説明

電力供給システム

【課題】システム構成を簡便としつつ、優先して暖機すべき蓄電装置又は発電装置を早期に暖機する電力供給システムを提供する。
【解決手段】電力を充放電可能なバッテリ41と、バッテリ41に電力を充電可能な燃料電池スタック10と、バッテリ41の温度を検出する温度センサ42と、燃料電池スタック10の温度を検出する温度センサ14と、バッテリ41の充放電及び燃料電池スタック10の発電を制御するECU60と、システムを起動する場合にONされるIG51と、を備え、ECU60は、IG51のON信号を検知してシステムを起動させる際、IG51のON時におけるバッテリ41の温度及び燃料電池スタック10の温度に基づいて、バッテリ41及び燃料電池スタック10の一方を他方に優先して暖機するべきか判定し、優先して暖機するべき一方を暖機する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の負荷(モータ、コンプレッサ等)に電力を供給する電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、燃料電池車、ハイブリッド車等の開発が進められている。この燃料電池車は、燃料電池(発電装置)とバッテリ(蓄電装置)とを備えており、また、ハイブリッド車は、発電装置とバッテリとを備えている。なお、ハイブリッド車の発電装置は、燃料を燃焼することで駆動するエンジン(内燃機関)と、エンジンの駆動力により作動する発電機とを備えている。
【0003】
ここで、燃料電池は、その種類に対応して最適に発電可能な温度(最適発電温度)を有しており、例えば、固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell)の最適発電温度は、80〜90℃である。
また、バッテリも、その種類(リチウムイオン型、ニッケル水素型等)に対応して、最適に充放電可能な温度(最適充放電温度)を有している。さらに、エンジンも、最適に駆動可能な温度(最適駆動温度)を有している。
【0004】
したがって、燃料電池車、ハイブリッド車等を始動させる場合、特に0℃以下等の低温環境下で始動させる場合、燃料電池、バッテリ、エンジン等をその最適温度まで短時間で暖める、つまり、暖機することが重要である。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1には、燃料電池及びバッテリを備える燃料電池システムにおいて、バッテリを電源とする燃料電池用のヒータ及びバッテリ用のヒータを備え、これらのヒータによって燃料電池、バッテリを暖める、つまり、暖機する技術が提案されている。
また、特許文献2には、燃料電池、バッテリ及び出力を消費する補機(コンプレッサ等)を備える燃料電池システムにおいて、燃料電池を発電させることで燃料電池を暖機し、バッテリを放電させることでバッテリを暖機する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−311218号公報
【特許文献2】特開2004−281219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、燃料電池用のヒータと、バッテリ用のヒータとを備えるので、システム構成が複雑となるうえ、部品点数が多くなり、また、ヒータで電力(エネルギ)が消費されてしまう。
また、特許文献2では、燃料電池及びバッテリは暖機されるが、暖機に要する時間をできるだけ短縮させるためには、更なる技術改良が望まれる。
【0008】
そこで、本発明は、システム構成を簡便としつつ、優先して暖機すべき蓄電装置又は発電装置を早期に暖機する電力供給システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、電力を充放電可能な蓄電装置と、前記蓄電装置に電力を充電可能な発電装置と、前記蓄電装置の温度を検出する第1温度センサと、前記発電装置の温度を検出する第2温度センサと、前記蓄電装置の充放電及び前記発電装置の発電を制御する制御手段と、システムを起動する場合にONされる起動スイッチと、を備え、前記制御手段は、前記起動スイッチのON信号を検知してシステムを起動させる際、前記起動スイッチのON時における前記蓄電装置の温度及び前記発電装置の温度に基づいて、前記蓄電装置及び前記発電装置のいずれか一方を他方に優先して暖機するべきか判定し、優先して暖機するべき前記一方を暖機することを特徴とする電力供給システムである。
【0010】
このような電力供給システムによれば、システムを起動させる際、制御手段が、起動スイッチのON時における蓄電装置の温度及び発電装置の温度に基づいて、蓄電装置及び発電装置のいずれか一方を他方に優先して暖機するべきか判定し、この判定結果に従って、優先して暖機するべき一方を暖機する。これにより優先して暖機するべき蓄電装置又は発電装置を、早期に暖機できる。
【0011】
ここで、蓄電装置については、その充放電が制御されることにより、例えば、充電電力又は放電電力を大きくすることにより、暖機が進む。また、発電装置については、その発電が制御されることにより、例えば、その発電電力を大きくすることにより、暖機が進む。
つまり、電気ヒータ等の専用の加熱手段を備えないので、システム構成は簡便となる。よって、燃料電池車、ハイブリッド車等の移動体にも容易に搭載可能となる。
【0012】
また、前記電力供給システムにおいて、前記制御手段は、優先して暖機するべき前記一方の暖機完了後、前記他方の暖機が完了していない場合、当該他方を暖機することが好ましい。
【0013】
このような電力供給システムによれば、優先して暖機した前記一方の暖機完了後、前記他方の暖機が完了していない場合、当該他方を暖機できる。すなわち、蓄電装置及び発電装置の両方の暖機を完了できる。
【0014】
また、前記電力供給システムにおいて、前記制御手段は、ON時における前記蓄電装置の温度が所定蓄電装置温度以下である場合、前記蓄電装置を優先して暖機すると判定することが好ましい。
【0015】
このような電力供給システムによれば、制御手段が、ON時に所定蓄電装置温度以下である蓄電装置を優先して暖機すると判定するので、蓄電装置及び発電装置のどちらを優先して暖機するか適切に判定できる。
【0016】
また、前記電力供給システムにおいて、前記制御手段は、ON時の温度における前記蓄電装置の出力回復速度と、ON時の温度における前記発電装置の出力回復速度とを比較し、前記蓄電装置及び前記発電装置のうち出力回復速度の大きい方を、優先して暖機すると判定することが好ましい。
【0017】
このような電力供給システムによれば、前記制御手段が、ON時の温度における、蓄電装置及び発電装置の各出力回復速度どうしを比較し、出力回復速度の大きい方を、優先して暖機すると判定するので、蓄電装置及び発電装置のどちらを優先して暖機するか適切に判定できる。
【0018】
また、前記電力供給システムにおいて、前記制御手段は、ON時の温度における前記蓄電装置の最大出力と、通常時における前記蓄電装置の最大出力との第1差と、ON時の温度における前記蓄電装置の最大出力と、通常時における前記蓄電装置の最大出力との第2差と、を比較し、前記第1差と前記第2差のうち差が大きい方を優先して暖機すると判定することが好ましい。
【0019】
このような電力供給システムによれば、前記制御手段は、前記第1差と前記第2差のうち、差が大きい方を優先して、すなわち、回復しろの大きいほうを優先して暖機すると判定するので、蓄電装置及び発電装置のどちらを優先して暖機するか適切に判定できる。
【0020】
前記電力供給システムにおいて、前記制御手段は、前記蓄電装置を暖機する場合、通常時に対して、充電電力又は放電電力を大きくすることが好ましい。
【0021】
このような電力供給システムによれば、蓄電装置を暖機する場合、制御手段が、通常時(非暖機時)よりも、充電電力又は放電電力を大きくするので、蓄電装置を早期に暖機できる。
【0022】
前記電力供給システムにおいて、前記制御手段は、前記発電装置を暖機する場合、通常時に対して、出力を大きくすることが好ましい。
【0023】
このような電力供給システムによれば、発電装置を暖機する場合、制御手段が、通常時よりも、出力(後記する実施形態では、燃料電池又は発電機の発電電力、エンジンの出力)を大きくするので、発電装置を早期に暖機できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、システム構成を簡便としつつ、優先して暖機すべき蓄電装置又は発電装置を早期に暖機する電力供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1実施形態に係る燃料電池システムの構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る燃料電池システムの動作を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態に係る暖機優先判断処理を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態に係る燃料電池システムの一動作例を示すタイムチャートである。
【図5】第1実施形態に係る燃料電池システムの一動作例を示すタイムチャートである。
【図6】第2実施形態に係る暖機優先判断処理を示すフローチャートである。
【図7】バッテリ及び燃料電池の温度と出力回復速度との関係を示すマップである。
【図8】第3実施形態に係る暖機優先判断処理を示すフローチャートである。
【図9】バッテリ及び燃料電池の温度と最大出力との関係を示すマップである。
【図10】第4実施形態に係るハイブリッドシステムの構成を示す図である。
【図11】バッテリ及び発電機(エンジン)の温度と出力回復速度との関係を示すマップである。
【図12】バッテリ及び発電機(エンジン)の温度と最大出力との関係を示すマップである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
≪第1実施形態≫
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
【0027】
≪燃料電池システムの構成≫
図1に示す第1実施形態に係る燃料電池システム1(電力供給システム)は、図示しない燃料電池車(移動体)に搭載されている。燃料電池システム1は、燃料電池スタック10(発電装置)と、燃料電池スタック10のアノードに対して水素(燃料ガス、反応ガス)を給排するアノード系と、燃料電池スタック10のカソードに対して酸素を含む空気(酸化剤ガス、反応ガス)を給排するカソード系と、燃料電池スタック10の電力を消費する電力消費系と、これらを電子制御するECU60(Electronic Control Unit、電子制御装置)と、を備えている。
【0028】
<燃料電池スタック>
燃料電池スタック10は、複数(例えば200〜400枚)の固体高分子型の単セルが積層して構成されたスタックであり、複数の単セルは直列で接続されている。単セルは、MEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極接合体)と、これを挟む2枚の導電性を有するセパレータと、を備えている。MEAは、1価の陽イオン交換膜等からなる電解質膜(固体高分子膜)と、これを挟むアノード及びカソード(電極)とを備えている。
【0029】
アノード及びカソードは、カーボンペーパ等の導電性を有する多孔質体と、これに担持され、アノード及びカソードにおける電極反応を生じさせるための触媒(Pt、Ru等)と、を含んでいる。
各セパレータには、各MEAの全面に水素又は空気を供給するための溝や、全ての単セルに水素又は空気を給排するための貫通孔が形成されており、これら溝及び貫通孔がアノード流路11(燃料ガス流路)、カソード流路12(酸化剤ガス流路)として機能している。
【0030】
そして、アノード流路11を介して各アノードに水素が供給されると、式(1)の電極反応が起こり、カソード流路12を介して各カソードに空気が供給されると、式(2)の電極反応が起こり、各単セルで電位差(OCV(Open Circuit Voltage)、開回路電圧)が発生するようになっている。次いで、燃料電池スタック10と後記するモータ44等の外部負荷とが電気的に接続され、電流が取り出されると、燃料電池スタック10が発電するようになっている。
2H→4H+4e …(1)
+4H+4e→2HO …(2)
【0031】
また、各セパレータには、単セルを適宜に冷却するために冷媒が通流する溝や貫通孔が形成されており、これら溝及び貫通孔が、燃料電池スタック10の冷媒流路13として機能している。
【0032】
そして、冷媒流路13の入口には、配管13aが接続されており、ラジエータ(図示しない)からの冷媒が、配管13aを通って、冷媒流路13に流入するようになっている。一方、冷媒流路13の出口には、配管13bが接続されており、冷媒流路13からの冷媒が、配管13bを通って、ラジエータに向かうようになっている。すなわち、冷媒が、冷媒流路13とラジエータとの間で循環するように構成されている。因みに、冷媒が循環する循環回路には、冷媒を圧送する冷媒ポンプ(図示しない)が設けられている。
【0033】
また、配管13bには、温度センサ14(第2温度センサ)が取り付けられている。そして、温度センサ14は、冷媒流路13から排出された冷媒の温度を、燃料電池スタック10の温度として検出し、ECU60に出力するようになっている。
ただし、燃料電池スタック10の温度を検出する温度センサ14の位置は、これに限定されず、例えば、配管23b、配管32aに取り付けてもよいし、また、燃料電池スタック10内に設ける構成でもよい。
【0034】
<アノード系>
アノード系は、水素タンク21と、常閉型の遮断弁22と、エゼクタ23と、常閉型のパージ弁24とを備えている。
水素タンク21は、配管21a、遮断弁22、配管22a、エゼクタ23、配管23aを介して、アノード流路11の入口に接続されている。そして、ECU60からの指令に従って遮断弁22が開かれると、水素が、水素タンク21から遮断弁22等を通って、アノード流路11に供給されるようになっている。なお、配管22aには、水素を所定圧力に減圧する減圧弁(図示しない)が設けられている。
【0035】
アノード流路11の出口は、配管23bを介して、エゼクタ23の吸気口に接続されている。そして、アノード流路11から排出された未消費の水素を含むアノードオフガス(燃料オフガス)は、配管23bを通って、エゼクタ23に戻された後、アノード流路11に再供給されるようになっている。つまり、配管23bは、水素を循環させる水素循環ラインを構成している。
【0036】
配管23bの途中は、配管24a、パージ弁24、配管24bを介して、希釈器33に接続されている。
パージ弁24は、燃料電池スタック10の発電中(システム作動中)において、循環するアノードオフガスに含まれる不純物(水蒸気、窒素等)を排出(パージ)する場合、ECU60によって開かれる。
なお、ECU60は、例えば、燃料電池スタック10を構成する単セルの電圧(セル電圧)が所定セル電圧以下となった場合、不純物を排出する必要があると判定し、パージ弁24を開く設定となっている。セル電圧は、例えば、単セルの電圧を検出する電圧センサ(セル電圧モニタ)を介して検出される。
【0037】
<カソード系>
カソード系は、コンプレッサ31と、背圧弁32と、希釈器33とを備えている。
コンプレッサ31は、配管31aを介して、カソード流路12の入口に接続されている。そして、コンプレッサ31は、ECU60の指令に従って作動すると、酸素を含む空気を取り込み、配管31aを介して、カソード流路12に供給するようになっている。
【0038】
なお、配管31aと配管32aとを跨ぐように加湿器(図示しない)が設けられている。この加湿器は、水分透過性を有する中空糸膜を複数本内蔵し、この中空糸膜を介して、カソード流路12に向かう空気と、カソード流路12から排出された多湿のカソードオフガスとの間で水分交換させ、カソード流路12に向かう空気を加湿するものである。
【0039】
カソード流路12の出口は、配管32a、背圧弁32、配管32bを介して、希釈器33に接続されている。そして、カソード流路12から排出されたカソードオフガスは、配管32a等を通って希釈器33に導かれるようになっている。
背圧弁32は、例えばバタフライ弁から構成され、その開度がECU60によって制御されることで、カソード流路12における空気の圧力を制御するものである。
【0040】
希釈器33は、パージ弁24からのアノードオフガスと、配管32bからのカソードオフガス(希釈用ガス)とを混合し、アノードオフガス中の水素を、カソードオフガスで希釈する容器であり、その内部に希釈空間を備えている。そして、希釈後のガスは、配管33aを通って車外に排出されるようになっている。
【0041】
<電力消費系>
電力消費系は、バッテリ41(蓄電装置)と、温度センサ42(第1温度センサ)と、電力制御器43と、モータ44とを備えている。そして、バッテリ41は、電力制御器43を介して、燃料電池スタック10の出力端子に接続されており、モータ44はPDU45(Power Drive Unit)を介して電力制御器43に接続されている。つまり、バッテリ41及びモータ44は、燃料電池スタック10に対して、並列で接続されている。
【0042】
バッテリ41は、燃料電池スタック10の発電電力及び/又はモータ44からの回生電力を充電すると共に、その内部の電力を放電する蓄電装置である。このようなバッテリ41は、リチウムイオン型、ニッケル水素型等の複数の単電池が直列で組み付けられて構成される組電池で構成される。
また、バッテリ41は、高圧・高温の空気等が供給される燃料電池スタック10に対して暖まり難い、つまり、昇温し難い状況に置かれている。
【0043】
温度センサ42は、バッテリ41の温度を検出するセンサであり、例えば、前記複数の単電池を収容するバッテリケース内に取り付けられている。そして、温度センサ42は、バッテリ41の温度を検出し、ECU60に出力するようになっている。
【0044】
電力制御器43は、ECU60からの指令に従って、燃料電池スタック10の発電を制御する発電制御機能と、バッテリ41の充放電を制御する充放電制御機能と、を備えている。すなわち、電力制御器43は、アクセル開度に対応した電力をPDU45(モータ44)に供給するために、電力供給源である燃料電池スタック10及びバッテリ41に対して供給割合(発電電力、放電・充電電力)を制御する機能を備えている。
なお、このような電力制御器43は、昇降圧機能を有するDC/DCコンバータや、DC/DCチョッパ等を備えて構成されている。
【0045】
モータ44は、電力によって、燃料電池車を走行させる駆動力を発生させるものである。また、モータ44は、燃料電池車の減速時には、回生電力を発生し、PDU45を介して、電力制御器43に供給するようになっている。
【0046】
PDU45は、ECU60からの指令に従って、電力制御器43からの直流電力を三相交流電力に変換し、モータ44に出力するインバータである。また、PDU45は、燃料電池車の減速時には、モータ44からの回生電力を直流電力に変換し、電力制御器43に出力するようになっている。
【0047】
また、バッテリ41と電力制御器43との間には、出力検出器46が設けられている。そして、出力検出器46は、バッテリ41の出力(電圧値、電流値)を検出し、ECU60に出力するようになっている。これにより、ECU60は、電圧値及び電流値に基づいて、バッテリ41の出力回復速度(kW/min)、SOC(State Of Charge、充電状態)を算出可能となる。
【0048】
さらに、燃料電池スタック10と電力制御器43との間には、出力検出器47が設けられている。そして、出力検出器47は、燃料電池スタック10の出力(電圧値、電流値)を検出し、ECU60に出力するようになっている。これにより、ECU60は、燃料電池スタック10の出力回復速度(kW/min)、発電性能(IV性能)を算出可能となる。
【0049】
さらにまた、コンプレッサ31、冷媒を圧送する冷媒ポンプ等の補機48が、電力制御器43に接続されている。そして、電力制御器43からの電力が、補機48に供給されるようになっている。
【0050】
<その他機器>
IG51は、燃料電池システム1(燃料電池車)の起動スイッチであり、運転席周りに配置されている。そして、IG51は、運転者によりON/OFF操作されると、そのON/OFF信号をECU60に出力するようになっている。
【0051】
アクセル52は、運転者が燃料電池車を走行させるために踏み込むペダルであり、運転席の足元に配置されている。そして、アクセル52は、アクセル開度(踏み込み量)をECU60に出力するようになっている。
【0052】
<ECU>
ECU60は、燃料電池システム1を電子制御する制御装置であり、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成されており、その内部に記憶されたプログラムに従って、各種機能を発揮し、各種機器を制御するようになっている。
【0053】
≪燃料電池システムの動作≫
次に、燃料電池システム1の動作について、図2〜図3を参照して説明する。
【0054】
<基本動作>
まず、図2の基本制御フローを参照して、燃料電池システム1の基本動作を説明する。
なお、IG51がONされると、そのON信号を検知したECU60は、図2の処理をスタートさせる。また、ON信号を検知したECU60は、遮断弁22を開き、水素をアノード流路11に供給し、コンプレッサ31を作動させ、空気(酸素)をカソード流路12に供給すると共に、冷媒ポンプ(図示しない)を作動させ、冷媒を循環させる。
【0055】
そしてECU60は、水素、空気の置換が進み、燃料電池スタック10のOCVが所定OCV以上となり、燃料電池スタック10は発電可能状態であると判断すると、電力制御器43を制御して電流を取り出し、燃料電池スタック10の発電を開始させる。次いで、ECU60は、アクセル52から入力されるアクセル開度に基づいて、燃料電池スタック10の発電、バッテリ41の充放電を制御する。
【0056】
ステップS200において、ECU60は、暖機優先判断処理を実行する。具体的な内容は、後で説明する。
【0057】
ステップS101において、ECU60は、バッテリ41及び/又は燃料電池スタック10の暖機を促進しない通常制御をするか否か判定する。なお、後記するステップS205(図3参照)を経由していた場合、通常制御すると判定される。
通常制御すると判定した場合(S101・Yes)、ECU60の処理はステップS106に進む。一方、通常制御しない、つまり、バッテリ41及び/又は燃料電池スタック10の暖機を促進させると判定した場合(S101・No)、ECU60の処理はステップS102に進む。
【0058】
ステップS102において、ECU60は、バッテリ41又は燃料電池スタック10のどちらを優先して暖機するか判定する。
なお、後記するステップS202(図3参照)を経由していた場合、バッテリ41を優先して暖機すると判定され、後記するステップS204(図3参照)を経由していた場合、燃料電池スタック10を優先して暖機すると判定される。
【0059】
バッテリ41を優先して暖機すると判定した場合、ECU60の処理はステップS103に進む。一方、燃料電池スタック10を優先して暖機すると判定した場合、ECU60の処理はステップS107に進む。
【0060】
<バッテリ優先暖機処理>
ステップS103において、ECU60は、燃料電池スタック10よりもバッテリ41を優先して暖機するバッテリ優先暖機処理を実行する。
具体的には、例えば、アクセル開度に対応してPDU45(モータ)に供給する電力について、通常制御時に対して、バッテリ41の放電電力を大きくし、燃料電池スタック10の発電電力を小さくする。このように、バッテリ41の放電電力を大きくすると、バッテリ41を通流する電流値が大きくなり、その結果、バッテリ41の内部抵抗による発熱量が増加するので、バッテリ41の暖機が促進されることになる。
【0061】
また、燃料電池車が減速中である場合、モータ44からの回生電力を優先的にバッテリ41に充電したり、燃料電池スタック10を過剰に発電させ、その過剰電力をバッテリ41に充電したりすることによっても、バッテリ41の暖機が促進されることになる。
【0062】
なお、このようにバッテリ41を充放電させる場合、過放電、過充電しないように制御する。
また、このようにバッテリ41を優先して暖機する場合も、燃料電池スタック10は発電しているので、優先されてはいないが燃料電池スタック10の暖機も進むことになる。
【0063】
ステップS104において、ECU60は、バッテリ41の暖機が完了したか否か判定する。
例えば、バッテリ41の温度が、その暖機は完了したと判断されるバッテリ暖機完了温度(例えば20〜30℃)以上である場合、バッテリ41の暖機は完了したと判定される。その他、バッテリ41を優先して暖機するバッテリ優先暖機処理の開始後、暖機は完了したと判断される暖機完了時間(例えば5分)経過した場合、バッテリ41の暖機は完了したと判定される。
【0064】
そして、バッテリ41の暖機は完了したと判定した場合(S104・Yes)、ECU60の処理はステップS105に進む。一方、バッテリ41の暖機は完了していないと判定した場合(S104・No)、ECU60の処理はステップS103に進む。
【0065】
ステップS105において、ECU60は、燃料電池スタック10の暖機は完了しているか否か判定する。
例えば、温度センサ14を介して検出される燃料電池スタック10の温度が、その暖機は完了したと判断される燃料電池スタック暖機完了温度(例えば30〜40℃)以上である場合、燃料電池スタック10の暖機は完了していると判定される。
【0066】
そして、燃料電池スタック10の暖機は完了していると判定した場合(S105・Yes)、ECU60の制御はステップ106に進む。一方、燃料電池スタック10の暖機は完了していないと判定した場合(S105・No)、ECU60の処理はステップS107に進む。
【0067】
ステップS106において、ECU60は、アクセル開度に基づいて、燃料電池スタック10の発電及びバッテリ41の充放電を通常に制御する。
【0068】
<燃料電池スタック優先暖機処理>
ステップS107において、ECU60は、バッテリ41よりも燃料電池スタック10を優先して暖機する燃料電池スタック優先暖機処理を実行する。
具体的には、例えば、アクセル開度に対応してPDU45(モータ)に供給する電力について、通常制御時に対して、燃料電池スタック10の発電電力を大きくし、バッテリ41の放電電力を小さくする。このように、燃料電池スタック10の発電電力を大きくすると、燃料電池スタック10を通流する電流値が大きくなり、その結果、燃料電池スタック10の内部抵抗による発熱量が増加するので、燃料電池スタック10の暖機が促進されることになる。
【0069】
また、燃料電池車が減速中であったとしても、燃料電池スタック10を発電させ、暖機を促進させる。この場合において、燃料電池スタック10の余剰電力は、例えば、バッテリ41に充電したり、補機48で消費する。
【0070】
なお、このように燃料電池スタック10を過剰に発電させ、バッテリ41に充電する場合、過充電しないように制御する。
また、燃料電池スタック10を優先して暖機する場合、水素及び/又は空気の流量を減少させ、燃料電池スタック10において水素不足及び/又は空気不足の状態に近づけ、燃料電池スタック10の内部抵抗を高めるようにしてもよい。
さらに、このように燃料電池スタック10を優先して暖機する場合も、バッテリ41は充電/放電するので、優先されてはいないがバッテリ41の暖機も進むことになる。
【0071】
ステップS108において、ECU60は、ステップS105と同様に、燃料電池スタック10の暖機が完了したか否か判定する。
燃料電池スタック10の暖機は完了したと判定した場合(S108・Yes)、ECU60の処理はステップS109に進む。一方、燃料電池スタック10の暖機は完了していないと判定した場合(S108・No)、ECU60の処理はステップS107に進む。
【0072】
ステップS109において、ECU60は、ステップS104と同様に、バッテリ41の暖機は完了しているか否か判定する。
バッテリ41の暖機は完了していると判定した場合(S109・Yes)、ECU60の処理はステップS106に進む。一方、バッテリ41の暖機は完了していないと判定した場合(S109・No)、ECU60の処理はステップS103に進む。
【0073】
<暖機優先判断処理S200>
次に、図3を参照して、バッテリ41及び燃料電池スタック10のどちらを優先して暖機するべきか判断する暖機優先判断処理S200の内容を説明する。
【0074】
ステップS201において、ECU60は、バッテリ41の温度(IG51のON時)が所定バッテリ温度(所定蓄電装置温度)以下であるか否か判定する。
所定バッテリ温度は、事前試験等により求められ、バッテリ41の温度が所定バッテリ温度以下である場合、バッテリ41を暖機するべきと判断される温度(例えば0℃)に設定される。
【0075】
また、厳密には、IG51のON後、水素及び空気を供給し、燃料電池スタック10が発電可能となるまでに、つまり、OCVが所定OCV以上となるまでにある程度の短時間が経過しているが、ここでは、ECU60の処理がステップS201に進んだ際におけるバッテリ41の温度を、IG51のON時の温度とする。
これについては、ステップS203における燃料電池スタック10の温度(IG51のON時)、後記する実施形態についても同様である。
【0076】
そして、バッテリ41の温度(ON時)は所定バッテリ温度以下であると判定した場合(S201・Yes)、ECU60の処理はステップS202に進む。一方、バッテリ41の温度(ON時)は所定バッテリ温度以下でないと判定した場合(S201・No)、ECU60の処理はステップS203に進む。
【0077】
なお、このように、燃料電池スタック10の暖機の要否に関する判定処理(S203)よりも先に、バッテリ41の暖機の要否に関する判定処理(S201)を実行することにより、燃料電池スタック10よりも昇温し難く、暖機され難いバッテリ41の暖機が優先されることになる。
【0078】
ステップS202において、ECU60は、バッテリ41を優先して暖機することを、例えば、対応するフラグ等によって一時的に記憶する。
その後、ECU60の処理は、エンドを通って、図2のステップS101に進む。
【0079】
ステップS203において、ECU60は、燃料電池スタック10の温度(IG51のON時)が所定燃料電池スタック温度(所定発電装置温度)以下であるか否か判定する。
所定燃料電池スタック温度は、事前試験等により求められ、燃料電池スタック10の温度が所定燃料電池スタック温度以下である場合、燃料電池スタック10を暖機するべきと判断される温度(例えば−10℃)に設定される。
【0080】
そして、燃料電池スタック10の温度(ON時)は所定燃料電池スタック温度以下であると判定した場合(S203・Yes)、ECU60の処理はステップS204に進む。一方、燃料電池スタック10の温度(ON時)は所定燃料電池スタック温度以下でないと判定した場合(S203・No)、ECU60の処理はステップS205に進む。
【0081】
ステップS204において、ECU60は、燃料電池スタック10を優先して暖機することを、例えば、対応するフラグ等によって一時的に記憶する。
その後、ECU60の処理は、エンドを通って、図2のステップS101に進む。
【0082】
ステップS205において、ECU60は、バッテリ41又は燃料電池スタック10を優先して暖機せず、通常に起動することを、例えば、対応するフラグ等によって一時的に記憶する。
その後、ECU60の処理は、エンドを通って、図2のステップS101に進む。
【0083】
≪燃料電池システムの効果≫
このような燃料電池システム1によれば、次の効果を得る。
【0084】
システム起動時に、バッテリ41及び燃料電池スタック10のいずれか一方を他方に優先して判断(S200)、判定するので(S102)、優先して暖機するべき一方を早期に暖機できる(S103、S107)。
また、電気ヒータ等の特別な暖機装置を備えないので、システム構成が簡便となり、安価に構成可能になると共に、燃料電池車等に搭載容易となる。
【0085】
優先して暖機すべき一方(バッテリ41又は燃料電池スタック10)の暖機完了後、他方の暖機が完了していない場合(S105・No、S109・No)、他方(燃料電池スタック10又はバッテリ41)を暖機するので(S107、S103)、バッテリ41及び燃料電池スタック10の両方を確実に暖機できる。
【0086】
IG51のON時におけるバッテリ41の温度が所定バッテリ温度以下である場合(S201・Yes)、バッテリ41を優先して暖機すると判断するので(S202)、つまり、燃料電池スタック10の暖機の要否に関する判定(S203)よりも先に、バッテリ41の暖機の要否に関する判定を先に実行するので(S201)、暖機され難いバッテリ41の暖機を優先できる。
【0087】
≪燃料電池システムの動作例≫
次に、燃料電池システム1(燃料電池車)の一動作例について、図4〜図5を参照して説明する。
【0088】
<加速時>
まず、図4を参照して、燃料電池車の加速時(図4(a)参照)について説明する。
図4(b)に示すように、バッテリ41を優先して暖機するバッテリ優先暖機処理を実行する場合(S103)、図4(d)の通常制御時(S106)に対して、燃料電池スタック10の発電電力(電力量)を小さくし、バッテリ41の放電電力(電力量)を大きくする。これにより、バッテリ41の暖機が促進される。
【0089】
一方、図4(c)に示すように、燃料電池スタック10を優先して暖機する燃料電池スタック優先暖機処理を実行する場合(S107)、図4(d)の通常制御時(S106)に対して、バッテリ41の放電電力(電力量)を小さくし、燃料電池スタック10の発電電力(電力量)を大きくする。これにより、燃料電池スタック10の暖機が促進される。
【0090】
<減速時>
次に、図5を参照して、燃料電池車の減速時(図5(a)参照)について説明する。
図5(b)に示すように、バッテリ41を優先して暖機するバッテリ優先暖機処理を実行する場合(S103)、図5(d)の通常制御時(S106)に対して、燃料電池スタック10を過剰に発電させ、その発電電力(電力量)を大きくする。そして、燃料電池スタック10の過剰な発電電力とモータ44からの回生電力とをバッテリ41に充電し、バッテリ41の充電電力(電力量)を大きくする。これにより、バッテリ41の暖機が促進される。
【0091】
一方、図5(c)に示すように、燃料電池スタック10を優先して暖機する燃料電池スタック優先暖機処理を実行する場合(S107)、図5(d)の通常制御時(S106)に対して、燃料電池スタック10を過剰に発電させ、その発電電力(電力量)を大きくする。これにより、燃料電池スタック10の暖機が促進される。
なお、燃料電池スタック10の過剰な発電電力とモータ44からの回生電力とは、バッテリ41に充電される。
【0092】
≪変形例≫
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば次のように変更することができる。
【0093】
前記した実施形態では、蓄電装置がバッテリ41である構成を例示したが、蓄電装置の種類はこれに限定されず、例えば、キャパシタでもよい。
【0094】
前記した実施形態では、燃料電池システム1が燃料電池車に搭載された場合を例示したが、その他の移動体、例えば、自動二輪車、列車、船舶に搭載された構成でもよい。
また、家庭用の定置型の燃料電池システムや、給湯システムに組み込まれた燃料電池システムに、本発明を適用してもよい。
【0095】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の第2実施形態について、図6〜図7を参照して説明する。
なお、第2実施形態では、第1実施形態に対してECU60に設定されたプログラムが一部異なり、その動作が一部異なる。以下、異なる部分のみを説明する。
【0096】
<暖機優先判断処理S300>
第2実施形態では、図3の暖機優先判断処理S200に代えて、図6の暖機優先判断処理S300を実行する。
【0097】
ステップS301において、ECU60は、IG51のON時のバッテリ41の温度と、図7のマップとに基づいて、IG51のON時におけるバッテリ41の出力回復速度(kW/min)を算出する。
なお、図7のマップは、事前試験等によって求められ、ECU60に予め記憶されている。
【0098】
バッテリ41の出力回復速度とは、その後に暖機が進むに伴い、バッテリ41の出力が、暖機の完了した通常のバッテリ41の出力に回復しようとする際におけるバッテリ41の出力の回復速度、つまり、バッテリ41の出力の増加速度を意味する。
【0099】
図7に示すように、IG51のON時におけるバッテリ41の温度が低くなるにつれて、バッテリ41の出力回復速度は大きくなる。
一方、IG51のON時におけるバッテリ41の温度が高く、バッテリ41が暖かい状態、つまり、暖機が不要となる状態に近づくにつれて、IG51のON時から通常に出力可能となるから、バッテリ41の出力回復速度は0(kW/min)に近づく。
【0100】
ここで、図7を参照して、燃料電池スタック10の出力回復速度(kW/min)についても説明する。
燃料電池スタック10の出力回復速度とは、その後に暖機が進むに伴い、燃料電池スタック10の出力が、暖機の完了した通常の燃料電池スタック10の出力に回復しようとする際における燃料電池スタック10の出力の回復速度、つまり、燃料電池スタック10の出力の増加速度を意味する。
【0101】
図7に示すように、バッテリ41と同様に、IG51のON時における燃料電池スタック10の温度が低くなるにつれて、燃料電池スタック10の出力回復速度は大きくなる。
一方、IG51のON時における燃料電池スタック10の温度が高く、燃料電池スタック10が暖かい状態、つまり、暖機が不要となる状態に近づくにつれて、IG51のON時から通常に出力可能となるから、燃料電池スタック10の出力回復速度は0(kW/min)に近づく。
【0102】
また、前記したように、バッテリ41は燃料電池スタック10よりも昇温し難く、暖機され難いから、図7に示すように、0℃以下の低温領域において、バッテリ41の出力回復速度は、燃料電池スタック10の出力回復速度よりも、小さい傾向となっている。
【0103】
ステップS302において、ECU60は、IG51のON時の燃料電池スタック10の温度と、図7のマップとに基づいて、IG51のON時における燃料電池スタック10の出力回復速度(kW/min)を算出する。
【0104】
ステップS303において、ECU60は、ステップS301で算出したバッテリ41の出力回復速度(ON時)が、ステップS302で算出した燃料電池スタック10の出力回復速度(ON時)よりも大きいか否か判定する。
【0105】
バッテリ41の出力回復速度(ON時)は燃料電池スタック10の出力回復速度(ON時)よりも大きいと判定した場合(S303・Yes)、ECU60の処理はステップS304に進む。
一方、バッテリ41の出力回復速度(ON時)は燃料電池スタック10の出力回復速度(ON時)よりも大きくないと判定した場合(S303・No)、ECU60の処理はステップS305に進む。
【0106】
ステップS304において、ECU60は、バッテリ41を優先して暖機することを、例えば、対応するフラグ等によって一時的に記憶する。
その後、ECU60の処理は、エンドを通って、図2の基本制御フローに戻る。なお、ステップS101の判定処理を省略して、ステップS102に進むように設定する。
【0107】
ステップS305において、ECU60は、燃料電池スタック10を優先して暖機することを、例えば、対応するフラグ等によって一時的に記憶する。
その後、ECU60の処理は、エンドを通って、図2の基本制御フローに戻る。なお、ステップS101の判定処理を省略して、ステップS102に進むように設定する。
【0108】
≪第2実施形態の効果≫
このような第2実施形態によれば、次の効果を得る。
IG51のON時におけるバッテリ41の出力回復速度と、燃料電池スタック10の出力回復速度とを比較し(S303)、出力回復速度の大きい方を、優先して暖機すると判定するので、ON時における出力回復速度の大きいバッテリ41又は燃料電池スタック10を、優先して早期に暖機できる。
【0109】
≪第3実施形態≫
次に、本発明の第3実施形態について、図8〜図9を参照して説明する。
なお、第3実施形態では、第1実施形態に対してECU60に設定されたプログラムが一部異なり、その動作が一部異なる。以下、異なる部分のみを説明する。
【0110】
<暖機優先判断処理S400>
第3実施形態では、図3の暖機優先判断処理S200に代えて、図8の暖機優先判断処理S400を実行する。
【0111】
ステップS401において、ECU60は、IG51のON時のバッテリ41の温度と、図9のマップとに基づいて、IG51のON時の温度におけるバッテリ41の最大出力(kW)を算出する。
なお、図9のマップは、事前試験等によって求められ、ECU60に予め記憶されている。
【0112】
図9に示すように、IG51のON時のバッテリ41の温度が低くなるにつれて、IG51のON時の温度におけるバッテリ41の最大出力は小さくなる。
一方、IG51のON時におけるバッテリ41の温度が高く、バッテリ41が暖かい状態、つまり、暖機が不要となる状態に近づくにつれて、通常時の最大出力に近づく。
【0113】
ここで、図9を参照して、燃料電池スタック10の最大出力(kW)についても説明する。
そして、バッテリ41と同様に、IG51のON時における燃料電池スタック10の温度が低くなるにつれて、燃料電池スタック10の最大出力は小さくなる。
一方、IG51のON時における燃料電池スタック10の温度が高く、燃料電池スタック10が暖かい状態、つまり、暖機が不要となる状態に近づくにつれて、通常時の最大出力に近づく。
【0114】
ステップS402において、ECU60は、IG51のON時の燃料電池スタック10の温度と、図9のマップとに基づいて、IG51のON時の温度における燃料電池スタック10の最大出力(kW)を算出する。
【0115】
ステップS403において、ECU60は、バッテリ41の通常時の最大出力から、ステップS401で算出したIG51のON時におけるバッテリ41の最大出力を減算し、第1差を算出する(図9参照)。
【0116】
ステップS404において、ECU60は、燃料電池スタック10の通常時の最大出力から、ステップS402で算出したIG51のON時における燃料電池スタック10の最大出力を減算し、第2差を算出する(図9参照)。
【0117】
ステップS405において、ECU60は、バッテリ41についての第1差と燃料電池スタック10についての第2差とを比較、具体的には、第1差が第2差よりも大きいか否か判定する。
【0118】
第1差は第2差よりも大きいと判定した場合(S405・Yes)、ECU60の処理はステップS406に進む。一方、第1差は第2差よりも大きくないと判定した場合(S405・No)、ECU60の処理はステップS407に進む。
【0119】
ステップS406において、ECU60は、バッテリ41を優先して暖機することを、例えば、対応するフラグ等によって一時的に記憶する。
その後、ECU60の処理は、エンドを通って、図2の基本制御フローに戻る。なお、ステップS101の判定処理を省略して、ステップS102に進むように設定する。
【0120】
ステップS407において、ECU60は、燃料電池スタック10を優先して暖機することを、例えば、対応するフラグ等によって一時的に記憶する。
その後、ECU60の処理は、エンドを通って、図2の基本制御フローに戻る。なお、ステップS101の判定処理を省略して、ステップS102に進むように設定する。
【0121】
≪第3実施形態の効果≫
このような第3実施形態によれば、次の効果を得る。
IG51のON時におけるバッテリ41の最大出力と通常時の最大出力との第1差と、ON時の燃料電池スタック10の最大出力と通常時の最大出力との第2差と、を比較し、差の大きい方を優先して暖機すると判定するので、差の大きい方、すなわち回復しろの大きい方を積極的に暖機できる。
【0122】
≪第4実施形態≫
次に、本発明の第4実施形態について、図10〜図12を参照して説明する。
図10に示す第4実施形態に係るハイブリッドシステム2(電力供給システム)は、ハイブリッド車に搭載されている。ハイブリッドシステム2は、燃料電池スタック10(図1参照)に代えて、発電装置としてのエンジン71及び発電機72と、温度センサ73(第2温度センサ)とを備えている。
なお、水素の給排に関する装置(水素タンク21等)、空気の給排に関する装置(コンプレッサ31等)も備えていない。
【0123】
エンジン71は、4サイクル(吸気、圧縮、燃焼・膨張、排気)を繰り返す4ストローク機関である。そして、エンジン71の出力(回転速度、トルク等)は、燃料・空気の吸気量、点火タイミングを制御するECU60で制御される。
【0124】
発電機72は、エンジン71の動力によって作動し電力を生成する装置である。具体的には、発電機72は、増速又は減速機構及びクラッチ(図示しない)を介して、エンジン71のクランク軸と機械的に接続されている。そして、発電機72で生成した電力は、電力制御器43に供給されるようになっている。
【0125】
温度センサ73は、エンジン71の温度を検出するセンサであり、エンジン71の適所に取り付けられている。そして、温度センサ73は、エンジン71の温度を、ECU60に出力するようになっている。
【0126】
このようなハイブリッドシステム2において、ECU60は、IG51のON時におけるバッテリ41の温度とエンジン71(発電機72)の温度とに基づいて、バッテリ41及びエンジン71のいずれを優先して暖機するか判定するように設定されている。
【0127】
この他、第2実施形態と同様に、IG51のON時におけるエンジン71の温度と、図11のマップとに基づいて、発電機72(エンジン71)の出力回復速度(kW/min)を算出し、これとバッテリ41の出力回復速度とを比較し、出力回復速度の大きい方を優先して暖機する構成としてもよい。
【0128】
また、第3実施形態と同様に、IG51のON時におけるエンジン71の温度における発電機72(エンジン71)の最大出力と通常時の発電機72の最大出力との第2差と(図12参照)、バッテリ41についての第1差とを比較し、差の大きい方を優先して暖機する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0129】
1 燃料電池システム(電力供給システム)
2 ハイブリッドシステム(電力供給システム)
10 燃料電池スタック(発電装置)
14 温度センサ(第2温度センサ)
41 バッテリ(蓄電装置)
42 温度センサ(第1温度センサ)
43 電力制御器(発電制御手段、充放電制御手段)
51 IG(起動スイッチ)
60 ECU(制御手段)
71 エンジン(発電装置)
72 発電機(発電装置)
73 温度センサ(第2温度センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を充放電可能な蓄電装置と、
前記蓄電装置に電力を充電可能な発電装置と、
前記蓄電装置の温度を検出する第1温度センサと、
前記発電装置の温度を検出する第2温度センサと、
前記蓄電装置の充放電及び前記発電装置の発電を制御する制御手段と、
システムを起動する場合にONされる起動スイッチと、
を備え、
前記制御手段は、前記起動スイッチのON信号を検知してシステムを起動させる際、
前記起動スイッチのON時における前記蓄電装置の温度及び前記発電装置の温度に基づいて、前記蓄電装置及び前記発電装置のいずれか一方を他方に優先して暖機するべきか判定し、
優先して暖機するべき前記一方を暖機する
ことを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
前記制御手段は、優先して暖機するべき前記一方の暖機完了後、前記他方の暖機が完了していない場合、当該他方を暖機する
ことを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記制御手段は、ON時における前記蓄電装置の温度が所定蓄電装置温度以下である場合、前記蓄電装置を優先して暖機すると判定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記制御手段は、
ON時の温度における前記蓄電装置の出力回復速度と、ON時の温度における前記発電装置の出力回復速度とを比較し、
前記蓄電装置及び前記発電装置のうち出力回復速度の大きい方を、優先して暖機すると判定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記制御手段は、
ON時の温度における前記蓄電装置の最大出力と、通常時における前記蓄電装置の最大出力との第1差と、
ON時の温度における前記蓄電装置の最大出力と、通常時における前記蓄電装置の最大出力との第2差と、
を比較し、
前記第1差と前記第2差のうち差が大きい方を優先して暖機すると判定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記蓄電装置を暖機する場合、通常時に対して、充電電力又は放電電力を大きくする
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記制御手段は、前記発電装置を暖機する場合、通常時に対して、出力を大きくする
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電力供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−243326(P2011−243326A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112396(P2010−112396)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】