説明

難燃性ポリアミド樹脂組成物及びそれからなる成形品

【課題】機械的強度を損なうことなく高い難燃性を有するポリアミド系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応により得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂100質量部に対し、ホスファゼン化合物1〜20質量部及び/又は有機ホスフィン酸もしくはその塩5〜60質量部、コレマナイト0.05〜30質量部、及び変性ポリフェニレンエーテル系樹脂0〜100質量部を含有することを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃性ポリアミド樹脂組成物及びそれからなる成形品に関し、詳しくは機械的特性を損なうことなく、優れた難燃性を有する難燃性ポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリアミド樹脂は、機械的強度、耐熱性などに優れることから、自動車部品、機械部品、電気・電子部品などの分野で使用されている。特に、電気・電子部品用途においては、難燃性に対する要求レベルがますます高くなり、本来ポリアミド樹脂の有する自己消火性よりもさらに高度な難燃性が要求されている。この為、難燃レベルの高度化検討、具体的には、アンダーライターズ・ラボラトリーのUL94規格のV−0レベルに適合する材料の検討が数多くなされてきており、時代の趨勢として、非ハロゲンタイプ難燃剤を使用した開発の要望が強くなってきている。
【0003】
これらの課題を解決する方法として、例えば、特許文献1には、特定構造で表されるホスフィン酸塩と、メラミンの縮合生成物を含む難燃剤コンビネーション及び熱可塑性ポリマーの難燃化について提案されている。
また、特許文献2には、メタキシリレンアジパミド単位を主たる構成成分とするポリアミド樹脂、ホスフィン酸塩、メラミンの縮合生成物、無機充填材からなるポリアミド樹脂組成物が示されている。
しかしながら、これら特許文献における難燃性は必ずしも充分であると言えるものではなかった。
【0004】
さらに、特許文献2に記載のようなメタキシリレンアジパミド系ポリアミド樹脂は、ポリアミド6やポリアミド66に代表される脂肪族系ポリアミド樹脂に比べ結晶化速度が遅いため、成形時に成形不良が発生しやすいといった問題もあり、このため、UL94規格V−0レベルの難燃性を、難燃剤と難燃助剤の少ない配合量で達成し、成形不良の発生や機械的特性の低下を抑制することは、工業的に大きな意味がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−72978号公報
【特許文献2】特開2004−300189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような状況に鑑みなされたものであり、その目的は、機械的特性を損なうことなく、優れた難燃性を有する、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂組成物及びそれからなる成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含有するポリアミド樹脂組成物に、特定の難燃化合物、さらに難燃助剤としてコレマナイトを、それぞれ特定量配合することにより、上記目的に適う難燃性ポリアミド樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応により得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、ホスファゼン化合物(B1)1〜20質量部及び/又は有機ホスフィン酸もしくはその塩(B2)5〜60質量部、コレマナイト(C)0.05〜30質量部、及びポリフェニレンエーテル系樹脂(D)0〜100質量部を含有することを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物が提供される。
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、ホスファゼン化合物(B1)が、下記一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物、下記一般式(2)で表される鎖状ホスファゼン化合物、又は、一般式(1)もしくは一般式(2)で表されるホスファゼン化合物が架橋基によって架橋されて成る架橋ホスファゼン化合物より成る群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物が提供される。
【化1】

(式(1)中、mは3〜25の整数であり、Rは、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す。)
【0010】
【化2】

(式(2)中、nは3〜10,000の整数であり、Xは、−N=P(OR基又は−N=P(O)OR基を示し、Yは、−P(OR基又は−P(O)(OR基を示す。Rは同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す。)
【0011】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は第2の発明において、ホスファゼン化合物(B1)が、前記一般式(1)又は(2)におけるRがフェニル基であるフェノキシホスファゼン化合物であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物が提供される。
【0012】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、ホスファゼン化合物(B1)が、上記一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物、及び、上記一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物が架橋基によって架橋されてなる架橋ホスファゼン化合物より成る群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物が提供される。
【0013】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、有機ホスフィン酸もしくはその塩(B2)が、下記一般式(3)又は一般式(4)で表される化合物の酸又はその塩であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物が提供される。
【化3】

【化4】

【0014】
(式(3)及び(4)中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、Rは、同一又は異なっていてもよく、炭素原子数1〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜20の置換されていてもよいアリーレン基、又はこれらの2つ以上の組み合わせからなる基を示す。)
【0015】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5の発明において、有機ホスフィン酸の塩(B2)が、有機ホスフィン酸と、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム及び亜鉛より成る群から選択される少なくとも1種の金属との塩であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物が提供される。
【0016】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、ポリフェニレンエーテル系樹脂(D)が、スチレン系重合体を1〜80重量%含有してなることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物が提供される。
【0017】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、さらに、強化充填材(E)を、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、250質量部以下の割合で含むことを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物が提供される。
【0018】
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかに記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物を射出成形して成る成形品が提供される。
【0019】
さらに、本発明の第10の発明によれば、第9の発明において、成形品が、電気・電子部品、OA機器部品、家電機器部品、自動車部品、又は機械機構部品であることを特徴とする成形品が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、難燃剤(B)として、ホスファゼン化合物(B1)及び/又は有機ホスフィン化合物(B2)を特定量、難燃助剤としてコレマナイト(C)を0.05〜30質量部含有させることによって、機械的特性に優れ、かつ優れた難燃性を有する難燃性ポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
特に、優れた難燃性は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の難燃性を、難燃助剤としてコレマナイトを用いることで、その添加量が少なくても、例えば、UL94規格V−0レベルの難燃性が実現可能となったものであり、従来の技術では達成不可能な顕著な効果である。
従って、本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、優れた機械的特性を有したまま難燃性に優れており、電気・電子部品、OA機器部品、家電機器部品、自動車部品、又は機械機構部品等、種々の成形体に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)]
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物には、キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応により得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)を使用する。キシリレンジアミンは、好ましくは、ジアミン構成単位(ジアミンに由来する構成単位)の55モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは65モル%以上がメタキシリレンジアミンに由来し、α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸は、好ましくはジカルボン酸構成単位(ジカルボン酸に由来する構成単位)の好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上が、炭素原子数が4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
ここでメタキシリレンジアミンが55モル%未満では、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)の融点が高くなり成型加工が難しくなる傾向があり、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸が70モル%に満たないと、最終のポリアミド樹脂組成物が硬くなり加工性が悪くなりやすい。
【0022】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)の原料ジアミン成分として用いるメタキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン(構造異性体を含む。)、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン(構造異性体を含む。)等の脂環式ジアミン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン(構造異性体を含む。)等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種又は2種以上を混合して使用できる。原料ジアミン成分として、メタキシリレンジアミン以外のジアミンを使用する場合は、これらの中でも、耐熱性の点から、パラキシリレンジアミンを使用することが好ましい。
ジアミン成分として、メタキシリレンジアミン以外のジアミンを用いる場合は、融点、結晶化速度の観点から、ジアミン酸構成単位の45モル%未満であることが好ましく、より好ましくは1〜40モル%、特に好ましくは5〜35モル%の割合で用いる。45モル%を超えると、融点が高くなりすぎ、熱安定性及び生産性が低下する傾向となる。
【0023】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)の原料ジカルボン酸成分として用いるのに好ましい炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、1種又は2種以上を混合して使用できるが、これらの中でも柔軟性の点からアジピン酸が好ましい。
【0024】
上記炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸といった異性体等のナフタレンジカルボン酸、安息香酸、プロピオン酸、酪酸等のモノカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等のカルボン酸無水物等を例示することができ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0025】
ジカルボン酸成分として、炭素原子数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を用いる場合は、難燃性、成形加工性、バリア性の点から、イソフタル酸を用いることが好ましい。イソフタル酸の割合は、ジカルボン酸構成単位の30モル%未満であり、好ましくは1〜25モル%、特に好ましくは5〜20モル%の範囲である。
【0026】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)の製造方法は特に限定されるものではなく、常圧溶融重合法、加圧溶融重合法等の従来公知の方法、重合条件により製造される。
例えば、キシリレンジアミンとアジピン酸、あるいは、キシリレンジアミン、アジピン酸及びイソフタル酸からなるポリアミド塩を水の存在下に、加圧下で昇温し、加えた水よび縮合水を取り除きながら溶融状態で重合させる方法により製造される。また、キシリレンジアミンを溶融状態のアジピン酸、又はアジピン酸とイソフタル酸混合物に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によっても製造される。この場合、反応系を固化させることの無いように、キシリレンジアミンを連続的に加えて、その間の反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点以上となるように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
【0027】
重縮合によりキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)を得る際には、重縮合反応系に、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム、ω−エナントラクタム等のラクタム類、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、9−アミノノナン酸、パラアミノメチル安息香酸等のアミノ酸等を、性能を損なわない範囲で加えても良い。
【0028】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)は、さらに加熱処理し、溶融粘度を増大させたものを用いることもできる。
加熱処理する方法として、例えば、回転ドラム等の回分式加熱装置を用いて、不活性ガス雰囲気中もしくは減圧下において、水の存在下で緩やかに加熱し、融着を回避しつつ結晶化させた後、更に加熱処理を行う方法、溝型攪拌加熱装置を用いて、不活性ガス雰囲気中で加熱し、結晶化させた後、ホッパー形状の加熱装置を用いて、不活性ガス雰囲気中で加熱処理する方法、溝型攪拌加熱装置を用いて結晶化させた後、回転ドラム等の回分式加熱装置を用いて加熱処理を行う方法等が挙げられる。
なかでも、回分式加熱装置を用いて、結晶化ならびに加熱処理を行う方法が好ましい。結晶化処理の条件としては、溶融重合で得られたポリアミド樹脂に対して1〜30質量%の水の存在下、かつ、0.5〜4時間かけて70〜120℃まで昇温することにより結晶化し、次いで、不活性ガス雰囲気中又は減圧下で、〔溶融重合で得られたポリアミド樹脂の融点−50℃〕〜〔溶融重合で得られたポリアミド樹脂の融点−10℃〕の温度で1〜12時間加熱処理する条件が好ましい。
【0029】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)の融点は150℃〜300℃の範囲に制御することが好ましく、より好ましくは160〜280℃、さらに好ましくは170〜270℃、特に好ましくは180〜260℃である。融点を上記範囲とすることにより、加工性がよくなる傾向にあり好ましい。
また、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)のガラス転移点は50〜130℃の範囲であることが好ましい。ガラス転移点を上記範囲とすることにより、耐熱性、難燃性及びバリア性が良好となる傾向にあり好ましい。
【0030】
なお、本発明において、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)及び後述の他のポリアミド樹脂(A’)の融点及びガラス転移点は、示差走査熱量測定(DSC)法によって測定することができ、試料を一度加熱溶融させ熱履歴による結晶性への影響をなくした後、再度昇温して測定される融点、ガラス転移点をいう。具体的には、例えば、30℃から予想される融点以上の温度まで10℃/minの速度で昇温し、2分間保持した後、50℃まで20℃/minの速度で降温する。次いで、10℃/minの速度で融点以上の温度まで昇温し、融点、ガラス転移点を求めることができる。
【0031】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)は、末端アミノ基濃度が好ましくは140μ当量/g未満、より好ましくは5〜100μ当量/g、さらに好ましくは10〜100μ当量/g、末端カルボキシル基濃度が好ましくは140μ当量/g未満、より好ましくは5〜100μ当量/g、さらに好ましくは10〜100μ当量/gのものが好適に用いられる。末端アミノ基濃度及び末端カルボキシル基濃度を上記範囲とすることにより、重合されたキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の熱安定性が良好となる傾向にある。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)は、96%硫酸中、樹脂濃度1g/100ml、温度25℃で測定した相対粘度が1.7〜4であるものが好ましく、1.9〜3.8であるものがより好ましい。相対粘度が2未満であると、機械的強度が低下する傾向にあり、4を超えると成形性が低下する場合がある。
【0032】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)の数平均分子量は、好ましくは6,000〜50,000であり、より好ましくは10,000〜43,000、さらに好ましくは10,000〜35,000である。数平均分子量が6,000未満であると、機械的特性が低下する傾向にあり、50,000を超えると、成形性が低下する場合がある。
なお、本発明において、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)及び後述の他のポリアミド樹脂(A’)の数平均分子量は、カラムとして、昭和電工社製「Shodex HFIP−806M」3本を使用し、溶離液トリフルオロ酢酸ナトリウム2mM含有ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、樹脂濃度0.05質量%、カラム温度40℃、流速1ml/min、屈折率検出器の条件で測定し、標準ポリメチルメタクリレート換算の値として求めることができる。
【0033】
[キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外の他のポリアミド樹脂(A’)]
また、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)は、ポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド46等の脂肪族ポリアミド樹脂に比べて結晶化速度がやや遅いため、成形サイクルを短縮するために、本発明のポリアミド樹脂組成物は、他のポリアミド樹脂(A’)を含有していることが好ましい。上記成形サイクルを短縮する目的で配合する場合に用いられる他のポリアミド樹脂(A’)としては、脂肪族ポリアミドが好ましく、例えばポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド9T等の結晶化速度の速いポリアミド樹脂や、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6T/6I等の高融点のポリアミド樹脂が挙げられ、流動性、熱安定性及び経済的な観点からポリアミド66又はポリアミド6が好ましい。機械的特性、成形性及び難燃性のバランスから、他のポリアミド樹脂(A’)の好ましい配合量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、3〜200質量部、より好ましくは5〜185質量部である。
【0034】
[難燃剤(B)]
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物には、難燃剤として、ホスファゼン化合物(B1)及び/又は有機ホスフィン酸もしくはその塩(B2)を含有する。
【0035】
[ホスファゼン化合物(B1)]
本発明において用いられるホスファゼン化合物(B1)は、分子中に−P=N−結合を有する有機化合物、好ましくは、下記一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物、下記一般式(2)で表される鎖状ホスファゼン化合物、ならびに、下記一般式(1)及び下記一般式(2)からなる群より選択される少なくとも一種のホスファゼン化合物が架橋基によって架橋されてなる架橋ホスファゼン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。架橋ホスファゼン化合物としては、下記一般式(5)で表される架橋基によって架橋されてなるものが難燃性の点から好ましい。
ホスファゼン化合物(B1)は難燃化効果が高く、特に後述のコレマナイト(C)と併用することにより、少ない含有量でも優れた難燃性を発揮することができるため、難燃剤の配合によって起こり得る機械的強度の低下やガスの発生を抑制しやすい傾向にあり好ましい。
【0036】
【化5】

(式(1)中、mは3〜25の整数であり、Rは、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す。)
【0037】
【化6】

(式(2)中、nは3〜10,000の整数であり、Xは、−N=P(OR基又は−N=P(O)OR基を示し、Yは、−P(OR基又は−P(O)(OR基を示す。Rは同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す。)
【0038】
【化7】

(式(5)中、Aは−C(CH−、−SO−、−S−、又は−O−であり、qは0又は1である。)
【0039】
一般式(1)及び(2)で表される環状及び/又は鎖状ホスファゼン化合物としては、例えば、フェノキシホスファゼン、(ポリ)トリルオキシホスファゼン(例えば、o−トリルオキシホスファゼン、m−トリルオキシホスファゼン、p−トリルオキシホスファゼン、o,m−トリルオキシホスファゼン、o,p−トリルオキシホスファゼン、m,p−トリルオキシホスファゼン、o,m,p−トリルオキシホスファゼン等)、(ポリ)キシリルオキシホスファゼン、(ポリ)メチルナフチルオキシホスファゼン等の環状及び/又は鎖状C1−6アルキルC6−20アリールオキシホスファゼンや、(ポリ)フェノキシトリルオキシホスファゼン(例えば、フェノキシo−トリルオキシホスファゼン、フェノキシm−トリルオキシホスファゼン、フェノキシp−トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m−トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,p−トリルオキシホスファゼン、フェノキシm,p−トリルオキシホスファゼン、フェノキシo,m,p−トリルオキシホスファゼン等)、(ポリ)フェノキシキシリルオキシホスファゼン、(ポリ)フェノキシトリルオキシキシリルオキシホスファゼン、(ポリ)フェノキシメチルナフチルオキシホスファゼン等の環状及び/又は鎖状C6−20アリールC1−10アルキルC6−20アリールオキシホスファゼン等が例示でき、好ましくは環状及び/又は鎖状フェノキシホスファゼン、環状及び/又は鎖状C1−3アルキルC6−20アリールオキシホスファゼン、C6−20アリールオキシC1−3アルキルC6−20アリールオキシホスファゼン(例えば、環状及び/又はトリルオキシホスファゼン、環状及び/又は鎖状フェノキシトリルフェノキシホスファゼン等である。
【0040】
上記環状フェノキシホスファゼン化合物及び鎖状フェノキシホスファゼン化合物は、例えば、H.R.Allcook著「Phosphorus−Nitrogen Compounds(Academic Press,(1972))」、J.E.Mark、H.R.Allcook、R.West著「Inorganic Polymers(Prentice−Hall International、Inc.(1992))」に記載されている方法によって合成することができる。
【0041】
一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物としては、Rがフェニル基である環状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。このような環状フェノキシホスファゼン化合物としては、例えば、塩化アンモニウムと五塩化リンとを120〜130℃の温度で反応させて得られる環状及び直鎖状のクロロホスファゼン混合物から、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン、オクタクロロシクロテトラホスファゼン、デカクロロシクロペンタホスファゼン等の環状のクロルホスファゼンを取り出した後にフェノキシ基で置換して得られる、フェノキシシクロトリホスファゼン、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン、デカフェノキシシクロペンタホスファゼン等の化合物が挙げられる。また、該環状フェノキシホスファゼン化合物は、一般式(1)中のmが3〜8の整数である化合物が好ましく、mの異なる化合物の混合物であってもよい。なかでも、m=3のものが50質量%以上、m=4のものが10〜40質量%、m=5以上のものが合わせて30質量%以下である化合物の混合物が好ましい。
【0042】
一般式(2)で表される鎖状ホスファゼン化合物としては、Rがフェニル基である鎖状フェノキシホスファゼンが特に好ましい。このような鎖状フェノキシホスファゼン化合物は、例えば、上記の方法で得られるヘキサクロロシクロトリホスファゼンを220〜250℃の温度で開還重合し、得られた重合度3〜10000の直鎖状ジクロロホスファゼンをフェノキシ基で置換することにより得られる化合物が挙げられる。該直鎖状フェノキシホスファゼン化合物の、一般式(2)中のnは、好ましくは3〜1000、より好ましくは3〜100、さらに好ましくは3〜25である。
【0043】
架橋フェノキシホスファゼン化合物としては、例えば、4,4’−スルホニルジフェニレン(ビスフェノールS残基)の架橋構造を有する化合物、2,2−(4,4’−ジフェニレン)イソプロピリデン基の架橋構造を有する化合物、4,4’−オキシジフェニレン基の架橋構造を有する化合物、4,4’−チオジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等の、4,4’−ジフェニレン基の架橋構造を有する化合物等が挙げられる。
また、架橋ホスファゼン化合物としては、一般式(1)においてRがフェニル基である環状フェノキシホスファゼン化合物が上記一般式(5)で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物又は、上記一般式(2)においてRがフェニル基である鎖状フェノキシホスファゼン化合物が上記一般式(5)で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物が難燃性の点から好ましく、環状フェノキシホスファゼン化合物が上記一般式(5)で表される架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物がより好ましい。
また、架橋フェノキシホスファゼン化合物中のフェニレン基の含有量は、一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物及び/又は一般式(2)で表される鎖状フェノキシホスファゼン化合物中の全フェニル基及びフェニレン基数を基準として、通常50〜99.9%、好ましくは70〜90%である。また、該架橋フェノキシホスファゼン化合物は、その分子内にフリーの水酸基を有しない化合物であることが特に好ましい。
【0044】
本発明においては、ホスファゼン化合物(B1)が、上記一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物、及び、上記一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物が架橋基によって架橋されてなる架橋ホスファゼン化合物よる成る群から選択される少なくとも1種であることが、難燃性及び機械的特性の点から好ましい。特に、環状フェノキシホスファゼン化合物、及び、環状フェノキシホスファゼン化合物が架橋基によって架橋されてなる架橋フェノキシホスファゼン化合物から成る群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0045】
このホスファゼン化合物(B1)の含有量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、1〜20質量部であり、1.5〜15質量部がより好ましい。1質量部以上とすることにより、難燃性を十分に改良することができ、20質量部以下とすることにより、機械的強度を良好に保つことができる。
【0046】
[有機ホスフィン酸もしくはその塩(B2)]
本発明において用いられる有機ホスフィン酸もしくはその塩(B2)は、アニオン部分が下記一般式(3)又は(4)で表される化合物の酸もしくはその塩であり、塩の場合は、カチオン部分が、好ましくは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン又はアルミニウムイオンであるものである。
【0047】
【化8】

【化9】

【0048】
(式(3)及び(4)中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、Rは、同一又は異なっていてもよく、炭素原子数1〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜20の置換されていてもよいアリーレン基、又はこれらの2つ以上の組み合わせからなる基を示す。)
【0049】
一般式(3)又は(4)において、R及びRが表すアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基、ペンチル基等が挙げられるが、炭素原子数1〜4のアルキル基、特にメチル基又はエチル基が好ましい。アリール基としては、フェニル基やナフチル基が挙げられ、これらに結合する置換基としてはメチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素原子数1〜4のアルキル基やアルコキシ基が挙げられる。
置換基の結合数は通常1〜2個である。アリール基はフェニル基又はこれに炭素原子数1〜2のアルキル基が1〜2個結合したものであるのが好ましい。
【0050】
が表すアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等直鎖状のもの、及び2−エチルヘキシレン基等分岐鎖状のもの等が挙げられる。これらのなかでも好ましいのは炭素原子数1〜4のアルキレン基、とくにメチレン基又はエチレン基である。
が表すアリーレン基としてはフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、これに結合する置換基としては、上述のものと同様のものが挙げられる。置換基の結合数は通常は1個である。アリーレン基としてはフェニレン基又はこれに炭素原子数1〜2のアルキル基が結合したものが好ましい。
これらアルキレン基及びアリーレン基の2つ以上の組み合わせからなる基としては、メチレン基とフェニレン基が結合したもの、メチレン基に2個のフェニレン基が結合したもの、フェニレン基に2個のメチレン基が結合したもの等が挙げられる。
【0051】
有機ホスフィン酸としては、例えば、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、エチル(n−、イソ−又はt−)ブチルホスフィン酸、ジn−プロピルホスフィン酸、ジイソプロピルホスフィン酸、ジペンチルホスフィン酸、ジイソブチルホスフィン酸等のジアルキルホスフィン酸、ビス(ヒドロキシメチル)メチルホスフィン酸、(ヒドロキシエチル)メチルホスフィン酸、ビス(ヒドロキシメチル)ホスフィン酸、ビス(ヒドロキシエチル)ホスフィン酸等のヒドロキシル基含有ジアルキルホスフィン酸、(2−カルボキシエチル)メチルホスフィン酸等のカルボキシル基含有ジアルキルホスフィン酸、(メトキシメチル)メチルホスフィン酸等のアルコキシ基含有ジアルキルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸等の炭素原子数6〜10のアリールホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸等の炭素原子数6〜10のジアリールホスフィン酸、メチルフェニルホスフィン酸等のC1〜4アルキルC6〜10アリールホスフィン酸等が挙げられる。これらの中でも、ジアルキルホスフィン酸が好ましく、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸が難燃性の点から好ましい。
【0052】
有機ホスフィン酸の塩としては、アニオン部分が前記一般式(3)又は(4)で表されるホスフィン酸、好ましくは、上記記載のホスフィン酸と金属との塩、又は、アミノ基を有する窒素含有化合物との塩が挙げられる。
有機ホスフィン酸と金属の塩としては、有機ホスフィン酸とカルシウム、マグネシウム、アルミニウム及び亜鉛より成る群から選択される少なくとも1種の金属との塩が好ましく、亜鉛、カルシウム又はアルミニウムとの塩がより好ましい。
このような好ましいホスフィン酸塩としては、アニオン部分が式(3)で表されるものとして、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛、メチル−n―プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n―プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸亜鉛、ジイソブチルホスフィン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0053】
また、アニオン部分が式(4)で表されるものとして、メチレンビス(メチルホスフィン酸)カルシウム、メチレンビス(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メチレンビス(メチルホスフィン酸)亜鉛、フェニレン−1,4−ビス(メチルホスフィン酸)カルシウム、フェニレン−1,4―ビス(メチルホスフィン酸)アルミニウム、フェニレン−1,4−ビス(メチルホスフィン酸)亜鉛等が好ましい。
【0054】
有機ホスフィン酸塩とアミノ基を有する窒素含有化合物との塩としては、上記ホスフィン酸と、メラミン、メラム、メレム、メラミン・メラム・メレム複塩等のアミノトリアジン化合物との塩が好ましい。
【0055】
また本発明の樹脂組成物から得られる成形品の機械的強度や外観の観点から、本発明に用いる有機ホスフィン酸の塩は、その90質量%以上が粒径100μm以下、さらには80μm以下、特に50μm以下のものを用いるのが好ましい。このような粒径になるように粉砕した粉末を用いてもよい。中でも90質量%以上が粒径0.5〜45μmの粉末を用いることで、高い難燃性を発現し、且つ成形品の靭性等の機械的特性が著しく高くなるので特に好ましい。また、有機ホスフィン酸の塩中のリン原子の割合は5〜40重量%のものが、成形加工時に成形金型に汚染物質が附着する現象が少なく特に好ましい。
【0056】
これらの有機ホスフィン酸もしくはその塩(B2)の中でも、難燃性、電気的特性、成形性の観点から有機ホスフィン酸と、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム及び亜鉛より成る群から選択される少なくとも1種の金属との塩が好ましく、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛がより好ましい。有機ホスフィン酸金属塩は、例えば、有機ホスフィン酸と金属炭酸塩、金属水酸化物または金属酸化物を用いて水性媒体中で製造することができる。有機ホスフィン酸金属塩は、本質的にモノマー性化合物であるが、反応条件に依存して、環境によっては縮合度が1〜3のポリマー性ホスフィン酸塩となる場合もある。
【0057】
有機ホスフィン酸もしくはその塩(B2)の含有量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、5〜60質量部である。含有量が5質量部未満では樹脂組成物の難燃性を十分に高くすることが困難であり、逆に60質量部を超えると樹脂組成物の機械的特性が低下したり、離型不良やモールドデポジットが多くなり、成形加工が困難となる場合がある。難燃性と機械的特性を両立させる点からして、配合量は好ましくは10〜50質量部、より好ましくは15〜45質量部、特に好ましくは20〜45質量部である。これらの有機ホスフィン酸もしくはその塩(B2)は、単独で、又は2種以上を任意の割合で併用してもよい。
【0058】
本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲内で、上記した難燃剤(B1)(B2)以外の難燃剤、例えば、リン系、トリアジン系、金属水和物系、シリコーン系等の難燃剤を配合することができる。これらの中で、好ましくはリン系難燃剤であり、さらに好ましくはメラミンとリン酸との反応生成物である。
【0059】
メラミンとリン酸との反応生成物とは、メラミンまたはメラミンの縮合生成物と、リン酸、ピロリン酸、もしくはポリリン酸との実質的に等モルの反応生成物から得られるものを意味し、製法には特に制約はない。通常、リン酸メラミンを窒素雰囲気下、加熱縮合して得られるポリリン酸メラミン(化学式「(C・HPO」(ここでnは縮合度を表す))を挙げることができる。
【0060】
ここでメラミンとリン酸との反応生成物を構成するリン酸としては、具体的にはオルトリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等が挙げられるが、特にオルトリン酸、ピロリン酸を用いたメラミンとの付加物を縮合したポリリン酸メラミンが難燃剤としての効果が高く、好ましい。特に耐熱性の点から、かかるポリリン酸メラミンの縮合度nは5以上が好ましい。
また、ポリリン酸メラミンはポリリン酸とメラミンの等モルの付加塩であっても良く、上記ポリリン酸とメラミンの全てが付加塩を形成しているものには限られず、これらの混合物であってもよい。すなわち、メラミンとの付加塩を形成するポリリン酸としては、いわゆる縮合リン酸と呼ばれる鎖状ポリリン酸、環状ポリメタリン酸を用いてもよい。これらポリリン酸の縮合度nには特に制約はなく通常3〜50であるが、得られるポリリン酸メラミン付加塩の耐熱性の点で、ここに用いるポリリン酸の縮合度nは5以上が好ましい。かかるポリリン酸メラミン付加塩は、メラミンとポリリン酸との混合物を例えば水スラリーとなし、よく混合して両者の反応生成物を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、洗浄、乾燥し、さらに必要であれば焼成し、得られた固形物を粉砕して得られる粉末である。
【0061】
また、該ポリリン酸メラミンは、リン酸とメラミン縮合生成物の付加塩であってもよく、上記リン酸とメラミン縮合生成物の全てが付加塩を形成しているものには限られず、これらの混合物であってもよい。リン酸と付加塩を形成するメラミン縮合生成物としては、メレム、メラム、メロン等が挙げられる。
【0062】
本発明においては、成形品の機械的強度や外観の点で、ポリリン酸メラミンの重量平均粒径が100μm以下のものが好ましく、50μm以下のものがより好ましい。このような粒径となるように粉砕して用いてもよい。特に、0.5〜20μmの粉末を用いることにより、高い難燃性を発現するばかりでなく、成形品の強度が著しく向上するのでさらに好ましい。また、ポリリン酸メラミンは必ずしも完全に純粋である必要はなく、未反応のメラミン、メラミン縮合物、あるいはリン酸、ポリリン酸が多少残存していてもよい。さらに、ポリリン酸メラミン中のリン原子の含有量は8〜18重量%であるものが、成形加工時に成形金型に汚染性物質が付着する現象が少なく特に好ましい。
【0063】
これら、その他の難燃剤成分の含有量は、添加する場合、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、0.5〜30質量部であることが好ましく、0.5〜25質量部であることがより好ましい。含有量が30質量部を超える場合は、ガスの発生が多くなり、押出加工や成形加工時に不具合が発生する場合がある。もちろん、本発明の樹脂組成物において、その他の難燃剤を添加しなくてもよいことは言うまでもない。
【0064】
[コレマナイト(C)]
本発明で用いるコレマナイト(C)は、主に硼酸カルシウムからなる無機化合物であり、通常、主たる成分が化学式2CaO・3B・5HOで表される水和物である。本発明に用いるコレマナイトは、コールマナイト(COLEMANITE)、コールマン石又は灰硼鉱とも呼称されるカルシウム系ホウ酸鉱や、合成物の何れでもよいが、中でも鉱物として産出されるコレマナイトが、熱安定性に優れるので好ましい。
【0065】
コレマナイトは、例えば鉱物としては、含水硼酸カルシウムの鉱物で、蒸発岩鉱床に生成し、単斜晶系に属する短柱状結晶や偽菱面結晶を形成するものであり、結晶形態は粒状や緻密な塊状、丸い集合体の何れも用いることが出来る。色は無色や白色、乳白色、黄白色、灰色のもの等多数あるが、本発明においてはこれら以外の色調のものでも使用することができる。
【0066】
コレマナイトとして鉱物を用いる際には、産出される状態での不純物を含有していても良い。このような、鉱物としてのコレマナイトの組成は、不純物も含めて質量%として一般的に、B(45.2〜42.18%)、Fe(0.35〜0.03%)、SiO(3.50〜4.08%)、Al(0.51〜0.16%)、CaO(26.01〜27.06%)、SrO(0.62〜1.19%)、MgO(1.06〜1.43%)、Na(0.03〜0.10%)、KO(0.16〜0.03)であるが、上述以外の化学組成物を含むものであってもよい。
【0067】
本発明に用いるコレマナイトとしては、例えば共立マテリアル社製コレマナイト、キンセイマテック社製UBP等の商品名で販売されているものが使用できる。また本発明に用いるコレマナイトは、上述してきた様な天然物をそのままで、又は一部処理したものを用いることもできる。具体的には例えば、コレマナイトを400℃以上で焼成することで、その一部がCaO・2Bとなる。この焼成物は、抗菌効果、抗カビ効果、防藻効果等を奏することが報告されている。
【0068】
コレマナイトの平均粒径は、1〜50μmであることが好ましく、中でも3〜20μm、特に3〜10μmであることが好ましい。このような範囲とすることにより、本発明のポリアミド樹脂組成物の柔軟性等の諸物性や、難燃性が向上する傾向にある。
なお、上述したコレマナイトの平均粒径とは、セディグラフ(X線透過式粒度分布測定装置)により測定して得られた粒度分布において、積算重量分布が50%となる粒径(D50)を示す。セディグラフは、沈降中の懸濁液にX線を照射し、そのX線透過量から粒度分布を測定する装置である。
【0069】
本発明に用いるコレマナイトは、例えば天然に産出された鉱石であれば、これを乾式粉砕法、湿式粉砕法等の、従来公知の任意の方法を用いて粉砕し、所定の粒径に調整すればよい。粉砕手段としては、ボールミル、ローラーミル、ジェットミル、振動ミル、遊星ミル、撹枠ミル等の粉砕手段が挙げられる。
【0070】
また、コレマナイトは、シランカップリング剤等の表面処理剤によって、表面処理されたものを用いてもよい。表面処理剤としては、従来公知の任意のものを使用でき、具体的には例えばシランカップリング剤としては、アミノシラン系、エポキシシラン系、アリルシラン系、ビニルシラン系等の表面処理剤が挙げられる。
これらの中では、アミノシラン系のカップリング剤が好ましい。アミノシラン系カップリング剤としては、具体的には例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが、好ましい例として挙げられる。
【0071】
コレマナイトの表面処理剤としては、本発明の効果を損ねない範囲であれば、上記シランカップリング剤等の表面処理剤には、他の成分、具体的には例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、帯電防止剤、潤滑剤及び撥水剤等を含んでいてもよい。
【0072】
この様な表面処理剤による表面処理方法としては、具体的には例えば、特開2001−172055号公報、特開昭53−106749号公報等に記載の方法の様に、表面処理剤により予め表面処理してもよく、又は本発明のポリアミド樹脂組成物を調製の際に、未処理のコレマナイトとは別に、表面処理剤を添加して表面処理することもできる。
【0073】
コレマナイトの添加量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、0.05〜30質量部であり、好ましくは1〜25質量部であり、更に好ましくは2〜20質量部である。このような範囲とすることにより、得られるポリアミド樹脂組成物の難燃性、流動性、機械的強度が向上する。
【0074】
[ポリフェニレンエーテル系樹脂(D)]
さらに、本発明の樹脂組成物には、ポリフェニレンエーテル系樹脂(D)を配合することも好ましい。ポリフェニレンエーテル系樹脂は、難燃剤(B)との相溶性に優れるため、成形時のガス及びモールドデポジットの発生や、難燃剤(B)のブリードアウトを抑制する効果を発揮できる。これらの効果は、本発明以外の他の難燃剤及び難燃助剤の組み合わせに比し、本発明の難燃剤(B)及びコレマナイト(C)の組み合わせに顕著に現れる効果であり、特に、難燃剤ブリードアウトの抑制効果は顕著である。また、ポリフェニレンエーテル系樹脂を配合することにより、機械的特性、特に耐衝撃性をより向上させる効果も発揮できる。
【0075】
ポリフェニレンエーテル系樹脂(D)としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エ−テル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エ−テル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エ−テル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エ−テル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エ−テル等が挙げられ、特に、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エ−テルが好ましい。好ましいポリフェニレンエーテル系樹脂は、クロロホルム中、温度30℃で測定した固有粘度が通常0.2〜0.6dl/g、好ましくは0.3〜0.5dlgである。固有粘度が0.2dl/g未満の場合は耐衝撃性が不十分な場合があり、0.6dl/gを超えると成形性や外観が低下する傾向にある。なお、上記範囲内の固有粘度の調整は、異なる固有粘度のポリフェニレンエーテル系樹脂2種以上を併用することにより行ってもよい。
【0076】
また、本発明においては、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)とポリフェニレンエーテル系樹脂(D)との相溶性改善の目的で、ポリフェニレンエーテル系樹脂が、カルボキシル基含有化合物、酸無水物基含有化合物等のカルボン酸化合物や酸無水物化合物によって変性されているものを用いることが好ましい。
カルボキシル基含有化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸の不飽和脂肪族カルボン酸、酸無水物基含有化合物としては無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸無水物が好ましく挙げられる。これらのうち、マレイン酸又は無水マレイン酸が好ましく、特に無水マレイン酸が好ましい。
【0077】
ポリフェニレンエーテル系樹脂(D)の変性は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)に混練する前に変性しておいてもよいし、ポリアミド樹脂組成物を得るための混練時に上記のカルボキシル基含有化合物を配合して行ってもよいが、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂との相溶性の観点から、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂に混練する前に予めポリフェニレンエーテル系樹脂を変性しておくことが好ましい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂と上記カルボキシル基含有化合物の反応は、(1)ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む溶液に、好ましくはラジカル発生剤の共存下でカルボキシル基含有化合物を加え、50〜200℃の温度で数十分〜数時間攪拌する方法や、(2)実質的に溶媒を含まない系又は少量の溶媒を含む系で、溶融混練下に上記の各成分を接触させる方法等が挙げられる。変性に使用する上記のカルボキシル基含有化合物の使用量は、ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05〜30質量部、より好ましくは0.1〜20質量部、特に好ましくは0.2〜10質量部である。
【0078】
また、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂に含有されるカルボキシル基及び/又は酸無水物基の量は、通常0.1〜3質量%、好ましくは0.2〜1.5質量%程度である。この範囲であると、機械的強度と耐衝撃性に於いて共により優れる樹脂組成物が得られる。
【0079】
また、ポリフェニレンエーテル系樹脂(D)を配合する場合は、ポリフェニレンエーテル系樹脂にさらにスチレン系重合体を含有させることが好ましい。スチレン系重合体としては、例えば、一般用ポリスチレン(GPPS)、ゴム強化ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)等のスチレン系樹脂の他、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)等のスチレン系エラストマーが挙げられ、好ましくはスチレン系エラストマーである。
ポリフェニレンエーテル系樹脂とスチレン系重合体を併用する場合は、両者の合計100質量%中、スチレン系重合体に含有量が1〜80質量%であることが好ましく、3〜60質量%であることがより好ましい。このような含有重量比率とすることにより、十分な難燃性を確保でき、成形時の流動性も良好であり、かつ難燃剤のブリードアウトを十分に抑制しやすい傾向となる。
【0080】
ポリフェニレンエーテル系樹脂(D)の含有量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、0〜100質量部であり、好ましくは、1〜70質量部、特には3〜50質量部である。
特に、難燃剤(B)として、前記ホスファゼン化合物(B1)を使用する場合には、均一な組成のものが得られ、成形時のガスやモールドデポジット発生や難燃剤のブリードアウト抑制効果が大きい。
【0081】
[強化充填材(E)]
本発明の樹脂組成物には、その成形品の剛性を高めるため、ガラス繊維等の強化充填材(E)を配合することが好ましい。
本発明で用いることのできる強化充填材(E)とは、樹脂に配合することにより得られる組成物の機械的特性を向上させる効果を有するもので、常用のプラスチック用無機充填剤を用いることができる。好ましくはガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム繊維の如き繊維状の充填材を用いる。なかでも機械的強度、剛性及び耐熱性の点からガラス繊維を用いるのが好ましい。また炭酸カルシウム、酸化チタン、長石系鉱物、クレー、有機化クレー、カーボンブラック、ガラスビーズの如き粒状又は無定形の充填材;タルクの如き板状の充填材;ガラスフレーク、マイカ、グラファイトの如き鱗片状の充填材を用いることも、寸法安定性の点から好ましい。
【0082】
強化充填材(E)の配合量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは250質量部以下、より好ましくは5〜180質量部である。5質量部以上とすることにより、補強効果を十分に奏し、また250質量部以下とすることにより、流動性を良好に保ちつつ、機械的特性(特に靱性)を高くすることが可能になる。
【0083】
[ホウ酸金属塩(F)]
本発明においては、上述した成分に加えて更に、コレマナイト(C)以外のホウ酸金属塩(F)を用いてもよい。
ホウ酸金属塩を形成するホウ酸としては、オルトホウ酸、メタホウ酸等の非縮合ホウ酸、ピロホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸及び八ホウ酸等の縮合ホウ酸、並びに塩基性ホウ酸等が好ましい。これらと塩を形成する金属はアルカリ金属でもよいが、なかでもアルカリ土類金属、遷移金属、周期律表2B族金属等の多価金属が好ましい。
またホウ酸金属塩は水和物であってもよい。
【0084】
ホウ酸金属塩としては、非縮合ホウ酸金属塩と、縮合ホウ酸金属塩とがある。非縮合ホウ酸金属塩としては、オルトホウ酸カルシウム、メタホウ酸カルシウム等のアルカリ土類金属ホウ酸塩;オルトホウ酸マンガン、メタホウ酸銅等の遷移金属ホウ酸塩;メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸カドミウム等の周期律表2B族金属のホウ酸塩等が挙げられる。これらのなかではメタホウ酸塩が好ましい。
【0085】
縮合ホウ酸塩としては、四ホウ酸三マグネシウム、ピロホウ酸カルシウム等のアルカリ土類金属ホウ酸塩;四ホウ酸マンガン、二ホウ酸ニッケル等の遷移金属ホウ酸塩;四ホウ酸亜鉛、四ホウ酸カドミウム等の周期律表2B族金属のホウ酸塩等が挙げられる。塩基性ホウ酸塩としては塩基性ホウ酸亜鉛、塩基性ホウ酸カドミウム等の周期律表2B族金属の塩基性ホウ酸塩等が挙げられる。またこれらのホウ酸塩に対応するホウ酸水素塩(例えばオルトホウ酸水素マンガン等)も使用できる。
【0086】
本発明に用いるホウ酸金属塩としては、アルカリ土類金属又は周期律表2B族金属塩、例えばホウ酸亜鉛類を用いるのが好ましい。ホウ酸亜鉛類には、ホウ酸亜鉛(2ZnO・3B)やホウ酸亜鉛・3.5水和物(2ZnO・3B・3.5HO)等やその焼成物等が含まれる。これらホウ酸亜鉛類の中でも特に水和物が好ましい。
【0087】
ホウ酸金属塩の配合により、樹脂組成物の燃焼阻止作用が向上する。現象的には、燃焼に際し発泡して未燃焼部分を炎から遮断する。ホウ酸金属塩の好ましい配合量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、0〜20質量部であるが、配合効果を発現させるためには1質量部以上配合することが好ましいが、過剰に配合しても添加量増加に見合う効果の向上は頭打ちとなるので、ホウ酸金属塩の配合量はキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して1〜10質量部、中でも1〜5質量部であることが好ましい。
【0088】
[核剤(G)]
また、結晶化速度を上げて成形性を向上させるため、核剤を添加することも好ましい。核剤としては、通常、タルク、窒化ホウ素等の無機核剤が挙げられるが、有機核剤を添加しても良い。核剤の好ましい添加量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、有機核剤や窒化ホウ素の場合、好ましくは0.01〜6質量部、より好ましくは0.03〜3質量部、さらに好ましくは0.03〜1質量部であり、タルクその他の核剤を用いる場合は、0.5〜8質量部、より好ましくは1〜4質量部である。
【0089】
[離型剤(H)]
本発明においては、主に成形時の生産性を向上させるために離型剤(H)を使用することが好ましい。離型剤としては、脂肪族系離型剤が好適であり、脂肪族系離型剤としては、脂肪族カルボン酸金属塩系、アミド系、脂肪族カルボン酸系、脂肪族カルボン酸エステル系、脂肪族炭化水素系等が挙げられ、これらの中では、特に、長鎖脂肪族カルボン酸金属塩とカルボン酸アミド系化合物が好ましい。離型剤は2種以上を併用してもよい。
【0090】
長鎖脂肪族カルボン酸金属塩は、炭素原子数16〜36の脂肪族カルボン酸の金属塩であり、その具体例としては、ステアリン酸カルシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム等が挙げられる。
カルボン酸アミド系化合物としては、例えば、高級脂肪族モノカルボン酸及び/又は多塩基酸とジアミンとの脱水反応によって得られる化合物が挙げられる。
高級脂肪族モノカルボン酸としては、炭素原子数16以上の飽和脂肪族モノカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸が好ましく、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0091】
多塩基酸としては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ピメリン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキシルコハク酸等の脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、トリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
【0092】
カルボン酸アミド系化合物は、その製造に使用する高級脂肪族モノカルボン酸に対する多塩基酸の混合割合を変えることにより、軟化点を任意に調節することが出来る。多塩基酸の混合割合は、高級脂肪族モノカルボン酸2モルに対し、通常0.18〜1.0モルである。また、ジアミンの混合割合は、高級脂肪族モノカルボン酸2モルに対し、通常1.5〜2.0モルであり、使用する多塩基酸の量に従って変化する。
カルボン酸アミド系化合物としては、ステアリン酸とセバシン酸とエチレンジアミンを重縮合してなる化合物が好ましく、ステアリン酸2モルとセバシン酸1モルとエチレンジアミン2モルを重縮合させた化合物が更に好ましい。また、N,N’−メチレンビスステアリン酸アミドやN,N’−エチレンビスステアリン酸アミドのようなジアミンと脂肪族カルボン酸とを反応させて得られるビスアミド系化合物の他、N,N’−ジオクタデシルテレフタル酸アミド等のジカルボン酸アミド化合物も好適に使用し得る。
【0093】
離型剤(H)の好ましい配合量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、0.001〜3質量部、より好ましくは0.005〜2質量部である。配合量を上記範囲内とすることにより、難燃性を低下させることなく、射出成形時の生産性が高められ、更に、離型剤の分散性も良好となる。
【0094】
[耐候性改良剤]
耐候性改良剤としては広く一般に用いられている紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤及びこれらを組み合わせたものを使用することができる。
【0095】
紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−エトキシ−2’エチルオキザックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキザックアシッドビスアニリド、2−ヒドロキシ−4−n−オクトオキシベンゾフェノン等が好ましく挙げられる。
【0096】
また、光安定剤の具体例としては、例えば、ビス(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が好ましく挙げられる。
【0097】
さらに、酸化防止剤の具体例としては、例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が好ましく挙げられる

【0098】
紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤及びこれらを組み合わせた耐候性改良剤の好ましい含有量は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、5質量部以下であることが好ましく、0.01〜3質量部であることがより好ましい。5質量部を超える場合は、アイゾット衝撃強度、実用衝撃強度及び耐熱性が低下しやすく好ましくない。
【0099】
[その他の添加成分]
また、本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じて導電剤、滑剤、可塑剤、ハロゲン化銅系(例えば、ヨウ化銅、塩化銅、臭化銅)及び/又はハロゲン化アルカリ金属塩系(例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム等)等の安定剤や、顔料、染料、分散剤、帯電防止剤及びその他の周知の添加剤を配合することができる。
【0100】
さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない限り、前記した以外の他の樹脂を配合してもよい。このような他の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、及び、ポリエステル系、ポリオレフィン系、SEBS等の変性、未変性エラストマー等が挙げられる。また、配合できる熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。この様な他の樹脂を含む場合の他樹脂の配合量は、好ましくはキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
【0101】
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)、ホスファゼン化合物(B1)及び/又は有機ホスフィン酸もしくはその塩(B2)、コレマナイト(C)、及び必要に応じて配合されるその他の成分を、任意の順序で混合、混練することによって製造することができる。
なかでも、単軸もしくは二軸押出機等の通常用いられる種々の押出機を用いて溶融混練する方法が好ましく、生産性、汎用性等の点から二軸押出機を用いる方法が特に好ましい。その際、溶融混練温度は200〜300℃、滞留時間は10分以下に調整することが好ましく、スクリューには少なくとも一カ所以上の逆目スクリューエレメント及び/又はニーディングディスクを有し、該部分において一部滞留させながら溶融混練することが好ましい。溶融混練温度を上記範囲とすることにより、押出混練不良や樹脂の分解が生じ難い傾向となる。
【0102】
このようにして得られた難燃性ポリアミド樹脂組成物は、樹脂組成物中の水分が好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下であり、必要に応じて乾燥してこの範囲とすることが望ましい。水分を0.3質量%以下とすることにより、樹脂組成物製造時、例えば、溶融混練時に不具合が発生しにくくなり、優れた特性を有するポリアミド樹脂組成物を得ることができる。樹脂組成物を乾燥する場合は、公知の方法により行うことができる。例えば、ポリアミド樹脂組成物を真空ポンプ付きの加熱可能なタンブラー(回転式真空槽)中や減圧乾燥機中に仕込み、減圧下でポリマーの融点以下、好ましくは160℃以下の温度で加熱して乾燥する方法等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0103】
かくして得られた本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、例えば、製造されたペレットを用い各種の成形法で成形して成形品を製造することができる。またペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された樹脂を直接、シートやフィルム、異型押出成形品、ブロー成形品あるいは射出成形品等にすることもできる。
【0104】
成形品の製造方法は、特に限定されず、ポリアミド樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、異形押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ダイレクトブロー成形法、インジェクションブロー成形法等が挙げられる。
【0105】
本発明のポリアミド樹脂組成物を用いて、電気・電子部品、OA機器部品、家電機器部品、自動車部品、又は機械機構部品を製造するにあたっては、前記ドライブレンド物やペレット等のポリアミド樹脂組成物を射出成形機等の各種成形機に供給して、金型に流し込み、冷却、取り出しをするという常法に従って実施することができる。中でも、生産性、製品性能の観点から、射出成形法を使用することが好ましい。
【0106】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、難燃性が極めて高く、機械的特性にも優れるため、高い難燃性が要求される電気・電子部品、OA機器部品、家電機器部品、自動車部品、又は機械機構部品等の材料に好適である。
【実施例】
【0107】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定的に解釈されるものではない。
[使用材料]
以下の例で使用した材料は以下の通りである。なお、以下、「相対粘度」とは、96%硫酸溶液中、樹脂濃度1g/100ml、温度25℃の条件下で測定した値である。
【0108】
キシリレンジアミン系ポリアミド(A):
(A−1)メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンからなる混合キシリレンジアミンとアジピン酸とから得られるポリアミド樹脂(「MP」)
以下の製造例に従って製造した。
撹拌装置、温度計、還流冷却器、原料滴下装置、加熱装置等を装備した容量が3リットルのフラスコに、アジピン酸730gを仕込み、窒素雰囲気下、フラスコ内温を160℃に昇温してアジピン酸を溶融させた。フラスコ内に、パラキシリレンジアミンを30モル%、メタキシリレンジアミンを70モル%含有する混合キシリレンジアミン680gを、約2.5時間かけて逐次滴下した。この間、撹拌下、内温を生成物の融点を常に上回る温度に維持して反応を継続し、反応の終期には270℃に昇温した。反応によって発生する水は、分縮器によって反応系外に排出させた。滴下終了後、275℃の温度で攪拌し反応を続け、1時間後反応を終了した。生成物をフラスコより取り出し、水冷しペレット化した。
得られたキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(以下、「MP」と略記する場合がある。)は、融点が258℃、結晶化温度が216℃、相対粘度は2.08であった。
【0109】
(A−2)メタキシリレンジアミンとアジピン酸とから得られるポリアミド樹脂(「MXD6」)
三菱瓦斯化学(株)製、商品名「ポリアミドMXD6#6000」
融点243℃、相対粘度2.14
【0110】
他のポリアミド(A’):
(A−3)ポリアミド66(「PA66」)
デュポン社製、商品名「ザイテル101」
融点267℃、相対粘度3.0
(A−4)ポリアミド6(「PA6」)
三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名「ノバミッド1013J」
融点223℃、相対粘度2.5
【0111】
ホスファゼン化合物(B1):
(B−1)フェノキシホスファゼン化合物
大塚化学社製環状フェノキシホスファゼン、商品名「SPS−100」
有機ホスフィン酸塩(B2):
(B−2)ジエチルホスフィン酸アルミニウム
クラリアント社製、商品名「OP1230」
【0112】
コレマナイト(C):
(C−1)コレマナイト−1
キンセイマテック社製、硼酸カルシウム鉱(主に2CaO・3B・5HO)
平均粒径 15μm
(C−2)コレマナイト−2
キンセイマテック社製、硼酸カルシウム鉱(主に2CaO・3B・5HO)、平均粒径5μm
【0113】
ポリフェニレンエーテル系樹脂(D):
(D−1)無水マレイン酸変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(「変性PPE」)
以下に従って製造した。
ポリフェニレンエーテル系樹脂100質量部と無水マレイン酸(試薬一級)0.8質量部とスチレン系重合体15質量部をスーパーミキサーで十分に混合し、得られた混合物を二軸押出機(日本製鋼所社製「TEX30XCT」)で溶融混練し、ペレット化し、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂を得た。
上記のポリフェニレンエーテル樹脂には、ポリキシレノールシンガポール社製、商品名「PX100L」{温度30℃、クロロホルム中で測定した固有粘度が0.3dl/gのポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル}を使用し、上記のスチレン系重合体には、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(シェル社製、商品名「クレイトンG1652」、数平均分子量49,000)を使用した。
【0114】
無機充填材(E)
(E−1)ガラス繊維−1:
日本電気硝子製、商品名「ECS03T−275H」
(E−2)ガラス繊維−2:
日東紡社製扁平ガラス繊維、商品名「商品名:CSG3PA820」
ホウ酸金属塩(F):
ホウ酸亜鉛(2ZnO・3B・3.5HO)
BORAX社製、平均粒径 9μm
【0115】
核剤(G)
タルク、林化成社製、商品名「ミクロンホワイト5000A」
離型剤(H):
モンタン酸エステルワックス
クラリアントジャパン社製、商品名「Licowax E」
その他の難燃剤(I)
ポリリン酸メラミン
チバ・スペシャルティケミカルズ社製、商品名「melapur200/70」、
平均粒径 8μm
【0116】
(実施例1〜9)及び(比較例1〜10)
表1に示す組成となるように、各成分を秤量し、ガラス繊維(E−1〜2)を除く成分をタンブラーにてブレンドし、二軸押出機(東芝機械社製「TEM26SS」)の基部から投入して溶融した後、必要に応じてガラス繊維をサイドフィードして樹脂組成物ペレットを作成した。
上記ペレットを80℃で12時間乾燥した後、ファナック社製、射出成形機「ROBOSHOTα−100iA」にて、シリンダー温度を280℃、金型温度120℃設定で射出成形を行い、5×1/2×厚み1/16インチ、5×1/2×厚み1/24インチ、5×1/2×厚み1/32インチの大きさの燃焼試験片及びISO試験片を作成し、試験法UL−94規格に準じ燃焼試験を、ISO179規格に準拠してシャルピー衝撃試験(ノッチ付を行った。
【0117】
UL−94規格についての各Vの等級基準は、概略以下のとおりである。
V−0:10秒接炎後の燃焼時間が10秒以下であり、5本の1組に10回接炎した際のトータル燃焼時間が50秒以下かつ、全試験片とも脱脂綿に着火するような微粒炎を落下しない。
V−1:10秒接炎後の燃焼時間が30秒以下であり、5本の1組に10回接炎した際のトータル燃焼時間が250秒以下、かつ、全試験片とも脱脂綿に着火するような微粒炎を落下しない。
V−2:10秒接炎後の燃焼時間が30秒以下であり、5本の1組に10回接炎した際のトータル燃焼時間が250秒以下、かつ、これらの試験片から落下した微粒炎から脱脂綿に着火する。
NG:上記いずれの燃焼時間にも該当せず、燃焼し続けた場合。
評価結果を表1及び表2に示す。
【0118】
【表1】

【0119】
【表2】

【0120】
実施例1〜9及び比較例1〜10の結果から、本発明のポリアミド樹脂組成物は、特定のポリアミド樹脂に、特定の難燃剤とコレマナイトをそれぞれ特定の割合で配合することにより、難燃性、機械的特性に優れることが分かる。また、コレマナイトのかわりに硼酸酸亜鉛を含んだものでも「V−0」を達成する場合があるが、コレマナイトを含んだものと比較し、その添加量が多く、衝撃強度が低下する傾向にあることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物は、難燃性が極めて高く、機械的特性にも優れるため、高い難燃性が要求される電気・電子部品、OA機器部品、家電機器部品、自動車部品、又は機械機構部品等の材料として、広く利用することができるので産業上の利用価値は非常に高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシリレンジアミンとα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸との重縮合反応により得られるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、ホスファゼン化合物(B1)1〜20質量部及び/又は有機ホスフィン酸もしくはその塩(B2)5〜60質量部、コレマナイト(C)0.05〜30質量部、及びポリフェニレンエーテル系樹脂(D)0〜100質量部を含有することを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
ホスファゼン化合物(B1)が、下記一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物、下記一般式(2)で表される鎖状ホスファゼン化合物、又は、一般式(1)もしくは一般式(2)で表されるホスファゼン化合物が架橋基によって架橋されて成る架橋ホスファゼン化合物より成る群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、mは3〜25の整数であり、Rは、同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す。)
【化2】

(式(2)中、nは3〜10,000の整数であり、Xは、−N=P(OR基又は−N=P(O)OR基を示し、Yは、−P(OR基又は−P(O)(OR基を示す。Rは同一又は異なっていてもよく、アリール基又はアルキルアリール基を示す。)
【請求項3】
ホスファゼン化合物(B1)が、前記一般式(1)又は(2)におけるRがフェニル基であるフェノキシホスファゼン化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
ホスファゼン化合物(B1)が、前記一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物、及び、前記一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物が架橋基によって架橋されてなる架橋ホスファゼン化合物より成る群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
有機ホスフィン酸もしくはその塩(B2)が、下記一般式(3)又は一般式(4)で表される化合物の酸又はその塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
【化3】

【化4】

(式(3)及び(4)中、R及びRは、同一又は異なっていてもよく、炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、Rは、同一又は異なっていてもよく、炭素原子数1〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜20の置換されていてもよいアリーレン基、又はこれらの2つ以上の組み合わせからなる基を示す。)
【請求項6】
有機ホスフィン酸の塩(B2)が、有機ホスフィン酸と、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム及び亜鉛より成る群から選択される少なくとも1種の金属との塩であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
ポリフェニレンエーテル系樹脂(D)が、スチレン系重合体を1〜80重量%含有してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、強化充填材(E)を、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂(A)100質量部に対し、250質量部以下の割合で含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物を射出成形して成る成形品。
【請求項10】
成形品が、電気・電子部品、OA機器部品、家電機器部品、自動車部品、又は機械機構部品であることを特徴とする請求項9に記載の成形品。

【公開番号】特開2011−148922(P2011−148922A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11935(P2010−11935)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】