説明

難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品

【課題】高度な難燃性、良好な耐熱性および物性を有する植物由来原料を用いた難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品を提供する。
【解決手段】(A)ポリ乳酸および/または乳酸共重合体(A成分)100重量部に対して、(B)スチレン系樹脂(B成分)1〜100重量部、(C)下記式で表される有機リン化合物(C成分)1〜100重量部、および(D)充填剤(D成分)1〜200重量部を含有する難燃性樹脂組成物。


(式中、X、Xは同一もしくは異なり、−(AL)−(Ar)nで示される芳香族置換アルキル基であり、ここでALは脂肪族炭化水素基、Arは芳香族基、nは1〜3の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度な難燃性、良好な耐熱性および物性を有する植物由来原料を用いた難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品に関する。さらに詳しくは特定の有機リン化合物を含有しかつ実質的にハロゲンフリーの難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の成形品を得るための原料として、一般的にポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル―ブタジエン―スチレン(ABS)、ポリアミド(PA6、PA66)、ポリエステル(PET、PBT)、ポリカーボネート(PC)等の樹脂が使用されている。しかしながら、これらの樹脂は石油資源から得られる原料を用いて製造されており、近年、石油資源の枯渇や地球環境等の問題が懸念されており、植物などの生物起源物質から得られる原料を用いた樹脂の製造が求められている。特に地球環境の問題を考えるとき、植物由来原料を用いた樹脂は、使用後に焼却されても植物の生育時に吸収した二酸化炭素量を考慮すると、炭素の収支として中立であるというカーボンニュートラルという考えから、地球環境への負荷の低い樹脂であると考えられる。
【0003】
一方、これらの植物由来原料を用いた樹脂を工業材料、特に電気/電子関係用部品、OA関連用部品または自動車部品に利用する場合、安全上の問題から難燃性の付与が必要である。
【0004】
これまでにも、植物由来原料を用いた樹脂、特にポリ乳酸樹脂の難燃化に関しては種々の試みがなされており、ある程度の難燃化は達成されている(特許文献1〜6)。しかしながら、これらの難燃化処方は多量の難燃剤を用いたものであり、さらに難燃剤の特性から樹脂本来の物性や耐熱性を損なうものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−164014公報
【特許文献2】特開2004−277552公報
【特許文献3】特開2005−023260公報
【特許文献4】特開2005−139441公報
【特許文献5】特開2007−246730公報
【特許文献6】特開2008−019294公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の目的は、高度な難燃性、良好な耐熱性および物性を有する植物由来原料を用いた難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
本発明の第2の目的は、特定の有機リン化合物を含有し、かつ実質的にハロゲンフリーの難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らの研究によれば、前記本発明の目的は、(A)ポリ乳酸および/または乳酸共重合体(A成分)100重量部に対して、(B)スチレン系樹脂(B成分)1〜100重量部、(C)特定の環状有機リン化合物(C成分)1〜100重量部、および(D)充填剤(D成分)1〜200重量部を含有する難燃性樹脂組成物およびそれからの成形品により達成される。
【0008】
すなわち、本発明によれば、
1.(A)ポリ乳酸および/または乳酸共重合体(A成分)100重量部に対して、(B)スチレン系樹脂(B成分)1〜100重量部、(C)下記式(1)で表される有機リン化合物(C成分)1〜100重量部、および(D)充填剤(D成分)1〜200重量部を含有する難燃性樹脂組成物、
【化1】

(式中、X、Xは同一もしくは異なり、下記式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【化2】

(式中、ALは炭素数1〜5の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、Arは置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基である。nは1〜3の整数を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。)
2.有機リン化合物(C成分)は、下記式(3)および下記式(4)で表される有機リン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である前項1記載の難燃性樹脂組成物、
【化3】

(式中、R、Rは同一または異なっていてもよく、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基である。R、R、R、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基から選択される置換基である。)
【化4】

(式中、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。R11、R12、R13およびR14は、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。ALおよびALは、同一又は異なっていても良く、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基である。ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。pおよびqは0〜3の整数を示し、ArおよびArはそれぞれALおよびALの任意の炭素原子に結合することができる。)
3.有機リン化合物(C成分)が、下記式(5)で表される前項1記載の難燃性樹脂組成物、
【化5】

(式中、R21、R22は同一もしくは異なり、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。)
4.有機リン化合物(C成分)が、下記式(1−a)で示される化合物である前項1記載の難燃性樹脂組成物、
【化6】

5.有機リン化合物(C成分)が、下記式(6)で表される前項1記載の難燃性樹脂組成物、
【化7】

(式中、R31およびR34は、同一又は異なっていても良く、水素原子または炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基である。R33およびR36は、同一または異なっていても良く、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基である。R32およびR35は、同一または異なっていてもよく、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。)
6.有機リン化合物(C成分)が、下記式(1−b)で示される化合物である前項1記載の難燃性樹脂組成物、
【化8】

7.有機リン化合物(C成分)が、下記式(7)で表される前項1記載の難燃性樹脂組成物、
【化9】

(式中、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。R11、R12、R13およびR14は、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。ALおよびALは、同一又は異なっていても良く、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基である。ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。pおよびqは0〜3の整数を示し、ArおよびArはそれぞれALおよびALの任意の炭素原子に結合することができる。)
8.有機リン化合物(C成分)が、下記式(1−c)で示される化合物である前項1記載の難燃性樹脂組成物、
【化10】

9.有機リン化合物(C成分)が、下記式(8)で表される前項1記載の難燃性樹脂組成物、
【化11】

(式中、R41およびR44は、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。R42、R43、R45およびR46は、同一または異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。)
10.有機リン化合物(C成分)が、下記式(1−d)で示される化合物である前項1記載の難燃性樹脂組成物、
【化12】

11.有機リン化合物(C成分)の酸価が0.7mgKOH/g以下である前項1記載の難燃性樹脂組成物、
12.UL−94規格の難燃レベルにおいて、少なくともV−2を達成する前項1記載の難燃性樹脂組成物、
13.スチレン系樹脂(B成分)は、200℃、5kg荷重におけるMVR値が1〜100cm/10minである前項1記載の難燃性樹脂組成物、
14.スチレン系樹脂(B成分)は、220℃、10kg荷重におけるMVR値が1〜100cm/10minである前項1記載の難燃性樹脂組成物、
15.1.8MPa荷重で測定したHDTにおいて、HDT保持率が95%以上である前項1記載の難燃性樹脂組成物、および
16.前項1記載の難燃性樹脂組成物より形成された成形品、
が提供される。
【0009】
本発明によれば、樹脂本来の特性を損なうことなく、高い難燃性を達成する植物由来原料を用いた難燃性樹脂組成物が得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の難燃性樹脂組成物およびそれから形成された成形品は、従来の植物由来原料を用いた樹脂組成物に比べて下記の利点が得られる。
(i)実質的にハロゲン含有難燃剤を使用することなく高度な難燃性を有する植物由来原料を用いた樹脂組成物が得られる。
(ii)難燃剤としての有機リン化合物は、植物由来原料を用いた樹脂に対して優れた難燃効果を有するので、比較的少ない使用量でもV−2レベル、特に好ましくはV−0レベルが達成される。
(iii)難燃剤として使用する有機リン化合物の構造並びに特性に起因して、植物由来原料を用いた樹脂の成形時または成形品の使用時に、植物由来原料を用いた樹脂の熱劣化をほとんど起さず、耐熱性に優れた樹脂組成物が得られる。従って難燃性、機械的強度および耐熱性がいずれもバランスよく優れた組成物が得られる。
(iv)難燃剤としての有機リン化合物は、無色であり植物由来原料を用いた樹脂に対して相溶性であるから、透明性に優れた成形品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の難燃性樹脂組成物についてさらに詳細に説明する。
本発明において樹脂成分であるポリ乳酸および/または乳酸共重合体(A成分)の中で、ポリ乳酸はL−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸またはそれらの混合物、またはL−乳酸の環状2量体であるL−ラクタイド、D−乳酸の環状2量体であるD−ラクタイド、L−乳酸とD−乳酸からの環状2量体であるメソ−ラクタイドまたはそれらの混合物を用いた重合体を挙げることができる。
【0012】
本発明に使用するポリ乳酸の製造方法としては、特に限定されるものではないが、一般に公知の溶融重合法、或いは、更に固相重合法を併用して製造される。具体例としては、米国特許第1,995,970号、米国特許第2,362,511号、米国特許第2,683,136号に開示されており、通常ラクタイドと呼ばれる乳酸の環状二量体から開環重合により合成される。米国特許第2,758,987号では、乳酸の環状2量体(ラクタイド)を溶融重合する開環重合法が開示されている。
【0013】
また、本発明において樹脂成分であるポリ乳酸および/または乳酸共重合体(A成分)の中で、乳酸共重合体は、乳酸類を主原料とする共重合体であり、例えば、乳酸―ヒドロキシカルボン酸共重合体や乳酸―脂肪族多価アルコール―脂肪族多塩基酸共重合体などを挙げることができる。
【0014】
本発明で使用される乳酸共重合体に用いられるヒドロキシカルボン酸の具体例としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ青草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等が挙げられ、単独或いは2種以上の混合物として使用することができる。さらにヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体、例えばグリコール酸の二量体であるグリコライドや6−ヒドロキシカプロン酸の環状エステルであるε−カプロラクトンを使用することもできる。
【0015】
脂肪族多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、
ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族ジオールが挙げられ、単独或いは2種以上の混合物として使用することができる。
【0016】
脂肪族多塩基酸の具体例としては、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族二塩基酸が挙げられ、単独或いは2種以上の混合物として使用することができる。
【0017】
乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体は通常ラクタイドとヒドロキシカルボン酸の環状エステル中間体から開環重合により合成され、その製造法に関しては米国特許第3,635,956号、米国特許第3,797,499号に開示されている。米国特許第5,310,865号には、乳酸とヒドロキシカルボン酸の混合物を原料として、直接脱水重縮合を行う方法が開示されている。また、米国特許第4,057,537号には、乳酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状2量体、例えばラクタイドやグリコライドとε−カプロラクトンを触媒の存在下、溶融重合する開環重合法が開示されている。開環重合によらず直接脱水重縮合により乳酸共重合体を製造する場合には、乳酸類と必要に応じて他のヒドロキシカルボン酸を好ましくは有機溶媒、特にフェニルエーテル系溶媒の存在下で共沸脱水縮合し、特に好ましくは共沸により留出した溶媒から水を除き実質的に無水の状態にした溶媒を反応系に戻す方法によって重合することにより、本発明に適した重合度の乳酸共重合体が得られる。
【0018】
また、米国特許第5,428,126号には、乳酸、脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸の混合物を直接脱水縮合する方法が開示されている。また、欧州特許公報第0712880A2号には、ポリ乳酸と脂肪族二価アルコールと脂肪族二塩基酸とのポリマーを有機溶媒存在下で縮合する方法が開示されている。
【0019】
本発明において、ポリ乳酸や乳酸共重合体の製造に際し、適当な分子量調節剤、分岐剤、その他の改質剤などの添加は差し支えない。
本発明においては乳酸類のみの重合体であるポリ乳酸が好適に用いられ、とりわけL−乳酸を主原料とするポリL−乳酸樹脂が好ましい。また、通常L−乳酸は光学異性体であるD−乳酸を含有しており、その含有量は15重量%以下が好ましく、さらに好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。光学異性体を多く含む場合はポリ乳酸の結晶性が低減され、結果として得られるポリ乳酸はより柔軟になる。柔軟性を得たい成形体に対しては好適に利用されるが、耐熱性を要求される組成物に対しては好ましくない。
【0020】
B成分のスチレン系樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレンまたはビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体の単独重合体または共重合体、これらの単量体とアクリロニトリル、メチルメタクリレート等のビニル単量体および/または1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン単量体との共重合体、ポリブタジエン等のジエン系ゴム、エチレン・プロピレン系ゴム、アクリル系ゴムなどにスチレンおよび/またはスチレン誘導体、またはスチレンおよび/またはスチレン誘導体と他のビニルモノマーをグラフト重合させたものが例示できる。スチレン系樹脂の具体例としては、例えばポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)等の樹脂、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0021】
また、上記芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体との共重合体を水素添加することによって得られる水素添加スチレン系三元共重合体も挙げられる。水素添加スチレン系三元共重合体は、共役ジエンを繰り返し単位に含む重合体を水素化した三元共重合体である。本発明で好適に使用でされる共役ジエンを繰り返し単位に含む重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソペンタジエン共重合体等であり、水素添加方法は特に限定されることはなく、具体例としては、特開2007−301449号公報に開示されるような先行技術に基づいて実施することができる。水素添加スチレン系三元共重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合体を水素化したスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン三元共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン共重合体を水素化したスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン三元共重合体(SEPS)、スチレン−イソペンタジエン共重合体を水素化したスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン三元共重合体(SEEPS)等が挙げられる。
【0022】
本発明のスチレン系樹脂の重合方法としては特に限定されることはなく、アニオン重合法、カチオン重合法、遊離基重合法、配位重合法、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の従来技術を用いて製造したものを用いることができる。
【0023】
また、ゴム状重合体に芳香族ビニル単量体の重合体、または芳香族ビニル単量体およびビニル単量体の共重合体をグラフト重合させたゴム変性スチレン系樹脂(耐衝撃性ポリスチレン)は、マトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなる重合体をいい、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル単量体、必要に応じてビニル単量体を加えて単量体混合物を公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合または乳化重合することにより得られる。
【0024】
前記ゴム状重合体の例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)等のジエン系ゴムおよび上記ジエンゴムを水素添加した飽和ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、およびエチレン−プロピレン−ジエンモノマー三元共重合体(EPDM)等を挙げることができ、特にジエン系ゴムが好ましい。
【0025】
上記のゴム状重合体の存在下に重合させるグラフト共重合可能な単量体混合物中の必須成分の芳香族ビニル単量体は、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等であり、スチレンが最も好ましい。
必要に応じて添加することが可能な、ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等が挙げられる。
【0026】
ゴム変性スチレン樹脂におけるゴム状重合体は、1〜80重量%、好ましくは2〜70重量%である。グラフト重合可能な単量体混合物は、99〜20重量%、好ましくは98〜30重量%である。
【0027】
本発明のB成分として使用するスチレン系樹脂、特に耐衝撃性ポリスチレンは、そのJIS−K−7210−1999に従って、200℃、5kg荷重の条件で測定したMVR値が1〜100cm/10minの範囲が好ましく、2〜80cm/10minの範囲がより好ましく、3〜60cm/10minの範囲がさらに好ましく、5〜50cm/10minの範囲が特に好ましい。
【0028】
また、本発明のB成分として使用するスチレン系樹脂、特にAS樹脂やABS樹脂は、そのJIS−K−7210−1999に従って、220℃、10kg荷重の条件で測定したMVR値が1〜100cm/10minの範囲が好ましく、2〜80cm/10minの範囲がより好ましく、3〜60cm/10minの範囲がさらに好ましく、5〜50cm/10minの範囲が特に好ましい。
【0029】
スチレン系樹脂のMVR値が1cm/10min未満では樹脂組成物の押出時や成形時等の加工性が低下することとなり、100cm/10minを超えると樹脂組成物の耐熱性や機械物性が低下することとなる。
【0030】
本発明のB成分として使用するスチレン系樹脂は、その分子量の尺度である還元粘度ηsp/Cが好ましくは0.2〜1.5dl/gであり、より好ましくは0.3〜1.4dl/gである。ここで、還元粘度ηsp/Cとは、溶液濃度0.5g/100mlのトルエン溶液を30℃で測定して求めた値である。
【0031】
スチレン系樹脂の還元粘度ηsp/Cが0.2dl/gより低い場合は、得られる樹脂組成物の耐熱性や機械物性が低下する。また、1.5dl/gよりも高い場合は、樹脂組成物の押出時や成形時等の加工性が低下することとなる。
スチレン系樹脂のMVR値や還元粘度ηsp/Cに関する上記条件を満たすための手段としては、重合開始剤量、重合温度、連鎖移動剤量の調整等を挙げることができる。
【0032】
本発明におけるB成分のスチレン系樹脂の配合量は、A成分100重量部に対して、1〜100重量部であり、好ましくは5〜90重量部であり、より好ましくは8〜70重量部であり、さらに好ましくは10〜50重量部であり、特に好ましくは15〜30重量部である。
【0033】
本発明において、C成分として使用する有機リン化合物は、下記式(1)で表される。
【化13】

(式中、X、Xは同一もしくは異なり、下記式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【化14】

(式中、ALは炭素数1〜5の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、Arは置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基である。nは1〜3の整数を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。)
【0034】
有機リン化合物は、好ましくは下記式(3)および下記式(4)で表される有機リン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0035】
【化15】

(式中、R、Rは同一または異なっていてもよく、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基である。R、R、R、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基から選択される置換基である。)
【0036】
【化16】

(式中、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。R11、R12、R13およびR14は、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。ALおよびALは、同一又は異なっていても良く、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基である。ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。pおよびqは0〜3の整数を示し、ArおよびArはそれぞれALおよびALの任意の炭素原子に結合することができる。)
【0037】
有機リン化合物は、より好ましくは下記式(5)、(6)、(7)または(8)で表される有機リン化合物である。
【0038】
【化17】

【0039】
上記式(5)において、R21、R22は同一もしくは異なり、その芳香環に置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、そのうちフェニル基が好ましい。R21およびR22のフェニル基、ナフチル基またはアントリル基は、その芳香環の水素原子が置換されていてもよく、置換基としてはメチル、エチル、プロピル、ブチルもしくはその芳香環の結合基が、酸素原子、イオウ原子または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
【0040】
【化18】

【0041】
上記式(6)において、R31およびR34は、同一又は異なっていても良く、水素原子または炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基である。好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基であり、特に好ましくは水素原子である。R33およびR36は、同一または異なっていても良く、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基であり、好ましくはメチル基またはエチル基である。R32およびR35は、同一または異なっていてもよく、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。好ましくはフェニル基を表し、芳香族環上の炭素原子を介してリンに結合している部分以外のどの部分に置換基を有していてもよく、メチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香族環への結合基が、酸素、イオウまたは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基である。
【0042】
上記式(6)中、R32およびR35の好ましい具体例としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基等を挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
【0043】
【化19】

【0044】
上記式(7)において、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。ArおよびArの好ましい具体例としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
【0045】
11、R12、R13およびR14は、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。好ましくはフェニル基を表し、芳香族環上の炭素原子を介してリンに結合している部分以外のどの部分に置換基を有していてもよく、メチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香族環への結合基が、酸素、イオウまたは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基である。
【0046】
上記式(7)中、ALおよびALは、同一又は異なっていても良く、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基である。好ましくは炭素数1〜3の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、特に好ましくは炭素数1〜2の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基である。
【0047】
上記式(7)中、ALおよびALの好ましい具体例としては、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、トリメチレン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等が挙げられ、特にメチレン基、エチレン基、およびエチリデン基が好ましい。
【0048】
上記式(7)中、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。好ましくはフェニル基を表し、芳香族環上の炭素原子を介してリンに結合している部分以外のどの部分に置換基を有していてもよく、メチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香族環への結合基が、酸素、イオウまたは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基である。
【0049】
上記式(7)中、pおよびqは0〜3の整数を示し、ArおよびArはそれぞれALおよびALの任意の炭素原子に結合することができる。pおよびqは、好ましくは0または1であり、特に好ましくは0である。
【0050】
【化20】

【0051】
上記式(8)において、R41およびR44は、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。好ましくは水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、または置換基を有しても良いフェニル基である。R41およびR44がフェニル基の場合、芳香族環上の炭素原子を介してリンに結合している部分以外のどの部分に置換基を有していてもよく、メチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香族環への結合基が、酸素、イオウまたは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基である。
【0052】
上記式(8)中、R41およびR44の好ましい具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基(異性体を含む)、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基等が挙げられ、特に水素原子、メチル基、またはフェニル基が好ましい。
【0053】
42、R43、R45およびR46は、同一または異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。好ましくは、フェニル基を表し、芳香族環上の炭素原子を介してリンに結合している部分以外のどの部分に置換基を有していてもよく、メチル、エチル、プロピル(異性体を含む)、ブチル(異性体を含む)もしくはその芳香族環への結合基が、酸素、イオウまたは炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基を介する炭素数6〜14のアリール基である。
【0054】
上記式(8)中、R42、R43、R45およびR46の好ましい具体例としては、フェニル基、クレジル基、キシリル基、トリメチルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、クミル基、ナフチル基、4−ベンジルフェニル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
【0055】
前記式(1)で表される有機リン化合物(C成分)は、当該樹脂に対して極めて優れた難燃効果を発現する。本発明者らが知る限り、従来当該樹脂のハロゲンフリーによる難燃化において、少量の難燃剤での難燃化は困難であり、実用上多くの問題点があった。
【0056】
ところが本発明によれば、前記有機リン化合物(C成分)は驚くべきことにそれ自体単独の少量使用により当該樹脂の難燃化が容易に達成され、樹脂本来の特性、特に耐熱性を損なうことが無い。
【0057】
しかしながら、本発明ではC成分の他に、C成分以外のリン化合物、フッ素含有樹脂または他の添加剤を、C成分の使用割合の低減、成形品の難燃性の改善、成形品の物理的性質の改良、成形品の化学的性質の向上またはその他の目的のために当然配合することができる。
【0058】
本発明の難燃性樹脂組成物における難燃剤としての有機リン化合物(C成分)は、前記式(1)で表されるが、最も好ましい代表的化合物は下記式(1−a)、(1−b)、(1−c)または(1−d)で示される有機リン化合物である。
【0059】
【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【0060】
次に本発明における前記有機リン化合物(C成分)の合成法について説明する。C成分は、以下に説明する方法以外の方法によって製造されたものであってもよい。
C成分は例えばペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、続いて酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属化合物により処理し、次いでアラルキルハライドを反応させることにより得られる。
【0061】
また、ペンタエリスリトールにアラルキルホスホン酸ジクロリドを反応させる方法や、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させることによって得られた化合物にアラルキルアルコールを反応させ、次いで高温でArbuzov転移を行う方法により得ることもできる。後者の反応は、例えば米国特許第3,141,032号明細書、特開昭54−157156号公報、特開昭53−39698号公報に開示されている。
【0062】
C成分の具体的合成法を以下説明するが、この合成法は単に説明のためであって、本発明において使用されるC成分は、これら合成法のみならず、その改変およびその他の合成法で合成されたものであってもよい。より具体的な合成法は後述する調製例に説明される。
【0063】
(I)C成分中の前記(1−a)の有機リン化合物;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、次いでターシャリーブタノールにより酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシドにより処理し、ベンジルブロマイドを反応させることにより得ることができる。
(II)C成分中の前記(1−b)の有機リン化合物;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、次いでターシャリーブタノールにより酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシドにより処理し、1−フェニルエチルブロマイドを反応させることにより得ることができる。
(III)C成分中の前記(1−c)の有機リン化合物;
ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、次いでターシャリーブタノールにより酸化させた反応物を、ナトリウムメトキシドにより処理し、2−フェニルエチルブロマイドを反応させることにより得ることができる。
(IV)C成分中の前記(1−d)の有機リン化合物;
ペンタエリスリトールにジフェニルメチルホスホン酸ジクロリドを反応させることにより得ることができる。
【0064】
また別法としては、ペンタエリスリトールに三塩化リンを反応させ、得られた生成物とジフェニルメチルアルコールの反応生成物を触媒共存下で加熱処理する事により得られる。
【0065】
前述したC成分は、その酸価が0.7mgKOH/g以下、好ましくは0.5mgKOH/g以下であるものが使用される。酸価がこの範囲のC成分を使用することにより、難燃性および色相に優れた成形品が得られ、かつ熱安定性の良好な成形品が得られる。B成分は、その酸価が0.4mgKOH/g以下のものが最も好ましい。ここで酸価とは、サンプル(C成分)1g中の酸成分を中和するのに必要なKOHの量(mg)を意味する。
【0066】
さらに、C成分は、そのHPLC純度が、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%であるものが使用される。かかる高純度のものは成形品の難燃性、色相、および熱安定性に優れ好ましい。ここでB成分のHPLC純度の測定は、以下の方法を用いることにより効果的に測定が可能となる。
【0067】
カラムは野村化学(株)製Develosil ODS−7 300mm×4mmφを用い、カラム温度は40℃とした。溶媒としてはアセトニトリルと水の6:4(容量比)の混合溶液を用い、5μlを注入した。検出器はUV−260nmを用いた。
【0068】
B成分中の不純物を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、水、メタノール等の溶剤でリパルプ洗浄(溶剤で洗浄、ろ過を数回繰り返す)を行う方法が最も効果的で、且つコスト的にも有利である。
【0069】
前記C成分は、ポリ乳酸および/または乳酸共重合体成分(A成分)100重量部に対して1〜100重量部、好ましくは5〜90重量部、より好ましくは10〜70重量部、特に好ましくは15〜50重量部の範囲で配合される。C成分の配合割合は、所望する難燃性レベル、樹脂成分(A成分およびB成分)の種類などによりその好適範囲が決定される。これら組成物を構成するA成分、B成分、およびC成分以外であっても必要に応じて他の成分を本発明の目的を損なわない限り使用することができ、他の難燃剤、難燃助剤、フッ素含有樹脂の使用によってもC成分の配合量を変えることができ、多くの場合、これらの使用によりC成分の配合割合を低減することができる。
【0070】
本発明においてD成分として使用する充填剤は、成形品の物性、殊に機械的特性を改良する目的で配合されるものであればよく、無機あるいは有機の充填剤いずれであってもよい。好ましくは繊維状の充填剤である。
【0071】
充填剤(D成分)としては、例えばガラスチョップドファイバー、ガラスミルドファイバー、ガラスロービングストランド、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラス粉末等のガラス系充填剤;カーボンファイバー、カーボンミルドファイバー、カーボンロービングストランド、カーボンフレーク等のカーボン系充填剤;タルク、マイカ、ワラストナイト、カオリン、モンモリロナイト、ベントナイト、セピオライト、ゾノトライト、クレー、シリカ等の無機充填剤;アラミドファイバー等の有機充填剤;酸化チタン等の無機顔料、カーボンブラック等が挙げられ、これらのなかから選択するか、またはこれらの組み合わせとすることができる。また、樹脂組成物を補強する目的では、繊維状の充填剤を配合することが好ましく、ガラスチョップドファイバー、ガラスミルドファイバー、カーボンファイバーまたはカーボンミルドファイバー、もしくはこれらの混合物を配合することが好ましい。
【0072】
これらの充填剤は必要に応じて収束剤または表面処理剤を用いることができる。収束剤または表面処理剤の種類としては特に限定はされないが、一般に官能性化合物、例えばエポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等が挙げられ、樹脂に適したものを選択することが好ましい。好ましくはエポキシ系化合物、より好ましくはビスフェノールA型または/およびノボラック型エポキシ樹脂である。
【0073】
前記充填剤(D成分)を配合する場合、その割合は前記樹脂成分(A成分)100重量部に対して、1〜200重量部、好ましくは5〜150重量部、より好ましくは10〜100重量部である。200重量部より多く配合すると樹脂組成物の難燃性および物性低下の原因となり、また操作性、成形性についても困難となる場合があり、表面外観悪化の原因となる場合がある。
【0074】
本発明の難燃性樹脂組成物の調製は、樹脂成分(A成分およびB成分)、有機リン化合物(C成分)、充填剤(D成分)、および必要に応じてその他成分を、V型ブレンダー、スーパーミキサー、スーパーフローター、ヘンシェルミキサーなどの混合機を用いて予備混合し、かかる予備混合物は混練機に供給し、溶融混合する方法が好ましく採用される。混練機としては、種々の溶融混合機、例えばニーダー、単軸または二軸押出機などが使用でき、なかでも二軸押出機を用いて樹脂組成物を150〜300℃、好ましくは170〜280℃の温度で溶融して、サイドフィーダーにより液体成分を注入し、押出し、ペレタイザーによりペレット化する方法が好ましく使用される。
【0075】
また、D成分の充填剤種、殊にアスペクト比率の高い充填剤種によっては、プレブレンドによる溶融混合法でアスペクト比率の低下が起こり、得られる樹脂組成物の機械特性が低下する可能性があり、サイドフィーダーによる添加方法が好ましく使用される。
【0076】
本発明の難燃性樹脂組成物は、実質的にハロゲンを含有せず、非常に高い難燃性能を有し、家電製品部品、電気・電子部品、自動車部品、機械・機構部品、化粧品容器などの種々の成形品を成形する材料として有用である。具体的には、ブレーカー部品、スイッチ部品、モーター部品、イグニッションコイルケース、電源プラグ、電源コンセント、コイルボビン、コネクター、リレーケース、ヒューズケース、フライバクトランス部品、フォーカスブロック部品、ディストリビューターキャップ、ハーネスコネクターなどに好適に用いることができる。さらに、薄肉化の進むハウジング、ケーシングまたはシャーシ、例えば、電子・電気製品(例えば電話機、パソコン、プリンター、ファックス、コピー機、テレビ、ビデオデッキ、オーディオ機器などの家電・OA機器またはそれらの部品など)のハウジング、ケーシングまたはシャーシに有用である。特に優れた耐熱性、難燃性が要求されるプリンターの筐体、定着ユニット部品、ファックスなど家電・OA製品の機械・機構部品などとしても有用である。
【0077】
成形方法としては射出成形、ブロー成形、プレス成形等、特に限定されるものではないが、好ましくはペレット状の樹脂組成物を射出成形機を用いて、射出成形することにより製造される。
【実施例】
【0078】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、評価は下記の方法で行った。
【0079】
(1)難燃性(UL−94評価)
難燃性は厚さ1/16インチ(1.6mm)のテストピースを用い、難燃性の評価尺度として、米国UL規格のUL−94に規定されている垂直燃焼試験に準じて評価を行った。
UL−94垂直燃焼試験は、試験片5本を一組の試験として行い、どの試験片も10秒間の着炎を2回繰り返す。但し、一度目の着炎で全焼する試験片に関しては、その限りではない。1回目の着炎後、炎を取り去った後の燃焼時間を測定し、消炎後、2回目の着炎を行う。2回目の着炎後、炎を取り去った後の燃焼時間を測定する。5本一組の試験で、計10回の燃焼時間が測定でき、いずれの燃焼時間も10秒以内で消火し、10回の燃焼時間の合計が50秒以内であり、且つ、滴下物が綿着火をおこさないものがV−0、いずれの燃焼時間も30秒以内で消火し、10回の燃焼時間の合計が250秒以内であり、且つ、滴下物が綿着火をおこさないものがV−1、いずれの燃焼時間も30秒以内で消火し、10回の燃焼時間の合計が250秒以内であり、且つ、滴下物が綿着火をおこすものがV−2、この評価基準以下のものをnotVとした。
また、V−2の組成に関しては、1回目の着炎で滴下した滴下物の消炎時間を測定し、下記基準にて判定した。
○:滴下物の消炎時間が30秒未満のもの
×:滴下物の消炎時間が30秒以上のもの
【0080】
(2)耐熱性(荷重たわみ温度;HDT)
ISO75−2に従った方法により6.35mm(1/4インチ)試験片を用いて1.8MPaの荷重で荷重たわみ温度(HDT)を測定した。また、荷重たわみ温度保持率(M)は、使用したベース樹脂(A成分とB成分の混合物)からの成形品の荷重たわみ温度x(℃)と難燃性樹脂組成物(ベース樹脂とC成分の混合物)からの成形品の荷重たわみ温度y(℃)を測定し、M=(y/x)×100(%)の計算式により算出した。
【0081】
(3)有機リン化合物の酸価
JIS−K−3504に準拠して測定を実施した。
【0082】
(4)有機リン化合物のHPLC純度
試料をアセトニトリルと水の6:4(容量比)の混合溶液に溶解し、その5μlをカラムに注入した。カラムは野村化学(株)製Develosil ODS−7 300mm×4mmφを用い、カラム温度は40℃とした。検出器はUV−260nmを用いた。
【0083】
(5)有機リン化合物の31PNMR純度
核磁気共鳴測定装置(JEOL製、JNM−AL400)により、リン原子の核磁気共鳴を測定し(DMSO−d、162MHz、積算回数3072回)、積分面積比をリン化合物の31PNMR純度とした。
【0084】
(6)スチレン系樹脂のMVR
JIS−K−7210−1999に従って、200℃、5kg荷重の条件または220℃、10kg荷重の条件で測定を実施した。
【0085】
[調製例1]
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド(FR−1)の調製
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器にペンタエリスリトール816.9g(6.0モル)、ピリジン19.0g(0.24モル)、トルエン2250.4g(24.4モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に三塩化リン1651.8g(12.0モル)を該滴下ロートを用い添加し、添加終了後、60℃にて加熱攪拌を行った。反応後、室温まで冷却し、得られた反応物に塩化メチレン26.50部を添加し、氷冷しながらターシャリーブタノール889.4g(12.0モル)および塩化メチレン150.2g(1.77モル)を滴下した。得られた結晶をトルエンおよび塩化メチレンにて洗浄しろ過した。得られたろ取物を80℃、1.33×10Paで12時間乾燥し、白色の固体1341.1g(5.88モル)を得た。得られた固体は31P、HNMRスペクトルにより2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイドである事を確認した。
【0086】
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器に得られた2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイド1341.0g(5.88モル)、DMF6534.2g(89.39モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に氷冷下ナトリウムメトキシド648.7g(12.01モル)を添加した。氷冷にて2時間攪拌した後に、室温にて5時間攪拌を行った。さらにDMFを留去した後に、DMF2613.7g(35.76モル)を添加し、該反応混合物に氷冷にてベンジルブロマイド2037.79g(11.91モル)滴下した。氷冷下3時間攪拌した後、DMFを留去し、水8Lを加え、析出した固体を濾取、水2Lで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶1863.5g(4.56モル)を得た。得られた結晶は31P、HNMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイドである事を確認した。収率は76%、31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.06mgKOH/gであった。
【0087】
H−NMR(DMSO−d,300MHz):δ7.2−7.4(m,10H),4.1−4.5(m,8H),3.5(d,4H)、31P−NMR(DMSO−d,120MHz):δ23.1(S)、融点:255−256℃、元素分析 計算値:C,55.89;H,5.43、測定値:C,56.24;H,5.35
【0088】
[調製例2]
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド(FR−2)の調製
攪拌機、温度計、コンデンサーを有する反応容器に、3,9−ジベンジロキシ−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン22.55g(0.055モル)、ベンジルブロマイド19.01g(0.11モル)およびキシレン33.54g(0.32モル)を充填し、室温下攪拌しながら、乾燥窒素をフローさせた。次いでオイルバスで加熱を開始し、還流温度(約130℃)で4時間加熱、攪拌した。加熱終了後、室温まで放冷し、キシレン20mLを加え、さらに30分攪拌した。析出した結晶をろ過により分離し、キシレン20mLで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール40mLをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール20mLで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶を得た。生成物は質量スペクトル分析、H、31P核磁気共鳴スペクトル分析および元素分析でビスベンジルペンタエリスリトールジホスホネートであることを確認した。収量は20.60g、収率は91%、31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.05mgKOH/gであった。
【0089】
H−NMR(DMSO−d,300MHz):δ7.2−7.4(m,10H),4.1−4.5(m,8H),3.5(d,4H)、31P−NMR(DMSO−d,120MHz):δ23.1(S)、融点:257℃
【0090】
[調製例3]
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジα−メチルベンジル−3,9−ジオキサイド(FR−3)の調製
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器にペンタエリスリトール816.9g(6.0モル)、ピリジン19.0g(0.24モル)、トルエン2250.4g(24.4モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に三塩化リン1651.8g(12.0モル)を該滴下ロートを用い添加し、添加終了後、60℃にて加熱攪拌を行った。反応後、室温まで冷却し、得られた反応物に塩化メチレン5180.7g(61.0モル)を添加し、氷冷しながらターシャリーブタノール889.4g(12.0モル)および塩化メチレン150.2g(1.77モル)を滴下した。得られた結晶をトルエンおよび塩化メチレンにて洗浄しろ過した。得られたろ取物を80℃、1.33×10Paで12時間乾燥し、白色の固体1341.1g(5.88モル)を得た。得られた固体は31P、HNMRスペクトルにより2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイドである事を確認した。
【0091】
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器に得られた2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイド1341.0g(5.88モル)、DMF6534.2g(89.39モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に氷冷下ナトリウムメトキシド648.7g(12.01モル)を添加した。氷冷にて2時間攪拌した後に、室温にて5時間攪拌を行った。さらにDMFを留去した後に、DMF2613.7g(35.76モル)を添加し、該反応混合物に氷冷にて1−フェニルエチルブロマイド2204.06g(11.91モル)滴下した。氷冷下3時間攪拌した後、DMFを留去し、水8Lを加え、析出した固体を濾取、水2Lで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色の鱗片状結晶1845.9g(4.23モル)を得た。得られた固体は31PNMR、HNMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジα−メチルベンジル−3,9−ジオキサイドである事を確認した。31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.03mgKOH/gであった。
【0092】
H−NMR(CDCl,300MHz):δ7.2−7.4(m,10H),4.0−4.2(m,4H),3.4−3.8(m,4H),3.3(qd,4H),1.6(ddd,6H)、31P−NMR(CDCl,120MHz):δ28.7(S)、融点:190−210℃、元素分析 計算値:C,57.80;H,6.01、測定値:C,57.83;H,5.96
【0093】
[調製例4]
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイド(FR−4)の調製
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器にペンタエリスリトール816.9g(6.0モル)、ピリジン19.0g(0.24モル)、トルエン2250.4g(24.4モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に三塩化リン1651.8g(12.0モル)を該滴下ロートを用い添加し、添加終了後、60℃にて加熱攪拌を行った。反応後、室温まで冷却し、得られた反応物に塩化メチレン5180.7g(61.0モル)を添加し、氷冷しながらターシャリーブタノール889.4g(12.0モル)および塩化メチレン150.2g(1.77モル)を滴下した。得られた結晶をトルエンおよび塩化メチレンにて洗浄しろ過した。得られたろ取物を80℃、1.33×10Paで12時間乾燥し、白色の固体1341.1g(5.88モル)を得た。得られた固体は31P、HNMRスペクトルにより2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイドである事を確認した。
【0094】
温度計、コンデンサー、滴下ロートを備えた反応容器に得られた2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン,3,9−ジヒドロ−3,9−ジオキサイド1341.0g(5.88モル)、DMF6534.2g(89.39モル)を仕込み、攪拌した。該反応容器に氷冷下ナトリウムメトキシド648.7g(12.01モル)を添加した。氷冷にて2時間攪拌した後に、室温にて5時間攪拌を行った。さらにDMFを留去した後に、DMF2613.7g(35.76モル)を添加し、該反応混合物に氷冷にて(2−ブロモエチル)ベンゼン2183.8g(11.8モル)滴下した。氷冷下3時間攪拌した後、DMFを留去し、水8Lを加え、析出した固体を濾取、水2Lで2回洗浄した。得られた粗精製物とメタノール4Lをコンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に入れ、約2時間還流した。室温まで冷却後、結晶をろ過により分離し、メタノール2Lで洗浄した後、得られたろ取物を120℃、1.33×10Paで19時間乾燥し、白色の粉末1924.4g(4.41モル)を得た。得られた固体は31PNMR、HNMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイドである事を確認した。31PNMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.03mgKOH/gであった。
【0095】
H−NMR(CDCl,300MHz):δ7.1−7.4(m,10H),3.85−4.65(m,8H),2.90−3.05(m,4H),2.1−2.3(m,4H)、31P−NMR(CDCl,120MHz):δ31.5(S)、融点:245−246℃、元素分析 計算値:C,57.80;H,6.01、測定値:C,58.00;H,6.07
【0096】
[調製例5]
2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド(FR−6)の調製
攪拌装置、攪拌翼、還流冷却管、温度計を備えた10リットル三つ口フラスコに、ジフェニルメチルホスホン酸ジクロリドを2058.5g(7.22モル)とペンタエリスリトール468.3g(3.44モル)、ピリジン1169.4g(14.8モル)、クロロホルム8200gを仕込み、窒素気流下、60℃まで加熱し、6時間攪拌させた。反応終了後、クロロホルムを塩化メチレンで置換し、当該反応混合物に蒸留水6Lを加え攪拌し、白色粉末を析出させた。これを吸引濾過により濾取し、得られた白色物をメタノールを用いて洗浄した後、100℃、1.33×10Paで10時間乾燥し、白色の固体1156.2gを得た。得られた固体は31P−NMR、H−NMRスペクトルおよび元素分析により2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイドである事を確認した。31P−NMR純度は99%であった。また、本文記載の方法で測定したHPLC純度は99%であった。酸価は0.3mgKOH/gであった。
【0097】
H−NMR(DMSO−d6,300MHz):δ7.20−7.60(m,20H),5.25(d,2H),4.15−4.55(m,8H)、31P−NMR(DMSO−d6,120MHz):δ20.9、融点:265℃、元素分析 計算値:C,66.43;H,5.39、測定値:C,66.14;H,5.41
【0098】
実施例、比較例で用いる各成分は以下のものを用いた。
(I)ポリ乳酸樹脂(A成分)
(i)市販のポリ乳酸(Nature Works製 4032D;ポリL−乳酸樹脂)を用いた(以下PLAと称する)。
(II)スチレン系樹脂(B成分)
(i)市販の耐衝撃性ポリスチレン(PSジャパン(株)製PSJポリスチレンH9152)を用いた(以下HIPSと称する、200℃、5kg荷重におけるMVR=5.7cm/10min)。
(ii)市販のABS樹脂(日本エイアンドエル(株)製サンタックUT−61)を用いた(以下ABSと称する、220℃、10kg荷重におけるMVR=35cm/10min)。
(iii)市販のAS樹脂(日本エイアンドエル(株)製ライタック―A BS−203)を用いた(以下ASと称する、220℃、10kg荷重におけるMVR=18cm/10min)。
(III)有機リン化合物(C成分)
(i)調製例1で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド{前記式(1−a)の有機リン化合物(以下FR−1と称する)}
(ii)調製例2で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジベンジル−3,9−ジオキサイド{前記式(1−a)の有機リン化合物(以下FR−2と称する)}
(iii)調製例3で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジα−メチルベンジル−3,9−ジオキサイド{前記式(1−b)の有機リン化合物(以下FR−3と称する)}
(iv)調製例4で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ジ(2−フェニルエチル)−3,9−ジオキサイド{前記式(1−c)の有機リン化合物(以下FR−4と称する)}
(v)調製例5で合成した2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン,3,9−ビス(ジフェニルメチル)−3,9−ジオキサイド{前記式(1−d)の有機リン化合物(以下FR−5と称する)}
(IV)その他の有機リン化合物
(i)1,3−フェニレンビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)フォスフェート](大八化学工業(株)製PX−200)を用いた(以下PX−200と称する)
(V)充填剤(D成分)
(i)市販のガラスミルドファイバー(日東紡製PFE−301)を用いた(以下MFと称する)。
(ii)市販のガラスチョップドファイバー(日東紡製CS3PE−455)を用いた(以下CSと称する)。
【0099】
[実施例1〜48および比較例1〜24]
表1〜6記載の各成分を表1〜6記載の量(重量部)でタンブラーにて配合し、15mmφ二軸押出機(テクノベル製、KZW15)にてペレット化した。得られたペレットを80℃の熱風乾燥機にて24時間乾燥を行った。乾燥したペレットを射出成形機((株)日本製鋼所製 J75EIII)にて成形した。成形板を用いて評価した結果を表1〜6に示した。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
【表3】

【0103】
【表4】

【0104】
【表5】

【0105】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の難燃性樹脂組成物は、家電製品部品、電気・電子部品、自動車部品、機械・機構部品、化粧品容器などの種々の成形品を成形する材料として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリ乳酸および/または乳酸共重合体(A成分)100重量部に対して、(B)スチレン系樹脂(B成分)1〜100重量部、(C)下記式(1)で表される有機リン化合物(C成分)1〜100重量部、および(D)充填剤(D成分)1〜200重量部を含有する難燃性樹脂組成物。
【化1】

(式中、X、Xは同一もしくは異なり、下記式(2)で表される芳香族置換アルキル基である。)
【化2】

(式中、ALは炭素数1〜5の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、Arは置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基である。nは1〜3の整数を示し、ArはAL中の任意の炭素原子に結合することができる。)
【請求項2】
有機リン化合物(C成分)は、下記式(3)および下記式(4)で表される有機リン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化3】

(式中、R、Rは同一または異なっていてもよく、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基である。R、R、R、Rは同一または異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基、ナフチル基、またはアントリル基から選択される置換基である。)
【化4】

(式中、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。R11、R12、R13およびR14は、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。ALおよびALは、同一又は異なっていても良く、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基である。ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。pおよびqは0〜3の整数を示し、ArおよびArはそれぞれALおよびALの任意の炭素原子に結合することができる。)
【請求項3】
有機リン化合物(C成分)が、下記式(5)で表される請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化5】

(式中、R21、R22は同一もしくは異なり、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。)
【請求項4】
有機リン化合物(C成分)が、下記式(1−a)で示される化合物である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化6】

【請求項5】
有機リン化合物(C成分)が、下記式(6)で表される請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化7】

(式中、R31およびR34は、同一又は異なっていても良く、水素原子または炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基である。R33およびR36は、同一または異なっていても良く、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基である。R32およびR35は、同一または異なっていてもよく、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。)
【請求項6】
有機リン化合物(C成分)が、下記式(1−b)で示される化合物である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化8】

【請求項7】
有機リン化合物(C成分)が、下記式(7)で表される請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化9】

(式中、ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。R11、R12、R13およびR14は、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。ALおよびALは、同一又は異なっていても良く、炭素数1〜4の分岐状または直鎖状の脂肪族炭化水素基である。ArおよびArは、同一又は異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。pおよびqは0〜3の整数を示し、ArおよびArはそれぞれALおよびALの任意の炭素原子に結合することができる。)
【請求項8】
有機リン化合物(C成分)が、下記式(1−c)で示される化合物である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化10】

【請求項9】
有機リン化合物(C成分)が、下記式(8)で表される請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化11】

(式中、R41およびR44は、同一又は異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基またはフェニル基、ナフチル基もしくはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。R42、R43、R45およびR46は、同一または異なっていても良く、フェニル基、ナフチル基またはアントリル基であり、その芳香環に置換基を有していてもよい。)
【請求項10】
有機リン化合物(C成分)が、下記式(1−d)で示される化合物である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【化12】

【請求項11】
有機リン化合物(C成分)の酸価が0.7mgKOH/g以下である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項12】
UL−94規格の難燃レベルにおいて、少なくともV−2を達成する請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項13】
スチレン系樹脂(B成分)は、200℃、5kg荷重におけるMVR値が1〜100cm/10minである請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項14】
スチレン系樹脂(B成分)は、220℃、10kg荷重におけるMVR値が1〜100cm/10minである請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項15】
1.8MPa荷重で測定したHDTにおいて、HDT保持率が95%以上である請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1記載の難燃性樹脂組成物より形成された成形品。

【公開番号】特開2010−254900(P2010−254900A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109250(P2009−109250)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】