説明

電力供給装置

【課題】高い周波数をもつ交流電力が低い周波数用の回路に侵入することを防ぐために用いるインダクタンスを小さくできる、電力供給装置を提供する。
【解決手段】電力供給装置1は、第1周波数の交流電力を出力する第1発振器2と、第1発振器2に接続される第1整合回路3と、第1周波数よりも高い第2周波数の交流電力を出力する第2発振器4と、第2発振器4に接続される第2整合回路5と、第1整合回路3と第2整合回路5とが接続される変成器6と、変成器6の二次側に接続される誘導加熱コイル7と、を、備え、第1整合回路3は、第1周波数を通過させ、かつ、第2周波数を阻止するT型フィルタ12を備え、第2整合回路5は、第2周波数を通過させ、かつ、第1周波数を阻止するコンデンサ19を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力供給装置に関する。さらに詳しくは、本発明は互いに異なる2つの周波数からなる電力を、例えば誘導加熱コイル等の負荷に供給する電力供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに異なる2つの周波数をもつ交流電力を誘導加熱コイルなどの誘導負荷に供給し、この誘導加熱コイルで歯車や螺子等の被加熱物を均一に加熱する技術が知られている。この場合、高い周波数の交流電力は透過深度が浅いので、被加熱物の表面近傍は高い周波数の交流電力で加熱される。一方、低い周波数の交流電力は透過深度が深いので、被加熱物の内部は低い周波数の交流電力で加熱される。従って、被加熱物を互いに異なる2つの周波数で誘導加熱することによって、被加熱物の表面から低い周波数の透過深度の深さ程度までの領域を同時加熱することができる。互いに異なる2つの周波数としては、例えば高い周波数が100kHz〜2MHz程度であり、低い周波数が1kHz〜50kHz程度である。
【0003】
特許文献1には、高周波数の発振器と低周波数の発振器とを備えた2周波数による誘導加熱装置が開示されている。高周波数の発振器からの交流電力が第1整合回路部に出力される。第1整合回路部は、誘導加熱コイル及び被加熱物からなる負荷のインピーダンスを高周波数の出力インピーダンスに整合させ、高周波数の交流電力を誘導加熱コイルに供給する。同時に、低周波数の発振器からの交流電力を第2整合回路部に出力し、第2整合回路部において、負荷のインピーダンスを低周波数の出力インピーダンスに整合させて、低周波数の交流電力を誘導加熱コイルに供給する。
【0004】
図5は、特許文献1の2周波数による誘導加熱装置の一例を示す回路図である。第1整合回路部はコンデンサ107で構成されている。コンデンサ107により、低い周波数をもつ交流電力が高い周波数の交流電力側に流入するのを阻止している。
一方、第2整合回路部は、コンデンサ112とインダクタンス119との直列共振回路から構成されており、直列共振回路により、高い周波数をもつ交流電力が低い周波数の交流電力側に流入するのを阻止している。
【0005】
特許文献2には、二周波電源溶解炉用電源回路として、誘導加熱コイルに二周波電源を接続する回路が開示されている。
図6は、特許文献2の二周波電源溶解炉用電源回路の一例を示す回路図である。低周波数(f)の電流形インバータ部Aが、共振周波数fの並列共振回路113Lに接続されると共に、コンデンサC2L及びインダクタンスLからなる共振周波数fの直列共振回路を介して誘導加熱コイル120に接続されている。
一方、高周波数(f)の電流形インバータ部Aが、共振周波数fの並列共振回路113Hに接続される共に、コンデンサC2Hを介して誘導加熱コイルに接続されている。
【0006】
特許文献2において、上記二周波電源溶解炉用電源回路では、低周波側から高周波側の電流形インバータ部Aに向かって流出しようとする低周波電流成分は、高周波回路のコンデンサC2Hと周波数fの近辺で低インピーダンス値となる並列共振回路113Hとで吸収されて、高周波側の電流形インバータ部Aに流入しないと記載されている。
【0007】
一方、高周波側の電流形インバータ部Aから低周波側の電流形インバータ部Aに向かって流出しようとする高周波電流成分は、低周波回路のインダクタンスL及びコンデンサC2Lと周波数fの近辺で低インピーダンス値となる並列共振回路113Lとで吸収されて、低周波側の電流形インバータ部Aに流入しないと記載されている。
【0008】
【特許文献1】特許第3150968号公報(例えば第3図、第4図)
【特許文献2】特開平11−288780号公報(例えば図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された技術では、高い周波数の交流電力が低い周波数の発振器に侵入することを防ぐために、低い周波数の発振器に接続される整合回路部にインダクタンス119を接続させておく必要がある。特許文献1によれば、インダクタンス119は、誘導負荷のインダクタンスよりも少なくとも4倍大きくしなければならない。従って、非常に大きなインダクタンス113を整合回路部に設ける必要がある。
【0010】
特許文献2に開示された技術は、高周波及び低周波用の電流形インバータ部にそれぞれ並列共振回路を設け、かつ、低い周波数の電流インバータ部にインダクタンスL1を接続した回路構成を有している。低い周波数の電流インバータ部に接続されるインダクタンスL1を設けて、高周波成分の低周波側への侵入を阻止している。よって、特許文献1と同様に非常に大きなインダクタンスL1を整合回路に設ける必要がある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑み、高い周波数をもつ交流電力が低い周波数用の回路に侵入することを防ぐために用いるインダクタンスを小さくできる、電力供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の電力供給装置は、
第1周波数の交流電力と第2周波数の交流電力とを誘導加熱コイルに供給する電力供給装置において、第1周波数の交流電力を出力する第1発振器と、第1発振器に接続される第1整合回路と、第1周波数よりも高い第2周波数の交流電力を出力する第2発振器と、上記第2発振器に接続される第2整合回路と、第1整合回路と第2整合回路とが接続される変成器と、変成器の二次側に接続される誘導加熱コイルと、を、備え、第1整合回路は第1周波数を通過させ、かつ、第2周波数を阻止するT型フィルタを含み、第2整合回路は第2周波数を通過させ、かつ、第1周波数を阻止するコンデンサを含むことを特徴とする。
【0013】
上記構成において、第1整合回路は、好ましくは、第1発振器に接続される第1整合変圧器と、第1整合変圧器に接続される第1コンデンサと、第1コンデンサに直列接続されるT型フィルタと、からなり、第1コンデンサの一端が第1整合変圧器の二次巻き線の一端に接続され、第1コンデンサの他端がT型フィルタの入力端に接続され、T型フィルタの出力端が前記変成器の一次巻き線に接続される。
【0014】
T型フィルタは、好ましくは、第1リアクトルと第2リアクトルと第2コンデンサとからなり、第1リアクトルと第2リアクトルとが直列接続され、第1リアクトルと第2リアクトルとの接続点に第2コンデンサの一端が接続されている。
【0015】
T型フィルタは、好ましくは、第2発振器の基本波とこの基本波の少なくとも一つ以上の周波数の高調波を通過させる。
【0016】
第2整合回路は、好ましくは、第2発振器に接続される第2整合変圧器と第2整合変圧器に接続されるコンデンサとからなり、コンデンサの一端が第2整合変圧器の二次巻き線の一端に接続され、その他端は変成器の一次巻き線に接続される。
【0017】
第1発振器は、好ましくは、交流電力を直流電力に変換する第1順変換部と、第1順変換部から出力された直流電力を平滑する第1平滑コンデンサと、第1平滑コンデンサで平滑された直流電力を第1周波数の交流電力に変換する第1逆変換部と、からなり、第2発振器は、交流電力を直流電力に変換する第2順変換部と、第2順変換部から出力された直流電力を平滑する第2平滑コンデンサと、第2平滑コンデンサで平滑された直流電力を第2周波数の交流電力に変換する第2逆変換部と、からなる。
【0018】
好ましくは、さらに、一つの交流電源から出力された交流電力を直流電力に変換する順変換部を備え、第1発振器は、順変換部から出力された直流電力を平滑する第1平滑コンデンサと第1平滑コンデンサで平滑された直流電力を第1周波数の交流電力に変換する第1逆変換部とからなり、第2発振器は、順変換部から出力された直流電力を平滑する第2平滑コンデンサと第2平滑コンデンサで平滑された直流電力を第2周波数の交流電力に変換する第2逆変換部とからなる。
【0019】
第1逆変換部及び第2逆変換部は、好ましくは電圧形逆変換部である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡単な整合回路の構成によって第1周波数及び第2周波数の交流電力を効率良く誘導加熱コイルに印加し得る電力供給装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態に係る電力供給装置1の構成を示す回路図である。図1において、電力供給装置1は、低周波用の第1発振器2と、第1発振器2に接続される低周波用の第1整合回路3と、高周波用の第2発振器4と、第2発振器4に接続される高周波用の第2整合回路5と、第1整合回路3及び第2整合回路5が接続される変成器6と、変成器6に接続される誘導加熱コイル7と、を備えて構成されている。
なお、低周波用の第1発振器2及び高周波用の第2発振器4の周波数を、それぞれ、第1周波数(fと表記する)、第2周波数(fと表記する)と呼ぶ。第2周波数は第1周波数よりも高い周波数である。
【0022】
第1発振器2は、所謂電圧形インバータからなる発振器を用いることができる。同様に第2発振器4も、電圧形インバータからなる発振器を用いることができる。
【0023】
変成器6は、入力側の一次巻き線6Aと出力側の二次巻き線6Bとからなる。変成器6の一次巻き線6Aには、第1整合回路3を介して第1周波数の交流電力と第2整合回路5を介して第2周波数の交流電力とが印加される。変成器6の二次巻き線6Bには誘導加熱コイル7が接続されており、図示しない被加熱物が挿入される。
【0024】
変成器6には、図示するように一次巻き線6A側に1次側電圧タップ6Cを設けてもよい。変成器6の1次側電圧タップ6Cを切り替えることで、変成器6の二次側電圧を変化させることができる。
【0025】
第1整合回路3について説明する。
低周波用の第1整合回路3は、第1発振器2に接続される第1整合変圧器10と、第1整合変圧器10に接続される第1コンデンサ11と、第1コンデンサ11に直列接続されるT型フィルタ12と、から構成されている。第1整合変圧器10は、第1発振器2に接続される入力側の一次巻き線10Aと出力側の二次巻き線10Bとからなる。第1コンデンサ11はその一端が第1整合変圧器10の二次巻き線10Bの一端に接続され、第1コンデンサ11の他端はT型フィルタ12の入力端12Aに接続され、T型フィルタ12の出力端12Bが変成器6の一次巻き線6Aの一端に接続されている。
【0026】
第1整合変圧器10には、図示するように一次巻き線10A側に1次側電圧タップ10Cを設けてもよい。1次側電圧タップ10Cは二次巻き線10B側に設けてもよい。第1整合変圧器10の1次側電圧タップ10Cを切り替えることで、第1整合変圧器10の二次側電圧を変化させることができる。1次側電圧タップ10Cを設けることで、第1発振器2から第1整合回路3へ入力される第1周波数の電圧調整が可能となる。
【0027】
第1コンデンサ11の容量値は、第1発振器2から出力される第1周波数に対して容量性リアクタンスが小さくなるような値とすればよい。
【0028】
T型フィルタ12は、第1コンデンサ11の他端に接続される第1リアクトル14及び第2リアクトル15と、T型フィルタ用の第2コンデンサ16と、から構成されている。
【0029】
T型フィルタ12において、第1リアクトル14と第2リアクトル15が直列接続され、第1リアクトル14及び第2リアクトル15の接続点に第2コンデンサ16の一端が接続されている。第2コンデンサ16の他端は、第1整合変圧器10の二次巻き線10Bの他端及び変成器6の一次巻き線6Aの他端(低電位側)に接続されている。つまり、第2コンデンサ16の他端は、第1整合変圧器10の二次巻き線10Bの他端及び変成器6の一次巻き線6Aの他端からなる共通配線17となる低電位側に接地されている。
【0030】
T型フィルタ12の出力端12Aとなる第2リアクトル15の他端は、変成器6の一次巻き線6Aの一端(高電位側)に接続されている。
【0031】
T型フィルタ12は、第1周波数を通過させるが第2周波数を通過させないローパスフィルタ特性を有している。T型フィルタ12は、第1発振器2の出力を効率良く変成器6に伝送すると共に第2発振器4の出力が第1発振器2側に流入するのを阻止する作用を有している。
ここで、第1リアクトル14及び第2リアクトル15は同じインダクタンス値を有していてもよい。
【0032】
一方、第1発振器2の出力波形が矩形波の場合には、基本周波数以外に高調波の周波数成分を含有している。第1発振器2の出力を変成器6に効率良く伝送するためのT型フィルタ12の遮断特性を正弦波の場合とは異なる特性とすればよい。
【0033】
図2は、T型フィルタ12の伝達特性を模式的に説明する図である。図の横軸は周波数を、縦軸は減衰量を示している。
第2発振器4の出力波形が矩形波の場合には、T型フィルタ12は、基本周波数の第1周波数(f)を通過させると共に、電力伝送特性が良好となるように基本周波数以の少なくとも一つ以上の高調波成分、好ましくは第7次位迄の高調波成分を通過させ、高周波の第2周波数(f)を通過させないローパスフィルタ特性をもたせればよい。図2に示すようにT型フィルタ12の伝達特性の一例は、第2発振器4から誘導加熱コイル7への電力伝送特性が良好となるように、基本周波数fから第7次高調波(7f)までを通過させる特性を有している。
【0034】
第2発振器4の出力は、後述する第2整合回路5の第3コンデンサ19を介して、第2リアクトル15と第2コンデンサ16との直列接続回路に入力される。従って、図2のようなT型フィルタの伝達特性で、第2周波数(f)に対して十分な減衰効果があればよい。
【0035】
T型フィルタ12に用いる第1リアクトル14及び第2リアクトル15のインダクタンス値は、第1周波数が1kHzから50kHz程度の周波数では、μHオーダーの値とすることができる。第2コンデンサ16の容量は、上記インダクタンスの値によって所望のローパスフィルタ特性が得られる値に選定すればよい。
【0036】
次に、第2整合回路5について説明する。
高周波用の第2整合回路5は、第2発振器4に接続される第2整合変圧器18と第2整合変圧器18に接続される高周波結合用の第3コンデンサ19とから構成されている。図示するように、第2整合変圧器18は、第2発振器4の出力端に接続される一次巻き線18Aと出力側の二次巻き線18Bとからなる。
【0037】
第2整合変圧器18の二次巻き線18Bの一端(高電位側)は、第3コンデンサ19を介して変成器6の一次巻き線6Aの一端(高電位側)に接続されている。一方、第2整合変圧器18の二次巻き線18Bの他端(低電位側)は、変成器6の一次巻き線6Aの他端(低電位側)に接続されている。
【0038】
第2整合変圧器18は、図示するように一次巻き線18A側に1次側電圧タップ18Cを設けてもよい。1次側電圧タップ18Cは二次巻き線18B側に設けてもよい。第2整合変圧器18の1次側電圧タップ18Cを切り替えることで、第2整合変圧器18の二次側電圧を変化させることができる。1次側電圧タップ18Cを設けることで、第2発振器4から第2整合回路5へ入力される第2周波数の電圧調整が可能となる。
【0039】
第3コンデンサ19の容量値は、第2発振器4から出力される第2周波数(f)に対して容量性リアクタンスが小さくなるような値にされると共に、第1発振器2から出力される第1周波数(f)に対して容量性リアクタンスが大きくなるような値に設定されている。
【0040】
第1発振器2と第2発振器4とが相互に分離している点について、さらに詳細に説明する。
第2発振器4から第1発振器2を見た場合、低周波用の第1整合回路3にはT型フィルタ12が挿入されている。第2発振器4から出力される第2周波数をT型フィルタ12の通過周波数帯域外とすることで、第2発振器4から第1発振器2への電力漏洩を効果的に阻止することができる。
【0041】
T型フィルタ12の第1リアクトル14及び第2リアクトル15のインダクタンスの値は、従来のコイルだけで第2発振器4からの電力漏洩を防止する場合と比較して小さな値とすることができ、低周波用の第1整合回路3の小型化を図ることができる。
【0042】
第2発振器4に接続される第2整合回路5において、第3コンデンサ(C3)19による容量性リアクタンスXC3(ここで、XC3=1/(2πfC3))は低周波数(f)では大きな値となる。このため、第1発振器2から第2発振器4への電力漏洩は、第3コンデンサ19の低周波数(f)における大きい容量性リアクタンスXC3で阻止される。つまり、第3コンデンサ19は低周波阻止用コンデンサ、所謂デカップリングコンデンサとなる。
【0043】
本発明の電力供給装置1では、第2発振器4の出力が第1発振器2へ流入しないように、第1整合回路3を、第1発振器2に接続される第1整合変圧器10と第1整合変圧器10の2次巻き線10Bに接続される第1コンデンサ11とT型フィルタ12とから構成しており、これにより第1発振器2及び第2発振器4からの周波数の異なる出力を誘導加熱コイル7へ効率良く印加することができ、しかも、第1整合回路3がT型フィルタ12を有していることによって第1整合回路3を小型化することができる。
【0044】
次に、第1発振器及び第2発振器の回路構成例について説明する。
図3は電力供給装置1の変形例を示す回路図である。電力供給装置30において、低周波数用の第1発振器2は、商用電源等を用いた交流電源25から出力された交流電力を直流電力に変換する第1順変換部26と、第1順変換部26から出力された直流電力を平滑する第1平滑コンデンサ27と、第1平滑コンデンサ27で平滑された直流電力を、第1周波数の交流電力に変換する電圧形の第1逆変換部(低周波逆変換部)28と、を備えている。
【0045】
第1順変換部26はブリッジ整流回路から構成されている。第1逆変換部28は所謂インバータからなり、トランジスタ等から構成された複数のスイッチング素子が組み込まれおり、これら複数のスイッチング素子の導通状態(オン)及び遮断状態(オフ)を制御することにより直流電力を第1周波数の交流電力に変換する。第1周波数は、例えば1kHz〜50kHz程度の周波数である。
【0046】
高周波数用の第2発振器4は、商用電源等を用いた交流電源35から出力された交流電力を直流電力に変換する第2順変換部36と、第2順変換部36から出力された直流電力を平滑する第2平滑コンデンサ37と、第2平滑コンデンサ37で平滑された直流電力を、第2周波数の交流電力に変換する電圧形の第2逆変換部(高周波逆変換部)38と、を備えている。
【0047】
第2順変換部36は、周知のブリッジ整流回路から構成されている。第2逆変換部38は第1逆変換部28と同様にインバータからなり、トランジスタ等から構成された複数のスイッチング素子が組み込まれていて、これら複数のスイッチング素子の導通状態(オン)及び遮断状態(オフ)を制御することによって直流電力を第2周波数の交流電力に変換する。第2周波数は、例えば100kHz〜2MHz程度の周波数である。
【0048】
さらに、第1発振器2及び第2発振器4は、図示していない電力の大きさや加熱時間等の制御を行う制御部等を有している。
【0049】
電力供給装置30を用いて被加熱物を誘導加熱する例を説明する。
電力供給装置30を含めた誘導加熱システム(図示せず)に電源が投入されることによって、交流電源25から第1発振器2に交流電力が供給されると共に、交流電源35から第2発振器4に交流電力が供給される。第1発振器2では、交流電源25から供給された交流電力が第1順変換部26で直流電力に変換され、この第1順変換部26から出力された直流電力が第1平滑コンデンサ27で平滑されて第1逆変換部28に入力され、この入力された直流電力は第1逆変換部28で、例えば1kHz〜50kHzの第1周波数の交流電力に変換される。この変換された交流電力は第1整合回路3に出力される。
【0050】
一方、第2発振器4では、交流電源35から供給された交流電力が第2順変換部36で直流電力に変換され、この第2順変換部36から出力された直流電力が第2平滑コンデンサ37で平滑されて第2逆変換部38に入力され、この入力された直流電力は第2逆変換部38で、例えば100kHz〜2MHzの第2周波数の交流電力に変換される。この変換された交流電力は第2整合回路5に出力される。
【0051】
変成器6へは、第1発振器2から出力された第1周波数の交流電力と第2発振器4から出力された第2周波数の交流電力とが入力される。第1周波数の交流電力は変成器6を介して交流電流が誘導加熱コイル7を流れ、この第1周波数の交流電流によって被加熱物に渦電流が誘導されて被加熱物が加熱される。
ここで、第1整合回路3にはT型フィルタ12が配置されているので、第2発振器4から出力された第2周波数の交流電力は第1発振器2に侵入できない。
【0052】
第2周波数の交流電力は変成器6を介して交流電流が誘導加熱コイル7を流れ、この第2周波数の交流電流によって被加熱物に渦電流が誘導されて被加熱物が加熱される。
ここで、第2整合回路5には、第3コンデンサ19が配置されており、第3コンデンサ19の容量性リアクタンスXC3は、低周波の第1周波数に対して大きな値となるので、第1発振器2から出力された第1周波数の交流電力は第2発振器4に侵入しない。
【0053】
図3に示した電力供給装置30の第1発振器2及び第2発振器4では、それぞれに独立した第1順変換部26と第2順変換部36を設け、互いに異なる周波数の交流電力を第1逆変換部28と第2逆変換部38に入力しているが、さらに、図4を参照して別の構成の電力供給装置40を説明する。
図4の電力供給装置40では、1つの交流電源45から1つの順変換部46に交流電力を入力し、この1つの順変換部46から第1逆変換部28及び第2逆変換部38に直流電力を出力している。
【0054】
図4に示す電力供給装置40によれば、図1、図3に示す電力供給装置1,30とは異なり、1つの交流電源45と、1つの順変換部46だけで済み、簡易な構成とすることができる。
【0055】
図4に示す電力供給装置40では、1つの交流電源45から1つの順変換部46に交流電力を入力し、この1つの順変換部46から第1逆変換部28及び第2逆変換部38に直流電力を出力する点以外は、電力供給装置30と同様にして、誘導加熱コイル7に第1周波数と第2周波数の交流電力を印加して、被加熱物を加熱することができる。
【0056】
以上説明したように、電力供給装置30,40では、第2発振器4から出力される第2周波数の交流電力は、第1整合回路3のT型フィルタ12で阻止されるので、この侵入防止のために従来のような大きなインダクタンスを有しているコイルは不要である。
【0057】
本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。上述した実施形態における、T型フィルタ12の伝達特性は、第1及び第2の周波数に応じて、第1リアクトル14及び第2リアクトル15のインダクタンスや第2コンデンサ16の値を、適宜に設計することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の電力供給装置の構成を示す回路図である。
【図2】T型フィルタの伝達特性を模式的に説明する図である。
【図3】電力供給装置の変形例を示す回路図である。
【図4】電力供給装置の別の変形例を示す回路図である。
【図5】特許文献1に開示されている公知の2周波数による誘導加熱装置の一例を示す回路図である。
【図6】特許文献2に開示されている公知の二周波電源溶解炉用電源回路の一例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0059】
1,30,40:電力供給装置
2:第1発振器
3:第1整合回路
4:第2発振器
5:第2整合回路
6:変成器
6A:一次巻き線
6B:二次巻き線
6C:1次側電圧タップ
7:誘導加熱コイル
10:第1整合変圧器
10A:一次巻き線
10B:二次巻き線
10C:1次側電圧タップ
11:第1コンデンサ
12:T型フィルタ
12A:入力端
12B:出力端
14:第1リアクトル
15:第2リアクトル
16:第2コンデンサ
17:共通配線
18:第2整合変圧器
18A:一次巻き線
18B:二次巻き線
18C:1次側電圧タップ
19:第3コンデンサ
25,35,45:交流電源
26:第1順変換部
27:第1平滑コンデンサ
28:第1逆変換部
36:第2順変換部
37:第2平滑コンデンサ
38:第2逆変換部
46:順変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周波数の交流電力と第2周波数の交流電力とを誘導加熱コイルに供給する電力供給装置において、
上記第1周波数の交流電力を出力する第1発振器と、
上記第1発振器に接続される第1整合回路と、
上記第1周波数よりも高い上記第2周波数の交流電力を出力する第2発振器と、
上記第2発振器に接続される第2整合回路と、
上記第1整合回路と上記第2整合回路とが接続される変成器と、
上記変成器の二次側に接続される誘導加熱コイルと、
を、備え、
上記第1整合回路は、上記第1周波数を通過させ、かつ、上記第2周波数を阻止するT型フィルタを含み、
上記第2整合回路は、上記第2周波数を通過させ、かつ、上記第1周波数を阻止するコンデンサを含むことを特徴とする、電力供給装置。
【請求項2】
前記第1整合回路は、前記第1発振器に接続される第1整合変圧器と、該第1整合変圧器に接続される第1コンデンサと、該第1コンデンサに直列接続される前記T型フィルタと、からなり、
上記第1コンデンサの一端が上記第1整合変圧器の二次巻き線の一端に接続され、
上記第1コンデンサの他端が前記T型フィルタの入力端に接続され、
前記T型フィルタの出力端が前記変成器の一次巻き線に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項3】
前記T型フィルタは、第1リアクトルと第2リアクトルと第2コンデンサとからなり、該第1リアクトルと該第2リアクトルとが直列接続され、該第1リアクトルと該第2リアクトルとの接続点に上記第2コンデンサの一端が接続されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電力供給装置。
【請求項4】
前記T型フィルタは、前記第2発振器の基本波と該基本波の少なくとも一つ以上の周波数の高調波を通過させることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の電力供給装置。
【請求項5】
前記第2整合回路は、前記第2発振器に接続される第2整合変圧器と、該第2整合変圧器に接続される前記コンデンサと、からなり、
前記コンデンサの一端が上記第2整合変圧器の二次巻き線の一端に接続され、該コンデンサの他端が前記変成器の一次巻き線に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項6】
前記第1発振器は、交流電力を直流電力に変換する第1順変換部と、
上記第1順変換部から出力された直流電力を平滑する第1平滑コンデンサと、
上記第1平滑コンデンサで平滑された直流電力を前記第1周波数の交流電力に変換する第1逆変換部と、からなり、
前記第2発振器は、交流電力を直流電力に変換する第2順変換部と、
上記第2順変換部から出力された直流電力を平滑する第2平滑コンデンサと、
上記第2平滑コンデンサで平滑された直流電力を前記第2周波数の交流電力に変換する第2逆変換部と、からなることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の電力供給装置。
【請求項7】
さらに、一つの交流電源から出力された交流電力を直流電力に変換する順変換部を備え、
前記第1発振器は、上記順変換部から出力された直流電力を平滑する第1平滑コンデンサと該第1平滑コンデンサで平滑された直流電力を前記第1周波数の交流電力に変換する第1逆変換部とからなり、
前記第2発振器は、上記順変換部から出力された直流電力を平滑する第2平滑コンデンサと該第2平滑コンデンサで平滑された直流電力を前記第2周波数の交流電力に変換する第2逆変換部とからなることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の電力供給装置。
【請求項8】
前記第1逆変換部及び前記第2逆変換部は、電圧形逆変換部であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の電力供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−67409(P2010−67409A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231224(P2008−231224)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(390029089)高周波熱錬株式会社 (288)
【Fターム(参考)】