説明

難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及び光線反射板

【課題】 ハロゲン系やリン系の難燃剤を使用することなく、難燃性、熱安定性、光反射特性に優れ、特に寸法精度が高く、光線反射板及びその周辺部材の材料として好適な難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、(b)酸化チタン3〜30重量部、(c−1)シリカ粉末の表面にポリオルガノシロキサンを担持させた粉末状シリコーン0.1〜10重量部、(d)ポリテトラフルオロエチレン0.1〜1重量部、(e)タルク、マイカ、ガラスフレークから選択される少なくとも1種である板状無機充填剤0.5〜15重量部を含有し、1mm肉厚での全光線透過率が0.6%以下であり、1.6mmの肉厚でV−0の難燃性を有することを特徴とする難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物に関する。詳しくは、ハロゲンや燐を含有する難燃剤を使用せずに、高度の光反射性と難燃性を有し、良好な外観と寸法精度を有する成形品が得られるポリカーボネート樹脂組成物及び該難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる光線反射板及びその周辺部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は優れた機械的性質を有しており、自動車分野、OA機器分野、電気・電子分野をはじめ工業的に広く利用されている。例えば、コンピュータやテレビ等の液晶表示装置のバックライト、照光式プッシュスイッチ、光電スイッチの反射板などの、高度の光線反射率が要求される反射板にはポリカーボネート樹脂に酸化チタン等の白色顔料を添加した組成物が使用されている。
光線反射板には、光線反射率と共に、高度の難燃性が必要で、更に、機械的物性、耐熱性等も良好であることが要求される。
従来、ポリカーボネート樹脂を難燃化するためには、ブロム化ポリカーボネート等のハロゲン化物が使用されてきたが、高度の難燃性を満たすにはかなりの量のハロゲン化物が必要で、かかる難燃剤を含有する樹脂組成物は、加熱によりハロゲンガスを発生し、成形装置の腐蝕や環境汚染を招くため、非ハロゲン系の難燃剤の使用が求められている。
【0003】
酸化チタンを含有するポリカーボネート樹脂組成物の非ハロゲン系難燃剤として、リン酸エステル系の難燃剤を使用することが提案されている。しかしながら、リン酸エステル系の難燃剤を使用すると、ポリカーボネート樹脂が本来有する機械的強度や耐熱性が低下するという欠点があった。そのため、リン酸エステル系難燃剤を用いる組成物について種々の改良が提案されている。
例えば、特許文献1には、AlとSiの含水酸化物の混合物で処理された酸化チタン、珪素化合物、特定の有機リン酸ジエステルとそのアルカリ金属塩の混合物を含有する組成物が開示されている。特許文献2には、ポリカーボネート樹脂、酸化チタン、リン酸エステルを含有する組成物の剛性強度を上げる目的で、ガラス繊維等の無機フフィラーを配合した組成物が開示されている。特許文献3には、ポリカーボネート樹脂、酸化チタンに、リン酸エステル系難燃剤から成る組成物において、リン酸エステルの量を比較的少量配合した組成物が、酸化チタンとの相乗効果を示し、熱安定性が向上すると記載されている。
しかしながら、これら組成物の耐熱性や機械的強度は十分満足できるものではなかった。
【0004】
本発明者等は、腐蝕や環境汚染の畏れがなく、機械的強度や耐熱性に優れた難燃性の光線反射板材料として、ポリカーボネート樹脂、酸化チタン、シリカ及びポリオルガノシロキサン重合体及びポリテトラフルオロエチレンを配合した難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を提案した(特許文献4)が、更に性能が向上した材料が求められている。
【発明の概要】
【発明の効果】
【0005】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、シリコーン系化合物を難燃成分とし、板状充填剤を添加することで、ハロゲン系或いはリン系の難燃剤を使用することなく高度の難燃性を有し、また、燃焼性及び反射特性を犠牲にすること無く、成形後の寸法変化を抑制し、反射枠用途の様に寸法特性を要求される分野で広く使用可能である。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ハロゲン系やリン系の難燃剤を使用することなく、難燃性、熱安定性、光反射特性に優れ、特に寸法精度が高く、光線反射板及びその周辺部材の材料として好適な難燃性ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、その要旨は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、(b)酸化チタン3〜30重量部、(c)シリコーン系化合物0.1〜10重量部、(d)ポリテトラフルオロエチレン0.1〜1重量部、(e)板状無機充填剤0.5〜15重量部を含有することを特徴とする難燃性ポリカーボネート樹脂組成物、及びその樹脂組成物を成形してなる光線反射板に存する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に使用される(a)芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ヒドロキシ化合物またはこれと少量のポリヒドロキシ化合物をホスゲンまたは炭酸のジエステルと反応させることによって得られる分岐していてもよい熱可塑性芳香族ポリカーボネート重合体または共重合体である。製造方法については、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)、あるいは溶融法(エステル交換法)等で製造することができる。さらに、溶融法で製造された、末端のOH基量を調整した芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することができる。
【0009】
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4'−ジヒドロキシジフェニルなどが挙げられ、好ましくはビスフェノールAである。また、本発明の目的である難燃性をさらに高める目的で、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することができる。
【0010】
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニルヘプテン−3、1,3,5−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのポリヒドロキシ化合物、あるいは3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチンなどを前記芳香族ジヒドロキシ化合物の一部として用いればよく、使用量は、0.01〜10モル%であり、好ましくは0.1〜2モル%である。
【0011】
ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、例えばm−又はp−メチルフェノール、m−又はp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール及びp−長鎖アルキル置換フェノールなどが挙げられる。
本発明に使用される芳香族ポリカーボネート樹脂としては、好ましくは、2,2ービス(4ーヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、または2,2ービス(4ーヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が挙げられる。さらに、本発明の目的である難燃性をより高める目的でシロキサン構造を有するポリマーあるいはオリゴマーを共重合することができる。芳香族ポリカーボネート樹脂としては、2種以上の樹脂を混合して用いることもできる。
【0012】
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、16,000〜30,000が好ましく、より好ましくは18,000〜23,000である。
【0013】
本発明に使用される(b)酸化チタンとしては、各種の酸化チタンを用いることができる。酸化チタンの粒子径は、好ましくは0.05〜0.5μmである。粒子径が0.05μm未満であると遮光性及び光反射率に劣り、0.5μmを越えると、遮光性及び光反射率に劣ると共に成形品表面に肌荒れを起こしたり、衝撃強度の低下を生じやすい。酸化チタンの粒子径は、より好ましくは0.1〜0.5μmであり、最も好ましくは0.15〜0.35μmである。
【0014】
酸化チタンは、塩素法で製造された酸化チタンが好ましい。塩素法で製造された酸化チタンは、硫酸法で製造された酸化チタンに比べて、白度等の点で優れている。酸化チタンの結晶形態としては、ルチル型の酸化チタンが好ましく、アナターゼ型の酸化チタンに比べ、白度、光線反射率及び耐候性の点で優れている。
【0015】
一般に、市販されている酸化チタンは、ハンドリングの観点から、通常、シリカ、アルミナ、ジルコニア等の無機の含水酸化物により表面処理されている。しかして、本発明者の検討によれば、かかる無機処理により酸化チタンの分散性は向上するものの、表面に形成された無機処理層の吸着水により、成形物の外観不良或いは、燃焼時のドリッピング等の不具合を生じ、無機処理剤の増加に伴い、この不具合は増大する。従って、無機処理剤の量が低減されているか、或いは無機処理をしない酸化チタンが好ましく、無機処理剤としては、特に吸水性の高いシリカではなく、アルミナ、ジルコニアを用いることが好ましい。
【0016】
また、酸化チタンは、有機化合物による表面処理をしたものであることが好ましい。特に、無機処理をしない場合は、有機化合物による表面処理は必須である。表面処理の有機化合物としては、有機シラン化合物及び有機シロキサン化合物、特に、アルコキシ基、エポキシ基、アミノ基、あるいはSi−H結合を有する有機シラン化合物あるいは有機シリコーン化合物が使用される。特に好ましい表面処理剤は、ハイドロジェンポリシロキサン(Si−H結合を有するシリコーン化合物)である。
表面処理剤の量としては、酸化チタンに対して1〜5重量%、好ましくは1.5〜3重量%である。
【0017】
本発明組成物中の(b)酸化チタンの含有量(表面処理剤の量を含む)は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、3〜30重量部である。酸化チタンの含有量が3重量部未満であると光線反射性が不十分になりやすく、30重量部を越えると耐衝撃性が不十分になりやすい。酸化チタンの配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは5〜28重量部であり、更に好ましくは8〜25重量部である。
【0018】
本発明に使用される(c)シリコーン系化合物としては、ポリカーボネート樹脂に添加した場合、その難燃性を改良することができる種々のシリコーン或いはシリコーン含有化合物が挙げられる。具体的には、(c−1)シリカ粉末の表面にポリオルガノシロキサンを担持させた粉末状シリコーン、(c−2)主鎖が分岐構造を有し、珪素に結合する芳香族基を有する分岐シリコーン化合物、(c−3)芳香族基含有環状ポリオルガノシロキサン及び直鎖状ポリオルガノシロキサンを含有するシリコーン化合物等が好ましく使用される。
【0019】
(c−1)シリカ粉末の表面にポリオルガノシロキサンを担持させた粉末状シリコーンに用いられるシリカ粉末としては、フュームドシリカ、沈殿法または採掘形態から得られた微粉砕シリカ等が挙げられる。フューム及び沈殿シリカは、表面積が50〜400m2/gの範囲のものが好ましい。表面積がこの範囲にあると、その表面にポリオルガノシロキサンを担持(吸収、吸着又は保持)させ易くなる。採掘シリカを用いる場合は、少なくとも等重量のヒュームまたは沈殿シリカを組み合わせて、混合物の表面積を50〜400m2/gの範囲とするのが好ましい。
シリカ粉末は、ポリオルガノシロキサン以外の表面処理剤によって表面を前処理することができる。表面処理剤としては、ヒドロキシまたはアルコキシを末端基に有する低分子量のポリオルガノシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、およびヘキサオルガノジシラザンなどが挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、ヒドロキシル基を末端基とする平均重合度が2〜100のオリゴマーであって、常温で液状ないし粘稠な油状を呈するポリジメチルシロキサンである。
【0020】
シリカ粉末或いは表面処理されたシリカ粉末は更に、その表面をポリオルガノシロキサン(なお、前処理剤との相違を明確にするため、ポリオルガノシロキサン重合体と称することがある。)で処理される。ポリオルガノシロキサン重合体は、直鎖であっても分岐鎖を有してもよいが、直鎖のポリジオルガノシロキサン重合体がより好ましい。ポリオルガノシロキサン重合体が有する有機基(オルガノ基)は、炭素数が1〜20のアルキル基、ハロゲン化炭化水素基の様な置換アルキル基、ビニルおよび5−ヘキセニルの様なアルケニル基、シクロヘキシルの様なシクロアルキル基、ならびにフェニル、トリル、及びベンジルの様なアリール基、アラルキル基などの中から選ばれる。好ましくは、炭素原子数が1〜4の低級アルキル基、フェニル基、および3,3,3−トリフルオロプロピルの様なハロゲン置換アルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
ポリオルガノシロキサン重合体は、分子鎖中に官能基を有していてもよい。官能基としてはメタクリル基またはエポキシ基等が好ましい。メタクリル基またはエポキシ基を有すると、燃焼時に(a)芳香族ポリカーボネートとの架橋反応を起させることができるので、樹脂組成物の難燃性を一層向上させることができる。ポリオルガノシロキサン重合体分子鎖中の官能基の量は、通常、0.01〜1モル%程度である。好ましくは、0.03〜0.5モル%であり、中でも好ましいのは、0.05〜0.3モル%である。
【0021】
ポリオルガノシロキサン重合体をシリカ粉末に担持させる際には、さらに接着促進剤を用いることもできる。接着促進剤を用いることによって、シリカ粉末とポリオルガノシロキサン重合体との界面を一層強固に接着させることができる。接着促進剤としては、例えば、アルコキシシラン系接着促進剤が挙げられる。アルコキシシラン系接着促進剤は、その分子に炭素原子数が1〜4の少なくとも1つのアルコキシ基、およびエポキシ、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、ビニル、フェニルまたはN−β−(N−ビニルベンジルアミノ)エチル−γ−アミノアルキル・ヒドロクロリドから選ばれた少なくとも1つの基を含有する化合物が挙げられる。
【0022】
アルコキシシラン系接着促進剤は、好ましくは、次の一般式、すなわち、Y−Si(OMe)3、[式中、Meはメチル基を表し、Yはエポキシアルキル基、アクリルオキシアルキル基、メタクリルオキシアルキル基、ビニル基、フェニル基またはN−β−(N−ビニルベンジルアミノ)エチル−γ−アミノアルキル・モノハイドロジェンヒドロ・クロリド基などの中から選ばれた基を表す。]で表される化合物が挙げられる。このようなアルコキシシラン系接着促進剤の具体例としては、γ−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドオキシプロピルプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルペンジルアミノ)エチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・モノハイドロジェンヒドロ・クロリド、フェニルトリメトキシシランおよびビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0023】
接着促進剤は、前記シリカ粉末100重量部に対し、好ましくは、0.5〜15重量部の範囲で添加される。これを添加する時期は、シリカ粉末とポリオルガノシロキサン重合体を混合する際と同時であるのが望ましい。
【0024】
本発明に使用される(c−1)シリコーン粉末につき、ポリオルガノシロキサン重合体として最も好ましいポリジメチルシロキサン重合体を使用する場合を例に説明すると、シリカ粉末とポリジメチルシロキサン重合体との配合割合は、シリカ粉末10〜90重量%、ポリジメチルシロキサン重合体90〜10重量%の範囲で選ぶのが好ましい。シリコーン粉末を構成するシリカ粉末の量が10重量%未満であるとポリジメチルシロキサン重合体を担持することが困難で、さらさらの粉末に成り難く、90重量%を超えると、ポリジメチルシロキサン重合体の量が少なくなりすぎて、成形品の外観不良が生じ易く、いずれも好ましくない。上記の配合割合でより好ましいのは、シリカ粉末20〜80重量%、ポリジメチルシロキサン重合体80〜20重量%である。より好ましくは、シリカ粉末20〜50重量%、ポリジメチルシロキサン重合体80〜50重量%である。なお、シリカの量は、表面処理されている場合は表面処理剤の量を含む。
この様な粉末状シリコーンとしては、例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン社等より「シリコーン粉末」として市販されている。
【0025】
本発明組成物中の(c−1)粉末状シリコーンの含有量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲から選ばれる。(c−1)粉末状シリコーンの量が0.1重量部未満であると、樹脂組成物から得られる成形品の難燃性、機械的強度、耐熱性が不十分となり易く、10重量部を超えると樹脂組成物の耐衝撃性や流動性が不十分となり易く、難燃性も低下する傾向があり、いずれも好ましくない。(c−1)粉末状シリコーンの好ましい含有量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.2〜8重量部であり、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。
【0026】
本発明に使用される(c−2)主鎖が分岐構造を有し珪素原子に結合する芳香族基を有する分岐シリコーン化合物は、構成単位として、R12SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)、R3SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)および/又はSiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を含み、R1、R2、R3は炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、少なくともその1部が芳香族基であるシリコーン化合物である。これらシロキサン単位の組み合わせとしては、T単位/D単位系、T単位/D単位/Q単位系、D単位/Q単位系等が挙げられ、これらの組合せは、D単位を含有し、T,Qの少なくとも一方を含有し、更に末端基としてR3SiO1/2(Rは同じ又は異なって、一価の基であり、好ましくは炭化水素基、アルコキシ基、水酸基等である。)を含有する重合体である。D単位を含有することで、可とう性が改善され、難燃性の改善に繋がる.又、T,Qの少なくとも一方を含有することで主鎖が分岐構造を有す。
分岐シリコーン化合物中の各単位の割合は、D,T,Qの合計に対しモル比で、D単位が20〜50%、好ましくは20〜40%、T単位が0〜90モル%、好ましくは60〜80%、Q単位が0〜50%、好ましくは0.01〜50%である。R1〜R3で示される1価の芳香族基としては、低級アルキル基、特にメチル基であり、芳香族基としては、フェニル基が好ましい。フェニル基量は、40モル%以上であることが好ましい。
(c−2)分岐シリコーン化合物は、重量平均分子量が、2,000〜50,000の範囲であることが好ましい。(c−2)分岐シリコーン化合物は、例えば、特開平11−140294、特開平10−139964及び特開平11−217494公報に記載の方法で製造される。又、1部は市販されており、容易に入手することができる。
【0027】
本発明組成物中の(cー2)分岐シリコーン化合物の含有量は、(a)ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部である。0.1重量部以下の場合は、燃焼性が不十分であり、10重量部を超えると、成形品外観及び弾性率等の低下が起こりやすく、又、難燃性も不十分となる。
【0028】
本発明に使用される(c−3)芳香族基含有環状ポリオルガノシロキサン及び直鎖状ポリオルガノシロキサンを含有するシリコーン化合物とは、下記式(1)の環状ポリオルガノシロキサン単位、及び式(2)の直鎖状ポリオルガノシロキサン単位を含有し、式(1)及び式(2)の単位の合計に対し、式(1)の単位が5〜95重量%の化合物である。
【0029】
【化1】

【0030】
【化2】

【0031】
(1)及び(2)式中、n1は2以上の整数であり、n2は3以上の整数である。R4は、炭素数6〜20の芳香族基を含有する1価の炭化水素基であり、R5は炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基である。R6及びR7は、同じ又は異なって、水素原子又はトリオルガノシリル基である。)
式(1)において、R4で示される炭素数6〜20の芳香族基を含有する1価の炭化水素基としては、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、トリル基、キシリル基等のアルキル基で置換された芳香族炭化水素基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等の芳香族炭化水素基が挙げられ、好ましくは、フェニル基である。
また、式(1)及び(2)において、R5で示される炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、デシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基である。
【0032】
(c−3)芳香族基含有環状ポリオルガノシロキサン及び直鎖状ポリオルガノシロキサンを含有するシリコーン化合物は、特開20002−53746号公報に記載されるように、公知の方法で製造することができる。例えば、芳香族含有ジクロロシランR45SiCl2や芳香族含有ジアルコキシシランR45Si(OR')2を、加水分解重合することにより、通常末端がシラノール基である直鎖状ポリオルガノシロキサン(1)と環状ポリオルガノシロキサン(2)の混合物が得られる。なお、R4,R5は前記の意味を有し、R'はアルキル基である。
本発明組成物中の(cー3)シリコーン化合物の含有量は、(a)ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部である。0.1重量部以下の場合は、燃焼性が不十分であり、10重量部を超えると、成形品外観及び弾性率等の低下が起こりやすく、又、難燃性も不十分となる。
【0033】
本発明に使用される(d)ポリテトラフルオロエチレンとしては、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが挙げられ、重合体中に容易に分散し、かつ重合体同士を結合して繊維状構造を作る傾向を示すものである。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンはASTM規格でタイプ3に分類される。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、種々市販されており、容易に入手することができる。例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)より、テフロン(R)6J、あるいはダイキン化学工業(株)よりポリフロンとして市販されている。ポリテトラフルオロエチレンの水性分散液の市販品として、三井デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(R)30J、ダイキン化学工業(株)製フルオンD−1等が挙げられる。さらに、ビニル系単量体を重合してなる多層構造を有するポリテトラフルオロエチレン重合体も使用される。代表例として、三菱レイヨン(株)製メタブレンA−3800が挙げられる。
【0034】
本発明組成物中の(d)ポリテトラフルオロエチレンの含有量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.01〜1重量部である。ポリテトラフルオロエチレンの量が0.01重量部未満であると難燃性が不十分であり、1重量部を越えると成形品外観が低下しやすい。ポリテトラフルオロエチレンの量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.02〜0.8重量部である。
【0035】
本発明に使用される(e)板状無機充填剤は、薄片状、鱗片状等の形状を有する無機充填材で、タルク、マイカ、ガラスフレーク等から選ばれる。タルクは、層状粘土鉱物の1つで、主成分は4SiO2・3MgO・H2Oで表され、「含水珪酸マグネシウム」と呼ばれる。タルクは産地により、不純物等の組成が異なるが、Fe23或いはAI23等の不純物が多いと、得られる樹脂組成物の熱安定性等に悪影響を与えるので、これらの不純物が少ないタルクが好ましい。タルクの粒子径については、平均粒径が10μm以下のタルクを使用すると、組成物の物性を犠牲にせず、良外観の組成物が得られるので好ましい。
【0036】
マイカは層状粘土鉱物の1つで、白雲母、黒雲母、金雲母、人造金雲母などがあり、主成分はSiO2であり、Si−O間は、共有結合で非常に強固である。マイカの結晶はSiO正四面体が六角網目の板状に連なり、この板が二枚で一組となっている。また、その板間に八面体位をとるイオン(例えばAl3+、Mg2+)結合をしている。これをタブレットと言い、これが層をなして積み重なっており、タブレット間にアルカリ金属またはアルカリ土類金属のイオン(例えばK+)が、イオン結合で繋がっている。このイオンは層間イオンと呼ばれ12個の酸素で囲まれている。そして、この結合が非常に弱い為、マイカは板状に剥がれやすい。また、このアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属のイオンの挙動がマイカの物性に大きな影響を与えて、応用面での大きな働きをしている。マイカの粒子径は、測定方法により異なるが、遠心沈降式粒度分布測定法で4から12μm程度のものが一般的である。
【0037】
ガラスフレークは、厚さ3〜7μm、粒子径10〜4000μmの板状無定形ガラスである。無機質としてのガラスの特性と、その形状から得られる特性により、独特の効果が有る。使用されるガラスは、Cガラスと、Eガラスがあり、EガラスはNa2O或いはK2O等がCガラスに比べて少ないので、Eガラスを使用したガラスフレークが好ましく使用される。ガラスフレークとしては、例えば、市販品である日本電気硝子(株)のREFG−101等が使用されるが、その平均粒子径は600μm、平均厚み3〜7μmである。平均粒子径が他の添加剤と比べて大きい為、添加量が増えると外観不良の原因となる。
本発明組成物中の(e)板状無機充填剤の含有量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.5〜15重量部、好ましくは、0.5〜13重量部である。板状無機充填剤の量が少なすぎると成形物の寸法安定性が不十分であり、一方、多すぎると難燃性や外観が不良となる。
【0038】
本発明の樹脂組成物には、上記(a)〜(e)成分以外に、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で衝撃改良剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤、顔料、染料、滑剤、その他難燃剤、離型剤、摺動性改良剤等の添加剤、ガラス繊維あるいはチタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム等のウィスカー等の強化材、芳香族ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合することができる。特に、本発明の組成物の用途である光線反射板用途には、要求される光反射特性及び耐候性を改良する為、蛍光増白剤や紫外線吸収剤を添加することが好ましい。
本発明に使用される蛍光増白剤は、成形品を明るく見せるため、成形品に加えれられる顔料あるいは染料であり、成形品の黄色味を消し、明るさを増加させる添加剤で、この点では、ブルーイング剤と似ているが、ブルーイング剤が黄色光を除去するのに対して、蛍光増白剤は紫外線を吸収し、そのエネルギーを可視部青紫色の光線に変えて放射する点で異なっている。一般には、クマリン系、ナフトトリアゾリルスチルベン系、ベンズオキサゾール系、ベンズイミダゾール系、およびジアミノスチルベン−ジスルホネート系等の蛍光増白剤が使用される。例えば、ハッコール産業のハッコールPSR、ヘキストAGのHOSTALUX KCB、住友化学のWHITEFLOUR PSN CONC等の市販品が挙げられる。
蛍光増白剤の配合量は、本発明組成物中の(a)芳香族ポリカーボネート100重量部に対し、0.005〜0.1重量部の範囲が好ましい。
【0039】
本発明に使用することができる紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル系、ヒンダードアミン系等があげられる。紫外線吸収剤を配合することにより耐候性を向上することができる。
【0040】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシ−ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシ−ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシ−ベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0041】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2'−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0042】
サリチル酸フェニル系紫外線吸収剤としては、フェニルサリチレート、2−4−ジターシャリーブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。ヒンダードアミン系紫外線吸収剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート等が挙げられる。
【0043】
紫外線吸収剤としては、上記以外に紫外線の保有するエネルギーを、分子内で振動エネルギーに変換し、その振動エネルギーを、熱エネルギー等として放出する機能を有する化合物が含まれる。さらに、酸化防止剤あるいは着色剤等との併用で効果を発現するもの、あるいはクエンチャーと呼ばれる、光エネルギー変換剤的に作用する光安定剤等も併用することができる。
【0044】
本発明組成物中の紫外線吸収剤の配合量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.01〜2重量部である。紫外線吸収剤が0.01重量部未満であると耐侯性が不十分であり、2重量部を越えると黄味が強くなるので調色性に劣り、またブリードアウトの原因にもなりやすい。紫外線吸収剤の配合量は、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、好ましくは、0.05〜1.8重量部であり、さらに好ましくは0.1〜1.5重量部である。
【0045】
芳香族ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、HIPS樹脂あるいはABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられ、芳香族ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂の配合量は、好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂との合計量の40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。
【0046】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、特に制限はなく、例えば、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂、(b)酸化チタン、(c)シリコーン系化合物、(d)ポリテトラフルオロエチレン、(e)板状無機充填剤、さらに必要により配合される蛍光増白剤等を一括溶融混練する方法、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂と(b)酸化チタン、(c)シリコーン系化合物をあらかじめ混練後、(d)ポリテトラフルオロエチレン、(e)板状無機充填剤及び必要により配合される増白剤等を配合し溶融混練する方法、さらには、(a)芳香族ポリカーボネート樹脂と(b)酸化チタンをあらかじめ混練後、その他の成分を順次或いは任意の順序で配合し溶融混練する方法などが挙げられる。
【0047】
本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物は、各種成形品の成形材料として使用できるが、難燃性である上に光線反射率、光線遮光性、寸法安定性に優れている。本発明樹脂組成物は、光線反射率も95%以上と高く、さらに1mm肉厚での全光線透過率も、0.6%以下で遮光性に優れ、又、1.6mmの肉厚でV−0の難燃性を有するので、特に、各種の光線反射板及びその周辺部材用材料として有用である。
本発明に係わる光線反射板の製法は特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂成形法により成形される。本発明の反射板用成形品は、難燃性である上、光線反射率に優れており、成形後の寸法変化が少なく、例えば、液晶表示装置のバックライト用光線反射板、電気・電子機器、広告灯などの照明用装置、自動車用メーターパネルなどの自動車用機器など難燃性の反射板として有用である。なお、本明細書においては、光線反射板は、例えば液晶表示装置バックライトのフレーム等の周辺部材も包含する。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。
【0049】
実施例および比較例においては次に記載の原材料を用いた。
(1)PC;ポリカーボネート樹脂、ポリ−4,4−イソプロピリデンジフェニルカーボネート、粘度平均分子量21,000、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユーピロンS−3000」。
(2)酸化チタン−1:無機処理無し、メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理酸化チタン、DUPONT(株)製「R−106」。
(3)酸化チタン−2:アルミナ、シリカ処理、メチルハイドロジェンポリシロキサン表面処理酸化チタン、石原産業(株)製「タイペークPC−3」。
【0050】
(4)シリコーン−1:60000cStの粘度を有するポリジメチルシロキサンをシリカに担持した粉末、ポリジメチルシロキサン含有量 60wt%、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製「トレフィルF202」。
(5)シリコーン−2:分岐シリコーン、信越化学(株)製「X−40−9805」。
【0051】
(6)タルク:林化成(株)製「#5000S」。
(7)蛍光増白剤:3−フェニル−7−(2H−ナフト(1,2−d)−トリアゾール−2−イル)クマリン、ハッコールケミカル(株)製「ハッコール PSR」。
【0052】
(8)PTFE−1:ポリテトラフルオロエチレン、ダイキン(株)製「ポリフロンF−201L」。
(9)PTFE−2;ポリテトラフルオロエチレン多層構造体、三菱レイヨン(株)製「メタブレンA−3800」。
【0053】
(10)安定剤:ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、旭電化(株)製「PEP−36」。
(11)紫外線吸収剤:2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、シプロ化成(株)製「シーソーブ709」。
(12)離型剤:ペンタエリスリトールジステアレート、日本油脂(株)製「H−476D」。
(13)ガラス繊維:日本電気硝子(株)製「T511」。
【0054】
また、組成物は次に記載の試験方法で評価した。
(14)燃焼性:シリンダー温度290℃で射出成形した1.6mm厚みのUL規格の試験片により垂直燃焼試験を行い、評価した。
(15)光線反射率:試験片として、シリンダー温度260℃及び300℃にて射出成形した厚み3mmの角板を用い、700nm及び400nmでの光線反射率を測定した。
(16)光線透過率:試験片としてシリンダー温度260℃及び300℃にて射出成形した厚み1mmの角板を用い、光線透過率を測定した。
【0055】
(17)外観:試験片としてシリンダー温度300℃にて射出成形した厚み3mmの角板を用い、目視にて成形品外観を観察し、「○」は外観良好、「×」は外観不良の基準で評価した。
(18)寸法変化:1.6mm厚みのUL規格の試験片を使用し、90℃で480時間保持後の試験片の長手方向の寸法変化を測定し、初期寸法に対する変化率(%)を算出した。
【0056】
実施例1
芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、酸化チタン−1を14重量部、シリコーン−1を1.8重量部、ポリテトラフルオロエチレン−1を0.25重量部、タルクを3.6重量部、蛍光増白剤を0.02重量部、安定剤を0.25重量部、紫外線吸収剤を0.3重量部、離型剤を0.2重量部配合し、タンブラーにて20分混合後、30mm二軸押出機にてシリンダー温度270℃でペレット化した。得られたペレットを用い、射出成形機にてシリンダー温度290℃で、UL規格の燃焼性試験片を成形し、燃焼性を評価した。さらに、シリンダー温度260℃及び300℃にて、各種試験片を成形し、評価を行った。評価結果を表−1に示した。
【0057】
実施例2〜実施例5及び比較例1〜4
表−1又は表−2に示す処方で原料を配合する以外は実施例1と同様にしてポリカーボネート樹脂組成物ペレットを製造し、実施例1と同様にして試験片を成形し、評価した。結果を表−1又は表−2に示した。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
表−1、表−2から明らかなように、酸化チタン−1を使用し、タルクを3.6重量部或いは13重量部含有する実施例1〜4の組成物は、燃焼性は1.6mmでV−0を示し、反射率は、700nmで94%以上、90℃、480時間熱処理後の成形品の寸法変化も−0.1%で有り、良好な難燃性と光線反射率を有し、成形後の寸法安定性も優れている。実施例5では、酸化チタン−1を無機処理をした酸化チタン−2に変更した結果、成形品外観がやや不良であるが、その他の評価は実施例1〜4と同等であった。これに対し、タルクを含まない点のみが実施例1と異なる、比較例1の寸法変化は、−0.2%と寸法安定性が劣った。また、タルクの添加量が、0.2重量部と少ない比較例2では、寸法変化が−0.2%であり、タルクを添加しない比較例1と同様に寸法変化の改善効果が認められなかった。タルク添加量を18重量部とした比較例3では、寸法精度は良好であったが、燃焼性がV−1となり不十分であった。タルクの代わりにガラス繊維を使用した比較例4では、成形品外観は不良で、燃焼性もV−2となり難燃性が不十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、(b)酸化チタン3〜30重量部、(c−1)シリカ粉末の表面にポリオルガノシロキサンを担持させた粉末状シリコーン0.1〜10重量部、(d)ポリテトラフルオロエチレン0.1〜1重量部、(e)タルク、マイカ、ガラスフレークから選択される少なくとも1種である板状無機充填剤0.5〜15重量部を含有し、1mm肉厚での全光線透過率が0.6%以下であり、1.6mmの肉厚でV−0の難燃性を有することを特徴とする難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
ポリオルガノシロキサンがポリジメチルシロキサンであることを特徴とする請求項1記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
(c−1)粉末状シリコーンのポリジメチルシロキサン含量が、50重量%以上である請求項2記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
(b)酸化チタンが、有機シロキサン化合物により表面処理されたものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
有機シロキサン化合物がハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする請求項4記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
(a)ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が、16,000〜30,000であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
(e)板状無機充填剤がタルクであることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
(a)ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、(f)蛍光増白剤を0.005〜0.1重量部含有することを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項9】
(a)ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、(g)紫外線吸収剤を0.01〜2重量部含有することを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる光線反射板。

【公開番号】特開2010−138412(P2010−138412A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57791(P2010−57791)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【分割の表示】特願2003−183430(P2003−183430)の分割
【原出願日】平成15年6月26日(2003.6.26)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】