電力変換装置
【課題】スイッチング損失および発熱損失を低減することができ、しかも小型化が可能な電力変換装置を提供する。
【解決手段】主電極の一方が正極端子10に接続された電力用半導体スイッチング素子21および該電力用半導体スイッチング素子の主電極の他方と負極端子11との間に接続されたMOSFET22を備えたカスコード素子20と、正極端子にカソード電極が接続され、負極端子にアノード電極が接続された高速ダイオード30と、電力用半導体スイッチング素子の制御端子と負極端子との間に接続され、制御端子と負極端子との間を所定値以下の電位差に制御する電力用半導体スイッチング素子駆動回路60と、MOSFETの制御端子と負極端子との間に接続されて該MOSFETを制御するMOSFET駆動回路70とを備える。
【解決手段】主電極の一方が正極端子10に接続された電力用半導体スイッチング素子21および該電力用半導体スイッチング素子の主電極の他方と負極端子11との間に接続されたMOSFET22を備えたカスコード素子20と、正極端子にカソード電極が接続され、負極端子にアノード電極が接続された高速ダイオード30と、電力用半導体スイッチング素子の制御端子と負極端子との間に接続され、制御端子と負極端子との間を所定値以下の電位差に制御する電力用半導体スイッチング素子駆動回路60と、MOSFETの制御端子と負極端子との間に接続されて該MOSFETを制御するMOSFET駆動回路70とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、特にスイッチング損失や発熱損失を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置を構成するパワーMOSFET(Power Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor、以下、単に「MOSFET」という)は、高耐圧で高速動作を実現することができる電力用半導体スイッチング素子である。このようなMOSFETのうち、例えば、比較的新しいCOOLMOS(登録商標)に代表されるスーパージャンクション素子は高性能(低損失)であり、素子耐圧500V〜800V程度のものが市販されている。
【0003】
しかしながら、スーパージャンクション素子の半導体製造工程が複雑なため、高耐圧化(例えば素子耐圧1000V以上)は実現されていない。現状では、汎用インバータの電力用半導体スイッチング素子として、三相200V入力の装置では素子耐圧600Vの素子が、三相400V入力の装置では素子耐圧1200Vの素子がそれぞれ使用されている。三相200V入力の汎用インバータには素子耐圧600Vのスーパージャンクション素子を使用できるが、三相400V入力の汎用インバータには耐圧1200Vの高性能なスーパージャンクション素子を用いることができない。そこで、このような比較的高耐圧が要求される電力変換装置であっても、高性能なスーパージャンクション素子を使用せずに低損失・高効率化することが望まれている。
【0004】
例えばバイポーラトランジスタは、高電圧および大電流といった大容量の電力変換装置を実現することができる電力用半導体スイッチング素子である。このバイポーラトランジスタは、一般に、ベース電極にベース電流が流れることによりオンする電流制御型の電力用半導体スイッチング素子であり、導通損失が非常に少ないという特徴がある。
【0005】
しかしながら、MOSFETや絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)といったゲート電極に電圧が印加されることによりオンする電圧制御型の電力用半導体スイッチング素子と比較すると、電流制御型の電力用半導体スイッチング素子は、ベース電流によってスイッチング素子のオン・オフを制御する必要があるので、取り扱いが難しいという問題があった。また、電圧制御型の電力用半導体スイッチング素子と比較してスイッチング速度が遅く、スイッチング損失が大きいという問題があった。
【0006】
そこで、このような問題を解消する装置として、特許文献1は、カスコード接続による複合半導体(以下、「カスコード素子」という)を用いた電力用半導体装置を開示している。図7は、特許文献1に開示された電力用半導体装置の構成を示す回路図である。この電力用半導体装置において、カスコード素子20は、正極端子10と負極端子11との間に電気的に直列に接続された電力用半導体スイッチング素子21およびMOSFET22から構成されている。電力用半導体スイッチング素子21には、例えば静電誘導型トランジスタ(SIT:Static Induction Transistor)が使用されている。
【0007】
MOSFET22には、そのソース電極とドレイン電極との間にボディダイオード(整流ダイオード)が内蔵されている。以下、このボディダイオードを内蔵ダイオード22aという。カスコード素子20は、負極端子11から正極端子10に、内蔵ダイオード22aおよび電力用半導体スイッチング素子21を介して電流を流すこともできる。
【0008】
電力用半導体スイッチング素子21のゲート電極には、電気的に直列にツェナーダイオード66が接続されている。ツェナーダイオード66には、電気的に並列にダイオード65を介在して電源64が接続されている。ダイオード65は、電源64を保護するために設けられている。MOSFET22のゲート電極には、ゲート抵抗52を介在してMOSFET駆動回路70が接続されている。MOSFET駆動回路70は、制御回路71および電源74から構成されている。
【0009】
また、上述した問題を解消する他の装置として、特許文献2は、バイポーラトランジスタのオン時の導通損失を低減可能なトランジスタ駆動回路を開示している。このトランジスタ駆動回路は、NPN層構造から成るトランジスタを駆動するトランジスタ駆動回路において、トランジスタのコレクタ電位を基準として設けられ、トランジスタのベースへ電流を供給する電源を有する。
【特許文献1】特開2001−251846号公報
【特許文献2】特開平05−343969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された電力用半導体装置おいては、以下の点について配慮がなされていない。すなわち、カスコード素子20を上下に組んで双方向チョッパ回路として使用したり、またブリッジを組んでインバータとして使用したりする場合、スイッチング動作時に一方のアームのカスコード素子20がオンすると、他方のアームのMOSFET22の内蔵ダイオード22aがオフになる。このとき、オフ状態にあるMOSFET22の内蔵ダイオード22aのPN接合部に生成される空乏層には少数キャリアが蓄積される。空乏層に蓄積された少数キャリアは、逆回復電流としてMOSFET22の内蔵ダイオード22aに流れるので、逆回復損失が発生する。逆回復損失はMOSFET22の内蔵ダイオード22aのスイッチング損失であり、スイッチング動作毎に発生する。また、この逆回復電流は、オン過渡状態のカスコード素子20に流れ込み、カスコード素子20のスイッチング損失の増大を引き起こす。
【0011】
また、スイッチング損失の増大は発熱損失の増大になる。このため、大型の冷却用ヒートシンクを使用する必要があるので、電力変換装置が大型になる。なお、このような問題は、電力変換装置において、カスコード素子20の静電誘導型トランジスタに特有のものではなく、静電誘導型トランジスタを接合型電界効果トランジスタ(JFET:Junction Field-Effect Transistor)に代えた場合にも同様に発生する。
【0012】
さらに、電力用半導体スイッチング素子21のゲートに電流を供給するための電源64は、電圧制御型素子用の電源と比較して大型であり、発熱損失も大きい。静電誘導型トランジスタは、例えばゲート電圧0Vでオン状態となり、さらにゲートに電流を流すことにより導通損失を低減することができる電力用半導体スイッチング素子である。静電誘導型トランジスタの導通損失を低減させるためにゲートに電流を流すための電源64が必要であるが、電圧制御型の電力用半導体スイッチング素子(例えばIGBTなど)の駆動回路と比較して、駆動回路の発熱損失が増大し、駆動回路が大型になる。また、電源64を保護するためにダイオード65が必要であり、ダイオード65に電流が流れることによってダイオード65に導通損失が生じる。また、MOSFET22を保護するためにツェナーダイオード66が必要であり、ツェナーダイオード66に電流が流れることによってツェナーダイオード66に導通損失が生じる。
【0013】
また、特許文献2に開示されたトランジスタ駆動回路においては、バイポーラトランジスタのオン時の導通損失を低減可能な回路構成となっているが、スイッチング損失の低減効果はない。
【0014】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたものであり、その課題は、スイッチング損失および発熱損失を低減することができ、しかも小型化が可能な電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記第1の目的を達成するために、本発明に係る電力変換装置は、主電極の一方が正極端子に接続された電力用半導体スイッチング素子および該電力用半導体スイッチング素子の主電極の他方と負極端子との間に接続されたMOSFETを備えたカスコード素子と、正極端子にカソード電極が接続され、負極端子にアノード電極が接続された高速ダイオードと、電力用半導体スイッチング素子の制御端子と負極端子との間に接続され、制御端子と負極端子との間を所定値以下の電位差に制御する電力用半導体スイッチング素子駆動回路と、MOSFETの制御端子と負極端子との間に接続されて該MOSFETを制御するMOSFET駆動回路とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電力変換装置によれば、電力用半導体スイッチング素子とMOSFETとがカスコード接続されたカスコード素子を用いることにより電力用半導体スイッチング素子のスイッチング速度が早くなりスイッチング損失を低減し、高速ダイオードに流れる逆回復電流に起因するスイッチング損失を低減することができる。また、電力用半導体スイッチング素子の制御端子と負極端子との間を所定値以下の電位差に制御するので、発熱損失を低減することができ、小型化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施例において、同一機能を有する構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。この電力変換装置は、カスコード素子20、高速ダイオード30、ベース抵抗51、ゲート抵抗52、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60およびMOSFET駆動回路70とを備えている。
【0019】
カスコード素子20は、主電極の一方(コレクタ電極)に正極端子10が接続された高耐圧を有する電力用半導体スイッチング素子21と、電力用半導体スイッチング素子21の主電極の他方(エミッタ電極)と負極端子11との間に電気的に直列に接続された低耐圧を有するMOSFET22とを備えている。高速ダイオード30は、カスコード素子20に電気的に逆並列に接続されている。すなわち、高速ダイオード30のカソード電極は正極端子10に接続され、アノード電極は負極端子11に接続されている。
【0020】
ベース抵抗51の一端は、電力用半導体スイッチング素子21のベース電極に接続され、他端は電力用半導体スイッチング素子駆動回路60に接続されている。電力用半導体スイッチング素子駆動回路60の出力側は、ベース抵抗51の他端と負極端子11との間に接続されている。電力用半導体スイッチング素子駆動回路60は、電力用半導体スイッチング素子21のベース電極に電流を供給する機能を備え、出力コンデンサ61、DC/DCコンバータ62、入力コンデンサ63および電源64から構成されている。なお、DC/DCコンバータ62の詳細は、後述する実施例7において説明する。
【0021】
ゲート抵抗52の一端は、MOSFET22のゲート電極に接続され、他端はMOSFET駆動回路70に接続されている。MOSFET駆動回路70は、ゲート抵抗52の他端と負極端子11との間に接続に接続されている。MOSFET駆動回路70は、MOSFET22のオン・オフを制御する機能を備え、制御回路71、入力コンデンサ63および電源64から構成されている。入力コンデンサ63および電源64は、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60と共通に使用される。
【0022】
なお、この電力変換装置は、図2に示すように、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60を構成する入力コンデンサ63および電源64とは別に、MOSFET駆動回路70に専用の入力コンデンサ73および電源74を設けるように構成することもできる。
【0023】
また、図1に示す電力用半導体スイッチング素子駆動回路60のDC/DCコンバータ62のMOSFET622に代えて、図3に示すように、ダイオード625を使用するように構成することもできる。
【0024】
電力用半導体スイッチング素子21を、例えばバイポーラトランジスタで構成した場合、高電圧、大電力領域において動作する電力変換装置を実現することができる。電力用半導体スイッチング素子21としてのバイポーラトランジスタとMOSFET22とをカスコード接続することにより、該バイポーラトランジスタはベース接地で動作するので、スイッチング速度は1桁程度大きくなる。スイッチング速度が大きくなることにより、バイポーラトランジスタのスイッチング損失を低減することができる。この電力用半導体スイッチング素子21としてのバイポーラトランジスタは、ベース電流を例えば0.1〜5A以上流すとオンし、0Aにおいてはオフする。
【0025】
カスコード素子20のMOSFET22の電流容量は、電力用半導体スイッチング素子21としてのバイポーラトランジスタと同じであるが、低耐圧、例えば30Vで十分であるので、MOSFET22のオン抵抗と半導体チップ面積との積は小さくて済む。
【0026】
MOSFET22としては、半導体−絶縁体−金属構造のトランジスタが用いられる。すなわち、実施例1に係る電力変換装置においては、MOSFET22として、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)、IGFET(Insulated Gate Field Effect Transistor)のいずれかを用いることができる。
【0027】
高速ダイオード30は、カスコード素子20に逆方向電流が流れることによる素子破壊を防止し、高速ダイオード30に電流を流すことよって導通損失を低減することを目的に、カスコード素子20に逆並列に接続されている。実施例1に係る電力変換装置においては、高速ダイオード30として、ユニポーラダイオードを使用することができる。ユニポーラダイオードには、少数キャリアの蓄積がなく、逆回復電荷が形成されないので、逆回復電流が流れない。また、ユニポーラダイオードは接合容量成分の電荷を蓄積するのみであり、ユニポーラダイオードの逆回復損失は極めて小さい。したがって、ユニポーラダイオードを高速ダイオード30として使用することにより、高速ダイオード30における損失を低減することができる。
【0028】
実施例1に係る電力変換装置においては、ユニポーラダイオードとして、実用的にはショットキーバリアダイオード(SBD)を使用することができる。シリコン半導体によって構成されるSBDにおいては、例えば200V以下の素子耐圧が実用的であるが、ワイドギャップ半導体によって構成されるSBDにおいては、例えば200V以上の高耐圧を備えている。また、ユニポーラダイオードとして、SBDと同等の特性を有する、ジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)を使用することもできる。
【0029】
なお、実施例1に係る電力変換装置おいては、電力用半導体スイッチング素子21、MOSFET22および高速ダイオード30は、それぞれが1つの半導体チップにより構成され、この半導体チップを1つまたは複数パッケージングするように構成することができる。また、電力用半導体スイッチング素子21、MOSFET22および高速ダイオード30の2つまたは3つを1つにパッケージングするように構成してモジュール化することもできる。
【0030】
次に、上記のように構成される本発明の実施例1に係る電力変換装置の動作を説明する。まず、オフ状態からオン状態へ移行する動作は以下の通りである。電力用半導体スイッチング素子駆動回路60からベース抵抗51を介在してカスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21のベース電極と、MOSFET22のソース電極との間に所定値、例えば2V、好ましくは1.8V、さらに好ましくは1.2V以下の電位差が印加される。この電位差は、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60に接続されたベース抵抗51→電力用半導体スイッチング素子21のベース電極からエミッタ電極→MOSFET22のドレイン電極からソース電極へと電流を流すために必要な電位差である。
【0031】
電力用半導体スイッチング素子21のベース電極とエミッタ電極との間の電圧降下は約0.7〜0.8V程度である。そして、ベース抵抗51を例えば0.1〜0.2Ωの低抵抗値とする。MOSFET22における電圧降下、ベース抵抗51における電圧降下および電力用半導体スイッチング素子21における電圧降下を合計しても2V以下である低い電圧によってベース電流を供給する。その結果、電力用半導体スイッチング素子21をオンさせるために必要なベース電流を供給しながら、ベース抵抗51に流れる電流による発熱損失を低減することができる。この時点では、MOSFET22がオンしていないため、電力用半導体スイッチング素子21のベース電流は流れない。ベース電流が流れていない電力用半導体スイッチング素子21はオフ状態である。
【0032】
次に、MOSFET駆動回路70からカスコード素子20のMOSFET22のゲート電極とソース電極との間に例えば2V〜10V以上の電位差を印加する。この結果、MOSFET22のドレイン電極とソース電極との間に電位差がなくなる、つまりMOSFET22がオンする。正確には、ドレイン電極とソース電極との間にはオン抵抗のドロップ電圧分(例えば0.01V)のみの電位差になる。その結果、電力用半導体スイッチング素子21のベース電流が、ベース電極からエミッタ電極に流れ、さらにMOSFET22を通して流れる。電力用半導体スイッチング素子21においてはコレクタ電極とエミッタ電極との電位差がなくなる、つまり電力用半導体スイッチング素子21はオンする。正確には、コレクタ電極とエミッタ電極との間にはオン抵抗のドロップ電圧分(例えば0.1V)のみの電位差になる。よって、MOSFET22がオンすると、電力用半導体スイッチング素子21もオンし、正極端子10と負極端子11との間に電流が流れる。
【0033】
次に、オン状態からオフ状態へ移行する動作は以下の通りである。MOSFET駆動回路70からカスコード素子20のMOSFET22のゲート電極とソース電極との間を例えば0Vの電位差にする。この結果、MOSFET22はオフになり、ドレイン電極とソース電極との間に、例えば30Vの電位差が発生する。その結果、MOSFET22がオフすることにより、電力用半導体スイッチング素子21に流れていたベース電流が遮断される。つまり、電力用半導体スイッチング素子21がオフになる。
【0034】
ここで、カスコード素子20のMOSFET22がオフして電力用半導体スイッチング素子21がオフするとき、電流は正極端子10→電力用半導体スイッチング素子21のコレクタ電極からベース電極→ベース抵抗51→出力コンデンサ61に流れる。つまり、ゲイン1でキャリアが引き抜かれるので、高速に電力用半導体スイッチング素子21をオフすることができる。すなわち、MOSFET22がオフすると、電力用半導体スイッチング素子21もオフし、正極端子10と負極端子11との間に流れる電流を遮断することができる。
【0035】
以上説明したように、本発明の実施例1に係る電力変換装置によれば、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21と、電力用半導体スイッチング素子(をカスコード素子とせず)単体とにおける、ベース電流が定常状態に達するまでの時間(スイッチングオン速度)、およびベース電流が0Aになるまでの時間(スイッチングオフ速度)を比較すると、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21はベース接地で動作するので、スイッチング時間が例えば1桁程度小さく(速度が1桁程度大きく)なる。このようにカスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21のスイッチング時間が短い(速度が速い)ため、スイッチング損失を低減できる。MOSFET22の電流容量は電力用半導体スイッチング素子21のそれと同じであるが、低耐圧(例えば30V)で十分であるので、半導体チップ面積は電力用半導体スイッチング素子21より小さくて済む。
【0036】
また、電力用半導体スイッチング素子21の電力用半導体スイッチング素子駆動回路60は、ベース抵抗51を介在してカスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21のベース電極と、MOSFET22のソース電極との間に2V以下の低圧の電位差を印加することにより、電力用半導体スイッチング素子21にベース電流を供給するので、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60のDC/DCコンバータ62およびベース抵抗51における発熱損失を低減することができる。
【0037】
また、電力変換装置のカスコード素子20と高速ダイオード30を上下に組み込んだ双方向チョッパ回路や、カスコード素子20と高速ダイオード30によりブリッジを組んだインバータの場合は、一方のアームのカスコード素子20がオンし、反対アームにおけるオフ過渡状態にある高速ダイオード30に逆回復電流が流れ込むことによる損失を低減することができる。つまり、カスコード素子20のスイッチング損失を低減することができる。
【実施例2】
【0038】
本発明の実施例2に係る電力変換装置は、実施例1に係る電力変換装置において、電力用半導体スイッチング素子21を、バイポーラトランジスタ、バイポーラモード静電誘導トランジスタ(BSIT:Bipolar mode Static Induction Transistor)またはGTBT(Grounded-Trench-MOS structure assisted Bipolar-mode FET)により構成したものである。
【0039】
バイポーラトランジスタ、BSITおよびGTBTは、高電圧、大電流による大容量の電力変換装置を実現することができる電力用半導体スイッチング素子である。これらの電力用半導体スイッチング素子は、電流制御型の電力用半導体スイッチング素子であり、導通損失が非常に少ないという特徴がある。しかしながら、電流によりスイッチング素子を制御するために、IGBTやMOSFETなどのような電圧制御型の電力用半導体スイッチング素子に比べて電流を供給するための電源が大型化し、発熱損失が大きくなるという問題がある。
【0040】
実施例2に係る電力変換装置においては、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21としてバイポーラトランジスタ、BSITまたはGTBTを使用することにより、これらがベース接地で動作するので、スイッチング時間が小さく(速度が大きく)なる。特にバイポーラトランジスタの場合はスイッチング時間が1桁程度小さく(速度が1桁程度大きく)なる。カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21のスイッチング時間が短い(速度が速い)ため、スイッチング損失を低減できる。
【0041】
以上説明したように、上記のように構成される実施例2に係る電力変換装置によれば、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21の導通損失を低減することができる。また、この電力変換装置によれば、電力用半導体スイッチング素子21をカスコード素子20として使用することによりスイッチング損失を低減することができる。さらに、この電力変換装置によれば、発熱損失を低減することができ、小型化が可能になる。
【実施例3】
【0042】
本発明の実施例3に係る電力変換装置は、実施例2の電力用半導体装置において、高速ダイオード30をユニポーラダイオードにより構成したものである。
【0043】
ユニポーラダイオードとしては、実用的には、ショットキーバリアダイオード(SBD)を使用することができる。シリコン半導体によって構成されるショットキーバリアダイオードにおいては、例えば200V以下の素子耐圧が実用的であるが、ワイドギャップ半導体によって構成されるショットキーバリアダイオードにおいては、例えば200V以上の高耐圧を備えている。また、ユニポーラダイオードには、ショットキーバリアダイオードと同等の特性を有する、ジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)を使用することもできる。
【0044】
次に、上記のように構成される本発明の実施例3に係る電力変換装置の動作を説明する。負極端子11から正極端子10へ電流が流れる場合、カスコード素子20に逆並列に接続された高速ダイオード30がオンする。高速ダイオード30がオンからオフになる時、高速ダイオード30に逆回復電流による逆回復損失が発生する。逆回復損失は高速ダイオードのスイッチング損失であり、反対アームのカスコード素子20のスイッチング動作毎に発生する。ここで、ユニポーラダイオードは少数キャリアの蓄積がなく逆回復電荷が形成されず、逆回復電流は流れない。ユニポーラダイオードは接合容量成分のみの電荷が充電されるのみであり、逆回復損失が極めて小さい。よって、ユニポーラダイオードを高速ダイオード30として使用することにより、高速ダイオード30の逆回復損失を低減することができる。
【0045】
また、逆回復電流が反対アームのオン過渡状態のカスコード素子20に流れ込むことがなく、カスコード素子20のスイッチング損失も低減することができる。
【0046】
以上説明したように、実施例3に係る電力変換装置によれば、高速ダイオード30がユニポーラダイオードにより構成されているので、高速ダイオード30の逆回復損失を低減することができる。また、この電力変換装置によれば、高速ダイオード30の逆回復電流がカスコード素子20に流れないため、カスコード素子のスイッチング損失も低減させることができる。さらに、この電力変換装置によれば、発熱損失を低減することができ、小型化が可能になる。
【実施例4】
【0047】
本発明の実施例4に係る電力変換装置は、実施例1から実施例3の何れかに係る電力用半導体装置において、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21をワイドギャップ半導体により構成したものである。ワイドギャップ半導体としては、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、ダイアモンド等を用いることができる。
【0048】
ワイドギャップ半導体を用いて構成される電力用半導体スイッチング素子21は、シリコン半導体に比べて絶縁破壊電界強度を1桁程度大きくすることができる。その結果、絶縁破壊耐圧を保持するためのドリフト層を1/10程度まで薄くすることができるので、電力用半導体スイッチング素子21の導通損失を低減することができる。
【0049】
また、ワイドギャップ半導体を用いて構成される電力用半導体スイッチング素子21は、シリコン半導体が用いられた場合に比べて、飽和電子ドリフト速度を2倍程度大きくすることができる。その結果、10倍程度の高周波化を実現することができ、電力用半導体スイッチング素子21のスイッチング損失を低減することができる。
【0050】
以上説明したように、実施例4に係る電力変換装置によれば、ワイドギャップ半導体で形成された電力用半導体スイッチング素子21を用いるように構成したので、電力用半導体スイッチング素子21の導通損失およびスイッチング損失を低減することができる。また、この電力変換装置によれば、発熱損失を低減することができ、小型化が可能である。
【実施例5】
【0051】
本発明の実施例5に係る電力変換装置は、実施例1から実施例4の何れかに係る電力用半導体装置において、高速ダイオード30をワイドギャップ半導体により構成したものである。ワイドギャップ半導体としては、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、ダイアモンド等を用いることができる。
【0052】
ワイドギャップ半導体を用いて構成される高速ダイオード30は、シリコン半導体を用いたものに比べて絶縁破壊電界強度を1桁程度大きくすることができ、高耐圧の高速ダイオード30を実現できる。例えば、シリコン半導体では高速ダイオード30にバイポーラダイオードでしか使用できないような高耐圧の高速ダイオードであっても、ワイドギャップ半導体ではユニポーラダイオードを使用できるようになり、高耐圧領域でも実施例3に係る電力変換装置と同様な作用により、逆回復損失を低減させ、高速ダイオード30の損失を低減できる。また、実施例3に係る電力変換装置と同様な作用により、カスコード素子20のスイッチング損失を低減することができる。
【0053】
以上説明したように、実施例5に係る電力変換装置によれば、ワイドギャップ半導体で構成された高速ダイオード30を用いるように構成したので、高速ダイオードの逆回復損失を低減させることができる。また、この電力変換装置によれば、発熱損失を低減することができ、小型化が可能になる。
【実施例6】
【0054】
本発明の実施例6に係る電力変換装置は、実施例1から実施例5の何れかに係る電力変換装置において、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21のベース電極につながる電力用半導体スイッチング素子駆動回路60の出力コンデンサ61を、導電性高分子電解質により構成したものである。
【0055】
次に、上記のように構成される本発明の実施例6に係る電力変換装置の動作を説明する。出力コンデンサ61はDC/DCコンバータ62から出力される電圧を平滑する機能を有している。カスコード素子20がオン状態からオフ状態へ移行する場合、MOSFET22がオフすることにより、電力用半導体スイッチング素子21に流れていたベース電流が遮断される。そして、電力用半導体スイッチング素子21がオフになるが、オフ過渡状態では、電力用半導体スイッチング素子21のコレクタ電極からエミッタ電極に流れていた電流が一瞬だけコレクタ電極からベース電極に流れ、ベース抵抗51を通って出力コンデンサ61の抵抗分(等価直列抵抗/ESR:Equivalent Series Resistance)に流れる。
【0056】
したがって、カスコード素子20のスイッチング動作毎に出力コンデンサ61に発熱損失が発生する。ここで、導電性高分子により形成された出力コンデンサ61は、一般的に使用されているアルミ電解コンデンサに比べて高周波特性に優れ、出力コンデンサ61の抵抗分に流れる電流による発熱損失を低減することができる。また、出力コンデンサ61に流れこむ電流により充電されたエネルギーは、電力用半導体スイッチング素子21を駆動するためのベース電流源として利用される。
【0057】
抵抗値の低いベース抵抗51と高周波特性に優れた出力コンデンサ61により、図7に示す従来の電力変換装置におけるダイオード65のように電源を保護するためのダイオードを必要とせず、電力用半導体スイッチング素子21にベース電流を供給するときに保護用ダイオードに電流が流れることに起因する発熱損失をなくすことができるので、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60を小型化できる。
【0058】
また、図7に示す従来の電力変換装置におけるツェナーダイオード66のようにMOSFET22を保護するためのツェナーダイオードを必要とせず、電力用半導体スイッチング素子21にベース電流を供給するときにツェナーダイオードに電流が流れることに起因する発熱損失をなくすことができ、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60を小型化できる。その結果、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60の発熱損失を低減することができる。
【0059】
以上説明したように、実施例6に係る電力変換装置によれば、カスコード素子20のスイッチング動作毎に出力コンデンサ61に流れる電流による発熱損失を低減することができる。また、この電力変換装置によれば、発熱損失を低減することができ、小型化が可能である。
【実施例7】
【0060】
本発明の実施例7に係る電力変換装置は、実施例6に係る電力変換装置において、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21のベース電極につながる電力用半導体スイッチング素子駆動回路60を、同期整流により制御されたDC/DCコンバータ62により構成したものである。
【0061】
DC/DCコンバータ62は、図1に示すように、MOSFET621、MOSFET622、一方の端子がMOSFET621のソース電極およびMOSFET622のドレイン電極に接続されるとともに、他方の端子が出力コンデンサ61およびベース抵抗51に接続された直流リアクトル623、ならびに、MOSFET621およびMOSFET622に制御信号SW1およびSW2をそれぞれ供給する制御回路624から構成されている。
【0062】
次に、上記のように構成される本発明の実施例7に係る電力変換装置の動作を、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60のDC/DCコンバータ62の動作を中心に説明する。DC/DCコンバータ62は、入力コンデンサ63および電源64から出力される直流電圧を所定の直流電圧に変換する機能を有している。
【0063】
制御回路624は、高速でオン/オフする制御信号SW1およびSW2を出力する。制御信号SW1はMOSFET621へ、制御信号SW2はMOSFET622へそれぞれ供給される。図4に示すように、MOSFET621および622は、制御信号SW1およびSW2に応じて交互にオンとなる。上下短絡を防止するために、MOSFET621とMOSFET622とが同時にオンとなる期間はなく、何れか片方のみがオンとなる。なお、他方がオンする前にはMOSFET621とMOSFET622とが同時にオフとなる期間(デッドタイム)がある。
【0064】
カスコード素子20のMOSFET22がオンしている場合のDC/DCコンバータ62の動作を説明する。電源64の電圧(例えば10V)をDC/DCコンバータ62により2V(実施例1参照)以下に変換する場合、MOSFET621がオンになると、MOSFET621のドレイン電極からソース電極→直流リアクトル623→ベース抵抗51→電力用半導体スイッチング素子21のベース電極という経路で電流が流れる。これにより、直流リアクトル623に直流起電力が蓄積される。MOSFET621のオン期間が短いほど直流リアクトル623に蓄積される直流電力は小さくなり、出力コンデンサ61に充電される電圧も小さくなる。
【0065】
次に、MOSFET621がオフになると、MOSFET622のソース電極からドレイン電極→直流リアクトル633→ベース抵抗51→電力用半導体スイッチング素子21のベース電極という経路で電流が流れる。このとき出力コンデンサ61に充電される電圧は、直流リアクトル623に蓄積された直流電力による起電力分のみである。したがって、電源64の電圧より出力コンデンサ61に発生する電圧が小さくなり、降圧される。
【0066】
ここで、MOSFET621がオフの期間、MOSFET622をオンすることにより、発熱損失の大きいMOSFET622の内臓ダイオードに電流を流さず、図5に示すように、MOSFET同期整流となり、発熱損失を低減することができる。
【0067】
一方、カスコード素子20のMOSFET22がオフしている場合、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21にベース電流が流れない。よって、DC/DCコンバータ62の制御回路624は制御信号SW1およびSW2を出力するが、MOSFET621および622には電流は流れず、電流による発熱損失は発生しない。その結果、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60の発熱損失を低減することができる。
【0068】
以上説明したように、上記のように構成される実施例7に係る電力変換装置によれば、DC/DCコンバータ62のスイッチング動作毎のMOSFET622の内蔵ダイオードに流れる電流による発熱損失を低減することができる。また、この電力変換装置によれば、発熱損失を低減することができ、小型化が可能である。
【実施例8】
【0069】
本発明の実施例8に係る電力変換装置は、実施例7に係る電力変換装置において、カスコード素子20のMOSFET22のゲート電極につながるMOSFET駆動回路70を、負極端子11から正極端子10に電流が流れるときに、MOSFET22をオフするように制御する制御回路71によって構成したものである。
【0070】
次に、上記のように構成される本発明の実施例8に係る電力変換装置の動作を、MOSFET駆動回路70の制御回路71の動作を中心に説明する。制御回路71は、カスコード素子20のMOSFET22をオン・オフさせる機能を有し、実施例1に係る電力変換装置の動作と同様に、正極端子10から負極端子11との間に流れる電流を遮断することができる。
【0071】
MOSFET駆動回路70の制御回路71は、カスコード素子20のMOSFET22を動作させるために、高速でオン/オフする制御信号を生成し、ゲート抵抗52を経由してMOSFET22のゲート電極に送る。正極端子10から負極端子11に電流が流れる場合を「正」、負極端子11から正極端子10へ電流が流れる場合を「負」とし、例えば図6(a)に示すような電流が電力変換装置に流れた場合、従来のMOSFET駆動回路70の制御回路71は、図6(b)に示すように動作する。
【0072】
負極端子11から正極端子10へ電流が流れる場合は、高速ダイオード30を通って電流が流れる。しかしながら、カスコード素子20のMOSFET22がオンするので、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21のベース電極にベース電流が流れてしまう。ここで、図6(c)に示すように、OFF期間を設けるように制御回路71を動作させることにより、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21のベース電流を流さないようにすることができる。
【0073】
電力用半導体スイッチング素子21のベース電流が流れないことにより、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60のDC/DCコンバータ62に流れる電流による発熱損失を低減することができる。また、ベース抵抗51に流れる電流による発熱損失を低減することができる。さらに、電力用半導体スイッチング素子21に流れるベース電流による発熱損失を低減することができる。その結果、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60の発熱損失を低減することができる。
【0074】
以上説明したように、上記のように構成される実施例8に係る電力変換装置によれば、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60のDC/DCコンバータ62に流れる電流による発熱損失を低減することができる。また、この電力変換装置によれば、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21に流れるベース電流による発熱損失を低減することができる。さらに、この電力変換装置によれば、発熱損失を低減することができ、小型化が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る電力変換装置は、高電圧、大電力領域において低損失が要求される装置、例えば産業用インバータ、汎用インバータ、無停電電源装置等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例1に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施例1に係る電力変換装置の他の構成を示す回路図である。
【図3】本発明の実施例1に係る電力変換装置で使用されるDC/DCコンバータの他の構成を示す回路図である。
【図4】本発明の実施例7に係る電力変換装置の電力用半導体スイッチング素子駆動回路で使用されるMOSFETの制御信号の供給タイミングを示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施例7に係る電力変換装置の電力用半導体スイッチング素子駆動回路に使用されるMOSFETの電流−電圧特性の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施例8に係る電力変換装置の出力電流およびMOSFETのゲート電圧波形の一例を示す図である。
【図7】従来の電力変換装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0077】
10 正極端子
11 負極端子
20 カスコード素子
21 電力用半導体スイッチング素子
22 MOSFET
30 高速ダイオード
51 ベース抵抗
52 ゲート抵抗
60 電力用半導体スイッチング素子駆動回路
61 出力コンデンサ
62 DC/DCコンバータ
63 入力コンデンサ
64 電源
70 MOSFET駆動回路
71 制御回路
73 入力コンデンサ
74 電源
621、622 MOSFET
623 直流リアクトル
624 制御回路
625 ダイオード
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、特にスイッチング損失や発熱損失を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置を構成するパワーMOSFET(Power Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor、以下、単に「MOSFET」という)は、高耐圧で高速動作を実現することができる電力用半導体スイッチング素子である。このようなMOSFETのうち、例えば、比較的新しいCOOLMOS(登録商標)に代表されるスーパージャンクション素子は高性能(低損失)であり、素子耐圧500V〜800V程度のものが市販されている。
【0003】
しかしながら、スーパージャンクション素子の半導体製造工程が複雑なため、高耐圧化(例えば素子耐圧1000V以上)は実現されていない。現状では、汎用インバータの電力用半導体スイッチング素子として、三相200V入力の装置では素子耐圧600Vの素子が、三相400V入力の装置では素子耐圧1200Vの素子がそれぞれ使用されている。三相200V入力の汎用インバータには素子耐圧600Vのスーパージャンクション素子を使用できるが、三相400V入力の汎用インバータには耐圧1200Vの高性能なスーパージャンクション素子を用いることができない。そこで、このような比較的高耐圧が要求される電力変換装置であっても、高性能なスーパージャンクション素子を使用せずに低損失・高効率化することが望まれている。
【0004】
例えばバイポーラトランジスタは、高電圧および大電流といった大容量の電力変換装置を実現することができる電力用半導体スイッチング素子である。このバイポーラトランジスタは、一般に、ベース電極にベース電流が流れることによりオンする電流制御型の電力用半導体スイッチング素子であり、導通損失が非常に少ないという特徴がある。
【0005】
しかしながら、MOSFETや絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)といったゲート電極に電圧が印加されることによりオンする電圧制御型の電力用半導体スイッチング素子と比較すると、電流制御型の電力用半導体スイッチング素子は、ベース電流によってスイッチング素子のオン・オフを制御する必要があるので、取り扱いが難しいという問題があった。また、電圧制御型の電力用半導体スイッチング素子と比較してスイッチング速度が遅く、スイッチング損失が大きいという問題があった。
【0006】
そこで、このような問題を解消する装置として、特許文献1は、カスコード接続による複合半導体(以下、「カスコード素子」という)を用いた電力用半導体装置を開示している。図7は、特許文献1に開示された電力用半導体装置の構成を示す回路図である。この電力用半導体装置において、カスコード素子20は、正極端子10と負極端子11との間に電気的に直列に接続された電力用半導体スイッチング素子21およびMOSFET22から構成されている。電力用半導体スイッチング素子21には、例えば静電誘導型トランジスタ(SIT:Static Induction Transistor)が使用されている。
【0007】
MOSFET22には、そのソース電極とドレイン電極との間にボディダイオード(整流ダイオード)が内蔵されている。以下、このボディダイオードを内蔵ダイオード22aという。カスコード素子20は、負極端子11から正極端子10に、内蔵ダイオード22aおよび電力用半導体スイッチング素子21を介して電流を流すこともできる。
【0008】
電力用半導体スイッチング素子21のゲート電極には、電気的に直列にツェナーダイオード66が接続されている。ツェナーダイオード66には、電気的に並列にダイオード65を介在して電源64が接続されている。ダイオード65は、電源64を保護するために設けられている。MOSFET22のゲート電極には、ゲート抵抗52を介在してMOSFET駆動回路70が接続されている。MOSFET駆動回路70は、制御回路71および電源74から構成されている。
【0009】
また、上述した問題を解消する他の装置として、特許文献2は、バイポーラトランジスタのオン時の導通損失を低減可能なトランジスタ駆動回路を開示している。このトランジスタ駆動回路は、NPN層構造から成るトランジスタを駆動するトランジスタ駆動回路において、トランジスタのコレクタ電位を基準として設けられ、トランジスタのベースへ電流を供給する電源を有する。
【特許文献1】特開2001−251846号公報
【特許文献2】特開平05−343969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された電力用半導体装置おいては、以下の点について配慮がなされていない。すなわち、カスコード素子20を上下に組んで双方向チョッパ回路として使用したり、またブリッジを組んでインバータとして使用したりする場合、スイッチング動作時に一方のアームのカスコード素子20がオンすると、他方のアームのMOSFET22の内蔵ダイオード22aがオフになる。このとき、オフ状態にあるMOSFET22の内蔵ダイオード22aのPN接合部に生成される空乏層には少数キャリアが蓄積される。空乏層に蓄積された少数キャリアは、逆回復電流としてMOSFET22の内蔵ダイオード22aに流れるので、逆回復損失が発生する。逆回復損失はMOSFET22の内蔵ダイオード22aのスイッチング損失であり、スイッチング動作毎に発生する。また、この逆回復電流は、オン過渡状態のカスコード素子20に流れ込み、カスコード素子20のスイッチング損失の増大を引き起こす。
【0011】
また、スイッチング損失の増大は発熱損失の増大になる。このため、大型の冷却用ヒートシンクを使用する必要があるので、電力変換装置が大型になる。なお、このような問題は、電力変換装置において、カスコード素子20の静電誘導型トランジスタに特有のものではなく、静電誘導型トランジスタを接合型電界効果トランジスタ(JFET:Junction Field-Effect Transistor)に代えた場合にも同様に発生する。
【0012】
さらに、電力用半導体スイッチング素子21のゲートに電流を供給するための電源64は、電圧制御型素子用の電源と比較して大型であり、発熱損失も大きい。静電誘導型トランジスタは、例えばゲート電圧0Vでオン状態となり、さらにゲートに電流を流すことにより導通損失を低減することができる電力用半導体スイッチング素子である。静電誘導型トランジスタの導通損失を低減させるためにゲートに電流を流すための電源64が必要であるが、電圧制御型の電力用半導体スイッチング素子(例えばIGBTなど)の駆動回路と比較して、駆動回路の発熱損失が増大し、駆動回路が大型になる。また、電源64を保護するためにダイオード65が必要であり、ダイオード65に電流が流れることによってダイオード65に導通損失が生じる。また、MOSFET22を保護するためにツェナーダイオード66が必要であり、ツェナーダイオード66に電流が流れることによってツェナーダイオード66に導通損失が生じる。
【0013】
また、特許文献2に開示されたトランジスタ駆動回路においては、バイポーラトランジスタのオン時の導通損失を低減可能な回路構成となっているが、スイッチング損失の低減効果はない。
【0014】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたものであり、その課題は、スイッチング損失および発熱損失を低減することができ、しかも小型化が可能な電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記第1の目的を達成するために、本発明に係る電力変換装置は、主電極の一方が正極端子に接続された電力用半導体スイッチング素子および該電力用半導体スイッチング素子の主電極の他方と負極端子との間に接続されたMOSFETを備えたカスコード素子と、正極端子にカソード電極が接続され、負極端子にアノード電極が接続された高速ダイオードと、電力用半導体スイッチング素子の制御端子と負極端子との間に接続され、制御端子と負極端子との間を所定値以下の電位差に制御する電力用半導体スイッチング素子駆動回路と、MOSFETの制御端子と負極端子との間に接続されて該MOSFETを制御するMOSFET駆動回路とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電力変換装置によれば、電力用半導体スイッチング素子とMOSFETとがカスコード接続されたカスコード素子を用いることにより電力用半導体スイッチング素子のスイッチング速度が早くなりスイッチング損失を低減し、高速ダイオードに流れる逆回復電流に起因するスイッチング損失を低減することができる。また、電力用半導体スイッチング素子の制御端子と負極端子との間を所定値以下の電位差に制御するので、発熱損失を低減することができ、小型化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施例において、同一機能を有する構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。この電力変換装置は、カスコード素子20、高速ダイオード30、ベース抵抗51、ゲート抵抗52、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60およびMOSFET駆動回路70とを備えている。
【0019】
カスコード素子20は、主電極の一方(コレクタ電極)に正極端子10が接続された高耐圧を有する電力用半導体スイッチング素子21と、電力用半導体スイッチング素子21の主電極の他方(エミッタ電極)と負極端子11との間に電気的に直列に接続された低耐圧を有するMOSFET22とを備えている。高速ダイオード30は、カスコード素子20に電気的に逆並列に接続されている。すなわち、高速ダイオード30のカソード電極は正極端子10に接続され、アノード電極は負極端子11に接続されている。
【0020】
ベース抵抗51の一端は、電力用半導体スイッチング素子21のベース電極に接続され、他端は電力用半導体スイッチング素子駆動回路60に接続されている。電力用半導体スイッチング素子駆動回路60の出力側は、ベース抵抗51の他端と負極端子11との間に接続されている。電力用半導体スイッチング素子駆動回路60は、電力用半導体スイッチング素子21のベース電極に電流を供給する機能を備え、出力コンデンサ61、DC/DCコンバータ62、入力コンデンサ63および電源64から構成されている。なお、DC/DCコンバータ62の詳細は、後述する実施例7において説明する。
【0021】
ゲート抵抗52の一端は、MOSFET22のゲート電極に接続され、他端はMOSFET駆動回路70に接続されている。MOSFET駆動回路70は、ゲート抵抗52の他端と負極端子11との間に接続に接続されている。MOSFET駆動回路70は、MOSFET22のオン・オフを制御する機能を備え、制御回路71、入力コンデンサ63および電源64から構成されている。入力コンデンサ63および電源64は、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60と共通に使用される。
【0022】
なお、この電力変換装置は、図2に示すように、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60を構成する入力コンデンサ63および電源64とは別に、MOSFET駆動回路70に専用の入力コンデンサ73および電源74を設けるように構成することもできる。
【0023】
また、図1に示す電力用半導体スイッチング素子駆動回路60のDC/DCコンバータ62のMOSFET622に代えて、図3に示すように、ダイオード625を使用するように構成することもできる。
【0024】
電力用半導体スイッチング素子21を、例えばバイポーラトランジスタで構成した場合、高電圧、大電力領域において動作する電力変換装置を実現することができる。電力用半導体スイッチング素子21としてのバイポーラトランジスタとMOSFET22とをカスコード接続することにより、該バイポーラトランジスタはベース接地で動作するので、スイッチング速度は1桁程度大きくなる。スイッチング速度が大きくなることにより、バイポーラトランジスタのスイッチング損失を低減することができる。この電力用半導体スイッチング素子21としてのバイポーラトランジスタは、ベース電流を例えば0.1〜5A以上流すとオンし、0Aにおいてはオフする。
【0025】
カスコード素子20のMOSFET22の電流容量は、電力用半導体スイッチング素子21としてのバイポーラトランジスタと同じであるが、低耐圧、例えば30Vで十分であるので、MOSFET22のオン抵抗と半導体チップ面積との積は小さくて済む。
【0026】
MOSFET22としては、半導体−絶縁体−金属構造のトランジスタが用いられる。すなわち、実施例1に係る電力変換装置においては、MOSFET22として、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)、IGFET(Insulated Gate Field Effect Transistor)のいずれかを用いることができる。
【0027】
高速ダイオード30は、カスコード素子20に逆方向電流が流れることによる素子破壊を防止し、高速ダイオード30に電流を流すことよって導通損失を低減することを目的に、カスコード素子20に逆並列に接続されている。実施例1に係る電力変換装置においては、高速ダイオード30として、ユニポーラダイオードを使用することができる。ユニポーラダイオードには、少数キャリアの蓄積がなく、逆回復電荷が形成されないので、逆回復電流が流れない。また、ユニポーラダイオードは接合容量成分の電荷を蓄積するのみであり、ユニポーラダイオードの逆回復損失は極めて小さい。したがって、ユニポーラダイオードを高速ダイオード30として使用することにより、高速ダイオード30における損失を低減することができる。
【0028】
実施例1に係る電力変換装置においては、ユニポーラダイオードとして、実用的にはショットキーバリアダイオード(SBD)を使用することができる。シリコン半導体によって構成されるSBDにおいては、例えば200V以下の素子耐圧が実用的であるが、ワイドギャップ半導体によって構成されるSBDにおいては、例えば200V以上の高耐圧を備えている。また、ユニポーラダイオードとして、SBDと同等の特性を有する、ジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)を使用することもできる。
【0029】
なお、実施例1に係る電力変換装置おいては、電力用半導体スイッチング素子21、MOSFET22および高速ダイオード30は、それぞれが1つの半導体チップにより構成され、この半導体チップを1つまたは複数パッケージングするように構成することができる。また、電力用半導体スイッチング素子21、MOSFET22および高速ダイオード30の2つまたは3つを1つにパッケージングするように構成してモジュール化することもできる。
【0030】
次に、上記のように構成される本発明の実施例1に係る電力変換装置の動作を説明する。まず、オフ状態からオン状態へ移行する動作は以下の通りである。電力用半導体スイッチング素子駆動回路60からベース抵抗51を介在してカスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21のベース電極と、MOSFET22のソース電極との間に所定値、例えば2V、好ましくは1.8V、さらに好ましくは1.2V以下の電位差が印加される。この電位差は、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60に接続されたベース抵抗51→電力用半導体スイッチング素子21のベース電極からエミッタ電極→MOSFET22のドレイン電極からソース電極へと電流を流すために必要な電位差である。
【0031】
電力用半導体スイッチング素子21のベース電極とエミッタ電極との間の電圧降下は約0.7〜0.8V程度である。そして、ベース抵抗51を例えば0.1〜0.2Ωの低抵抗値とする。MOSFET22における電圧降下、ベース抵抗51における電圧降下および電力用半導体スイッチング素子21における電圧降下を合計しても2V以下である低い電圧によってベース電流を供給する。その結果、電力用半導体スイッチング素子21をオンさせるために必要なベース電流を供給しながら、ベース抵抗51に流れる電流による発熱損失を低減することができる。この時点では、MOSFET22がオンしていないため、電力用半導体スイッチング素子21のベース電流は流れない。ベース電流が流れていない電力用半導体スイッチング素子21はオフ状態である。
【0032】
次に、MOSFET駆動回路70からカスコード素子20のMOSFET22のゲート電極とソース電極との間に例えば2V〜10V以上の電位差を印加する。この結果、MOSFET22のドレイン電極とソース電極との間に電位差がなくなる、つまりMOSFET22がオンする。正確には、ドレイン電極とソース電極との間にはオン抵抗のドロップ電圧分(例えば0.01V)のみの電位差になる。その結果、電力用半導体スイッチング素子21のベース電流が、ベース電極からエミッタ電極に流れ、さらにMOSFET22を通して流れる。電力用半導体スイッチング素子21においてはコレクタ電極とエミッタ電極との電位差がなくなる、つまり電力用半導体スイッチング素子21はオンする。正確には、コレクタ電極とエミッタ電極との間にはオン抵抗のドロップ電圧分(例えば0.1V)のみの電位差になる。よって、MOSFET22がオンすると、電力用半導体スイッチング素子21もオンし、正極端子10と負極端子11との間に電流が流れる。
【0033】
次に、オン状態からオフ状態へ移行する動作は以下の通りである。MOSFET駆動回路70からカスコード素子20のMOSFET22のゲート電極とソース電極との間を例えば0Vの電位差にする。この結果、MOSFET22はオフになり、ドレイン電極とソース電極との間に、例えば30Vの電位差が発生する。その結果、MOSFET22がオフすることにより、電力用半導体スイッチング素子21に流れていたベース電流が遮断される。つまり、電力用半導体スイッチング素子21がオフになる。
【0034】
ここで、カスコード素子20のMOSFET22がオフして電力用半導体スイッチング素子21がオフするとき、電流は正極端子10→電力用半導体スイッチング素子21のコレクタ電極からベース電極→ベース抵抗51→出力コンデンサ61に流れる。つまり、ゲイン1でキャリアが引き抜かれるので、高速に電力用半導体スイッチング素子21をオフすることができる。すなわち、MOSFET22がオフすると、電力用半導体スイッチング素子21もオフし、正極端子10と負極端子11との間に流れる電流を遮断することができる。
【0035】
以上説明したように、本発明の実施例1に係る電力変換装置によれば、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21と、電力用半導体スイッチング素子(をカスコード素子とせず)単体とにおける、ベース電流が定常状態に達するまでの時間(スイッチングオン速度)、およびベース電流が0Aになるまでの時間(スイッチングオフ速度)を比較すると、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21はベース接地で動作するので、スイッチング時間が例えば1桁程度小さく(速度が1桁程度大きく)なる。このようにカスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21のスイッチング時間が短い(速度が速い)ため、スイッチング損失を低減できる。MOSFET22の電流容量は電力用半導体スイッチング素子21のそれと同じであるが、低耐圧(例えば30V)で十分であるので、半導体チップ面積は電力用半導体スイッチング素子21より小さくて済む。
【0036】
また、電力用半導体スイッチング素子21の電力用半導体スイッチング素子駆動回路60は、ベース抵抗51を介在してカスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21のベース電極と、MOSFET22のソース電極との間に2V以下の低圧の電位差を印加することにより、電力用半導体スイッチング素子21にベース電流を供給するので、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60のDC/DCコンバータ62およびベース抵抗51における発熱損失を低減することができる。
【0037】
また、電力変換装置のカスコード素子20と高速ダイオード30を上下に組み込んだ双方向チョッパ回路や、カスコード素子20と高速ダイオード30によりブリッジを組んだインバータの場合は、一方のアームのカスコード素子20がオンし、反対アームにおけるオフ過渡状態にある高速ダイオード30に逆回復電流が流れ込むことによる損失を低減することができる。つまり、カスコード素子20のスイッチング損失を低減することができる。
【実施例2】
【0038】
本発明の実施例2に係る電力変換装置は、実施例1に係る電力変換装置において、電力用半導体スイッチング素子21を、バイポーラトランジスタ、バイポーラモード静電誘導トランジスタ(BSIT:Bipolar mode Static Induction Transistor)またはGTBT(Grounded-Trench-MOS structure assisted Bipolar-mode FET)により構成したものである。
【0039】
バイポーラトランジスタ、BSITおよびGTBTは、高電圧、大電流による大容量の電力変換装置を実現することができる電力用半導体スイッチング素子である。これらの電力用半導体スイッチング素子は、電流制御型の電力用半導体スイッチング素子であり、導通損失が非常に少ないという特徴がある。しかしながら、電流によりスイッチング素子を制御するために、IGBTやMOSFETなどのような電圧制御型の電力用半導体スイッチング素子に比べて電流を供給するための電源が大型化し、発熱損失が大きくなるという問題がある。
【0040】
実施例2に係る電力変換装置においては、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21としてバイポーラトランジスタ、BSITまたはGTBTを使用することにより、これらがベース接地で動作するので、スイッチング時間が小さく(速度が大きく)なる。特にバイポーラトランジスタの場合はスイッチング時間が1桁程度小さく(速度が1桁程度大きく)なる。カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21のスイッチング時間が短い(速度が速い)ため、スイッチング損失を低減できる。
【0041】
以上説明したように、上記のように構成される実施例2に係る電力変換装置によれば、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21の導通損失を低減することができる。また、この電力変換装置によれば、電力用半導体スイッチング素子21をカスコード素子20として使用することによりスイッチング損失を低減することができる。さらに、この電力変換装置によれば、発熱損失を低減することができ、小型化が可能になる。
【実施例3】
【0042】
本発明の実施例3に係る電力変換装置は、実施例2の電力用半導体装置において、高速ダイオード30をユニポーラダイオードにより構成したものである。
【0043】
ユニポーラダイオードとしては、実用的には、ショットキーバリアダイオード(SBD)を使用することができる。シリコン半導体によって構成されるショットキーバリアダイオードにおいては、例えば200V以下の素子耐圧が実用的であるが、ワイドギャップ半導体によって構成されるショットキーバリアダイオードにおいては、例えば200V以上の高耐圧を備えている。また、ユニポーラダイオードには、ショットキーバリアダイオードと同等の特性を有する、ジャンクションバリアショットキーダイオード(JBS)を使用することもできる。
【0044】
次に、上記のように構成される本発明の実施例3に係る電力変換装置の動作を説明する。負極端子11から正極端子10へ電流が流れる場合、カスコード素子20に逆並列に接続された高速ダイオード30がオンする。高速ダイオード30がオンからオフになる時、高速ダイオード30に逆回復電流による逆回復損失が発生する。逆回復損失は高速ダイオードのスイッチング損失であり、反対アームのカスコード素子20のスイッチング動作毎に発生する。ここで、ユニポーラダイオードは少数キャリアの蓄積がなく逆回復電荷が形成されず、逆回復電流は流れない。ユニポーラダイオードは接合容量成分のみの電荷が充電されるのみであり、逆回復損失が極めて小さい。よって、ユニポーラダイオードを高速ダイオード30として使用することにより、高速ダイオード30の逆回復損失を低減することができる。
【0045】
また、逆回復電流が反対アームのオン過渡状態のカスコード素子20に流れ込むことがなく、カスコード素子20のスイッチング損失も低減することができる。
【0046】
以上説明したように、実施例3に係る電力変換装置によれば、高速ダイオード30がユニポーラダイオードにより構成されているので、高速ダイオード30の逆回復損失を低減することができる。また、この電力変換装置によれば、高速ダイオード30の逆回復電流がカスコード素子20に流れないため、カスコード素子のスイッチング損失も低減させることができる。さらに、この電力変換装置によれば、発熱損失を低減することができ、小型化が可能になる。
【実施例4】
【0047】
本発明の実施例4に係る電力変換装置は、実施例1から実施例3の何れかに係る電力用半導体装置において、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21をワイドギャップ半導体により構成したものである。ワイドギャップ半導体としては、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、ダイアモンド等を用いることができる。
【0048】
ワイドギャップ半導体を用いて構成される電力用半導体スイッチング素子21は、シリコン半導体に比べて絶縁破壊電界強度を1桁程度大きくすることができる。その結果、絶縁破壊耐圧を保持するためのドリフト層を1/10程度まで薄くすることができるので、電力用半導体スイッチング素子21の導通損失を低減することができる。
【0049】
また、ワイドギャップ半導体を用いて構成される電力用半導体スイッチング素子21は、シリコン半導体が用いられた場合に比べて、飽和電子ドリフト速度を2倍程度大きくすることができる。その結果、10倍程度の高周波化を実現することができ、電力用半導体スイッチング素子21のスイッチング損失を低減することができる。
【0050】
以上説明したように、実施例4に係る電力変換装置によれば、ワイドギャップ半導体で形成された電力用半導体スイッチング素子21を用いるように構成したので、電力用半導体スイッチング素子21の導通損失およびスイッチング損失を低減することができる。また、この電力変換装置によれば、発熱損失を低減することができ、小型化が可能である。
【実施例5】
【0051】
本発明の実施例5に係る電力変換装置は、実施例1から実施例4の何れかに係る電力用半導体装置において、高速ダイオード30をワイドギャップ半導体により構成したものである。ワイドギャップ半導体としては、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)、ダイアモンド等を用いることができる。
【0052】
ワイドギャップ半導体を用いて構成される高速ダイオード30は、シリコン半導体を用いたものに比べて絶縁破壊電界強度を1桁程度大きくすることができ、高耐圧の高速ダイオード30を実現できる。例えば、シリコン半導体では高速ダイオード30にバイポーラダイオードでしか使用できないような高耐圧の高速ダイオードであっても、ワイドギャップ半導体ではユニポーラダイオードを使用できるようになり、高耐圧領域でも実施例3に係る電力変換装置と同様な作用により、逆回復損失を低減させ、高速ダイオード30の損失を低減できる。また、実施例3に係る電力変換装置と同様な作用により、カスコード素子20のスイッチング損失を低減することができる。
【0053】
以上説明したように、実施例5に係る電力変換装置によれば、ワイドギャップ半導体で構成された高速ダイオード30を用いるように構成したので、高速ダイオードの逆回復損失を低減させることができる。また、この電力変換装置によれば、発熱損失を低減することができ、小型化が可能になる。
【実施例6】
【0054】
本発明の実施例6に係る電力変換装置は、実施例1から実施例5の何れかに係る電力変換装置において、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21のベース電極につながる電力用半導体スイッチング素子駆動回路60の出力コンデンサ61を、導電性高分子電解質により構成したものである。
【0055】
次に、上記のように構成される本発明の実施例6に係る電力変換装置の動作を説明する。出力コンデンサ61はDC/DCコンバータ62から出力される電圧を平滑する機能を有している。カスコード素子20がオン状態からオフ状態へ移行する場合、MOSFET22がオフすることにより、電力用半導体スイッチング素子21に流れていたベース電流が遮断される。そして、電力用半導体スイッチング素子21がオフになるが、オフ過渡状態では、電力用半導体スイッチング素子21のコレクタ電極からエミッタ電極に流れていた電流が一瞬だけコレクタ電極からベース電極に流れ、ベース抵抗51を通って出力コンデンサ61の抵抗分(等価直列抵抗/ESR:Equivalent Series Resistance)に流れる。
【0056】
したがって、カスコード素子20のスイッチング動作毎に出力コンデンサ61に発熱損失が発生する。ここで、導電性高分子により形成された出力コンデンサ61は、一般的に使用されているアルミ電解コンデンサに比べて高周波特性に優れ、出力コンデンサ61の抵抗分に流れる電流による発熱損失を低減することができる。また、出力コンデンサ61に流れこむ電流により充電されたエネルギーは、電力用半導体スイッチング素子21を駆動するためのベース電流源として利用される。
【0057】
抵抗値の低いベース抵抗51と高周波特性に優れた出力コンデンサ61により、図7に示す従来の電力変換装置におけるダイオード65のように電源を保護するためのダイオードを必要とせず、電力用半導体スイッチング素子21にベース電流を供給するときに保護用ダイオードに電流が流れることに起因する発熱損失をなくすことができるので、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60を小型化できる。
【0058】
また、図7に示す従来の電力変換装置におけるツェナーダイオード66のようにMOSFET22を保護するためのツェナーダイオードを必要とせず、電力用半導体スイッチング素子21にベース電流を供給するときにツェナーダイオードに電流が流れることに起因する発熱損失をなくすことができ、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60を小型化できる。その結果、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60の発熱損失を低減することができる。
【0059】
以上説明したように、実施例6に係る電力変換装置によれば、カスコード素子20のスイッチング動作毎に出力コンデンサ61に流れる電流による発熱損失を低減することができる。また、この電力変換装置によれば、発熱損失を低減することができ、小型化が可能である。
【実施例7】
【0060】
本発明の実施例7に係る電力変換装置は、実施例6に係る電力変換装置において、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21のベース電極につながる電力用半導体スイッチング素子駆動回路60を、同期整流により制御されたDC/DCコンバータ62により構成したものである。
【0061】
DC/DCコンバータ62は、図1に示すように、MOSFET621、MOSFET622、一方の端子がMOSFET621のソース電極およびMOSFET622のドレイン電極に接続されるとともに、他方の端子が出力コンデンサ61およびベース抵抗51に接続された直流リアクトル623、ならびに、MOSFET621およびMOSFET622に制御信号SW1およびSW2をそれぞれ供給する制御回路624から構成されている。
【0062】
次に、上記のように構成される本発明の実施例7に係る電力変換装置の動作を、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60のDC/DCコンバータ62の動作を中心に説明する。DC/DCコンバータ62は、入力コンデンサ63および電源64から出力される直流電圧を所定の直流電圧に変換する機能を有している。
【0063】
制御回路624は、高速でオン/オフする制御信号SW1およびSW2を出力する。制御信号SW1はMOSFET621へ、制御信号SW2はMOSFET622へそれぞれ供給される。図4に示すように、MOSFET621および622は、制御信号SW1およびSW2に応じて交互にオンとなる。上下短絡を防止するために、MOSFET621とMOSFET622とが同時にオンとなる期間はなく、何れか片方のみがオンとなる。なお、他方がオンする前にはMOSFET621とMOSFET622とが同時にオフとなる期間(デッドタイム)がある。
【0064】
カスコード素子20のMOSFET22がオンしている場合のDC/DCコンバータ62の動作を説明する。電源64の電圧(例えば10V)をDC/DCコンバータ62により2V(実施例1参照)以下に変換する場合、MOSFET621がオンになると、MOSFET621のドレイン電極からソース電極→直流リアクトル623→ベース抵抗51→電力用半導体スイッチング素子21のベース電極という経路で電流が流れる。これにより、直流リアクトル623に直流起電力が蓄積される。MOSFET621のオン期間が短いほど直流リアクトル623に蓄積される直流電力は小さくなり、出力コンデンサ61に充電される電圧も小さくなる。
【0065】
次に、MOSFET621がオフになると、MOSFET622のソース電極からドレイン電極→直流リアクトル633→ベース抵抗51→電力用半導体スイッチング素子21のベース電極という経路で電流が流れる。このとき出力コンデンサ61に充電される電圧は、直流リアクトル623に蓄積された直流電力による起電力分のみである。したがって、電源64の電圧より出力コンデンサ61に発生する電圧が小さくなり、降圧される。
【0066】
ここで、MOSFET621がオフの期間、MOSFET622をオンすることにより、発熱損失の大きいMOSFET622の内臓ダイオードに電流を流さず、図5に示すように、MOSFET同期整流となり、発熱損失を低減することができる。
【0067】
一方、カスコード素子20のMOSFET22がオフしている場合、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21にベース電流が流れない。よって、DC/DCコンバータ62の制御回路624は制御信号SW1およびSW2を出力するが、MOSFET621および622には電流は流れず、電流による発熱損失は発生しない。その結果、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60の発熱損失を低減することができる。
【0068】
以上説明したように、上記のように構成される実施例7に係る電力変換装置によれば、DC/DCコンバータ62のスイッチング動作毎のMOSFET622の内蔵ダイオードに流れる電流による発熱損失を低減することができる。また、この電力変換装置によれば、発熱損失を低減することができ、小型化が可能である。
【実施例8】
【0069】
本発明の実施例8に係る電力変換装置は、実施例7に係る電力変換装置において、カスコード素子20のMOSFET22のゲート電極につながるMOSFET駆動回路70を、負極端子11から正極端子10に電流が流れるときに、MOSFET22をオフするように制御する制御回路71によって構成したものである。
【0070】
次に、上記のように構成される本発明の実施例8に係る電力変換装置の動作を、MOSFET駆動回路70の制御回路71の動作を中心に説明する。制御回路71は、カスコード素子20のMOSFET22をオン・オフさせる機能を有し、実施例1に係る電力変換装置の動作と同様に、正極端子10から負極端子11との間に流れる電流を遮断することができる。
【0071】
MOSFET駆動回路70の制御回路71は、カスコード素子20のMOSFET22を動作させるために、高速でオン/オフする制御信号を生成し、ゲート抵抗52を経由してMOSFET22のゲート電極に送る。正極端子10から負極端子11に電流が流れる場合を「正」、負極端子11から正極端子10へ電流が流れる場合を「負」とし、例えば図6(a)に示すような電流が電力変換装置に流れた場合、従来のMOSFET駆動回路70の制御回路71は、図6(b)に示すように動作する。
【0072】
負極端子11から正極端子10へ電流が流れる場合は、高速ダイオード30を通って電流が流れる。しかしながら、カスコード素子20のMOSFET22がオンするので、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21のベース電極にベース電流が流れてしまう。ここで、図6(c)に示すように、OFF期間を設けるように制御回路71を動作させることにより、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21のベース電流を流さないようにすることができる。
【0073】
電力用半導体スイッチング素子21のベース電流が流れないことにより、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60のDC/DCコンバータ62に流れる電流による発熱損失を低減することができる。また、ベース抵抗51に流れる電流による発熱損失を低減することができる。さらに、電力用半導体スイッチング素子21に流れるベース電流による発熱損失を低減することができる。その結果、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60の発熱損失を低減することができる。
【0074】
以上説明したように、上記のように構成される実施例8に係る電力変換装置によれば、電力用半導体スイッチング素子駆動回路60のDC/DCコンバータ62に流れる電流による発熱損失を低減することができる。また、この電力変換装置によれば、カスコード素子20の電力用半導体スイッチング素子21に流れるベース電流による発熱損失を低減することができる。さらに、この電力変換装置によれば、発熱損失を低減することができ、小型化が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る電力変換装置は、高電圧、大電力領域において低損失が要求される装置、例えば産業用インバータ、汎用インバータ、無停電電源装置等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例1に係る電力変換装置の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施例1に係る電力変換装置の他の構成を示す回路図である。
【図3】本発明の実施例1に係る電力変換装置で使用されるDC/DCコンバータの他の構成を示す回路図である。
【図4】本発明の実施例7に係る電力変換装置の電力用半導体スイッチング素子駆動回路で使用されるMOSFETの制御信号の供給タイミングを示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施例7に係る電力変換装置の電力用半導体スイッチング素子駆動回路に使用されるMOSFETの電流−電圧特性の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施例8に係る電力変換装置の出力電流およびMOSFETのゲート電圧波形の一例を示す図である。
【図7】従来の電力変換装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0077】
10 正極端子
11 負極端子
20 カスコード素子
21 電力用半導体スイッチング素子
22 MOSFET
30 高速ダイオード
51 ベース抵抗
52 ゲート抵抗
60 電力用半導体スイッチング素子駆動回路
61 出力コンデンサ
62 DC/DCコンバータ
63 入力コンデンサ
64 電源
70 MOSFET駆動回路
71 制御回路
73 入力コンデンサ
74 電源
621、622 MOSFET
623 直流リアクトル
624 制御回路
625 ダイオード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電極の一方が正極端子に接続された電力用半導体スイッチング素子および該電力用半導体スイッチング素子の主電極の他方と負極端子との間に接続されたMOSFETを備えたカスコード素子と、
前記正極端子にカソード電極が接続され、前記負極端子にアノード電極が接続された高速ダイオードと、
前記電力用半導体スイッチング素子の制御端子と前記負極端子との間に接続され、前記制御端子と前記負極端子と間を所定値以下の電位差に制御する電力用半導体スイッチング素子駆動回路と、
前記MOSFETの制御端子と前記負極端子との間に接続されて該MOSFETを制御するMOSFET駆動回路と、
を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記電力用半導体スイッチング素子は、バイポーラトランジスタ、バイポーラモード静電誘導トランジスタ(BSIT:Bipolar mode Static Induction Transistor)またはGTBT(Grounded-Trench-MOS structure assisted Bipolar-mode FET)から成ることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記高速ダイオードは、ユニポーラダイオードから成ることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記ユニポーラダイオードは、ショットキーバリアダイオードまたはジャンクションバリアショットキーダイオードから成ることを特徴とする請求項3記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電力用半導体スイッチング素子は、ワイドギャップ半導体により構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記高速ダイオードは、ワイドギャップ半導体により構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記ワイドギャップ半導体は、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)またはダイアモンドから成ることを特徴とする請求項5または請求項6記載の電力変換装置。
【請求項8】
電力用半導体スイッチング素子駆動回路は、
前記電力用半導体スイッチング素子の制御端子に接続された抵抗と前記負極端子との間に接続された導電性高分子により構成された出力コンデンサと、
前記出力コンデンサに並列に接続されたDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータに並列に接続された入力コンデンサと、
前記入力コンデンサと並列に接続された電源と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記DC/DCコンバータは、同期整流により制御されることを特徴とする請求項8記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記MOSFET駆動回路は、前記負極端子から前記正極端子に電流が流れるとき、前記MOSFETをオフするように制御されることを特徴とする請求項8または請求項9記載の電力変換装置。
【請求項1】
主電極の一方が正極端子に接続された電力用半導体スイッチング素子および該電力用半導体スイッチング素子の主電極の他方と負極端子との間に接続されたMOSFETを備えたカスコード素子と、
前記正極端子にカソード電極が接続され、前記負極端子にアノード電極が接続された高速ダイオードと、
前記電力用半導体スイッチング素子の制御端子と前記負極端子との間に接続され、前記制御端子と前記負極端子と間を所定値以下の電位差に制御する電力用半導体スイッチング素子駆動回路と、
前記MOSFETの制御端子と前記負極端子との間に接続されて該MOSFETを制御するMOSFET駆動回路と、
を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記電力用半導体スイッチング素子は、バイポーラトランジスタ、バイポーラモード静電誘導トランジスタ(BSIT:Bipolar mode Static Induction Transistor)またはGTBT(Grounded-Trench-MOS structure assisted Bipolar-mode FET)から成ることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記高速ダイオードは、ユニポーラダイオードから成ることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記ユニポーラダイオードは、ショットキーバリアダイオードまたはジャンクションバリアショットキーダイオードから成ることを特徴とする請求項3記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電力用半導体スイッチング素子は、ワイドギャップ半導体により構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記高速ダイオードは、ワイドギャップ半導体により構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記ワイドギャップ半導体は、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(ガリウムナイトライド)またはダイアモンドから成ることを特徴とする請求項5または請求項6記載の電力変換装置。
【請求項8】
電力用半導体スイッチング素子駆動回路は、
前記電力用半導体スイッチング素子の制御端子に接続された抵抗と前記負極端子との間に接続された導電性高分子により構成された出力コンデンサと、
前記出力コンデンサに並列に接続されたDC/DCコンバータと、
前記DC/DCコンバータに並列に接続された入力コンデンサと、
前記入力コンデンサと並列に接続された電源と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記DC/DCコンバータは、同期整流により制御されることを特徴とする請求項8記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記MOSFET駆動回路は、前記負極端子から前記正極端子に電流が流れるとき、前記MOSFETをオフするように制御されることを特徴とする請求項8または請求項9記載の電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2007−82351(P2007−82351A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268642(P2005−268642)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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