説明

電力マネジメントシステム

【課題】電気自動車のバッテリに蓄えられた電力を工場等の大電力需要施設で活用する場合に、最適な電力マネジメントが可能な電力マネジメントシステムを提供する。
【解決手段】工場内設備100の工場内負荷3での消費電力が最大となる期間に、工場内設備100に接続された電気自動車200の走行の駆動源となるバッテリ21および工場内設備100内の定置蓄電池8を放電させ、その電力を系統電力1に補填することで、系統電力1の使用電力が所定電力を越えないようにする。工場内設備100には、バッテリ21の充放電を制御するとともに、消費電力が所定電力を越える可能性がある場合には、所定電力を越える前に、バッテリ21および定置蓄電池8から供給される電力を系統電力1に補填し、消費電力が所定電力を越える期間の経過後に、バッテリ21および定置蓄電池8に充電を行うFEMS制御部4を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力マネジメントシステムに関し、特に、電気自動車と工場との間の電力マネジメントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池(バッテリ)に充電された電力を駆動源としてモータを駆動して動力を得る電気自動車においては、軽乗用車タイプであっても15kWh程度のバッテリの充電容量を有している。これは、一般家庭での1〜2日分の電力を賄うことが可能な容量であり、決して小さなものではない。
【0003】
このようなバッテリに蓄えられた電力を家庭用電源として供給する電力マネジメントシステムが考案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、住宅の家庭用電源から電気自動車への電力供給と、逆に電気自動車から住宅側への電力供給の双方を可能にして電力需要の平準化を実現する家庭用の電力マネジメントシステム(HEMS:Home Energy Management System)が開示されている。
【0005】
これに対し、工場用の電力マネジメントシステム(FEMS:Factory Energy Management System)においても、電気自動車のバッテリに蓄えられた電力を活用しようとする試みがなされつつある。FEMSは、工場における生産設備のエネルギー使用状況や稼働状況に基づいて、エネルギー使用の合理化および工場内設備の管理の最適化を図ることで、エネルギー消費を削減するシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3985390号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示の電力マネジメントシステムをFEMSに適用しようとしても、簡単にはいかない。すなわち、特許文献1に開示の電力マネジメントシステムでは、深夜電力が安価であることを前提としてシステムを構築しているが、工場のような大電力需要施設の契約形態では、深夜電力と昼間電力とで料金に差がなく、使用電力のピーク電力(契約電力)で基本料金が設定されており、契約電力に比例して基本料金が高くなるため、深夜電力を有効活用しても昼間のピーク電力が大きければ電力料金が高くなり、最適な電力マネジメントが行えないという問題がある。
【0008】
本発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、電気自動車のバッテリに蓄えられた電力を工場等の大電力需要施設で活用する場合に、最適な電力マネジメントが可能な電力マネジメントシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電力マネジメントシステムの態様は、工場内設備の工場内負荷での消費電力が最大となる期間に、前記工場内設備に接続された電気自動車の走行の駆動源となるバッテリおよび前記工場内設備内の定置蓄電池の少なくとも一方を放電させ、その電力を系統電力に補填することで、系統電力の使用電力が所定電力を越えないようにする電力マネジメントシステムであって、前記工場内設備は、前記バッテリの充放電を制御するとともに、前記消費電力が前記所定電力を越える可能性がある場合には、前記所定電力を越える前に、前記バッテリおよび前記定置蓄電池の少なくとも一方から供給される電力を前記系統電力に補填し、前記消費電力が前記所定電力を越える期間の経過後に、前記バッテリおよび前記定置蓄電池のうち、放電させた方に充電を行うシステム制御部を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電力マネジメントシステムによれば、系統電力の使用電力が所定電力を越えないようにすることができ、所定電力に制限がある場合に、最適の電力マネジメントを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る電力マネジメントシステムの実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】FEMS制御部の概略構成を示すブロック図である。
【図3】電力マネジメントの概要をイメージ的に説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る電力マネジメントシステムでの電力マネジメントを説明するフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態の変形例に係るFEMS制御部の概略構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態の変形例に係る電力マネジメントシステムでの電力マネジメントを説明するフローチャートである。
【図7】充放電計画マップの一例を示す図である。
【図8】充放電計画マップの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
<システム構成>
図1は、本発明に係る実施の形態の電力マネジメントシステムの構成を示すブロック図である。図1に示す電力マネジメントシステムは、工場内設備100、電気自動車200を主たる構成として備えている。
【0013】
図1に示す電力マネジメントシステムは、工場内設備100に接続された電気自動車(ガソリンエンジンとモータとを併用したプラグインハイブリッド車も含む)200内の走行用のモータ(図示せず)の駆動源となるバッテリ21に蓄えられた電力を、工場内設備100での消費電力が最大となる期間に、系統電力に補填することで系統電力1の使用電力を抑制するものであり、バッテリ21から工場内負荷3に電力を供給可能な構成となっている。
【0014】
また、工場内設備100には、据え置き型の定置蓄電池8を有しており、定置蓄電池8に蓄えられた電力を、工場内設備100での消費電力が最大となる期間に、系統電力に補填して使用する構成となっている。なお、定置蓄電池8は1つに限定されるものではなく、複数であっても良い。
【0015】
工場内設備100は、種々の工場内負荷3が配電盤2を介して電力会社からの系統電力1に接続されており、工場内負荷3で消費される電力を消費電力と呼称する。本発明に係る電力マネジメントシステムを用いた場合、消費電力は、系統電力1の使用電力と、バッテリ21および定置蓄電池8の少なくとも一方から供給される電力の合計となる。
【0016】
工場内には電力マネジメントシステムの制御を行うFEMS制御部4が設けられ、これにインタフェース5が接続されている。インタフェース5はディスプレイなどの表示部(図示せず)や、ユーザからの入力部(図示せず)を有している。
【0017】
FEMS制御部4は、工場内負荷3を監視し、工場内での電力使用状況を把握して、電力マネジメントを行う装置であり、システム制御部とも呼称する。
【0018】
FEMS制御部4は、工場内負荷3を監視し、系統電力1の使用電力が、電力会社との契約で定めた契約電力を越える可能性がある場合には、越える前に、電気自動車200内のバッテリ21および工場内設備100内の定置蓄電池8から供給される電力を、配電盤2を介して系統電力1に補填することで、系統電力1の使用電力が契約電力を越えず、かつ、消費電力のピークを満たすように電力の供給を制御する。
【0019】
このため、FEMS制御部4は、定置蓄電池8の充放電を制御する定置蓄電池制御装置9を制御するとともに、電気自動車200内のバッテリ21の充放電を制御するバッテリ制御装置23を制御する。また、定置蓄電池8およびバッテリ21を充電する際はAC/DC変換し、これらを放電する際はDC/AC変換するインバータ10、定置蓄電池8およびバッテリ21を充電する際はDC/AC変換し、放電する際はAC/DC変換するインバータ11を制御するともに、太陽光発電システム6で発電された直流電力の電圧をDC/DC変換して昇圧する機能を有した発電制御装置7を制御する構成となっている。このような発電制御装置7を設けることで、インバータ10のDC/AC変換効率およびインバータ11のDC/AC変換効率を向上させることができる。なお、発電制御装置7は、太陽光発電システム6で発電された電力を監視し、太陽光発電システム6での発電量に関する情報をFEMS制御部4に与える機能も有している。
【0020】
また、FEMS制御部4は、通信装置12に接続され、通信装置12からアンテナ13を介して、外部のEV(電気自動車)走行支援システム300から、電気自動車200の現在位置情報や電池残量、渋滞情報を取得したり、電気自動車200内の通信装置25との間でアンテナ26を介して情報の授受を行う構成となっている。なお、FEMS制御部4は、マイクロコンピュータやDSP(Digital signal Processor)等のマイクロプロセッサで構成される。
【0021】
ここで、EV走行支援システム300は、電気自動車に、充電施設の情報や渋滞情報などを提供する情報サービスシステムであり、電気自動車の普及とともに整備されつつあるシステムである。本発明に係る電力マネジメントシステムは、これを有効に利用することで、電気自動車の現在位置の情報などを取得する。
【0022】
EV情報走行支援システム300は、インターネット等の広域通信網(図示せず)に接続され、電気自動車200は、EV情報走行支援300に広域通信網を介して接続された携帯電話機等の通信基地局(図示せず)と通信装置25を介して通信を行う通信機能を有しており、通信基地局および広域通信網を介してEV情報走行支援システム300との間で通信を行うことができる。
【0023】
電気自動車200は、GPS(Global Positioning System)衛星(図示せず)からの衛星電波に基づいて自車両の位置情報を取得するGPS機能を備えたナビゲーション装置24を有しており、取得した自車両の位置情報を通信装置25を介してEV情報走行支援システム300に送信することができる構成となっている。ここで、ナビゲーション装置はスマートフォンなどでも良く、GPS機能を備えたものであればなんでも良い。
【0024】
電気自動車200の、バッテリ21およびインバータ22にはバッテリ制御装置23が接続され、バッテリ制御装置23は工場内設備100のFEMS制御部4に接続される構成となっている。
【0025】
インバータ22は、バッテリ21を充電する際はAC/DC変換し、バッテリ21を放電する際はDC/AC変換を行う機能を備えている。
【0026】
バッテリ制御装置23は、バッテリ21のバッテリ状態を監視して、バッテリ状態(充電残量など)をFEMS制御部4に送信するとともに、FEMS制御部4からの制御に基づいて、バッテリ21を充放電するようにインバータ22およびバッテリ21を制御する。
【0027】
なお、バッテリ制御装置23は、バッテリ21の充電状態を管理する充電管理機構に含まれ、電気自動車では、当該機構は必須のものであり、バッテリ21の充電状態の情報は、図示されない電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)に与えられ、例えば、運転席のインストゥルメントパネルにおいて、燃料計の代わりに充電量を表示する際に使用される。
【0028】
また、電気自動車200のインバータ22と、工場内設備100のインバータ11との間で交流電力の授受を行う電力ラインPL1は、コネクタC1によって切り離し可能に構成され、また、電気自動車200のバッテリ制御装置23と、工場内設備100のFEMS制御部4との間で信号の授受を行う信号ラインSL1は、コネクタC2によって切り離し可能に構成されている。なお、上記では、バッテリ制御装置23とFEMS制御部4との間は、信号ラインSL1によって接続される構成を示したが、バッテリ制御装置23とFEMS制御部4とが、通信装置25および13を介して制御信号等の授受を行う構成であっても良い。なお、コネクタC1およびC2は1つのコネクタとして一体になった構成でも良い。
【0029】
以上説明した構成においては、系統電力1から供給された電力を電気自動車200のバッテリ21に充電する電力パス、電気自動車200のバッテリ21から工場内設備100の工場内負荷3に電力を供給する電力パス、太陽光発電システム6で発電された電力をバッテリ21、定置蓄電池8に充電する電力パス、および太陽光発電システム6で発電された電力を工場内負荷3に供給する電力パスが形成されるように、FEMS制御部4が各部の制御を行う。
【0030】
すなわち、インバータ10は、FEMS制御部4からの制御信号により、系統電力1から供給された電力を電気自動車200のバッテリ21および工場内設備100の定置蓄電池8に充電する際はAC/DC変換を行い、バッテリ21および定置蓄電池8から工場内設備100の工場内負荷3に電力を供給する際および太陽光発電システム6で発電された電力を工場内負荷3に供給する際はDC/AC変換を行う。また、太陽光発電システム6で発電された電力を電気自動車200のバッテリ21あるいは定置蓄電池8に充電する際は、系統電力1との接続を遮断する機能も有している。
【0031】
インバータ11は、FEMS制御部4からの制御信号により、系統電力1から供給された電力を電気自動車200のバッテリ21に充電する際および太陽光発電システム6で発電された電力をバッテリ21に充電する際はDC/AC変換を行い、バッテリ21から工場内設備100の工場内負荷3に電力を供給する際はAC/DC変換を行い、太陽光発電システム6で発電された電力および定置蓄電池8からの電力のみを、工場内負荷3に供給する際は電気自動車103との接続を遮断する機能も有している。
【0032】
<FEMS制御部の構成>
次に、図2に示すブロック図を用いて、FEMS制御部4の概略構成について説明する。図2に示すように、FEMS制御部4は、充放電計画部41および充放電制御部42を主たる構成として有している。
【0033】
充放電計画部41は、工場内負荷3を監視して得られた工場内負荷情報(主として工場内での使用電力の情報)、電気自動車200のバッテリ制御装置23を介して得られたバッテリ21の充電残量の情報や、通信装置12を介してEV情報走行支援システム300から得られた、電気自動車の現在位置情報、電池残量などのEV情報、定置蓄電池制御装置9を介して得られた定置蓄電池8の充電残量(電池の劣化度を考慮した値)の情報を含む定置蓄電池情報、発電制御装置7を介して得られた太陽光発電システム6での発電量に関する情報や、図示されない広域通信網を介して得られた1日の天候予測の情報などのPV(Photovoltaic)情報を受ける構成となっている。充放電計画部41は、これらの情報に基づいて、系統電力1の使用電力が、電力会社との契約で定めた契約電力を越える可能性がある場合には、越える前に、電気自動車200内のバッテリ21および工場内設備100内の定置蓄電池8から供給される電力を配電盤2を介して系統電力1に補填するように、バッテリ21および定置蓄電池8からの放電量を算出する。なお、太陽光発電システム6で発電される電力は、系統電力1を常時補填するようにしており、バッテリ21および定置蓄電池8からの放電量は、補填されている太陽光発電システム6で発電される電力を考慮して算出する。
【0034】
また、消費電力が契約電力を越える期間を過ぎ、系統電力1の使用電力が契約電力を下回る状態になると、系統電力1からバッテリ21および定置蓄電池8に充電を行うが、その充電量の算出を行う。
【0035】
充放電制御部42は、充放電計画部41で決定された充放電計画および算出された放電量の情報を受け、バッテリ21および定置蓄電池8からの放電の比率を決定して、それぞれバッテリ制御装置23および定置蓄電池制御装置9に放電指示を与える。また、充放電計画部41で算出された充電量の情報を受け、バッテリ21および定置蓄電池8への充電の比率を決定して、それぞれバッテリ制御装置23および定置蓄電池制御装置9に充電指示を与える。なお、充電に際しては、まず、バッテリ21への充電を優先して行い、定置蓄電池8への充電は、バッテリ21への充電後に行う。このようにバッテリ21への充電を優先することでEVでの走行に必要な残量を早期に確保し、スケジュールよりも早く出発する場合でも十分な走行距離が確保できる。
【0036】
<電力マネジメントの概要>
次に、図3を用いて本発明での電力マネジメントの概要をイメージ的に説明する。図3は、系統電力1から工場内設備100に供給される使用電力カーブSPおよび工場内負荷3で消費される消費電力カーブFPを示す図である。
【0037】
図3においては、横軸に時刻を、縦軸に電力(kW)を示している。図3に示すように、消費電力カーブFPは時刻8:00頃から増え始め、時刻14:00頃で消費電力ピーク値(PEAK)に達し、その後、時刻20:00頃にかけて消費電力が下がり、以後、定常状態となるガウス型の特性を有している。ここで、電力会社との契約電力をMAXとして表した場合、消費電力は時刻12:00頃にはMAXを越えてしまう。
【0038】
工場等の大電力需要施設の契約形態では、契約電力によって基本料金が設定されており、契約電力に比例して基本料金が高くなるので、契約電力は低く設定することが、経営的には望ましい。
【0039】
そこで、系統電力1から供給される使用電力が、図3の消費電力カーブFPのようになることを防止するために、予め、工場内設備100内の定置蓄電池8および電気自動車200のバッテリ21に電力を蓄えておき、系統電力1の使用電力がMAXを越える前に、定置蓄電池8およびバッテリ21からMAXを越える分の電力を補填するというのが本発明での電力マネジメントの概念である。
【0040】
すなわち、図3におけるMAXからPEAKまでの間の電力を定置蓄電池8およびバッテリ21から補填するものであり、定置蓄電池8およびバッテリ21への充電は、使用電力カーブSPが消費電力カーブFPを上回っている期間で行う。なお、定置蓄電池8およびバッテリ21への充電量は、使用電力カーブSPと消費電力カーブFPとの間で規定される領域の面積によってほぼ決まる。
【0041】
このような電力マネジメントを行うことで、契約電力を低く設定することができ、工場の運用コストを抑制することができる。例えば、電力会社で工場用に設定されている電力料金では、契約電力を1割下げると基本料金が1割程度安くなる。従って、契約電力が3000kWの場合、3kWで充放電可能な電気自動車を100台利用すれば、契約電力を1割下げることが可能となる。これに、定置蓄電池8を加えれば、さらに契約電力を下げることができる。
【0042】
図3において、使用電力カーブSPが消費電力カーブFPよりも幅広なのは、定置蓄電池8およびバッテリ21への充電を行うためであり、使用電力カーブSPの頂上が平坦なのは、MAXを越える前に定置蓄電池8およびバッテリ21からの放電が行われるためである。なお、本発明の電力マネジメントシステムを採用しない場合は、使用電力カーブSPは消費電力カーブFPと等しくなり、MAXを越えることとなる。
【0043】
<電力マネジメントの一例>
次に、図1〜図3を参照しつつ、図4に示すフローチャートを用いて、実施の形態に係る電力マネジメントシステムでの電力マネジメントの一例について説明する。
【0044】
電力マネジメントを開始すると、FEMS制御部4は、まず、電気自動車(EV)200が工場内の定位置に到着している状況を確認する(ステップS1)。ここで、電気自動車200は、例えば、当該工場に勤務する従業員が通勤に使用する自動車であり、工場内の定位置とは電気自動車200と工場内設備100とが、電力ラインPL1および信号ラインSL1を介して接続されるように設けられた接続設備を有する駐車スペースである。
【0045】
朝、従業員が出勤し、上記接続設備を有する駐車スペースに駐車して、電気自動車200と工場内設備100との間で電力ラインPL1および信号ラインSL1の接続を行うと、接続が行われたことを示す情報(どの従業員のEVであるかの情報も含む)がFEMS制御部4に与えられる。
【0046】
FEMS制御部4は、この情報に基づいて工場内の定位置に到着しているEVが、所定台数以上あるいは予定されている台数の所定の割合以上であるかを確認する。本例では、予定されている台数の90%以上が到着しているか否かを確認する。なお、工場の電力マネジメントシステムに参加するか否かは、従業員の選択に任されており、参加を表明した従業員のEVは、FEMS制御部4に登録されているので、FEMS制御部4は、電力マネジメントで利用できるEVの台数を把握することができる。
【0047】
なお、ステップS1において、到着しているEVが、予定されている台数の90%に満たない場合、FEMS制御部4は、通信装置12を介して、EV情報走行支援システム300から、到着していないEVの現在位置情報を取得し、出勤定時までに到着できないEVが存在するか否かの確認を行う(ステップS11)。例えば、広域通信網から取得したVICS(Vehicle Information and Communication System/登録商標)等の交通情報提供システムが提供する渋滞情報とEVの現在位置情報とを突き合わせることで、出勤定時には到着できないと判断したり、出勤定時の5分前になっても、該当EVが、従業員の自宅にあって、移動していない場合などは従業員が休みの可能性があり、その場合は、ステップS12において到着できないEVとしてカウントし、そのバッテリ21の充電容量は利用できないものとして充放電計画に算入する。
【0048】
一方、ステップS1において、到着しているEVが、予定されている台数の90%以上であることが確認された場合、FEMS制御部4は、到着しているEVのバッテリ制御装置23にアクセスして、バッテリ21の充電残量の情報を取得する。また、退社定時よりも早く退社するEVの台数を確認する(ステップS2)。この動作は、FEMS制御部4が、人事部門の勤怠管理システムにアクセスし、早退届が出ている従業員と、電力マネジメントシステムに参加している従業員との突き合わせを行うことで、電力マネジメントシステムに参加している従業員のうち、早退する予定の者の人数と早退時間を確認することで実行される。ここでは、90%で説明したが,数値は80%でもほかの数値でも良い。なお、本システムに繋がっているEVの台数を実際に確認するのではなく、予め、本システムに繋がらないEVもあり得るものと想定し、その台数を誤差として組み込むことで、本システムに繋がるEVの台数を算出しても良い。その場合はステップS1の処理は不要となる。
【0049】
本発明に係る電力マネジメントシステムでは、退社定時までに各EVのバッテリ21の充電状態を回復させることを基本としているので、早退する従業員のEVについては、それよりも早くバッテリ21の充電状態を回復させるものとして、当該EVの存在を充放電計画に算入する。
【0050】
次に、FEMS制御部4は、定置蓄電池制御装置9を介して得られた定置蓄電池8の充電残量を確認し、定置蓄電池8から供給される電力を充放電計画に算入する(ステップS3)。
【0051】
なお、蓄電池は充放電を繰り返すことで充電能力が劣化するので、定置蓄電池制御装置9では、その劣化度を考慮して充電残量を算出するように構成することで、正確な放電電力の情報を得ることができる。
【0052】
次に、FEMS制御部4は、太陽光発電システム6での1日の発電量を、広域通信網を介して得られた1日の天候予測の情報に基づいて予測し、太陽光発電より得られる電力を充放電計画に算入する(ステップS4)。
【0053】
次に、FEMS制御部4は、その日の工場内設備100での電力使用量を、これまでに蓄積した電力使用量のデータベースを用いて予測し、それに、EV情報、定置蓄電池情報、PV情報を算入して充放電計画を決定する(ステップS5)。
【0054】
すなわち、工場内設備100での電力使用量は、季節によっても変わり、また、生産計画によっても変わる。しかし、同じ季節、同じ生産計画であれば電力使用量にそれほどの差はないものと考え、過去の同じような条件の日に取得した電力使用量のデータがあれば、それを参考にして1日の電力使用量を見積もる。
【0055】
例えば、図3に示した消費電力カーブFPが、過去の同じような条件の日に得られていたとすれば、本日の工場内設備100での電力使用量もほぼ同じであると予測し、安全係数を掛けて、少し多めに見積もるなどして本日の消費電力カーブを決定する。これが得られれば、充放電量を算出することができる。充放電計画部41では、これに基づいて、充放電計画を決定することができる。
【0056】
また、過去に適当な電力使用量のデータがない場合や、工場を立ち上げた直後の場合は上記の方法は採れないので、現状の入力情報に基づいて充放電計画を決定することになる。この場合、充放電計画部41では、簡単なモデルパターンを準備し、それを工場内負荷情報、EV情報、定置蓄電池情報およびPV情報を用いて修正する方法や、遺伝的アルゴリズム(GA:Genetic Algorithm)や電算神経網(NN:Neural network)などの学習プログラムを用いて充放電計画を決定する方法や、最適制御の評価関数から充放電計画を決定する方法を採ることができる。なお、最適制御の評価関数としては、ラグランジュの未定乗数法でも、リッカチ方程式から求めても良い。
【0057】
遺伝的アルゴリズムとは、解の候補を遺伝子で表現した個体を複数用意し、適応度の高い個体を優先的に選択して、組み換えや突然変異などの操作を繰り返しながら解を探索する方法であり、進化して生き残った個体が最適解である可能性が高くなる。これにより、最適な充放電計画を立てることができる。
【0058】
電算神経網とは、脳神経系をモデルにした情報処理システムであり、例題を基に学習を繰り返すことで、プログラムを与えることなく処理を行わせることができるシステムであり、解法が分からない問題に対しても、試行錯誤により解を求めることができる。これを使えば、簡単な充放電計画のモデルパターンを与えることで、最適な充放電計画を立てることができる。
【0059】
ここで、図3を用いて、充放電計画の具体例を説明する。ステップS2およびステップS12により、その日に使用できるEVのバッテリ21の充電容量が把握できるとともに、充電残量も把握できるので、まず、フル充電状態にないバッテリ21に対して、工場内設備100での消費電力がMAXを越える(と予測される)時間までにフル充電状態となるように充電を行う。
【0060】
すなわち、出勤に使用されたEVのバッテリ21は、何れもフル充電状態にないと考えられるので、この作業を行うことでEVのバッテリ21を有効に利用することができるようになる。
【0061】
この作業によって、図3における、使用電力カーブSPと消費電力カーブFPとの間で規定される左側の領域R1が形成される。なお、図3では、領域R1は、時刻8:00以前でもバックグラウンド的に存在しているが、これは定置蓄電池8への充電を一晩かけて行うものとして表しているためであり、定置蓄電池8への充電を一晩かけずに行うのであれば、バックグラウンド的な領域R1はどこかで途切れることとなる。
【0062】
また、バッテリ21等の充電に要する電力は、発電量が十分であれば、太陽光発電システム6で得られた電力を用いることもできるが、以下においては系統電力1から供給するものとして説明する。
【0063】
ステップS3により定置蓄電池8の充電残量の情報は得られており、また、上記のように定置蓄電池8はフル充電状態となっているので、バッテリ21の充電電力と定置蓄電池8の充電電力を用いて、図3におけるMAXからPEAKまでの間の電力を補填する。
【0064】
このとき、バッテリ21と定置蓄電池8とで、同じように放電させるのではなく、また、余裕のある方を放電させるのでもなく、定置蓄電池8を優先的に放電させるというのが本発明に係る電力マネジメントシステムの特徴の1つである。
【0065】
すなわち、EVのバッテリ21は、従業員が退社するまでに再び充電しておく必要があり、完全に放電させてしまうと、退社時刻までに十分な充電ができない可能性がある。一方、定置蓄電池8は、契約電力を越える時間帯が過ぎれば、次の日までは使う必要がないので、完全に放電させても問題はない。
【0066】
そこで、バッテリ21と定置蓄電池8の両方から電力の供給が必要な場合、まず、定置蓄電池8の方を先に放電させ、足りない分をバッテリ21で補うように放電を制御する。これにより、最適な電力マネジメントが可能となる。
【0067】
例えば、充放電計画部41が80kWの放電が必要と算出した場合、バッテリ21、定置蓄電池8ともに50kWの放電が可能である場合でも、バッテリ21、定置蓄電池8ともに40kWずつ放電させることはせず、まず定置蓄電池8からフルに50kW放電させ、残りの30kWをバッテリ21から放電させるように充放電制御部42で制御する。
【0068】
また、定置蓄電池8の放電比率が高くなるように、放電比率を決めておいても良い。例えば、定置蓄電池8は90%、バッテリ21は70%の放電比率とした場合、80kWの放電が必要な場合、定置蓄電池8から45kW放電させ、バッテリ21から35kW放電させるようにしても良い。この場合も、最適な電力マネジメントが可能となる。
【0069】
この場合、EVは従業員の退社時刻までに、帰宅に必要な電力量が充電されていれば良いので、退社時刻に間に合うのであればバッテリ21の放電比率を上げることも可能である。
【0070】
また、バッテリ21、定置蓄電池8ともに必要電力に対して十分な充電容量を有しているのであれば、必要電力に対する放電比率を一律に決めても良い。例えば、必要電力の6割を定置蓄電池8が供給し、4割をバッテリ21が供給するようにしても良い。
【0071】
ただし、契約電力を越える時間帯で必要な放電電力を、定置蓄電池8だけで賄える場合は、バッテリ21からの電力供給は行わず、定置蓄電池8のみから行っても良い。また、契約電力を越える時間帯で必要な放電電力を、バッテリ21だけで賄える場合であって、何らかの理由で定置蓄電池8が使えない場合は、バッテリ21のみから電力供給を行っても良い。この場合も、バッテリ21は完全に放電させることはせず、従業員の退社時刻までに、帰宅に必要な電力量が充電される程度に放電量を制御する。
【0072】
再び、図3に戻り、時刻14:00頃でPEAKに達した消費電力が、MAXを下回る時刻16:00頃には、バッテリ21に対する充電を開始する。この作業によって、図3における、使用電力カーブSPと消費電力カーブFPとの間で規定される右側の領域R2が形成される。
【0073】
この作業は、従業員の退社時刻までに所定の電力量が充電されるように実行されるが、ステップS2で確認した、退社定時よりも早く退社する従業員のEVのバッテリ21を優先的に充電するものとする。なお、バッテリ21への充電には、急速充電器を用いた大電流での急速充電を行うことで、短時間での充電が可能となる。
【0074】
また、充電される所定の電力量は、基本的には、従業員が出勤して来た時点での充電残量(ステップS2で確認済み)に達するまでの電力量とすれば良いが、本発明に係る電力マネジメントシステムへの参加に対する対価として、フル充電状態となるまでの電力量としても良い。
【0075】
EVのバッテリ21への充電が終わった後は、定置蓄電池8への充電を開始する。定置蓄電池8への充電は、一晩かけて行うことが可能なので、急速充電ではなく低電流での長時間充電を行っても良い。
【0076】
以上説明したような充放電計画に基づいて、FEMS制御部4はバッテリ21および定置蓄電池8の充放電を行う。
【0077】
ここで、図4の説明に戻る。充放電計画部41は、算出した放電量の情報および決定した充放電計画を充放電制御部42に指示する(ステップS6)。充放電制御部42では、充放電計画および放電量の情報に基づいて、まず、バッテリ21への充電を開始する(ステップS7)。これが、先に説明した、EVのバッテリ21をフル充電状態にする作業である。
【0078】
充放電制御部42は、工場内負荷3での使用電力の情報を受けているので、その情報に基づいて、使用電力が契約電力を越えそうかどうかを判断する(ステップS8)。この判断は、例えば、充放電計画部41で予測した消費電力カーブと、実際の消費電力とを突き合わせ、実際の消費電力が予測した消費電力カーブに沿って上昇しているのであれば、契約電力を越える可能性があると判断することができる。また、予測した消費電力カーブよりも急峻に上昇している場合も契約電力を越える可能性があると判断することができる。
【0079】
ステップS8において、消費電力が契約電力(MAX)を越える可能性があると判断された場合は、充放電制御部42はMAXを越える前に、バッテリ制御装置23および定置蓄電池制御装置9をそれぞれ制御して、バッテリ21および定置蓄電池8の放電を開始させる(ステップS9)。
【0080】
このとき、先に説明してように、充放電制御部42は、定置蓄電池8の放電比率を高めるように放電を制御する。
【0081】
消費電力がMAXを越える期間を過ぎたことを充放電制御部42が確認すると、充放電制御部42は、バッテリ21および定置蓄電池8の放電を止め、まず、バッテリ21に対して系統電力1から充電を行い、バッテリ21に対する充電が終わった後は、定置蓄電池8への充電を開始し(ステップS10)、充電が終わることでその日の電力マネジメントを終了する。
【0082】
なお、ステップS8において、消費電力がMAXを越える可能性がないと判断された場合は、ステップS9およびS10の充放電は行わず、その日の電力マネジメントを終了する。
【0083】
<電力マネジメントの変形例>
以上説明した電力マネジメントでは、FEMS制御部4の充放電計画部41が、その日の工場内設備100での電力使用量を、これまでに蓄積した電力使用量のデータベースを用いて予測し、それに、EV情報、定置蓄電池情報、PV情報を算入して充放電計画を決定する構成について説明したが、電力使用量のデータベースに基づいて、充放電計画をマップで構成することも可能であり、それに基づいて充放電計画を実行させる構成としても良い。
【0084】
この方法であれば、充放電の指示が簡略化され、電力マネジメントを簡略化できる。また、複雑な電力マネジメントを要する場合であっても対応が容易となる。
【0085】
図5には、充放電計画をマップに基づいて実行するFEMS制御部4の概略構成を説明するブロック図である。
【0086】
図5に示すFEMS制御部4は、マップ作成部43およびマップ実行部44を主たる構成として有している。
【0087】
マップ作成部43は、図2に示した充放電計画部41と同様に、工場内負荷情報、EV情報、定置蓄電池情報およびPV情報を受ける構成となっている。マップ作成部43は、これらの情報に基づいて、当日の条件に適した充放電計画マップを作成する。
【0088】
なお、充放電計画マップを用いる方法でも、電力マネジメントの概要は先に説明したものと同じである。
【0089】
次に、図1、図3および図5を参照しつつ、図6に示すフローチャートを用いて、充放電計画マップを用いた電力マネジメントについて説明する。
【0090】
図6に示すように、電力マネジメントを開始すると、FEMS制御部4は、まず、電気自動車(EV)200が工場内の定位置に到着している状況を確認する(ステップS21)。本例では、予定されている台数の90%以上が到着しているか否かを確認する。これは、図4に示したステップS1での動作と同じである。
【0091】
ステップS21において、到着しているEVが、予定されている台数の90%に満たない場合、FEMS制御部4は、通信装置12を介して、EV情報走行支援システム300から、到着していないEVの現在位置情報を取得し、出勤定時までに到着できないEVが存在するか否かの確認を行う(ステップS28)。これは、図4に示したステップS11での動作と同じである。
【0092】
そして、例えば、出勤定時の5分前になっても、該当EVが、従業員の自宅にあって、移動していない場合などは従業員が休みの可能性があり、その場合は、ステップS29において到着できないEVとしてカウントし、そのバッテリ21の充電容量は利用できないものとしてマップ作成に適用する。
【0093】
一方、ステップS21において、到着しているEVが、予定されている台数の90%以上であることが確認された場合、FEMS制御部4は、到着しているEVのバッテリ制御装置23にアクセスして、バッテリ21の充電残量の情報を取得する。また、退社定時よりも早く退社するEVの台数を確認する(ステップS22)。これは、図4に示したステップS2での動作と同じである。早退する従業員のEVについては、退社定時よりも早くバッテリ21の充電状態を回復させるものとして、当該EVの存在をマップ作成に適用する。
【0094】
次に、FEMS制御部4は、定置蓄電池制御装置9を介して得られた定置蓄電池8の充電残量を確認し、定置蓄電池8から供給される電力をマップ作成に適用する(ステップS23)。
【0095】
次に、FEMS制御部4は、太陽光発電システム6での1日の発電量を、広域通信網を介して得られた1日の天候予測の情報に基づいて予測し、太陽光発電より得られる電力をマップ作成に適用する(ステップS24)。
【0096】
次に、FEMS制御部4は、その日の工場内設備100での電力使用量を、これまでに蓄積した電力使用量のデータベースを用いて予測し、それに、EV情報、定置蓄電池情報、PV情報を適用して充放電計画マップを作成する(ステップS25)。
【0097】
すなわち、工場内設備100での電力使用量は、季節によっても変わり、また、生産計画によっても変わる。しかし、同じ季節、同じ生産計画であれば電力使用量にそれほどの差はないものと考え、過去の同じような条件の日に取得した電力使用量のデータがあれば、それを参考にして1日の電力使用量を見積もる。これが得られれば、充放電量を算出することができ、マップ作成部43では、これに基づいて、充放電計画マップを作成する。
【0098】
すなわち、過去の電力使用量のデータがあれば、1日の電力使用の状態を把握でき、消費電力がMAX(契約電力)を越える期間から充放電量を算出することができる。充放電量が決まれば、定置蓄電池8からの放電を優先させるなどの条件に従って、バッテリ21および定置蓄電池8からの放電電力を決定し、また、MAXを越え始める時刻、消費電力ピーク値(PEAK)に達する時刻およびMAXを下回り始める時刻に基づいて、放電開始のタイミングおよび放電終了のタイミングを決定して、充放電計画マップを作成することができる。
【0099】
なお、過去に適当な電力使用量のデータがない場合や、工場を立ち上げた直後の場合は上記の方法は採れないので、現状の入力情報に基づいてマップを作成することになる。この場合、マップ作成部43では、簡単なモデルパターンを準備し、それを工場内負荷情報、EV情報、定置蓄電池情報およびPV情報を用いて修正する方法や、遺伝的アルゴリズム(GA)や電算神経網(NN)などの学習プログラムを用いて充放電計画を決定する方法や、最適制御の評価関数から充放電計画を決定する方法を採ることができる。
【0100】
ここで、図7および図8を用いて充放電計画マップの具体例を説明する。図7は、EVのバッテリ21に対する充放電計画マップであり、図8は、定置蓄電池8に対する充放電計画マップである。図7および図8においては、横軸に時刻を、縦軸に充電残量(kWh)を示している。
【0101】
まず、ステップS22およびステップS29により、その日に使用できるEVのバッテリ21の充電容量が把握できるとともに、充電残量も把握できるので、まず、フル充電状態にないバッテリ21に対して、工場内設備100での消費電力がMAXを越える(と予測される)時間までにフル充電状態(FULL)となるように充電を行う。これは、図6において、時刻8:30〜時刻10:00の充電期間として示されている。フル充電状態になった後は、充電を停止し、フル充電状態を維持する。
【0102】
図3に示した消費電力カーブFPが、予測される消費電力カーブに相当するとした場合、消費電力は時刻12:00頃にはMAXを越える予測となる。そこで、図7に示すように時刻12:00〜時刻16:00を放電期間とする。この場合、先に説明したように、バッテリ21は、完全には放電しないように制御するので、時刻16:00の時点でも充電残量がある。その後は、退社定時である時刻17:00までが充電期間となっている。
【0103】
なお、図7の例では、充電される電力量は、従業員が出勤して来た時点での充電残量(ステップS22で確認済み)に達するまでの電力量となっている。
【0104】
これに対し、図8に示す定置蓄電池8に対する充放電計画マップでは、一晩をかけて充電された定置蓄電池8は、消費電力がMAXを越えると予測される時刻12:00に達すると放電を開始し、そのまま、充電残量が無くなるまで放電を続ける。その後、時刻20:00頃から充電を開始し、一晩をかけて充電を行う。
【0105】
以上説明したような充放電計画マップに基づいて、FEMS制御部4はバッテリ21および定置蓄電池8の充放電を行う。
【0106】
ここで、図6の説明に戻る。マップ作成部43は、作成した充放電計画マップをマップ実行部44に指示する(ステップS26)。
【0107】
マップ実行部44では、指示された充放電計画マップに基づいて充放電を実行する。マップ実行部44は、充放電計画マップに従って、バッテリ制御装置23および定置蓄電池制御装置9に時系列に充放電を指示する制御を行えば良いので、図2に示した充放電制御部42のように、複雑な制御をする必要がなく、構成が簡略化される。
【0108】
充放電計画マップに基づく充放電が実行されると、その日の電力マネジメントを終了する。
【0109】
以上説明したような充放電計画マップを用いる場合、マップは過去の電力使用量のデータベースに基づいて作成できるので、予め準備できるというメリットもあるが、当日に天候が急変したり、EVが予定台数集まらないという状況もありうる。そのような場合には、準備したマップを、当日の状況に合わせてリアルタイムで修正できるように構成しておけば、電力使用量の過去のデータを取得した際の条件と現在の条件とが異なる場合でも最適なマネジメントを維持できる。
【0110】
マップ作成部43には、工場内負荷情報、名EV情報、定置蓄電池情報およびPV情報が入力されるので、それらを用いて、予め準備したマップを修正することは可能であり、当日にマップを作成するのであれば、過去の電力使用量のデータに係数を掛けて修正し、それを本日の消費電力カーブとして充放電量を算出することができ、充放電計画マップを作成することができる。
【符号の説明】
【0111】
3 工場内負荷、4 FEMS制御部、8 定置蓄電池、9 定置蓄電池制御装置、21バッテリ、100 工場内設備、200 電気自動車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場内設備の工場内負荷での消費電力が最大となる期間に、前記工場内設備に接続された電気自動車の走行の駆動源となるバッテリおよび前記工場内設備内の定置蓄電池の少なくとも一方を放電させ、その電力を系統電力に補填することで、系統電力の使用電力が所定電力を越えないようにする電力マネジメントシステムであって、
前記工場内設備は、
前記バッテリの充放電を制御するとともに、前記消費電力が前記所定電力を越える可能性がある場合には、前記所定電力を越える前に、前記バッテリおよび前記定置蓄電池の少なくとも一方から供給される電力を前記系統電力に補填し、
前記消費電力が前記所定電力を越える期間の経過後に、前記バッテリおよび前記定置蓄電池のうち、放電させた方に充電を行うシステム制御部を備える、電力マネジメントシステム。
【請求項2】
前記システム制御部は、
前記バッテリおよび前記定置蓄電池の両方から電力を前記系統電力に補填する場合には、前記定置蓄電池を優先的に放電させ、
前記バッテリおよび前記定置蓄電池に充電する際には、前記バッテリを優先的に充電する、請求項1記載の電力マネジメントシステム。
【請求項3】
前記システム制御部は、
前記バッテリおよび前記定置蓄電池の両方から電力を前記系統電力に補填する場合には、前記定置蓄電池の放電比率が高くなるように前記バッテリと前記定置蓄電池の放電比率を設定し、
前記バッテリおよび前記定置蓄電池に充電する際には、前記バッテリを優先的に充電する、請求項1記載の電力マネジメントシステム。
【請求項4】
前記システム制御部は、
前記定置蓄電池の充放電を制御する定置蓄電池制御装置を介して得られた前記定置蓄電池の充電残量を確認して、前記定置蓄電池から供給される電力を算出し、
前記定置蓄電池制御装置は、
前記定置蓄電池の劣化度を算入して前記充電残量を算出する、請求項1記載の電力マネジメントシステム。
【請求項5】
前記システム制御部は、
前記バッテリおよび前記定置蓄電池に対する充放電の指示を、充放電の動作を時系列に規定したマップに基づいて行う、請求項1記載の電力マネジメントシステム。
【請求項6】
前記システム制御部は、
前記工場内負荷における電力使用量の過去のデータに基づいて前記マップを作成し、前記電力使用量の過去のデータを取得した際の条件と現在の条件とが異なる場合には、前記現在の条件に基づいて前記マップを修正する、請求項5記載の電力マネジメントシステム。
【請求項7】
前記システム制御部は、
前記バッテリを放電させる前に、前記バッテリをフル充電状態にまで充電する、請求項1記載の電力マネジメントシステム。
【請求項8】
前記所定電力は、
電力会社との契約電力である、請求項1記載の電力マネジメントシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−196028(P2012−196028A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57334(P2011−57334)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】