特に有利である。
【0113】
好ましい金属塩は、Caステアリン酸塩およびCaモンタン酸塩ならびにAlステアリン酸塩およびAlジステアレートとAlトリステアレートとの混合物である(Baerlocher社のAlugel(登録商標)30DF)。
【0114】
種々の塩の混合物が使用されてもよく、この場合、混合比は、任意である。
【0115】
カルボン酸は、一価または二価であってもよい。例として、ペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マルガリン酸、ドデカン二酸、ベヘン酸および特に有利にステアリン酸、カプリン酸ならびにモンタン酸(30〜40個のC原子を有する脂肪酸の混合物)が挙げられる。
【0116】
脂肪族アルコールは、1〜4価であってよい。アルコールの例は、n−ブタノール、n−オクタノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリットであり、この場合には、グリセリンおよびペンタエリトリットが有利である。
【0117】
脂肪族アミンは、1〜3価であってよい。このための例は、ステアリルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジ(6−アミノヘキシル)アミンであり、この場合には、エチレンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンが特に有利である。好ましいエステルまたはアミドは、相応するグリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、エチレンジアミンジステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリントリラウレート、グリセリンモノベヘネートおよびペンタエリトリットテトラステアレートである。
【0118】
種々のエステルまたはアミドの混合物またはエステルとアミドを組合せて使用してよく、この場合混合比は、任意である。
【0119】
本発明による成形材料は、成分D3)として、Cu安定剤、特にCu(I)ハロゲン化物、殊にこれとアルカリ金属ハロゲン化物、特にKIとの殊に比1:4での混合物、または立体障害フェノールまたはその混合物0.05〜3質量%、殊に0.1〜1.5質量%を含有することができる。
【0120】
一価銅の塩として、特に酢酸銅(I)、塩化銅(I)、臭化銅(I)およびヨウ化銅(I)がこれに該当する。前記の一価銅の塩は、ポリアミドに対して銅を5〜500ppm、特に10〜250ppm含有している。
【0121】
好ましい性質は、殊に、銅が分子状の分布でポリアミド中に存在する場合に得られる。これは、成形材料に、ポリアミド、一価銅の塩およびアルカリ金属ハロゲン化物を均一な固溶体の形で含有する濃厚物が添加される場合に達成される。典型的な濃厚物は、例えばポリアミド79〜95質量%と、ヨウ化銅または臭化銅とヨウ化カリウムとの混合物21〜5質量%とからなる。均一な固溶体中の銅の濃度は、有利に固溶体の全質量に対して0.3〜3質量%、殊に0.5〜2質量%であり、ヨウ化銅(I)とヨウ化カリウムとのモル比は、1〜11.5、特に1〜5である。
【0122】
前記濃厚物に適したポリアミドは、ホモポリアミドおよびコポリアミド、殊にポリアミド6およびポリアミド6.6である。
【0123】
立体障害フェノールD3)として、原理的にフェノール環に少なくとも1個の粗大な基を有する、フェノール構造を有する全ての化合物が適している。
【0124】
特に、例えば式
【化14】

〔式中、
1およびR2は、アルキル基、置換アルキル基または置換トリアゾールを表わし、この場合基R1およびR2は、同一でも異なっていてもよく、およびR3は、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基または置換アミノ基を表わす〕で示される化合物がこれに該当する。
【0125】
記載された種類の酸化防止剤は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第2702661号明細書(米国特許第4360617号明細書)中に記載されている。
【0126】
好ましい立体障害フェノールのさらなる群は、置換ベンゼンカルボン酸、殊に置換ベンゼンプロピオン酸に由来する。
【0127】
前記種類からの特に好ましい化合物は、式
【化15】

〔式中、R4、R5、R7およびR8は、互いに独立して、それらの側で置換されていてよいC1〜C8アルキルであり(その中の少なくとも1個は、粗大な基である)、R6は、主鎖中にC−O結合を有していてもよい、1〜10個のC原子を有する二価脂肪族基である〕で示される化合物である。
【0128】
前記式に相当する好ましい化合物は、
【化16】

(Ciba−Geigy社のIrganox(登録商標)245)
【化17】

(Ciba−Geigy社のIrganox(登録商標)259)である。
【0129】
例示的に全体的に立体障害フェノールとして次のものが挙げられる:
2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]、ペンタエリトリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート]、ジステアリル−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファビシクロ−[2.2.2]オクト−4−イル−メチル−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル−3,5−ジステアリル−チオトリアジルアミン、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,6−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジ−第三ブチルフェノール)、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル−ジメチルアミン。
【0130】
2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−第三ブチルフェニル)、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート(Irganox(登録商標)259)、ペンタエリトリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]ならびにN,N’−ヘキサメチレン−ビス−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド(Irganox(登録商標)1098)および特に好適であるCiba Geigy社の前記Irganox(登録商標)245は、特に有効であることが証明され、したがって有利に使用される。
【0131】
単独で、または混合物として使用されてよい酸化防止剤D)は、成形材料A)〜D)の全質量に対して0.05〜3質量%、特に0.1〜1.5質量%、殊に0.1〜1質量%の量で含有されている。
【0132】
多くの場合に、フェノール系ヒドロキシ基に対してオルト位で立体障害基1個以下を有する立体障害フェノールは、殊に長時間に亘っての拡散光中での貯蔵の際に色安定性を評価した場合、特に好ましいことが証明された。
【0133】
本発明による成形材料は、成分D4)としてニグロシンを0.05〜5質量%、特に0.1〜2質量%、殊に0.25〜1質量%含有していてよい。
【0134】
ニグロシンは、一般的にウールの染色およびウールの捺染、シルクの黒色染色、皮革、靴クリーム、ワニス、プラスチック、焼付ラッカー、インキおよび類似物の着色に使用される、インジュリンに関連した、種々の実施態様(水溶性、油可溶性、スピリット可溶性)の黒色または灰色のフェナジン染料(アジン染料)の群であり、ならびに鏡検法における染料として使用される。
【0135】
ニグロシンは、工業的にニトロベンゼン、アニリンおよび塩酸アニリンを金属鉄およびFeCと一緒に加熱することによって取得される(この名称は、ラテン語ニゲル=黒に由来する)。
【0136】
成分D4は、遊離塩基として使用されることができるか、または塩(例えば、塩酸塩)として使用されることもできる。
【0137】
ニグロシンについてのさらなる詳細は、例えば電子工学事典のRoempp Online,Version 2.8,Thieme−Verlag,2006,見出し語"Nigrosin"から確認することができる。
【0138】
更に、通常の添加剤D)は、例えば25質量%まで、特に20質量%までの量でのゴム弾性ポリマーである(しばしば、耐衝撃変性剤、エラストマーまたはゴムとも呼称される)。
【0139】
この場合には、これは特に一般的に、有利には次のモノマー少なくとも2つから形成されているコポリマーである:エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブテン、イソプレン、クロロプレン、ビニルアセテート、スチレン、アクリルニトリルおよびアルコール成分中の1〜18個のC原子を有するアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル。
【0140】
この種のポリマーは、例えばHouben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,第14/1巻(Georg−Thieme−Verlag,Stuttgart,1961),第392〜406頁およびC.B.Bucknallの研究論文,"Toughened Plastics"(Applied Science Publisher,London,1977)に記載されている。
【0141】
以下、このようなエラストマーの若干の好ましい種類を記載する。
【0142】
このようなエラストマーの有利な種類は、いわゆるエチレン−プロピレン(EPM)またはエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴムである。
【0143】
EPMゴムは、一般的に、事実上二重結合をもはや有しないのに対して、EPDMゴムは、二重結合1〜20個/炭素原子100個を有していてよい。
【0144】
EPDMゴムのためのジエン−モノマーとして、例えば共役結合されたジエン、例えばイソプレンおよびブタジエン、5〜25個のC原子を有する共役結合されていないジエン、例えばペンタ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,5−ジエン、2,5−ジメチルヘキサ−1,5−ジエンおよびオクタ−1,4−ジエン、環式ジエン、例えばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエンおよびジシクロペンタジエンならびにアルケニルノルボルネン、例えば5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネンおよびトリシクロジエン、例えば3−メチル−トリシクロ(5.2.1.0.2.6)−3,8−デカジエンまたはその混合物が挙げられる。ヘキサ−1,5−ジエン、5−エチリデンノルボルネンおよびジシクロペンタジエンが好ましい。EPDMゴムのジエン含量は、ゴムの全質量に対して、好ましくは0.5〜50質量%、特に1〜8質量%である。
【0145】
EPMゴムもしくはEPDMゴムは、特に、複数の反応性カルボン酸またはこれらの誘導体でグラフトされていてもよい。この場合には、例えばアクリル酸、メタクリル酸およびこの誘導体、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、ならびに無水マレイン酸が挙げられる。
【0146】
好ましいゴムの別の群は、エチレンと、アクリル酸および/またはメタクリル酸および/またはこれらの酸のエステルとのコポリマーである。付加的に、ゴムは、まだなおジカルボン酸、例えばマレイン酸およびフマル酸またはこれらの酸の誘導体、例えばエステルおよび無水物、および/またはエポキシ基含有モノマーを含有していてよい。前記のジカルボン酸誘導体またはエポキシ基含有モノマーは、特に一般式IまたはIIまたはIIIまたはIV
【化18】

〔式中、R1〜R9は、水素または1〜6個のC原子を有するアルキル基を表わし、mは、0〜20の整数であり、gは、0〜10の整数であり、pは、0〜5の整数である〕で示されるジカルボン酸基含有モノマーまたはエポキシ基含有モノマーをモノマー混合物に添加することによってゴム中に組み入れられる。
【0147】
好ましくは、基R1〜R9は水素を表わし、この場合mは0または1を表わし、およびgは1を表わす。相応する化合物は、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、アリルグリシジルエーテルおよびビニルグリシジルエーテルである。
【0148】
式I、IIおよびIVの有利な化合物は、マレイン酸、無水マレイン酸およびアクリル酸および/またはメタクリル酸のエポキシ基含有エステル、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートおよび第三級アルコールとのエステル、例えば第三級ブチルアクリレートである。後者は確かに遊離カルボキシル基を有しないが、しかしそれらの挙動において遊離酸に近く、したがって潜在性カルボキシル基を有するモノマーと呼ばれる。
【0149】
好ましくは、コポリマーは、エチレン50〜98質量%、エポキシ基を有するモノマーおよび/またはメタクリル酸および/または酸無水物基を有するモノマー0.1〜20質量%ならびに(メタ)アクリル酸エステルの残りの量からなる。
【0150】
特に好ましいのは、
エチレン50〜98質量%、殊に55〜95質量%、
グリシジルアクリレートおよび/またはグリシジルメタクリレート、(メタ)アクリル酸および/または無水マレイン酸0.1〜40質量%、殊に0.3〜20質量%、および
n−ブチルアクリレートおよび/または2−エチルヘキシルアクリレート1〜45質量%、殊に5〜40質量%からなるコポリマーである。
【0151】
アクリル酸および/またはメタクリル酸の好ましい別のエステルは、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルおよびイソブチルエステルもしくはt−ブチルエステルである。
【0152】
それと共に、ビニルエステルおよびビニルエーテルは、コモノマーとして使用されてもよい。
【0153】
前記のエチレンコポリマーは、自体公知の方法により、特に高圧および高められた温度下でのランダム共重合によって製造されることができる。相応する方法は一般的に公知である。
【0154】
また、好ましいエラストマーは、乳化重合体であり、この乳化重合体の製造は、例えばBlackleyの研究論文"Emulsion Polymerization"中に記載されている。使用可能な乳化剤および触媒は、自体公知である。
【0155】
原則的に、均質に形成されたエラストマーが使用されてもよいし、殻構造を有するエラストマーが使用されてもよい。殻状の構造は、個々のモノマーの添加順序によって定められ、このポリマーの形態もこの添加順序によって影響を及ぼされる。
【0156】
この場合、エラストマーのゴム部分を製造するためのモノマーとしての代替物として、アクリレート、例えばn−ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレート、相応するメタクリレート、ブタジエンおよびイソプレンならびにこれらの混合物が挙げられる。前記モノマーは、更なるモノマー、例えばスチレン、アクリルニトリル、ビニルエーテルおよび更なるアクリレートまたはメタクリレート、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびプロピルアクリレートと共重合されてよい。
【0157】
エラストマーの軟質相またはゴム相(0℃未満のガラス転移温度を有する)は、コア、外被殻または中間の殻(二殻を上廻る構造を有するエラストマーの場合)であることができ;多殻のエラストマーの場合には、多殻は、ゴム相から形成されていてもよい。
【0158】
ゴム相と共に、まだなお1つ以上の硬質成分(20℃を上廻るガラス転移温度を有する)がエラストマーの構造に関与する場合には、このエラストマーは、一般的に、主要モノマーとしてのスチレン、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレートおよびメチルメタクリレートを重合させることによって製造される。それと共に、この場合には、より少ない含量の他のコモノマーが使用されてもよい。
【0159】
若干の場合には、表面に反応性基を有する乳化重合体を添加することは、好ましいことが判明した。この種の基は、例えばエポキシ基、カルボキシル基、潜在性カルボキシル基、アミノ基またはアミド基ならびに一般式
【化19】

[式中、置換基は、次の意味を有してよい:
10は、水素またはC1〜C4−アルキル基を表わし、
11は、水素、C1〜C8アルキル基またはアリール基、殊にフェニルを表わし、
12は、水素、C1〜C10アルキル基、C6〜C10にアリール基または−OR13を表わし、
13は、場合によりO含有基またはN含有基で置換されていてよいC1〜C8アルキル基またはC6〜C10にアリール基を表わし、
Xは、1つの化学結合、C1〜C10アルキレン基またはC6〜C10にアリーレン基、または
【化20】

Yは、O−Z又はNH−Zを表わし、
Zは、C1〜C10−アルキレン基またはC6〜C12−アリーレン基を表わす]で示されるモノマーを共用することによって導入されてよい官能基である。
【0160】
また、欧州特許出願公開第208187号明細書に記載されているグラフトモノマーは、表面上への反応性基の導入に適している。
【0161】
更なる例としては、更にアクリルアミド、メタクリルアミドおよびアクリル酸またはメタクリル酸の置換されたエステル、例えば(N−t−ブチルアミノ)−エチルメタクリラート、(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリラート、(N,N−ジメチルアミノ)−メチルアクリラートおよび(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリラートが挙げられる。
【0162】
さらに、ゴム相の粒子は、架橋されていてもよい。架橋剤として作用するモノマーは、例えばブタ−1,3−ジエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレートおよびジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレートならびに欧州特許出願公開第50265号明細書中に記載の化合物である。
【0163】
更に、いわゆるグラフト架橋性モノマー(graft−linking monomers)、即ち重合の際に異なる速度で反応する、2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーが使用されてもよい。有利には、少なくとも1個の反応性基が残りのモノマーとほぼ同じ速度で重合し、一方で、他の反応性基(または複数の反応性基)が例えば明らかによりいっそう緩徐に重合する化合物が使用される。異なる重合速度は、ゴム中に特定割合の不飽和二重結合を必然的に伴う。引続き、このようなゴム上に更なる相がグラフトされる場合には、ゴム中に存在する二重結合は、少なくとも部分的にグラフトモノマーと、化学結合の形成下に反応し、即ちグラフトされた相は、少なくとも部分的に化学結合を介してグラフト主鎖と結合している。
【0164】
このようなグラフト架橋性モノマーの例は、アルキル基含有モノマー、特にエチレン系不飽和カルボン酸のアリルエステル、例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネートまたは前記ジカルボン酸の相応するモノアリル化合物である。この他に、多数の更なる適したグラフト架橋性モノマーが存在し;この場合、詳細については、例えば米国特許第4148846号明細書が指摘されてよい。
【0165】
一般的に、耐衝撃性改良性ポリマー中のこれらの架橋性モノマーの割合は、耐衝撃性改良性ポリマーに対して5質量%まで、好ましくは3質量%以下である。
【0166】
以下に、好ましい幾つかのエマルションポリマーを挙げることができる。この場合には、最初に1つのコアおよび少なくとも1つの外側殻を有するグラフトポリマーを挙げることができ、このグラフトポリマーは、次の構造を有する:
【表1】

【0167】
多殻状構造を有するグラフトポリマーの代わりに、ブタ−1,3−ジエン、イソプレンおよびn−ブチルアクリレートまたはこれらのコポリマーからなる均質な、即ち1つの殻を有するエラストマーが使用されてもよい。また、前記生成物は、架橋性モノマーまたは反応性基を有するモノマーを併用することによって製造されてよい。
【0168】
好ましいエマルションポリマーの例は、n−ブチルアクリレート/(メタ)アクリル酸−コポリマー、n−ブチルアクリレート/グリシジルアクリレート−コポリマーまたはn−ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート−コポリマー、n−ブチルアクリレートからなる内側のコアを有するかまたはブタジエンベースでかつ前記のコポリマーからなる外側の鞘を有するグラフトポリマーおよびエチレンと反応性基を供給するコモノマーとのコポリマーである。
【0169】
記載されたエラストマーは、別の常用の方法により、例えば懸濁重合によって製造されてもよい。
【0170】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3725576号明細書、欧州特許出願公開第235690号明細書またはドイツ連邦共和国特許出願公開第3800603号明細書および欧州特許出願公開第319290号明細書に記載されているようなシリコーンゴムは、同様に有利である。
【0171】
もちろん、前記のゴムタイプの混合物も使用されることができる。
【0172】
成分D)として、本発明による熱可塑性成形材料は、常用の加工助剤、例えば安定剤、酸化遅延剤、熱分解に抗する薬剤、紫外線による分解に抗する薬剤、滑剤および離型剤、着色剤、例えば染料および顔料、核形成剤、可塑剤等を含有することができる。
【0173】
酸化遅延剤および熱安定剤のための例として、熱可塑性成形材料の質量に対して1質量%までの濃度での立体障害フェノールおよび/またはホスフィットおよびアミン(例えば、TAD)、ヒドロキノン、芳香族第二級アミン、例えばジフェニルアミン、前記群の種々の置換された代表例およびこれらの混合物が挙げられる。
【0174】
一般に成形材料に対して2質量%までの量で使用されるUV安定剤としては、種々の置換されたレゾルシン、サリチレート、ベンゾトリアゾールおよびベンゾフェノンが挙げられる。
【0175】
無機顔料、例えば二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、酸化鉄およびカーボンブラック、さらに有機顔料、例えばフタロシアニン、キナクリドン、ペリレンならびに染料、例えばアントラキノンは、着色剤として添加されてよい。
【0176】
核形成剤としては、ナトリウムフェニルホスフィナート、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素ならびに有利にタルクが使用されてよい。
【0177】
本発明による熱可塑性成形材料は、自体公知の方法により製造されてよく、前記方法においては、出発成分は通常の混合装置、例えばスクリュー押出機、ブラベンダーミルまたはバンバリーミル中で混合され、引き続き押出される。この押出後、この押出物は冷却され、かつ破砕されてよい。また、個々の成分は、前混合されてもよく、次に残りの出発材料は、個々におよび/または同様に混合して添加されてよい。混合温度は、一般的に230〜320℃である。
【0178】
更なる好ましい作業形式により、成分B)およびC)ならびに場合によってはD)はプレポリマーと混合され、調製(konfektionieren)され、かつ造粒されてよい。引続き、得られた顆粒は、固相で不活性ガス下で連続的または非連続的に成分A)の融点未満の温度で望ましい粘度になるまで縮合される。
【0179】
本発明による熱可塑性成形材料は、良好な機械的性質と共に良好な加工可能性、ならびに明らかに改善された溶接線強度および熱安定性を示す。
【0180】
前記材料は、任意の種類の繊維、箔および成形品の製造に適している。以下、若干の例が記載されている:シリンダヘッドカバー、オートバイ用カバー、吸気マニホールド、チャージエアクーラーキャップ、プラグコネクター、ギヤーホイール、冷却ファンホイールおよび冷却水用タンク。
【0181】
電気分野および電子分野において、改善された流動性ポリアミドは、プラグ、プラグ部品、プラグコネクタ、メンブランスイッチ、プリント回路板モジュール、マイクロエレクトロニックコンポーネント、コイル、I/0 プラグコネクタ、プリント回路板(PCBs)用プラグ、フレキシブルプリント回路(FPCs)用プラグ、フレキシブル集積回路(FFCs)用プラグ、高速プラグコネクタ、端子板、コネクタプラグ、デバイスコネクタ、ケーブルハーネスコンポーネント、回路マウント、回路マウントコンポーネント、三次元射出成形回路マウント、電気的コネクタおよびメカトロニクスコンポーネントを製造するために使用することができる。
【0182】
自動車用室内では、ダッシュボード、ステアリングコラムスイッチ、シートコンポーネント、ヘッドレスト、センタコンソール、ギヤボックスコンポーネントおよびドアモジュールのために使用することができ、自動車室外では、ドアグリップ、外装ミラーコンポーネント、ウインドシールドワイパーコンポーネント、ウインドシールドワイパー保護ハウジング、グリル、ルーフレール、サンルーフフレーム、エンジンカバー、シリンガヘッドカバー、吸込み管(殊に、吸込みマニホルド)、ウィンドシールドワイパーならびにボディ外側部のために使用することができる。
【0183】
台所範囲および家庭範囲のために、前記の流動性が改善されたポリアミドは、台所用品のコンポーネント、例えばフライ揚げ器、アイロン、ボタンの製造のため、ならびに園芸−余暇範囲では、例えば灌漑システムのためのコンポーネントまたは園芸用品およびドアグリップへの用途のために使用することができる。
【実施例】
【0184】

次の成分を使用した:
成分A/1
ISO 307により25℃で96質量%の硫酸中の0.5質量%の溶液として測定した、148ml/gの粘度数VZを有するポリアミド 66。(BASF SE社のUltramid(登録商標)A27を使用した。)
成分B/1
鉄粉末CAS番号7439−89−6:
【表2】

粒度分布:(Beckmann LS13320を用いてのレーザー回折)
10 1.4〜2.7μm
50 3.4〜5.2μm
90 6.4〜9.2μm
BET表面積 0.44m2/g(DIN ISO 9277)
成分C
アルミニウム−ジエチルホスフィネートとメラミンポリホスフェートとの2:1混合物、およびこの混合物は硼酸亜鉛5%を有する(Clariant GmbH社のExolit(登録商標)OP1312)
成分D/1
ガラス繊維
成分D/2
Alジ/トリステアレート(Baerlocher社のAlugel(登録商標)30 DF)
成分D/31
比1:4でのCuI/KI(PA6中の濃度20%のマスターバッチ)
成分D/32
BASF SE社のIrganox(登録商標)1098
【0185】
成形材料をZSK 26上で25kg/hの通過量および約280℃の平面温度プロファイルで製造した。
【0186】
次の測定を実施した:
ISO 527による引張試験、空気循環路内で220℃での熱貯蔵前および後の力学的特性値
VZ:c=96%の硫酸中で5g/l、ISO 307による
UL 94による難燃性の性質
【0187】
成形材料の組成および測定の結果は、表から確認することができる。
【0188】
【表3】

【0189】
【表4】

【0190】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)ポリアミド10〜98質量%、
B)最大10μm(d50値)の粒度を有する鉄粉末0.001〜20質量%、
C)燐含有または窒素含有化合物、またはP−N−縮合体、またはこれらの混合物の群からのハロゲン不含難燃剤1〜40質量%、
D)他の添加剤0〜70質量%を含有する熱可塑性成形材料であって、
この場合、成分A)〜D)の質量%の合計は、100%となる、上記の熱可塑性成形材料。
【請求項2】
鉄粉末B)は、DIN ISO 9277による比BET表面積0.1〜5m2/gを有する、請求項1記載の熱可塑性成形材料。
【請求項3】
成分B)が1〜5μmのd10値を有する、請求項1または2記載の熱可塑性成形材料。
【請求項4】
成分B)が3〜35μmのd90値を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項5】
成分B)が0.05〜1.2g/100gのC含量を有する(ASTM E 1019による)、請求項1から4までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項6】
成分B)が鉄ペンタカルボニルの熱分解によって得られる、請求項1から5までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項7】
成分B)が2.5〜5g/cm3のタップ密度を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項8】
成分C)が式(I)のホスフィン酸塩および/または式(II)のジホスフィン酸塩
【化1】

[式中、置換基は、次の意味を有する:
1、R2は、水素、直鎖状または分枝鎖状のC1〜C8−アルキル、特にC1〜C4−アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第三ブチル、n−ペンチル;フェニルであり;この場合基R1またはR2の少なくとも1つ、殊にR1およびR2は、水素であり;
3は、直鎖状または分枝鎖状のC1〜C10−アルキレン、例えばメチレン、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、第三ブチレン、n−ペンチレン、n−オクチレン、n−ドデシレン;
アリーレン、例えばフェニレン、ナフチレン;
アルキルアリーレン、例えばメチルフェニレン、エチルフェニレン、第三ブチルフェニレン、メチルナフチレン、エチルナフチレン、第三ブチルナフチレン;アリールアルキレン、例えばフェニルメチレン、フェニルエチレン、フェニルプロピレン、フェニルブチレンであり;
Mは、アルカリ土類金属、アルカリ金属、Al、Zn、Fe、ホウ素であり;
mは、1〜3の整数であり;
nは、1〜3の整数であり、および
xは、1または2である]、および/またはこれらのポリマーからなる、請求項1から7までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項9】
繊維、シートおよび成形品を製造するための請求項1から8までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料の使用。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の熱可塑性成形材料から得られる、繊維、シートおよび成形品。

【公表番号】特表2013−508522(P2013−508522A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535736(P2012−535736)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065580
【国際公開番号】WO2011/051121
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】