説明

難燃性粘着剤組成物およびこれを用いた難燃性粘着シート

【課題】本発明は、難燃剤を多量に配合しても難燃剤が粘着層表面に析出せず、粘着特性や機械的特性を損なうことのない難燃性粘着剤組成物およびこれを用いた難燃性粘着シートを提供することを課題とする。
【解決手段】(A)アクリル酸ブチルと、反応性官能基を有する単量体および/または(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体からなる(メタ)アクリル系ポリマーと、(B)ホスファゼン系難燃剤と、(C)リン酸エステル系難燃剤と、(D)架橋剤と、(E)芳香族系粘着付与樹脂とを含有し、前記(A)成分100質量部に対して、前記(B)成分と前記(C)成分との配合量の合計が60〜350質量部であり、かつ前記(B)成分と前記(C)成分との配合比が質量比で25:75〜75:25である難燃性粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性粘着剤組成物およびこれを用いた難燃性粘着シートに関する。具体的には、優れた難燃性と粘着特性を両立することができる難燃性粘着剤組成物およびこれを用いた難燃性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高集積化や高性能化に伴い、電子機器内において使用される粘着テープにも難燃性が求められている。近年のRoHS指令やWEEE指令等により、ハロゲン系難燃剤の使用を規制する動きが強まっている。このため、ノンハロゲン系難燃剤の使用が一層強く求められている。一方で、電気絶縁用粘着シートの難燃性規格として標準的なUL510基準を上回る難燃性規格であるUL94基準に適合する粘着シートの開発が求められている。
【0003】
例えば、ノンハロゲン系難燃剤として、リン酸エステル系難燃剤、特定の窒素含有リン酸塩化合物の添加、ホスファゼン系難燃剤を使用する技術が開示されている(例えば特許文献1〜3)。また、リン酸エステル系難燃剤と粘着付与樹脂との併用という技術も検討されている(例えば、特許文献4)。
【0004】
しかしながら、これらのノンハロゲン系難燃剤を用いる場合、従来のハロゲン系難燃剤に比べて多量に配合する必要がある。このため、難燃剤を多量に配合すると難燃剤が粘着層表面に析出し、粘着性や機械的特性が損なわれる。また、これらの材料を用いた粘着シートはUL510基準に適合するものの、UL94基準に適合することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−271044号公報
【特許文献2】特開2006−219564号公報
【特許文献3】特開2002−338906号公報
【特許文献4】特開2006−219565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、難燃剤を多量に配合しても難燃剤が粘着層表面に析出せず、難燃性と粘着特性とを両立することができる難燃性粘着剤組成物およびこれを用いた難燃性粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、特定のアクリル系粘着剤に対して特定量および特定の配合比のリン酸エステルおよびホスファゼン系難燃剤並びに粘着付与樹脂を添加することにより、難燃性と粘着性とを両立することができることを見出した。本発明はこの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は以下の難燃性粘着剤組成物およびこれを用いた難燃性粘着シートを提供するものである。
(1)(A)アクリル酸ブチルと、反応性官能基を有する単量体および/または(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体からなる(メタ)アクリル系ポリマーと、
(B)ホスファゼン系難燃剤と、
(C)リン酸エステル系難燃剤と、
(D)架橋剤と、
(E)芳香族系粘着付与樹脂と
を含有し、前記(A)成分100質量部に対して、前記(B)成分と前記(C)成分との配合量の合計が60〜350質量部であり、かつ前記(B)成分と前記(C)成分との配合比が質量比で25:75〜75:25であることを特徴とする難燃性粘着剤組成物。
(2)前記(E)成分の配合量が前記(A)成分100質量部に対して60〜250質量部であることを特徴とする(1)に記載の難燃性粘着剤組成物。
(3)前記(B)成分が環状フェノキシホスファゼン化合物であることを特徴とする(1)または(2)に記載の難燃性粘着剤組成物。
(4)前記(C)成分が芳香族縮合リン酸エステルであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の難燃性粘着剤組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれか1項に記載の難燃性粘着剤組成物をフィルム状またはテープ状に成形した難燃性粘着テープ。
【発明の効果】
【0009】
本発明の難燃性粘着剤組成物およびこれを用いた難燃性粘着テープは、粘着特性を満足しつつ難燃性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について具体的に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
【0011】
本発明の難燃性粘着剤組成物は、(A)〜(E)成分を含有する。以下、各成分について説明する。
【0012】
[(A)成分]
本発明の(A)成分としては、アクリル酸ブチルと、反応性官能基を有する単量体および/または(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体からなる(メタ)アクリル系ポリマーを用いることを特徴とする。本発明において、後述する(B)成分や(C)成分との相溶性の点からアクリル酸ブチルを必須の単量体成分とする。なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルまたはメタクリルを示す。
【0013】
本発明において、上記のアクリル酸ブチルと共重合し得る単量体として、反応性官能基を有する単量体が挙げられる。なお、反応性官能基とは口述する架橋剤と反応し得る官能基をいう。反応性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、アミド基等が挙げられる。
【0014】
カルボキシル基を含有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸またはこれらの単量体から誘導される官能性単量体等が挙げられる。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
水酸基を含有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラクジル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸カプロラクトン、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール等が挙げられる。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
アミド基を含有する単量体としては、(メタ)アクリルアミド、α−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル−p−スチレンスルホンアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。なお、これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
本発明において、共重合可能な任意の他の単量体としては、凝集力向上の点から、カルボキシル基または水酸基を含有する単量体であることが好ましい。
【0018】
本発明において、上記アクリル酸ブチルおよび反応性官能基を有する単量体と共重合しうる成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。本発明における(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい(但し、アクリル酸ブチルを除く)。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル等の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明の(A)成分としては、本発明の目的を損なわない範囲で上記の成分の他にさらに任意の単量体を加えて共重合させてもよい。任意の単量体としては、アクリロニトリル、アクリル酸ポリエチレングリコール、スチレン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0020】
(A)成分のアクリル酸ブチルの割合としては、全モノマー成分中50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。
【0021】
(A)成分の重合体を得る方法としては、各構成モノマーをラジカル重合させることにより得ることができる。本発明におけるラジカル重合の方法としては、従来公知の方法を用いることができる。重合方法としては、例えば、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、光重合法等が挙げられる。
【0022】
本発明において、(A)成分のガラス転移温度としては、粘着性および耐熱性の観点から−60〜20℃であることが好ましく、−55〜10℃であることがより好ましい。(A)成分のガラス転移温度が高すぎると、被着体と粘着層との粘着力が低下する。(A)成分のガラス転移温度が低すぎると、凝集力が不足するため耐熱性が低下する。
【0023】
[(B)成分]
本発明における(B)成分としては、具体的には、下記一般式(1)で表される環状または下記一般式(3)で表される直鎖状の構造を有するホスファゼン化合物であることが好ましい。
【0024】
【化1】

【0025】
式中、nは1以上の整数を表し、Xはそれぞれ炭素数1〜4のアルコキシ基または下記一般式(2)で表されるフェノキシ基を表す。
【0026】
【化2】

【0027】
式中、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜3のアルコキシ基を表す。
【0028】
【化3】

【0029】
式中、mは0または1以上の整数を表し、Yはそれぞれ炭素数1〜4のアルコキシ基または下記一般式(4)で表されるフェノキシ基を表す。
【0030】
【化4】

【0031】
式中、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜3のアルコキシ基を表す。
【0032】
本発明において、難燃性向上の点から環状のホスファゼン化合物を用いることが好ましい。
【0033】
本発明における環状構造のホスファゼン化合物としては、具体的には、SPB−100、SPS−100、SP−100、SPR−100、SA−100(いずれも大塚化学社製)、ラビトルFP−100、ラビトルFP−110(いずれも伏見製薬所社製)等が挙げられる。これらは1種単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
[(C)成分]
本発明における(C)成分としては、従来公知のリン酸エステル系難燃剤であればよい。具体的には、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート等の脂肪族リン酸エステルや、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジル2,6キシレニルホスフェート、トリス(tert−ブチル化フェニル)ホスフェート、トリス(イソプロピル化フェニル)ホスフェート、リン酸トリアリールイソプロピル化物等の芳香族リン酸エステルや、レゾルシノールビスジキシレニルホスフェート等の芳香族縮合リン酸エステル等が挙げられる。これらは1種単独または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本発明において、凝集力の点から芳香族縮合型リン酸エステルを用いることが好ましく、室温で固体の芳香族縮合型リン酸エステルを用いることがより好ましい。
【0036】
本発明において、前記(B)成分と(C)成分の合成の配合量は、難燃性と凝集力の点から(A)成分100質量部に対して60〜300質量部の範囲内であることが好ましく、80〜250質量部であることがより好ましい。配合量が少なすぎると所望の難燃性を得ることができない。一方、配合量が多すぎると凝集力を維持することができない。
【0037】
また、本発明において、前記(B)成分と(C)成分との配合比は、質量比で25:75〜75:25であることが好ましい。上記質量比を外れると、(B)成分もしくは(C)成分のいずれかが析出し、粘着特性が低下する。
【0038】
[(D)成分]
本発明において、難燃性粘着剤組成物には架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤を用いることにより、(A)成分との架橋反応が進行する。その結果、粘着剤組成物の凝集力が向上する。
【0039】
本発明における(D)成分としては、前記(A)成分と架橋し得るものであれば特に制限はなく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられる。
【0040】
イソシアネート系架橋剤としては、従来公知のイソシアネート系架橋剤であればよく、例えば、多価イソシアネート化合物、およびそのオリゴマーやプレポリマー等が挙げられる。多価イソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、リジンイソシアネート等が挙げられる。なお、これらのイソシアネート系架橋剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
エポキシ系架橋剤としては、従来公知のエポキシ系架橋剤であればよく、例えば、分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であればよい。具体的には、例えば、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタレート、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。なお、これらのエポキシ系架橋剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
本発明における(D)成分の配合量としては、前記(A)成分100質量部に対して0.1 〜3.0 質量部であることが好ましい。(D)成分の配合量が多すぎると、難燃性粘着剤組成物の柔軟性が低下する。(D)成分の配合量が少なすぎると、難燃性粘着剤組成物の凝集力を確保することができない。
【0043】
(E)芳香族系粘着付与樹脂
本発明における(E)成分としては、難燃性の点から、芳香族系粘着付与樹脂を用いることが好ましい。芳香族系粘着付与樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、テルペン−フェノール系樹脂、芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。これらの芳香族系粘着付与樹脂は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
本発明において、(E)成分の配合量は、粘着力と保持力との点から、(A)成分100質量部に対して60〜250質量部であることが好ましい。配合量が少なすぎると、所望の粘着力を維持することができない。配合量が多すぎると、所望の保持力を維持することができない。
【0045】
本発明において、(B)成分および(C)成分を上記の特定の配合量および特定の配合比に設定するとともに、(E)成分を添加することを特徴とする。このため、(B)成分および(C)成分を多量に配合しても粘着層表面の析出を防ぎつつ、粘着特性を満足することができる。また、厳しい難燃性規格であるUL94基準に適合することができる。したがって、本発明の難燃性粘着剤組成物およびこれを用いた難燃性粘着シートは優れた難燃性および粘着特性を有する。
【0046】
本発明において、本発明の目的を損なわない程度に、粘度調整剤、可塑剤、架橋(助)剤、充填材、酸化防止剤、分散剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0047】
本発明の難燃性粘着剤組成物は、上記各成分と、さらに必要に応じて各種添加剤とを混合することにより調製することができる。
【0048】
次に、本発明の難燃性粘着シートについて説明する。
本発明の難燃性粘着シートは基材と、基材の少なくとも片面上に形成された粘着剤層とを備える。
【0049】
基材としては、4〜250μmの厚さのフィルム状もしくはテープ状の部材が好ましい。
【0050】
基材としては、具体的には、ポリエステル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン等の合成樹脂、不織布、織布、金属等が挙げられる。なお、基材は透明であっても着色せしめたものであってもよい。また、基材の表面は平滑であるものに限定されず、表面がマット状に加工されているもの、プライマー処理されているもの、難燃処理されているものであってもよい。
【0051】
本発明の難燃性粘着シートの製造方法としては、まず基材に対して前述の難燃性粘着剤組成物を有機溶剤等に溶解あるいは分散させて、固形分濃度を20〜50質量%となるように調製し粘着層形成塗工液を作製する。この粘着層形成塗工液を基材の少なくとも一方の表面に塗布した後乾燥させることにより、粘着層を形成する。こうして本発明の難燃性粘着シートを得ることができる。
【0052】
粘着層形成塗工液に用いる有機溶剤としては、本発明の難燃性粘着剤組成物を溶解させるものであれば特に限定されない。有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0053】
粘着剤層の厚さは特に限定されないが、2〜100μmとすることが好ましく、5〜60μmとすることがさらに好ましく、10〜50μmとすることが特に好ましい。粘着剤層の厚さが確保できないと、被着体に対する十分な粘着力を得ることができない。粘着剤層が厚すぎると、乾燥不良の恐れがある。
【0054】
難燃性粘着剤組成物の塗布の方法については特に制限はなく、例えば、ワイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコーター、スピンコーター等を用いた従来公知の塗布方法を利用すればよい。なお、粘着層の形成には塗工液を基材に直接塗布、または離型性を有するフィルムに塗布した後基材に転写してもよい。
【0055】
乾燥方法についても特に制限はなく、熱風乾燥、減圧乾燥等の従来公知の乾燥方法を用いることができる。乾燥条件については、各材料、塗工液に使用する溶剤の種類、粘着層の膜厚等により適宜設定されればよく、60〜180℃が一般的である。
【0056】
本発明の難燃性粘着剤組成物又はこれを用いた粘着シートは、難燃性を必要とする製品に用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
表1に示した各成分の混合物に、溶媒としてメチルエチルケトンを固形比分が40%となるように添加した後、撹拌および混合し、粘着層形成塗工液を調製した。
調製した粘着層形成塗工液を、基材として厚さ25μmのポリイミドフィルム(商品名:カプトン100V、製造元:東レ・デュポン社)の表面に、ベーカー式アプリケーターにて塗布した後、130℃で2分間加熱乾燥することにより膜厚25μmの粘着層を得た。
次いで、この粘着層の表面に厚さ50μmの片面シリコーン処理PETフィルム(商品名:MRF、製造元:三菱化学ポリエステルフィルム社)のシリコーン処理面を剥離ライナーとして貼着し、40℃の温度条件下で1ヶ月間養生することにより、難燃性粘着テープを得た。
【0059】
(実施例2〜9および比較例1〜13)
表1および2に記載の各成分を用いて、実施例1と同様の方法にて難燃性粘着テープを得た。
【0060】
表1および表2の各成分は以下のとおりである。
【0061】
(A)成分
(A−1)
構成モノマー:アクリル酸ブチル、アクリル酸
ガラス転移温度:−31℃、質量平均分子量:27万
(A−2)
構成モノマー:アクリル酸ブチル、アクリル酸
ガラス転移温度:−40℃、質量平均分子量:130万
(A−3)
構成モノマー:アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸
ガラス転移温度:−64℃、質量平均分子量:80万
(A−4)
構成モノマー:アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
ガラス転移温度:−34℃、質量平均分子量:64万
【0062】
(B)成分
環状ホスファゼン化合物(商品名:SPB−100、製造元:大塚化学)
(C)成分
芳香族縮合リン酸エステル(商品名:PX−200、製造元:大八化学)
(D)成分
(D−1)
エポキシ系架橋剤(商品名:TETRAD−C、製造元:三菱ガス化学)
(D−2)
イソシアネート系架橋剤(商品名:コロネートL、製造元:日本ポリウレタン工業)
(E)成分
キシレンフェノールノボラック樹脂(軟化点80℃)
【0063】
評価項目については、以下の方法により評価した。なお、「−」の表記は評価不能を示す。
【0064】
(1)相溶性
得られた難燃性粘着テープを目視にて確認し、難燃剤の析出を以下の基準により評価した。
○:難燃性粘着テープ作製時および1ヶ月養生後のいずれにおいても析出しない。
△:難燃性粘着テープ作製時には析出せず、1ヶ月養生後には端部にのみ析出する。
×:難燃性粘着テープ作製時には析出せず、1ヶ月養生後には全面に析出する。
(2)難燃性
UL94の垂直燃焼試験方法に準拠して、以下の基準により難燃性を評価した。
○:UL94VTM−0規格に適合するもの。
×:UL94VTM−0規格に適合しないもの。
(3)保持力
JIS Z 0237に準拠し、作製した粘着シートを25mm幅に裁断して試験片を作製した。この試験片を、25mm×25mmの面積が接するようにSUS板に貼り付け、温度80℃、加重1000gの条件で60分放置したときのズレの大きさ(mm)を測定した。測定は3回行い、その平均値を表中に示す。保持力は0.5以下であることが好ましい。なお、落下したサンプルについては、落下と示した。
(4)プローブタック値
ASTM D 2979に準拠し、径5mmの円柱プローブを難燃性粘着シートから引き離す時の密着力を測定した。測定条件は、温度23℃、接触加重2N/cm、接触時間10秒、引き離し速さ10mm/秒とした。測定は5回行い、その平均値を表中に示す。3N以上であることが好ましい。
【0065】
結果を表1および表2に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
表1の結果から、いずれの実施例も高い難燃性を有することがわかった。また、保持力およびプローブタック値も良好なことから、十分な粘着特性を有しているといえる。
一方、表2の比較例1〜4および比較例13については、いずれの比較例も(B)成分、(C)成分、(E)成分のいずれかを含まないために、相溶性、保持力およびプローブタック値のいずれも劣る結果となった。(A)成分の単量体がアクリル酸2−エチルヘキシルである比較例5については、所望の特性を得ることができなかった。(B)成分の配合量の少ない比較例6および(C)成分の配合量の少ない比較例7については、いずれも相溶性、保持力およびプローブタック値が劣った。(B)成分および(C)成分の配合量の多い比較例8については、所望の保持力が得られなかった。(B)成分および(C)成分の配合量の少ない比較例9については、難燃性に劣った。(B)成分、(C)成分および(E)成分の配合量の多い比較例10については、保持力およびプローブタック値が劣った。(E)成分の配合量の少ない比較例11、および(E)成分を含まない比較例12については、いずれも所望の特性を得ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アクリル酸ブチルと、反応性官能基を有する単量体および/または(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体からなる(メタ)アクリル系ポリマーと、
(B)ホスファゼン系難燃剤と、
(C)リン酸エステル系難燃剤と、
(D)架橋剤と、
(E)芳香族系粘着付与樹脂と
を含有し、前記(A)成分100質量部に対して、前記(B)成分と前記(C)成分との配合量の合計が60〜350質量部であり、かつ前記(B)成分と前記(C)成分との配合比が質量比で25:75〜75:25であることを特徴とする難燃性粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(E)成分の配合量が前記(A)成分100質量部に対して60〜250質量部であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が環状フェノキシホスファゼン化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(C)成分が芳香族縮合リン酸エステルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性粘着剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性粘着剤組成物をフィルム状またはテープ状に成形した難燃性粘着テープ。


【公開番号】特開2013−18944(P2013−18944A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155851(P2011−155851)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000108454)ソマール株式会社 (81)
【Fターム(参考)】