説明

雪崩・落石等防護体の支柱

【課題】支柱の運搬及び搬入が容易で、地滑り抑制効果が得られ、且つ経済的な雪崩・落石等防護体の支柱を提供する。
【解決手段】斜面Yに建て込まれ地滑り抑止杭となる支柱下部2Sと、この支柱下部2Sの上部に設ける支柱上部2Uとを連結した支柱2において、支柱上部2Uより支柱下部2Sを太くする。支柱下部2Sを斜面Yに立て込むことにより、斜面Yの地滑り抑止効果が得られ、その支柱下部2Sに支柱上部2Uを連結することにより、支柱上部2Uが防護柵1の支柱となり、防護柵1を構築することができる。そして、支柱下部2Sを支柱上部2Uより太くすることにより、地滑り抑制杭として所定の強度が得られ、防護体側の支柱上部2Uが不必要に太くなることがなく、経済的な構造が得られえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護柵等の落石・雪崩等防護体の支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から山腹の斜面部等に構築して落石や積雪等を受け止めて道路等への落下、流入を防止する防護柵が知られており、例えば、山腹の斜面部に間隔を置いて縦孔を穿孔し、この縦孔に建て込んだパイプ支柱を並設すると共に、これら各パイプ支柱に複数段のケーブルとともに金網を張設した落石等の防護柵(例えば特許文献1)が提案されている。
【0003】
また、設定面に間隔をおいて穿孔した複数の縦孔に支柱を建て込み、これら支柱の間に上下に間隔を置いて架設する複数の索条体と共に防護用網体を張設した防護柵(例えば特許文献2)や、セメントを混合した混合材である無収縮モルタルを充填した落石・雪崩等保護構造物用充填鋼管を用い、この充填鋼管を基礎に固定する(例えば特許文献3)ものが知られている。
【0004】
また、落石などの衝撃を摩擦エネルギーに変換して吸収するものとして、所定の間隔で支柱を設け、各支柱の間に水平ロープ材を水平方向のスライドを許容した状態で係留し、水平ロープ材の両端は固定し、各支柱間を水平ロープ材に掛止させたワイヤ製のネットで遮蔽し、前記水平ロープ材の途上にロープ材を重合させて形成した余長部と、余長部を一定の力で挟持する挟持具とにより、水平ロープ材に設定張力以上の張力が作用したとき、水平ロープ材が一定の摩擦力を保持したまま余長部が伸長して張力を吸収する緩衝部を形成した衝撃吸収柵(例えば特許文献4、特許文献5)が提案されている。
【0005】
上記特許文献3の防護柵では、斜面に構築した防護柵によって積雪や雪崩等を効果的に受け止めることで、落石や雪崩といった自然災害を抑制することができ、また、特許文献4及び5の衝撃吸収柵では、衝撃を支柱に伝える前に水平ロープ材の一部に形成した緩衝部の摺動により衝撃を吸収することができ、従来に比較して支柱の荷重負荷を軽減できる。
【0006】
ところで、緩衝部を設けても、この種の防護柵において、支柱の強度が荷重に対する性能に大きく寄与し、支柱の強度を向上するには、支柱自体とともに取付強度を向上する必要がある。このため、基礎に形成した縦孔に支柱の下部を建て込み、所定の取付強度を得るようにしている。
【0007】
そして、防護柵の設定条件により、支柱が長尺となる場合があり、例えば、雪崩予防柵などでは、積雪に応じた上部柵高さとこれに対応した下部部分が必要となり、支柱が長尺となる。一方、鋼管などを支柱の材料に用いる場合、防錆などの面からメッキ処理が施される。
【0008】
そのようなメッキ処理は、メッキ槽に支柱を漬ける所謂どぶ漬けが行われるが、長尺な支柱を処理できるメッキ層が少なく、支柱が長くなると、製作工程と製作コストの面で不利になる。しかし、上記特許文献のものは、いずれも支柱又は杭に一体物を用いており、このような問題が予想される。
【0009】
加えて、メッキ槽内の高温のメッキ液に支柱を漬けるため、熱影響により支柱に歪みが発生すると、製品誤差が大きくなる。さらに、長尺な支柱は、車載寸法に制限を受け易いと共に、現場搬入時にも制約を受け易く、施工性の低下を招き易い。
【0010】
一方、製造面から見ると、支柱の使用される条件や場所などによって支柱の長さが異なる場合が多く、支柱上部は標準寸法に設定できても、地山に建て込む支柱下部の長さを、現場に合わせて変えるため、標準寸法で対応することができず、その都度、異なる長さの支柱を製造する必要がある。
【0011】
このため、支柱は、多品種少量生産となり、また、予め標準品を製造しておくことができないため、納期遅れやコストアップを招く問題がある。
【0012】
このような問題を考慮して、基礎に固定する支柱下部と、この支柱下部の上部に連結する支柱上部とを連結する支柱連結具において、一側に前記支柱上部の下端を挿入する一側受筒部と、他側に前記支柱下部の上部を挿入する他側受筒部とを備えるもの(例えば特許文献6)が提案されている。
【0013】
ところで、この種の防護柵が設けられる山腹の斜面部等では、地山に地滑り抑制杭を建て込んで地滑りを防止する方法(例えば特許文献7)が知られている。
【特許文献1】特開平7−197423号公報
【特許文献2】特開2002−115213号公報
【特許文献3】特開2002−266321号公報
【特許文献4】特開平6−197423号公報
【特許文献5】特開平6−33709号公報
【特許文献6】特開2006−328663号公報
【特許文献7】特開平9−319936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記特許文献6では、連結具を用いることにより、長尺な支柱を、支柱下部と支柱上部に分けて運搬、搬入することができ、現場での据付作業性を向上することができる。また、支柱をメッキ処理する場合では、一体物より支柱上部及び支柱下部は短くなるため、そのメッキ処理を容易に行うことができる。さらに、支柱上部と支柱下部とに分割することにより、支柱上部を標準化して予め製造しておくことができる。
【0015】
ところで、公知ではないが、落石などの防護柵の支柱を地山に建て込んで、特許文献7のように、地滑りを抑制しようとした場合、地滑りに対する強度が落石より大であると、防護柵の場合より大径で強度の大きな支柱を用いなくてはならず、結果として、地上部分で不必要に大きな支柱を使用することになり、不経済である。
【0016】
そこで、本発明は、支柱の運搬及び搬入が容易で、地滑り抑制効果が得られ、且つ経済的な雪崩・落石等防護体の支柱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1の発明は、地面に建て込まれ地滑り抑止杭となる支柱下部と、この支柱下部の上部に設ける支柱上部とを連結した支柱であって、前記支柱上部より前記支柱下部が太いものである。
【0018】
また、請求項2の発明は、支柱下部の上端側に支柱上部の下端側を挿入して連結するものである。
【0019】
また、請求項3の発明は、前記支柱上部の下端側に前記支柱下部とほぼ同径の接続管を一体に設け、この接続管と前記支柱下部とを連結するものである。
【0020】
また、請求項4の発明は、前記支柱下部内に、補強体を挿入すると共に、充填材を充填したものである。
【0021】
また、請求項5の発明は、前記支柱下部と支柱上部の連結箇所に充填した接合剤により、前記支柱下部と前記支柱上部を接合したものである。
【0022】
また、請求項6の発明は、前記支柱下部の上端側に肉厚部を形成し、この肉厚部の基端側で前記支柱下部内に肉厚な円板を設け、前記肉厚部内に前記支柱上部の下端側を挿入して連結したものである。
【0023】
また、請求項7の発明は、二重管からなるものである。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の構成によれば、支柱下部を地面に立て込むことにより、地滑り抑止効果が得られ、その支柱下部に支柱上部を連結することにより、支柱上部が防護体の支柱となり、防護体を構築することができる。そして、支柱下部を支柱上部より太くすることにより、地滑り抑制杭として所定の強度が得られ、防護体側の支柱上部が不必要に太くなることがなく、経済的な構造が得られえる。
【0025】
また、長尺な支柱を、支柱下部と支柱上部に分けて運搬、搬入することができ、現場での据付作業性を向上することができ、地滑り抑制杭となる支柱下部は1本物を用いることもできる。また、支柱をメッキ処理する場合では、一体物より支柱上部及び支柱下部は短くなるため、そのメッキ処理を容易に行うことができる。さらに、支柱上部と支柱下部とに分割することにより、支柱上部を標準化して予め製造しておくことができる。
【0026】
また、請求項2の構成によれば、太い支柱下部に細い支柱上部を挿入するから、連結作業が容易となる。
【0027】
また、請求項3の構成によれば、支柱下部に、これと略同径の接続管を連結するから、直径が変化する箇所が現場連結箇所から外れ、直径変化箇所を工場加工することにより、強度を確保することができる。
【0028】
また、請求項4の構成によれば、補強体と充填材とにより地滑り抑止杭となる支柱下部の強度を向上することができる。
【0029】
また、請求項5の構成によれば、接合剤により、支柱下部と支柱上部とを所定強度で接合することができる。
【0030】
また、請求項6の構成によれば、構造簡易にして、縁が切れている支柱下部と支柱上部とを、肉厚な円板と筒状の肉厚部により補強し、連結強度を保つことができる。
【0031】
また、請求項7の構成によれば、簡便に肉厚部を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。各実施例では、従来とは異なる雪崩・落石等防護体の支柱を採用することにより、従来にない雪崩・落石等防護体の支柱が得られ、その雪崩・落石等防護体の支柱を夫々記述する。
【実施例1】
【0033】
以下、本発明の防護体の実施例1について図1〜図8を参照して説明する。防護体たる落石・雪崩等防護柵1は、複数の支柱2,2…を間隔をおいて並設し、それら支柱2,2…間に横ロープ材3,3…を多段に設けると共に、それら支柱2,2…間を、防護面たる網体4により閉塞してなる。
【0034】
また、図中9は、支柱2の上部と、防護壁1の前側の斜面Yとを連結する控えロープ材であり、この控えロープ材9の一端を前記支柱2の上部に連結し、控えロープ9の他端を前記斜面Yにアンカー10により固定している。
【0035】
次に、前記支柱2の詳細について説明すると、その支柱2は、支柱上部2Uと支柱下部2Sとを連結してなり、それら支柱下部2Sと支柱上部2Uには、一例として、二重鋼管からなる耐荷材101が用いられる。
【0036】
図6〜図8に示すように、前記耐荷材101は、断面円形の外側鋼管102内に間隔を置いて断面円形の内側鋼管103を挿入配置し、それら外側鋼管102と内側鋼管103との間に、複数の補強鋼棒104を配置し、この補強鋼棒104を配置した外側鋼管102と内側鋼管103との間の外側充填空間105に、充填材である無収縮モルタル106を充填し、また、内側鋼管103の内部の内側充填空間107にも、無収縮モルタル106を充填して養生したものである。
【0037】
前記補強鋼棒104は、異形鋼棒であり、その外周に凹凸として台形螺子部111を長さ方向全長に有する。また、その補強鋼棒104の外周には、長さ方向に連続する平面部112,112が断面両側に設けられ、平面部112においては前記台形螺子部111が切り取られており、直径方向両側の平面部112,112は平行をなす。
【0038】
前記補強鋼棒104の平面部112,112の間隔は、前記外側鋼管102の内面と内側鋼管103の外面との間隔より僅かに狭く設定されている。そして、外側充填空間105には、3本以上の補強鋼棒104が配置され、この例では、外側充填空間105には、周方向等間隔に4本の補強鋼棒104,104A,104A,104Aを配置し、隣り合う補強鋼棒104,104A,104A,104Aが円周方向90度の角度をなす位置にある。尚、補強鋼棒104Aは、配置位置が異なる以外は、前記補強鋼棒104と同一構成である。さらに、前記補強鋼棒104の隣りに、補強鋼棒104,104を配置して3本の補強鋼棒104,104,104を円周方向30度の角度をなす位置に並べる。
【0039】
尚、支柱下部2Sの耐荷材101は、支柱上部2Uの耐荷材101より大径に形成され、すなわち支柱下部2Sの外側鋼管102は、支柱上部2Uの外側鋼管102より大径に形成されている。
【0040】
次に、前記耐荷材101の製造方法を説明すると、まず、図7に示すように、内側鋼管103の外面に、前記補強鋼棒104,104,104,104A,104A,104Aを固定する。この場合、一方の平面部112を内側鋼管103の外面に沿わせて溶接などで固定する。このようにして、補強鋼棒104,104,104,104A,104A,104Aを固定した内側鋼管103を、外側鋼管102内に挿入する。この場合、内側鋼管103は、複数の補強鋼棒104,104,104,104A,104A,104Aの平面部112を外側鋼管102の内面に沿わせて、外側鋼管102内に内側鋼管103を挿入することができる。そして、挿入後、鋼管102,103の一端側を上に向けて配置し、その上側の開口から外側充填空間105及び内側充填空間107に無収縮モルタル106を充填し、養生することにより、耐荷材101が得られる。尚、充填材を充填する前の耐荷材101に、亜鉛などの鍍金処理を施してもよい。尚、図3及び図5では、耐荷材101の内側鋼管103,補強鋼棒104,104A及び無収縮モルタル106を図示省略している。具体的には、支柱上部2Uの全長に無収縮モルタル106が充填され、支柱下部2Sは、受口部11を除いた全長に無収縮モルタル106が充填されている。
【0041】
図1及び図3などに示すように、前記支柱下部2Sの上部である先端には、前記内側鋼管103と補強鋼棒104のない受口部11を設け、前記受口部11の上端には、鍔継手12が設けられ、この鍔継手12に対応して、前記支柱上部2Uの外面に鍔継手13が設けられ、この鍔継手13には、充填確認孔を兼用する複数の空気抜き孔13Aが穿設されている。それら鍔継手12,13には円周方向等間隔にボルト挿通孔14,14が穿設されており、受口部11に支柱上部2Uの下部を挿入し、それら鍔継手12,13にパッキン15を挟んで重ね合わせた状態で、ボルト挿通孔14にボルト16を挿通し、ナットを螺合して接合される。そして、鍔継手12,13を重ね合わせた状態で、支柱上部2Uの下端と、支柱下部2Sの内側鋼管103の上端との間に長さ方向の隙間ができ、この隙間Sは15ミリ以下、好ましくは10ミリ程度であるが、前記長さ方向の隙間と受口部11と支柱上部2Uとの隙間Sにより、支柱下部2Sに対して、支柱上部2Uを角度調整することができる。この場合、例えば、鍔継手12,13間の適宜な位置に、スペーサ(図示せず)を入れることにより角度調整できる。
【0042】
また、前記受口部11の長さ方向略中央の外面には、肉厚部17を設けている。この肉厚部17は、支柱上部2Uの下端と支柱下部2Sの上端との間の長さ方向の隙間を跨いで配置されている。尚、肉厚部17及び鍔継手12,13は鋼製である。
【0043】
また、前記受口部11の下部の両側には、前記隙間Sに連通する孔21,21を穿設し、これら孔21,21には雌螺子部が形成されている。その一方の孔21には、充填管22が接続されている。この充填管22の下端には略90度に屈曲した屈曲部23が設けられ、この屈曲部23の端部が前記孔21に螺着されており、また、充填管22の直線部24は、受口部11の外周に沿って上方に伸び、その上端は受口部11の上端近くまで達し、上端に設けた略90度のエルボ25により、鍔継手12の下で、充填材注入孔26が外側に向いている。また、他方の孔21には、雄螺子を有する栓体27が着脱可能に螺合される。
【0044】
前記隙間Sに充填する充填材たる接合剤18として、ベースレンジに、エポキシ樹脂、好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いたエポキシ系接着剤を用い、主剤と硬化剤とからなる二液性で、湿潤面硬化型のものを用いる。このように、接合剤34に湿潤面硬化型のエポキシ系接着剤を用いることにより、湿気処理などが難しい現場においても、施工を行うことができる。
【0045】
次に、前記防護柵1の施工方法などについて、支柱2を中心として説明する。まず、設置場所で、支柱下部2Sを建て込み、この支柱下部2Sは地すべり抑止杭などとして使用され、例えば、移動層121に打ち込まれ、下部は不動層122に打ち込まれる。
【0046】
この後、支柱上部2Uを連結する場合について説明すると、図2などに示すように、防護柵1の設置場所である山の斜面Yなどに取付孔28を穿孔し、この穿孔にはボーリングが用いられ、前記取付孔28に支柱下部2Sを挿入して建て込む。
【0047】
そして、取付孔28と支柱下部2Sとの間に隙間があれば、この隙間に取付孔用充填材29を充填して支柱下部2Sを設置場所に固定する。このように、支柱2の施工において、長尺な支柱2を、その支柱下部2Sと支柱上部2Uと分けて施工することができ、現場での据付作業性を向上することができる。また、無収縮モルタル106を充填する前の支柱2を、メッキ処理する場合では、一体物より支柱上部2U及び支柱下部2Sは短くなるため、そのメッキ処理を容易に行うことができる。
【0048】
このように支柱下部2Sの施工が終わった後、連続して、あるいは時間をおいて、支柱上部2Uの施工を行う。まず、鍔継手12の上にパッキン15を重ね、受口部11内に支柱上部2Uの下端を挿入し、鍔継手12の上に鍔継手13を重ね、ここで、上述したように、支柱上部2Uを調整し、鍔継手12,13をボルト16とナットで締め付けて仮固定する。そして、充填材注入孔26から接合剤18を隙間Sに充填する。この場合、栓体27を外して接合剤18の充填状態を確認することができ、確認後は、栓体27により孔21を塞ぐ。また、充填材注入孔26から充填された接合剤18は、受口部11の下端の孔21から隙間Sに充填され、充填に伴って内部の空気は空気抜き孔13Aから外部に排出され、また、支柱上部2Uの下端と支柱下部2Sの上端との間に充填され、受口部11の上部まで充填される。
【0049】
そして、接合剤18が硬化することにより、支柱上部2Uと支柱下部2Sとが一体化される。この場合、接合剤18による接着により、引抜力も得られるから、鍔継手12,13の接合を解除することもできる。また、接合剤18に湿潤面硬化型のエポキシ系接着剤を用いることにより、湿気処理などが難しい現場においても、施工を行うことができる。
【0050】
尚、設置場所で、建て込み前に、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを連結してもよく、この場合、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを別々に設置場所又はその近傍に搬入するから、それらの運搬及び搬入が容易となり、また、設置場所又はその近傍の作業に適した場所で、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを一体化することができる。
【0051】
尚、設置場所又はその近傍以外で、工場などにおいて、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを連結してもよい。この場合、長尺な支柱2を支柱下部2Sと支柱上部2Uとに分割して製造するため、メッキ処理などの制約を受け難く、また、作業に適した場所で製造するから、安定した製品(支柱2)を製造することができる。
【0052】
このように本実施例では、請求項1に対応して、地面たる斜面Yに建て込まれ地滑り抑止杭となる支柱下部2Sと、この支柱下部2Sの上部に設ける支柱上部2Uとを連結した支柱2であって、支柱上部2Uの外側の鋼管102より支柱下部2Sの外側の鋼管102が太いから、支柱下部2Sを斜面Yに立て込むことにより、斜面Yの地滑り抑止効果が得られ、その支柱下部2Sに支柱上部2Uを連結することにより、支柱上部2Uが防護柵1の支柱となり、防護柵1を構築することができる。そして、支柱下部2Sを支柱上部2Uより太くすることにより、地滑り抑制杭として所定の強度が得られ、防護体側の支柱上部2Uが不必要に太くなることがなく、経済的な構造が得られえる。
【0053】
また、長尺な支柱2を、支柱下部2Sと支柱上部2Uに分けて運搬、搬入することができ、現場での据付作業性を向上することができ、地滑り抑制杭となる支柱下部2Sは連結箇所のない1本物を用いることもできる。また、支柱2をメッキ処理する場合では、一体物より支柱上部2U及び支柱下部2Sは短くなるため、そのメッキ処理を容易に行うことができる。さらに、支柱上部2Uと支柱下部2Sとに分割することにより、支柱上部2Uを標準化して予め製造しておくことができる。
【0054】
また、このように本実施例では、請求項2に対応して、支柱下部2Sの上端側に支柱上部2Uの下端側を挿入して連結するから、太い方の支柱下部2Sに細い支柱上部2Uを挿入するから、その連結作業を容易に行うことができる。
【0055】
また、このように本実施例では、請求項4に対応して、支柱下部2S内に、補強体たる内側鋼管103を挿入すると共に、充填材たる無収縮モルタル106を充填したから、補強体たる内側鋼管103と充填材106とにより支柱下部2Sの強度を向上することができる。
【0056】
また、このように本実施例では、請求項5に対応して、支柱下部2Sと支柱上部2Uの連結箇所に充填した接合剤18により、支柱下部2Sと支柱上部2Uを接合したから、接合剤により、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを所定強度で接合することができる。
【0057】
また、実施例上の効果として、斜面Yに固定する支柱下部2Sと、この支柱下部2Sの上部に設ける支柱上部2Uとを連結した支柱2において、支柱下部2Sの上側に支柱上部2Uの下端を挿入固定する受口部11を設けたから、受口部11に支柱上部2Uの下端を挿入固定することにより、支柱上部2Uと支柱下部2Sとを一体化することができ、その支柱下部2Sを設置場所に固定することにより、防護体たる防護柵1の支柱2を立設することができる。そして、支柱下部2Sに予め受口部11が一体に設けられているため、受口部11と支柱上部2Uとの接合強度を確保することにより、支柱上部2Uと支柱下部2Sとを強固に一体化できる。
【0058】
また、受口部11に挿入した支柱下部2Sの外面と受口部11の内面との間に充填した接合剤18により、支柱下部2Sと支柱上部2Uを接合したから、接合剤18により、受口部11に支柱上部2Uを所定強度で接合することができる。
【0059】
また、支柱下部2Sと受口部11とを鍔継手13,12で接合したから、鍔継手13,12により、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを仮接合できる。
【0060】
また、実施例上の効果として、ベースレンジに、エポキシ樹脂、好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いたエポキシ系接着剤を用い、主剤と硬化剤とからなる二液性で、湿潤面硬化型のものを用いたから、現場での接着性を確保することができ、また、モルタル等に比べて早く接合強度を得ることができる。さらに、充填管22の下端には略90度に屈曲した屈曲部23が設けられ、この屈曲部23の端部が前記孔221に螺着されており、また、充填管22は下部を隙間Sの下部に連結し、その充填材注入孔26は隙間Sの上部側に近い位置まで上方にあるから、充填材注入孔26に注入した接合剤18が自重により隙間Sへと充填される。また、従来のモルタル等の充填材に比べて、隙間Sは狭くて済み、隙間Sを15ミリ以下としている。
【0061】
また、耐荷材101についての実施例上の効果として、支柱上部2Uと支柱下部2Sは、耐荷材101からなり、この耐荷材101は、外側鋼管102と、この外側鋼管102内に配置される内側鋼管103と、これら外側鋼管102と内側鋼管103との間に配置した補強鋼棒104と、それら外側鋼管102と内側鋼管103との間に充填した無収縮モルタルとを備えるから、外側と内側の鋼管102,103により無収縮モルタルが拘束され、圧縮応力が向上し、外側と内側の鋼管102,103の間にある補強鋼棒104,104,104を引張領域側とすることにより、その補強鋼棒104,104,104が曲げによる引張力に抗して引張領域側の引張応力が向上し、荷重に対する応力を効果的に向上することができ、しかも、鋼管102,103と鋼棒104,104,104との組み合せにより、支柱2用の耐荷材101を簡易に構成できる。また、補強鋼棒104は、外周に凹凸たる台形螺子部111を有するから、台形螺子部111により補強鋼棒104と無収縮モルタルとの密着性が向上し、補強鋼棒104と無収縮モルタルとを一体化できる。また、補強鋼棒104は、長さ方向に連続する平面部112,112を両側に有するから、平面部112,112を用いて鋼管102,103への固定が容易となり、且つ、平面部112が面で鋼管102,103に接し、製造時における外側鋼管102への内側鋼管103の挿入作業が容易となる。また、外側鋼管102の内面又は内側鋼管103の外面に3本以上の補強鋼棒104,104Aを固定した後、外側鋼管102内に内側鋼管103を挿入するから、補強鋼棒104,104Aが外側と内側の鋼管のスペーサとなり、外側鋼管102への内側鋼管103の挿入配置と断面方向に位置合わせとが容易となり、製造工程を簡略化できる。ここで、補強鋼棒104,104Aを3本以上としたのは、内側鋼管103を補強鋼棒104,104Aにより支持して位置決めするのに、3本以上の補強鋼棒104,104Aがあれば、3点で支持して位置決めできるからであり、3本の補強鋼棒104,104A,10Aを用いる場合は、それらを円周方向120度の角度をなす位置に配置すればよい。また、4本の補強鋼棒104,104A,104A,104Aが円周方向90度の角度をなす位置に配置したから、鋼管102,103同士の位置決めを確実に行うことができる。
【実施例2】
【0062】
図9は、本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その詳細な説明を省略して詳述すると、この例では、鍔継手12,13を用いずに、受口部11に複数の調整ボルト31を螺合し、前記受口部11に支柱上部2Uの下端を挿入した状態で、調整ボルト31を用いて支柱下部2Sと支柱上部2Uとの芯合わせを行うと共に、角度調整を行い、接合剤18を充填し、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを連結する。
【0063】
このように本実施例では、各請求項に対応して、上記実施例1と同様な作用・効果を奏する。
【実施例3】
【0064】
図10〜図17は、本発明の実施例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、この例では、支柱下部2Sと支柱上部2Uには、一例として、充填鋼管211が用いられる。
【0065】
充填鋼管211は、図15及び図16などに示すように、支柱2U,2Sの本体たる断面円形の鋼管212U,212S内に、断面略三角形状の補強体213を挿入配置して該鋼管212U,212Sに固定した後、内部に無収縮モルタルなどの充填材214を充填し、養生したものである。前記補強体213は、板材からなる3枚の補強リブ215,215,215をほぼ正三角形に配置し、補強リブ215,215,215の頂部215S,215S,215Sに帯状鋼板216,216,216を溶着してなる。また、前記帯状鋼板216の幅Wは、前記補強リブ215の厚さTの2倍以上である。また、補強体213の帯状鋼板216,216,216は、前記鋼管212U,212Sの内面と僅かな隙間を介して挿通可能に取付けられている。また、補強リブ215,215,215には貫通孔218が設けられ、充填材214の充填を容易にしている。
【0066】
尚、鋼管212Sは前記鋼管212Uより大径であり、鋼管212Uは支柱上部2Uに用いられ、鋼管212Sは支柱下部2Sに用いられる。
【0067】
そして、製造時には、補強体213を組立てた後、鋼管212U,212Sの一側開口から該補強体213を挿入配置し、溶接棒などが届く開口側で補強体213を鋼管212U,212Sの内面に溶着固定した後、内部に無収縮充填材214を充填する。また、図16に示すように、補強リブ215の端部は溶接部217により帯状鋼板212に固定される。
【0068】
図10及び図17などに示すように、支柱下部2Sの先端部において、その鋼管212S内に肉厚管221の基端側を挿入し、この肉厚管221は、略2分の1の長さが鋼管212S内に挿入され、この鋼管212Sから突出した肉厚管221の先端側により挿入部221Aを構成している。前記肉厚管221は前記鋼管212Sより厚く、この鋼管212S内に肉厚管221が嵌入される。また、鋼管212Sと同一構成の短管リング222を形成し、前記鋼管212Sに肉厚管221を挿入した状態で、該鋼管212Sの管端と隙間を置いて、前記短管リング222を肉厚管221に外嵌し、前記隙間部分において、鋼管212Sと短管リング222と肉厚管221とを溶着部223により溶着一体化する。この場合、前記隙間の寸法は、鋼管212Sの肉厚程度にすることが好ましく、溶着部223は、グラインダーなどの研磨機により鋼管212Sの外周と面一に仕上げる。尚、短管リング222は鋼管212Sの一部を構成する。尚、前記肉厚管221は、鋼管や鋳鉄管などの鉄管からなり、前記鋼管212U,212Sに挿入可能で、且つ前記鋼管212U,212Sの厚さより肉厚であり、例えば、肉厚管221は鋼管212U,212Sの2倍以上の厚さを有する。
【0069】
また、前記肉厚管221の基端側には、該肉厚管221の端面に当接して仕切り板224を一体に設け、前記肉厚管221の先端側には、該肉厚管221内に仕切り板225を一体に設ける。また、それら仕切り板224,225には、それぞれ貫通孔224A,225Aがそれぞれ穿設されている。尚、それら仕切り板224,225は、溶着により肉厚管221に設けられる。
【0070】
一方、前記支柱上部2Uの上端部において、その鋼管212U内に挿入体231を設ける。この挿入体231は、前記挿入部221A内に挿入する円柱部232とこれより径大な鍔部233とを一体に有する。また、その挿入体231は長さ方向に複数(2つ)の貫通孔234が形成されている。また、前記鋼管212Sと同一構成の短管235を形成し、この短管235の基端を前記鍔部233の外周に溶着などにより固着する。
【0071】
一方、前記挿入体231の鍔部233の基端側には、前記鋼管212Uの先端が溶着され、この鋼管212U内には前記補強体213がそのほぼ全長に渡って配置されている。尚、前記挿入体231は、鋼や鋳鉄などの鉄製のものが用いられる。また、円柱部232の長さは、嵌入する肉厚先端部221Aの内面の2分の1以上とすることが好ましく、こうすることにより、円柱部232と肉厚先端部221Aとの連結強度を十分に得ることができる。
【0072】
前記鍔部233の先端側の面と鋼管212Uの管端との間の長さ寸法Sは、前記挿入部221Aの先端と前記鋼管212Sの管端との間の長さ寸法S´より僅かに大きく、また、前記円柱部232の長さ寸法S1は、前記仕切り板225の先端面と鋼管212Sの管端との間の長さ寸法S1とほぼ等しい。また、鋼管212Uと鋼管212Sの端部が当接した状態で、前記円柱部232の先端面と仕切り板225の先端面との間に、数ミリ程度の隙間が形成され、同様に、肉厚挿入部221Aの先端面と鍔部233の先端面との間に、数ミリ程度の隙間が形成される。
【0073】
前記仕切り板225より基端側で前記鋼管212S内に、前記補強体213が挿入配置され、また、前記挿入体231より基端側で前記鋼管212U内に、前記補強体213が挿入配置されている。
【0074】
また、前記溶着部23より基端側において、前記肉厚管221には厚さ方向の貫通孔227が複数穿設され、この例では、対向する位置に一対の貫通孔227,227が穿設され、これら貫通孔227,227は前記溶着部223に近接した位置にある。
【0075】
そして、鋼管下部2Sにおいては、仕切り板225に穿設した貫通孔225Aから、前記充填材214を充填することにより、仕切り板225位置まで充填材214が充填され、また、肉厚管221内から貫通孔228,228を通って肉厚管221と鋼管212Sとの間の僅かな隙間にも充填材214が充填される。一方、挿入体231の貫通孔234から、前記充填材214を充填することにより、少なくとも挿入体231の基端側まで充填材214が充填される。尚、貫通孔234内に充填材214を充填してもよい。
【0076】
また、前記鋼管212Sの前記短管リング222には、接合用接合剤注入口242が形成され、一方、前記円柱部232に対応する位置で、前記鋼管212Uには、接合用接合剤注入口241が穿設され、これら注入口241,242同士は周方向に180度離れた位置にある。そして、それら注入口241,242には、それぞれホース(図示せず)などの管材が接続され、接合剤243を充填した後、図示しない接続部たるプラグが螺合されて閉塞される。
【0077】
また、前記肉厚管221には、前記仕切り板225より先端側に、貫通孔228が穿設され、この貫通孔228は連結状態で、前記円柱部232の先端面と仕切り板225との間に隙間に連通する。
【0078】
したがって、支柱上部2Uの短管234内に、支柱下部2Sの挿入部221Aを挿入し、短管234と鋼管212Sの端部が当接すると、挿入部221Aの先端面と鍔部233の先端面との間に所定寸法の隙間が形成され、また、挿入体231の円柱部232が挿入部221A内に挿入される。この後、前記ホースを使って注入口241から、短管35及び鋼管212Sの内面と肉厚管221の外面との間、肉厚管221の先端側内面と挿入体231との間及び前記円柱部232の先端面と仕切り板225との間に、接合剤243を充填し、他方の注入口242から内部の空気を逃がす。尚、図17中、ハッチングで示す部分と、円柱部232の外周と挿入部221Aの内周との間が、接合剤243の充填範囲である。
【0079】
充填材たる接合剤243として、ベースレンジに、エポキシ樹脂、好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いたエポキシ系接着剤を用い、主剤と硬化剤とからなる二液性で、湿潤面硬化型のものを用いる。このように、接合剤243に湿潤面硬化型のエポキシ系接着剤を用いることにより、湿気処理などが難しい現場においても、施工を行うことができる。
【0080】
実施例1の図2に示したように、支柱下部2Sの建て込みが終わった後、連続して、あるいは時間をおいて、支柱上部2Uの施工を行う。まず、支柱上部2Uを支柱下部2Sに向って下し、支柱下部2Sの挿入部221Aを支柱上部2Uの短管235内に合わせ、支柱下部2Sを下ろしていくと、挿入体231の円柱部232が挿入部221A内に挿入され、短管235と鋼管212Sの先端同士が当接し、接続状態となる。そして、注入口241から、接合剤243を充填する。
【0081】
充填した接合剤243が硬化することにより、支柱上部2Uと支柱下部2Sとが一体化される。この場合、接合剤243による接着により、引抜力も得られ、また、接合剤243に湿潤面硬化型のエポキシ系接着剤を用いることにより、湿気処理などが難しい現場においても、施工を行うことができる。
【0082】
尚、設置場所で、建て込み前に、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを連結してもよく、この場合、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを別々に設置場所又はその近傍に搬入するから、それらの運搬及び搬入が容易となり、また、設置場所又はその近傍の作業に適した場所で、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを一体化することができる。
【0083】
尚、設置場所又はその近傍以外で、工場などにおいて、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを連結してもよい。この場合、長尺な支柱2を支柱下部2Sと支柱上部2Uとに分割して製造するため、メッキ処理などの制約を受け難く、また、作業に適した場所で製造するから、メッキ処理を施した安定した製品(支柱2)を製造することができる。
【0084】
このように本実施例では、支柱上部2Uの鋼管212Uより支柱下部2Sの鋼管212Sが太いから、上記各実施例と同様な作用・効果をする。
【0085】
また、このように本実施例では、請求項3に対応して、支柱上部2Uの下端側に支柱下部2Sとほぼ同径の接続管たる短管235を一体に設け、この短管235と支柱下部2Sとを連結するから、支柱下部2Uに、これと略同径の短管235を連結するから、直径が変化する箇所が現場連結箇所から外れ、直径変化箇所を工場加工することにより、強度を確保することができる。
【0086】
また、実施例上の効果として、基礎たる斜面Yに固定する支柱下部2Sと、この支柱下部2Sの上部に設ける支柱上部2Uとを連結した支柱2において、支柱上部2Uと支柱下部2Sの一方である支柱下部2Sの端部に、支柱2の本体たる鋼管212S,212Uより肉厚な肉厚管221の基端側を挿入固定すると共に、肉厚管221の先端側を突出した肉厚挿入部221Aを設け、この肉厚挿入部221Aは支柱上部2Uと支柱下部2Sの他方である支柱上部2Uの端部に挿入され、この支柱上部2Uの端部内に、肉厚挿入部221Aの先端側に挿入する挿入体231を設けたから、肉厚挿入部221Aを他方の端部に挿入すると共に、他方の端部側の挿入体231を肉厚挿入部221A内に嵌入することにより、支柱下部2Sと支柱上部2Uとの連結箇所内には肉厚管221が位置し、且つ一方に設けた肉厚管221の先端は、他方に設けた挿入体231が挿入されて連結されるから、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを強固に連結できる。
【0087】
また、肉厚管221内に充填材214を充填したから、内部に充填した充填材214により肉厚管221の強度がさらに向上する。
【0088】
また、肉厚挿入部221Aの先端側を、他方である支柱上部2Uの端部内周と挿入体231の円柱部232の外周との間に挿入するから、肉厚管221の先端と挿入体231とが連結される。
【0089】
また、このように本実施例では、支柱上部2U及び支柱下部2Sの端部と肉厚管221との間に充填した接合剤243により、支柱上部2Uと前記支柱下部2Sを接合したから、接合剤243により、肉厚管221を介して支柱上部2Uと支柱下部2Sとを所定強度で接合することができる。
【0090】
また、肉厚挿入部221Aの先端側と挿入体231との間に充填した接合剤243により、それら肉厚挿入部221Aの先端側と挿入体231とを接合したから、接合剤243により、肉厚挿入部221Aの先端側と挿入体231とを所定強度で接合することができる。
【0091】
また、支柱下部2Sの先端側で、鋼管212Sと鋼管の一部を構成する鋼管リング222との間に隙間を設け、この隙間で、鋼管212Sと鋼管リング222と肉厚管221とを溶着一体化したから、鋼管リング222の位置を設定することにより、鋼管リング222の端部からなる鋼管212Sの先端位置を正確に設定することができる。また、支柱上部2Uの先端側で、鋼管212Uと鋼管の一部を構成する短管235との間に隙間を設け、この隙間で、鋼管212Uと短管235と挿入体231とを溶着一体化したから、内部に配置される挿入体231を強固に鋼管212Uに固定することができる。また、他方の端部側の挿入体231を肉厚挿入部221A内に嵌入するから、肉厚管221の先端を他方である支柱上部2Uの鋼管212Uに確実に位置決め状態で固定することができる。
【0092】
また、充填鋼管211についての実施例上の効果として、支柱上部2Uと支柱下部2Sは、補強体213を備えた充填鋼管211からなり、断面円形の鋼管212U,212Sの内部に、断面三角形の補強リブ215,215,215を内接して設けると共に、補強リブ215,215,215の2つの頂点215Sを鋼管の引張領域側に配置したから、鋼管212U,212S内部の補強リブ215,215,215により、断面において内部のセメント混合材である充填材14が拘束され、圧縮応力が向上し、引張領域側に補強リブ215,215の2つの頂点215S,215Sを連結するリブ215があるため、これが曲げにより生じる引張力に抗して引張領域側の引張応力が向上し、荷重に対する応力を効果的に向上することができる。
【実施例4】
【0093】
図18〜図22は、本発明の実施例4を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、この例では、支柱下部2Sと支柱上部2Uには、一例として、充填鋼管211が用いられる。
【0094】
図20及び図22に示すように、充填鋼管211は、上記実施例4と同様に、支柱2U,2Sの本体たる断面円形の鋼管212U,212S内に、断面略三角形状の補強体213を挿入配置して該鋼管212U,212Sに固定した後、内部に無収縮モルタルなどの充填材214を充填し、養生したものである。
【0095】
支柱下部2Sの先端部(上端部)に受口部260が設けられ、この受口部260は、その鋼管212Sの先端に、肉厚な円板たる仕切り板261を設け、この仕切り板261の外径は鋼管212Sの内径に略等しく、その仕切り板261には複数の段付き孔262が貫通形成されている。尚、仕切り板261の厚さは、前記鋼管212Sの厚さより厚い。また、前記受口部260は、前記鋼管212Sの先端に、隙間263を置いて、短管264を設け、この短管264は前記鋼管212Sと同一の鋼管が用いられている。そして、前記鋼管212Sと短管264と仕切り板261は、前記隙間263内に設けた溶着部265により溶着されている。この場合、隙間263の円周方向に間隔をおいて複数の溶接部265,265・・・を設け、具体的には、円周方向等間隔に8箇所の溶接部265,265・・・を設けている。
【0096】
また、前記短管264内には、内管266が挿入され、この内管266の基端を前記仕切り板261に溶着部266Aにより溶着し、前記内管266の先端を前記短管264の先端に溶着部266Bにより溶着し、それら短管264と内管266とにより、前記鋼管212Sより肉厚な肉厚部267を構成し、前記受口部260は、仕切り板261及び肉厚部267から構成される。また、前記内管266の内周には、荷重が作用した際の支柱2の圧縮領域側に、補強板268を添接する。尚、製造手順としては、前記仕切り板261に内管266を溶着部266Aにより溶着した後、内管266に短管264を外嵌し、前記溶着部265,266Bを施す。また、前記内管266の先端側には、複数の空気抜き孔269が設けられ、また、内管266の基端側には、接合用接合剤注入口270を穿設し、この注入口260に対応して、前記短管264に、螺子部を形成した接合用接合剤注入口271が貫通形成されている。そして、それら空気抜き孔269により、短管264と内管266との間の空気を外部に逃がし、この部分にもメッキを施すことができる。
【0097】
尚、完成した支柱下部2Sを、メッキ槽に入れ、どぶ漬けしてメッキ処理を施した後、前記段付き孔262を蓋272により塞ぐ。
【0098】
一方、前記支柱上部2Uの下端部には、蓋板273を設け、この蓋板273により該下端部の開口を塞いでいる。この場合も、完成した支柱上部2Uを、メッキ槽に入れ、どぶ漬けしてメッキ処理を施した後、前記支柱上部2Uの下端部に蓋板273を取り付けた塞ぐ。
【0099】
尚、支柱下部2Sの鋼管212Sの内面には、複数の補強鋼棒274が配置され、これら補強鋼棒274により、支柱下部2Sの断面に加わる引張力に対抗している。
【0100】
そして、前記肉厚部267内に支柱上部2Uの下端を挿入し、支柱上部2Uの蓋板273と支柱下部2Sの仕切り板261とが当接する。この後、前記ホースを使って注入口270,271から、内管266の内面と支柱上部2Uの上端部の外面との間に、前記接合剤243を充填し、内管266の上端から内部の空気を逃がす。尚、内管266と短管264との間にも接合剤243が充填される。
【0101】
実施例1の図2に示したように、支柱下部2Sの建て込みが終わった後、連続して、あるいは時間をおいて、支柱上部2Uの施工を行う。まず、支柱上部2Uを支柱下部2Sに向って下し、支柱下部2Sの下端を支柱上部2Uの肉厚部267内に合わせ、支柱下部2Sを下ろしていくと、挿入体231の円柱部232が挿入部221A内に挿入され、支柱上部2Uの蓋板273と支柱下部2Sの仕切り板261とが当接し、接続状態となる。そして、注入口271から、接合剤243を充填する。尚、接合剤243の充填後、注入口271に栓を螺合して塞ぐ。
【0102】
充填した接合剤243が硬化することにより、支柱上部2Uと支柱下部2Sとが一体化される。この場合、接合剤243による接着により、引抜力も得られ、また、接合剤243に湿潤面硬化型のエポキシ系接着剤を用いることにより、湿気処理などが難しい現場においても、施工を行うことができる。
【0103】
尚、設置場所で、建て込み前に、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを連結してもよく、この場合、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを別々に設置場所又はその近傍に搬入するから、それらの運搬及び搬入が容易となり、また、設置場所又はその近傍の作業に適した場所で、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを一体化することができる。
【0104】
尚、設置場所又はその近傍以外で、工場などにおいて、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを連結してもよい。この場合、長尺な支柱2を支柱下部2Sと支柱上部2Uとに分割して製造するため、メッキ処理などの制約を受け難く、また、作業に適した場所で製造するから、メッキ処理を施した安定した製品(支柱2)を製造することができる。
【0105】
このように本実施例では、支柱上部2Uの鋼管212Uより支柱下部2Sの鋼管212Sが太く、また、支柱下部2Sの上端側に支柱上部2Uの下端側を挿入して連結し、また、支柱下部2Sの肉厚部267内に、支柱上部2Uの下部を挿入すると共に、接合剤243を充填し、支柱下部2Sと支柱上部2Uの連結箇所に充填した接合剤243により、支柱下部2Sと支柱上部2Uを接合したから、上記各実施例と同様な作用・効果をする。
【0106】
また、このように本実施例では、請求項6に対応して、支柱下部2Sの上端側に肉厚部267を形成し、この肉厚部267の基端側で支柱下部2U内に肉厚な円板たる仕切り板261を設け、肉厚部267内に支柱上部2Uの下端側を挿入して連結したから、構造簡易にして、縁が切れている支柱下部2Sと支柱上部2Uとを、肉厚な円板たる仕切り板261と筒状の肉厚部267により補強し、連結強度を保つことができる。
【0107】
また、このように本実施例では、請求項7に対応して、肉厚部267は、短管264と内管266の二重管からなるから、簡便に肉厚部を形成することができる。
【0108】
また、実施例上の効果として、肉厚部267の内面と支柱上部2Uの上端部の外面との間に、前記接合剤243を充填から、内部に充填した充填材243により肉厚管221の強度がさらに向上する。
【0109】
また、支柱上部2Uの鋼管212Uの基端側を、支柱下部2Sの肉厚部267に挿入するから、肉圧部267と支柱上部2Uの基端とが連結される。
【実施例5】
【0110】
図23は、本発明の実施例5を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、この例では、上記実施例4の支柱2において、支柱上部2Uの上部に前記受口部260を設けた支柱中部2Nを設け、この支柱中部2Nの受口部260に、該支柱中部2Nより小径な前記支柱上部2Uを連結しており、支柱2が、下から上に大きくなる支柱下部2Sと、支柱中部2Nと、支柱上部2Uから構成されている。
【0111】
この例でも、この支柱下部2Sは地すべり抑止杭などとして使用され、例えば、移動層121に打ち込まれ、下部は不動層122に打ち込まれ、支柱中部2N及び支柱上部2Uが防護柵1の地上部の支柱となる。尚、取付孔28に支柱下部2Sを挿入して建て込み。
【0112】
このように本実施例では、支柱上部2Uの鋼管212Uより支柱中部2Uの鋼管212Uが太く、支柱中部2Nの鋼管212Uより支柱下部2Sの鋼管212Sが太く、また、支柱下部2Sの上端側に支柱中部2Nの下端側を挿入して連結し、支柱中部2Nの上端側に支柱上部2Uの下端側を挿入して連結し、また、支柱下部2S内に、補強体たる内側鋼管103を挿入すると共に、充填材たる無収縮モルタル214を充填し、また、支柱下部2Sと支柱中部2Nの連結箇所に充填した接合剤18により、支柱下部2Sと支柱上部2Uを接合し、支柱中部2Nと支柱上部2Uの連結箇所に充填した接合剤243により、支柱中部2Nと支柱上部2Uを接合したから、上記各実施例と同様な作用・効果をする。
【0113】
また、このように本実施例では、支柱下部2Sより小径で支柱上部2Uより大径な支柱中部2Nにより、支柱下部2Sと支柱上部2Uとを連結し、地上部を支柱中部2Nと支柱上部2Uで構成したから、落石や雪崩等により下部より加わる荷重の小さい支柱上部2Uを小径に形成でき、効率のよい構造が得られる。
【実施例6】
【0114】
図24は、本発明の実施例6を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、この例では、支柱上部2Uの上部を反山側の湾曲状に形成したアーチ部281を形成している。
【0115】
このように本実施例では、上記各実施例と同様な作用・効果をする。
【0116】
また、このようにアーチ部281を形成することにより、斜面Sから支柱2の上端までの高さを大きく取ることができる。
【実施例7】
【0117】
図25は、本発明の実施例7を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、この例では、実施例6の支柱2において、支柱上部2Uの上部を反山側の湾曲状に形成したアーチ部281を形成している。
【0118】
このように本実施例では、上記各実施例と同様な作用・効果をする。
【0119】
また、このようにアーチ部281を形成することにより、斜面Sから支柱2の上端までの高さを大きく取ることができる。
【0120】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、支柱上部の下端に受口部を設け、この受口部に支柱下部の下端を挿入して連結するようにしてもよい。また、補強体は各種のものを用いることができる。さらに、実施例5及び7では、支柱が上側に向かって三段階に小さくなる例を示したが、他の実施例においても、下が支柱下部に連結され上が支柱上部に連結される支柱中部を設けて支柱が上側に向かって三段階に小さくなるように構成してもよく、さらには、上側が大きな支柱中部を複数用いて四段以上の支柱下部と支柱中部と支柱下部から支柱を構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の実施例1を示す接合状態を示す縦断面図である。
【図2】同上、接合状態を示す平断面図である。
【図3】同上、受口部回りの断面図である。
【図4】同上、受口部の平面図である。
【図5】同上、支柱下部の下端側を示し、図5(A)は平断面図、図5(B)は縦断面図である。
【図6】同上、支柱下部と支柱上部を構成する耐荷材の断面図である。
【図7】同上、補強鋼棒を固定した外側鋼管の断面図である。
【図8】同上、補強鋼棒を示し、図8(A)は正面図、図8(B)は側面図である。
【図9】本発明の実施例2を示す接合状態を示す縦断面図である。
【図10】本発明の実施例3を示す支柱上部と支柱下部の連結箇所の断面図である。
【図11】同上、支柱下部の先端側の一部切欠き正面図である。
【図12】同上、支柱下部の先端側の部材の分解説明図である。
【図13】同上、支柱上部の先端側の一部切欠き正面図である。
【図14】同上、挿入体を示し、図14(A)は平面図、図14(B)は正面図である。
【図15】同上、図10のA−A線断面図である。
【図16】同上、補強体の要部の拡大断面図である。
【図17】同上、支柱下部と支柱上部の連結箇所の説明図である。
【図18】本発明の実施例4を示す接合状態を示す縦断面図である。
【図19】同上、支柱上部の縦断面図である。
【図20】同上、支柱上部の平断面図である。
【図21】同上、支柱下部の縦断面図である。
【図22】同上、支柱下部の平断面図である。
【図23】本発明の実施例5を示す側面図である。
【図24】本発明の実施例6を示す側面図である。
【図25】本発明の実施例7を示す側面図である。
【符号の説明】
【0122】
1 防護柵(防護体)
2 支柱
2U 支柱上部
2S 支柱下部
11 受口部
12 鍔継手
13 鍔継手
18 接合剤
Y 斜面(地面)
106 充填材
103 内側鋼管(補強体)
212U,212S 鋼管
213 補強体
214 充填材
235 短管(接続管)
260 受口部
261 仕切り板(円板)
264 短管
266 内管
267 肉厚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に建て込まれ地滑り抑止杭となる支柱下部と、この支柱下部の上部に設ける支柱上部とを連結した支柱であって、前記支柱上部より前記支柱下部が太いことを特徴とする雪崩・落石等防護体の支柱。
【請求項2】
支柱下部の上端側に支柱上部の下端側を挿入して連結することを特徴とする請求項1記載の雪崩・落石等防護体の支柱。
【請求項3】
前記支柱上部の下端側に前記支柱下部とほぼ同径の接続管を一体に設け、この接続管と前記支柱下部とを連結することを特徴とする請求項1又は2記載の雪崩・落石等防護体の支柱。
【請求項4】
前記支柱下部内に、補強体を挿入すると共に、充填材を充填したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の雪崩・落石等防護体の支柱。
【請求項5】
前記支柱下部と支柱上部の連結箇所に充填した接合剤により、前記支柱下部と前記支柱上部を接合したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の雪崩・落石等防護体の支柱。
【請求項6】
前記支柱下部の上端側に肉厚部を形成し、この肉厚部の基端側で前記支柱下部内に肉厚な円板を設け、前記肉厚部内に前記支柱上部の下端側を挿入して連結したことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の雪崩・落石等防護体の支柱。
【請求項7】
前記肉厚部は二重管からなることを特徴とする請求項6記載の雪崩・落石等防護体の支柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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