説明

難燃性材料

【課題】 本発明の課題は、自動車等の内装材や建築材に使用される難燃性材料を提供することにある。
【解決手段】多孔質基材表面に膨張黒鉛および/またはカプセル型難燃剤を含有する難燃剤分散液Aと、ホットメルト接着剤粉末分散液Bとを別々に塗布含浸せしめて難燃性材料を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の内装材や建材に使用される難燃性材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フードサイレンサ、ダッシュアウタサイレンサ、エンジンアンダーカバーサイレンサ、ダッシュサイレン等に使用される自動車用難燃性材料や建築用難燃性材料として、繊維のウェブシートをニードルパンチングによって絡合したニードル不織布あるいはニードルフェルト、繊維のウェブを合成樹脂によって結着した樹脂不織布あるいは樹脂フェルト、繊維の編織物等からなる繊維シートに、テトラクロロフタル酸、テトラブロモフタル酸、テトラブロモビスフェノールA、三酸化アンチモン、塩化パラフィン等の難燃剤を含有させたものが提供されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−126913号公報
【特許文献2】特開平8−27618号公報
【特許文献3】特開平8−260245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記難燃性材料は、繊維シートに難燃剤を含有せしめたものであるが、該繊維シートを難燃剤で充分難燃化することは難しく問題となっている。また難燃化に使用される難燃剤の毒性も問題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するための手段として、多孔質基材表面に膨張黒鉛および/またはカプセル型難燃剤を含有する難燃剤分散液Aと、ホットメルト接着剤粉末分散液Bとを別々に塗布含浸せしめた難燃性材料を提供するものである。
該難燃性材料は、多孔質基材表面に難燃剤分散液Aを塗布含浸し、次いでホットメルト接着剤粉末分散液Bを塗布含浸することが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の難燃性材料は、高い難燃性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
〔多孔質基材〕
本発明で使用される多孔質基材としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アラミド繊維等の合成繊維、羊毛、モヘア、カシミア、ラクダ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラ、蚕糸、キワタ、ガマ繊維、パルプ、木綿、ヤシ繊維、麻繊維、竹繊維、ケナフ繊維等の天然繊維、レーヨン(人絹、スフ)、ポリノジック、キュプラ、アセテート、トリアセテート等のセルロース系人造繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、石綿繊維等の無機繊維、あるいはこれらの繊維を使用した繊維製品のスクラップを解繊して得られた再生繊維の1種または2種以上の繊維からなる編織物、不織布、フェルト、およびそれらの積層物等の繊維集合体、連続気泡を有するポリウレタン発泡体(軟質ポリウレタン発泡体、硬質ポリウレタン発泡体を含む)、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、ポリスチレン発泡体、メラミン樹脂、尿素樹脂等のアミノ系樹脂発泡体、エポキシ樹脂発泡体、1価フェノール、多価フェノール等のフェノール系化合物からなるフェノール系樹脂発泡体等の連続気泡構造プラスチック発泡体、プラスチックビーズの焼結体等の公知の発泡体が出来る。
【0008】
また本発明の多孔質基材として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン10等のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル、ウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アセテート等の熱可塑性樹脂の中空繊維からなる多孔質基材を使用してもよい。
【0009】
更に本発明の多孔質基材として、融点が180℃以下である低融点繊維を使用してもよい。該低融点繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエステル繊維、ポリエステル共重合体繊維、ポリアミド繊維、ポリアミド共重合体繊維等がある。これらの低融点繊維は、単独あるいは2種以上組合せて使用してもよい。
【0010】
本発明で使用される多孔質基材には、合成樹脂バインダーが含浸されてもよい。該合成樹脂バインダーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ウレタン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレンターポリマー等の熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、フェノール樹脂、レゾルシン樹脂、アルキルレゾルシン樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステル等の熱硬化性樹脂が使用される。なお該合成樹脂を生成するウレタン樹脂プレポリマー、エポキシ樹脂プレポリマー、メラミン樹脂プレポリマー、尿素樹脂プレポリマー、フェノール樹脂プレポリマー、ジアリルフタレートプレポリマー、アクリルオリゴマー、多価イソシアナート、メタクリルエステルモノマー、ジアリルフタレートモノマー等のプレポリマー、オリゴマー、モノマー等の合成樹脂前駆体を使用してもよい。
上記合成樹脂は単独で、あるいは2種以上組合せて使用してもよく、通常、エマルジョン、ラテックス、水溶液、有機溶剤溶液等として使用される。
本発明の合成樹脂バインダーには水溶性の合成樹脂が使用されるが、該合成樹脂の樹脂粉末(例えば、フェノール樹脂粉末、尿素樹脂粉末、メラミン樹脂粉末等)を分散媒に分散させたものを合成樹脂バインダーとして使用してもよい。
【0011】
本発明における望ましい合成樹脂バインダーは、フェノール樹脂バインダーである。該フェノール樹脂は、フェノールやo−クレゾール等の一価フェノールやレゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、ビスフェノール等の多価フェノールからなる。なおエストニア産オイルシェールの乾留によって得られる多価フェノール混合物は、安価であり、かつ5−メチルレゾルシン等の反応性の高い各種アルキルレゾルシンを多量に含んでいるので、本発明の多価フェノール原料として特に好ましい。
【0012】
上記フェノール樹脂において、特に望ましいのは、フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物である。該フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物は、その水溶液の安定性が良く、常温で長期保存することが出来る。
【0013】
なお本発明の記フェノール樹脂は、その水溶液の安定性を向上せしめるために、スルホメチル化および/またはスルフィメチル化されても良い。
上記スルホメチル化に使用されるスルホメチル化剤としては、例えば、亜硫酸、重亜硫酸またはメタ重亜硫酸と、アルカリ金属またはトリメチルアミンやベンジルトリメチルアンモニウム等の4級アミンもしくは第4級アンモニウムと反応させて得られるアルデヒド付加物が例示される。該アルデヒド付加物とは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロラール、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、フェニルアセトアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒドと、上記水溶性亜硫酸塩とが付加反応して得られる物である。例えば、ホルムアルデヒドと亜硫酸塩からなるアルデヒド付加物は、ヒドロキシメタンスルホン酸塩である。
またスルフィメチル化剤としては、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート(ロンガリット)、ベンズアルデヒドナトリウムスルホキシラート等の脂肪族、芳香族のアルデヒドのアルカリ金属スルホキシラート類、ナトリウムハイドロサルファイト(亜ジチオン酸塩)類、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩等のヒドロキシアルカンスルフィン酸塩等が例示される。
【0014】
〔難燃剤分散液A〕
本発明の難燃剤分散液Aは、分散媒である水と、該水に分散される膨張黒鉛および/またはカプセル型難燃剤からなる。
該分散液Aの分散媒として水以外に、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、トリメチルノニルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、アビエチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、メチルオキシド、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、ショウノウ等のケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の上記グリコール類のエステル類やその誘導体、1,4−ジオキサン等のエーテル類、ジエチルセロルブ、ジエチルカルビトール、エチルラクテート、イソプロピルラクテート、ジグリコールジアセテート、ジメチルホルムアミド等の水溶性有機溶剤を使用してもよい。
【0015】
本発明の分散媒Aには、高級アルコールサルフェート(Na塩またはアミン塩)、アルキルアリルスルフォン酸塩(Na塩またはアミン塩)、アルキルアリルスルフォン酸塩(Na塩またはアミン塩)、アルキルナフタレンスルフォン酸塩(Na塩またはアミン塩)、アルキルナフタレンスルフォン酸塩縮合物、アルキルフォスフェート、ジアルキルスルフォサクシネート、ロジン石鹸、脂肪酸塩(Na塩またはアミン塩)等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキロールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアマイド、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等のノニオン性界面活性剤、オクタデシルアミンアセテート、イミダゾリン誘導体アセテート、ポリアルキレンポリアミン誘導体またはその塩、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルアミノエチルアルキルアミドハロゲニド、アルキルピリジニウム硫酸塩、アルキルトリメチルアンモニウムハロゲニド等のカチオン性界面活性剤を添加してもよい。 またポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸エステル部分鹸化物、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ハイドロキシエチルセルロース等の水溶性樹脂を上記分散媒Aに添加してもよい。
【0016】
〔膨張黒鉛〕
本発明で使用される膨張黒鉛は、天然黒鉛を硫酸、硝酸等の混合液に浸漬し、過酸化水素や塩酸等の酸化剤を添加したものであり、膨張開始温度が150℃〜300℃程度である。該膨張黒鉛の膨張容積は30〜300ml/g程度であり、粒径は300〜30メッシュ程度である。
【0017】
〔カプセル型難燃剤〕
本発明のカプセル型難燃剤は、難燃剤粉末を合成樹脂被膜で被覆したものである。上記難燃剤としては、例えば、燐酸アンモニウム、ポリ燐酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、ケイ酸アンモニウム、臭化アンモニウム、塩化アンモニウム等のアンモニウム塩、燐酸エステル類、スルファミン酸グアニジン、メチロールスルファミン酸グアニジン、硫酸グアニジン、燐酸1グアニジン、燐酸2グアニジン、メチロール燐酸グアニジン、燐酸エステルグアニジン塩、燐酸エステルジメチロールグアニジン、臭化水素酸グアニジン、テトラブロムフタル酸グアニジン、塩酸グアニジン、メチロール塩酸グアニジン、テトラホウ酸グアニジン等のグアニジン塩類、ホウ砂、水ガラス、錫酸ソーダ、タングステン酸ソーダ等の金属塩類が例示される。
上記難燃剤としては、燃焼時に有害なハロゲン含有ガスが発生しない化合物、例えば燐酸アンモニウム、ポリ燐酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、ケイ酸アンモニウム等のハロゲンを含まない化合物を選択することが望ましい。
【0018】
上記合成樹脂被膜に使用される合成樹脂としては、例えばポリスチレン樹脂、ポリメタクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が例示され、水不溶性の合成樹脂を選択することが望ましい。
【0019】
上記難燃剤を上記合成樹脂によって被覆するには、例えば界面重合法、インサイチュー重合法、コアセルベーション法、液中乾燥法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、噴霧乾燥法、高速気流中衝撃法等が適用される。
上記カプセル型難燃剤の粒子径は通常0.5〜60μm、望ましくは5〜40μmに設定される。
【0020】
上記カプセル型難燃剤としては、ポリ燐酸アンモニウム系カプセル型難燃剤としてTERRAJU C−60,C−70,C−80(いずれも商品名:BUDENHEIM IBERICA社製)、燐・窒素化合物系カプセル型難燃剤としてノネンB984−5(商品名:丸菱油化工業株式会社製)、ポリ燐酸アンモニウム系カプセル型難燃剤としてエクソリットAP462(クラリアントジャパン社製)等が市販されている。
【0021】
上記膨張黒鉛やカプセル型難燃剤を分散媒へ分散させる場合、ホモジナイザー、超音波乳化装置等を使用することが望ましい。
【0022】
〔ホットメルト接着剤粉末分散液B〕
本発明で使用されるホットメルト接着剤粉末分散液Bは、分散媒である水と、該分散媒に分散されるホットメルト接着剤粉末からなる。
該分散液Bの分散媒としては、水以外に、上記分散媒Aで使用される水溶性有機溶剤を使用してもよい。
また上記分散媒Aに添加される上記界面活性剤や水溶性樹脂を、該分散媒Bに添加しても良い。
【0023】
本発明で使用されるホットメルト接着剤粉末としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系樹脂、該ポリオレフィン系樹脂の変性物、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエステル共重合体、ポリアミド、ポリアミド共重合体、セルロース誘導体、ポリビニルエーテル、ポリウレタン、ビニルブロック共重合体、ブチラール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の粉末が使用される。
【0024】
本発明において、上記分散液A、分散液Bおよび合成樹脂バインダーには、所望により、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、珪藻土、ドロマイト、石膏、タルク、クレー、アスベスト、マイカ、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、鉄粉、アルミニウム粉、ガラス粉、石粉、高炉スラグ、フライアッシュ、セメント、ジルコニア粉等の無機充填材;天然ゴムまたはその誘導体;スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、イソプレンゴム、イソプレン−イソブチレンゴム等の合成ゴム;ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、澱粉、澱粉誘導体、ニカワ、ゼラチン、血粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子や天然ガム類;炭酸カルシウム、タルク、石膏、カーボンブラック、木粉、クルミ粉、ヤシガラ粉、小麦粉、米粉等の充填材;界面活性剤;ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;ブチリルステアレート、グリセリンモノステアレート等の脂肪酸のエステル類;脂肪酸アミド類;カルナバワックス等の天然ワックス類、合成ワックス類;パラフィン類、パラフィン油、シリコンオイル、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、グリス等の離型剤;アゾジカーボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アゾビス−2,2’−(2−メチルグロピオニトリル)等の有機発泡剤;重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム等の無機発泡剤;シラスバルーン、パーライト、ガラスバルーン、発泡ガラス、中空セラミックス等の中空粒体;発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン等のプラスチック発泡体や発泡粒;顔料、染料、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶化促進剤、燐系化合物、窒素系化合物、硫黄系化合物、ホウ素系化合物、臭素系化合物、グアニジン系化合物、燐酸塩系化合物、燐酸エステル系化合物、アミノ系樹脂、環式ホスホン酸エステル等の難燃剤、膨張黒鉛、防炎剤、撥水剤、撥油剤、防虫剤、防腐剤、ワックス類、滑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤;DBP、DOP、ジシクロヘキシルフタレートのようなフタール酸エステル系可塑剤やその他のトリクレジルホスフェート等の可塑剤等を添加、混合してもよい。
【0025】
上記分散液Aおよび分散液Bの上記多孔質基材へ塗布方法としては、スプレー、ナイフコーター、ロールコーター、カーテンフローコティング、ディッピング等の公知の塗布方法が適用される。
【0026】
本発明において、上記分散液Aと分散液Bは、別々に多孔質基材表面に塗布される。分散液Aと分散液Bを混合して塗布することは無い。
分散液Aおよび分散液Bを別々に塗布することによって、分散液Aおよび分散液Bを混合して塗布した場合よりも得られる難燃性材料の難燃性を向上させることができる。
即ち、分散液Aを多孔質基材に塗布後、分散液Bを塗布すると得られる難燃性材料の難燃性が向上する。
本発明において、分散液Aを多孔質基材に塗布後、引き続き分散液Bを塗布しても良いし、分散液Aを乾燥してから分散液Bを塗布しても良い。
【0027】
本発明の難燃性材料は、通常、平板状または所定形状にホットプレスされる。なお難燃性材料が低融点繊維や熱可塑性樹脂バインダーを含む場合は、加熱して該低融点繊維や熱可塑性樹脂バインダーを軟化し、その後コールドプレスによって所定形状に成形しても良い。本発明の難燃性材料は、複数枚重ねて使用してもよい。また本発明の難燃性材料を表皮材、裏面材、芯材、基材等の他の部材と積層して使用しても良い。
本発明の難燃性材料は、難燃性、他の部材との接着性に優れる。また本発明の難燃性材料を積層して得られる積層成形物の難燃性も優れる。
該積層成形物が難燃性に優れるのは、難燃性材料が他の部材と強く接着しており、燃焼時であっても該難燃性材料が他の部材と剥離し難く、難燃性材料の有する難燃効果を長時間発揮し続けることが出来るからであると考えられる。
本発明の難燃性材料は、例えば、自動車の天井材、ダッシュサイレンサ、フードサイレンサ、エンジンアンダーカバーサイレンサ、シリンダーヘッドカバーサイレンサ、ダッシュアウターサイレンサ、フロアマット、ダッシュボード、ドアトリアム等の内装材の基材あるいは該基材に積層される補強材、あるいは吸音材、断熱材、建築材料等として有用である。
【0028】
以下、本発明を実施例によって説明する。なお本発明は以下に示される実施例のみに限定されるものではない。
【0029】
〔実施例1〕
ポリエステル繊維(繊度:3.5dtex、繊維長:65mm)90質量%と低融点ポリエステル繊維(軟化点:120℃、繊度:4.0dtex、繊維長:40mm)10質量%からなる繊維ウェブをニードルパンチング法によってシート化して多孔質基材(目付量80g/m2)を得た。
次にスルホメチル化・フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物(50質量%固形分)60質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)1質量部、フッ素系撥水撥油剤(40質量%固形分)3質量部、内部離形剤としてパラフィンワックスエマルジョン(45質量%固形分)2質量部、を水34質量部に添加混合して熱硬化性樹脂水溶液(合成樹脂バインダー)を得た。
該合成樹脂バインダーを多孔質基材に固形分として多孔質基材の目付量の20質量%の塗布量になるようにロールで含浸せしめた後、更に膨張黒鉛(膨張開始温度:300℃、膨張率:150倍、粒径:40μm)10質量部、カプセル型難燃剤(TERRAJU C-70、BUDENHEIM IBERICA社製)7質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)0.5質量部、1%ポリビニルアルコール水溶液(鹸化度:99モル)82.5質量部からなる難燃剤分散液Aを調製し、該分散液Aをホモミクサーを用いて充分攪拌混合した後、上記合成樹脂バインダーが塗布された多孔質基材の表面(片面)にスプレー塗布により、該多孔質基材の目付量の40質量%の塗布量になるように塗布した。
更に該塗布面上にホットメルト接着剤(ポリアミド)粉体(融点:140℃、粒径5〜10μm)30質量部、アクリル樹脂エマルジョン(50質量%固形分)2質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)1質量部、水67質量部を添加混合してホットメルト接着剤粉末分散液Bを調製し、該分散液Bをスプレー塗布により該多孔質基材に、該多孔質基材の目付量の10質量%の塗布量になるように塗布した後、130〜140℃で6分間乾燥して合成樹脂バインダー(縮合物)をプレキュアして、本発明の難燃性材料を得た。
該難燃性材料を表皮材とし、該表皮材を、基材(フェノール樹脂が目付量の15質量%塗布されている目付量600g/m2 のガラスウール原綿)に、ホットメルト接着剤が塗布されている面が基材に重なるように重合して、200℃で50秒間熱圧プレス成形し厚さ10mmの積層成形物を得た。
【0030】
〔比較例1〕
上記実施例1で使用した難燃剤分散液Aとホットメルト接着剤粉末分散液Bとを混合して得られる混合液を、上記多孔質基材(合成樹脂バインダー含む)の表面(片面)にスプレー塗布して、難燃性材料を得た。この難燃性材料を用い、上記実施例1と同様にして積層成形物を得た。
【0031】
〔実施例2〕
スパンボンド法によって得られる目付量30g/m2 のポリエステル繊維からなる不織布(多孔質基材)に、スルホメチル化・フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物(45質量%固形分)50質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)0.5質量部、フッ素系撥水撥油剤(20質量%固形分)3質量部、燐/窒素系難燃剤(20質量%固形分)5質量部、水41.5質量部を添加混合して調製される熱硬化性樹脂水溶液(合成樹脂バインダー)を、該不織布に固形分として目付量の30質量%の塗布量になるようにロールで含浸、塗布せしめた。
更にカプセル型難燃剤(TERRAJU C-70、BUDENHEIM IBERICA社製)25質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)1質量部、フッ素系撥水撥油剤(20質量%固形分)0.5質量部、水73.5質量部を添加混合して調製した難燃剤分散液Aを、上記合成樹脂バインダーが塗布された不織布の表面(片面)にスプレー塗布により該不織布の30質量%の塗布量になるように塗布した。
更に、該塗布面上にホットメルト接着剤(ポリエステル)粉体(融点:130℃、粒径:5〜8μm)20質量部、フッ素系撥水撥油剤(20質量%固形分)0.5質量部、水79.5質量部を添加混合してホットメルト接着剤粉末分散液Bを調製し、該分散液Bをスプレー塗布により該不織布の目付量の8質量%になるように該不織布に塗布し、その後130〜140℃で3分間乾燥し、プレキュアして難燃性材料を得た。
該難燃性材料を表皮材とし、該表皮材を基材(フェノール樹脂が目付量の20質量%塗布されている目付量800g/m2のレジンフェルト)に、ホットメルト接着剤が塗布 されている面を重ねて重合し、210℃で60秒間熱圧プレス成形して厚さ8mmの積層成形物を得た。
【0032】
〔比較例2〕
上記実施例2における難燃剤分散液Aとホットメルト接着剤粉末分散液Bを塗布する順番を入れ替えて、ホットメルト接着剤粉末分散液Bを不織布に塗布後、難燃剤分散液Aを塗布したこと以外は、上記実施例2と同様にして難燃性材料を得た。更にこの難燃性材料を使用し、上記実施例2と同様にして積層成形物を得た。
【0033】
上記実施例1、実施例2、比較例1および比較例2で得られた成形物についての難燃性、接着力を測定した。
難燃性は、UL94規格に準じ測定した。試験試料は、長さ125mm、幅13mmである。
接着力は、表皮材と基材との接着力を JIS K 6854−2の180度はく離に準じ測定した。試験試料の幅は25mmである。
上記測定の結果を表1に示した。
【0034】
【表1】

【0035】
上記結果より、難燃剤分散液Aを塗布してからホットメルト接着剤粉末分散液Bを塗布して得られる難燃性材料の方が、該分散液Aおよび分散液Bの混合物、及びホットメルト接着剤粉末分散液Bを塗布してから難燃剤分散液Aを塗布して得られる難燃性材料よりも難燃性が向上することが判った。
また難燃性材料の他の部材との接着性においても、難燃剤分散液Aを塗布してからホットメルト接着剤粉末分散液Bを塗布した場合の方が、該分散液Aおよび分散液Bの混合物、及び分散液Bを塗布してから分散液Aを塗布した場合よりも向上することが判った。
【0036】
〔実施例3〕
ポリエステル繊維(繊度:15dtex、繊維長:65mm)90質量%とアラミド繊維(繊度:10dtex、繊維長:40mm)10質量%からなる繊維ウェブをニードルパンチング法によってシート化して多孔質基材(目付量100g/m2)を得た。
次にスルホメチル化・フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物(45質量%固形分)50質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)1質量部、フッ素系撥水撥油剤(40質量%固形分)3質量部、水46質量部を添加混合して熱硬化性樹脂水溶液(合成樹脂バインダー)を得た。
該合成樹脂バインダーを該多孔質基材に固形分として該多孔質基材の目付量の30質量%の塗布量になるようにロールで含浸、塗布した。
また膨張黒鉛(膨張開始温度:300℃、膨張率:150倍、粒径:50μm)20質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)0.5質量部、水79.5質量部を添加混合して難燃剤分散液Aを調製し、該分散液Aをホモミクサーを用いて充分攪拌混合した後、上記合成樹脂バインダーが塗布された多孔質基材の表面(片面)にスプレー塗布により、多孔質基材の目付量の30質量%の塗布量になるように塗布した。
更に該塗布面上に、ホットメルト接着剤(ポリアミド)粉体(融点120℃、粒径:5〜10μm)30質量部、アクリル樹脂エマルジョン(50質量%固形分)2質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)1質量部、水67質量部を添加混合したホットメルト接着剤水溶液をスプレー塗布により該多孔質基材の目付量の15質量%の塗布量になるように塗布した後、130〜140℃で5分間乾燥してプレキュアして、難燃性材料を得た。
該難燃性材料を表皮材とし、該表皮材を基材(フェノール樹脂が目付量の15質量%塗布されている目付量500g/m2のガラスウール原綿)に、ホットメルト接着剤が塗布されている面を重なるように重合ね、200℃で50秒間所定形状に熱圧プレス成形した。 得られた積層成形物の難燃性はUL94規格の5VAであり、吸音性、耐水性、耐候性に優れ、自動車のフードサイレンサ、ダッシュアウターサイレンサ、エンジンアンダーカバーサイレンサ、ダッシュサイレンサ等の自動車難燃性吸音材料、断熱材、建築材料として有用である。
【0037】
〔実施例4〕
ポリエステル繊維(繊度:3.0dtex、繊維長:45mm)75質量%と低融点ポリエステル繊維(軟化点:120℃、繊度:4.5dtex、繊維長:50mm)25質量%からなる繊維ウェブをニードルパンチング法によってシート化して多孔質基材(目付量80g/m2)を得た。
次に、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)1質量部、フッ素系撥水撥油剤(質量%固形分)3質量部、水96質量部を添加混合して撥水撥油剤水溶液を調製し、該水溶液を該多孔質基材に固形分として多孔質基材の目付量の5質量%の塗布量になるようにロールで含浸した。
その後、膨張黒鉛(膨張開始温度:250℃、膨張率:200倍、粒径70μm)20質量部、およびヘキサメチレンテトラミン含有ノボラックフェノール樹脂粉体(粒度:30μm)5質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)0.5質量部、2%ポリビニルアルコール(鹸化度:99モル)水溶液74.5質量部を添加混合して難燃剤巣分散液Aを調製し、該分散液Aをホモミクサーを用いて充分攪拌した後、該分散液Aを、上記撥水撥油剤水溶液が塗布された該多孔質基材の表面(片面)にスプレー塗布により該多孔質基材の目付量の35質量%の塗布量になるように塗布した。
更に該塗布面上にホットメルト接着剤(ポリアミド)粉体(融点:130℃、粒径:5〜10μm)20質量部、アクリル樹脂エマルジョン(50質量%固形分)5質量部、カーボンブラック分散液(30質量%固形分)1質量部、水74質量部を添加混合したホットメルト接着剤水溶液をスプレー塗布により、該多孔質基材の目付量の10質量%の塗布量になるよう塗布した後、120〜140℃で5分間乾燥して、難燃性材料を得た。
該難燃性材料を表皮材とし、基材(フェノール樹脂の目付量が20質量%塗布されている目付量600g/m2のレジンフェルト原綿)に、ホットメルト接着剤が塗布されている面を重なるように重合ね、200℃で50秒間所定形状に熱圧プレス成形して積層成形物を得た。
得られた積層成形物の難燃性はUL94規格のV−0であり、吸音性、撥水撥油性に優れ、自動車の天井材、内装材や建築、家電の難燃材、撥水剤、吸音材として有用である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の難燃性材料は、例えば、自動車の天井材、ダッシュサイレンサ、フードサイレンサ、エンジンアンダーカバーサイレンサ、シリンダーヘッドカバーサイレンサ、ダッシュアウターサイレンサ、フロアマット、ダッシュボード、ドアトリアム等の内装材の基材あるいは該基材に積層される補強材、あるいは吸音材、断熱材、建築材料等として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材表面に膨張黒鉛および/またはカプセル型難燃剤を含有する難燃剤分散液Aと、ホットメルト接着剤粉末分散液Bとを別々に塗布含浸せしめたことを特徴とする難燃性材料。
【請求項2】
多孔質基材表面に難燃剤分散液Aを塗布含浸し、次いでホットメルト接着剤粉末分散液Bを塗布含浸する請求項1に記載の難燃性材料。

【公開番号】特開2006−83505(P2006−83505A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271684(P2004−271684)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000243892)名古屋油化株式会社 (78)
【Fターム(参考)】