説明

難燃性能を有する生分解性潤滑油組成物

【課題】より優れた難燃性能と生分解性能を両立する潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】(1)植物油由来の油を60質量%以上、及びポリオールエステルを40質量%以下含有する基油、及び(2)質量平均分子量20,000〜300,000のポリメタアクリレートを0.1〜5質量%、を配合してなる難燃性能を有する生分解性潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性能を有する生分解性潤滑油組成物に関する。特に、本発明は、油圧作動油やドアクローザー油などの潤滑油として用いられる、優れた難燃性能と高い生分解性能を有する生分解性潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧作動油に関しては、その難燃性能向上の観点から多くの提案がなされている。例えば、特許文献1〜4の各々には、ヘキサクロロホスファゼンにパーフロルアルキルアルコールなどを縮合反応させて得られる化合物を含有する自己消化性作動油(特許文献1)、ポリオールとポリオール部分エステルを主成分とする高分子化合物を含有する難燃性油圧作動油(特許文献2)、脂肪酸エステルや燐酸エステルからなる基油に高分子ポリマーと低分子ポリマーを配合した難燃性油圧作動油(特許文献3)、ポリアルキレングリコールベース流体とこれに可溶な抗ミスト添加剤としてのアルキレン−ビニルエステル共重合体を含む作動液組成物(特許文献4)等が提案され、優れた難燃性能を得ることが記載されている。
一方、油圧作動油やドアクローザー油などの潤滑油を使用する機器においては、火災時に機器ピンホールから油剤が噴出して、火災を助長することがある。このため、高圧噴霧状態や油漏れにおいても難燃性能を示す油圧作動油やドアクローザー油などの潤滑油が求められている。また、安全性向上のため、更なる難燃性能と環境負荷低減のため更なる生分解性能を有する潤滑油組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2558496号公報
【特許文献2】特許第2888742号公報
【特許文献3】特開平11−269480号公報
【特許文献4】特許第3017803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の通り、潤滑油においても、安全の観点および環境負荷低減が必須とされている近年において、油圧作動油やドアクローザー油などの潤滑油組成物においては、特に油剤漏洩時においても難燃性能に優れ、高い生分解性能により環境への影響が少ないことが求められていた。
すなわち、本発明の課題は、より優れた難燃性能と生分解性能を両立する潤滑油組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
[1](A)(a)植物由来の油を60質量%以上、及び(b)ポリオールエステルを40質量%以下含有する基油、及び
(B)質量平均分子量20,000〜300,000のポリメタアクリレート0.1〜5質量%、を配合してなる生分解性潤滑油組成物、
[2]前記植物由来の油が、オレイン酸含有量が60質量%以上である菜種油である、上記[1]記載の生分解性潤滑油組成物、
[3]前記ポリオールエステルが、水酸基価30mgKOH/g以上、かつ引火点が300℃以上であるポリオール部分エステルである、前記[1]又は[2]に記載の生分解性潤滑油組成物、
【0006】
[4]組成物全体の40℃における動粘度が120mm2/s以下である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の生分解性潤滑油組成物,
[5]油圧作動油、ドアクローザー油、または摺動面油に用いられる、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の生分解性潤滑油組成物、
[6]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の生分解性潤滑油組成物からなる油圧作動油、及び
[7]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の生分解性潤滑油組成物からなるドアクローザー油、に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より優れた難燃性能と生分解性能を両立する潤滑油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
本発明の生分解性潤滑油組成物は、(A)(a)植物由来の油を60質量%以上、及び(b)ポリオールエステルを40質量%以下含有する基油、及び(B)質量平均分子量20,000〜300,000のポリメタアクリレート0.1〜5質量%を配合してなる。
【0009】
[(A)基油]
本発明の生分解性潤滑油組成物の基油(A)は、(a)植物由来の油を60質量%以上、及び(b)ポリオールエステルを40質量%以下含有する。
((a)植物由来の油)
基油に用いられる(a)植物由来の油としては、菜種油、ひまわり油、大豆油、トウモロコシ油、キャノーラ油等を用いることができ、中でも生分解性能、熱安定性能等の観点から、ひまわり油及び菜種油が好ましい。
【0010】
植物由来の油の多くは総不飽和度が0.3を超えるものであるが、その精製工程で水素化等の処理により総不飽和度を小さくすることが可能である。また、遺伝子組み替え技術により総不飽和度の低い植物油を容易に製造することができる。本発明においては、生分解性能、熱安定性能等の観点から、オレイン酸を高い割合で含む植物由来の油が好ましく使用され、例えばオレイン酸を60質量%以上含有するものが好ましく、より好ましくは70質量%以上含有する。このような、オレイン酸を高い割合で含む植物由来の油としては、高オレイン酸キャノーラ油、高オレイン酸菜種油、高オレイン酸ひまわり油、高オレイン酸大豆油などを好ましく例示することができ、高オレイン酸菜種油を特に好ましく使用できる。
上記植物油由来の油は、基油中に60質量%以上含有され、生分解性能の観点から、好ましくは70質量%以上含有され、生分解性能および熱安定性能の観点からより好ましくは75〜99質量%である。
【0011】
((b)ポリオールエステル)
(A)基油は、生分解性能及び難燃性能向上の観点から、(b)ポリオールエステルを含有する。ポリオールエステルとしては特に制限はないが、上記観点から、ポリオールと鎖状モノカルボン酸とを、それぞれを単独で、あるいは二種以上を組み合わせて通常のエステル化反応によって生成するポリオール部分エステルを主成分とするものであることが好ましい。ポリオール部分エステルとしては、ポリオールの少なくとも一部がエステル化したものであり、そのエステル化率が、70〜90%であるものが難燃性能の点で好ましい。ここで「エステル化率」とは、エステル化された水酸基を含む、ポリオールエステル中の全水酸基数からエステル化された水酸基数を除したものであり、次式より算出した。
エステル化率(%)={(SV−AV)×100}/(OHV+SV−AV)
(SV:ケン化価、AV:酸価、OHV:水酸基価を表す。)
【0012】
ポリオールエステルを生成するためのポリオールとしては、例えば、総炭素数が3〜12で、かつ総水酸基数が3〜6であるポリオールであり、具体的には、グリセリン,トリメチロールエタン,トリメチロールプロパン,トリメチロールノナン等の3価アルコール、あるいはペンタエリスリトール,ジトリメチロールプロパン,ジペンタエリスリトール,ソルビトール,マンニトール等の多価アルコールが挙げられ、これらの中では、トリメチロールプロパン,ペンタエリスリトール,グリセリンが好ましく用いられる。これらのポリオールは、それぞれ単独で用いてもよく、また、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
また、このポリオールエステルの生成に供される鎖状モノカルボン酸としては、例えば、総炭素数が6〜22の鎖状モノカルボン酸であり、具体的には、カプロン酸,エナント酸,カプリル酸,ペラルゴン酸,カプリン酸,ウンデカン酸,ラウリン酸,トリデカン酸,ミリスチン酸,ペンタデカン酸,パルミチン酸,ヘプタデカン酸,ステアリン酸,ノナデカン酸,アラキン酸,ベヘン酸などの直鎖飽和脂肪酸、ウンデセン酸,オレイン酸,エライジン酸,セトレイン酸,エルカ酸,ブラシジン酸などの直鎖不飽和脂肪酸、イソミリスチン酸,イソパルミチン酸,イソステアリン酸,2,2−ジメチルブタン酸,2,2−ジメチルペンタン酸,2,2−ジメチルオクタン酸,2−エチル−2,3,3−トリメチルブタン酸,2,2,3,4−テトラメチルペンタン酸,2,5,5−トリメチル−2−t−ブチルヘキサン酸,2,3,3−トリメチル−2−エチルブタン酸,2,3−ジメチル−2−イソプロピルブタン酸,2−エチルヘキサン酸,3,5,5−トリメチルヘキサン酸などの分岐飽和脂肪酸などが挙げられる。これらの鎖状モノカルボン酸は、それぞれ単独で用いてもよく、また、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
このポリオールと鎖状モノカルボン酸とのエステル化反応にあたっては、それぞれの仕込み比を調節することによって、所望のポリオールエステルを得ることができ、また、引火点が低くならないように、充分に軽質分をカットすることが望ましい。そして、得られたポリオールエステルを基油に用いる場合、エステル化反応生成物をそのまま用いてもよく、あるいはそれぞれの反応生成物をブレンドし、所望の粘度が得られるようにして用いてもよい。
【0015】
本発明において、基油に用いるポリオールエステルは、その水酸基価が、好ましくは30mgKOH/g以上、より好ましくは35mgKOH/g以上である。この水酸基価が低すぎると完全エステル部分が多くなり、従来品と同様に継続燃焼を起こし易くなることがある。また、引火点は、300℃以上のものが好ましい。この引火点が低すぎると着火し易くなるからである。
【0016】
本発明において用いるポリオールエステルは、その分子量が、数平均分子量で、好ましくは600〜1,500、より好ましくは600〜1,000、更に好ましくは650〜950である。この分子量が低すぎると、粘度および引火点が低くなり、燃え易くなる。また、高すぎると粘度が高くなり過ぎ、伝達効率が悪くなることがある。動粘度については、作動油等の用途に応じて使用可能な範囲であればよいが、通常は、ポンプ効率や配管の粘性抵抗の観点から、温度40℃における動粘度で、好ましくは20〜200mm2/s、より好ましくは20〜100mm2/s、さらに好ましくは30〜80mm2/sである。上記のような粘度範囲にあるポリオールエステルとしては、トリメチロールプロパンのジエステルで、脂肪酸がオレイン酸とイソステアリン酸の混合物であるものが好ましく用いられる。
上記ポリオールエステルは、基油中に基油全量に対し40質量%以下含有され、難燃性能、生分解性能、熱安定性能等の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは1〜25質量%である。
【0017】
[(B)ポリメタアクリレート]
本発明において、(B)ポリメタアクリレートは、基油をミスト化しにくくするという目的で使用されるものであり、メタアクリレートの単独重合体のみならず、共重合体も含む。このような観点から、ポリメタアクリレートの分子量は質量平均分子量で20,000〜300,000であり、好ましくは30,000〜300,000、より好ましくは35,000〜200,000である。質量平均分子量が20,000より小さい場合は上記の効果がほとんど期待されず、また300,000より大きい場合は使用中に剪断による劣化を受け、その効果も薄れ、更に粘度低下を引き起こしてしまうこととなり好ましくない。なお、質量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の質量平均分子量により測定できる。
【0018】
本発明においては、ポリメタアクリレートは潤滑油組成物中に0.1〜5質量%配合される。この範囲より少ない配合量では本発明の効果が少なく、また多すぎても剪断劣化の可能性が増し、好ましくない。上記観点から、(B)成分は、潤滑油組成物中に好ましくは0.1〜4質量%、より好ましくは0.2〜3.5質量%、さらに好ましくは0.3〜3.3質量%配合される。
【0019】
本発明の生分解性潤滑油組成物に用いられる基油(A)は、上記(a)植物由来の油及び上記(b)ポリオールエステルを含有するが、本発明においては、この植物由来の油とポリオールエステル、および(B)成分のポリメタクリレートの最適な化合物を見出すことにより、より優れた難燃性能と生分解性能を両立する潤滑油組成物を提供することができたものである。
【0020】
[(C)その他の添加剤]
本発明の生分解性潤滑油組成物は、その他必要に応じて、潤滑油添加剤として通常使用される酸化防止剤、分散剤、防錆剤、金属不活性化剤、油性剤、極圧剤、抗乳化剤、流動性向上剤、及び消泡剤から選ばれる少なくとも一種を配合することが好ましい。
ここで用いられる酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール,4,4'−メチレンビス(2,6 −ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、N−フェニル−α−ナフチルアミン,N−フェニル−β−ナフチルアミン,フェノチアジン,モノオクチルジフェニルアミン等のアミン系酸化防止剤あるいはアルキルジスルフィド,ベンゾチアゾール等の硫黄系の酸化防止剤、ジアルキルジチオリン酸亜鉛などが挙げられる。
【0021】
また、分散剤としては、無灰分散剤及び/又は金属系清浄剤を用いることができ、無灰分散剤としては、例えばコハク酸イミド類、ホウ素含有コハク酸イミド類、ベンジルアミン類、ホウ素含有ベンジルアミン類などが挙げられ、金属系清浄剤としては、例えば中性、塩基性叉は過塩基性金属スルホネート、金属フェネート、金属サリチレート、金属ホスホネートなどが挙げられる。金属スルホネート、金属フェネート、金属サリチレート、金属ホスホネートを構成する金属としては、好ましくは、Ca、Mg等のアルカリ土類金属が挙げられる。これらの無灰分散剤や金属系清浄剤は1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
防錆剤としては、例えば、アルケニルコハク酸,ソルビタンモノオレエート,ペンタエリスリトールモノオレエート,アミンフォスフェート等が挙げられ、金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、トリアゾール、ジチオカルバメート、イミダゾール、これらの誘導体が挙げられる。
油性剤としては、例えばアルコール類、脂肪酸類及び脂肪酸エステル類などを挙げることができる。脂肪酸エステル類としては、炭素数6〜22の脂肪族カルボン酸と炭素数1〜18の脂肪族アルコールとからなるエステルを挙げることができる。アルコール類としては、炭素数8〜18の一価の脂肪族飽和若しくは不飽和アルコールを好ましく挙げることができる。
【0023】
極圧剤としては、例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛,ジアルキルポリスルフィド,トリアリールフォスフェート,トリアルキルフォスフェート等が挙げられる。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコール,ポリオキシアルキレンアルキルエーテル,ポリオキシアルキレンアルキルアミド,ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等が挙げられる。
流動性向上剤としては、ポリアルキルアクリレート、アルキル芳香族化合物、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。さらに、消泡剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサンやジエチルシリケート、エステル系ポリマー等が挙げられる。
【0024】
これらの添加剤は、各々の目的に応じてその配合量を決定することができるが、合計で、潤滑油組成物当たり5.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3.0質量%以下、さらに好ましくは0.5〜2.5質量%である。
【0025】
[生分解性潤滑油組成物]
本発明の生分解性潤滑油組成物は、(A)(a)植物由来の油を60質量%以上及び(b)ポリオールエステルを40質量%以下含有する基油、(B)質量平均分子量20,000〜300,000のポリメタアクリレート0.1〜5質量%を配合してなるものであり、各成分の詳細及びその配合量等については、前述の通りである。
【0026】
本発明の生分解性潤滑油組成物における「生分解性」については、当該潤滑油組成物において、OECDテストガイドライン301C法の微生物による化学物質の分解度試験において、生分解率が60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であり、優れた生分解性能を有している。また、JIS K 0102に基づくヒメダカに対する急性毒性試験で、96時間LC50値が、通常100mg/L以上であり、生体に与える影響が少ない。このように、当該潤滑油組成物は、極めて環境にやさしい潤滑油である。
【0027】
また、本発明の生分解性潤滑油組成物の40℃における動粘度は、ポンプ効率や配管抵抗などの観点から、120mm2/s以下であることが好ましく、より好ましくは20〜80mm2/sである。粘度指数は、低温時の粘度上昇防止の観点から、130以上であることが好ましく、より好ましくは140以上である。流動点は、通常−20℃以下、低温流動性の観点から、好ましくは−30℃以下、より好ましくは−35℃以下である。引火点は、通常250℃以上、難燃性能の観点から、好ましくは260℃以上、より好ましくは300℃以上である。また、酸価は安定性の観点から、0.05〜0.5mgKOH/gであることが好ましい。
当該潤滑油組成物は、前記のように低流動点を有するので、油圧作動油、ドアクローザー油、摺動面油として用いた場合、低温での機械の始動性が良好であり、また、高引火点を有するので難燃性能が高く、VG32以上は日本の消防法の可燃性液体に分類され、安全性に優れる。
【0028】
本発明の生分解性潤滑油組成物は、生分解性能に優れると共に、生態に対する影響が少なく、かつ難燃性能に優れている。当該潤滑油組成物は、例えば油圧機器や装置などの油圧システムにおける動力伝達、力の制御、緩衝などの作動に用いる動力伝達流体である油圧作動油、扉(開き戸)に取り付けられ、開けられた扉を自動的に閉める働きをする装置であるドアクローザーに用いられるドアクローザー油、種々の摺動面に用いられ潤滑性を与える摺動面油等として好適である。
【実施例】
【0029】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
実施例1〜7及び比較例1,2
表1に示すような量で植物由来の油とポリオールエステルを混合して基油を調製した後、これに表1に示すようにポリメタアクリレート及びその他の添加剤を添加して得られた潤滑油組成物の各々について、下記に示すようにして、一般性状、潤滑性能、燃焼性能及び生分解性能を評価した。その結果を第1表に示す。なお、使用した植物由来の油、ポリオールエステル及びポリメタアクリレートの詳細については以下に示す。
【0030】
(植物由来の油)
高オレイン酸含有菜種油:オレイン酸含有量 73質量%、炭素数16以下の脂肪酸含有量 4質量%、炭素数18の脂肪酸(オレイン酸除く)含有量 22質量%
(ポリオールエステル)
・TMP(トリメチロールプロパン)イソステアリン酸(オレイン酸)部分エステル:40℃動粘度 60.0mm2/s,100℃動粘度 10.0mm2/s,指示薬法による酸価 0.20mgKOH/g,水酸基価 40.0mgKOH/g,密度(15℃) 0.925g/cm3,引火点(クリーブランド開放式) 306℃
・PE飽和脂肪酸エステル:40℃動粘度 33.5mm2/s,100℃動粘度6.00mm2/s,電位差法による酸価 0.04mgKOH/g,水酸基価 2.0mgKOH/g,密度(15℃) 0.961g/cm3,引火点(クリーブランド開放式) 280℃
・TMPトリオレート:40℃動粘度 49.45mm2/s,100℃動粘度 9.81mm2/s,電位差法による酸価 0.99mgKOH/g,水酸基価 3.0mgKOH/g,密度(15℃) 0.918g/cm3,引火点(クリーブランド開放式) 320℃
【0031】
(ポリメタアクリレート)
・PMA(1):アクリル系共重合物,100℃動粘度 835mm2/s,指示薬法による酸価 0.05mgKOH/g,密度(15℃) 0.915g/cm3、質量平均分子量(Mw) 140,000
・PMA(2):アクリル系共重合物,100℃動粘度 852mm2/s,指示薬法による酸価 0.05mgKOH/g,密度(15℃) 0.941g/cm3、Mw 37,000
・PMA(3):分散型アクリル系共重合物,100℃動粘度 1190mm2/s,指示薬法による酸価 0.26mgKOH/g,密度(15℃) 0.906g/cm3、Mw 79,000
・PMA(4):アルキルメタクリレート系共重合物,100℃動粘度 1500mm2/s,密度(15℃) 0.933g/cm3、Mw 35,000
【0032】
(他の添加剤)
・流動点向上剤:ポリアルキルメタクリレート,100℃動粘度 364.3mm2/s,指示薬法による酸価 0.04mgKOH/g,密度(15℃) 0.911g/cm3
【0033】
[性状及び性能評価]
(1)動粘度
JIS K 2283に準拠して測定した。
(2)酸価
JIS K 2501に規定される「潤滑油中和試験方法」に準拠し、電位差法により測定した。
(3)水酸基価
JIS K 0070に準拠し、ピリジン−塩化アセチル化法により測定する。
(4)引火点
JIS K 2274に準拠し、クリーブランド開放式(COC)試験器により測定した。
【0034】
(5)耐腐食性
JIS K 2513「石油製品銅板腐食試験方法」に従って、試験温度100℃、試験時間3時間、及び試験管法により腐食性の試験を行い、「銅板腐食標準」に従って銅板の変色状態を観察し細分記号1a〜4cで腐食性を評価した。なお、細分記号の数字の小さいほど腐食性が小さく、アルファベット順に腐食性が順次大きくなる。
(6)防錆試験
JIS K 2510に準拠し、試料と水をかき混ぜながら、60℃に保ち、その中へ鋼製丸棒の試験片を浸し、24時間後の試験片の錆の有無を見た。
【0035】
(7)耐荷重試験
ASTM D 2783に準拠して、回転数1,800rpm,室温の条件で行った。最大非焼付荷重(LNL)と融着荷重(WL)から荷重摩耗指数(LWI)を求めた。この値が大きいほど耐荷重性が良好である。
【0036】
(8)燃焼性試験
高圧により噴霧された試料油にバーナーで着火し、10秒間予備燃焼させた後、バーナーの火を取り去り、その後の継続燃焼時間を測定し、難燃性能の指標とした。なお、30秒以上継続燃焼したものについては、その時点で試験を打ち切り、「継続燃焼性有り」と判定した。試験条件噴霧圧力:70kg/cm2 G(窒素加圧)試料油温:60℃, ノズル :Monarch 60°PL2.25(ホロウコーンタイプ),ノズルバーナー間:10cm,予備燃焼時間:10秒,オートクレーブ容量:1リットル
【0037】
(9)生分解性試験
修正MITI試験法「OECD301C」に準拠し、生分解率を測定する。なお、1998年7月に改訂されたエコマーク認定基準では、上記生分解率は60%以上であることが要求される。
(10)生分解性・毒性試験
JIS K 0102に準拠し、試験魚としてヒメダカを用い、96時間後の半数致死濃度LC50値を測定する。なお、1998年7月に改訂されたエコマーク認定基準では、上記LC50値が100mg/L以上であることが要求される。
【0038】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の生分解性潤滑油組成物は、優れた難燃性能と生分解性能を両立することから、油圧機器や装置などの油圧システムにおける動力伝達、力の制御、緩衝などの作動に用いる動力伝達流体である作動油、ドアクローザーに用いられるドアクローザー油等として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(a)植物由来の油を60質量%以上、及び(b)ポリオールエステルを40質量%以下含有する基油、及び
(B)質量平均分子量20,000〜300,000のポリメタアクリレート0.1〜5質量%、を配合してなる生分解性潤滑油組成物。
【請求項2】
前記植物由来の油が、オレイン酸含有量が60質量%以上である菜種油である、請求項1記載の生分解性潤滑油組成物。
【請求項3】
前記ポリオールエステルが、水酸基価30mgKOH/g以上、かつ引火点が300℃以上であるポリオール部分エステルである、請求項1又は2に記載の生分解性潤滑油組成物。
【請求項4】
組成物全体の40℃における動粘度が120mm2/s以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生分解性潤滑油組成物。
【請求項5】
油圧作動油、ドアクローザー油、または摺動面油に用いられる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の生分解性潤滑油組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の生分解性潤滑油組成物からなる油圧作動油。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の生分解性潤滑油組成物からなるドアクローザー油。

【公開番号】特開2011−213920(P2011−213920A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84472(P2010−84472)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】