説明

難燃性熱可塑性ポリカーボネート組成物、製造方法、およびその利用方法

ポリカーボネート成分と、a)塊状重合ABSおよびb)ABSとは異なる衝撃改質剤を含む衝撃改質組成物と、難燃剤とを組み合わせて含む難燃性熱可塑性組成物。この組成物は、一方ではその良好な耐熱性能を維持しながら、衝撃強さおよび流動性などの物理的性質の改良されたバランスを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリカーボネートを含む難燃性熱可塑性組成物、その製造方法、およびその使用方法に関し、特に改良された機械的性質を有する衝撃改質熱可塑性ポリカーボネート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートは、自動車部品から電子的応用までの広範囲な物品および構成要素の製造において有用である。ポリカーボネートは、特に電子的用途に広範囲に用いられているので、難燃性を有するポリカーボネートを供給することが望ましい。臭素および/または塩素を含む多くの既知の難燃剤がポリカーボネートに使用された。臭素処理されたおよび/または塩素処理された難燃剤は、これら難燃剤から発生する不純物および/または副生成物が、製造およびポリカーボネートの使用に関連する設備を腐食できるので望ましくない。また臭素化処理および/または塩素化処理難燃剤は、ますます規制上の制約を受ける。
【0003】
様々な充填剤、リン含有化合物、ある種の塩を含む非ハロゲン処理の難燃剤が、ポリカーボネートのために提案された。しかしながら、上記の難燃剤の使用も、特に薄い試料の場合、臭素化処理および/または塩素化処理難燃剤の使用無しでは、難燃性の厳しい規格に合致するのは困難であった。
【0004】
またポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマーも、非臭素化処理および/または非塩素化処理難燃剤として使用することが提案された。例えば、Cellaの米国特許出願公開第2003/0105226号は、ポリシロキサン単位およびポリカーボネート単位を含み、ここにおいてポリシロキサンセグメントが、1〜20のポリシロキサン単位を含むポリシロキサン改質ポリカーボネートを開示している。他のポリシロキサン改質ポリカーボネートは、例えば、Gosenの米国特許第5,380,795号、Kress他の米国特許第4,756,701号、Umeda他の米国特許第5,488,086号、およびNodera他に対する欧州特許第0692522号において説明されている。
【0005】
前述の難燃剤は、それぞれの意図した目的に関しては適切であるが、産業界においては燃性能の継続的改良に関する絶えざる要望が存在する。1つの需要は、溶け落ちる傾向の無い、すなわち、炎に当たったときに孔が形成されない物品に関するものである。薄い物品の場合は、溶け落ちる孔がより急速に形成されるので、特に難題である。また非臭素化処理および/または非塩素化処理難燃剤は、ポリカーボネート組成物の所望の物理的性質、特に衝撃強さに悪影響を与える。
【0006】
芳香族ポリカーボネートは、自動車部品から電子器具までの広範囲な用途の物品および構成要素の製造に関して有用である。組成物の強靱性を改良するために、通常衝撃改質剤が芳香族ポリカーボネートに加えられる。衝撃改質剤は、しばしば比較的に硬質な熱可塑性相およびエラストマー(ゴム状)相を有しており、塊状または乳化重合によって成型することもできる。アクリロニトリルーブタジエンースチレン(ABS)衝撃改質剤が、例えば、米国特許第3,130,177号において一般的に説明されている。乳化重合ABS衝撃改質剤を含むポリカーボネート組成物は、特に米国特許出願公開第2003/0119986号において説明されている。米国特許出願公開第2003/0092837号は、塊状重合ABSおよび乳化重合ABSの組合せの使用を開示している。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0105226号
【特許文献2】米国特許第5,380,795号
【特許文献3】米国特許第4,756,701号
【特許文献4】米国特許第5,488,086号
【特許文献5】欧州特許第0692522号
【特許文献6】米国特許第3,130,177号
【特許文献7】米国特許出願公開第2003/0119986号
【特許文献8】米国特許出願公開第2003/0092837号
【特許文献9】米国特許第3,511,895号
【特許文献10】米国特許第3,981,944号
【特許文献11】米国特許第5,414,045号
【特許文献12】米国特許第6,545,089号
【特許文献13】米国特許第4,154,775号
【特許文献14】英国特許第2,043,083号
【非特許文献1】Underwriter研究所告示94「プラスチック材料の可燃性試験、UL94」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当然ポリカーボネート組成物において使用するための、他の様々な種類の衝撃改質剤も説明されている。多くの衝撃改質剤は、強靱性を改良するというそれらの意図する目的には適しているが、加工性、加水分解安定性、難燃性能、ならびに/あるいは特に東南アジアにおいて見られるような高湿度および/または高温に長く曝される場合の低い温度衝撃強さなど、他の性質に悪影響を及ぼす。ポリカーボネート組成物の熱劣化安定性は、特にゴム状衝撃改質剤を加えた場合にしばしば劣化する。従って、当技術分野において衝撃強さ、流動性および難燃性能を含む物理的性質の良好な組合せを有する耐衝撃性改質熱可塑性ポリカーボネート組成物の必要性が、継続して残されている。また、衝撃強さなどの性質の実質的な劣化無しに、改良された難燃性能が達成されたならば有利である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態において、熱可塑性組成物は、ポリカーボネート成分と、a)隗状重合ABSおよびb)ABSとは異なる衝撃改質剤を含む衝撃改質組成物と、難燃剤とを組み合わせて含む。
【0009】
別の実施形態において、物品は上記の熱可塑性組成物を含む。
【0010】
更に別の実施形態において、物品の製造方法は、上記熱可塑性組成物の成型、押出、または造形を含む。
【0011】
更に別の実施形態において、改質された衝撃強さおよび難燃性を有する熱可塑性組成物の製造方法は、ポリカーボネートと、a)隗状重合ABSおよびb)ABSとは異なる衝撃改質剤を含む衝撃改質組成物と、難燃剤とを混合する段階を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者らは、特定の衝撃改質剤の組合せを使用すると、ポリカーボネートを含む熱可塑性組成物に対して、一方ではこれらの良好な難燃性能を維持しながら、衝撃力および流動性などの物理的性質の大きく改良されたバランスが得られることを見出した。特に、組成物中のブタジエン水準が高い状態において、難燃性能に著しい悪影響を及ぼすことなく物理的性質が改良されることは、類似の組成物の難燃性能および物理的性質が著しく悪くなるので、特に予想外のことである。更に、衝撃改質剤および難燃剤の特定の組合せを使用することにより、良好な衝撃強さに加えて、他の物理的性質の有利な組合せを得ることができることを見出した。
【0013】
本明細書において使用する場合、「ポリカーボネート」および「ポリカーボネート樹脂」という用語は、式(1)の反復構造のカーボネート単位を有する組成物を意味する。
【0014】
【化1】

【0015】
式中、R1基の全数の少なくとも約60パーセントが芳香族有機基であり、残りが脂肪族、脂環式、または芳香族基である。一実施形態において、R1はそれぞれ芳香族有機基、より具体的に言えば、式(2)の基である。
【0016】
【化2】

【0017】
式中、A1およびA2はそれぞれ、単環式二価のアリール基であり、Y1は、AlをA2から分離させる1つまたは2つの原子を有する架橋基である。典型的な実施例において、1つの原子がAlをA2から分離させる。この種類の基の限定されない例は、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O2)-、-C(O)-、メチレン、シクロヘキシルメチレン、2-[2.2.1]-ビシクロへプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、およびアダマンチリデンである。架橋基Y1は、炭化水素基またはメチレン、シクロヘキシリデン、イソプロピリデンなどの飽和炭化水素基であることもできる。
【0018】
ポリカーボネートは、式(3)のジヒドロキシ化合物を含む式HO-R1-OHを有するジヒドロキシ化合物の界面反応によって作ることもできる。
HO-A1-Y1-A2-OH (3)
式中、Y1、A1およびA2は上記の通りである。式(4)のビスフェノール化合物も同様に含まれる。
【0019】
【化3】

【0020】
式中、RaおよびRbは、それぞれハロゲン原子または一価の炭化水素基を表し、同じであっても異なっていてもよく、pおよびqは、それぞれ独立に0〜4の整数であり、Xaは、式(5)の基の1つを表す。
【0021】
【化4】

【0022】
式中、RcおよびRdは、それぞれ独立に水素原子または一価の直鎖もしくは環状の炭化水素基を表し、Reは、二価の炭化水素基である。
【0023】
適切なジヒドロキシ化合物の一部の限定されない例示的な例には、レソルシノール、4-ブロモレソルシノール、ヒドロキノン、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルメタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、1,1-ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、trans-2,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブテン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンチン、(α,α'-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4 ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2.ビス(3-n-プロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-イソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-sec-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(5-フェノキシ-4-ヒドロキシフェニル)エチレン、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、1,6-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,6-ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)硫化物、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フッ素、2,7-ジヒドロキシピレン、6,6'-ジヒドロキシ-3,3,3',3'-テトラメチルスピロ(ビス)インダン("スピロビインダンビスフェノール")、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタリド、2,6-ジヒドロキシジベンゾ-p-ジオキシン、2,6-ジヒドロキシチアントレン、2,7-ジヒドロキシフェノキサチン、2,7-ジヒドロキシ-9,10-ジメチルフェナジン、3,6-ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6-ジヒドロキシジベンゾチオフェン、および2,7-ジヒドロキシカルバゾール、などが含まれる。上記ジヒドロキシ化合物の少なくとも1つを含む組合せを使用することもできる。
【0024】
式(3)によって代表することもできるビスフェノール化合物の種類に関する、特定の例の限定されないリストには、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以後「ビスフェノールA」または「BPA」)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、および1,1-ビス(4-ヒドロキシ-tブチルフェニル)プロパンが含まれる。前記ビスフェノール化合物の少なくとも1つを含む組合せを使用することもできる。
【0025】
分枝ポリカーボネート、および直鎖ポリカーボネートと分枝ポリカーボネートとのブレンドもまた有用である。分枝ポリカーボネートは、重合中に、例えば、ヒドロキシル、カリボキシル、無水カルボン酸、ハロホルミル、および上記官能基の混合物から選択される少なくとも3つの官能基を含む多機能有機化合物などの分枝剤を加えることによって調製することもできる。特定の例には、トリメリット酸、無水トリメリット酸、三塩化トリメリット、トリス-p-ヒドロキシフェニルエタン、イサチン-ビス-フェノール、トリス-フェノールTC(1,3,5-トリス((p-ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリス-フェノールPA(4(4(1,1-ビス(p-ヒドロキシフェニル)-エチル)アルファ、アルファ-ジメチルベンジル)フェノール)、4-クロロホルミルフタル酸無水物、トリメシン酸、およびベンゾフェノンテトラカルボン酸が含まれる。分枝剤は、約0.05〜2.0重量%の水準で加えることもできる。全ての種類のポリカーボネート末端基は、かかる末端基が熱可塑性組成物の所望の性質を著しく侵さない限り、ポリカーボネート組成物中で有用であると考えられる。
【0026】
適切なポリカーボネートは、界面重合および溶融重合などの方法によって製造することができる。界面重合に関する反応条件は変えることもできるが、典型的な方法は、一般的に二価フェノール反応物を苛性ソーダまたは苛性カリウム水溶液中に溶解または分散して、得られた混合物を、水に不溶性の溶媒媒体へ加え、トリエチルアミンなどの適切な触媒または相間移動触媒の存在の下、pH条件を例えば約8〜約10に調節し、反応物をカーボネート前駆物質と接触させることを含む。最も一般的に使用される水に不溶性の溶媒には、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエンなどが含まれる。適切なカーボネート前駆物質には、例えば臭化カルボニルもしくは塩化カルボニルなどのハロゲン化カルボニル、または二価フェノールのビスハロホルメート(例えば、ビスフェノールAのビスクロロホルメート、ヒドロキノンなど)などのハロホルネートまたはグリコール(例えば、エチレングリコールのビスハロホルメート、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコールなど)が含まれる。上記の種類のカーボネート前駆物質の少なくとも1つを含む組合せを使用することもできる。
【0027】
使用することができる例示的な相間移動触媒には、式(R3)4Q+Xの触媒がある。式中、各R3は同じかまたは異なっており、C1〜10アルキル基であり、Qは窒素またはリン原子であり、Xはハロゲン原子またはC1〜8アルコキシ基もしくはC6〜188アリールオキシ基である。適切な相間移動触媒には、例えば、[CH3(CH2)3]4NX、[CH3(CH2)3]4PX、[CH3(CH2)5]4NX、[CH3(CH2)6]4NX、[CH3(CH2)4]4NX、CH3[CH3(CH2)3]3NX、およびCH3[CH3(CH2)2]3NXが含まれ、式中、XはCl-、Br-、C1〜8アルコキシ基またはC6〜188アリールオキシ基である。相間移動触媒の有効量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノールの重量に対して約0.1〜約10wt.%とすることもできる。別の実施形態において、相間移動触媒の有効量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノールの重量に対して約0.5〜約2wt.%とすることもできる。
【0028】
別法として、溶融方法を使用することもできる。溶融重合方法において、一般的にポリカーボネートは、溶融状態でエステル交換触媒の存在下、ジヒドロキシ反応物とジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートの共反応によって調製することもできる。揮発性の一価フェノールは、溶融反応物から蒸留によって取り除かれ、ポリマーは溶融残留物として分離される。
【0029】
特定の実施形態において、ポリカーボネートはビスフェノールAから誘導された直鎖ホモポリマーであり、ここでA1およびA2はそれぞれにp-フェニレンであり、Y1はイソプロピリデンである。ポリカーボネートは、クロロホルム中25℃で測定して、1グラム当たり約0.3〜約1.5デシメートル(dl/gm)、特に約0.45〜約1.0dl/gmの固有粘度を有することもできる。ポリカーボネートは、ゲル透過クロマトグラフィーで測定して、約10,000〜約200,000、具体的には約20,000〜約100,000の重量平均分子量を有することもできる。ポリカーボネートは、不純物、残留酸、残留塩基、および/またはポリカーボネートの加水分解に触媒作用及ぼす恐れのある残留金属を実質的に含んでいない。
【0030】
本明細書において使用する場合、「ポリカーボネート」および「ポリカーボネート樹脂」は、異なる種類の鎖単位と一緒にカーボネート鎖単位を含むコポリマーを更に含んでいる。かかるコポリマーは、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、デンドリマーなどとすることもできる。使用することもできる1つの特定のコポリマーの種類は、コポリエステル-ポリカーボネートとしても知られている炭酸ポリエステルである。かかるコポリマーは、式(1)の再発カーボネート鎖単位に加えて、式(6)の反復単位を含んでいる
【0031】
【化5】

【0032】
式中、Eは、ジヒドロキシ化合物から誘導される二価の基であり、例えばC2〜10のアルキレン基、C6〜20の脂環式基、C6〜20の芳香族基、またはアルキレン基が2〜約6個の炭素原子、特に2、3、または4個の炭素原子を含むポリオキシアルキレン基であり、Tは、ジカルボン酸から誘導される二価の基であり、例えば、C2〜10アルキレン基、C6〜20脂環式基、C6〜20アルキル芳香族基、またはC6〜20芳香族基とすることもできる。
【0033】
一実施形態において、EはC2〜6アルキレン基である。別の実施形態において、Eは式(7)の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導され、
【0034】
【化6】

【0035】
式中、各Rfは独立にハロゲン原子、C1〜10の炭化水素基、またはC1〜10のハロゲン置換炭化水素基であり、nは0〜4である。ハロゲンは臭素であることが好ましい。式(7)によって表すこともできる化合物の例には、レゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、5-エチルレゾルシノール、5-プロピルレゾルシノール、5-ブチルレゾルシノール、5-t-ブチルレゾルシノール、5-フェニルレゾルシノール、5-クミルレゾルシノール、2,4,5,6-テトラフルオロレゾルシノール、2,4,5,6-テトラブロモレゾルシノールなどの置換レゾルシノール化合物;カテコール;ヒドロキノン;2-メチルヒドロキノン、2-エチルヒドロキノン、2-プロピルヒドロキノン、2-ブチルヒドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノン、2-フェニルヒドロキノン、2-クミルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラ-t-メチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラブチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6-テトラブロモヒドロキノンなどの置換ヒドロキノン;または前記化合物の少なくとも1つを含む組合せが含まれる。
【0036】
ポリエステルを調製するのに使用することもできる芳香族ジカルボン酸には、イソフタル酸またはテレフタル酸、1,2-ジ(p-カルボキシフェニル)エタン、4,4'-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4'-ビス安息香酸、および上記酸の少なくとも1つを含む混合物が含まれる。1,4-、1,5-、または2,6-ナフタレンジカルボン酸などの酸を含む縮合環も存在することができる。特定のジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、またはこれらの混合物である。特定のジカルボン酸はイソフタル酸およびテレフタル酸の混合物を含み、ここにおいてテレフタル酸のイソフタル酸に対する重量比は、約10:1〜約0.2:9.8である。別の特定の実施形態において、EはC2〜6アルキレン基であり、Tは、p-フェニレン、m-フェニレン、ナフタレン、二価の脂環式基、またはこれらの混合物である。この階級のポリエステルは、ポリ(アルキレンテトラフタレート)を含む。
【0037】
コポリエステル-ポリカーボネート樹脂は、界面重合によっても調製される。ジカルボン酸自体を使用するよりは、むしろ対応する酸ハロゲン化物、特に酸ジ塩化物および酸ジ臭化物などの酸の反応性誘導体を使用することが可能であり、時には好ましい。従って、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、およびこれらの混合物の使用に代わって、イソフタロイルジクロリド、テレフタロイルジクロリド、およびこれらの混合物を使用することが可能である。コポリエステル-ポリカーボネート樹脂は、クロロホルム中25℃で測定して、1グラム当たり約0.3〜約1.5デシメートル(dl/gm)、具体的には約0.45〜約1.0dl/gmの固有粘度を有することもできる。コポリエステル-ポリカーボネート樹脂は、ゲル透過クロマトグラフィーで測定して、約10,000〜約200,000、具体的には約20,000〜約100,000の重量平均分子量を有することもできる。コポリエステル-ポリカーボネート樹脂は、不純物、残留酸、残留塩基、および/またはポリカーボネートの加水分解に触媒作用及ぼす恐れのある残留金属を実質的に含んでいない。
【0038】
ポリカーボネート成分は、上で説明したポリカーボネートに加えて、例えば、ポリカーボネートホモポリマーおよび/またはコポリマーのポリエステルとの組合せなど、ポリカーボネートと他の熱可塑性ポリマーとの組合せも含むことができる。本明細書において使用する場合、「組合せ」とは、すべての混合物、ブレンド、合金などを含めたものである。適切なポリエステルは式(6)の反復単位を含み、例えば、ポリ(アルキレンジカルボキシレート)、液晶ポリエステル、およびポリエステルコポリマーあることもできる。また、3つ以上のヒドロキシル基を有するグリコールまたは3機能もしくは多機能カルボン酸などの分枝剤が取り込まれた分枝ポリマーを使用することが可能である。更に、組成物の究極的な最終利用に基づき、時々ポリエステル上に様々な濃度の酸およびヒドロキシル末端基を有していることが望まれることがある。
【0039】
一実施形態において、ポリ(アルキレンテトラフタラート)が使用される。適切なポリ(アルキレンテトラフタレート)の特定の例は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレンナフタノエート)(PEN)、ポリ(ブチレンナフタノエート)(PBN)、(ポリプロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、および上記ポリエステルの少なくとも1つを含む組合せである。同様に、本明細書において、少量の、例えば脂肪族二酸および/または脂肪族ポリオールから誘導される単位の約0.5〜約10重量パーセントを有する上記ポリエステルもコポリエステルを作成すると考えられる。
【0040】
ポリカーボネートおよびポリエステルのブレンドは、特にポリ(アルキレンテトラフタレート)において、約10〜約99wt.%のポリカーボネート、対応して約1〜約90wt.%のポリエステルを含むこともできる。一実施形態において、ブレンドは約30〜約70wt.%のポリカーボネートおよび対応する約30〜約70wt.%のポリエステルを含む。上記の量は、ポリカーボネートおよびポリエステルの総合重量に対するものである。
【0041】
ポリカーボネートの他のポリマーとのブレンドが考えられ、一実施形態において、ポリカーボネートの成分は、基本的にポリカーボネートから構成されている、すなわち、ポリカーボネートの成分がポリカーボネートホモポリマーおよび/またはポリカーボネートコポリマーから構成され、熱可塑性組成物の衝撃強さに著しい悪影響を及ぼすかもしれない他の樹脂は含まれていない。別の実施形態において、ポリカーボネートの成分はポリカーボネートから構成されている、すなわち、ポリカーボネートの成分がポリカーボネートホモポリマーおよび/またはポリカーボネートコポリマーだけから構成されている。
【0042】
熱可塑性組成物は、更に衝撃改質組成物を含む。これは本発明の発明者らによって見出されたもので、それに従って有効な衝撃改質組成物は、a)塊状重合ABSを、b)塊状重合ABSとは別の1つまたは複数の追加の衝撃改質剤と共に含む。ある実施形態において、成分b)は、全衝撃改質組成物の約10wt.%〜約70wt.%、特に全衝撃改質組成物の約10wt.%〜約50wt.%を占める。別の実施形態において、成分b)は、全衝撃改質組成物の約14wt.%〜約50wt.%、特に全衝撃改質組成物の約14wt.%〜約30wt.%を占める。かかる衝撃改質組成物を適切な難燃剤と共に使用することにより、優れた物理的性質と難燃性能を有する熱可塑性組成物を提供できる。
【0043】
塊状重合ABSは、(i)約10℃未満のTgを有するブタジエンのエラストマー相および(ii)約15℃を超えるTgを有する硬質なポリマー相を含み、スチレンおよびアクリロニトリルなどの不飽和ニトリルなどのモノビニル芳香族モノマーのコポリマーを含んでいる。かかるABSポリマーは、最初エラストマーポリマーを提供し、次いでエラストマーの存在の下、硬質相のモノマー構成要素を重合してグラフトコポリマーを得るによって調製することもできる。グラフトは、グラフト分枝としてまたはエラストマーコアに対する外殻として結合することもできる。外殻は、単に物理的にコアを封入することもできるし、あるいは外殻はコアに対して部分的にまたは基本的に完全にグラフトしていてもよい。
【0044】
ポリブタジエンホモポリマーを、エラストマー相として使用することもできる。別法として、塊状重合ABSのエラストマー相は、約25wt%までの式(8)の別の共役ジエンモノマーと共重合したブタジエンを含む。
【0045】
【化7】

【0046】
式中、各Xbは、独立にC1〜C5アルキルである。使用することもできる共役ジエンモノマーの例は、イソプレン、1,3-ヘプタジエン、メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン;1,3-および2,4-ヘキサジエンなど、ならびに上記の共役ジエンモノマーの少なくとも1つを含む混合物である。特定の共役ジエンは、イソプレンである。
【0047】
エラストマーブタジエン相は、更に25wt%までの、具体的に約15wt.%までの他のコモノマー、例えば、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなど、縮合芳香族環構造を含むモノビニル芳香族モノマー、または式9)のモノマーと共重合することもできる
【0048】
【化8】

【0049】
式中、各Xcは独立に、水素、C1〜C12アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C12アリール、C7〜C12アラルキル、C7〜C12アルカリル、C1〜C12アルコキシ、C3〜C12シクロアルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、クロロ、ブロモ、またはヒドロキシであり、Rは水素、C1〜C5アルキル、ブロモ、またはクロロである。ブタジエンと共重合可能なモノビニル芳香族モノマーの適切な例には、スチレン、3-メチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、4-n-プロピルスチレン、アルファ-メチルスチレン、アルファ-メチルビニルトルエン、アルファ-クロロスチレン、アルファ-ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、テトラ-クロロスチレンなど、および上記のモノビニル芳香族モノマーの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。一実施形態において、ブタジエンは約12wt.%までの、具体的に約1〜約10wt.%までのスチレンおよび/またはアルファ-メチルスチレンと共重合される。
【0050】
ブタジエンと共重合可能な他のモノマーは、イタコン酸、アクリルアミド、N-置換アクリルアミドまたはメタクリルアミド、無水マレイン酸、マレイミド、N-アルキル-、アリール-、またはハロアルキル-置換マレイミド、グリシジル(メタ)アクリレートなどのモノビニルモノマー、および一般式(10)のモノマーである。
【0051】
【化9】

【0052】
式中、Rは水素、C1〜C5アルキル、ブロモ、またはクロロであり、Xcはシアノ、C1〜C12アルコキシカルボニル、C1〜C12アリールオキシカルボニル、ヒドロキシカルボニルなどである。式(10)のモノマーの例には、アクリロニトリル、エタクリルロニトリル、メタクリルロニトリル、アルファ-クロロアクリロニトリル、ベータ-クロロアクリロニトリル、アルファ-ブロモアクリルニトリル、アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなど、および上記のモノマーの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。アクリル酸n-ブチル、アクリル酸エチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルなどのモノマーは、ブタジエンと共重合可能なモノマーとして一般的に使用される。
【0053】
ブタジエン相の粒子径は重要ではなく、例えば、塊状重合ゴム状物質のためには、約0.01〜約20マイクロメートル、具体的には約0.5〜約10マイクロメートル、より具体的には約0.6〜約1.5マイクロメートルの粒子径でよい。粒子径は、光透過法または毛細管水力学クロマトグラフィー(CHDF)によって測定することもできる。ブタジエン相は、ABS衝撃改質コポリマー全重量の約5〜約95wt%、より具体的には約20〜約90wt.%、更により具体的には約40〜約85wt.%を提供することもでき、残りは硬質グラフト相である。
【0054】
硬質グラフト相は、ニトリル基を含んでいる不飽和モノマーと一緒にスチレンモノマー組成物から形成されたコポリマーを含んでいる。本明細書において使用する場合、「スチレンモノマー」は、式(9)のモノマーを含んでいる。式中、各Xcは独立に水素、C1〜C4アルキル、フェニル、C7〜C9アラルキル、C7〜C9アルカリル、C1〜C4アルコキシ、フェノキシ、クロロ、ブロモ、またはヒドロキシであリ、Rは水素、C1〜C2アルキル、ブロモ、またはクロロである。特定の例は、スチレン、3-メチルスチレン、3,5-ジエチルスチレン、4-n-プロピルスチレン、アルファ-メチルスチレン、アルファ-メチルビニルトルエン、アルファ-クロロスチレン、アルファ-ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、テトラ-クロロスチレンなどである。上記スチレンモノマーの少なくとも1つを含む組合せを使用することもできる。
【0055】
更に本明細書において使用する場合、ニトリル基を含む不飽和モノマーは、式(10)のモノマーを含む。式中、Rはハロゲン、C1〜C5アルキル、ブロモ、またはクロロであり、Xcはシアノである。特定の例には、アクリロニトリル、エタアクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アルファ-クロロアクリロニトリル、ベータ-クロロアクリロニトリル、アルファブロモアクリルニトリルなどが含まれる。上記モノマーの少なくとも1つを含む組合せを使用することもできる。
【0056】
更に塊状重合ABSの硬質グラフト相は、タコン酸、アクリルアミド、N-置換アクリルアミドまたはメタクリルアミド、無水マレイン酸、マレイミド、N-アルキル-、アリール-、またはハロアリール-置換マレイミド、グリシジル(メタ)アクリレート、および一般式(10)のモノマーなどの他のモノビニル芳香族モノマーおよび/またはモノビニルモノマーを含む、硬質グラフト相と共重合可能な他のモノマーを場合によって含むこともできる。特定のコモノマーは、例えば、メタクリル酸メチルなどのC1〜C4アルキル(メタ)アクリレートを含む。
【0057】
硬質コポリマー相は、それぞれ硬質コポリマー相の全重量に対して、約10〜約99wt.%、具体的には約40〜約95wt.%、更に具体的には約50〜約90wt.%のスチレンモノマー;約1〜約90wt.%、具体的には約10〜約80wt.%、より具体的には約10〜約50wt.%のニトリル基を含む不飽和モノマー;および0〜約25wt.%、具体的には1〜約15wt.%の他のコモノマーを一般的に含んでいる。
【0058】
塊状重合ABSコポリマーは、ABSと同時に得られるかもしれないグラフトしていない硬質コポリマーの別のマトリックスまたは連続相を更に含んでいてもよい。ABSは、ABSの全重量に対して、約40〜約95wt.%のエラストマー改質グラフトコポリマーおよび約5〜約65wt.%の硬質コポリマーを含むこともできる。別の実施形態において、ABSは、ABSの全重量に対して、約50〜約85wt%、より具体的には約75〜約85wt.%のエラストマー改質グラフトコポリマーを、約15〜約.50wt.%、より具体的には約15〜約25wt.%の硬質コポリマーと一緒に含むこともできる。
【0059】
ABS型樹脂のための様々な塊状重合の方法が知られている。マルチゾーンプラグフロー塊状重合方法(multizone plug flow bulk process)においては、一連の重合容器(または塔)が連続して互いに接続して、複数の反応ゾーンを提供している。エラストマーブタジエンは、使用される1つまたは複数のモノマー中に溶解することもでき、硬質相を形成し、このエラストマー溶液は反応システムに供給される。熱的にまたは化学的に開始することもできる反応中、エラストマーは硬質コポリマー(すなわち、SAN)にグラフトされる。塊状コポリマー(遊離コポリマー、マトリックスコポリマー、または非グラフトコポリマーとも呼ばれる)もまた、溶解したゴムを含む連続相内に形成される。重合が継続すると、遊離コポリマーのドメインが、ゴム/コモノマーの連続相内に形成され、2相システムを提供する。重合が進捗し、より多くの遊離コポリマーが形成されると、エラストマー改質コポリマーが、それ自体粒子として遊離コポリマー中に分散を開始して、遊離コポリマーは連続相となる(転相)。なお、遊離コポリマーの一部は、通常エラストマー改質コポリマー相の内部をふさぐ。転相の後に、重合を完了するために追加の加熱を使用してもよい。この基本的方法の数多くの変更形態が述べられてきた。例えば、米国特許第3,511,895号は、3段階反応システムを使用した、分子量分布およびミクロゲル粒子寸法の制御可能な連続式塊状ABS方法について説明している。最初の反応装置において、エラストマー/モノマー溶液を激しく攪拌しながら反応混合物に充填して、感知できるほどの架橋が起こる前に反応集団を通して分離したゴム粒子を均一に沈澱させる。分子量が所望の範囲に納まるよう、第1、第2および第3の反応装置の固体水準を注意深く制御する。米国特許第3,981,944号は、ニトリル基および他のコモノマーを含む不飽和モノマーの添加の前に、スチレンモノマーを使用してエラストマー粒子を溶解/分散するエラストマー粒子の抽出について開示している。米国特許第5,414,045号は、プラグフローグラフト反応装置において、スチレンモノマー組成物、不飽和ニトリルモノマー組成物、およびエラストマーブタジエンポリマーを含む液体供給組成物を転相前の点で反応させ、そこからの第1重合生成物(グラフ
トされたエラストマー)を、連続攪拌タンク式反応装置中で反応させて転相第2重合生成物を得、これは仕上げ反応装置中で更に反応させることができ、次いで液化して所望の最終製品を生成することを開示している。
【0060】
衝撃改質組成物は、塊状重合ABSに加えて、ABSとは異なる追加の衝撃改質剤を含む。これら衝撃改質剤は、(i)約10℃未満、より具体的には約-10℃未満、更に具体的には約-40〜-80℃のTgを有するエラストマー(すなわち、ゴム状の)ポリマー基材、および(ii)エラストマーポリマー基材にグラフトした硬質ポリマー表面材、を含むエラストマー改質グラフトコポリマーを含む。このグラフトは、グラフト分枝としてまたは外殻としてエラストマーコアに結合することもできる。外殻は、単に物理的にコアを封入することもできるし、あるいは外殻はコアに対して部分的にまたは基本的に完全にグラフトしていてもよい。
【0061】
エラストマー相として使用するのに適した材料には、例えば、共役ジエンゴム;約50wt.%未満の共重合可能なモノマーを有する共役ジエンのコポリマー;エチレンプロピレンコポリマー(EPR)またはエチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM)などのオレフィンゴム;エチレン-ビニルアセテートゴム;エラストマーC18アルキル(メタ)アクリレート;ブタジエンおよび/またはスチレンを有するC18アルキル(メタ)アクリレートのエラストマーコポリマー;または上記エラストマーの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。一実施形態において、衝撃改質剤のエラストマー相は、ジエンまたはブタジエンベースである。
【0062】
エラストマー相を調製するために適切な共役ジエンモノマーは、上記の式(8)の共役ジエンである(式中、各Xbは、独立に水素、C1〜C5アルキルなどである)。使用することもできる共役ジエンモノマーの例には、ブタジエン、イソプレン、1,3-ヘプタジエン、メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン;1,3-および2,4-ヘプタジエンなど、ならびに前記共役ジエンモノマーの少なくとも1つを含む混合物が含まれる。特定の共役ジエンホモポリマーは、ポリブタジエンおよびポリイソプレンを含む。
【0063】
例えば、共役ジエンとそれと共重合可能な1つまたは複数のモノマーとの水性基乳化重合で作られた共役ジエンゴムのコポリマーを使用することもできる。共役ジエンとの共重合に適切なモノマーには、例えばビニルナフタレンなどの縮合芳香族環構造を含むモノビニル芳香族モノマー、ビニルアントラセンなど、または上記式(9)のモノマー(式中、各Xcは独立に水素、C1〜C12アルキル;C3〜C12シクロアルキル、C6〜C12アリール、C7〜C12アラルキル、C7〜C12アルカリル、C1〜C12アルコキシ、C3〜C12シクロアルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、クロロ、ブロモ、またはヒドロキシであり、Rは水素、C1〜C5アルキル、ブロモ、またはクロロである)が含まれる。使用することもできる適切なモノビニル芳香族モノマーの例には、スチレン、3-メチルスチレン、3,5-ジエチルスチレン、4-n-プロピルスチレン、アルファ-メチルスチレン、アルファ-メチルビニルトルエン、アルファ-クロロスチレン、アルファ-ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、テトラ-クロロスチレン、前記化合物の少なくとも1つを含む組合せなどが含まれる。スチレンおよび/またはアルファ-メチルスチレンが、共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーとして一般的に使用される。
【0064】
共役ジエンと共重合することもできる他のモノマーは、イタコン酸などのモノビニルモノマー、アクリルアミド、N-置換アクリルアミドまたはメチルアクリルアミド、無水マレイン酸、マレイミド、N-アルキル-、アリール-、またはハロアリール置換マレイミド、グリシジル(メタ)アクリレート、および一般式(10)(式中Rは水素、C1〜C5アルキル、ブロモ、またはクロロであり、Xcはシアノ、C1〜C12アルコキシカルボニル、C1〜C12アリールオキシカルボニル、ヒドロキシカルボニルなどである)のモノマーである。式(10)のモノマーの例には、アクリルニトリル、エタアクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アルファ-クロロアクリロニトリル、ベータ-クロロアクリロニトリル、アルファ-ブロモアクリロニトリル、アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなど、および前記モノマーの少なくとも1つを含む組合せなどが含まれる。アクリル酸n-ブチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸2-エチルヘキシルなどのモノマーが、共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーとして一般的に使用される。上記のモノビニルモノマーとモノビニル芳香族モノマーとの混合物も、使用することもできる。
【0065】
ある(メタ)アクリレートモノマーも、架橋、微粒子エマルジョンホモポリマーまたは(メタ)アクリル酸C1〜16アルキルのコポリマー、具体的には(メタ)アクリル酸C1〜9アルキル、特にアクリル酸C4〜6アルキル、例えばアクリル酸n-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2-エチルヘキシルなど、および前記モノマーの少なくとも1つを含む組合せを含めて、エラストマー相を提供するために使用することもできる。(メタ)アクリル酸C1〜16アルキルモノマーは、場合によっては、上で広く説明した一般式(8)、(9)、または(10)のコモノマーの15wt.%までとの混合において重合することもできる。典型的なコモノマーには、それだけに限定されないが、ブタジエン、イソプレン、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸フェネチル、N-シクロヘキシルアクリルアミド、ビニルメチルエーテルまたはアクリロニトリル、および前記コモノマーの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。場合によっては、5wt.%までの多機能架橋コモノマー、例えば、ジビニルベンゼン、グリコールビスアクリレートなどのアルキレンジオールジ(メタ)アクリレート、アルキレントリオールトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスアクリルアミド、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、(メタ)アクリル酸アリル、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、クエン酸のトリアリルエステル、リン酸のトリアリルエステルなど、ならびに前記架橋剤の少なくとも1つを含む組合せが存在することもできる。
【0066】
エラストマー相は、塊状、乳化、懸濁、溶液または塊状-懸濁、乳化-塊状、塊状-溶液などの複合方法あるいは他の技術により、連続式、半バッチ式またはバッチ式を使用して重合することもできる。エラストマー基材の粒子寸法は重要ではない。例えば、約0.001〜約25マイクロメートル、具体的には約0.01〜約15マイクロメートル、更に具体的には約0.1〜約8マイクロメートルの平均粒径を、乳化ベースの重合ゴムラティスのために使用することもできる。約0.5〜約10マイクロメートル、具体的には約0.6〜約1.5マイクロメートルの平均粒径を、塊状重合ゴム基材のために使用することもできる。エラストマー相は、微粒子であって、共役ブタジエンまたはアクリル酸C4〜9アルキルゴムから誘導された適度に架橋したコポリマーであって、好ましくは70%超のゲル含有量を有していてもよい。また、スチレンとブタジエンの混合物、アクリロニトリル、および/またはアクリル酸C4〜6アルキルゴムから誘導されるコポリマーも適している。
【0067】
一実施形態において、エラストマー相は、(メタ)アクリル酸C1〜8アルキルのブタジエンとのエラストマーコポリマーを含む。
【0068】
エラストマー相は、約5〜約95wt.%、より具体的には約20〜約90wt.%、更に具体的には約40〜約85wt.%のエラストマー改質グラフトコポリマー(残りは硬質グラフト相である)を提供することもできる。
【0069】
エラストマー改質グラフトコポリマーの硬質相は、1つまたは複数のエラストマーポリマー基材の存在下、モノビニル芳香族モノマーモノマーおよび場合によっては1つまたは複数のコモノマーを含む混合物のグラフト重合によって形成することもできる。上記で広く説明した式(9)のモノビニル芳香族モノマーは、スチレン、アルファ-メチルスチレン、ジブロモスチレンなどのハロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ブチルスチレン、パラヒドロキシスチレン、メトキシスチレンなど、または上記モノビニル芳香族モノマーの少なくとも1つを含む組合せを含めて、硬質グラフト相において使用することもできる。適切なコモノマーには、例えば、上記で広く説明したモノビニルモノマーおよび/または一般式(10)のモノマーが含まれる。一実施形態において、Rは水素またはC1-C2アルキルであり、XcはシアノまたはC1〜C12アルコキシカルボニルである。硬質相において使用するための適切なコモノマーの具体的な例には、アクリロニトリル、エタアクリロニトリル、メタアクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピルなど、および前記コモノマーの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。
【0070】
特定の一実施形態において、硬質グラフト相は、アクリル酸エチルおよび/またはメタクリル酸メチルと共重合したスチレンまたはアルファ-メチルスチレンから形成される。他の特定の実施形態において、硬質グラフト相は、メタクリル酸メチルと共重合したスチレン、ならびにメタクリル酸メチルおよびアクリロニトリルと共重合したスチレンから形成される。
【0071】
硬質グラフト相におけるモノビニル芳香族モノマーとコモノマーの相対比は、エラストマー基材の種類、モノビニル芳香族モノマーの種類、コモノマーの種類、および所望する衝撃改質剤の性質に基づき、広範囲に変えることもできる。硬質相は、100wt.%までの、具体的には約30〜約100wt.%の、より具体的には約50〜約90wt.%のモノビニル芳香族モノマー(残りはコモノマー)を、一般的に含むこともできる。
【0072】
存在するエラストマー改質ポリマーの量に基づき、非グラフト硬質ポリマーまたはコポリマーの分離したマトリックスまたは連続層が、付加的なエラストマー改質グラフトコポリマーに沿って同時に得られる場合もある。一般的に、かかる衝撃改質剤は、衝撃改質剤の全重量に対して、約40〜約95wt.%のエラストマー改質グラフトコポリマーと、約5〜約65wt.%の硬質(コ)ポリマーとを含む。別の実施形態において、かかる衝撃改質剤は、衝撃改質剤の全重量に対して、約50〜約85wt.%の、より具体的には約75〜約85wt.%のゴム改質硬質コポリマーを、約15から約50wt.%の、より具体的には約15〜約25wt.%の硬質(コ)ポリマーと一緒に含む。
【0073】
塊状重合ABSとは異なるエラストマー改質グラフトコポリマーの特定の例には、それだけに限定されないが、アクリロニトリル-スチレン-ブチルアクリレート(ASA)、メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(MABS)、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン(MBS)、およびアクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレン(AES)が含まれる。MBS樹脂は、その方法を以下に要約する米国特許第6,545,089号において説明されている、ポリブタジエンの存在下、メタクリレートおよびスチレンの乳化重合によって調製することもできる。
【0074】
実際問題として、上で説明した塊状重合ABSとは異なる衝撃改質剤の多くを、難燃性または他の物理的性質に悪影響を及ぼさない限り、使用することもできる。エラストマー改質グラフトコポリマーの形成方法には、塊状、乳化、懸濁、および溶液プロセス、または塊状-懸濁、乳化-塊状、塊状-溶液などの複合方法あるいは他の技術により、連続式、半バッチ式またはバッチ式の使用が含まれる。一実施形態において、塊状重合ABSとは異なる衝撃改質剤はメタクリレート改質ブタジエン衝撃改質剤であり、ここにおいて硬質相は、スチレンまたは他のモノビニル芳香族モノマーなど、硬質相に適切であるとリストアップされた前述のいずれの材料も含む。
【0075】
衝撃改質剤は、所望する場合、例えばC6〜30脂肪酸のアルカリ金属塩などの種、例えばステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウムなど、アルカリ金属炭酸塩、ドデシルジメチルアミン、ドデシルアミンなどのアミン、およびアミンのアンモニウム塩などの塩基種を含まない乳化重合方法によって調製することもできるが、これは要件ではない。かかる材料は、通常重合助剤、すなわち、乳化重合における界面活性剤として使用され、エステル交換および/またはポリカーボネートの分解に触媒作用を及ぼす場合もある。代わりに、所望する場合、イオン硫酸系、スルホン酸系またはリン酸系界面活性剤が、衝撃改質剤、特に衝撃改質剤エラストマー基材部分を調製すること、に使用することもできる。適切な表面活性剤には、例えば、スルホン酸C1〜22アルキルまたはC7〜25アルキルアリール、硫酸C1〜22アルキルまたはC7〜25アルキルアリール、リン酸C1〜22アルキルまたはC7〜25アルキルアリール、置換ケイ酸エスエル、および上記界面活性剤の少なくとも1つを含む組合せが含まれる。特定の界面活性剤は、C6〜16、具体的にはスルホン酸C8〜12アルキルである。この乳化重合方法は、Rohm & HaasおよびGeneral Electric Companyなどの会社の様々な特許および文献において記載および開示されている。
【0076】
塊状重合ABSおよび塊状重合ABSとは異なる追加の衝撃改質剤に加えて、衝撃改質組成物は、非グラフト硬質コポリマーを更に含むこともできる。この硬質コポリマーは、塊状重合ABSまたは追加の衝撃改質剤に存在する任意の硬質コポリマー対する付加的なものである。これは、上で説明したエラストマー改質無しの硬質コポリマーのいずれかと同じであってもよい。硬質コポリマーは、一般的に約15℃超、具体的には約20℃超のTgを有し、例えばビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどの縮合芳香族環構造を含むモノビニル芳香族モノマーから誘導されるポリマー、または例えばスチレンおよびアルファ-メチルスチレン;イタコン酸、アクリルアミド、N-置換アクリルアミドまたはメタクリルアミド、無水マレイン酸、マレイミド、N-アルキル、アリールもしくはハロアリール置換マレイミド、グリシジル(メタ)アクリレートなどのモノビニルモノマーなど上記で広く説明した式(9)のモノマー;ならびに例えば、アクリルニトリル、メチルアクリレートおよびメタクリル酸メチルなどの上記で広く説明した一般式(10)のモノマー;ならびに例えば、スチレンアクリロニトリル(SAN)、スチレン-アルファ-メチルスチレン-アクリロニトリル、メタクリル酸メチル-アクリロニトリル-スチレン、およびメタクリル酸メチル-スチレンなどの前述のコポリマーを含む。
【0077】
硬質コポリマーは、約1〜約99wt.%、具体的には約20〜約95wt%、より具体的には約40〜約90wt%のビニル芳香族モノマーを、1〜約99wt.%、具体的には約5〜約80wt.%、より具体的には約10〜約60wt.%の共重合可能なモノビニルモノマーと一緒に含むこともできる。一実施形態において硬質コポリマーはSANであり、これは約50〜約99wt.%のスチレン(残りはアクリロニトリル);具体的には約60〜約90wt.%のスチレン、より具体的には約65〜約85wt%スチレン(残りはアクリロニトリル)を含むこともできる。
【0078】
硬質コポリマーは、塊状、懸濁、または乳化重合によって製造することもでき、これは不純物、残留酸、残留塩基またはポリカーボネートの加水分解に触媒作用を及ぼす恐れのある残留金属を実質的に含んでいない。一実施形態において、硬質コポリマーは、沸騰反応装置を使用して塊状重合によって製造することもできる。硬質コポリマーは、ポリスチレン標準を使用したGPCによって測定して、約50,000〜約300,000の重量平均分子量を有することもできる。一実施形態において、硬質コポリマーの重量平均分子量は、約70,000〜約190,000である。
【0079】
前述の成分に加えて、ポリカーボネート組成物は、例えば、有機リン酸エステルおよび/またはリン-窒素結合を含む有機化合物などのリン含有難燃剤を更に含む。
【0080】
典型的な有機リン酸エステルの1種類は、式(GO)3P=Oの芳香族リン酸エステルである。式中、各Gは、独立にアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリルまたはアラルキル基であり、但し1つのGは芳香族基である。G基の2つが一緒に結合して、例えば米国特許第4,154,775号にAxelrodにより記載されているジフェニルペンタエリトリトールジホスフェートなどの、環状基を提供することもできる。他の適切な有機リン酸エステルは、例えば、リン酸フェニルビス(ドデシル)、リン酸フェニルビス(ネオペンチル)、リン酸フェニルビス(3,5,5'-トリメチルへキシル)、リン酸エチルジフェニル、リン酸2-エチルヘキシルジ(p-トリル)、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)p-トリル、リン酸トリトリル、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)フェニル、リン酸トリ(ノニルフェニル)、リン酸ビス(ドデシル)p-トリル、リン酸ジブチルフェニル、リン酸2-クロロエチルジフェニル、リン酸p-トリルビス(2,5,5'-トリメチルヘキシル)、リン酸2-エチルヘキシルジフェニルなどにすることもできる。特定の芳香族リン酸エステルは、例えば、各Gが芳香族である、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル、リン酸イソプロピル化トリフェニルなどである。
【0081】
例えば、以下の式の化合物の二または多官能性芳香族リン含有化合物も同様に有用である。
【0082】
【化10】

【0083】
式中、各G1は、独立に1〜約30個の炭素原子を有する炭化水素であり;各G2は、独立に1〜約30個の炭素原子を有する炭化水素またはヒドロカルボノキシであり;各Xは、独立に臭素または塩素であり;mは0〜4、nは1〜約30である。適切な二または多官能性芳香族リン含有化合物の例には、レゾルシノールテトラフェニルジホスフェート(RDP)、ヒドロキノンのビス(ジフェニル)ホスフェートおよびビスフェノール-Aのビス(ジフェニル)ホスフェート、それぞれ、それらのオリゴマーおよびポリマー相当物などが含まれる。前述の二または多官能性芳香族化合物の調製方法は、英国特許第2,043,083号に記載されている。
【0084】
リン-窒素結合を含む、典型的な適切な難燃性化合物には、ホスホニトリル塩化物、リンエステルアミド、リン酸アミド、ホスホン酸アミド、ホスフィン酸アミド、トリス(アジリジニル)ホスフィンオキシドが含まれる。有機のリン-窒素結合含有難燃剤は、充填材を除く全組成物の重量100部に対して、一般的に重量で約0.5〜約20部存在する。
【0085】
熱可塑性組成物は、基本的に塩素および臭素、特に塩素および臭素難燃剤を含んでいない。本明細書で使用する場合、「基本的に塩素および臭素を含まない」とは、塩素、臭素、および/または塩素もしくは臭素を含む材料を意図的に加えることなく作られた材料を指す。しかしながら、複数の製品を加工する施設においては、ある量の二次汚染が起こり得、その結果として、一般的に百万分の一の水準で塩素および/または臭素が存在することが理解される。この理解の下で、基本的に塩素および臭素を含まないとは、塩素および/または臭素の含有量が、重量で約100百万分の一(ppm)に等しいかまたはそれ未満、約75ppmに等しいかまたはそれ未満、あるいは約50ppmに等しいかまたはそれ未満であると定義できることが容易に理解できる。この定義を難燃剤に適用する場合は、難燃剤の全重量に基づくものである。この定義を熱可塑性組成物組成物に適用する場合は、ポリカーボネート、衝撃改質剤および難燃剤の全重量に基づくものである。
【0086】
場合によっては、例えば、ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム(Rimar塩)およびジフェニルスルフォンスルホン酸カリウムなどのスルホン酸塩;例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属(好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムおよびバリウム塩)および無機酸錯塩、例えば、Na2CO3、K2CO3、MgCO3、CaCO3、BaCO3、およびBaCO3などの炭酸のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩などのオキソアニオン、またはLi3AlF6、BaSiF6、KBF4、K3AlF6、KAlF4、K2SiF6、および/またはNa3AlF6などのフルオロアニオン錯塩を反応させて生成された塩、などの無機難燃剤を使用することもできる。存在する場合、無機難燃剤の塩は、ポリカーボネート樹脂、衝撃改質剤、ポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマー、およびリン含有難燃剤の100重量部に対して、一般的に重量約0.01〜約1.0重量部、より具体的には約0.05〜約0.5重量部の量で存在する。
【0087】
リン-窒素結合を含む適切な典型的な難燃剤化合物には、ホスホニトリルクロリドおよびトリス(アジニリジニル)ホスフィンオキシドが含まれる。存在する場合、リン含有難燃剤は、ポリカーボネート成分および衝撃改質組成物100重量部に対して、一般的に約1〜約20重量部の量で存在する。
【0088】
例えば、式(11)のハロゲン化化合物および樹脂などのハロゲン化材料も、難燃剤として使用することもできる。
【0089】
【化11】

【0090】
式中、Rはアルキレン、アルキリデンまたは脂環式結合、例えば、メチレン、プロピレン、イソプロピリデン、シクロヘキシレン、シクロペンチリデンなど;酸素、エーテル、カルボニル、アミン、または硫黄含有結合、例えば、スルフィド、スルホキシド、スルホンなど;あるいは芳香族、アミノ、エーテル、カルボニル、スルフィド、スルホキシド、スルホンおよび同様の基などの基によって結合されている2つ以上のアルキレンまたはアルキリデン結合であり;ArおよびAr'は、それぞれ独立にフェニレン、ビフェニレン、テルフェニレン、ナフタレンなどの、モノまたはポリ炭素環式芳香族基であり、ここにおいてヒドロキシルならびにArおよびAr'上の置換基Yは、芳香族環上のオルト、メタまたはパラの位置に変えることができ、基は互いに関して任意の可能な幾何学的相間関係とすることができ;各Yは、独立に有機、無機または有機金属基であって、例えば、(1)塩素、臭素、ヨウ素、またはフッ素などのハロゲン、(2)一般式-OEのエーテル基(ここで、EはXに類似の一価の炭化水素基である)、(3)Rによって表される一価の炭化水素基、または(4)他の置換基、例えばニトロ、シアンなどであって、但しアリール原子核当たり少なくとも1つの、好ましくは2つのハロゲン原子が存在する場合には、前記置換基が基本的に不活性であり、各Xは、独立にメチル、プロピル、イソプロピル、デシル、フェニル、ナフチル、ビフェニル、キシリル、トリル、ベンジル、エチルフェニル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの一価のC1-18の炭化水素基であり、それぞれが場合によっては不活性置換基を含んでおり;各dは、独立に1から最大ArまたはAr'を含む芳香族環上に置換される可能な水素の数に等しい数までであり;各eは、独立に0から最大R上の交換可能な水素の数に等しい数までであり;各a、b、およびcは独立に、bが0の場合、aまたはcのいずれかを(但し両方ではない)0とすることができ、そしてbが0でない場合、aとcのどちらも0でないという条件の下、0を含む整数である。
【0091】
ビスフェノールが、上記式の範囲に含まれ、代表的なものは、ビス(2,6-ジブロモフェニル)メタン;1,1-ビス-(4-ヨードフェニル)エタン;2,6-ビス(4,6-ジクロロナフチル)プロパン;2,2-ビス(2,6-ジクロロフェニル)ペンタン;ビス(4-ヒドロキシ-2,6-ジクロロ-3-メトキシフェニル)メタン;および2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。同様に、上記構造式に含まれるものに、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジブロモベンゼン、および2,2'-ジクロロビフェニル、ポリ臭素化1,4-ジフェノキシベンゼン、2,4'-ジブロモビフェニル、および2,4'-ジクロロビフェニルなどのビフェニル、ならびにデカブロモジフェニルオキシドなどがある。同様に、ビスフェノールAのコポリカーボネートおよびテトラブロモビスフェノールAおよび、例えばホスゲンなどのカーボネート前駆物質などのオリゴマーおよびポリマーハロゲン化芳香族化合物も有用である。金属共力剤、例えば酸化アンチモンも、難燃剤と共に使用することもできる。存在する場合、ハロゲン含有難燃剤は、ポリカーボネート成分および衝撃改質組成物の100重量部に対して、一般的に約1〜約50重量部の量で使用される。
【0092】
難燃剤の別の有用な種類は、式(12)の繰り返し構造単位を含む、ポリジオルガリオシロキサンブロックを有するポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマーである。
【0093】
【化12】

【0094】
式中、Rは各発現において同じかまたは異なっており、C1〜13の一価の有機基である。例えば、Rは、C1〜C13アルキル基、C1〜C13アルコキシ基、C2〜C13アルケニル基、C2〜C13アルケニルオキシ基、C3〜C6シクロアルキル基、C3〜C6シルコアルコキシ基、C6〜C10アリール基、C6〜C10アリールオキシ基、C7〜C13アラルキル基、C7〜C13アラルコキシ基、C7〜C13アルカリル基、またはC7〜C13アルカリルオキシ基とすることもできる。前述のR基の組合せを、同じコポリマー中で使用することもできる。式(6)におけるR2は、二価のC1〜C8脂肪族基である。式(7)における各Mは、同じかまたは異なっていてもよく、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C8アルキルチオ、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルコキシ、C2〜C8アルケニル、C2〜C8アルケニルオキシ基、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C8シクロアルコキシ、C6〜C10アリール、C6〜C10アリールオキシ、C7〜C12アラルキル、C7〜C12アラルコキシ、C7〜C12アルカリル、またはC7〜C12アルカリルオキシとすることもでき、ここにおいて各nは独立に0、1、2、3、または4である。
【0095】
式(6)におけるDは、ポリカーボネート組成物に対して難燃性の有効な水準を提供するように選択される。従って、Dの値は、ポリカーボネート、衝撃改質剤、ポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマー、および他の難燃剤の量を含めた、ポリカーボネート組成物における各成分の相対的量に基づき変化する。Dの適切な値は、過度の実験無しで、当業者により、本明細書で教示された指針を使用して決定することもできる。一般的に、Dは10〜約250、具体的には約10〜約60の平均値を有する。
【0096】
一実施形態において、Mは独立にブロモまたはクロロ、メチル、エチル、もしくはプロピルなどのC1〜C3アルキル基、メトキシ、エトキシ、もしくはプロポキシなどのC1〜C3アルコキシ基、またはフェニル、クロロフェニルもしくはトリルなどのC6〜C7アリール基であり;R2はジメチレン、トリメチレンまたはテトラメチレン基であり;Rは、C18アルキル、トリフルオロプロピル、シアノアルキルなどのハロアルキル、またはフェニル、クロロフェニルもしくはトリルなどのアリールである。別の実施形態において、Rは、メチル、またはメチルとトリフルオロプロピルとの混合物、またはメチルとフェニルの混合物である。更に別の実施形態において、Mはメトキシ、nは1、R2は二価のC1〜C3脂肪族基であり、Rはメチルである。
【0097】
ポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマーは、対応するジヒドロキシポリシロキサンの、炭酸塩源およびポリカーボネートに関して上記で説明した式(3)のジヒドロキシ芳香族化合物との反応によって製造することもできる。一般的に、ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンの量は、ポリカーボネートブロックのモルに関して約1〜約60モルパーセント、より具体的には、ポリカーボネートブロックのモルに関して約3〜約50モルパーセントのポリジオルガノシロキサンブロックを含むコポリマーを生成するように選択される。存在する場合、コポリマーは、ポリカーボネート成分および衝撃改質組成物の100重量部に対して、約5〜約50重量部、より具体的には約10〜約40重量部の量を使用することもできる。
【0098】
例えば、ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム(Rimar塩)、ペルフルオロオクタンスルホン酸カリウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸テトラエチルアンモニウム、およびジフェニルスルホンスルホン酸カリウムなどのスルホン酸C216アルキルの塩;CaCO3、BaCO3、およびBaCO3などの塩;Li3AlF6、BaSiF6、KBF4、K3AlF6、KAlF4、K2SiF6、およびNa3AlF6などのフルオロ-アニオン錯塩の塩などの無機難燃剤を同様に使用することもできる。存在する場合、無機難燃剤の塩は、ポリカーボネート成分および衝撃改質組成物の100重量部に対して、約0.01〜約25重量部、より具体的には約0.1〜約10重量部の量が存在する。
【0099】
熱可塑性組成物の各成分の相対量は、硬質グラフトコポリマーおよび組成物の所望の性質を含めて、使用するポリカーボネートの特定の種類、他の樹脂の存在、および特定の衝撃改質剤に依存する。特定の量は、当業者により本明細書に提供された指針を使用して容易に選択することもできる。
【0100】
一実施形態において、熱可塑性組成物は、約50〜約90wt.%のポリカーボネート成分と、a)約3〜約25wt.%の塊状重合ABS(BABS)およびb)約0.5〜約10wt.%の、BABSとは異なる追加のエラストマー改良衝撃改質剤を含む約3〜約35wt.%の衝撃改質組成物と、約2〜約25wt.%の難燃剤とを含む。別の実施形態において、熱可塑性組成物は、約60〜約80wt.%のポリカーボネート成分と、a)約5〜約20wt.%の塊状重合ABSおよびb)約1〜約10wt.%の他のエラストマー改良衝撃改質剤を含む約6〜約30wt.%の衝撃改質組成物と、約5〜約20wt.%の難燃剤とを含む。別の実施形態において、熱可塑性組成物は、約65〜約75wt.%のポリカーボネート成分と、a)約8〜約15wt.%の塊状重合ABSおよびb)約2〜約10wt.%の追加のエラストマー改良衝撃改質剤を含む約10〜約25wt%の衝撃改質組成物と、約1.0〜約17wt.%の難燃剤とを含む。前述の組成物は、更に場合によっては硬質コポリマー(すなわち、SAN)を、所望しこれが物理的性質および難燃性能を低下させないならば、含むこともできる。前述の全ての量は、ポリカーボネート組成物および衝撃改質組成物の総重量に対するものである。
【0101】
前述の実施形態の特定の例として、約65〜約75wt.%のポリカーボネート成分と、a)約8〜約15wt.%の塊状重合ABS衝撃改質剤およびb)約1.5〜約7wt.%のMBSを含む約9〜約22wt.%の衝撃改質組成物と、約10〜約17wt.%のBPADPとを含む熱可塑性組成物が提供される。前述の量を使用することによって、良好な難燃性能と共に、向上した衝撃強さ、延性および流動性を有する組成物を、特に低温において提供することもできる。
【0102】
熱可塑性組成物は、ポリカーボネート成分、衝撃改質組成物および難燃剤に加えて、充填材、強化材、安定剤などの様々な添加物を、添加物が熱可塑性組成物の所望の物理的性質、特に熱的安定性に悪影響を及ぼさないという条件の下で含むこともできる。従って、例えば加水分解に不安定な亜リン酸塩など、湿分および/または熱の存在下で劣化触媒を生成するであろう不純物を含む添加物は、所望されないこともある。それ自体が湿分および/または熱の存在下でポリカーボネートを劣化させる触媒として作用する添加物も、望ましくないことがある。
【0103】
一実施形態において、所望する場合には、分解活性を防止するまたは実質的に減少する処置を添加物に行うこともできる。かかる処置には、シリコーン、アクリルまたはエポキシ樹脂など実質的に不活性な物質を用いた被覆を含むこともできる。処理は、ブロック、または中性化した触媒サイトを取り除くための化学的不動態化を含むこともできる。処理の組合せも使用することができる。充填材、強化材、および顔料などの添加物を処理することもできる。
【0104】
添加物の混合物を使用することもできる。かかる添加物は、組成物を形成するための成分の混合中、適当な時間混合することもできる。使用することもできる充填材および強化材には、例えば、ケイ酸アルミニウム(ムライト)、合成ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、石英ガラス、結晶ケイ素グラファイト、天然ケイ砂などのケイ酸塩およびケイ素粉末;窒化ホウ素、ホウ素-ケイ酸塩粉末などのホウ素粉末;TiO2、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの酸化物;硫酸カルシウム(その無水物、二水和物または三水和物として);チョーク、石灰石、大理石、合成沈澱炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム;繊維状、モジュール状、ニードル形状、薄板状タルクなどを含むタルク;珪灰石;表面処理した珪灰石;中空および中実ガラス球、ケイ酸塩球、セノスフェア、などのガラス球;アルミノケイ酸塩(アルモスフェア)など;硬質カオリン、軟質カオリン、焼成カオリン、ポリマーマトリックス樹脂との親和性を促進するために当技術分野において知られているカオリン含有の様々な被覆などを含むカオリン;ケイ素、炭化物、アルミナ、炭化ホウ素、鉄、ニッケル、銅などの単結晶繊維または「ホイスカー」;アスベスト、炭素繊維、E、A、C、ECR、R、S、D、またはNEガラスなどのガラス繊維などの繊維(連続繊維および短繊維を含む);硫化モリブデン、硫化亜鉛などの硫化物、;チタン酸バリウム、バリウムフェライト、硫酸バリウム、重晶石などのバリウム種;微粒子または繊維状のアルミニウム、青銅、亜鉛、銅およびニッケルなどの金属および金属酸化物;ガラスフレーク、フレーク状シリコンカーバイド、二ホウ化アルミニウム、アルミニウムフレーク、鋼フレークなどのフレーク状充填材;繊維状充填材、例えば、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、および硫酸カルシウム半水和物の少なくとも1つを含むブレンドから誘導されるものなどの短い無機繊維;微粉砕木材などから得られる木材粉末などの天然充填材および強化材、セルロース、木綿、サイザル、ジュート、澱粉、コルク微粉、リグニン、粉砕したナットシェル、コーン、米粒殻などの繊維生成物;ポリテトラフルオロエチレン(Teflon)などの有機充填材;ポリ(エーテルケトン)、ポリイミド、ポリベンゾキサゾール、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリエステル
、ポリエチレン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、ポリ(ビニルアルコール)などの繊維の形成可能な有機ポリマーから生成される強化有機繊維充填材;ならびに雲母、粘土、長石、煙塵、フィライト、石英、珪石、パーライト、トリポリ石、珪藻土、カーボンブラックなど、および上記の充填材と強化材の少なくとも1つを含む組合せなどの追加の充填材および強化材などが含まれる。充填材/強化材は、マトリックスとの反応を防止するために被覆することもでき、また加水分解または熱的劣化を促進する恐れのある触媒劣化サイトを中性化するために、化学的に不動態化することもできる。
【0105】
充填材および強化材は、伝導性を促進するために金属材料の層で被覆したり、またはポリマーマトリックス樹脂の付着および分散を改良するために表面をシランで処理したりすることもできる。加えて強化充填材は、単一フィラメントまたは多重フィラメントの形態で提供することもでき、単独であるいは、例えば共同織りもしくはコア/鞘、サイドバイサイド、オレンジ型またはマトリックスおよび原繊維構造を通して、または繊維製造の当業者に知られている他の方法により、他の種類の繊維と組み合わせて使用することもできる。適切な共同織り構造には、例えば、ガラス繊維-炭素繊維、炭素繊維-芳香族ポリイミド(アラミド)繊維、および芳香族ポリイミド繊維ガラス繊維などが含まれる。繊維充填材は、例えば、粗織、0〜90度繊維などの織物繊維強化材の形態;または連続ストランドマット、チョップドストランドマット、ティッシュ、紙およびフェルトなどの不織強化材;またはブレイドのような三次元強化材で供給することもできる。充填材は、ポリカーボネート成分および衝撃改質組成物100重量部に対して、一般的に約0〜約100重量部の量で使用される。
【0106】
適切な抗酸化添加物には、例えば、アルキル化モノフェノールまたはポリフェノール;テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマート)]メタンなどのポリフェノールとジエンとのアルキル化反応生成物;パラクレゾールまたはジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物;アルキル化ヒドロキノン;ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル;アルキリデン-ビスフェノール;ベンジル種;ベータ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオン酸の一価または多価アルコールとのエステル;ベータ-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロピオン酸の一価または多価アルコールとのエステル;など;および前記抗酸化剤の少なくとも1つを含む組合せが含まれる。抗酸化剤は、ポリカーボネート成分および衝撃改質組成物100重量部に対して、一般的に約0.01〜約1重量部、具体的には約0.1〜約0.5重量部の量で使用される。
【0107】
適切な熱および色安定剤添加物には、例えば、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトなどのオルガノホスファイトが含まれる。熱および色安定剤は、ポリカーボネート成分および衝撃改質組成物100重量部に対して、一般的に約0.01〜約5重量部、具体的には約0.05〜約0.3重量部の量で使用される。
【0108】
適切な二次的熱安定剤添加物には、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(ドデシルチオ)プロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジミリステルチオジプロピオネート、ジトリデシルテルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールオクチルチオプロピオネート、ジオクデシルジスルフィドなどのチオエーテルおよびチオエステル、ならびに上記熱安定剤の少なくとも1つを含む組合せが含まれる。二次的熱安定剤は、ポリカーボネート成分および衝撃改質組成物100重量部に対して、一般的に約0.01〜約5重量部、具体的には約0.03〜約0.3重量部の量で使用される。
【0109】
紫外線(UV)吸収添加物を含む光安定剤を使用することもできる。適切なこの種類の安定化添加物には、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノール(Cytecから販売されているCYASORB(商標)5411)、およびCiba Specialty Chemicalsから販売されているTINUV1N(商標)234;ヒドロキシベンゾトリアジン;ヒドロキシフェニル-トリアジンまたは-ピリミジン、TINUVIN(商標)1577(Ciba製)などのUV吸収剤;および2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニルl)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチルオキシ)-フェノール(Cytecから販売されている、CYASORB(商標)1164);置換ピペリジン部分(moieties)およびそのオリゴマーを含む非塩基性ヒンダードアミン光安定剤(以降「HALS」と呼ぶ)、例えば、TINUVIN(商標)622(Ciba製)、GR-3034、TINUVIN(商標)123、およびTINUVIN(商標)4404などの4-ピペリジノール誘導体;2,2'-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンゾキサジン-4-オン)(CYASORB(商標)UV-3638)などのベンゾキサジノン;2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン(CYASORB(商標)531)などのヒドロキシベンゾフェノン;オキサニリド;1,3-ビス[(2シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]ウロパン(UVINUL(商標)3030)および1,3-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパンなどのシアノアクリレートなどのベンゾトリアゾールおよびヒドロキシベンゾトリアゾール;ならびに全ての粒子径が約100マイクロメートル未満である、酸化チタン、酸化セリウム、および酸化亜鉛などのナノ寸法の無機材料、ならびに上記安定剤の少なくとも1つを含む組合せが含まれる。光安定剤は、ポリカーボネート成分および衝撃改質組成物100重量部に対して、約0.01〜約10重量部、具体的には約0.1〜約1重量部使用することもできる。UV吸収剤は、ポリカーボネート成分および衝撃改質組成物100重量部に対して、一般的に約0.1〜約5重量部の量で使用される。
【0110】
可塑剤、潤滑剤、および/または離型剤添加物も使用することもできる。これらの種類の材料には、かなりのオーバーラップがあるが例えば、ジオクチル-4,5-エポキシ-ヘキサヒドロフタレートなどのフタル酸エステル;トリス-(オクトキシカルボニルエチル)イソシアネート;トリステアリン;レゾルシノールテトラフェニルジホスフェート(RDR)、ヒドロキノンのビス(ジフェニル)ホスフェート、およびビスフェノール-Aのビス(ジフェニル)ホスフェートの二機能または多機能芳香族リン酸塩;ポリ-アルファ-オレフィン;エポキシ化大豆油;シリコーン油を含むシリコーン;エステル、例えば、アルキルステアリルエステルなどの脂肪酸エステル;例えば、メチルステアリン酸塩;ステアリルステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレートなど;メチルステアレートと、ポリエチレングリコールポリマー、ポリプロピレングリコールポリマー、およびそれらのコポリマーを含む親水性および疎水性非イオン性界面活性剤との混合物、例えば、適切な溶媒中のメチルステアレートおよびポリエチレン-ポリプロピレングリコールコポリマー;蜜ろう、モンタンろう、パラフィンワックスなどのワックス;およびEthylflo(商標)164、166、168、および170などのポリアルファオレフィンが含まれる。かかる材料は、ポリカーボネート成分および衝撃改質組成物100重量部に対して、一般的に約0.1〜約20重量部、具体的には約1〜約10重量部の量で使用される。
【0111】
顔料および/または染料などの着色剤添加物が存在することもできる。適切な顔料には、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物および混合酸化物;硫化亜鉛などの硫化物;アルミン酸塩;スルホ-シリケート硫酸ナトリウム、クロム酸塩など;カーボンブラック;亜鉛フェライト;群青;Pigment Brown 24;Pigment Red 101;Pigment Yellow 119などの無機顔料;アゾ、ジアゾ、キナクリドン、ペリレン、ナフタレン、テトラカルボン酸、フラバントロン、イソインドリノン、テトラクロロイソインドリノン、アントラキノン、アンダントロン、ジオキサジン、フタロシアニン、およびアゾレーク;Pigment Blue 60、Pigment Red 122、Pigment Red 149、Pigment Red 177、Pigment Red 179、Pigment Red 202、Pigment Violet 29、Pigment Blue 15、Pigment Green 7、Pigment Yellow 147および Pigment Yellow 150などの有機顔料、ならびに上記顔料の少なくとも1つを含む組合せが含まれる。顔料は、マトリックスとの反応を防止するために被覆することもできるし、あるいは加水分解または熱的劣化を促進する恐れのある触媒劣化サイトを中和するために、化学的に不動態化することもできる。顔料は、ポリカーボネート成分および衝撃改質組成物100重量部に対して、一般的に約0.01〜約10重量部の量で使用される。
【0112】
適切な染料は、一般的に、有機材料であり、例えばクマリン460(青)、クマリン6(緑)、ナイルレッドなどのクマリン染料;ランタニド錯体;炭化水素および置換炭化水素色素;多環芳香族炭化水素染料;オキサゾールまたはオキサジアゾール染料などのシンチレーション染料;アリール-またはヘテロアリール-置換ポリ(C2〜8)オレフィン染料;カルボシアニン染料;インデアントロン染料;フタロシアニン染料;オキサジン染料;カルボスチル染料;ナフタレンカルボン酸染料;ポルフィリン染料;ビス(スチル)ビフェニル染料;アクリジン染料;アントラキノン染料;シアニン染料;メチン染料;アリールメタン染料;アゾ染料;インジゴイド染料;チオインジゴイド染料;ジアゾニウム染料;ニトロ染料;キノオンイミン染料;アミノケトン染料;テトラゾリウム染料;チアゾール染料;ペリレン染料、ペリノン染料;ビス-ベンザキサゾイルチオフェン(BBOT);トリアリールメタン染料;キサンテン染料;チオキサンテン染料;ナフタールイミド染料;ラクトン染料;近赤外線波長において吸収し可視波長において放射する坑ストークシフト染料などの蛍光体;および5-アミノ-9-ジエチルイミノベンゾ(a)フェノキサゾニウム過塩素酸塩; 7-アミノ-4-メチルカルボスチリル; 7-アミノ-4-メチルクマリン; 7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン; 3-(2'-ベンズイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン; 3-(2'-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノクマリン; 2-(4-ビフェニリル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール; 2-(4-ビフェニリル)-5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール; 2-(4-ビフェニル)-6-フェニルベンズオキサゾール-1,3; 2,5-ビス-(4-ビフェニリル)-1,3,4-オキサジアゾール; 2,5-ビス-(4-ビフェニリル)-オキサゾール; 4,4'-ビス-(2-ブチルオクチルオキシ)-p-クアテルフェニル; p-ビス(o-メチルスチリル)-ベンゼン; 5,9-ジアミノベンゾ(a)フェノキサゾニウム過塩素酸塩; 4-ジシアノメチレン-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン; 1,1'-ジエチル-2,2'-カルボシアニンヨウ化物; 1,1'-ジエチル-4,4'-カルボシアニンヨウ化物; 3,3'-ジエチル-4,4',5,5'-ジベンゾチアトリカルボシアニンヨウ化物; 1,1'-ジエチル-4,4'-ジカルボシアニンヨウ化物; 1,1'-ジエチル-2,2'-ジカルボシアニンヨウ化物; 3,3'-ジエチル-9,11-ネオペンチレンチアトリカルボシアニンヨウ化物; 1,3'-ジエチル-4,2'-キノリルオキサカルボシアニンヨウ化物; 1,3'-ジエチル-4,2'-キノリルチアカルボシアニンヨウ化物; 3-ジエチルアミノ-7-ジエチルイミノフェノキサゾニウム過塩素酸塩; 7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン; 7-ジエチルアミノ-4-トリフルオロメチルクマリン; 7-ジエチルアミノクマリン; 3,3'-ジエチルオキサジカルボシアニンヨウ化物; 3,3'-ジエチルチアカルボシアニンヨウ化物; 3,3'-ジエチルチアジカルボシアニンヨウ化物; 3,3'-ジエチルチアトリカルボシアニンヨウ化物; 4,6-ジメチル-7-エチルアミノクマリン; 2,2-ジメチル-p-クアテルフェニル; 2,2-ジメチル-p-テルフェニル; 7-ジメチルアミノ-1-メチル-4-メトキシ-8-アザキノロン-2; 7-ジメチルアミノ-4-メチルキノロン-2; 7-ジメチルアミノ-4-トリフルオロメチルクマリン; 2-(4-(4-ジメチルアミノフェニル)-1,3-ブタジエニル)-3-エチルベンゾチアゾリウム過塩素酸塩; 2-(6-(p-ジメチルアミノフェニル) ;2,4-ネオペンチレン-1,3,5-ヘキサトリエニル)-3- メチルベンゾチアゾリウム過塩素酸塩; 2-(4-(p-ジメチルアミノフェニル)-1,3-ブタジエニル)-1,3,3-トリメチル-3H-インドリウム過塩素酸塩; 3,3'-ジメチルオキサトリカルボシアニンヨウ化物; 2,5-ジフェニルフラン; 2,5-ジフェニルオキサゾール; 4,4'-ジフェニルスチルベン; 1-エチル-4-(4-(p-ジメチルアミノフェニル)-1,3-ブタジエニル)-ピリジニウム過塩素酸塩; 1-エチル-2-(4-(p-ジメチルアミノフェニル)-1,3-ブタジエニル)-ピリジニウム過塩素酸塩; 1-エチル-4-(4-(p-ジメチルアミノフェニル)-1,3-ブタジエニル)-キノリウム過塩素酸塩; 3-エチルアミノ-7-エチルイミノ-2, 8-ジメチルフェノキサジン-5-イウム過塩素酸塩; 9-エチルアミノ-5-エチルアミノ-10-メチル-5H-ベンゾ(a)フェノキサゾニウム過塩素酸塩; 7-エチルアミノ-6-メチル-4-トリフルオロメチルクマリン; 7-エチルアミノ-4-トリフルオロメチルクマリン; 1,1',3,3,3',3'-ヘキサメチル-4,4',5,5'-ジベンゾ-2,2'-インドトリカルボシアニンヨウ化物; 1,1',3,3,3',3'-ヘキサメチルインドジカルボシアニンヨウ化物;1,1',3,3,3',3'-ヘキサメチルインドトリカルボシアニンヨウ化物; 2-メチル-5-t-ブチル-p-クアテルフェニル; N-メチル-,4-トリフルオロメチルピペリジノ-<3,2-g>クマリン; 3-(2'-N-メチルベンズイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン; 2-(1-ナフチル)-5-フェニルオキサゾール; 2,2'-p-フェニレン-ビス(5-フェニルオキサゾール); 3,5,3'''',5''''-テトラ-t-ブチル-p-セキシフェニル; 3,5,3'''',5''''-テトラ-t-ブチル-p-キンクフェニル; 2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-9-アセチルキノリジノ-<9,9a,1-gh>クマリン; 2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-9-カルボエトキシキノリジノ-<9,9a,1-gh>クマリン; 2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-8-メチルキノリジノ-<9,9a,1-gh>クマリン; 2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-9-(3-ピリジル)-キノリジノ-<9,9a,1-gh>クマリン; 2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロ-8-トリフルオロメチルキノリジノ-<9,9a,1-gh>クマリン; 2,3,5,6-1H,4H-テトラヒドロキノリジノ-<9,9a,1-gh>クマリン; 3,3',2",3'''-テトラメチル-p-クアテルフェニル; 2,5,2'''',5'''-テトラメチル-p-キンクフェニル; P-テルフェニル; P-クアテルフェニル; ナイルレッド; ローダミン700; オキサジン750; ローダミン800; IR 125; IR 144; IR 140; IR 132; IR 26; IR5; ジフェニルヘキサトリエン; ジフェニルブタジエン; テトラフェニルブタジエン; ナフタレン; アントラセン; 9,10-ジフェニルアントラセン; ピレン; クリセン; ルブレン; コロネン; フェナントレンなどの発光染料、ならびに上記染料を少なくとも1つを含む組合せなどである。染料は、ポリカーボネート成分および衝撃改質組成物100重量部に対して、一般的に約0.1百万分の一から約10重量部の量で使用される。
【0113】
物品上に噴霧することもできまた熱可塑性組成物へと処理することもできるモノマー、オリゴマー、またはポリマーの静電防止添加物を使用すると有利である。モノマー静電防止剤に例には、グリセロールモノステアレート、グリセロールジステアレート、グリセロールトリステアレートなどの長連鎖のエステル、ソルビタンエステル、およびエトキシ化アルコール、アルキルスルフェート、アルキルアリールスルフェート、アルキルホスフェート、アルキルアミンスルフェート、ナトリウムステアリルスルホネート、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネートなどのアルキルスルホネート塩、フッ素化アルキルスルホネート塩、ベタインなどが含まれる。上記静電防止剤の組合せを使用することもできる。典型的なポリマー静電防止剤は、ある種のポリエーテルエステルを含み、それぞれがポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール部分を含んでいる。かかるポリマー静電防止剤は市販されており、これには例えば、PELESTAT(商標)6321(Sanyo)、PEBAX(商標)MH1657(Atofina)、およびIRGASTAT(商標)P18とP22(Ciba-Geigy)が含まれる。静電防止剤として使用することもできる他のポリマー材料は、ポリチオフェン(Bayerから市販されている)などの固有の導電性ポリマーであり、これは高温での溶融処理後もその固有の導電性の一部を保有している。一実施形態において、カーボンファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、または前記の任意の組合せを、組成物を静電的に散逸性にするための化学的静電防止剤を含むポリマー樹脂において使用することもできる。静電防止剤は、ポリカーボネート成分および衝撃改質組成物100重量部に対して、一般的に重量で約0.1〜約10重量部、具体的には約使用される。
【0114】
発泡体を所望する場合は、例えば、低沸点のハロ炭化水素で二酸化炭素を発生するものなどの適切な発泡剤が含まれる。発泡剤は、室温では固体で、その分解温度以上に加熱すると、窒素、二酸化炭素25、アンモニアガスなどのガスを発生し、アゾジカーボンアミド、アゾジカーボンアミドの金属塩、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなど、または上記発泡剤の少なくとも1つを含む組合せなどである。発泡剤は、ポリカーボネート成分および衝撃改質組成物100重量部に対して、一般的に約0.5から約20重量部の量で使用される。
【0115】
例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの非繊維形成または繊維形成のフルオロポリマーなどの滴下防止剤も使用することもできる。滴下防止剤は、前述の硬質ポリマーによってカプセル封入することもでき、例えばSAN、SAN中にカプセル封入したPTFEがTSANとして知られている。カプセル封入したフルオロポリマーは、例えば水性分散などのフルオロポリマーの存在下、カプセル封入しているポリマーの重合によって作成することもできる。TSANは、組成物中でより容易に分散するので、PTFEに著しい利点を提供することもできる。適切なTSANは、例えば、カプセル封入したフルオロポリマーの全重量に対して、約50wt.%のPTFEおよび50wt.%のSANを含むこともできる。SANは、例えば、コポリマーの全重量に対して約75wt.%のスチレンおよび約25wt.%のアクリロニトリルを含むこともできる。別法として、フルオロポリマーを、例えば芳香族ポリカーボネート樹脂またはSANなどの第2のポリマーとある様式で事前ブレンドして、滴下防止剤のための凝集材料を形成することもできる。どちらの方法も、カプセル封入したフルオロポリマーを作るのに使用することもできる。滴下防止剤は、ポリカーボネート成分および衝撃改質組成物100重量部に対して、一般的に約0.1から約10重量部の量で使用される。
【0116】
熱可塑性組成物は、当技術分野において一般的に利用可能な方法によって製造することもでき、例えば、一実施形態における一手順として、粉末にした一種または複数のポリカーボネート、使用する場合は他の樹脂、衝撃改質組成物、および/または他の任意選択の成分を、場合によってはチョップドガラスストランドまたは他の充填材と共にHenschel(商標)高速混合機中で最初にブレンドする。このブレンドを達成する他の低剪断応力方法には、それだけに限定されないが、手動式混合が含まれる。ブレンドは、次いで2軸押出機のスロートに、ホッパーを経由して供給する。別法として、1つまたは複数の成分を押出機のスロートにおいて直接供給するかおよび/または側面スタッファーを通して下流に供給することによって組成物に組み込むこともできる。かかる添加物は、所望のポリマー樹脂を用いて、マスターバッチに配合し、押出機に供給することもできる。この添加物は、最終製品に添加する前に、濃縮物を作るためにポリカーボネートのベース材料または衝撃改質剤のベース材料のいずれでも添加することもできる。押出機は、通常組成物が流動化するのに必要な温度よりも高い、一般的に500°F(260℃)〜650°F(343℃)の温度で運転される。押出し物は、水中で直ちに冷却されペレット化される。ペレットは、押出し物を切断し、1/4インチの長さ所望する場合はそれより短い寸法に調製される。かかるペレットは、その後成型、造形、または成形に使用することもできる。
【0117】
熱可塑性組成物を含む、造形、成形、または成型された物品もまた提供される。熱可塑性組成物は、有用な形状の物品へと、射出成型、押出し、回転成型、吹込み成型、熱成型などの様々な手段により成型され、例えば、モニター用のハウジングなどのコンピューターおよび事務機器ハウジングなど、携帯電話、電子コネクター用のハウジングなどの携帯用電子デバイス用ハウジング、および照明器具、装飾品、家庭用電気製品、屋根、温室、サンルーム、水泳プールの囲いなどの構成要素などの物品を成型する。
【0118】
この組成物は、コンピューター、ノートブック型コンピューター、携帯電話、個人データー支援器(PDAs)、印刷機、コピー機、プロジェクタ、ファクシミリ機、および当技術分野において知られている他の設備およびデバイスなどの事務用機器および設備ハウジングに、特段の有用性があることが見出される。
【0119】
本明細書で説明した熱可塑性組成物は、著しく改良された熱的安定性および諸性質の良好なバランスを有している。特に有利な特徴は、熱可塑性組成物が、延性および衝撃強さを著しく低下させることなく、改良された熱的安定性と難燃性能とを達成することもできることである。
【0120】
熱可塑性組成物は、流動、衝撃および流動、ならびに難燃性能などの物理的性質の著しく改良されたバランスを有する。本発明の熱可塑性組成物の溶融流れ速度(MFR)は、特定の衝撃改質剤および難燃剤ブレンド無しの組成物より良好であった。MFRは、規定された温度および荷重においてオリフィスを通過する熱可塑性プラスチックの押出し速度であって、ISO1133またはASTMD1238に従い測定することもできる。これは溶融材料の流動を測定する手段を提供し、熱可塑性プラスチックの劣化の程度を決定するのに使用することができる。
【0121】
溶融粘度(MV)は、分子鎖が互いに関して動くことのできる所定の温度におけるポリマーの測定値である。分子量が大きくなると絡み合いが大きくなり、溶融粘度が増加するので、溶融粘度は分子量に依存し、それ故熱可塑性プラスチックの劣化の程度を決定するのに使用することができる。劣化した材料は、一般的に増加した粘度を示し、これは低下した物理的性質を表している。溶融粘度は、様々な剪断速度に対して決定され、ISO11443によって簡便に決定することもできる。溶融粘度は、剪断速度1500s-1で260℃において測定した。
【0122】
加熱撓み温度(HDT)は、荷重を支えながら、高温で短時間機能する材料の能力の相対的測定である。この試験は、剛性に対する温度の影響を測定する。標準試料片に、規定された表面応力を与え、温度を均一な速度で上昇させる。加熱撓み温度(HDT)は、平らな6.4mm厚さの試験片を使用し、成型した引っ張り試験片に1.8MPaの応力を与えて、ASTM D648により決定した。本明細書で説明した組成物は、更に付加的な優れた物理的性質と良好な加工可能性を有している。例えば、熱可塑性ポリカーボネート組成物は、6.4mm厚さの試験片に1.8MPaの応力を与えてASTM D648により測定して、約75〜約105℃、より具体的には約85〜約95℃の加熱撓み温度(HDT)を有することもできる。
【0123】
曲げ係数は、1/4インチ(6.4mm)厚さの試験片を用いて、2.5mm/分の速度においてASTM D790により測定した。
【0124】
延性率は、室温において18インチ(3.2mm)試験片に衝撃を与え、破断面の衝撃エネルギーおよび応力白化を使用して決定した。一般的に、応力白化は延性破壊モードを表し、逆に言えば、応力白化が少ないことは脆性破壊モードを表している。10個の試験片を試験し、延性率は延性破壊モードを示した衝撃試験片の百分率で表した。延性は、温度と共に低下する傾向があり、延性転化温度は、延性の百分率が50%未満に落ちる温度である。
【0125】
ノッチ付アイゾット衝撃強さ(NII)は、1/8インチ(3.2mm)試験片を使用し、ASTM D256により決定した。ASTM D256のノッチ付アイゾット衝撃強さは、プラスチック材料の衝撃抵抗を比較するのに使用される。結果は、試験試料片を破壊するのに使用された衝撃エネルギーのジュールを、ノッチにおける試験片の面積で割ったものと規定される。結果は、J/mで表示される。熱可塑性ポリカーボネート組成物は、1/8インチ(3.2mm)の厚さの試験片を使用し、23℃においてASTM D256により決定して、約200J/mを超える、具体的には約300J/m超、特に約600J/m超のノッチ付アイゾット衝撃強さを有することもできる。
【0126】
可燃性試験は、Underwriter研究所告示94「プラスチック材料の可燃性試験、UL94」の手順に従って行われ、材料は、5つの試験試料から得られた結果を基にして、HB、V0、UL94 V1、V2、5VAおよび/または5VB に分類することもできる。これら可燃性分類のそれぞれの基準を以下に説明する。
【0127】
V0:長軸が炎に対して約180度となるように設置した試料において、発火炎を取り除いた後の発炎および/またはくすぶりの平均時間が5秒間を超えず、垂直に設置した試料に、脱脂綿を発火させる燃焼粒子の滴下が無いこと。5消炎時間(FOT)は、5個の試験片の消炎時間の合計であって、それぞれが最大消炎時間50秒に関して2回点火する。FOT1は、第1点火後の平均消炎時間である。FOT2は、第2点火後の平均消炎時間である。
【0128】
V1:長軸が炎に対して約180度となるように設置した試料において、発火炎を取り除いた後の発炎および/またはくすぶりの平均時間が25秒間を超えず、垂直に設置した試料に、脱脂綿を発火させる燃焼粒子の滴下が無いこと。5消炎時間(FOT)は、5個の試験片の消炎時間の合計であって、それぞれが最大消炎時間250秒に関して2回点火する。
【0129】
5VB:炎を、垂直に固定した所定の厚さの5インチ(127mm)×0.5インチ(12.7mm)試験片に当て、試験片の12インチ(305mm)下に脱脂綿パッドを設定する。試験片の厚さを、0.1mmの精度を有するキャリバーを用いて決定する。炎は、1.58インチ(40mm)の青炎を有する5インチ(127mm)の炎である。炎を、青炎の先端が試験片の下端に当たるように5秒間当てる。次いで炎を5秒間はずす。炎を当てたりはずしたりすることを、試験片に同じ炎が5回当てられるまで繰り返す。5回目の炎の適用が取り除かれた後、タイマー(T-0)を始動させ、試験片が炎を上げて燃え続ける時間(残炎時間)、ならびに残炎が消えた後に試験片が赤く輝いている時間(残光時間)を、残光は存在するが残炎は止んだ時にT-0を停止し、次いで残光が止んだ時にT-0を停止することによって測定する。残炎時間と残光時間を合わせたものは、試験片に5回当てた後に60秒以下でなければならず、脱脂綿パッドを発火させる滴下が無いことがよい。試験は、5つの同一の試験片について繰り返す。5つの内1つの試験片が時間および/または滴下無しの要件に合致しない場合は、次に5試験片の第2のセットを同じ方法で試験する。所定の厚さの材料が5VB標準を達成するためには、第2のセットの5試験片全てが要件に合致していなければならない。
【0130】
データーは、また平均消炎時間、消炎時間の標準偏差、および滴下の総数を計算し、データーを初回合格確率の予測、すなわち、「p(FTP)」に転換する統計的方法によって解析され、これは特定の試料式が、従来の5試料のUL94V0またはV1試験における「合格」等級を実現する。最初のサブミッションにおける初回合格の確率は、次式により決定することもできる。
pFTP=(Pt1>mbt, n=0×Pt2>mb, n=o×Ptotal<=mtbt×Pdrip, n=0)
式中、Pt1>mbt, n=0は、最初の燃焼時間が最大燃焼時間値を超えない確率であり、Pt2>mb, n=oは第2の燃焼時間が最大燃焼時間を超えない確率であり、Ptotal<=mtbtは、燃焼時間の合計が最大合計燃焼時間値以下である確率であり、Pdrip, n=0は、燃焼試験中に滴下を示した試験片が無い確率である。第1および第2燃焼時間は、第1および第2の炎適用後の時間をそれぞれ指す。
【0131】
最初の燃焼時間が最大燃焼時間値を超えない確率Pt1>mbt, n=0は、以下の式によって決定することもできる。
Ptl>mbt, n=0=(l-Pt1>mbt)5
式中、Ptl>mbtは、tl>mbtに関する対数正規分布曲線の下での面積であり、指数「5」は、試験した試験片の数に関連する。
【0132】
第2の燃焼時間が最大燃焼時間値を超えない確率は、次式から決定することもできる。
Pt2>mbt, n =0=(l-Pt2>mbt)
式中、Pt2>mbtはt2>mbtに関する正規分布曲線の下での面積である。上記のように、燃焼時間セットの平均および標準偏差が、正規分布曲線を計算するのに使用される。UL-94V-0等級に関して、最大燃焼時間は10秒間であるV-1またはV-2等級に関して、最大燃焼時間は30秒5である。
【0133】
燃焼試験の間に試料片が滴下を示さない確率Pdrip, n=oは、次式で推定される属性を定義する関数である。
(1-Pdrip)5
ここで、Pdrip=(滴下した試験片の数/試験した試験片の数)である。
【0134】
燃焼時間の合計が、最大合計燃焼時間値以下である確率Ptotal<=mtbtは、模擬化した5試験片合計燃焼時間の正規分布曲線から決定することもできる。分布は、上記で決定した燃焼時間に関する分布を使用して、5試料片の1000セットのMonte Carloシミュレーションから作り出すこともできる。Monte Carloシミュレーションに関する技法は、当技術分野において良く知られている。5試料片の合計燃焼時間は、模擬化した1000セットの平均および標準偏差を用いて作り出すこともできる。従って、Ptotal<=mtbtは、合計<=最大合計燃焼時間に関する1000セットのMonte Carloシミュレーション5試験片の対数正規分布曲線の下の面積から決定することもできる。UL-94V-0の等級に関して、最大合計燃焼時間は50秒である。V1またはV2等級に関して、最大合計燃焼時間は250秒である。
【0135】
UL試験における最大難燃性性能に関して、p(FTP)は可能な限り1に近いこと、例えば、具体定には約0.85以上、場合によっては約0.9以上、より具体的には、約0.95以上が好ましい。p(FTP)≧0.85は、言及したVOまたはVI試験への遵守を規定するよりもより厳しい基準である。
【0136】
本発明を、以下の限定されない実施例によって更に説明する。
【0137】
(実施例)
実施例において、ポリカーボネート(PC)は、Bisphenol Aに基づいており、10,000〜120,000、より具体的には18,000〜40,000の(絶対分子量尺度)の分子量を有しており、GE Advanced MaterialsからLEXANという商標で販売されている。このポリカーボネートの初期溶融流動は、ASTM D1238に従い、1.2kgの荷重を用いて300℃にて測定して、約6〜約27であった。
【0138】
MBS はRohm & Haas製のEXL2691A、EXL2650A、またはEXL2602であり、公称75〜82wt.%のブタジエンコアと、残りがスチレン-メタクリル酸メチルの外殻である。MBS製造方法の1つは、米国特許第6,545,089号に記載の方法によるものである。
【0139】
使用した塊状ABS(BABS)は、GE Advanced Materials Bulk ABS C29449であり、これは公称17wt.%のブタジエンを有し、残りはスチレンおよびアクリロニトリルである。微細構造は、SANマトリックスのブタジエン相中における閉塞SANでもって相転換されたものである。BABSは、例えば、米国特許第3,981,944号および米国特許第5,414,045号に記載されている、攪拌式沸騰反応装置を有する直列のプラグフロー反応装置を用いて製造することができる。
【0140】
試料は、Toshiba製2軸スクリュー押出機の溶融押出しにより、公称溶融温度255℃(490°F)、350rpmを用いて調製した。押出物はペレット化し、80℃において約4時間乾燥した。
【0141】
試験試料片を作成するために、乾燥ペレットを公称525℃において射出成型機により射出成型した。ここにおいて、射出成型機のバレル温度は、約230℃〜約300℃に変化させた。試験試料片は、前述のASTMまたはISO規格に従って試験した。
【0142】
以下の成分が使用された。
【0143】
【表1】

【0144】
試料は、以下の表1に示す材料を使用して前述の方法従って作成し、以前に説明した試験方法に従って試験した。試料の配合および試験結果を以下の表2に示す。
【0145】
【表2】

【0146】
上記の結果は、BABSをBABSに沿って置き換える少なくも2%のMBSを有する本発明による組成物(実施例1〜3)が、一方では難燃性能を維持または若干改良しながら、衝撃の結果を著しく改良していることを示している。
【0147】
追加の試料は、表1の材料、ならびに充填材を使用して生成した。結果(以下の表3)は、
BABSの一部をMBSで置き換えたブレンドの性能は、BABSの一部を置き換えている同量のポリカーボネート-ポリシロキサンコポリマー組成物(比較実施例C3)に比較して改良された衝撃性能を有することを示している。比較実施例C3は、組成中にいかなるMBSも含まない比較実施例C1およびC4に匹敵する不十分な衝撃性能を有していた。
【0148】
【表3】

【0149】
追加の試料は、表1の材料を使用して生成した。全衝撃改質組成物中のMBSの水準は、配合物中におけるMBSのBABSに対する最適比率を決定するために、0%〜100%(または全MBS組成物中において0%〜13.5%MBS)変化させた。結果を以下の表4に示す。
【0150】
【表4】

【0151】
表4は、衝撃改質組成物が、塊状ABSとMBSなどのBABS以外の衝撃改質剤とのブレンドを含む場合、性質のバランスが改良されることを示している。第2の衝撃改質剤の量が、全組成物の約2.00重量%〜約9.50重量%(全衝撃改質組成物の少なくとも約14重量%)の場合、性質のバランスが維持される。成分b)が、全組成物中の第2衝撃改質剤の約2から約6.75wt.%のサンプル(約14wt.%〜約50wt.%の衝撃改質組成物)に関しては、全ての性質のバランスが良好である。成分b)が第2衝撃改質剤の約9.50重量%(全衝撃改質組成物の約70wt.%)の場合、性質、特に耐熱性能および衝撃性の性質は依然として良好であるが、第2衝撃改質剤の量が少ない場合には、流動性が良好ではない。もしも多過ぎるまたは少な過ぎる第2の衝撃改質剤を使用した場合、性能は良くない。耐熱性能(pFTPおよび合格/不合格として測定し報告する)は、多過ぎるMBSを使用した場合、両方とも低下する。少な過ぎるMBSを使用した場合またはMBSを使用しない場合は、延性と衝撃性能が劣化する。従って、特定の組合せだけが、所望の物理的性質のバランスならびに耐熱性能を提供する。
【0152】
本明細書で使用する場合、「第1」、「第2」などは、いかなる順序または重要性を意味するものではなくて、1つの要素を他と区別するために使用され、「その(the)」、「1つ(a)」および「1つ(an)」は、量の限度を意味するものではなくて、参照している項目の少なくとも1つの存在を意味する。本明細書において同じ性質または量に関して開示される全ての範囲は、終末点を包含しており、それぞれの終末点は独立に組合せできる。引用した全ての特許、特許申請および他の参考文献は、それらの全体が、参照により本明細書に組み込まれている。
【0153】
量に関連して使用される「約」という修飾語句は、記述した値を含み文脈によって指示された意味合い(例えば、特定の量の測定に関連するある程度の誤差を含むなど)を包含している。
【0154】
「任意選択の」または「場合によっては」は、その後に記述した出来事または状況が起こるかもしれないし起こらないかもしれないことを意味し、記述には出来事が起こった場合の事例および出来事が起こらなかった場合の事例を含む。
【0155】
本発明は、好ましい実施形態を参照にして説明してきたが、当業者によって、発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更形態がなされ、同等品が本発明の要素に置き換えられるであろうことが理解される。それに加えて、本発明の基本的範囲から逸脱することなく、本発明によって教示される特定の状況または物質に適応するために多くの修正形態を行うこともできる。従って、本発明は、本発明を実施するための最善の態様として開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求範囲に入る全ての実施形態を含むことを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート成分と、
a)塊状重合ABS、および
b)ABSとは異なる衝撃改質剤
を含む衝撃改質組成物と、
難燃剤と
を組み合わせて含み、
b)が、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム、C1〜8アルキル(メタ)アクリレートとブタジエンとのエラストマーコポリマー、または前記エラストマーの少なくとも1つを含む組合せを含むエラストマー相を、式(9)のモノマー
【化1】

[式中、各Xcは独立に、水素、C1〜C12アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C12アリール、C7〜C12アラルキル、C7〜C12アルカリル、C1〜C12アルコキシ、C3〜C12シクロアルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、クロロ、ブロモ、またはヒドロキシであり、Rは水素、C1〜C5アルキル、ブロモ、またはクロロである]と、
一般式(10)のモノマー
【化2】

[式中、Rは水素、C1〜C5アルキル、ブロモ、またはクロロであり、Xcはシアノ、C1〜C12アルコキシカルボニル、C1〜C12アリールオキシカルボニル、またはヒドロキシカルボニルである]との共重合から誘導された硬質コポリマー相と一緒に含む熱可塑性組成物。
【請求項2】
前記エラストマー相が、ポリブタジエンを含み、前記硬質コポリマー相がスチレン、アルファ-メチルスチレン、ジブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ブチルスチレン、パラヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、または前記スチレンの少なくとも1つを含む組合せと、アクリロニトリル、エタアクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アルファ-クロロアクリロニトリル、ベータ-クロロアクリロニトリル、アルファ-ブロモアクリロニトリル、アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル;または前記コモノマーの少なくとも1つを含む組合せとの共重合から誘導される単位を含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項3】
前記塊状重合ABS以外の衝撃改質剤が、MBS、MABSまたは前記衝撃改質剤の少なくとも1つを含む組合せである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
更に充填剤を含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項5】
約50wt.%から約90wt.%までのポリカーボネート成分と、約3wt.%から約25wt.%までの成分a)および約0.5wt.%から約10wt.%までの成分b)を含む約3wt%から約35wt%までの衝撃改質組成物と、約2wt.%から約25wt.%までの難燃剤とを含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項6】
成分b)が、衝撃改質組成物の約10wt.%から約50wt.%までを占める、請求項5に記載の熱可塑性組成物。
【請求項7】
成分b)が、衝撃改質組成物の約14wt.%から約30wt.%までを占める、請求項6に記載の熱可塑性組成物。
【請求項8】
1.5mmの厚さにおいてV0のUL94等級を達成できる、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項9】
1.2mmの厚さにおいてV0のUL94等級を達成できる、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の熱可塑性組成物を含む物品。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物の成型、押出、または造形を含む、物品の製造方法。
【請求項12】
熱可塑性組成物の全重量に対して、
約60wt.%から約80wt.%のポリカーボネート成分と、
a)約5wt.%から約20wt.%までの塊状重合ABS、および
b)約1wt.%から約10wt.%までの、ABSとは異なる衝撃改質剤
を含む衝撃改質組成物と、
約5wt.%から約20wt.%の難燃剤と
を組み合わせて含み、
b)が、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム、C1〜8アルキル(メタ)アクリレートのブタジエンとのエラストマーコポリマー、または前記エラストマーの少なくとも1つを含む組合せを含むエラストマー相を、式(9)のモノマー
【化3】

[式中、各Xcは独立に、水素、C1〜C12アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C12アリール、C7〜C12アラルキル、C7〜C12アルカリル、C1〜C12アルコキシ、C3〜C12シクロアルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、クロロ、ブロモ、またはヒドロキシであり、Rは水素、C1〜C5アルキル、ブロモ、またはクロロである]と、
一般式(10)のモノマー
【化4】

[式中、Rは水素、C1〜C5アルキル、ブロモ、またはクロロであり、Xcはシアノ、C1〜C12アルコキシカルボニル、C1〜C12アリールオキシカルボニル、またはヒドロキシカルボニルである]との共重合から誘導される硬質コポリマー相と一緒に含む熱可塑性組成物。
【請求項13】
塊状重合ABSとは異なる前記エラストマー改質衝撃改質剤が、全組成物の少なくとも約2wt.%を占める、請求項12に記載の熱可塑性組成物。
【請求項14】
塊状重合ABSとは異なる前記エラストマー改質衝撃改質剤が、全組成物の約2wt.%から約10wt.%を占める、請求項12に記載の熱可塑性組成物。
【請求項15】
更に充填剤を含む、請求項12に記載の熱可塑性組成物。
【請求項16】
1.5mmの厚さにおいてV0のUL94等級を達成できる、請求項12に記載の熱可塑性組成物。
【請求項17】
1.2mmの厚さにおいてV0のUL94等級を達成できる、請求項12に記載の熱可塑性組成物。
【請求項18】
約60wt.%から約80wt.%までのポリカーボネート成分と、
a)塊状重合ABS、および
b)MBS
を含む約3から約35wt.%までの衝撃改質組成物であって、
b)が衝撃改質組成物の約10wt.%から約50wt.%までを占める衝撃改質組成物と、
約5wt.%から約20wt.%の難燃剤と
を組み合わせて含む熱可塑性組成物。
【請求項19】
前記難燃剤が、リン含有難燃剤である、請求項18に記載の熱可塑性組成物。
【請求項20】
1.5mmの厚さにおいてV0のUL94等級を達成できる、請求項18に記載の熱可塑性組成物。
【請求項21】
1.2mmの厚さにおいてV0のUL94等級を達成できる、請求項18に記載の熱可塑性組成物。
【請求項22】
成分b)が、衝撃改質組成物の約14wt.%から約30wt.%までを占める、請求項18に記載の熱可塑性組成物。
【請求項23】
請求項18に記載の熱可塑性組成物を含む物品。
【請求項24】
ポリカーボネート成分と、
a)塊状重合ABS、および
b)ABSとは異なる衝撃改質剤を含む衝撃改質組成物であって、
b)が、ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム、C1〜8アルキル(メタ)アクリレートのブタジエンとのエラストマーコポリマー、または前記エラストマーの少なくとも1つを含む組合せを含むエラストマー相を、式(9)のモノマー
【化5】

[式中、各Xcは独立に、水素、C1〜C12アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C12アリール、C7〜C12アラルキル、C7〜C12アルカリル、C1〜C12アルコキシ、C3〜C12シクロアルコキシ、C6〜C12アリールオキシ、クロロ、ブロモ、またはヒドロキシであり、Rは水素、C1〜C5アルキル、ブロモ、またはクロロである]と、
一般式(10)のモノマー
【化6】

[式中、Rは水素、C1〜C5アルキル、ブロモ、またはクロロであり、Xcはシアノ、C1〜C12アルコキシカルボニル、C1〜C12アリールオキシカルボニル、またはヒドロキシカルボニルである]との共重合から誘導された硬質コポリマー相と一緒に含む衝撃改質組成物と、
難燃剤と、
を組み合わせて含み、
前記熱可塑性組成物が、ASTMD256により3.2mm厚さの試験片を用いて23℃において測定される、約200J/m超のノッチ付アイゾット衝撃強さを有し、1.5mm以下の厚さにおいてV0のUL94等級を達成できる熱可塑性組成物。
【請求項25】
1.2mmの厚さにおいてV0のUL94等級を達成できる請求項24に記載の熱可塑性組成物。

【公表番号】特表2009−513778(P2009−513778A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−537786(P2008−537786)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/040818
【国際公開番号】WO2007/050412
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【復代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
【Fターム(参考)】