説明

電力供給装置および電力供給方法

【課題】入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達し、電池等の充電対象を充電するための構成において、充電を良好に行なうとともに、高効率化および小型化の両立を図ることが可能な電力供給装置および電力供給方法を提供する。
【解決手段】電力供給装置101において、制御部14は、充電対象202に電力を供給する際、電力伝達用絶縁回路53から充電対象202に供給される充電電流のレベルが所定値を維持するように電圧供給回路を制御し、電力伝達用絶縁回路53から充電対象202に供給される充電電圧のレベルが上昇して所定の定電圧目標値に達すると、充電電流のレベルを所定値に維持する代わりに、充電電圧が所定値を維持するように電圧供給回路を制御する。そして、制御部14は、充電電圧が定電圧目標値に達したタイミング以降において、スイッチ素子Z1〜Z4のスイッチング周波数を上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給装置および電力供給方法に関し、特に、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達する電力伝達用絶縁回路を備えた電力供給装置および電力供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭の交流電力を用いて電気自動車(EV:Electric Vehicle)およびプラグイン方式のハイブリッドカー(HV:Hybrid Vehicle)等の駆動用の主電池を充電するための電力変換装置が開発されている。
【0003】
すなわち、電気自動車およびプラグイン方式のハイブリッドカーの特長の1つは、家庭用コンセント等の外部電源を用いて車載バッテリを充電できることである。そして、AC100VまたはAC200Vの家庭用コンセントを用いて車載バッテリを充電するには、交流電圧(AC)をバッテリ用の直流電圧に変換するためのAC/DCコンバータが必要となる。
【0004】
AC/DCコンバータは、電源トランスを用いる構成が一般的であるが、電源トランスの影響により、全体の重量およびサイズが大きくなる。
【0005】
EV等の主電池への充電を目的とするものではないが、交流電力を直流電力に変換する電源装置用絶縁回路の一例が、たとえば、特許第3595329号公報(特許文献1)に記載されている。すなわち、この電源装置用絶縁回路は、交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、上記整流回路から供給される直流電流に残存する脈流成分を低減する第1のコンデンサと、上記第1のコンデンサから供給される直流電流のプラス側およびマイナス側を同時に開閉する第1のスイッチ回路と、上記第1のスイッチ回路から供給される電流を蓄積する第2のコンデンサと、上記第2のコンデンサから供給される直流電流のプラス側およびマイナス側を同時に開閉する第2のスイッチ回路と、上記第2のスイッチ回路から供給される電流を保持するとともに負荷側に放出する第3のコンデンサとを備える。また、ONとなる時間がOFFとなる時間よりも短く設定された方形波によって構成されるコントロール信号φ1、および上記コントロール信号φ1と相補的にONするとともにON時間がOFF時間よりも短く設定されたコントロール信号φ2を生成するゲートコントロール回路を備える。上記コントロール信号φ1により上記第1のスイッチ回路の開閉を行い、上記コントロール信号φ2により上記第2のスイッチ回路の開閉を行なう。
【0006】
このようなトランスレス絶縁回路では、大きな重量およびサイズを占める電源トランスを使用することなく、交流電圧を直流電圧に変換し、かつ交流電源側と負荷側とを電気的に絶縁することができる。
【0007】
また、電池の充電方法の一例が、たとえば、「Liイオン電池古今東西 ―第5回― 事故原因の多くは過充電 安全な電池を作るために(後編)」、日経エレクトロニクス、西美緒著、pp.124-125、2010年1月25日発行(非特許文献1)に記載されている。すなわち、Liイオン2次電池の充電方法として定電流/定電圧充電がある。この定電流/定電圧充電では、一定の充電電流で充電を開始し、規定の充電電圧に達したところで一定電圧による充電に切り替え、充電電流が下降して既定値に達したところで充電を停止する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「Liイオン電池古今東西 ―第5回― 事故原因の多くは過充電 安全な電池を作るために(後編)」、日経エレクトロニクス、西美緒著、pp.124-125、2010年1月25日発行
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3595329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
Liイオン電池等の2次電池を充電する際、満充電付近における充電状態推定の誤差を小さくするため、充電器の出力電流リプルを一定値以下に抑えることが求められる。
【0011】
トランスレス絶縁回路を用いた充電器における出力電流リプルの大きさは、出力コンデンサの容量またはスイッチング周波数に依存する。すなわち、出力コンデンサの容量が小さくなると出力電流リプルが大きくなり、また、スイッチング周波数が低くなると出力電流リプルが大きくなる。
【0012】
ここで、トランスレス絶縁回路において、高効率化のために各スイッチのスイッチング周波数を下げた場合、そのままでは出力電流リプルが大きくなってしまうことから、出力コンデンサの容量を増加させる必要が生じる。
【0013】
しかしながら、出力コンデンサの容量を増加させると、電源トランスを使用しない構成であるにも関わらず回路のサイズおよび重量が増加し、その一方で、小型化および軽量化を図るためにスイッチング周波数を上げると、スイッチング損失の増加によって効率が低下してしまう。
【0014】
すなわち、特許文献1に記載の電源装置用絶縁回路等、トランスレス絶縁回路を用いた充電器では、当該絶縁回路におけるスイッチング損失と、出力コンデンサの体積および重量との間にトレードオフが存在し、高効率化および小型化の両立が困難である、という問題点があった。
【0015】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達し、電池等の充電対象を充電するための構成において、充電を良好に行なうとともに、高効率化および小型化の両立を図ることが可能な電力供給装置および電力供給方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる電力供給装置は、充電対象に電力を供給するための電力供給装置であって、直流電圧を出力し、上記直流電圧のレベルを調整可能な電圧供給回路と、上記電圧供給回路および上記充電対象間を絶縁しながら、上記電圧供給回路から受けた直流電圧を上記充電対象に伝達するための電力伝達用絶縁回路とを備え、上記電力伝達用絶縁回路は、第1端および第2端を有する第1の蓄電素子と、上記充電対象と電気的に接続された第1端および第2端を有する第2の蓄電素子と、第1端、および上記第1の蓄電素子の第1端と電気的に接続された第2端を有する第1のスイッチ素子、ならびに第1端、および上記第1の蓄電素子の第2端と電気的に接続された第2端を有する第2のスイッチ素子を含み、上記第1のスイッチ素子の第1端および上記第2のスイッチ素子の第1端において上記電圧供給回路から受けた上記直流電圧を上記第1の蓄電素子に供給するための入力スイッチ部と、上記第1の蓄電素子の第1端と上記第2の蓄電素子の第1端との間に接続された第3のスイッチ素子および上記第1の蓄電素子の第2端と上記第2の蓄電素子の第2端との間に接続された第4のスイッチ素子を含み、上記第1の蓄電素子に蓄えられた電力を上記第2の蓄電素子に供給するための出力スイッチ部とを含み、上記電力供給装置は、さらに、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子のスイッチングを制御することにより上記直流電圧を上記充電対象に供給するための制御部を備え、上記制御部は、上記充電対象に電力を供給する際、上記電力伝達用絶縁回路から上記充電対象に供給される充電電流のレベルが所定値を維持するように上記電圧供給回路を制御し、上記電力伝達用絶縁回路から上記充電対象に供給される充電電圧のレベルが上昇して所定の定電圧目標値に達すると、上記充電電流のレベルを上記所定値に維持する代わりに、上記充電電圧が所定値を維持するように上記電圧供給回路を制御し、上記充電電圧が上記定電圧目標値に達したタイミング以降において、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子のスイッチング周波数を上げる。
【0017】
これにより、トランスレス絶縁回路を用いた充電器の満充電付近における出力特性に関し、第2の蓄電素子の容量と出力電流リプル率とのチューニングの幅を広げることができるため、高効率化および小型化のトレードオフを緩和することができる。したがって、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達し、電池等の充電対象を充電するための構成において、充電を良好に行なうとともに、高効率化および小型化の両立を図ることができる。
【0018】
好ましくは、上記制御部は、上記充電電圧が上記定電圧目標値に達したタイミング以降において、上記充電電流のレベルが下降して所定の周波数切り替え閾値を下回ると、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子のスイッチング周波数を上げる。
【0019】
このような構成により、電力伝達用絶縁回路の出力電力が大きい状態において高効率を維持しながら、第2の蓄電素子の容量と出力電流リプル率とのチューニングの幅を広げることができる。すなわち、スイッチング周波数の上昇による効率の低下を、周波数切り替え閾値の設定によってごく僅かに抑えることができるため、トランスレス絶縁回路を用いた充電器における高効率化および小型化のトレードオフを緩和することが可能となる。
【0020】
より好ましくは、上記制御部は、上記充電電圧が上記定電圧目標値に達したタイミング以降において、上記充電電流のレベルが下降して充電停止電流値に達すると、上記充電対象への電力供給を停止し、上記周波数切り替え閾値は、上記充電停止電流値より大きい。
【0021】
このような構成により、充電動作を停止すべき充電電流値を考慮した適切な周波数切り替え閾値を設定することができる。
【0022】
より好ましくは、上記周波数切り替え閾値が、以下の式を満足するように設定される。
(Thf−Thf×Rp/2)>Ie
但し、Thfは上記周波数切り替え閾値であり、Ieは上記充電停止電流値であり、Rpは(上記充電電流の振幅/上記充電電流の平均値)で定義される上記充電電流のリップル率である。
【0023】
このような構成により、スイッチング周波数の切り替えを行なうべき状態に至る直前まで電力伝達用絶縁回路の効率を高い状態に維持することができるため、スイッチング周波数の切り替えに伴う電力伝達用絶縁回路の効率の低下を最大限に防ぐことができる。
【0024】
好ましくは、上記制御部は、上記入力スイッチ部における各上記スイッチ素子をオンし、かつ上記出力スイッチ部における各上記スイッチ素子をオフする第1の期間と、上記入力スイッチ部における上記各スイッチ素子および上記出力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオフする第2の期間と、上記入力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオフし、かつ上記出力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオンする第3の期間と、上記入力スイッチ部における上記各スイッチ素子および上記出力スイッチ部における上記各スイッチ素子をオフする第4の期間とをこの順番で繰り返し、上記制御部は、上記充電電圧が上記定電圧目標値に達したタイミング以降における上記スイッチング周波数の上限値を、上記第2の期間および上記第4の期間の長さとして所定時間を確保したときに、上記第1の期間および上記第3の期間を所定時間以上確保することが可能なスイッチング周波数に設定する。
【0025】
このような構成により、電力伝達用絶縁回路による電力伝達動作を考慮した適切な値に、切り替え後のスイッチング周波数を設定することができる。
【0026】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる電力供給方法は、直流電圧を出力し、上記直流電圧のレベルを調整可能な電圧供給回路と、上記電圧供給回路および充電対象間を絶縁しながら、上記電圧供給回路から受けた直流電圧を上記充電対象に伝達するための電力伝達用絶縁回路とを備え、上記電力伝達用絶縁回路は、第1端および第2端を有する第1の蓄電素子と、上記充電対象と電気的に接続された第1端および第2端を有する第2の蓄電素子と、第1端、および上記第1の蓄電素子の第1端と電気的に接続された第2端を有する第1のスイッチ素子、ならびに第1端、および上記第1の蓄電素子の第2端と電気的に接続された第2端を有する第2のスイッチ素子を含み、上記第1のスイッチ素子の第1端および上記第2のスイッチ素子の第1端において上記電圧供給回路から受けた上記直流電圧を上記第1の蓄電素子に供給するための入力スイッチ部と、上記第1の蓄電素子の第1端と上記第2の蓄電素子の第1端との間に接続された第3のスイッチ素子および上記第1の蓄電素子の第2端と上記第2の蓄電素子の第2端との間に接続された第4のスイッチ素子を含み、上記第1の蓄電素子に蓄えられた電力を上記第2の蓄電素子に供給するための出力スイッチ部とを含む電力供給装置における電力供給方法であって、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子のスイッチングを制御することにより上記直流電圧を上記充電対象に伝達するとともに、上記電力伝達用絶縁回路から上記充電対象に供給される充電電流のレベルが所定値を維持するように上記電圧供給回路を制御するステップと、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子のスイッチングを制御することにより上記直流電圧を上記充電対象に伝達するとともに、上記電力伝達用絶縁回路から上記充電対象に供給される充電電圧のレベルが上昇して所定の定電圧目標値に達すると、上記充電電流のレベルを上記所定値に維持する代わりに、上記充電電圧が所定値を維持するように上記電圧供給回路を制御するステップと、上記充電電圧が上記定電圧目標値に達したタイミング以降において、上記第1のスイッチ素子ないし上記第4のスイッチ素子のスイッチング周波数を上げるステップとを含む。
【0027】
これにより、トランスレス絶縁回路を用いた充電器の満充電付近における出力特性に関し、第2の蓄電素子の容量と出力電流リプル率とのチューニングの幅を広げることができるため、高効率化および小型化のトレードオフを緩和することができる。したがって、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達し、電池等の充電対象を充電するための構成において、充電を良好に行なうとともに、高効率化および小型化の両立を図ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達し、電池等の充電対象を充電するための構成において、充電を良好に行なうとともに、高効率化および小型化の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る電力供給装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路によるスイッチング動作を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電力供給装置による充電動作を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る電力供給装置の電力伝達用絶縁回路においてスイッチング周波数切り替えを行なわないと仮定した場合の充電電流を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路による充電動作の手順を定めたフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路における出力電力と出力電流リプル率との関係の測定結果を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路における前段のスイッチ素子の電流波形を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路におけるスイッチング周波数と効率との関係を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る電力供給装置における充電電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0031】
[構成および基本動作]
図1は、本発明の実施の形態に係る電力供給装置の構成を示す図である。
【0032】
図1を参照して、電力供給装置101は、制御部14と、整流回路51と、昇降圧回路52と、電力伝達用絶縁回路53と、電流検出部61と、電圧検出部62とを備える。昇降圧回路52は、スイッチ素子Z11と、キャパシタC11,C21と、インダクタL11と、ダイオードD11とを含む。電力伝達用絶縁回路53は、キャパシタC0〜C2と、入力スイッチ部21と、出力スイッチ部22とを含む。入力スイッチ部21は、スイッチ素子Z1,Z2と、ダイオードD1,D2とを含む。出力スイッチ部22は、スイッチ素子Z3,Z4と、ダイオードD3,D4とを含む。
【0033】
電力供給装置101において、スイッチ素子Z1〜Z4,Z11は、たとえばNチャネルIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。なお、スイッチ素子Z1〜Z4,Z11は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)FET(Field Effect Transistor)等、他の種類のトランジスタであってもよい。
【0034】
昇降圧回路52において、スイッチ素子Z11は、制御部14からの制御信号G11を受けるゲートと、キャパシタC11の第1端に電気的に接続されたコレクタと、ダイオードD11のカソードおよびインダクタL11の第1端に電気的に接続されたエミッタとを有する。ダイオードD11のアノードとキャパシタC21の第1端とが電気的に接続されている。キャパシタC11の第2端と、インダクタL11の第2端と、キャパシタC21の第2端とが電気的に接続されている。
【0035】
電力伝達用絶縁回路53において、ダイオードD1は、キャパシタC0の第1端に電気的に接続されたアノードと、スイッチ素子Z1のコレクタに電気的に接続されたカソードとを有する。ダイオードD2は、スイッチ素子Z2のエミッタに電気的に接続されたアノードと、キャパシタC0の第2端に電気的に接続されたカソードとを有する。ダイオードD3は、キャパシタC1の第1端に電気的に接続されたアノードと、スイッチ素子Z3のコレクタに電気的に接続されたカソードとを有する。ダイオードD4は、スイッチ素子Z4のエミッタに電気的に接続されたアノードと、キャパシタC1の第2端に電気的に接続されたカソードとを有する。
【0036】
スイッチ素子Z1は、ダイオードD1のカソードに電気的に接続されたコレクタと、キャパシタC1の第1端に電気的に接続されたエミッタと、制御部14からの制御信号G1を受けるゲートとを有する。スイッチ素子Z2は、キャパシタC1の第2端に電気的に接続されたコレクタと、ダイオードD2のアノードに電気的に接続されたエミッタと、制御部14からの制御信号G2を受けるゲートとを有する。スイッチ素子Z3は、ダイオードD3のカソードに電気的に接続されたコレクタと、キャパシタC2の第1端に電気的に接続されたエミッタと、制御部14からの制御信号G3を受けるゲートとを有する。スイッチ素子Z4は、キャパシタC2の第2端に電気的に接続されたコレクタと、ダイオードD4のアノードに電気的に接続されたエミッタと、制御部14からの制御信号G4を受けるゲートとを有する。
【0037】
キャパシタC2の第1端と負荷202のプラス側端子とが電流検出部61を介して電気的に接続され、キャパシタC2の第2端と負荷202のマイナス側端子とが電気的に接続されている。
【0038】
電力供給装置101は、交流電源201から供給された交流電力を直流電力に変換して負荷202に供給する。たとえば、負荷202は、EVおよびプラグイン方式のHV等の駆動用の主電池であり、Li(リチウム)イオン電池である。
【0039】
整流回路51は、たとえば、ダイオードブリッジを含み、交流電源201から受けた交流電力を全波整流して昇降圧回路52へ出力する。
【0040】
昇降圧回路52において、スイッチ素子Z11は、キャパシタC11との接続ノード経由で受けた電圧すなわち整流回路51から受けた電圧をスイッチングする。インダクタL11は、スイッチ素子Z11によってスイッチングされた電圧を受ける。キャパシタC21は、インダクタL11に誘起された電圧を蓄える。
【0041】
制御部14は、制御信号G11をスイッチ素子Z11に出力することにより、スイッチ素子Z11のスイッチングを制御する。これにより、昇降圧回路52は、整流回路51から受けた電圧を直流電圧に変換するとともに昇圧または降圧する。
【0042】
より詳細には、昇降圧回路52の入力電圧をViとし、出力電圧をVaとし、スイッチ素子Z11のオンデューティ比をDとすると、出力電圧Vaは以下のように表される。
Va=−{D/(1−D)}×Vi
【0043】
この式から分かるように、昇降圧回路52は、デューティ比の設定次第で、入力電圧よりも高い出力電圧および低い出力電圧のいずれを得ることも可能である。すなわち、Vi<VaおよびVi>Vaの両方を実現することができる。なお、昇降圧回路52の出力電圧は入力電圧に対して極性が反転するので、電力伝達用絶縁回路53との電気的接続の極性は反転されている。
【0044】
また、昇降圧回路52は、力率改善回路としての機能も有している。すなわち、スイッチ素子Z11は、制御部14により、昇降圧回路52の入力電圧の位相と入力電流の位相とを合わせるように制御される。
【0045】
電力伝達用絶縁回路53において、キャパシタC0は、昇降圧回路52から受けた電力を蓄える。入力スイッチ部21は、スイッチ素子Z1のコレクタおよびスイッチ素子Z2のエミッタにおいて受けた電力すなわちキャパシタC0に蓄えられた電力をキャパシタC1に供給する。出力スイッチ部22は、キャパシタC1に蓄えられた電力をキャパシタC2に供給する。キャパシタC2に蓄えられた電力は、放電されて負荷202に供給される。
【0046】
制御部14は、制御信号G1〜G4をスイッチ素子Z1〜Z4に出力することにより、スイッチ素子Z1〜Z4のオンおよびオフを切り替える。電力伝達用絶縁回路53は、制御部14のスイッチ制御により、昇降圧回路52および負荷202間を絶縁しながら、キャパシタC0に蓄えられた電力を負荷202に伝達する。
【0047】
また、ダイオードD1〜D4は、電力伝達用絶縁回路53における電流の逆流を防ぐために設けられている。
【0048】
電流検出部61は、電力伝達用絶縁回路53から負荷202に供給される充電電流のレベルを検出し、検出レベルを示す信号を制御部14へ出力する。電流検出部61は、たとえばホール素子であり、キャパシタC2の第1端と負荷202のプラス側端子との間に接続される。
【0049】
電圧検出部62は、電力伝達用絶縁回路53から負荷202に供給される充電電圧のレベルを検出し、検出レベルを示す信号を制御部14へ出力する。
【0050】
制御部14は、電流検出部61から受けた信号および電圧検出部62から受けた信号に基づいて、昇降圧回路52におけるスイッチ素子Z11を制御する。また、制御部14は、スイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4のスイッチングを制御することにより、昇降圧回路52から出力される直流電圧を負荷202に供給する。
【0051】
[動作]
まず、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路が電力伝達を行なう際の動作について図面を用いて説明する。
【0052】
図2は、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路によるスイッチング動作を示す図である。
【0053】
図2を参照して、まず、制御部14は、期間T1において、スイッチ素子Z1をオンし、スイッチ素子Z2をオンし、スイッチ素子Z3をオフし、スイッチ素子Z4をオフする。これにより、キャパシタC0に蓄えられた電荷が放電され、放電された電荷がキャパシタC1に蓄えられる。スイッチ素子Z3およびZ4がオフされていることにより、昇降圧回路52および負荷202間の絶縁が確保される。
【0054】
次に、制御部14は、期間T2において、スイッチ素子Z1〜Z4をオフする。これにより、電力伝達用絶縁回路53の入力側および出力側間の絶縁を確保するためのデッドタイムが設けられる。すなわち、入力スイッチ部21における各スイッチおよび出力スイッチ部22における各スイッチを介して電力伝達用絶縁回路53の入力側および出力側間、すなわち昇降圧回路52および負荷202間が短絡することを防ぐことができる。
【0055】
次に、制御部14は、期間T3において、スイッチ素子Z1をオフし、スイッチ素子Z2をオフし、スイッチ素子Z3をオンし、スイッチ素子Z4をオンする。これにより、キャパシタC1に蓄えられた電荷が放電され、放電された電荷がキャパシタC2に蓄えられる。スイッチ素子Z1およびZ2がオフされていることにより、昇降圧回路52および負荷202間の絶縁が確保される。
【0056】
次に、制御部14は、期間T4において、スイッチ素子Z1〜Z4をオフする。これにより、期間T2と同様に、電力伝達用絶縁回路53の入力側および出力側間の絶縁を確保するためのデッドタイムが設けられる。
【0057】
ここで、期間T1〜T4において、キャパシタC0は昇降圧回路52からの電力により充電されており、また、キャパシタC2に蓄えられた電力は放電されて負荷202に供給されている。また、期間T2およびT4においては、キャパシタC1における電荷の移動はない。
【0058】
そして、制御部14は、これら期間T1、期間T2、期間T3および期間T4をこの順番で繰り返すことにより、電力伝達用絶縁回路53の入力側および出力側間を絶縁し、昇降圧回路52をさらに制御することにより、交流電源201からの交流電力を直流電力に変換して負荷202に供給する。
【0059】
次に、本発明の実施の形態に係る電力供給装置の充電動作について図面を用いて説明する。
【0060】
図3は、本発明の実施の形態に係る電力供給装置による充電動作を示す図である。
【0061】
今後の電動車両の駆動用の2次電池として、従来のニッケル水素電池に代わり、リチウムイオン電池の採用が増加していくことが予想される。リチウムイオン電池に推奨される充電方法は、図3に示すような定電流/定電圧(CC/CV)充電である。
【0062】
この定電流/定電圧充電では、満充電付近において充電電圧を一定に維持したまま充電電流を絞っていき、充電を完了させる。
【0063】
すなわち、制御部14は、充電電流を所定値Imに維持した状態で充電を開始し、充電電圧が所定の定電圧目標値Vmに達したところで定電圧目標値Vmを維持する充電に切り替え、充電電流が下降して所定の充電停止電流値に達したところで充電を停止する。
【0064】
より詳細には、制御部14は、負荷202に電力を供給する際、充電電流のレベルが所定値Imを維持するように昇降圧回路52を制御する。そして、制御部14は、充電電圧のレベルが上昇して所定の定電圧目標値Vmに達すると、充電電流のレベルを所定値Imに維持する代わりに、充電電圧が定電圧目標値Vmを維持するように昇降圧回路52を制御する。
【0065】
図4は、本発明の実施の形態に係る電力供給装置の電力伝達用絶縁回路においてスイッチング周波数切り替えを行なわないと仮定した場合の充電電流を示す図である。ここでは、出力電流リプル率=出力電流リプル/出力電流平均値であると定義する。
【0066】
図4を参照して、充電電圧が定電圧目標値Vmに達した後、充電電圧を定電圧目標値Vmに維持すると、充電電流が下降していく。
【0067】
ここで、出力電流リプル率が10%であると仮定すると、充電電流の平均値がたとえば10A(アンペア)の状態において、出力電流リプルの振幅は1.0Aとなる。すなわち、充電電流は、9.5A〜10.5Aの範囲で変動する。
【0068】
この状態から充電電流がさらに下降していき、時刻t1において、充電電流の平均値がたとえば1.0Aになると、出力電流リプルの振幅は0.1Aとなる。すなわち、充電電流は、0.95A〜1.05Aの範囲で変動する。
【0069】
このとき、充電停止電流値Ieが0.95Aに設定されていた場合には、満充電状態であると誤判定され、充電が停止されてしまう。すなわち、出力電流リプルが無ければ時刻t2まで充電動作が継続されて負荷202が満充電されるはずが、時刻t2より前の時刻t1で充電動作が終了してしまう。
【0070】
そこで、本発明の実施の形態に係る電力供給装置では、以下のようなスイッチング周波数切り替えを行なうことにより、上記問題点を解決する。
【0071】
すなわち、制御部14は、充電電圧が定電圧目標値Vmに達したタイミング以降において、スイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4のスイッチング周波数を上げる。
【0072】
図5は、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路による充電動作の手順を定めたフローチャートである。
【0073】
図5を参照して、まず、制御部14は、電力伝達用絶縁回路53から負荷202に供給される充電電流のレベルが所定値Imを維持するように、昇降圧回路52におけるスイッチ素子Z11を制御する(ステップS1)。
【0074】
次に、制御部14は、電力伝達用絶縁回路53から負荷202に供給される充電電圧のレベルが上昇して定電圧目標値Vmに達すると(ステップS2でYES)、充電電流のレベルを所定値Imに維持する代わりに、充電電圧が定電圧目標値Vmを維持するように昇降圧回路52におけるスイッチ素子Z11を制御する(ステップS3)。
【0075】
次に、制御部14は、充電電流のレベルが下降して所定の周波数切り替え閾値Thfを下回ると(ステップS4でYES)、スイッチ素子Z1〜Z4のスイッチング周波数を上げる(ステップS5)。
【0076】
次に、制御部14は、充電電流のレベルが下降して充電停止電流値Ieに達すると(ステップS6でYES)、負荷202への電力供給を停止する(ステップS7)。
【0077】
図6は、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路における出力電力と出力電流リプル率との関係の測定結果を示す図である。図6は、出力電圧300Vdc、かつスイッチング周波数100kHzの条件下で出力電力を500W〜3000Wに設定した場合における出力電流リプル率の測定結果を示している。
【0078】
図6を参照して、この測定結果では、出力電力が500Wのときの出力電流リプル率が約8%であり、出力電力が1000Wのときの出力電流リプル率が約12%であり、出力電力が1500Wのときの出力電流リプル率が約13.5%であり、出力電力が2000Wのときの出力電流リプル率が約14.5%であり、出力電力が2500Wのときの出力電流リプル率が約16.5%であり、出力電力が3000Wのときの出力電流リプル率が約18.5%である。
【0079】
電力伝達用絶縁回路53では、たとえば、出力電力500Wのときのスイッチ素子Z1〜Z4の切り替え後のスイッチング周波数を、この測定におけるスイッチング周波数の2倍の200kHzに設定する。
【0080】
出力電流リプルとスイッチング周波数とは概略反比例の関係を示すことから、スイッチング周波数を2倍に設定すると、出力電流リプル率は、8%の略1/2の4%に低減される。
【0081】
たとえば、出力電流リプル率の低減を重視する場合には、電力伝達用絶縁回路53の出力コンデンサすなわちキャパシタC2の容量はそのままで出力電流リプル率を上記のように略1/2に低減すればよい。
【0082】
一方、機器の小型化を重視する場合には、キャパシタC2の容量を略1/2として小型化を図り、出力電流リプル率を8%に維持したままとすればよい。
【0083】
このように、電力供給装置201では、出力コンデンサの容量と出力電流リプル率とのチューニングの幅を広げることが可能になる。
【0084】
また、電力伝達用絶縁回路53は、たとえば、スイッチ素子Z1〜Z4としてIGBTを使用する場合には、次の充放電期間までに各スイッチ素子を通して流れる電流が完全にゼロになるようにするために、最低1μs程度のデッドタイムを確保することが必要である。
【0085】
デッドタイムを1μsに固定したままスイッチ素子Z1〜Z4のスイッチング周波数を増加させていくと、500kHzにおいて充放電期間がゼロ、すなわち電力伝達動作のデューティがゼロとなり、電力伝達用絶縁回路53は動作不能となる。このため、切り替え後のスイッチング周波数は、500kHz未満に設定する必要がある。
【0086】
すなわち、制御部14は、充電電圧が定電圧目標値Vmに達したタイミング以降におけるスイッチング周波数の上限値を、デッドタイムである期間T2および期間T4の長さとして所定時間を確保したときに、充放電期間である期間T1および期間T3を所定時間以上確保することが可能なスイッチング周波数に設定する。
【0087】
図7は、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路における前段のスイッチ素子の電流波形を示す図である。
【0088】
図7は、電力伝達用絶縁回路53の出力電圧を300Vdcとし、出力電力を500Wとし、デッドタイムを1μsとした場合における、スイッチ素子Z1およびZ2の電流波形のシミュレーション結果を示している。図7において、グラフG1は、スイッチング周波数が100kHzの場合を示し、グラフG2は、スイッチング周波数が200kHzの場合を示し、グラフG3は、スイッチング周波数が300kHzの場合を示し、グラフG4は、スイッチング周波数が400kHzの場合を示す。
【0089】
図7に示すように、電力伝達用絶縁回路53では、スイッチング周波数が高くなるにしたがって充放電期間が短くなることから、スイッチ素子を通して流れる電流のピークが大きくなり、かつターンオフ時の電流も大きくなる。このため、スイッチング周波数が高くなるにしたがってスイッチ素子における導通損失およびスイッチング損失の両方が増加する。
【0090】
図8は、本発明の実施の形態に係る電力伝達用絶縁回路におけるスイッチング周波数と効率との関係を示す図である。図8は、図7と同じ条件下でのシミュレーション結果を示している。
【0091】
図8を参照して、電力伝達用絶縁回路53の効率は、スイッチング周波数が200kHzを超えたあたりから大幅に低下している。このため、スイッチング周波数の上限値は、大幅な損失低下のない200kHz程度にすることが好ましいことが分かる。
【0092】
また、スイッチ素子Z1〜Z4のスイッチング周波数は、電力伝達用絶縁回路53の出力電力が小さいとき、すなわち充電動作の末期において上昇させれば十分である。すなわち、図5において説明したように、制御部14は、充電電圧が定電圧目標値Vmに達したタイミング以降において、充電電流のレベルが下降して所定の周波数切り替え閾値Thfを下回ると、スイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4のスイッチング周波数を上げる。そして、周波数切り替え閾値Thfは、充電停止電流値Ieより大きい。
【0093】
このような構成により、電力伝達用絶縁回路53の出力電力が大きい状態において高効率を維持しながら、出力コンデンサの容量と出力電流リプル率とのチューニングの幅を広げることができる。すなわち、スイッチング周波数の上昇による効率の低下をごく僅かに抑えることができるため、トランスレス絶縁回路を用いた充電器における高効率化および小型化のトレードオフを緩和することが可能となる。
【0094】
具体的には、周波数切り替え閾値Thfは、以下の式を満足するように設定される。
(Thf−Thf×Rp/2)>Ie
【0095】
但し、Thfは周波数切り替え閾値Thfであり、Ieは充電停止電流値Ieであり、Rpは(充電電流の振幅/充電電流の平均値)で定義される充電電流のリップル率である。
【0096】
図9は、本発明の実施の形態に係る電力供給装置における充電電流を示す図である。
【0097】
図9を参照して、充電電圧が定電圧目標値Vmに達した後、充電電圧を定電圧目標値Vmに維持すると、充電電流が下降していく。
【0098】
ここで、出力電流リプル率が10%であると仮定すると、充電電流の平均値がたとえば10A(アンペア)の状態において、出力電流リプルの振幅は1.0Aとなる。すなわち、充電電流は、9.5A〜10.5Aの範囲で変動する。
【0099】
この状態から充電電流がさらに下降して所定の周波数切り替え閾値Thfを下回ると、制御部14は、スイッチ素子Z1〜Z4のスイッチング周波数を上げる。
【0100】
これにより、出力電流リプルの振幅が小さくなるため、充電電流の平均値がたとえば1.0Aになる時刻t1において、出力電流リプルの振幅は0.1Aよりも小さくなる。
【0101】
そうすると、充電停止電流値Ieが0.95Aに設定されていても、制御部14は、「負荷202が満充電状態である」と誤判定せず、充電動作を継続する。すなわち、時刻t1以降も充電動作が継続され、充電停止時刻を満充電状態に対応する時刻t2にさらに近づけることが可能となる。
【0102】
ところで、特許文献1に記載の電源装置用絶縁回路等、トランスレス絶縁回路を用いた充電器では、当該絶縁回路におけるスイッチング損失と、出力コンデンサの体積および重量との間にトレードオフが存在し、高効率化および小型化の両立が困難である、という問題点があった。
【0103】
これに対して、本発明の実施の形態に係る電力供給装置では、制御部14は、スイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4のスイッチングを制御することにより昇降圧回路52からの直流電圧を負荷202に供給する。また、制御部14は、負荷202に電力を供給する際、電力伝達用絶縁回路53から負荷202に供給される充電電流のレベルが所定値Imを維持するように昇降圧回路52を制御する。制御部14は、電力伝達用絶縁回路53から負荷202に供給される充電電圧のレベルが上昇して所定の定電圧目標値Vmに達すると、充電電流のレベルを所定値Imに維持する代わりに、充電電圧が定電圧目標値Vmを維持するように昇降圧回路52を制御する。そして、制御部14は、充電電圧が定電圧目標値Vmに達したタイミング以降において、スイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4のスイッチング周波数を上げる。
【0104】
具体的には、トランスレス絶縁回路を用いた充電器において、充電対象の充電状態に応じてトランスレス絶縁回路のスイッチング周波数を可変とする。すなわち、満充電付近においてトランスレス絶縁回路のスイッチング周波数を上昇させる制御を行なう。これにより、トランスレス絶縁回路を用いた充電器の満充電付近における出力特性に関し、出力コンデンサ容量と出力電流リプル率とのチューニングの幅を広げることができるため、高効率化および小型化のトレードオフを緩和することができる。
【0105】
したがって、本発明の実施の形態に係る電力供給装置では、入力側および出力側間を絶縁しながら電力を伝達し、電池等の充電対象を充電するための構成において、充電を良好に行なうとともに、高効率化および小型化の両立を図ることができる。
【0106】
また、本発明の実施の形態に係る電力供給装置では、制御部14は、充電電圧が定電圧目標値Vmに達したタイミング以降において、充電電流のレベルが下降して所定の周波数切り替え閾値Thfを下回ると、スイッチ素子Z1ないしスイッチ素子Z4のスイッチング周波数を上げる。
【0107】
このような構成により、電力伝達用絶縁回路53の出力電力が大きい状態において高効率を維持しながら、出力コンデンサの容量と出力電流リプル率とのチューニングの幅を広げることができる。すなわち、スイッチング周波数の上昇による効率の低下を、周波数切り替え閾値Thfの設定によってごく僅かに抑えることができるため、トランスレス絶縁回路を用いた充電器における高効率化および小型化のトレードオフを緩和することが可能となる。
【0108】
また、本発明の実施の形態に係る電力供給装置では、制御部14は、充電電圧が定電圧目標値Vmに達したタイミング以降において、充電電流のレベルが下降して充電停止電流値Ieに達すると、負荷202への電力供給を停止する。そして、周波数切り替え閾値Thfは、充電停止電流値Ieより大きい。
【0109】
このような構成により、充電動作を停止すべき充電電流値を考慮した適切な周波数切り替え閾値を設定することができる。
【0110】
また、本発明の実施の形態に係る電力供給装置では、周波数切り替え閾値Thfが、以下の式を満足するように設定される。
(Thf−Thf×Rp/2)>Ie
【0111】
但し、Thfは周波数切り替え閾値であり、Ieは充電停止電流値であり、Rpは(充電電流の振幅/充電電流の平均値)で定義される充電電流のリップル率である。
【0112】
このような構成により、スイッチング周波数の切り替えを行なうべき状態に至る直前まで電力伝達用絶縁回路53の効率を高い状態に維持することができるため、スイッチング周波数の切り替えに伴う電力伝達用絶縁回路53の効率の低下を最大限に防ぐことができる。
【0113】
また、本発明の実施の形態に係る電力供給装置では、制御部14は、充電電圧が定電圧目標値Vmに達したタイミング以降におけるスイッチング周波数の上限値を、デッドタイムである期間T2および期間T4の長さとして所定時間を確保したときに、充放電期間である期間T1および期間T3を所定時間以上確保することが可能なスイッチング周波数に設定する。
【0114】
このような構成により、電力伝達用絶縁回路53による電力伝達動作を考慮した適切な値に、切り替え後のスイッチング周波数を設定することができる。
【0115】
なお、本発明の実施の形態に係る電力供給装置では、制御部14は、充電電圧のレベルが定電圧目標値Vmに達すると、充電電圧が定電圧目標値Vmを維持するように昇降圧回路52におけるスイッチ素子Z11を制御する構成であるとしたが、これに限定するものではない。制御部14は、充電電圧のレベルが定電圧目標値Vmに達すると、定電圧目標値Vm以外の値で充電電圧を一定に保つ構成であってもよい。
【0116】
また、本発明の実施の形態に係る電力供給装置では、制御部14は、電力伝達用絶縁回路53から負荷202に供給される充電電圧のレベルが上昇して定電圧目標値Vmに達したタイミング以降において、スイッチ素子Z1〜Z4のスイッチング周波数を1回だけ高周波数に切り替える構成であるとしたが、これに限定するものではない。制御部14は、上記タイミング以降においてスイッチ素子Z1〜Z4のスイッチング周波数を2回以上段階的に切り替える構成であってもよい。
【0117】
また、本発明の実施の形態に係る電力供給装置は、昇降圧回路52を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。昇降圧回路52に限らず、直流電圧を出力し、直流電圧のレベルを調整可能な電圧供給回路を備える構成であればよい。
【0118】
また、本発明の実施の形態に係る電力供給装置では、負荷202は、たとえば、EVおよびプラグイン方式のHV等の駆動用の主電池として用いられるLiイオン電池であるとしたが、これに限定するものではない。負荷202は、他の種類の電池であってもよく、たとえば、定電流/定電圧充電に適した制御弁式(シール)鉛蓄電池、または一般の自動車用の液式鉛蓄電池であってもよい。
【0119】
また、電力伝達用絶縁回路53は、キャパシタC0を備えない構成であってもよい。但し、キャパシタC0を設けることにより、電力伝達用絶縁回路53への入力電流のリップルを防ぎ、回路動作の安定化を図るという効果が得られる。
【0120】
また、電力伝達用絶縁回路53は、キャパシタC0〜C2を備える構成であるとしたが、キャパシタに限らず、コイル(インダクタ)等の他の蓄電素子を備える構成であってもよい。
【0121】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0122】
14 制御部
21 入力スイッチ部
22 出力スイッチ部
51 整流回路
52 昇降圧回路
53 電力伝達用絶縁回路
61 電流検出部
62 電圧検出部
101 電力供給装置
C0〜C2,C11,C21 キャパシタ
D1,D2,D3,D4,D11 ダイオード
L11 インダクタ
Z1,Z2,Z3,Z4,Z11 スイッチ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電対象に電力を供給するための電力供給装置であって、
直流電圧を出力し、前記直流電圧のレベルを調整可能な電圧供給回路と、
前記電圧供給回路および前記充電対象間を絶縁しながら、前記電圧供給回路から受けた直流電圧を前記充電対象に伝達するための電力伝達用絶縁回路とを備え、
前記電力伝達用絶縁回路は、
第1端および第2端を有する第1の蓄電素子と、
前記充電対象と電気的に接続された第1端および第2端を有する第2の蓄電素子と、
第1端、および前記第1の蓄電素子の第1端と電気的に接続された第2端を有する第1のスイッチ素子、ならびに第1端、および前記第1の蓄電素子の第2端と電気的に接続された第2端を有する第2のスイッチ素子を含み、前記第1のスイッチ素子の第1端および前記第2のスイッチ素子の第1端において前記電圧供給回路から受けた前記直流電圧を前記第1の蓄電素子に供給するための入力スイッチ部と、
前記第1の蓄電素子の第1端と前記第2の蓄電素子の第1端との間に接続された第3のスイッチ素子および前記第1の蓄電素子の第2端と前記第2の蓄電素子の第2端との間に接続された第4のスイッチ素子を含み、前記第1の蓄電素子に蓄えられた電力を前記第2の蓄電素子に供給するための出力スイッチ部とを含み、
前記電力供給装置は、さらに、
前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子のスイッチングを制御することにより前記直流電圧を前記充電対象に供給するための制御部を備え、
前記制御部は、前記充電対象に電力を供給する際、前記電力伝達用絶縁回路から前記充電対象に供給される充電電流のレベルが所定値を維持するように前記電圧供給回路を制御し、前記電力伝達用絶縁回路から前記充電対象に供給される充電電圧のレベルが上昇して所定の定電圧目標値に達すると、前記充電電流のレベルを前記所定値に維持する代わりに、前記充電電圧が所定値を維持するように前記電圧供給回路を制御し、前記充電電圧が前記定電圧目標値に達したタイミング以降において、前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子のスイッチング周波数を上げる、電力供給装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記充電電圧が前記定電圧目標値に達したタイミング以降において、前記充電電流のレベルが下降して所定の周波数切り替え閾値を下回ると、前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子のスイッチング周波数を上げる、請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記充電電圧が前記定電圧目標値に達したタイミング以降において、前記充電電流のレベルが下降して充電停止電流値に達すると、前記充電対象への電力供給を停止し、
前記周波数切り替え閾値は、前記充電停止電流値より大きい、請求項2に記載の電力供給装置。
【請求項4】
前記周波数切り替え閾値が、以下の式を満足するように設定される、請求項3に記載の電力供給装置。
(Thf−Thf×Rp/2)>Ie
但し、Thfは前記周波数切り替え閾値であり、Ieは前記充電停止電流値であり、Rpは(前記充電電流の振幅/前記充電電流の平均値)で定義される前記充電電流のリップル率である。
【請求項5】
前記制御部は、前記入力スイッチ部における各前記スイッチ素子をオンし、かつ前記出力スイッチ部における各前記スイッチ素子をオフする第1の期間と、前記入力スイッチ部における前記各スイッチ素子および前記出力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオフする第2の期間と、前記入力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオフし、かつ前記出力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオンする第3の期間と、前記入力スイッチ部における前記各スイッチ素子および前記出力スイッチ部における前記各スイッチ素子をオフする第4の期間とをこの順番で繰り返し、
前記制御部は、前記充電電圧が前記定電圧目標値に達したタイミング以降における前記スイッチング周波数の上限値を、前記第2の期間および前記第4の期間の長さとして所定時間を確保したときに、前記第1の期間および前記第3の期間を所定時間以上確保することが可能なスイッチング周波数に設定する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電力供給装置。
【請求項6】
直流電圧を出力し、前記直流電圧のレベルを調整可能な電圧供給回路と、
前記電圧供給回路および充電対象間を絶縁しながら、前記電圧供給回路から受けた直流電圧を前記充電対象に伝達するための電力伝達用絶縁回路とを備え、
前記電力伝達用絶縁回路は、
第1端および第2端を有する第1の蓄電素子と、
前記充電対象と電気的に接続された第1端および第2端を有する第2の蓄電素子と、
第1端、および前記第1の蓄電素子の第1端と電気的に接続された第2端を有する第1のスイッチ素子、ならびに第1端、および前記第1の蓄電素子の第2端と電気的に接続された第2端を有する第2のスイッチ素子を含み、前記第1のスイッチ素子の第1端および前記第2のスイッチ素子の第1端において前記電圧供給回路から受けた前記直流電圧を前記第1の蓄電素子に供給するための入力スイッチ部と、
前記第1の蓄電素子の第1端と前記第2の蓄電素子の第1端との間に接続された第3のスイッチ素子および前記第1の蓄電素子の第2端と前記第2の蓄電素子の第2端との間に接続された第4のスイッチ素子を含み、前記第1の蓄電素子に蓄えられた電力を前記第2の蓄電素子に供給するための出力スイッチ部とを含む電力供給装置における電力供給方法であって、
前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子のスイッチングを制御することにより前記直流電圧を前記充電対象に伝達するとともに、前記電力伝達用絶縁回路から前記充電対象に供給される充電電流のレベルが所定値を維持するように前記電圧供給回路を制御するステップと、
前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子のスイッチングを制御することにより前記直流電圧を前記充電対象に伝達するとともに、前記電力伝達用絶縁回路から前記充電対象に供給される充電電圧のレベルが上昇して所定の定電圧目標値に達すると、前記充電電流のレベルを前記所定値に維持する代わりに、前記充電電圧が所定値を維持するように前記電圧供給回路を制御するステップと、
前記充電電圧が前記定電圧目標値に達したタイミング以降において、前記第1のスイッチ素子ないし前記第4のスイッチ素子のスイッチング周波数を上げるステップとを含む、電力供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−5643(P2013−5643A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136101(P2011−136101)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【Fターム(参考)】