電力変換装置、蓄電システムおよびその制御方法
【課題】蓄電装置の遮断時に発生するアーク放電を、小型および低コストのシステム構成で抑制することが可能な蓄電システムを提供する。
【解決手段】蓄電システムは、系統電力40および直流負荷5の間に配設された直流バス1と、電源電圧を直流バス1に出力する蓄電装置3と、直流バス1および系統電力40の間で電力変換する双方向DC/AC変換器42と、直流バス1および蓄電装置3の間を接続/遮断するための開閉器7とを備える。蓄電装置3を直流バス1から遮断するための電源遮断手段は、蓄電装置1の充放電電流が零となるように双方向DC/AC変換器42の電力変換動作を制御し、上記電力変換動作の制御によって蓄電装置3の充放電電流が零となったときに、開閉器7により蓄電装置3を直流バス1から遮断する。
【解決手段】蓄電システムは、系統電力40および直流負荷5の間に配設された直流バス1と、電源電圧を直流バス1に出力する蓄電装置3と、直流バス1および系統電力40の間で電力変換する双方向DC/AC変換器42と、直流バス1および蓄電装置3の間を接続/遮断するための開閉器7とを備える。蓄電装置3を直流バス1から遮断するための電源遮断手段は、蓄電装置1の充放電電流が零となるように双方向DC/AC変換器42の電力変換動作を制御し、上記電力変換動作の制御によって蓄電装置3の充放電電流が零となったときに、開閉器7により蓄電装置3を直流バス1から遮断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蓄電システムおよびその制御方法に関し、より特定的には、蓄電システムにおいて、蓄電装置と直流バスとの間の電路を遮断するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池、風力発電装置および燃料電池のような分散電源装置が普及し始めている。現状では、分散電源装置が発電した直流電力を交流電力に変換し、さらに、その交流電力を、電力を消費する機器において直流電力に変換して使用する。このように、直流−交流変換および交流−直流変換が行なわれるため、その電力変換のたびに電力損失が生じる。そこで、分散電源装置が発電する直流電力を交流電力に変換することなく、直流電力のまま送電して機器で使用することにより、変換損失を低減させる蓄電システムが提案されている。
【0003】
このような蓄電システムとして、たとえば特開2011−97818号公報(特許文献1)には、複数の電力源としての太陽電池、商用電源および蓄電池と、これらの複数の電力源にそれぞれ対応して設けられ、接続された電力源から供給される電力を基に所定の電圧レベルの直流電力を出力する複数の出力用コンバータと、複数の出力用コンバータの出力電圧を制御する出力電圧制御部と、出力電圧制御部に指令値を与えて出力電圧制御動作を指示するシステム制御部とを備えた配電システムが開示される。この特許文献1に記載される配電システムは、複数の出力用コンバータとして、太陽電池に接続される太陽電池用コンバータと、蓄電池に接続される蓄電池用コンバータと、商用電源に接続されるAC/DCコンバータとを備えている。そして、各出力用コンバータの出力電圧を個別に制御するために、出力用コンバータごとに独立したフィードバック制御系が設けられている。
【0004】
しかしながら、この特許文献1に記載の配電システムでは、電力源ごとに出力用コンバータを設ける必要があるため、出力用コンバータで発生する変換損失が増大する、また、システムのコストアップが発生するという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するためには、蓄電池のような電圧安定化能力の高い電源を、コンバータを介さず直流バスに直結することによって、直流バスの電圧を無制御で安定化させることが可能となる。
【0006】
一方で、蓄電池を直流バスに直結させる構成では、システム内に異常が検知された場合には、蓄電池を過充電や過放電などから保護するために蓄電池を直流バスから遮断する必要が生じる。しかしながら、直流電流は交流電流とは異なり零点を持たないため、高電圧・高電流下において、開閉器によって直流電流を遮断する際に、開閉器内の接点にアーク放電が発生する虞がある。
【0007】
直流電流を遮断する際に発生するアーク放電を抑制する技術として、たとえば特開2006−32077号公報(特許文献2)には、直流電流を遮断する直流遮断器と並列に転流回路を設ける構成が開示される。この転流回路には、転流スイッチ、リアクトルおよび転流コンデンサが直列接続され、転流コンデンサが負荷側に設けられている。上記構成において、直流回路に事故電流が流れた場合には、主遮断器が開放される一方で、転流スイッチが閉じられ、事故電流に転流回路からの振動性の転流電流を重畳して主遮断器で事故電流を遮断する。
【0008】
また、特開2010−80200号公報(特許文献3)には、直流電源と負荷との間に接続された遮断器と、遮断器と負荷との間に介在され、遮断器から負荷への電流の流れを許容するダイオードと、ダイオードに対して並列に設けられ、遮断器側がベースに接続されるとともに負荷側がエミッタに接続されるトランジスタと、インダクタとキャパシタとの直列回路の一端を直流電源と遮断器との間に接続し、他端をトランジスタのコレクタに接続する外部並列回路とを備えた直流遮断装置が開示される。この特許文献3では、直流電流を遮断した際に発生するアーク放電は、外部並列回路のキャパシタの作用により外部並列回路に流れ、アーク電流が減少することにより早期に除去される。そして、アーク電流が除去されると、トランジスタのベース電圧もなくなるため、トランジスタの電気的導通が遮断され、このトランジスタの遮断機能により、外部並列回路への電流の流れ込みが素子され、回路の完全停止が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−97818号公報
【特許文献2】特開2006−32077号公報
【特許文献3】特開2010−80200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の特許文献2および3に記載される直流遮断装置においては、遮断時に発生するアーク放電を分流させるために、遮断器に対して並列に転流回路もしくは外部並列回路を設ける必要がある。そのため、直流遮断装置の大型化およびコストアップが課題となっていた。さらに、特許文献2では、直流電流を遮断するためには、主遮断器、副遮断器および転流スイッチの各々を動作させるシーケンス制御が必要となるため、直流遮断装置を複雑かつ高価なものとしていた。
【0011】
そして、このような直流遮断装置を上述した蓄電システムに適用すると、システム全体の大型化およびコストアップを招くという不具合が懸念される。なお、このような直流電流を遮断する際に発生するアーク放電を抑制する対策について、上記の特許文献1に記載の配電システムは何ら言及していない。
【0012】
それゆえ、この発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、蓄電装置の遮断時に発生するアーク放電を、小型および低コストのシステム構成で抑制することが可能な蓄電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明のある局面に従えば、蓄電システムであって、直流電力を伝達するための直流バスと、電源電圧を直流バスに出力する蓄電装置と、直流バスおよび系統電力の間で電力変換する電力変換装置と、直流バスおよび蓄電装置の間を接続/遮断するための開閉器と、蓄電装置を直流バスから遮断するための電源遮断手段とを備える。電源遮断手段は、蓄電装置の充放電電流が零となるように電力変換装置の電力変換動作を制御する電力変換制御手段と、電力変換制御手段による前記電力変換動作の制御中に、開閉器により蓄電装置を直流バスから遮断する開閉制御手段とを含む。
【0014】
好ましくは、蓄電システムは、充放電電流を検出するための充放電電流検出部をさらに備える。電力変換装置は、電力変換動作の実行時、充放電電流に系統電力の周波数に応じた周波数の交流成分を発生するように構成される。電力変換制御手段は、充放電電流検出部の検出値を用いて、充放電電流の波形が零を経由するように電力変換動作を制御する。開閉制御手段は、電力変換制御手段による電力変換動作の制御中に、開閉器により蓄電装置を直流バスから遮断する。
【0015】
好ましくは、電源遮断手段は、蓄電装置の遮断指令を開閉器に出力する前に、遮断予告信号を電力変換装置に出力するように構成される。電力変換制御手段は、遮断予告信号を受けたときに、電力変換動作の制御を開始する。開閉制御手段は、遮断指令を受けると、電力変換動作の制御中に、開閉器により蓄電装置を直流バスから遮断する。
【0016】
好ましくは、電力変換装置は、直流バスおよび系統電力の間に設けられたフルブリッジインバータを含む。
【0017】
この発明の別の局面に従えば、蓄電システムの制御方法であって、蓄電システムは、直流電力を伝達するための直流バスと、電源電圧を直流バスに出力する蓄電装置と、直流バスおよび系統電力の間で電力変換する電力変換装置と、直流バスおよび蓄電装置の間を接続/遮断するための開閉器とを含む。制御方法は、蓄電装置の充放電電流が零となるように電力変換装置の電力変換動作を制御するステップと、電力変換動作を制御するステップの実行中に、開閉器により蓄電装置を直流バスから遮断するステップとを備える。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、蓄電装置の遮断時に発生するアーク放電を、小型および低コストのシステム構成で抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態に従う蓄電システムの全体の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1における双方向DC/AC変換器の詳細な構成を示す回路図である。
【図3】図2における制御部の制御構造を示す図である。
【図4】双方向DC/AC変換器における電力変換動作の制御態様について説明する図である(その1)。
【図5】双方向DC/AC変換器における電力変換動作の制御態様について説明する図である(その2)。
【図6】双方向DC/AC変換器における電力変換動作の制御態様について説明する図である(その3)。
【図7】蓄電装置および双方向DC/AC変換器の間で電力の授受を行なう態様を説明する図である(その1)
【図8】蓄電装置および双方向DC/AC変換器の間で電力の授受を行なう態様を説明する図である(その2)。
【図9】蓄電装置および双方向DC/AC変換器の間で電力の授受を行なう態様を説明する図である(その3)。
【図10】直流負荷、蓄電装置および双方向DC/AC変換器の間で電力の授受を行なう態様を説明する図である(その1)。
【図11】直流負荷、蓄電装置および双方向DC/AC変換器の間で電力の授受を行なう態様を説明する図である(その2)。
【図12】太陽光発電システム、直流負荷、蓄電装置および双方向DC/AC変換器の間で電力の授受を行なう態様を説明する図である(その1)。
【図13】太陽光発電システム、直流負荷、蓄電装置および双方向DC/AC変換器の間で電力の授受を行なう態様を説明する図である(その2)。
【図14】太陽光発電システム、直流負荷、蓄電装置および双方向DC/AC変換器の間で電力の授受を行なう態様を説明する図である(その3)。
【図15】太陽光発電システム、直流負荷、蓄電装置および双方向DC/AC変換器の間で電力の授受を行なう態様を説明する図である(その4)。
【図16】本発明の実施の形態に従う蓄電システムに適用される双方向DC/AC変換器の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0021】
(蓄電システムの構成)
図1は、この発明の実施の形態に従う蓄電システムの全体の構成を概略的に示す図である。
【0022】
図1を参照して、本実施の形態に従う蓄電システムは、直流バス1と、太陽光発電システム2と、蓄電装置3と、系統電力システム4と、直流負荷5と、電池監視ユニット6と、開閉器7とを備える。
【0023】
直流バス1は、直流負荷5に直流電力を供給する。直流負荷5は、一例として、家庭で使用される空調機、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、照明装置またはパーソナルコンピュータのような電気機器である。あるいは、オフィスで使用されるコンピュータ、複写機またはファクシミリのような電気機器や、または、店舗で使用されるショーケースまたは照明装置のような電気機器であってもよい。直流バス1には、太陽光発電システム2、蓄電装置3および系統電力システム4が接続されている。
【0024】
なお、本実施の形態に従う蓄電システムにおいては、直流バス1、太陽光発電システム2、蓄電装置3、系統電力システム4および直流負荷5をそれぞれ1個ずつ備える場合について説明するが、これらの個数には制限がなく、1個でも複数個であってもよい。
【0025】
直流バス1は、電力線対である正母線PLおよび負母線NLで構成される。
太陽光発電システム2は、太陽電池20と、DC/DC変換器30とを含む。DC/DC変換器30は、太陽電池20と直流バス1との間に配置されており、太陽電池20から受ける直流電力を電圧変換して直流バス1へ供給する。DC/DC変換器30における電圧変換動作は、太陽電池20の出力電圧と、直流バス1の電圧(正母線PLおよび負母線NLの間の線間電圧)とに応じて、図示しない制御部からのスイッチング指令に従って制御される。
【0026】
蓄電装置3は、再充電可能な電力貯蔵要素であり、代表的にリチウムイオン二次電池やニッケル水素電池などの二次電池で構成される。蓄電装置3は、複数の電池セルを直列接続して構成されており、一例として、定格電圧380Vおよび10Ahを有している。
【0027】
図1に示す構成において、蓄電装置3は、直流バス1に「直結」されており、直流バス1との間で直流電力の授受を行なう。ここで、「直結」とは、直流バス1と蓄電装置3との間に、DC/DC変換器のような電力変換器が介在していないことを意味する。したがって、直流バス1の電圧は、蓄電装置3の電源電圧とほぼ等しくなる。このように蓄電装置3を直流バス1に直結する構成としたことにより、蓄電装置3が有する高い電圧安定化能力を活かして、急激な負荷変動による直流バス1の電圧変動を抑制することが可能となる。
【0028】
開閉器7は、蓄電装置3と直流バス1との間に配設される。開閉器7は、電池監視ユニット6からのシャットダウン信号SDが非活性化(導通指令に相当する。)されると、蓄電装置3と直流バス1とを電気的に接続し、シャットダウン信号SDが活性化(遮断指令に相当する。)されると、蓄電装置3と直流バス1との間の電路を遮断する。
【0029】
電池監視ユニット6は、過充電、過放電および温度上昇などから蓄電装置3を保護するために、蓄電装置3の状態を監視する。具体的には、充放電電流検出部60は、直流バス1に介挿され、蓄電装置3に対して入出力される充放電電流Ibを検出し、その検出値を電池監視ユニット6へ出力する。充放電電圧検出部62は、蓄電装置3の充放電電圧Vbを検出し、その検出値を電池監視ユニット6へ出力する。温度検出部64は、蓄電装置3の温度Tbを検出し、その検出値を電池監視ユニット6へ出力する。なお、充放電電流検出部60は、蓄電装置3からの放電電流を、正値の充放電電流Ibとして検出し、蓄電装置3への充電電流を、負値の充放電電流Ibとして検出する。電池監視ユニット6は、充放電電流検出部60からの充放電電流Ib、充放電電圧検出部62からの充放電電圧Vbの検出値および温度検出部64からの電池温度Tbの検出値に基づいて、蓄電装置3の状態(充電状態および温度状態)を監視する。電池監視ユニット6は、蓄電装置3の過充電/過放電、過電流および温度異常、蓄電装置3の水没、および、逆電力継電器からの逆潮流の検知信号などの有無を監視する。そして、蓄電装置3の異常が検知されると、電池監視ユニット6は、蓄電装置3を保護するためにシャットダウン信号SDを活性化(遮断指令)することにより、開閉器7によって蓄電装置3と直流バス1との間の電路を遮断する。
【0030】
さらに電池監視ユニット6は、上述のシャットダウン信号SDを活性化(遮断指令)するのに先行して、蓄電装置3の遮断を予告するためのシャットダウン予告信号SDNを活性化する。この活性化されたシャットダウン予告信号SDNは、系統電力システム4内の双方向DC/AC変換器42へ送信される。双方向DC/AC変換器42は、電池監視ユニット6からシャットダウン予告信号SDNを受けると、後述する方法によって、蓄電装置3の充放電電流Ibが零となるように、電力変換動作を実行する。
【0031】
(系統電力システムの構成)
図1に示す構成において、系統電力システム4は、直流バス1との間で直流電力の授受を行なう。系統電力システム4は、双方向DC/AC変換器42と、系統電力40とを含む。
【0032】
系統電力40は、電力会社等から受電する電力(たとえば、AC200Vとする)である。系統電力40は、例えば、単相3線式の商用交流電力系統から供給される。単相3線式の商用交流電力系統は、中性線が抵抗を介して接地されており、中性線以外の2線(R相線RLおよびT相線TL)を使用してAC200Vを供給する。
【0033】
双方向DC/AC変換器42は、直流バス1および系統電力40の間に接続される。双方向DC/AC変換器42は、直流バス1から受ける直流電力を交流電力に変換して系統電力40へ供給する。また、双方向DC/AC変換器42は、系統電力40から受ける交流電力を直流電力に変換して直流バス1へ供給する。本実施の形態に従う蓄電システムにおいては、双方向DC/AC変換器42を介して電力会社等から系統電力を買う(買電)するとともに、双方向DC/AC変換器42を介して余剰電力を電力会社等に売る(売電)することを可能に構成されている。
【0034】
なお、図1では、買電時に双方向DC/AC変換器42に流れる電流をIbuy、売電時に双方向DC/AC変換器42に流れる電流をIsellと表記する。また、直流負荷5に供給される電流をIloadと表記し、太陽光発電システム2から直流バス1に供給される電流をIpvと表記する。買電時においては、電流Ipvおよび電流Ibuyの和から電流Iloadを差し引いた電流が、蓄電装置3の充電電流となる。また、売電時においては、電流Ipvおよび蓄電装置3の放電電流の和から電流Iloadを差し引いた電流が、電流Isellとなる。電流IsellおよびIbuyをどのような値にするかについては、蓄電システムの使用者または管理者が自在に設定することができる。
【0035】
(双方向DC/AC変換器の構成)
次に、図面を参照して、この発明の実施の形態に従う電力変換装置の一形態である双方向DC/AC変換器42の構成について説明する。
【0036】
図2は、図1における双方向DC/AC変換器42の詳細な構成を示す回路図である。
図2を参照して、双方向DC/AC変換器42は、双方向インバータ400と、連系リアクトル410,412と、自経路電流検出部420と、直流電圧検出部430と、交流電圧検出部432と、制御部440とを含む。
【0037】
双方向インバータ400は、売電時には、制御部440からのスイッチング制御信号S1〜S4に応じて、直流バス1から受けた直流電力を交流電力に変換して系統電力40に出力する。また、双方向インバータ400は、買電時には、制御部440からのスイッチング制御信号S1〜S4に応じて、系統電力40から受けた交流電力を直流電力に変換して直流バス1に出力する。
【0038】
具体的には、双方向インバータ400は、スイッチング素子であるトランジスタQ1〜Q4と、ダイオードD1〜D4とを含む。トランジスタQ1,Q2は、直流バス1を構成する正母線PLおよび負母線NLの間に直列に接続される。トランジスタQ1とトランジスタQ2との中間点はR相線RLに接続される。連系リアクトル410は、R相線RLに介挿接続される。
【0039】
トランジスタQ3,Q4は、正母線PLおよび負母線NLの間に直列に接続される。トランジスタQ3とトランジスタQ4との中間点はT相線TLに接続される。連系リアクトル412は、T相線TLに介挿接続される。各トランジスタQ1〜Q4のコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードD1〜D4がそれぞれ接続されている。トランジスタQ1〜Q4およびダイオードD1〜D4は、フルブリッジ回路を構成する。
【0040】
なお、トランジスタQ1〜Q4として、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることができる。または、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)等の電力スイッチング素子を用いてもよい。
【0041】
自経路電流検出部420は、T相線TLに介挿され、直流バス1と双方向インバータ400との間で授受される電力の電流値(自経路電流)Iacを検出し、その検出結果を制御部440へ出力する。
【0042】
直流電圧検出部430は、正母線PLと負母線NLとの間に接続され、直流バス1と双方向インバータ400の間で授受される直流電力の電圧Vdcを検出し、その検出結果を制御部440へ出力する。交流電圧検出部432は、R相線RLとT相線TLとの間に接続され、系統電力40の交流電圧Vacを検出し、その検出結果を制御部440へ出力する。
【0043】
制御部440は、自経路電流検出部420から受けた自経路電流値Iacと、直流電圧検出部430から受けた直流電圧Vdcと、交流電圧検出部432から受けた交流電圧Vacと、充放電電流検出部60から受けた充放電電流Ibと、電池監視ユニット6から受けたシャットダウン予告信号SDNとに基づいて、後述する制御構造に従って、トランジスタQ1〜Q4のオン・オフを制御するためのスイッチング制御信号S1〜S4を生成し、双方向インバータ400を制御する。
【0044】
図3は、図2における制御部440の制御構造を示す図である。
図3を参照して、制御部440は、減算部500,510と、制御目標値選択部520と、切替部530と、スイッチング制御信号生成部540とを含む。
【0045】
制御目標値選択部520は、自経路電流Iacの電流目標値Iac*を決定する。この電流目標値Iac*は、たとえば日時に応じて異なる電流値となるように事前に決定し、図示しない記憶部に格納しておくことができる。あるいは、制御部440と蓄電システムの外部との間で通信を行なうことによって、所望の電流値を適宜取得するようにしてもよい。なお、電流目標値Iac*は、買電時の自経路電流Ibuyの電流目標値Ibuy*と、売電時の自経路電流Isellの電流目標値Isell*とを含む。
【0046】
制御目標値選択部520は、さらに、充放電電流Ibの電流目標値Ib*を決定する。この電流目標値Ib*は、予め「0A」に設定されている。
【0047】
制御目標値選択部520は、電池監視ユニット6から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けたときには、切替信号を非活性化して切替部530へ出力する。一方、シャットダウン予告信号SDNが非活性化されているときには、制御目標値選択部520は、切替信号を活性化して切替部530へ出力する。
【0048】
減算部500は、自経路電流Iacと電流目標値Iac*との差から電流偏差ΔIacを演算し、切替部530へ出力する。減算部510は、充放電電流Ibと電流目標値Ib*(=0A)との差から電流偏差ΔIbを演算し、切替部530へ出力する。
【0049】
切替部530は、制御目標値選択部520から出力された切替信号に基づいて、減算部500から受けた電流偏差ΔIacおよび減算部510から受けた電流偏差ΔIbのいずれか一方を選択してスイッチング制御信号生成部540へ出力する。具体的には、切替部530は、切替信号が活性化されているとき、すなわち、シャットダウン予告信号SDNが非活性化されているときには、減算部500から受けた電流偏差ΔIacを選択してスイッチング制御信号生成部540へ出力する。一方、切替部530は、切替信号が非活性化されているとき、すなわちシャットダウン予告信号SDNが活性化されているときには、減算部510から受けた電流偏差ΔIbを選択してスイッチング制御信号生成部540へ出力する。
【0050】
スイッチング制御信号生成部540は、少なくとも比例要素(P:proportional element)および積分要素(I:integral element)を含んで構成され、切替部530から電流偏差を受けると、この入力された電流偏差に応じて操作信号を生成する。そして、スイッチング制御信号生成部540は、この操作信号に基づいて双方向インバータ400のトランジスタQ1〜Q4のオンデューティーを規定するデューティー指令を生成すると、この生成したデューティー指令と搬送波とを比較して、スイッチング制御信号S1〜S4を生成して、双方向インバータ400を制御する。
【0051】
スイッチング制御信号生成部540は、スイッチング制御信号S1〜S4の生成において、系統電力40と双方向DC/AC変換器42との間で授受される交流電力(交流電圧Vac、交流電流(自経路電流)Iac)に対して、力率改善(Power Factor Correction)制御を実行する。具体的には、スイッチング制御信号生成部540は、交流電圧Vacの位相に交流電流Iacの位相を合わせるように、交流電流Iacの波形を補正することによって力率を改善する。
【0052】
なお、図3では、スイッチング制御信号生成部540は、交流電圧検出部432により検出される交流電圧Vacに基づいて、交流電流Iacの波形を補正する構成を例示したが、商用電力系統から供給される交流電圧Vacのゼロクロス点は既知であることから、ゼロクロス点から導出される系統周波数の正弦波電流を目標電流とすることで、図3に示す制御構造から交流電圧検出部432を省略することも可能である。
【0053】
以上のように、シャットダウン予告信号SDNが非活性化されているとき、すなわち、蓄電装置3の異常が検知されていないときには、制御部440は、自経路電流Iacが所定の電流目標値Iac*(Isell*/Ibuy*)となるようにスイッチング制御信号S1〜S4を生成して双方向インバータ400を制御する。
【0054】
これに対して、シャットダウン予告信号SDNが活性化されているとき、すなわち、蓄電装置3の異常が検知されたときには、制御部440は、充放電電流Ibが電流目標値Ib*=0Aとなるようにスイッチング制御信号S1〜S4を生成して双方向インバータ400を制御する。
【0055】
このように、シャットダウン予告信号SDNが活性化されたときには、制御部440は、充放電電流Ibが零となるように双方向インバータ400を制御する。そして、電池監視ユニット6は、シャットダウン予告信号SDNが活性化された時点からの充放電電流検出部60の検出値を監視する。充放電電流Ibが零となったことが検出されると、電池監視ユニット6は、シャットダウン信号SDを活性化する。このシャットダウン信号SDの活性化に応じて、開閉器7によって蓄電装置3と直流バス1との間の電路が遮断される。
【0056】
蓄電装置3の異常が検知された場合には、蓄電装置3の保護の観点から蓄電装置3を直流バス1から遮断させる必要があるが、充放電電流Ibは零点を持たないため、開閉器7により蓄電装置3と直流バス1との間の電路を遮断する際に、開閉器7の接点にアーク放電が発生する虞がある。
【0057】
そこで、本実施の形態に従う蓄電システムでは、蓄電装置3を遮断するのに先行して、蓄電装置3の充放電電流Ibが零となるように双方向DC/AC変換器42を制御する。そして、充放電電流Ibが零となったことに応じて蓄電装置3を直流バス1から遮断する。これにより、蓄電装置3を直流バス1から遮断するときにアーク放電が発生するのを抑制できる。
【0058】
以下、図4〜図6を参照して、双方向DC/AC変換器42における電力変換動作の制御態様について説明する。
【0059】
図4には、本発明の実施の形態に従う蓄電システムの動作態様の一例として、太陽光発電システム2から受ける直流電力によって蓄電装置3を充電している状態が示される。具体的には、図4(a)を参照して、太陽光発電システム2から出力される3kWの直流電力が直流バス1を介して蓄電装置3に供給されている。同図には、この状態での直流バス1の直流電圧Vdc、充放電電流Ibおよび、系統電力40と双方向DC/AC変換器42との間で授受される交流電力(交流電圧Vac、交流電流Iac)の時間波形が示される。この時間波形図において、充放電電流Ibは蓄電装置3への充電電流(Ib<0)に相当する。
【0060】
図4(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図4(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42においては、充放電電流Ibの電流目標値Ib*が0Aに設定される。そして、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。
【0061】
このような制御を行なうことにより、太陽光発電システム2から出力される3kWの直流電力はすべて双方向DC/AC変換器42に供給されることとなる。双方向DC/AC変換器42は、太陽光発電システム2から直流バス1を経由して供給される3kWの直流電力を交流電力に変換して系統電力40へ売電する。
【0062】
なお、図4(b)の時間波形図において、直流電圧Vdcおよび充放電電流Ibには、系統電力40の周波数に応じた周波数の交流成分が重畳される。双方向インバータ400における電力変換動作は、フルブリッジインバータを構成するトランジスタQ1〜Q4のうち、トランジスタQ1およびQ4を1組のスイッチペアとし、トランジスタQ2およびQ3をもう1組のスイッチペアとして、系統電力40の半周期ごとに、これら2組のスイッチペアを交互にオン・オフさせることにより行なわれる。このトランジスタQ1〜Q4のスイッチング動作により、双方向インバータ400の直流側、すなわち直流バス1を流れる直流電流には系統電力40の周波数に応じた交流成分が重畳する。その結果、直流バス1に直結される蓄電装置3の充放電電流Ibにおいても交流成分が重畳される。図4(b)では、充放電電流Ibは、直流成分である0Aを中心として脈動が生じている。
【0063】
図示しない電池監視ユニット6は、充放電電流検出部60による充放電電流Ibの検出値を監視し、充放電電流Ibが零となるタイミングで開閉器7により蓄電装置3と直流バス1との間の電路を遮断する。
【0064】
図5には、本発明の実施の形態に従う蓄電システムの動作態様の他の例として、太陽光発電システム2から受ける直流電力によって蓄電装置3を充電するとともに直流負荷5を駆動している状態が示される。具体的には、図5(a)を参照して、太陽光発電システム2から出力される6kWの直流電力のうち、3kWの直流電力が直流バス1を介して直流負荷5へ供給され、残りの3kWの直流電力が直流バス1を介して蓄電装置3に供給されている。同図には、この状態での直流バス1の直流電圧Vdc、充放電電流Ibおよび、系統電力40と双方向DC/AC変換器42との間で授受される交流電力(交流電圧Vac、交流電流Iac)の時間波形が示される。この時間波形図において、充放電電流Ibは蓄電装置3の充電電流(Ib<0)に相当する。
【0065】
図5(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図5(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42においては、充放電電流Ibの電流目標値Ib*が0Aに設定される。そして、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。
【0066】
このような制御を行なうことにより、太陽光発電システム2から出力される6kWの直流電力のうち、3kWの直流電力が直流負荷5へ供給され、残りの3kWの直流電力が双方向DC/AC変換器42に供給されることとなる。双方向DC/AC変換器42は、供給される3kWの直流電力を交流電力に変換して系統電力40へ売電する。図5(b)の時間波形図は、図4(b)の時間波形図とほぼ同様となる。すなわち、直流電圧Vdcおよび充放電電流Ibには系統電力40の周波数に応じた周波数の交流成分が重畳される。電池監視ユニット6は、充放電電流検出部60による充放電電流Ibの検出値が零となるタイミングで開閉器7により蓄電装置3と直流バス1との間の電路を遮断する。
【0067】
図6には、本発明の実施の形態に従う蓄電システムの動作態様の他の例として、系統電力40からの交流電力を双方向DC/AC変換器42により直流電力に変換して蓄電装置3を充電している状態が示される。具体的には、図6を参照して、双方向DC/AC変換器42から出力される3kWの直流電力が直流バス1を介して蓄電装置3に供給されている。同図には、この状態での直流バス1の直流電圧Vdc、充放電電流Ibおよび、系統電力40と双方向DC/AC変換器42との間で授受される交流電力(交流電圧Vac、交流電流Iac)の時間波形が示される。この時間波形図において、充放電電流Ibは蓄電装置3の充電電流(Ib<0)に相当する。
【0068】
図6に示す状態において双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、双方向DC/AC変換器42においては、充放電電流Ibの電流目標値Ib*が0Aに設定される。そして、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。
【0069】
なお、図6では、双方向DC/AC変換器42は、系統電力40から受ける交流電力を直流電力に変換して直流バス1へ供給する。この時の電力変換動作は、系統電力40の半周期ごとに、ダイオードD1およびD4からなるブリッジ回路と、ダイオードD2およびD3からなるブリッジ回路とが交互に交流電力を直流電力に整流することにより行なわれる。そして、ダイオードD1〜D4による全波整流により、双方向インバータ400の直流側、すなわち直流バス1を流れる直流電流には系統電力40の周波数に応じた交流成分が重畳する。その結果、直流バス1に直結される蓄電装置3の充放電電流Ibにも交流成分が重畳されるため、図6に示す時間波形図では、充放電電流Ibの波形は、零付近を経由して脈動する電流波形となっている。したがって、双方向DC/AC変換器42に対して、上述した充放電電流Ibを電流目標値Ib*=0Aとするための制御を行なわなくとも、充放電電流検出部60による充放電電流Ibの検出値が零付近となるタイミングで開閉器7により蓄電装置3と直流バス1との間の電路を遮断することにより、開閉器7におけるアーク放電の発生を抑制できる。
【0070】
開閉器7でのアーク放電の発生を抑制するためには、充放電電流Ibが零付近に減少させてから開閉器7を開放する必要がある。そのため、本実施の形態では、シャットダウン信号SDに先行して活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、充放電電流Ibの電流目標値Ib*を0Aに設定して双方向DC/AC変換器42における電力変換動作を制御する構成としている。
【0071】
一方、本発明の実施の形態に従う蓄電システムでは、直流バス1に蓄電装置3を直結するとともに、双方向DC/AC変換器42を、フルブリッジインバータ(双方向インバータ400)により構成したことにより、双方向インバータ400の電力変換動作によって蓄電装置3の充放電電流Ibには系統電力40の周波数に応じた周波数の交流成分が重畳される。したがって、この充放電電流Ibが零もしくは零付近を経由する電流波形となっていれば、必ずしも充放電電流Ibの直流成分を零に一致させなくても、アーク放電の発生を抑制することができる。
【0072】
したがって、図6の時間波形図に示されるように、シャットダウン予告信号SDNが活性化されたときの充放電電流Ibが零を経由する電流波形であれば、充放電電流Ibを零とするための制御が不要となり、充放電電流Ibが零となるタイミングで蓄電装置3を直ちに遮断することができる。
【0073】
また、上記の説明では、充放電電流Ibが零付近で開閉器7を開放すると述べてきたが、実際の充放電電流Ibが零を経由して脈動している状態であれば、開閉器7をどのタイミングで開放しても、開放後に充放電電流Ibが零を経由するタイミングを迎えた時点でアーク消弧されるため、開閉器7を安全に開放することができる。
【0074】
以下では、本発明の実施の形態に従う蓄電システムの動作態様のバリエーションと、各々の動作態様に適用される双方向DC/AC変換器42の制御とについて、図面を用いて説明する。
【0075】
最初に、図7から図9には、太陽光発電システム2、蓄電装置3および双方向DC/AC変換器42の間で電力の授受を行なう態様のバリエーションが示される。具体的には、図7(a)を参照して、太陽光発電システム2から出力される6kWの直流電力のうち、3kWの直流電力が直流バス1を介して双方向DC/AC変換器42へ供給され、残りの3kWの直流電力が直流バス1を介して蓄電装置3に供給されている。双方向DC/AC変換器42は、直流バス1から受ける3kWの直流電力を交流電力に変換して系統電力40へ供給(売電)する。
【0076】
図7(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図7(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42は、充放電電流Ibの電流目標値Ib*=0Aに設定され、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。これにより、太陽光発電システム2から出力される6kWの直流電力はすべて双方向DC/AC変換器42に供給されることとなる。双方向DC/AC変換器42は、供給される6kWの直流電力を交流電力に変換して系統電力40へ売電する。
【0077】
図8(a)では、太陽光発電システム2から出力される1kWの直流電力と、蓄電装置3から供給される2kWの直流電力とが直流バス1を介して双方向DC/AC変換器42に供給されている。双方向DC/AC変換器42は、直流バス1から受ける合計3kWの直流電力を交流電力に変換して系統電力40へ供給(売電)する。
【0078】
そして、図8(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図8(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42は、充放電電流Ibの電流目標値Ib*=0Aに設定され、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。これにより、太陽光発電システム2から出力される1kWの直流電力のみが双方向DC/AC変換器42に供給されることとなる。双方向DC/AC変換器42は、供給される1kWの直流電力を交流電力に変換して系統電力40へ売電する。
【0079】
図9(a)では、太陽光発電システム2から出力される2kWの直流電力と、系統電力40から双方向DC/AC変換器42を経由して供給(買電)される2kWの直流電力とが直流バス1を介して蓄電装置3に供給されている。
【0080】
そして、図9(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図9(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42は、充放電電流Ibの電流目標値Ib*=0Aに設定され、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。これにより、双方向DC/AC変換器42は、太陽光発電システム2から出力される2kWの直流電力を交流電力に変換して系統電力40へ売電するように切替えられる。
【0081】
次に、図10および図11には、直流負荷5、蓄電装置3および双方向DC/AC変換器42の間で電力の授受を行なう態様のバリエーションが示される。具体的には、図10(a)を参照して、系統電力40から双方向DC/AC変換器42を経由して供給(買電)される3kWの直流電力と、蓄電装置3から供給される1kWの直流電力とを合わせた合計3kWの直流電力が、直流バス1を介して直流負荷5に供給されている。
【0082】
そして、図10(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図10(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42は、充放電電流Ibの電流目標値Ib*=0Aに設定され、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。これにより、系統電力40から双方向DC/AC変換器42を経由して供給される直流電力は2kWから3kWに増加する。そして、この3kWの直流電力が直流バス1を介して直流負荷5に供給される。
【0083】
図11(a)では、蓄電装置3から供給される5kWの直流電力のうち、3kWの直流電力が直流バス1を介して直流負荷5に供給され、残りの2kWの直流電力が双方向DC/AD変換器42を経由して系統電力40に売電されている。
【0084】
そして、図11(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図11(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42は、充放電電流Ibの電流目標値Ib*=0Aに設定され、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。これにより、双方向DC/AC変換器42は、系統電力40から受ける交流電力を3kWの直流電力に変換して直流バス1へ供給する。そして、この3kWの直流電力が直流バス1を介して直流負荷5に供給される。
【0085】
最後に、図12から図15には、太陽光発電システム2、直流負荷5、蓄電装置3および双方向DC/AC変換器42の間で電力の授受を行なう態様のバリエーションが示される。具体的には、図12(a)を参照して、太陽光発電システム2から出力される6kWの直流電力と、蓄電装置3から供給される1kWの直流電力とを合わせた合計7kWの直流電力のうち、4kWの直流電力が直流バス1を介して直流負荷5に供給され、残りの3kWの直流電力が双方向DC/AC変換器42を経由して系統電力40へ売電されている。
【0086】
そして、図12(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図12(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42は、充放電電流Ibの電流目標値Ib*=0Aに設定され、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。これにより、直流バス1から双方向DC/AC変換器42を経由して系統電力40へ売電される直流電力は3kWから2kWに減少する。
【0087】
図13(a)では、太陽光発電システム2から出力される6kWの直流電力のうち、2kWの直流電力が直流バス1を介して直流負荷5に供給され、1kWの直流電力が直流バス1を介して蓄電装置3に供給され、残りの2kWの直流電力が双方向DC/AC変換器42を経由して系統電力40へ売電されている。
【0088】
そして、図13(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図13(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42は、充放電電流Ibの電流目標値Ib*=0Aに設定され、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。これにより、直流バス1から双方向DC/AC変換器42を経由して系統電力40へ売電される直流電力は3kWから4kWに増加する。
【0089】
図14(a)では、太陽光発電システム2から出力される1kWの直流電力と、系統電力40から双方向DC/AC変換器42を経由して供給(買電)される5kWの直流電力とを合わせた合計6kWの直流電力のうち、4kWの直流電力が直流バス1を介して直流負荷5に供給され、残りの2kWの直流電力が直流バス1を介して蓄電装置3に供給されている。
【0090】
そして、図14(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図14(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42は、充放電電流Ibの電流目標値Ib*=0Aに設定され、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。これにより、系統電力40から双方向DC/AC変換器42を経由して直流バス1へ供給される直流電力は5kWから3kWに減少する。
【0091】
図15(a)では、太陽光発電システム2から出力される1kWの直流電力と、系統電力40から双方向DC/AC変換器42を経由して供給(買電)される2kWの直流電力と、蓄電装置3から供給される1kWの直流電力とを合わせた合計4kWの直流電力が、直流バス1を介して直流負荷5に供給されている。
【0092】
そして、図15(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図15(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42は、充放電電流Ibの電流目標値Ib*=0Aに設定され、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。これにより、系統電力40から双方向DC/AC変換器42を経由して直流バス1へ供給される直流電力は2kWから3kWに増加する。
【0093】
[変更例]
本発明の実施の形態に従う蓄電システムでは、双方向DC/AC変換器42を、双方向インバータ400および連系リアクトル410,412を備える構成としたが(図2参照)、双方向DC/AC変換器42の構成はこれに限定されるものではない。たとえば、双方向DC/AC変換器42に代えて、図16に示される双方向DC/AC変換器42Aを適用してもよい。
【0094】
図16を参照して、双方向DC/AC変換器42Aは、DC/AC変換回路470と、DC/AC変換回路470の直流側に接続された平滑用コンデンサ460と、平滑用コンデンサ460と直流バス1との間に設けられたDC/DC変換回路450とを備える。
【0095】
DC/AC変換回路470は、双方向インバータ400と、連系リアクトル410,412とを含む。DC/AC変換回路470の回路構成は、図2に示した双方向DC/AC変換器42の回路構成と同じである。
【0096】
平滑用コンデンサ460は、双方向インバータ400の直流側電圧の電圧変動を減少させる。
【0097】
DC/DC変換回路450は、絶縁型DC/DCコンバータであり、フルブリッジ回路を構成するトランジスタQ5〜Q8と、トランスTrと、フルブリッジ回路を構成するトランジスタQ9〜Q12とを含む。トランジスタQ5〜Q12にそれぞれ対応して、逆並列ダイオードD5〜D12が設けられる。トランジスタQ5〜Q8のオンオフは、制御部440Aからのスイッチング制御信号S5〜S8に応じて制御される。トランジスタQ9〜Q12のオンオフは、制御部440Aからのスイッチング制御信号S9〜S12に応じて制御される。
【0098】
トランジスタQ5〜Q8からなるフルブリッジ回路は、直流バス1からの直流電圧Vdcを交流電圧に変換して、トランスTrの一次側コイルに出力する。
【0099】
トランスTrの二次側コイルには、一次側コイルの電圧に応じた交流電圧が発生する。二次側コイルに生じる交流電圧の振幅は、一次側コイルの交流電圧と、一次側コイルおよび二次側コイルの巻線比とによって決まる。
【0100】
トランジスタQ9〜Q12からなるフルブリッジ回路は、二次側コイルに発生した交流電圧を直流電圧に変換して平滑用コンデンサ460に出力する。
【0101】
なお、図16に示す双方向DC/AC変換器42Aによれば、DC/AC変換回路470の直流側の電圧および電流に含まれる交流成分は、平滑用コンデンサ460によって吸収される。そのため、双方向DC/AC変換器42Aの直流側に交流成分の電流を重畳させないように制御することも可能である。そのような制御方式において、充放電電流Ibが零となるように双方向DC/AC変換器42Aの電力変換動作を制御すると、充放電電流Ibは、図4〜図6で示したような交流成分を含まず、直流成分(0A)のみを含む。したがって、充放電電流検出部60による充放電電流Ibの検出値が零となるタイミングで開閉器7により蓄電装置3と直流バス1との間の電路が遮断される。
【0102】
以上のように、この発明の実施の形態に従う蓄電システムによれば、蓄電装置が直流バスに直結される構成において、蓄電装置と直流バスとの間の電路を遮断するのに先行して、蓄電装置の充放電電流が零となるように、双方向DC/AC変換器を制御する。これにより、蓄電装置を遮断するときには充放電電流が零を経由する電流に制御されているため、開閉器にアーク放電が発生するのを抑制できる。したがって、従来の直流遮断装置において遮断器と並列に設けられていた転流回路や外部並列回路の設置が不要となる。この結果、蓄電装置の遮断時に発生するアーク放電を、小型および低コストのシステム構成で抑制することが可能となる。
【0103】
また、本実施の形態では、電力変換装置として、直流バスおよび系統電力の間に、双方向DC/AC変換器を設置する構成としたが、直流バスおよび系統電力の間に、DC/AC変換器およびAC/DC変換器を並列に設置する構成に対しても、本発明による電力変換制御を適用することができる。
【0104】
また、本実施の形態では、蓄電システムの一例として、直流電力を伝達するための直流バス1に、蓄電装置3、太陽光発電システム2、系統電力システム4および直流負荷5が接続される構成について説明したが、本発明の適用はこのような蓄電システムに限定されるものではない。具体的には、直流バス1に直結された蓄電装置3を遮断するのに先行して蓄電装置3の充放電電流を零とするための電力変換装置が搭載されていれば、本発明を適用することが可能である点について確認的に記載する。たとえば、図1とは異なる蓄電システムの構成(たとえば、太陽光発電システム2を含まない構成や、直流負荷5を含まない構成)についても本発明は適用可能である。
【0105】
さらに、本実施の形態では、蓄電装置3の異常が検知されたときに電池監視ユニット6から出力されるシャットダウン予告信号SDNに応答して、双方向DC/AC変換器42が充放電電流Ibが零となるように電力変換動作を実行する構成について例示したが、本発明の適用はこのような構成に限定されるものではない。具体的には、系統電力システム4内に異常が検知されたことによって、蓄電装置3と直流バス1との間の電路を遮断させる場面においても、本発明は適用可能である。その一例として、双方向DC/AC変換器42において直流側の電圧が上昇する過電圧や過電流が発生している場合には、双方向DC/AC変換器42は、蓄電装置3を保護するために、シャットダウン信号SDを活性化(遮断指令)して開閉器7に出力する。このシャットダウン信号SDを活性化するのに先行して、双方向DC/AC変換器42は、蓄電装置3の充放電電力Ibが零となるように電力変換動作を実行する。
【0106】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0107】
1 直流バス、2 太陽光発電システム、3 蓄電装置、4 系統電力システム、5 直流負荷、6 電池監視ユニット、7 開閉器、20 太陽電池、30 DC/DC変換器、40 系統電力、42,42A 双方向DC/AC変換器、60 充放電電流検出部、62 充放電電圧検出部、64 温度検出部、400 双方向インバータ、410,412 連系リアクトル、420 自経路電流検出部、430 直流電圧検出部、432 交流電圧検出部、440,440A 制御部、450 DC/AC変換回路、460 平滑用コンデンサ、470 DC/DC変換回路、500,510 減算部、520 制御目標値選択部、530 切替部、540 スイッチング制御信号生成部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、蓄電システムおよびその制御方法に関し、より特定的には、蓄電システムにおいて、蓄電装置と直流バスとの間の電路を遮断するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽電池、風力発電装置および燃料電池のような分散電源装置が普及し始めている。現状では、分散電源装置が発電した直流電力を交流電力に変換し、さらに、その交流電力を、電力を消費する機器において直流電力に変換して使用する。このように、直流−交流変換および交流−直流変換が行なわれるため、その電力変換のたびに電力損失が生じる。そこで、分散電源装置が発電する直流電力を交流電力に変換することなく、直流電力のまま送電して機器で使用することにより、変換損失を低減させる蓄電システムが提案されている。
【0003】
このような蓄電システムとして、たとえば特開2011−97818号公報(特許文献1)には、複数の電力源としての太陽電池、商用電源および蓄電池と、これらの複数の電力源にそれぞれ対応して設けられ、接続された電力源から供給される電力を基に所定の電圧レベルの直流電力を出力する複数の出力用コンバータと、複数の出力用コンバータの出力電圧を制御する出力電圧制御部と、出力電圧制御部に指令値を与えて出力電圧制御動作を指示するシステム制御部とを備えた配電システムが開示される。この特許文献1に記載される配電システムは、複数の出力用コンバータとして、太陽電池に接続される太陽電池用コンバータと、蓄電池に接続される蓄電池用コンバータと、商用電源に接続されるAC/DCコンバータとを備えている。そして、各出力用コンバータの出力電圧を個別に制御するために、出力用コンバータごとに独立したフィードバック制御系が設けられている。
【0004】
しかしながら、この特許文献1に記載の配電システムでは、電力源ごとに出力用コンバータを設ける必要があるため、出力用コンバータで発生する変換損失が増大する、また、システムのコストアップが発生するという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するためには、蓄電池のような電圧安定化能力の高い電源を、コンバータを介さず直流バスに直結することによって、直流バスの電圧を無制御で安定化させることが可能となる。
【0006】
一方で、蓄電池を直流バスに直結させる構成では、システム内に異常が検知された場合には、蓄電池を過充電や過放電などから保護するために蓄電池を直流バスから遮断する必要が生じる。しかしながら、直流電流は交流電流とは異なり零点を持たないため、高電圧・高電流下において、開閉器によって直流電流を遮断する際に、開閉器内の接点にアーク放電が発生する虞がある。
【0007】
直流電流を遮断する際に発生するアーク放電を抑制する技術として、たとえば特開2006−32077号公報(特許文献2)には、直流電流を遮断する直流遮断器と並列に転流回路を設ける構成が開示される。この転流回路には、転流スイッチ、リアクトルおよび転流コンデンサが直列接続され、転流コンデンサが負荷側に設けられている。上記構成において、直流回路に事故電流が流れた場合には、主遮断器が開放される一方で、転流スイッチが閉じられ、事故電流に転流回路からの振動性の転流電流を重畳して主遮断器で事故電流を遮断する。
【0008】
また、特開2010−80200号公報(特許文献3)には、直流電源と負荷との間に接続された遮断器と、遮断器と負荷との間に介在され、遮断器から負荷への電流の流れを許容するダイオードと、ダイオードに対して並列に設けられ、遮断器側がベースに接続されるとともに負荷側がエミッタに接続されるトランジスタと、インダクタとキャパシタとの直列回路の一端を直流電源と遮断器との間に接続し、他端をトランジスタのコレクタに接続する外部並列回路とを備えた直流遮断装置が開示される。この特許文献3では、直流電流を遮断した際に発生するアーク放電は、外部並列回路のキャパシタの作用により外部並列回路に流れ、アーク電流が減少することにより早期に除去される。そして、アーク電流が除去されると、トランジスタのベース電圧もなくなるため、トランジスタの電気的導通が遮断され、このトランジスタの遮断機能により、外部並列回路への電流の流れ込みが素子され、回路の完全停止が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−97818号公報
【特許文献2】特開2006−32077号公報
【特許文献3】特開2010−80200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の特許文献2および3に記載される直流遮断装置においては、遮断時に発生するアーク放電を分流させるために、遮断器に対して並列に転流回路もしくは外部並列回路を設ける必要がある。そのため、直流遮断装置の大型化およびコストアップが課題となっていた。さらに、特許文献2では、直流電流を遮断するためには、主遮断器、副遮断器および転流スイッチの各々を動作させるシーケンス制御が必要となるため、直流遮断装置を複雑かつ高価なものとしていた。
【0011】
そして、このような直流遮断装置を上述した蓄電システムに適用すると、システム全体の大型化およびコストアップを招くという不具合が懸念される。なお、このような直流電流を遮断する際に発生するアーク放電を抑制する対策について、上記の特許文献1に記載の配電システムは何ら言及していない。
【0012】
それゆえ、この発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、蓄電装置の遮断時に発生するアーク放電を、小型および低コストのシステム構成で抑制することが可能な蓄電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明のある局面に従えば、蓄電システムであって、直流電力を伝達するための直流バスと、電源電圧を直流バスに出力する蓄電装置と、直流バスおよび系統電力の間で電力変換する電力変換装置と、直流バスおよび蓄電装置の間を接続/遮断するための開閉器と、蓄電装置を直流バスから遮断するための電源遮断手段とを備える。電源遮断手段は、蓄電装置の充放電電流が零となるように電力変換装置の電力変換動作を制御する電力変換制御手段と、電力変換制御手段による前記電力変換動作の制御中に、開閉器により蓄電装置を直流バスから遮断する開閉制御手段とを含む。
【0014】
好ましくは、蓄電システムは、充放電電流を検出するための充放電電流検出部をさらに備える。電力変換装置は、電力変換動作の実行時、充放電電流に系統電力の周波数に応じた周波数の交流成分を発生するように構成される。電力変換制御手段は、充放電電流検出部の検出値を用いて、充放電電流の波形が零を経由するように電力変換動作を制御する。開閉制御手段は、電力変換制御手段による電力変換動作の制御中に、開閉器により蓄電装置を直流バスから遮断する。
【0015】
好ましくは、電源遮断手段は、蓄電装置の遮断指令を開閉器に出力する前に、遮断予告信号を電力変換装置に出力するように構成される。電力変換制御手段は、遮断予告信号を受けたときに、電力変換動作の制御を開始する。開閉制御手段は、遮断指令を受けると、電力変換動作の制御中に、開閉器により蓄電装置を直流バスから遮断する。
【0016】
好ましくは、電力変換装置は、直流バスおよび系統電力の間に設けられたフルブリッジインバータを含む。
【0017】
この発明の別の局面に従えば、蓄電システムの制御方法であって、蓄電システムは、直流電力を伝達するための直流バスと、電源電圧を直流バスに出力する蓄電装置と、直流バスおよび系統電力の間で電力変換する電力変換装置と、直流バスおよび蓄電装置の間を接続/遮断するための開閉器とを含む。制御方法は、蓄電装置の充放電電流が零となるように電力変換装置の電力変換動作を制御するステップと、電力変換動作を制御するステップの実行中に、開閉器により蓄電装置を直流バスから遮断するステップとを備える。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、蓄電装置の遮断時に発生するアーク放電を、小型および低コストのシステム構成で抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態に従う蓄電システムの全体の構成を概略的に示す図である。
【図2】図1における双方向DC/AC変換器の詳細な構成を示す回路図である。
【図3】図2における制御部の制御構造を示す図である。
【図4】双方向DC/AC変換器における電力変換動作の制御態様について説明する図である(その1)。
【図5】双方向DC/AC変換器における電力変換動作の制御態様について説明する図である(その2)。
【図6】双方向DC/AC変換器における電力変換動作の制御態様について説明する図である(その3)。
【図7】蓄電装置および双方向DC/AC変換器の間で電力の授受を行なう態様を説明する図である(その1)
【図8】蓄電装置および双方向DC/AC変換器の間で電力の授受を行なう態様を説明する図である(その2)。
【図9】蓄電装置および双方向DC/AC変換器の間で電力の授受を行なう態様を説明する図である(その3)。
【図10】直流負荷、蓄電装置および双方向DC/AC変換器の間で電力の授受を行なう態様を説明する図である(その1)。
【図11】直流負荷、蓄電装置および双方向DC/AC変換器の間で電力の授受を行なう態様を説明する図である(その2)。
【図12】太陽光発電システム、直流負荷、蓄電装置および双方向DC/AC変換器の間で電力の授受を行なう態様を説明する図である(その1)。
【図13】太陽光発電システム、直流負荷、蓄電装置および双方向DC/AC変換器の間で電力の授受を行なう態様を説明する図である(その2)。
【図14】太陽光発電システム、直流負荷、蓄電装置および双方向DC/AC変換器の間で電力の授受を行なう態様を説明する図である(その3)。
【図15】太陽光発電システム、直流負荷、蓄電装置および双方向DC/AC変換器の間で電力の授受を行なう態様を説明する図である(その4)。
【図16】本発明の実施の形態に従う蓄電システムに適用される双方向DC/AC変換器の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0021】
(蓄電システムの構成)
図1は、この発明の実施の形態に従う蓄電システムの全体の構成を概略的に示す図である。
【0022】
図1を参照して、本実施の形態に従う蓄電システムは、直流バス1と、太陽光発電システム2と、蓄電装置3と、系統電力システム4と、直流負荷5と、電池監視ユニット6と、開閉器7とを備える。
【0023】
直流バス1は、直流負荷5に直流電力を供給する。直流負荷5は、一例として、家庭で使用される空調機、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、照明装置またはパーソナルコンピュータのような電気機器である。あるいは、オフィスで使用されるコンピュータ、複写機またはファクシミリのような電気機器や、または、店舗で使用されるショーケースまたは照明装置のような電気機器であってもよい。直流バス1には、太陽光発電システム2、蓄電装置3および系統電力システム4が接続されている。
【0024】
なお、本実施の形態に従う蓄電システムにおいては、直流バス1、太陽光発電システム2、蓄電装置3、系統電力システム4および直流負荷5をそれぞれ1個ずつ備える場合について説明するが、これらの個数には制限がなく、1個でも複数個であってもよい。
【0025】
直流バス1は、電力線対である正母線PLおよび負母線NLで構成される。
太陽光発電システム2は、太陽電池20と、DC/DC変換器30とを含む。DC/DC変換器30は、太陽電池20と直流バス1との間に配置されており、太陽電池20から受ける直流電力を電圧変換して直流バス1へ供給する。DC/DC変換器30における電圧変換動作は、太陽電池20の出力電圧と、直流バス1の電圧(正母線PLおよび負母線NLの間の線間電圧)とに応じて、図示しない制御部からのスイッチング指令に従って制御される。
【0026】
蓄電装置3は、再充電可能な電力貯蔵要素であり、代表的にリチウムイオン二次電池やニッケル水素電池などの二次電池で構成される。蓄電装置3は、複数の電池セルを直列接続して構成されており、一例として、定格電圧380Vおよび10Ahを有している。
【0027】
図1に示す構成において、蓄電装置3は、直流バス1に「直結」されており、直流バス1との間で直流電力の授受を行なう。ここで、「直結」とは、直流バス1と蓄電装置3との間に、DC/DC変換器のような電力変換器が介在していないことを意味する。したがって、直流バス1の電圧は、蓄電装置3の電源電圧とほぼ等しくなる。このように蓄電装置3を直流バス1に直結する構成としたことにより、蓄電装置3が有する高い電圧安定化能力を活かして、急激な負荷変動による直流バス1の電圧変動を抑制することが可能となる。
【0028】
開閉器7は、蓄電装置3と直流バス1との間に配設される。開閉器7は、電池監視ユニット6からのシャットダウン信号SDが非活性化(導通指令に相当する。)されると、蓄電装置3と直流バス1とを電気的に接続し、シャットダウン信号SDが活性化(遮断指令に相当する。)されると、蓄電装置3と直流バス1との間の電路を遮断する。
【0029】
電池監視ユニット6は、過充電、過放電および温度上昇などから蓄電装置3を保護するために、蓄電装置3の状態を監視する。具体的には、充放電電流検出部60は、直流バス1に介挿され、蓄電装置3に対して入出力される充放電電流Ibを検出し、その検出値を電池監視ユニット6へ出力する。充放電電圧検出部62は、蓄電装置3の充放電電圧Vbを検出し、その検出値を電池監視ユニット6へ出力する。温度検出部64は、蓄電装置3の温度Tbを検出し、その検出値を電池監視ユニット6へ出力する。なお、充放電電流検出部60は、蓄電装置3からの放電電流を、正値の充放電電流Ibとして検出し、蓄電装置3への充電電流を、負値の充放電電流Ibとして検出する。電池監視ユニット6は、充放電電流検出部60からの充放電電流Ib、充放電電圧検出部62からの充放電電圧Vbの検出値および温度検出部64からの電池温度Tbの検出値に基づいて、蓄電装置3の状態(充電状態および温度状態)を監視する。電池監視ユニット6は、蓄電装置3の過充電/過放電、過電流および温度異常、蓄電装置3の水没、および、逆電力継電器からの逆潮流の検知信号などの有無を監視する。そして、蓄電装置3の異常が検知されると、電池監視ユニット6は、蓄電装置3を保護するためにシャットダウン信号SDを活性化(遮断指令)することにより、開閉器7によって蓄電装置3と直流バス1との間の電路を遮断する。
【0030】
さらに電池監視ユニット6は、上述のシャットダウン信号SDを活性化(遮断指令)するのに先行して、蓄電装置3の遮断を予告するためのシャットダウン予告信号SDNを活性化する。この活性化されたシャットダウン予告信号SDNは、系統電力システム4内の双方向DC/AC変換器42へ送信される。双方向DC/AC変換器42は、電池監視ユニット6からシャットダウン予告信号SDNを受けると、後述する方法によって、蓄電装置3の充放電電流Ibが零となるように、電力変換動作を実行する。
【0031】
(系統電力システムの構成)
図1に示す構成において、系統電力システム4は、直流バス1との間で直流電力の授受を行なう。系統電力システム4は、双方向DC/AC変換器42と、系統電力40とを含む。
【0032】
系統電力40は、電力会社等から受電する電力(たとえば、AC200Vとする)である。系統電力40は、例えば、単相3線式の商用交流電力系統から供給される。単相3線式の商用交流電力系統は、中性線が抵抗を介して接地されており、中性線以外の2線(R相線RLおよびT相線TL)を使用してAC200Vを供給する。
【0033】
双方向DC/AC変換器42は、直流バス1および系統電力40の間に接続される。双方向DC/AC変換器42は、直流バス1から受ける直流電力を交流電力に変換して系統電力40へ供給する。また、双方向DC/AC変換器42は、系統電力40から受ける交流電力を直流電力に変換して直流バス1へ供給する。本実施の形態に従う蓄電システムにおいては、双方向DC/AC変換器42を介して電力会社等から系統電力を買う(買電)するとともに、双方向DC/AC変換器42を介して余剰電力を電力会社等に売る(売電)することを可能に構成されている。
【0034】
なお、図1では、買電時に双方向DC/AC変換器42に流れる電流をIbuy、売電時に双方向DC/AC変換器42に流れる電流をIsellと表記する。また、直流負荷5に供給される電流をIloadと表記し、太陽光発電システム2から直流バス1に供給される電流をIpvと表記する。買電時においては、電流Ipvおよび電流Ibuyの和から電流Iloadを差し引いた電流が、蓄電装置3の充電電流となる。また、売電時においては、電流Ipvおよび蓄電装置3の放電電流の和から電流Iloadを差し引いた電流が、電流Isellとなる。電流IsellおよびIbuyをどのような値にするかについては、蓄電システムの使用者または管理者が自在に設定することができる。
【0035】
(双方向DC/AC変換器の構成)
次に、図面を参照して、この発明の実施の形態に従う電力変換装置の一形態である双方向DC/AC変換器42の構成について説明する。
【0036】
図2は、図1における双方向DC/AC変換器42の詳細な構成を示す回路図である。
図2を参照して、双方向DC/AC変換器42は、双方向インバータ400と、連系リアクトル410,412と、自経路電流検出部420と、直流電圧検出部430と、交流電圧検出部432と、制御部440とを含む。
【0037】
双方向インバータ400は、売電時には、制御部440からのスイッチング制御信号S1〜S4に応じて、直流バス1から受けた直流電力を交流電力に変換して系統電力40に出力する。また、双方向インバータ400は、買電時には、制御部440からのスイッチング制御信号S1〜S4に応じて、系統電力40から受けた交流電力を直流電力に変換して直流バス1に出力する。
【0038】
具体的には、双方向インバータ400は、スイッチング素子であるトランジスタQ1〜Q4と、ダイオードD1〜D4とを含む。トランジスタQ1,Q2は、直流バス1を構成する正母線PLおよび負母線NLの間に直列に接続される。トランジスタQ1とトランジスタQ2との中間点はR相線RLに接続される。連系リアクトル410は、R相線RLに介挿接続される。
【0039】
トランジスタQ3,Q4は、正母線PLおよび負母線NLの間に直列に接続される。トランジスタQ3とトランジスタQ4との中間点はT相線TLに接続される。連系リアクトル412は、T相線TLに介挿接続される。各トランジスタQ1〜Q4のコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードD1〜D4がそれぞれ接続されている。トランジスタQ1〜Q4およびダイオードD1〜D4は、フルブリッジ回路を構成する。
【0040】
なお、トランジスタQ1〜Q4として、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることができる。または、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)等の電力スイッチング素子を用いてもよい。
【0041】
自経路電流検出部420は、T相線TLに介挿され、直流バス1と双方向インバータ400との間で授受される電力の電流値(自経路電流)Iacを検出し、その検出結果を制御部440へ出力する。
【0042】
直流電圧検出部430は、正母線PLと負母線NLとの間に接続され、直流バス1と双方向インバータ400の間で授受される直流電力の電圧Vdcを検出し、その検出結果を制御部440へ出力する。交流電圧検出部432は、R相線RLとT相線TLとの間に接続され、系統電力40の交流電圧Vacを検出し、その検出結果を制御部440へ出力する。
【0043】
制御部440は、自経路電流検出部420から受けた自経路電流値Iacと、直流電圧検出部430から受けた直流電圧Vdcと、交流電圧検出部432から受けた交流電圧Vacと、充放電電流検出部60から受けた充放電電流Ibと、電池監視ユニット6から受けたシャットダウン予告信号SDNとに基づいて、後述する制御構造に従って、トランジスタQ1〜Q4のオン・オフを制御するためのスイッチング制御信号S1〜S4を生成し、双方向インバータ400を制御する。
【0044】
図3は、図2における制御部440の制御構造を示す図である。
図3を参照して、制御部440は、減算部500,510と、制御目標値選択部520と、切替部530と、スイッチング制御信号生成部540とを含む。
【0045】
制御目標値選択部520は、自経路電流Iacの電流目標値Iac*を決定する。この電流目標値Iac*は、たとえば日時に応じて異なる電流値となるように事前に決定し、図示しない記憶部に格納しておくことができる。あるいは、制御部440と蓄電システムの外部との間で通信を行なうことによって、所望の電流値を適宜取得するようにしてもよい。なお、電流目標値Iac*は、買電時の自経路電流Ibuyの電流目標値Ibuy*と、売電時の自経路電流Isellの電流目標値Isell*とを含む。
【0046】
制御目標値選択部520は、さらに、充放電電流Ibの電流目標値Ib*を決定する。この電流目標値Ib*は、予め「0A」に設定されている。
【0047】
制御目標値選択部520は、電池監視ユニット6から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けたときには、切替信号を非活性化して切替部530へ出力する。一方、シャットダウン予告信号SDNが非活性化されているときには、制御目標値選択部520は、切替信号を活性化して切替部530へ出力する。
【0048】
減算部500は、自経路電流Iacと電流目標値Iac*との差から電流偏差ΔIacを演算し、切替部530へ出力する。減算部510は、充放電電流Ibと電流目標値Ib*(=0A)との差から電流偏差ΔIbを演算し、切替部530へ出力する。
【0049】
切替部530は、制御目標値選択部520から出力された切替信号に基づいて、減算部500から受けた電流偏差ΔIacおよび減算部510から受けた電流偏差ΔIbのいずれか一方を選択してスイッチング制御信号生成部540へ出力する。具体的には、切替部530は、切替信号が活性化されているとき、すなわち、シャットダウン予告信号SDNが非活性化されているときには、減算部500から受けた電流偏差ΔIacを選択してスイッチング制御信号生成部540へ出力する。一方、切替部530は、切替信号が非活性化されているとき、すなわちシャットダウン予告信号SDNが活性化されているときには、減算部510から受けた電流偏差ΔIbを選択してスイッチング制御信号生成部540へ出力する。
【0050】
スイッチング制御信号生成部540は、少なくとも比例要素(P:proportional element)および積分要素(I:integral element)を含んで構成され、切替部530から電流偏差を受けると、この入力された電流偏差に応じて操作信号を生成する。そして、スイッチング制御信号生成部540は、この操作信号に基づいて双方向インバータ400のトランジスタQ1〜Q4のオンデューティーを規定するデューティー指令を生成すると、この生成したデューティー指令と搬送波とを比較して、スイッチング制御信号S1〜S4を生成して、双方向インバータ400を制御する。
【0051】
スイッチング制御信号生成部540は、スイッチング制御信号S1〜S4の生成において、系統電力40と双方向DC/AC変換器42との間で授受される交流電力(交流電圧Vac、交流電流(自経路電流)Iac)に対して、力率改善(Power Factor Correction)制御を実行する。具体的には、スイッチング制御信号生成部540は、交流電圧Vacの位相に交流電流Iacの位相を合わせるように、交流電流Iacの波形を補正することによって力率を改善する。
【0052】
なお、図3では、スイッチング制御信号生成部540は、交流電圧検出部432により検出される交流電圧Vacに基づいて、交流電流Iacの波形を補正する構成を例示したが、商用電力系統から供給される交流電圧Vacのゼロクロス点は既知であることから、ゼロクロス点から導出される系統周波数の正弦波電流を目標電流とすることで、図3に示す制御構造から交流電圧検出部432を省略することも可能である。
【0053】
以上のように、シャットダウン予告信号SDNが非活性化されているとき、すなわち、蓄電装置3の異常が検知されていないときには、制御部440は、自経路電流Iacが所定の電流目標値Iac*(Isell*/Ibuy*)となるようにスイッチング制御信号S1〜S4を生成して双方向インバータ400を制御する。
【0054】
これに対して、シャットダウン予告信号SDNが活性化されているとき、すなわち、蓄電装置3の異常が検知されたときには、制御部440は、充放電電流Ibが電流目標値Ib*=0Aとなるようにスイッチング制御信号S1〜S4を生成して双方向インバータ400を制御する。
【0055】
このように、シャットダウン予告信号SDNが活性化されたときには、制御部440は、充放電電流Ibが零となるように双方向インバータ400を制御する。そして、電池監視ユニット6は、シャットダウン予告信号SDNが活性化された時点からの充放電電流検出部60の検出値を監視する。充放電電流Ibが零となったことが検出されると、電池監視ユニット6は、シャットダウン信号SDを活性化する。このシャットダウン信号SDの活性化に応じて、開閉器7によって蓄電装置3と直流バス1との間の電路が遮断される。
【0056】
蓄電装置3の異常が検知された場合には、蓄電装置3の保護の観点から蓄電装置3を直流バス1から遮断させる必要があるが、充放電電流Ibは零点を持たないため、開閉器7により蓄電装置3と直流バス1との間の電路を遮断する際に、開閉器7の接点にアーク放電が発生する虞がある。
【0057】
そこで、本実施の形態に従う蓄電システムでは、蓄電装置3を遮断するのに先行して、蓄電装置3の充放電電流Ibが零となるように双方向DC/AC変換器42を制御する。そして、充放電電流Ibが零となったことに応じて蓄電装置3を直流バス1から遮断する。これにより、蓄電装置3を直流バス1から遮断するときにアーク放電が発生するのを抑制できる。
【0058】
以下、図4〜図6を参照して、双方向DC/AC変換器42における電力変換動作の制御態様について説明する。
【0059】
図4には、本発明の実施の形態に従う蓄電システムの動作態様の一例として、太陽光発電システム2から受ける直流電力によって蓄電装置3を充電している状態が示される。具体的には、図4(a)を参照して、太陽光発電システム2から出力される3kWの直流電力が直流バス1を介して蓄電装置3に供給されている。同図には、この状態での直流バス1の直流電圧Vdc、充放電電流Ibおよび、系統電力40と双方向DC/AC変換器42との間で授受される交流電力(交流電圧Vac、交流電流Iac)の時間波形が示される。この時間波形図において、充放電電流Ibは蓄電装置3への充電電流(Ib<0)に相当する。
【0060】
図4(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図4(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42においては、充放電電流Ibの電流目標値Ib*が0Aに設定される。そして、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。
【0061】
このような制御を行なうことにより、太陽光発電システム2から出力される3kWの直流電力はすべて双方向DC/AC変換器42に供給されることとなる。双方向DC/AC変換器42は、太陽光発電システム2から直流バス1を経由して供給される3kWの直流電力を交流電力に変換して系統電力40へ売電する。
【0062】
なお、図4(b)の時間波形図において、直流電圧Vdcおよび充放電電流Ibには、系統電力40の周波数に応じた周波数の交流成分が重畳される。双方向インバータ400における電力変換動作は、フルブリッジインバータを構成するトランジスタQ1〜Q4のうち、トランジスタQ1およびQ4を1組のスイッチペアとし、トランジスタQ2およびQ3をもう1組のスイッチペアとして、系統電力40の半周期ごとに、これら2組のスイッチペアを交互にオン・オフさせることにより行なわれる。このトランジスタQ1〜Q4のスイッチング動作により、双方向インバータ400の直流側、すなわち直流バス1を流れる直流電流には系統電力40の周波数に応じた交流成分が重畳する。その結果、直流バス1に直結される蓄電装置3の充放電電流Ibにおいても交流成分が重畳される。図4(b)では、充放電電流Ibは、直流成分である0Aを中心として脈動が生じている。
【0063】
図示しない電池監視ユニット6は、充放電電流検出部60による充放電電流Ibの検出値を監視し、充放電電流Ibが零となるタイミングで開閉器7により蓄電装置3と直流バス1との間の電路を遮断する。
【0064】
図5には、本発明の実施の形態に従う蓄電システムの動作態様の他の例として、太陽光発電システム2から受ける直流電力によって蓄電装置3を充電するとともに直流負荷5を駆動している状態が示される。具体的には、図5(a)を参照して、太陽光発電システム2から出力される6kWの直流電力のうち、3kWの直流電力が直流バス1を介して直流負荷5へ供給され、残りの3kWの直流電力が直流バス1を介して蓄電装置3に供給されている。同図には、この状態での直流バス1の直流電圧Vdc、充放電電流Ibおよび、系統電力40と双方向DC/AC変換器42との間で授受される交流電力(交流電圧Vac、交流電流Iac)の時間波形が示される。この時間波形図において、充放電電流Ibは蓄電装置3の充電電流(Ib<0)に相当する。
【0065】
図5(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図5(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42においては、充放電電流Ibの電流目標値Ib*が0Aに設定される。そして、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。
【0066】
このような制御を行なうことにより、太陽光発電システム2から出力される6kWの直流電力のうち、3kWの直流電力が直流負荷5へ供給され、残りの3kWの直流電力が双方向DC/AC変換器42に供給されることとなる。双方向DC/AC変換器42は、供給される3kWの直流電力を交流電力に変換して系統電力40へ売電する。図5(b)の時間波形図は、図4(b)の時間波形図とほぼ同様となる。すなわち、直流電圧Vdcおよび充放電電流Ibには系統電力40の周波数に応じた周波数の交流成分が重畳される。電池監視ユニット6は、充放電電流検出部60による充放電電流Ibの検出値が零となるタイミングで開閉器7により蓄電装置3と直流バス1との間の電路を遮断する。
【0067】
図6には、本発明の実施の形態に従う蓄電システムの動作態様の他の例として、系統電力40からの交流電力を双方向DC/AC変換器42により直流電力に変換して蓄電装置3を充電している状態が示される。具体的には、図6を参照して、双方向DC/AC変換器42から出力される3kWの直流電力が直流バス1を介して蓄電装置3に供給されている。同図には、この状態での直流バス1の直流電圧Vdc、充放電電流Ibおよび、系統電力40と双方向DC/AC変換器42との間で授受される交流電力(交流電圧Vac、交流電流Iac)の時間波形が示される。この時間波形図において、充放電電流Ibは蓄電装置3の充電電流(Ib<0)に相当する。
【0068】
図6に示す状態において双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、双方向DC/AC変換器42においては、充放電電流Ibの電流目標値Ib*が0Aに設定される。そして、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。
【0069】
なお、図6では、双方向DC/AC変換器42は、系統電力40から受ける交流電力を直流電力に変換して直流バス1へ供給する。この時の電力変換動作は、系統電力40の半周期ごとに、ダイオードD1およびD4からなるブリッジ回路と、ダイオードD2およびD3からなるブリッジ回路とが交互に交流電力を直流電力に整流することにより行なわれる。そして、ダイオードD1〜D4による全波整流により、双方向インバータ400の直流側、すなわち直流バス1を流れる直流電流には系統電力40の周波数に応じた交流成分が重畳する。その結果、直流バス1に直結される蓄電装置3の充放電電流Ibにも交流成分が重畳されるため、図6に示す時間波形図では、充放電電流Ibの波形は、零付近を経由して脈動する電流波形となっている。したがって、双方向DC/AC変換器42に対して、上述した充放電電流Ibを電流目標値Ib*=0Aとするための制御を行なわなくとも、充放電電流検出部60による充放電電流Ibの検出値が零付近となるタイミングで開閉器7により蓄電装置3と直流バス1との間の電路を遮断することにより、開閉器7におけるアーク放電の発生を抑制できる。
【0070】
開閉器7でのアーク放電の発生を抑制するためには、充放電電流Ibが零付近に減少させてから開閉器7を開放する必要がある。そのため、本実施の形態では、シャットダウン信号SDに先行して活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、充放電電流Ibの電流目標値Ib*を0Aに設定して双方向DC/AC変換器42における電力変換動作を制御する構成としている。
【0071】
一方、本発明の実施の形態に従う蓄電システムでは、直流バス1に蓄電装置3を直結するとともに、双方向DC/AC変換器42を、フルブリッジインバータ(双方向インバータ400)により構成したことにより、双方向インバータ400の電力変換動作によって蓄電装置3の充放電電流Ibには系統電力40の周波数に応じた周波数の交流成分が重畳される。したがって、この充放電電流Ibが零もしくは零付近を経由する電流波形となっていれば、必ずしも充放電電流Ibの直流成分を零に一致させなくても、アーク放電の発生を抑制することができる。
【0072】
したがって、図6の時間波形図に示されるように、シャットダウン予告信号SDNが活性化されたときの充放電電流Ibが零を経由する電流波形であれば、充放電電流Ibを零とするための制御が不要となり、充放電電流Ibが零となるタイミングで蓄電装置3を直ちに遮断することができる。
【0073】
また、上記の説明では、充放電電流Ibが零付近で開閉器7を開放すると述べてきたが、実際の充放電電流Ibが零を経由して脈動している状態であれば、開閉器7をどのタイミングで開放しても、開放後に充放電電流Ibが零を経由するタイミングを迎えた時点でアーク消弧されるため、開閉器7を安全に開放することができる。
【0074】
以下では、本発明の実施の形態に従う蓄電システムの動作態様のバリエーションと、各々の動作態様に適用される双方向DC/AC変換器42の制御とについて、図面を用いて説明する。
【0075】
最初に、図7から図9には、太陽光発電システム2、蓄電装置3および双方向DC/AC変換器42の間で電力の授受を行なう態様のバリエーションが示される。具体的には、図7(a)を参照して、太陽光発電システム2から出力される6kWの直流電力のうち、3kWの直流電力が直流バス1を介して双方向DC/AC変換器42へ供給され、残りの3kWの直流電力が直流バス1を介して蓄電装置3に供給されている。双方向DC/AC変換器42は、直流バス1から受ける3kWの直流電力を交流電力に変換して系統電力40へ供給(売電)する。
【0076】
図7(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図7(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42は、充放電電流Ibの電流目標値Ib*=0Aに設定され、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。これにより、太陽光発電システム2から出力される6kWの直流電力はすべて双方向DC/AC変換器42に供給されることとなる。双方向DC/AC変換器42は、供給される6kWの直流電力を交流電力に変換して系統電力40へ売電する。
【0077】
図8(a)では、太陽光発電システム2から出力される1kWの直流電力と、蓄電装置3から供給される2kWの直流電力とが直流バス1を介して双方向DC/AC変換器42に供給されている。双方向DC/AC変換器42は、直流バス1から受ける合計3kWの直流電力を交流電力に変換して系統電力40へ供給(売電)する。
【0078】
そして、図8(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図8(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42は、充放電電流Ibの電流目標値Ib*=0Aに設定され、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。これにより、太陽光発電システム2から出力される1kWの直流電力のみが双方向DC/AC変換器42に供給されることとなる。双方向DC/AC変換器42は、供給される1kWの直流電力を交流電力に変換して系統電力40へ売電する。
【0079】
図9(a)では、太陽光発電システム2から出力される2kWの直流電力と、系統電力40から双方向DC/AC変換器42を経由して供給(買電)される2kWの直流電力とが直流バス1を介して蓄電装置3に供給されている。
【0080】
そして、図9(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図9(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42は、充放電電流Ibの電流目標値Ib*=0Aに設定され、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。これにより、双方向DC/AC変換器42は、太陽光発電システム2から出力される2kWの直流電力を交流電力に変換して系統電力40へ売電するように切替えられる。
【0081】
次に、図10および図11には、直流負荷5、蓄電装置3および双方向DC/AC変換器42の間で電力の授受を行なう態様のバリエーションが示される。具体的には、図10(a)を参照して、系統電力40から双方向DC/AC変換器42を経由して供給(買電)される3kWの直流電力と、蓄電装置3から供給される1kWの直流電力とを合わせた合計3kWの直流電力が、直流バス1を介して直流負荷5に供給されている。
【0082】
そして、図10(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図10(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42は、充放電電流Ibの電流目標値Ib*=0Aに設定され、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。これにより、系統電力40から双方向DC/AC変換器42を経由して供給される直流電力は2kWから3kWに増加する。そして、この3kWの直流電力が直流バス1を介して直流負荷5に供給される。
【0083】
図11(a)では、蓄電装置3から供給される5kWの直流電力のうち、3kWの直流電力が直流バス1を介して直流負荷5に供給され、残りの2kWの直流電力が双方向DC/AD変換器42を経由して系統電力40に売電されている。
【0084】
そして、図11(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図11(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42は、充放電電流Ibの電流目標値Ib*=0Aに設定され、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。これにより、双方向DC/AC変換器42は、系統電力40から受ける交流電力を3kWの直流電力に変換して直流バス1へ供給する。そして、この3kWの直流電力が直流バス1を介して直流負荷5に供給される。
【0085】
最後に、図12から図15には、太陽光発電システム2、直流負荷5、蓄電装置3および双方向DC/AC変換器42の間で電力の授受を行なう態様のバリエーションが示される。具体的には、図12(a)を参照して、太陽光発電システム2から出力される6kWの直流電力と、蓄電装置3から供給される1kWの直流電力とを合わせた合計7kWの直流電力のうち、4kWの直流電力が直流バス1を介して直流負荷5に供給され、残りの3kWの直流電力が双方向DC/AC変換器42を経由して系統電力40へ売電されている。
【0086】
そして、図12(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図12(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42は、充放電電流Ibの電流目標値Ib*=0Aに設定され、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。これにより、直流バス1から双方向DC/AC変換器42を経由して系統電力40へ売電される直流電力は3kWから2kWに減少する。
【0087】
図13(a)では、太陽光発電システム2から出力される6kWの直流電力のうち、2kWの直流電力が直流バス1を介して直流負荷5に供給され、1kWの直流電力が直流バス1を介して蓄電装置3に供給され、残りの2kWの直流電力が双方向DC/AC変換器42を経由して系統電力40へ売電されている。
【0088】
そして、図13(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図13(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42は、充放電電流Ibの電流目標値Ib*=0Aに設定され、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。これにより、直流バス1から双方向DC/AC変換器42を経由して系統電力40へ売電される直流電力は3kWから4kWに増加する。
【0089】
図14(a)では、太陽光発電システム2から出力される1kWの直流電力と、系統電力40から双方向DC/AC変換器42を経由して供給(買電)される5kWの直流電力とを合わせた合計6kWの直流電力のうち、4kWの直流電力が直流バス1を介して直流負荷5に供給され、残りの2kWの直流電力が直流バス1を介して蓄電装置3に供給されている。
【0090】
そして、図14(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図14(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42は、充放電電流Ibの電流目標値Ib*=0Aに設定され、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。これにより、系統電力40から双方向DC/AC変換器42を経由して直流バス1へ供給される直流電力は5kWから3kWに減少する。
【0091】
図15(a)では、太陽光発電システム2から出力される1kWの直流電力と、系統電力40から双方向DC/AC変換器42を経由して供給(買電)される2kWの直流電力と、蓄電装置3から供給される1kWの直流電力とを合わせた合計4kWの直流電力が、直流バス1を介して直流負荷5に供給されている。
【0092】
そして、図15(a)に示す状態において、双方向DC/AC変換器42が電池監視ユニット6(図1)から活性化されたシャットダウン予告信号SDNを受けると、蓄電システムは図15(b)に示す状態に切替わる。双方向DC/AC変換器42は、充放電電流Ibの電流目標値Ib*=0Aに設定され、充放電電流検出部60の検出値Ibと電流目標値Ib*(=0A)との電流偏差に基づいて電力変換動作が制御される。これにより、系統電力40から双方向DC/AC変換器42を経由して直流バス1へ供給される直流電力は2kWから3kWに増加する。
【0093】
[変更例]
本発明の実施の形態に従う蓄電システムでは、双方向DC/AC変換器42を、双方向インバータ400および連系リアクトル410,412を備える構成としたが(図2参照)、双方向DC/AC変換器42の構成はこれに限定されるものではない。たとえば、双方向DC/AC変換器42に代えて、図16に示される双方向DC/AC変換器42Aを適用してもよい。
【0094】
図16を参照して、双方向DC/AC変換器42Aは、DC/AC変換回路470と、DC/AC変換回路470の直流側に接続された平滑用コンデンサ460と、平滑用コンデンサ460と直流バス1との間に設けられたDC/DC変換回路450とを備える。
【0095】
DC/AC変換回路470は、双方向インバータ400と、連系リアクトル410,412とを含む。DC/AC変換回路470の回路構成は、図2に示した双方向DC/AC変換器42の回路構成と同じである。
【0096】
平滑用コンデンサ460は、双方向インバータ400の直流側電圧の電圧変動を減少させる。
【0097】
DC/DC変換回路450は、絶縁型DC/DCコンバータであり、フルブリッジ回路を構成するトランジスタQ5〜Q8と、トランスTrと、フルブリッジ回路を構成するトランジスタQ9〜Q12とを含む。トランジスタQ5〜Q12にそれぞれ対応して、逆並列ダイオードD5〜D12が設けられる。トランジスタQ5〜Q8のオンオフは、制御部440Aからのスイッチング制御信号S5〜S8に応じて制御される。トランジスタQ9〜Q12のオンオフは、制御部440Aからのスイッチング制御信号S9〜S12に応じて制御される。
【0098】
トランジスタQ5〜Q8からなるフルブリッジ回路は、直流バス1からの直流電圧Vdcを交流電圧に変換して、トランスTrの一次側コイルに出力する。
【0099】
トランスTrの二次側コイルには、一次側コイルの電圧に応じた交流電圧が発生する。二次側コイルに生じる交流電圧の振幅は、一次側コイルの交流電圧と、一次側コイルおよび二次側コイルの巻線比とによって決まる。
【0100】
トランジスタQ9〜Q12からなるフルブリッジ回路は、二次側コイルに発生した交流電圧を直流電圧に変換して平滑用コンデンサ460に出力する。
【0101】
なお、図16に示す双方向DC/AC変換器42Aによれば、DC/AC変換回路470の直流側の電圧および電流に含まれる交流成分は、平滑用コンデンサ460によって吸収される。そのため、双方向DC/AC変換器42Aの直流側に交流成分の電流を重畳させないように制御することも可能である。そのような制御方式において、充放電電流Ibが零となるように双方向DC/AC変換器42Aの電力変換動作を制御すると、充放電電流Ibは、図4〜図6で示したような交流成分を含まず、直流成分(0A)のみを含む。したがって、充放電電流検出部60による充放電電流Ibの検出値が零となるタイミングで開閉器7により蓄電装置3と直流バス1との間の電路が遮断される。
【0102】
以上のように、この発明の実施の形態に従う蓄電システムによれば、蓄電装置が直流バスに直結される構成において、蓄電装置と直流バスとの間の電路を遮断するのに先行して、蓄電装置の充放電電流が零となるように、双方向DC/AC変換器を制御する。これにより、蓄電装置を遮断するときには充放電電流が零を経由する電流に制御されているため、開閉器にアーク放電が発生するのを抑制できる。したがって、従来の直流遮断装置において遮断器と並列に設けられていた転流回路や外部並列回路の設置が不要となる。この結果、蓄電装置の遮断時に発生するアーク放電を、小型および低コストのシステム構成で抑制することが可能となる。
【0103】
また、本実施の形態では、電力変換装置として、直流バスおよび系統電力の間に、双方向DC/AC変換器を設置する構成としたが、直流バスおよび系統電力の間に、DC/AC変換器およびAC/DC変換器を並列に設置する構成に対しても、本発明による電力変換制御を適用することができる。
【0104】
また、本実施の形態では、蓄電システムの一例として、直流電力を伝達するための直流バス1に、蓄電装置3、太陽光発電システム2、系統電力システム4および直流負荷5が接続される構成について説明したが、本発明の適用はこのような蓄電システムに限定されるものではない。具体的には、直流バス1に直結された蓄電装置3を遮断するのに先行して蓄電装置3の充放電電流を零とするための電力変換装置が搭載されていれば、本発明を適用することが可能である点について確認的に記載する。たとえば、図1とは異なる蓄電システムの構成(たとえば、太陽光発電システム2を含まない構成や、直流負荷5を含まない構成)についても本発明は適用可能である。
【0105】
さらに、本実施の形態では、蓄電装置3の異常が検知されたときに電池監視ユニット6から出力されるシャットダウン予告信号SDNに応答して、双方向DC/AC変換器42が充放電電流Ibが零となるように電力変換動作を実行する構成について例示したが、本発明の適用はこのような構成に限定されるものではない。具体的には、系統電力システム4内に異常が検知されたことによって、蓄電装置3と直流バス1との間の電路を遮断させる場面においても、本発明は適用可能である。その一例として、双方向DC/AC変換器42において直流側の電圧が上昇する過電圧や過電流が発生している場合には、双方向DC/AC変換器42は、蓄電装置3を保護するために、シャットダウン信号SDを活性化(遮断指令)して開閉器7に出力する。このシャットダウン信号SDを活性化するのに先行して、双方向DC/AC変換器42は、蓄電装置3の充放電電力Ibが零となるように電力変換動作を実行する。
【0106】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0107】
1 直流バス、2 太陽光発電システム、3 蓄電装置、4 系統電力システム、5 直流負荷、6 電池監視ユニット、7 開閉器、20 太陽電池、30 DC/DC変換器、40 系統電力、42,42A 双方向DC/AC変換器、60 充放電電流検出部、62 充放電電圧検出部、64 温度検出部、400 双方向インバータ、410,412 連系リアクトル、420 自経路電流検出部、430 直流電圧検出部、432 交流電圧検出部、440,440A 制御部、450 DC/AC変換回路、460 平滑用コンデンサ、470 DC/DC変換回路、500,510 減算部、520 制御目標値選択部、530 切替部、540 スイッチング制御信号生成部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を伝達するための直流バスと、
電源電圧を前記直流バスに出力する蓄電装置と、
前記直流バスおよび系統電力の間で電力変換する電力変換装置と、
前記直流バスおよび前記蓄電装置の間を接続/遮断するための開閉器と、
前記蓄電装置を前記直流バスから遮断するための電源遮断手段とを備え、
前記電源遮断手段は、
前記蓄電装置の充放電電流が零となるように前記電力変換装置の電力変換動作を制御する電力変換制御手段と、
前記電力変換制御手段による前記電力変換動作の制御中に、前記開閉器により前記蓄電装置を前記直流バスから遮断する開閉制御手段とを含む、蓄電システム。
【請求項2】
前記充放電電流を検出するための充放電電流検出部をさらに備え、
前記電力変換装置は、前記電力変換動作の実行時、前記充放電電流に前記系統電力の周波数に応じた周波数の交流成分を発生するように構成され、
前記電力変換制御手段は、前記充放電電流検出部の検出値を用いて、前記充放電電流の波形が零を経由するように前記電力変換動作を制御し、
前記開閉制御手段は、前記電力変換制御手段による前記電力変換動作の制御中に、前記開閉器により前記蓄電装置を前記直流バスから遮断する、請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記電源遮断手段は、前記蓄電装置の遮断指令を前記開閉器に出力する前に、遮断予告信号を前記電力変換装置に出力するように構成され、
前記電力変換制御手段は、前記遮断予告信号を受けたときに、前記電力変換動作の制御を開始し、
前記開閉制御手段は、前記遮断指令を受けると、前記電力変換動作の制御中に、前記開閉器により前記蓄電装置を前記直流バスから遮断する、請求項2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記電力変換装置は、前記直流バスおよび前記系統電力の間に設けられたフルブリッジインバータを含む、請求項2に記載の蓄電システム。
【請求項5】
蓄電システムの制御方法であって、
前記蓄電システムは、
直流電力を伝達するための直流バスと、
電源電圧を前記直流バスに出力する蓄電装置と、
前記直流バスおよび系統電力の間で電力変換する電力変換装置と、
前記直流バスおよび前記蓄電装置の間を接続/遮断するための開閉器とを含み、
前記制御方法は、
前記蓄電装置の充放電電流が零となるように前記電力変換装置の電力変換動作を制御するステップと、
前記電力変換動作を制御するステップの実行中に、前記開閉器により前記蓄電装置を前記直流バスから遮断するステップとを備える、蓄電システムの制御方法。
【請求項1】
直流電力を伝達するための直流バスと、
電源電圧を前記直流バスに出力する蓄電装置と、
前記直流バスおよび系統電力の間で電力変換する電力変換装置と、
前記直流バスおよび前記蓄電装置の間を接続/遮断するための開閉器と、
前記蓄電装置を前記直流バスから遮断するための電源遮断手段とを備え、
前記電源遮断手段は、
前記蓄電装置の充放電電流が零となるように前記電力変換装置の電力変換動作を制御する電力変換制御手段と、
前記電力変換制御手段による前記電力変換動作の制御中に、前記開閉器により前記蓄電装置を前記直流バスから遮断する開閉制御手段とを含む、蓄電システム。
【請求項2】
前記充放電電流を検出するための充放電電流検出部をさらに備え、
前記電力変換装置は、前記電力変換動作の実行時、前記充放電電流に前記系統電力の周波数に応じた周波数の交流成分を発生するように構成され、
前記電力変換制御手段は、前記充放電電流検出部の検出値を用いて、前記充放電電流の波形が零を経由するように前記電力変換動作を制御し、
前記開閉制御手段は、前記電力変換制御手段による前記電力変換動作の制御中に、前記開閉器により前記蓄電装置を前記直流バスから遮断する、請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記電源遮断手段は、前記蓄電装置の遮断指令を前記開閉器に出力する前に、遮断予告信号を前記電力変換装置に出力するように構成され、
前記電力変換制御手段は、前記遮断予告信号を受けたときに、前記電力変換動作の制御を開始し、
前記開閉制御手段は、前記遮断指令を受けると、前記電力変換動作の制御中に、前記開閉器により前記蓄電装置を前記直流バスから遮断する、請求項2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記電力変換装置は、前記直流バスおよび前記系統電力の間に設けられたフルブリッジインバータを含む、請求項2に記載の蓄電システム。
【請求項5】
蓄電システムの制御方法であって、
前記蓄電システムは、
直流電力を伝達するための直流バスと、
電源電圧を前記直流バスに出力する蓄電装置と、
前記直流バスおよび系統電力の間で電力変換する電力変換装置と、
前記直流バスおよび前記蓄電装置の間を接続/遮断するための開閉器とを含み、
前記制御方法は、
前記蓄電装置の充放電電流が零となるように前記電力変換装置の電力変換動作を制御するステップと、
前記電力変換動作を制御するステップの実行中に、前記開閉器により前記蓄電装置を前記直流バスから遮断するステップとを備える、蓄電システムの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−99188(P2013−99188A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242015(P2011−242015)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]