説明

難燃性ラミネート構造からなる組成物

【課題】水溶性塩類(K,Na,Ca,NH,アルカノールアミン)の電解質中心の難燃剤組成物をフィルム(繊維)組成体に付設した難燃剤組成物が、外的要因(水分,湿気,紫外線,接触,衝撃,熱圧など)により離脱せず、難燃性はもとより強度や光透過性などの耐水耐久性力が改良された難燃性組成物を提供する。
【解決手段】フィルムシート組成体(中核)に、硫酸塩,炭酸塩,リン酸塩,硝酸塩,スルファミン酸塩、酸性硫酸塩(塩はK,Na,Mg,Ca,NH,アルカノールアミン(C2〜3))の水溶液を付設させ、次いでこの両面に包覆するようにフィルム(繊維物)を含むものを物理的化学的方法で接合して三層一体としたフィルム組成体に加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術の分野】
【0001】
本発明は難燃性シート状組成物において、特に三層ラミネートを1ユニットとしてなる中間層に、難燃剤を含ませてこれを包覆するようにサンドウィッチ状に接合した、三層ラミネート組成体に関するものであり、当該難燃剤組成物のより実用的有効性を向上させたものである。
【背景技術】
【0002】
難燃性のシートとしては無機繊維(ロックウール,アスベスト,グラスファイバー,石膏,シリカ系)の他に、有機のリン,臭素,ハロゲン化合物,高分子系ポリマー系(芳香族系)など多くの物が市販され実用に供されているが、本発明は単なるシート物(紙も含む)に電解質の安全安価な塩類を含ませてなる中間層を形成せしめて、これを単純に両側(サイド)から包覆するように接合し三層体とした。しかも透明度(可視)がある程度あり、視認できる事のある程度の工夫により、極めて多くの用途に利用でき、リサイクルやアフターケアのし易い、且つ万一出火しても有害物の発生や延焼を回避できる組成体を完成させたものである。
【0003】
一般的にいえば、本出願人が平成21年9月29日に出願した中で明示した技術思想をそのまま踏襲すればよいわけであるが、当該物は表面に難燃剤が露出してあり、他からの接触や水分,湿気の加入により、有効性が低下するきらいがあり、また用途が極めて限定した範囲での使用にとどまる。
その為、当該物に樹脂加工のバインダー,接着剤,増強剤,ビルダー,耐水化剤,シート強化剤などを混合させたり、二次またはそれ以上の加工プロセスを多用していたが、その反面、加工性の低下や不可,コスト高,処理トラブル,停留度の低下,その他の不都合なファクターが発生し、その解決が待たれていた。
【発明の内容】

【本発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、その中で今までの経験則から、当該難燃処理物(シート体)の両面に保護膜的なカバーをしてこれを封印して、三層一体のシート体とする事により、加工性,精度,用途などに大幅な拡大を図ることのできる方法を工夫して、本発明に至ったものである。
【0005】
従来から難燃性シートに樹脂加工をして、多くの物は架橋反応や水素結合相溶法をあげる、融剤の採用などが一般的である。本発明が採用する難燃剤は元素粉体物、しかも吸湿性,水溶性,脆化性の面で不利であり、混合加工でもその限界を成しており、第二に当該難燃剤加工した上からオーバーコート剤を塗布において、その接着性や均一性に難があり、インモールド加工や光硬化樹脂(PRT)や光ポリマー、あるいは金属原子(Cu,Cr,Ni,Alなど)のデポジット加工なども試みたが、高コストや収率の低下は避けられず、元来のローコストであり汎用性のある難燃剤組成物の開発意図からその解決が迫られている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は従来の課題を解説し、当該難燃剤の有用さをより発展させるためにラミネートパッケージ法として、中間層にサンドウィッチ状にフィルムまたは繊維体を坦持させて包み込み、ヒートシールやホットメルト,電着法,化学処理(接着剤など)により、ラミネーターで包接重層化させて、三層1セットのシート体を形成させ、外からの湿気,水分やその他の浸入を防護して、シート状組成体を創設するわけである。
【0007】
こうして中間層の難燃剤が充実した層構造を造成して強固な中間層になり、その周囲を包囲するように耐水性,剛性,耐性のあるシート状物で完封することで、万一の火災などの発生時において、難燃剤が中核に有在化して、火勢の拡大や延焼を防ぎ、時には鎮火して本来の効果を全う出来た。
【0008】
中間層の基本ベースが、たとえ易可燃性の熱可塑性の繊維(例えば、セルロース,レーヨン,キュプラなど)であっても、差し支えない。要は難燃剤組成物が確実に当該シートに充填されていればよい。またこの両面にアンダーコート層を設けて、両面に包覆するフィルム組成体(繊維体も含む)の布帛物を接合するわけである。こうして得た三層ラミネート体は光の屈折率がほぼ近接するように選択すれば透明度(可視性)は向上する。
【0009】
本発明の中核となるシート体としては、PET,PP,PE,PVC,PVA,PVB,アクリル,セルロース(レーヨン,ジアセテートなど),PC,PVDC,PS,シルク,ウールなどの日常布帛製品として使用されているものであって、比較的透明度が良く(概ね30〜40%以上)であり、厚みが0.01μm〜500μm位の物が好ましく、これらは2種以上での混合組成(例えば、ナイロン/PET,PVC/PVDC,PET/PP,シルク/レーヨン/ナイロンなど)も差し支えない。また本シート体は新品でなくてもリサイクル品や廃材利用品でよく、要はコア(核)としてサポーターになれればよい訳であり、事に本発明の三層ラミネートの意義が発揮されるわけである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、第一に中間層にシート状フィルムや組成体を用いて、これに特定の難燃剤組成物として平成21年9月29日出願の様なものを含有させる事とし、含有の手段はコート,含浸,接着,練り込み,マイクロカプセル化などで必要な量の付着物を当該シートに付設する。これをベース(中間層)となし、この両面に保護や耐久性などを向上させるために、フィルムや繊維体を積層し、ヒートシール,ホットメルト,バインダー,ボンドなどの方法で、これらを三層一体として中間層を封着するものである。
【0011】
こうして三層一体としたシート組成体は、耐水性,耐久性,摩擦強度を向上させ、本来の目的の難燃性も改善され、しかも外部からの侵入のファクターが解消されるもので、その特性が長時間維持できる
【0012】
本発明の中間層の難燃剤処理物のベースとしては、シート状布帛であって、その構造がフィルム,織布,不織布のいずれかでよく、具体的には
(1)天然繊維体として、セルロース,絹,麻,綿,カシミア,モヘア,セラミックなど
(2)化繊体として
再生体:レーヨン,ビスコース,テンセル,キュプラなど
半合成体:ジアセテート,トリアセテート,プロミックスなど
合成体:ポリアミド,アラミド,ポリエステル,ポリアクリロニトリル(PAN),PANコポリマー,ポリオレフィン(PP,PE,LPEなど),PVA,PVC,PVDC,ポリウレタン,スパンデックス,ポリフロン,ベンゾエート,PBT,ポリイミドなど
無機体:ガラス,PAN,ピッチ,ボロン,シリコン,アルミナ,ロックウールなど
メタル体:スチール,
これらのいずれでも有効であり、とりわけ天然体,化繊体の中から選ばれるのが一般的である。これらの中間層の材質はフィルムにも、織布や不織布などのいずれも含む。厚みは0.05〜1000μm、重さが5〜200g/mの物がスタンダードとして用いられる。また透明度は光の屈折率で約30%以上が好ましい。
【0013】
かくして本発明のシート組成体は、この効果をJISや消防法で定められた方法でテスト,確認した結果、元の中間層の単体よりも有利な数値が得られた。また中間層だけでは成しえなかった用途(水や湿気,紫外線,衝撃,熱,圧力,接触,ソルベントなど)への利用が可能となる事も確認した。
【0014】
本発明品は、厚みが0.05μm〜数mmの広い範囲に及び、光透過率も10〜90%と殆ど全ての範囲にコントロールすることもできる。これは両面に接合するフィルムや繊維体の付設が大いに貢献しているものである。むしろ(貼り合わせの)相乗作用が強度,耐久性で20〜200%も向上している。この効果に布帛シート物の、特に難燃剤の一層を拡大させる。
【本発明の効果】
【0015】
本発明は先に出願した(平成21年9月29日)難燃剤組成物の具体的な用途、例えばカーテン,カーペット,テーブルクロス,シーツ,横断幕,プロテクター,遮蔽板,壁紙(ウォールクロス),各種カバーやシートなど、及び衣料品,繊維フィルム加工品までの新しい用途に極めて有用であることと共に、環境面や安全面でも安価にして合理的なシート組成体の耐久力もキープできるメリットを有せる期待を発揮することができるものである。特に近年、アスベストやロックウールの安全性が問題視され、またリンやハロゲン(Br,F,I,Cl),アンチモン(Sb),ビスマス(Bi),タリウム(Tl),セレニウム(Se),アイソトープなどの難燃性分野へも明るい材料を提供することが可能である。且つ中間層にはベースのコアとなれば、リサイクル品や廃材のシート体をも利用できる訳であり、用途は広範に展開されることになる。
【0016】
以下、本発明の代表的具体例を実施例と併せて説明する。
【実施例1】
次の組成からなる難燃性フィルム体を試作した。
【表1】

上表の試作品組成物を用いて、次のフィルム布帛に塗着させて中間層とする難燃性フィルム体を試作して、以下の実験を行った。
(ア)PET繊維体(120g/m,光透過率:50%)
▲1▼塗着量:25g/m
▲2▼塗着量:32g/m
(イ)酢酸ビニルポリマーフィルム(22g/m,光透過率:68%)
▲3▼塗着量:18g/m
▲4▼塗着量:25g/m
(ウ)ナチュラルLDPEフィルム(8g/m
▲3▼塗着量:12g/m
▲4▼塗着量:18g/m
【0017】
次にこの6種の組成体(中間層)を用いて、▲1▼,▲2▼にはPVBフィルム(25g/m,光透過率:70%)を両面にヒートシール(120℃)して三層体に形成して本発明品の試作品とし、その性能の確認テストを行った。
(その1)光透過率(n=3の平均)
(ア)−▲1▼:48%(30%以上で反対面を視認できる)
(ア)−▲2▼:52%(30%以上で反対面を視認できる)
(その2)難燃性(JIS L1091,A−1法準拠)
【表2】

上段は本組成体そのもののデータを示し、続いて本組成体を20±2℃の水中に3時間浸漬して、これを乾燥させたもののデータを下段に示した。
【0018】
(その3)引張強度(n=3の平均)
次いで当該組成体の引張強度と収縮率を、それぞれJIS L1004,L1042の方法で確認した。
【表3】

【0019】
(その4)以下、同様のテストを試みた。
試料(イ)−▲3▼,▲4▼:キュプラ(21g/m,0.09μm厚,光透過率:68%)をSBRラテックス40%(米ダウケミカル社)を含浸加工して張り合わせ、7日間キュアリングして試料とする。
試料(ウ)−▲5▼,▲6▼:PET/PE(15g/m,0.08μm厚,光透過率:61%)をヒートシール(130℃)した。
(テスト1,3種)物理的データ
【表4】

【0020】
(テスト2)4検体の組成体試料((イ)−▲3▼と▲4▼,(ウ)−▲5▼と▲6▼)の難燃性を調べる(JIS L1091,A−1法準拠)
【表5】

【0021】
以上のテスト結果をまとめると、本発明の構成された組成体にすることにより、布帛シートとして難燃性の効果をより優位に導くことができ、且つ新しい応用分野が限りなく拡大することを確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本的に三層ラミネート体からなる難燃性シート組成物として、中間層に下記の難燃性組成物を含ませた事により、その両面を封印するように密封シールしてなる難燃性ラミネート構造からなる組成物。
(難燃化物)
硫酸塩,リン酸塩,珪酸塩,スルファミン酸塩,炭酸塩,硝酸塩,酸性硫酸塩,塩化物の、K,Na,,Mg,Ca,NH,アルカノールアミン(C2〜3)の塩類で、必要により親水性界面活性剤を0.2〜5w%含む。
【請求項2】
基本的に三層ラミネート体からなる難燃性シート組成体の中間層に第1項記載の難燃剤を含み、且つこれを透明性フィルム体で封印してなる難燃性ラミネート構造からなる組成物。

【公開番号】特開2012−71569(P2012−71569A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230961(P2010−230961)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(509036300)株式会社東企 (13)
【Fターム(参考)】