説明

電力増幅器

【課題】出力電力が小さく、ピーク増幅器がオフ状態でも利得低下を防止できる電力増幅器を提供する。
【解決手段】ドハティ型増幅器100の電力合成手段41から出力される出力電力レベルを検出する検波回路63と、ドハティ型増幅器100の入力部に配置される第1および第2のスイッチ51、52と、検波回路63が検出する出力電力レベルに応じて第1および第2のスイッチ51、52の切り替え動作を制御する制御回路71とを備え、制御回路71は、検波回路63が検出する出力電力レベルが所定の閾値より小さい場合は入力信号は入力信号分配器31に入力せずに直接キャリア増幅器11に入力し、検波回路63が検出する出力電力レベルが所定の閾値より大きい場合は入力信号は入力信号分配器31に入力するように第1および第2のスイッチ51、52の切り替え動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波およびミリ波の送受信装置に利用される電力増幅器の一種であって、高効率な動作を得るドハティ型増幅器を用いた電力増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来のマイクロ波ドハティ(Doherty)型増幅器の概略構成を示す図である。
図8に示すように、ドハティ型増幅器は、入力端子101と、入力端子101に入力する信号を分配する分配器131と、分配器131で分配された一方の信号を増幅するA級ないしはB級にバイアスされたキャリア増幅器111と、分配器131で分配された他方の信号を増幅するC級にバイアスされたピーク増幅器121と、キャリア増幅器111の出力部に接続された特性インピーダンスZ0の1/4波長線路112と、ピーク増幅器121の入力部に接続された特性インピーダンスZ0の1/4波長線路122と、キャリア増幅器111の出力とピーク増幅器121の出力を合成する電力合成器141と、電力合成器141の出力部に接続された整合回路142と、整合回路142から信号を出力する出力端子102から構成される。
【0003】
前記整合回路142は、電力合成器141から出力端をみたインピーダンスをZ0/2に変換する回路である。
ここで、前記キャリア増幅器111、及びピーク増幅器121それぞれの動作時の出力負荷はZ0、出力端102のインピーダンスはZ0、線路112の特性インピーダンスはZ0と仮定する。
ピーク増幅器121はC級にバイアスされているため、入力信号電力が小さい場合は増幅動作を行わず、オフ(OFF)状態となり、入力信号電力がある特定の値より大きい場合に増幅作用を行うオン(ON)状態となる。
キャリア増幅器111は、A級ないしはB級にバイアスされているため、入力信号電力が小さい場合でも常時増幅動作を行う。
【0004】
図9は、図8に示したドハティ型増幅器において、入力端子101に入力する入力信号電力が小さく、ピーク増幅器121がオフである場合の各部のインピーダンスを示した図である。
ピーク増幅器121はオフ状態であり、電力合成器141よりピーク増幅器121側をみたインピーダンスは理想的には開放(OPEN)状態である。
このとき1/4波長線路112の働きによりキャリア増幅器111の負荷インピーダンスがZ0/2から2Z0に変換される。
負荷インピーダンスが2Z0の場合には、キャリア増幅器111は、飽和電力は小さいが効率が良好になるように設計されている。
【0005】
図10は、図8に示したドハティ型増幅器において、入力端子101に入力する入力信号電力が大きく、ピーク増幅器121がオンである場合の各部の負荷インピーダンスを示した図である。
それぞれの増幅器(即ち、キャリア増幅器111およびピーク増幅器121)の負荷インピーダンスはZ0となる。
この場合には、キャリア増幅器111およびピーク増幅器121共に飽和電力が大きくなるように設計されており、より一層大きな飽和電力が得られる。
この時のドハティ型増幅器の動作は飽和電力に近い状態で動作するから効率も高い。
【0006】
図11は、ドハティ型増幅器の効率特性の例を示す図であり、151は、図8に示したドハティ型増幅器の効率特性を、152は、図8に示したドハティ型増幅器のピーク増幅器がキャリア増幅器と同様にバイアスされた場合(即ち、A級ないしはB級にバイアスされた場合)の効率特性を示している。
図11に示すようにドハティ型増幅器は、飽和電力よりバックオフを取ったところで高効率性能を得る。
なお、上述したようなドハティ型の増幅器は、例えば、後述する非特許文献1に記載されている。
【0007】
ただし、ドハティ型増幅器は、ピーク増幅器121がオフ状態(即ち、増幅作用を行わない状態)とき、入力インピーダンスは開放ではないため、ピーク増幅器121側に分配される入力電力はロス(loss)となり、利得が下がる。
これに対し、入力インピーダンスが開放でない条件においても、高利得な特性を実現できる増幅器(電力合成形高効率増幅器)が、例えば、下記の特許文献1(特開2005−130013号公報)に示されている。
なお、特許文献1で示されている「電力合成形高効率増幅器」は、ドハティ型増幅器の一種である。
また、下記の非特許文献1にはドハティ型増幅器の構成図と動作原理が示されている。
【特許文献1】特開2005−130013号公報
【非特許文献1】“電力増幅器の低歪み・高効率化の手法(中山正敏、高木直)”、MWE 2004 Microwave Workshops Digest.p575-584
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上に説明したように、従来のドハティ型の電力増幅器は、低出力時においてピーク増幅器が増幅作用を行わないため、ピーク増幅器への入力電力分がロスとなり、その結果、利得が下がるという問題がある。
【0009】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、ピーク増幅器が増幅作用を行わない低出力時における利得の低下を防止できる「ドハティ型増幅器を用いた電力増幅器」を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る電力増幅器は、入力する入力信号を2分配する入力信号分配器、該入力信号分配器により2分配された入力信号の一方を増幅するA級ないしはB級にバイアスされたキャリア増幅器、2分配された前記入力信号の他方の入力信号を増幅するC級にバイアスされたピーク増幅器、前記キャリア増幅器および前記ピーク増幅器から出力する2つの信号の電力を合成する電力合成手段を有するドハティ型増幅器を用いた電力増幅器であって、前記ドハティ型増幅器の前記電力合成手段から出力される出力電力レベルを検出する検波回路と、前記ドハティ型増幅器の入力部に配置される第1のスイッチおよび第2のスイッチと、前記検波回路が検出する出力電力レベルに応じて前記第1のスイッチおよび第2のスイッチの切り替え動作を制御する制御回路とを備え、前記制御回路は、前記検波回路が検出する出力電力レベルが所定の閾値より小さい場合は、入力信号は前記入力信号分配器に入力せずに直接前記キャリア増幅器に入力し、前記検波回路が検出する出力電力レベルが所定の閾値より大きい場合は、入力信号は前記入力信号分配器に入力するように前記第1のスイッチおよび第2のスイッチの切り替え動作を制御するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、制御回路は、出力電力レベルが所定の閾値より小さい場合は、入力信号は入力信号分配器に入力せずに直接前記キャリア増幅器に入力し、出力電力レベルが所
定の閾値より大きい場合は、入力信号は入力信号分配器に入力するように第1のスイッチおよび第2のスイッチの切り替え動作を制御するので、ピーク増幅器が増幅作用を行わない低出力時における利得の低下を防止できる「ドハティ型増幅器を用いた電力増幅器」を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づいて、本発明の一実施の形態例について説明する。
なお、各図間において、同一符号は、同一あるいは相当のものであることを表す。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による電力増幅器の構成を示すブロック図である。
本実施の形態による電力増幅器は、図に示すように、入力端子1と、入力された高周波信号を分配する入力信号分配器(例えば、ウィルキンソン2分配器)31と、A級ないしはB級にバイアスされたキャリア増幅器11と、キャリア増幅器11の出力整合回路14を介したインピーダンス変成器15と、C級にバイアスされたピーク増幅器21と、電力合成部41と、ピーク増幅器21がオフの時に電力合成部41からみたインピーダンスを開放状態とするための位相調整用の伝送線路26と、ピーク増幅器21がオン状態時に電力分配部から電力合成部までの2つの経路を伝送する信号の通過位相を同一にするための伝送線路16および伝送線路25と、出力端子2と、出力負荷とのインピーダンスマッチングを行う整合回路42とで構成されているドハティ型増幅器100を有している。
なお、入力信号分配器31は、ウィルキンソン2分配器に限られるものではなく、T分岐回路、90度ハイブリッド、180度ハイブリッドなどのいずれかであってもよい。
【0013】
更に、本実施の形態による電力増幅器は、出力端子2から出力される電力をモニタするための出力電圧レベルモニタ回路61(方向性結合器62および検波回路63で構成されている)と、2つの伝送経路AまたはBのいずれかを選択できる2つのスイッチ51およびスイッチ52と、2つのスイッチ51、52の経路Aに接続された入力信号分配器31を通過しない伝送線路53と、前記分配器31の入力端とスイッチ51の経路Bに接続された伝送線路54と、前記分配器31のキャリア増幅器11側の分配端とスイッチ52の経路Bに接続された伝送線路55と、出力電圧レベルモニタ回路61の検波回路63より出力される信号電圧に応じて前記2つのスイッチを同時に切り替えて入力信号の経路を切り替える制御回路71を備えている。
【0014】
キャリア増幅器11は、A級ないしはB級にバイアスされているため、入力電力が小さいときでも入力信号を増幅する。
ピーク増幅器21は、C級にバイアスされているため入力電力が低い場合は増幅動作せず、オフ状態となり、ある特定の入力電力以上で増幅動作を行いオン状態となる。
本実施の形態では、ピーク増幅器21がオフ状態からオン状態になるような出力電力を閾値に設定する。
そして、検波回路63により検出される出力電力が設定した閾値以下の場合は、制御回路71により入力信号の経路は入力信号分配器31を通過しない伝送経路A−A(即ち、伝送線路53)が選択され、前記閾値以上のときは、制御回路71により入力信号の経路は入力信号分配器31を通過する伝送経路B−B(即ち、伝送線路54)が選択される。
【0015】
2つスイッチ51および52の経路として、A−AあるいはB−Bが選択されている場合の等価回路を、それぞれ図2、図3に示す。
図2は、実施の形態1において伝送経路A−Aが選択された場合の等価回路を示す図であり、図3は、実施の形態1において伝送経路B−Bが選択された場合の等価回路を示す図である。
なお、図2および図3において、51Aは、図1におけるスイッチ51(第1のスイッチ)がA側に切り替わっているときのスイッチであり、52Aは、図1におけるスイッチ
52(第2のスイッチ)がA側に切り替わっているときのスイッチである。
【0016】
また、図2および図3に示した等価回路の入出力特性および出力電力−利得特性を図4、図5にそれぞれ示す。
図4は、図2および図3の等価回路の入出力特性の例を示す図であり、図5は、図2および図3等価図回路の利得特性の例を示す図である。
なお、図4において、特性曲線aは、図2に示した等価回路を有する電力増幅器の入出力特性であり、特性曲線bは、図3に示した等価回路を有する電力増幅器の入出力特性である。
【0017】
また、図5において、特性曲線cは、図2に示した等価回路を有する電力増幅器の利得特性であり、特性曲線dは、図3に示した等価回路を有する電力増幅器の利得特性である。
また、図1に示した電力増幅器の出力電力−利得特性曲線eを図6に示す。
図6に示すように、伝送経路B−Bが選択されている場合の特性は、従来のドハティ型増幅器の特性と同様であり、伝送経路をA−Aに切り替えることで、入力電力が小さい場合(即ち、出力電力が小さい場合)の利得を約3dB向上することができる。
【0018】
実際のピーク増幅器単体の利得特性は、デジタル的にオン/オフが切り替わるということではなく、入力電力が増えるにつれてアナログ的に徐々に利得が上がり、飽和電力に近くなると最大となるような特性となる。
最適な利得特性とするためには、スイッチを切り替える出力電力の閾値を最適な値に選択することが重要である。
ピーク増幅器21がオフの状態には伝送経路A−Aが選択される。
ピーク増幅器出力側の伝送線路26の電気長は、伝送経路A−Aが選択される場合(即ち、ピーク増幅器への入力電力が無い場合)に、電力合成部41からピーク増幅器21側をみたインピーダンスを開放状態に最も近くなるように、決定することが重要である。
【0019】
低出力動作時には伝送経路A−Aが選択され、入力端子1への入力電力レベルが変化してもスイッチ51、52が切り替わる電力レベル以下では、ピーク増幅器21は無入力状態が維持されるため、電力合成部41からピーク増幅器21側をみたインピーダンスは開放状態のまま変化せず、出力合成部のロスが小さい状態を維持することができ、低出力動作時に高効率な増幅作用を行うことができる。
【0020】
ドハティ増幅器を設計する際の需要なポイントの1つとして、ピーク増幅器21がオフの時、即ち、低入力電力(低出力電力)状態で、電力合成部41からピーク増幅器21側をみたインピーダンスZが完全なに開放状態近くになるように伝送線路26の通過位相を設定することが挙げられる。
これは、キャリア増幅器11が単独で動作している場合に、キャリア増幅器11の出力電力がピーク増幅器21側に伝送されないようにして、電力を効率良く出力端子2に伝送するためである。
無入力状態から入力電力を大きくしてゆくと、入力電力に応じて上記インピーダンスZは変化する。
電力増幅器の飽和電力から十分に大きなバックオフをとるような入力電力が非常に小さい状態では、インピーダンスZの変化は微小である。
【0021】
しかし、ピーク増幅器21がオフ状態からオン状態に変わるような入力電力(即ち、ピーク増幅器21が利得を持ち始めるような入力電力)付近では、入力電力のインピーダンスZに与える影響は大きくなる。
インピーダンスZが開放より低くなると、ピーク増幅器21は増幅動作を行っていない
ため、出力ロスは増加する。
本実施の形態においては、小電力動作ではピーク増幅器21への入力電力を“0”の状態に保つことにより、インピーダンスZが開放に近い状態からの変化が無くなり、出力ロ
スの増加を抑えることができる。
【0022】
また、本実施の形態においては、伝送線路16および伝送線路25の電気長は、伝送経路B−Bが選択された場合の飽和出力に近い出力となる場合において、
(a)入力信号が分配部からスイッチ52、伝送線路16、キャリア増幅器11、インピーダンス変成器15を介して電力合成部に伝送するまでの通過位相と、
(b)入力信号が分配部から伝送線路25、ピーク増幅器21、伝送線路26を介して電力合成部に伝送するまでの通過位相
を同一にするように決定する。
これは、キャリア増幅器11およびピーク増幅器21が共に増幅作用を行う状態であり、効率良く電力を合成するためには、電力合成部41にて2つの増幅器出力(即ち、キャリア増幅器11およびピーク増幅器21の出力)の位相が同じになる必要があるためである。
【0023】
送信機について送信電力のALC(Automatic Level Control )制御が必要な場合、出力電力をモニタする必要がある。
従って、本実施の形態におけるスイッチの切り替えは、この出力電力モニタ回路を利用することを想定している。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態による電力増幅器は、入力する入力信号を2分配する入力信号分配器31、入力信号分配器31により2分配された入力信号の一方を増幅するA級ないしはB級にバイアスされたキャリア増幅器11、2分配された入力信号の他方の入力信号を増幅するC級にバイアスされたピーク増幅器21、キャリア増幅器11およびピーク増幅器21から出力する2つの信号の電力を合成する電力合成手段41を有するドハティ型増幅器100を用いた電力増幅器であって、ドハティ型増幅器100の電力合成手段41から出力される出力電力レベルを検出する検波回路63と、ドハティ型増幅器100の入力部に配置される第1のスイッチ51および第2のスイッチ52と、検波回路63が検出する出力電力レベルに応じて第1のスイッチ51および第2のスイッチ52の切り替え動作を制御する制御回路71とを備え、制御回路71は、検波回路63が検出する出力電力レベルが所定の閾値より小さい場合は、入力信号は入力信号分配器31に入力せずに直接キャリア増幅器11に入力し、検波回路63が検出する出力電力レベルが所定の閾値より大きい場合は、入力信号は入力信号分配器31に入力するように第1のスイッチ51および第2のスイッチ52の切り替え動作を制御する。
【0025】
また、ドハティ型増幅器100は、入力信号分配器31、キャリア増幅器11、ピーク増幅器21、電力合成手段41、キャリア増幅器11の出力インピーダンスを変換して電力合成手段41に入力するインピーダンス変成器15、ピーク増幅器21がオフ状態時に電力合成手段41よりピーク増幅器21側をみこんだインピーダンスを開放状態近くにするための位相調整用伝送線路26、キャリア増幅器11およびピーク増幅器21の入力部にそれぞれ接続され、ピーク増幅器21がオン状態の大電力動作時において、信号分配器31から前記キャリア増幅器11を介して電力合成部41までの第1の経路を伝送する信号の通過位相と信号分配器31からピーク増幅器21を介して電力合成部41までの第2の経路を伝送する信号の通過位相を同一にするために長さが決定された伝送線路16、25で構成されている。
【0026】
従って、本実施の形態によれば、制御回路41は、出力電力レベルが所定の閾値より小さい場合は、入力信号は入力信号分配器31に入力せずに直接キャリア増幅器11に入力
し、出力電力レベルが所定の閾値より大きい場合は、入力信号は入力信号分配器31に入力するように第1のスイッチ51および第2のスイッチ52の切り替え動作を制御するので、ピーク増幅器21が増幅作用を行わない低出力時には入力信号分配器31による分配ロスが無くなり、利得の低下を防止できる。
【0027】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2による電力増幅器の構成を示すブロック図である。
前述した実施の形態1による電力増幅器では、ドハティ型増幅器100から出力する出力電力を検波し、出力電力のレベルをモニタする出力電力レベルモニタ回路61を備えていた。
これに対して、本実施の形態では、出力電力レベルモニタ回路61に代えて、ドハティ型増幅器100に入力する入力電力を検波し、入力電力のレベルをモニタする入力電力レベルモニタ回路81を備えていることを特徴とする。
【0028】
図7に示すように、本実施の形態による電力増幅器は、実施の形態1で説明したドハティ型増幅器100を用いた電力増幅器であって、ドハティ型増幅器100に入力される入力電力レベルを検出する検波回路83と、ドハティ型増幅器100の入力部に配置される第1のスイッチ51および第2のスイッチ52と、検波回路83が検出する入力電力レベルに応じて第1のスイッチ51および第2のスイッチ52の切り替え動作を制御する制御回路71を備え、制御回路71は、検波回路83が検出する入力電力レベルが所定の閾値より小さい場合は、入力信号は、信号分配器31に入力せず、直接キャリア増幅器11に入力し、検波回路63が検出する出力電力レベルが所定の閾値より大きい場合は、入力信号は、信号分配器31に入力するように第1のスイッチ51および第2のスイッチ52の切り替え動作を制御するように構成されている。
【0029】
この構成により、ピーク増幅器21がオフとなる低入力電力時については、入力信号は入力信号分配器31を通過しない経路を伝送し、ピーク増幅器21に信号が入力されることはなく、ピーク増幅器21がオンとなる高入力電力時については、入力信号は入力信号分配器31を通過する経路を伝送し、分配された信号がピーク増幅器に入力されるような機能を持つことができる。
この機能により、ピーク増幅器がオフとなる低出力動作時についてキャリア増幅器単体と同等の利得を得ることができる。
【0030】
本実施の形態による電力増幅器では、ドハティ型増幅器100の出力側に出力電力レベルモニタ回路61を備えず、入力側にドハティ型増幅器100に入力される入力電力レベルを検出する検波回路83を有した入力電力レベルモニタ81を備えている。
従って、本実施の形態によれば、出力側でのモニタ回路による電力ロスが無く、また、ピーク増幅器21が増幅作用を行わない低出力時には入力信号分配器31による分配ロスが無くなるので、利得の低下を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、移動体通信等の送信系電力増幅器への適用に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態1による電力増幅器の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1において伝送経路A−Aが選択された場合の等価回路を示す図である。
【図3】実施の形態1において伝送経路B−Bが選択された場合の等価回路を示す図である。
【図4】図2および図3の等価回路の入出力特性の例を示す図である。
【図5】図2および図3の等価図回路の利得特性の例を示す図である。
【図6】図1に示した電力増幅器の出力電力−利得特性を示す図である。
【図7】実施の形態2による電力増幅器の構成を示すブロック図である。
【図8】従来のマイクロ波ドハティ型増幅器の概略構成を示す図である。
【図9】図8に示したドハティ型増幅器において、入力信号電力が小さく、ピーク増幅器がオフである場合の各部のインピーダンスを示した図である。
【図10】図8に示したドハティ型増幅器において、入力信号電力が大きく、ピーク増幅器がオンである場合の各部の負荷インピーダンスを示した図である。
【図11】ドハティ型増幅器の効率特性の例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 入力端子 2 出力端子
11 キャリア増幅器 12 キャリア増幅器入力整合回路
13 増幅素子 14 キャリア増幅器出力整合回路
15 インピーダンス変成器 16 位相調整用の伝送線路
21 ピーク増幅器 22 ピーク増幅器入力整合回路
23 増幅素子 24 ピーク増幅器出力整合回路
25 伝送線路 26 位相調整用の伝送線路
31 入力信号分配器 41 電力合成部(電力合成手段)
42 出力部整合回路
51、51A 第1のスイッチ 52、52B 第2のスイッチ
53 伝送線路(伝送経路A−A) 54 伝送線路(伝送経路B−B)
61 出力電力レベルモニタ回路 62 方向性結合器
63 検波回路 71 制御回路
81 入力電力レベルモニタ回路 82 方向性結合器
83 検波回路 100 ドハティ型増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力する入力信号を2分配する入力信号分配器、該入力信号分配器により2分配された入力信号の一方を増幅するA級ないしはB級にバイアスされたキャリア増幅器、2分配された前記入力信号の他方の入力信号を増幅するC級にバイアスされたピーク増幅器、前記キャリア増幅器および前記ピーク増幅器から出力する2つの信号の電力を合成する電力合成手段を有するドハティ型増幅器を用いた電力増幅器であって、
前記ドハティ型増幅器の前記電力合成手段から出力される出力電力レベルを検出する検波回路と、前記ドハティ型増幅器の入力部に配置される第1のスイッチおよび第2のスイッチと、前記検波回路が検出する出力電力レベルに応じて前記第1のスイッチおよび第2のスイッチの切り替え動作を制御する制御回路とを備え、
前記制御回路は、前記検波回路が検出する出力電力レベルが所定の閾値より小さい場合は、入力信号は前記入力信号分配器に入力せずに直接前記キャリア増幅器に入力し、前記検波回路が検出する出力電力レベルが所定の閾値より大きい場合は、入力信号は前記入力信号分配器に入力するように前記第1のスイッチおよび第2のスイッチの切り替え動作を制御することを特徴とする電力増幅器。
【請求項2】
前記ドハティ型増幅器は、前記入力信号分配器、前記キャリア増幅器、前記ピーク増幅器、前記電力合成手段、前記キャリア増幅器の出力インピーダンスを変換して前記電力合成手段に入力するインピーダンス変成器、前記ピーク増幅器がオフ状態時に前記電力合成手段より前記ピーク増幅器側をみこんだインピーダンスを開放状態近くにするための位相調整用伝送線路、前記キャリア増幅器およびピーク増幅器の入力部にそれぞれ接続され、前記ピーク増幅器がオン状態の大電力動作時において、前記信号分配器から前記キャリア増幅器を介して前記電力合成手段までの第1の経路を伝送する信号の通過位相と前記信号分配器から前記ピーク増幅器を介して前記電力合成手段までの第2の経路を伝送する信号の通過位相を同一にするために長さが決定された伝送線路で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電力増幅器。
【請求項3】
請求項1または2に記載のドハティ型増幅器を用いた電力増幅器であって、
前記ドハティ型増幅器に入力される入力電力レベルを検出する検波回路と、前記ドハティ型増幅器の入力部に配置される第1のスイッチおよび第2のスイッチと、前記検波回路が検出する入力電力レベルに応じて前記第1のスイッチおよび第2のスイッチの切り替え動作を制御する制御回路を備え、
前記制御回路は、前記検波回路が検出する入力電力レベルが所定の閾値より小さい場合は、入力信号は、前記信号分配器に入力せず、直接前記キャリア増幅器に入力し、前記検波回路が検出する出力電力レベルが所定の閾値より大きい場合は、入力信号は、前記信号分配器に入力するように前記第1のスイッチおよび第2のスイッチの切り替え動作を制御することを特徴とする電力増幅器。
【請求項4】
前記ドハティ型増幅器の前記入力信号分配器は、T分岐回路、ウィルキンソン2分配器、90度ハイブリッド、あるいは180度ハイブリッドのいずれかが用いられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電力増幅器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−260472(P2009−260472A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104630(P2008−104630)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】