説明

電力変換装置

【課題】半導体スイッチング素子を用いたセルを複数カスケード状に接続して構成される電力変換装置を制御する場合、複数のセルと中央制御装置間で通信を行う必要があるがセル数の増大により通信の情報量および情報処理の負荷が増大する。本発明の課題は、各セルと中央制御装置との間で通信する情報量を低減することである。
【解決手段】本発明の電力変換装置は、複数のセルをカスケード状に接続して構成されるアームを複数備え、前記セルを構成する中央制御装置と通信を行うセル制御装置への電力供給を主回路から供給する機能を備えるものである。
【効果】本発明の電力変換装置では、各セルのセル制御装置の電力を主回路から供給することにより、各セルの主要部品が故障した時に該当セルのセル制御装置と通信ができなくなることにより、該当セルが故障したことを中央制御装置が認識できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単位変換器を複数カスケード接続させた電力変換器に係り、前記単位変換器の異常を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
モジュラー・マルチレベルコンバータ(MMC)および、カスケード・マルチモジュラーコンバータ(CMC)は、Insulated Gate Bipolar Transistor(IGBT)などのオン・オフ制御可能なスイッチング素子を使用し、前記スイッチング素子の耐圧以上の電圧を出力できる回路方式であり、直流送電システム(HVDC)や無効電力補償装置(STATCOM),モータドライブインバータなどへの応用が期待されている回路方式である。
【0003】
〔非特許文献1〕は、MMCの回路方式について開示している。
【0004】
〔非特許文献1〕によれば、MMCは、複数の単位変換器(以下、セルと呼ぶことにする)を直列(カスケード)接続して構成されている。各セルは、例えば双方向チョッパ回路であり、スイッチング素子と直流コンデンサを備えている。各セルは、少なくとも2端子を介して外部と接続しており、前記2端子間の電圧を、該セルの有する直流コンデンサの電圧か、または零に制御できる。
【0005】
各セルをPWM制御している場合、各セルに与える三角波キャリアの位相を適切にシフトすることによって、MMCの出力電圧波形をマルチレベル波形にできる。これによって、2レベル変換器に比較して高調波成分を低減できる。
【0006】
MMCの特徴として、各セルが自セルの制御を行うセル制御装置を持ち、前記セル制御装置は全セルの制御を行う中央制御装置と通信を行う点が挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】萩原誠・赤木泰文:「モジュラー・マルチレベル変換器(MMC)のPWM制御法と動作検証」、電気学会論文誌D、128巻7号、pp.957−965。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のようにMMCを制御する場合、複数のセルと中央制御装置間で通信を行う必要がある。セル数が増大するにしたがって、通信の情報量および情報処理の負荷が増大する。通信の情報量および情報処理の負荷が増大し、演算周期内に必要な演算が完了しない場合、正常な制御ができない。
【0009】
よって、各セルと中央制御装置間を通信する情報量を低減することが求められる。
【0010】
本発明の目的は、半導体スイッチング素子を用いたセルをカスケード状に接続して構成される電力変換装置において、各セルと中央制御装置との間で通信する情報量を低減することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的は、複数のセルをカスケード状に接続して構成されるアームを複数備え、中央制御装置と通信を行うセル制御装置への電力供給を主回路から供給する機能を有する電力変換装置で実現できる。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明はカスケード接続された複数のセルを備える電力変換装置において、前記各セルに主回路から電力を供給する自給電源を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
更に、本発明は電力変換装置において、中央制御装置と前記セルを制御するセル制御装置とを備え、該セル制御装置の電源を前記自給電源から供給することを特徴とするものである。
【0014】
更に、本発明は電力変換装置において、前記セルは、スイッチング素子と直流コンデンサから構成された主回路と、前記直流コンデンサの電圧を検出する直流電圧センサと、前記中央制御装置からの信号を受信し、前記セル制御装置は前記スイッチング素子のゲートパルスを生成し、前記セル制御装置からのゲートパルスを受信し、スイッチング素子をオン・オフさせるゲートドライバとを備え、前記自給電源は前記セル制御装置とゲートドライバに電源を供給することを特徴とするものである。
【0015】
更に、本発明は電力変換装置において、前記中央制御装置と各セル制御装置は光ファイバーケーブルでデイジーチェーン接続されていることを特徴とするものである。
【0016】
更に、本発明は電力変換装置において、前記中央制御装置と各セル制御装置は光ファイバーケーブルでスター結線接続されていることを特徴とするものである。
【0017】
更に、本発明は電力変換装置において、前記セルの主回路は、スイッチング素子と直流コンデンサを備え、前記セルの前記直流コンデンサまたはスイッチング素子が故障したことを判別する信号を中央制御装置とセル制御装置間で通信することを特徴とするものである。
【0018】
更に、本発明は電力変換装置において、前記中央制御装置は前記セル制御装置と通信ができなくなったことをもって、該セルの直流コンデンサまたはスイッチング素子の故障と判定することを特徴とするものである。
【0019】
更に、本発明は電力変換装置において、前記自給電源は直流コンデンサから供給することを特徴とするものである。
【0020】
更に、本発明は電力変換装置において、前記自給電源はスイッチング素子に印加される電圧から供給することを特徴とするものである。
【0021】
更に、本発明は電力変換装置において、前記自給電源は複数の分圧用給電コンデンサからなる直列体と、前記各分圧用給電コンデンサの電圧を調整する電圧調整回路を備え、該各電圧調整回路の出力が並列に接続されたことを特徴とするものである。
【0022】
更に、本発明は電力変換装置において、前記電圧調整回路は、各分圧用給電コンデンサの電圧を検出して、前記各電圧調整回路の出力を調整する機能を備えたことを特徴とするものである。
【0023】
更に、本発明は電力変換装置において、前記自給電源は電力を蓄積する給電コンデンサと、該給電コンデンサの放電を防止する放電防止ダイオードと、前記主回路から前記自給電源に流れ込む電流を制限する制限抵抗と、前記給電コンデンサの電圧を一定に制御する電圧制限手段と、前記給電コンデンサの電圧を調整する電圧調整回路を備えたことを特徴とするものである。
【0024】
更に、本発明は電力変換装置において、前記電圧調整回路は複数の出力端子を備え、該電圧調整回路の出力端子と並列にバックアップコンデンサを接続し、該バックアップコンデンサの放電時定数に差をつけたことを特徴とするものである。
【0025】
更に、本発明は電力変換装置において、前記セルの出力端子にノーマリーオンの短絡スイッチを接続し、前記短絡スイッチの駆動電力を前記自給電源から供給することを特徴とするものである。
【0026】
更に、本発明は電力変換装置において、前記中央制御装置は、各セルのうち一つが故障した場合、該故障したセルを特定する手段を備え、該故障したセル以外のセルに各セルのセル制御装置と中央制御装置との間の通信の伝送遅延時間をバランスさせる信号を伝送することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
各セル主要部品の故障ビットを設けなくても、複数のセルをカスケード状に接続して構成される電力変換装置において、各セルのセル制御装置の電力を主回路から供給することにより、各セルの主要部品が故障した時に該当セルのセル制御装置と通信ができなくなることにより、該当セルが故障したことを中央制御装置が認識することができる。
【0028】
これにより、本発明は、半導体スイッチング素子を用いたセルをカスケード状に接続して構成される電力変換装置において、各セルと中央制御装置との間で通信する情報量を低減することが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す電力変換装置の回路図。
【図2】本発明の第1の実施形態を示すセルの回路図。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す電力変換装置の回路図。
【図4】本発明の第3の実施形態を示すセルの回路図。
【図5】本発明の第4の実施形態を示す自給電源の回路図。
【図6】本発明の第5の実施形態を示す自給電源の回路図。
【図7】本発明の第6の実施形態を示す電圧調整回路の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0031】
本発明を実施する第一の形態について説明する。
【0032】
実施例1では、セルを構成する直流コンデンサの故障の故障ビットを中央制御装置に送信しなくとも直流コンデンサの故障を検出することを実現したものである。
【0033】
以下、図1,図2を用いて実施例1の構成について述べる。
【0034】
本実施例では、各セル105の構成がチョッパセルであると仮定する。ただし、本発明は、フルブリッジセルにも適用可能である。
【0035】
また、本実施例では、本発明の電力変換装置103として三相電力系統に連系する三相MMCを取り上げる。ただし、本発明は、単相系統に連系する単相MMCや、モータを駆動するMMCにも適用可能である。
【0036】
また、本発明はカスケード・マルチレベル変換器(CMC)にも適用可能である。
【0037】
電力変換装置103は、変圧器102を介して三相電力系統101に連系している。
【0038】
電力変換装置103のU点,V点,W点は、変圧器102の2次側に接続されている。
【0039】
また、電力変換装置103のP点とN点の間に、負荷装置112を接続している。
【0040】
本実施例における電力変換装置103は、三相電力系統101と交流電力の授受を行う。
【0041】
また、電力変換装置103は、負荷装置112と直流電力授受を行う。ここで、負荷装置112は、直流負荷,モータドライブインバータの直流リンク,直流電源などを代表して示したものである。
【0042】
本実施例では、三相電力系統101の相電圧をそれぞれVR,VS,VTと呼ぶことにする。変圧器102の2次側を流れる各相の電流をそれぞれIU,IV,IWと呼ぶことにする。
【0043】
本実施例では、変圧器102の2次側(電力変換装置103が接続している側)の中性点は、接地されているものとして説明する。
【0044】
電力変換装置103は、複数のセル105をカスケード接続して構成されている。
【0045】
詳細は後述するが、各セル105は、直流コンデンサを備えた双方向チョッパ回路である(図2参照)。各セル105は、少なくとも2端子を介して外部回路と接続しており、前記2端子の間の電圧を、直流コンデンサ電圧か、または零に制御できる。
【0046】
本実施例では、前記2端子の間の電圧を、セルの出力電圧またはセル電圧と呼ぶことにする。
【0047】
図1に示すように、1つまたは複数のセル105をカスケード接続して構成した回路を、変換器アーム104と呼ぶ。本実施例では、1つの変換器アーム104がN個のセル105を含んでいるとする。また、各変換器アーム104を流れる電流をアーム電流と呼ぶことにし、図1の通り、IUH,IVH,IWH,IUL,IVL,IWLと定義することにする。
【0048】
電力変換装置103は、6つの変換器アーム104と6つのリアクトル106を、図1に示すように接続することによって構成されている。
【0049】
中央制御装置107は、電力変換装置103全体を制御する。中央制御装置107は図1中にGND点で表わした接地点に接地された電位にある。
【0050】
交流電圧センサ108は、系統相電圧VR,VS,VTを検出し、その瞬時値信号を中央制御装置107に伝送する。
【0051】
また、電流センサ109は、各アーム電流IUH,IVH,IWH,IUL,IVL,IWLを検出し、その瞬時値信号を中央制御装置107に伝送する。
【0052】
中央制御装置107は、一つまたは二つの光トランシーバ110を備えており、各光トランシーバ110は光ファイバーケーブル111を介して、各セルのセル制御装置204と通信する。
【0053】
中央制御装置107は、系統相電圧VR,VS,VT,アーム電流IUH,IVH,IWH,IUL,IVL,IWLを検出し、これらの情報に基づいて、各セル105に送信する出力電圧指令値を決定し、前記出力電圧指令値を各セル105に送信する。中央制御装置107はこの一連の動作を大略一定周期で行う。この周期を制御周期と呼ぶことにする。
【0054】
中央制御装置107は、上記の一連の動作を行うことにより、アーム電流IUH,IVH,IWH,IUL,IVL,IWLを制御することで、三相電力系統101と電力を授受する。
【0055】
中央制御装置107は、光トランシーバ110と光ファイバーケーブル111を介して、各セルのセル制御装置204に出力電圧指令値を送信する。
【0056】
また、本実施例では、前記セル制御装置204は、2つの光トランシーバ205を備えており、前記中央制御装置107、または隣接する他のセル制御装置204と光ファイバーケーブル111を介して通信している。
【0057】
また、本実施例の各セル制御装置204は、次のセル制御装置204または、中央制御装置107との通信が完了した時点で前のセル制御装置または中央制御装置へ通信が完了したことを伝える機能及び、次のセル制御装置204または、中央制御装置107との通信が完了しない場合は逆回りで、通信できなかったことを伝える機能を有する。
【0058】
また、前記セル制御装置204は、前記中央制御装置107、または隣接するほかのセル制御装置204と光ファイバーケーブル111を介して送られてきた自セル105の出力電圧指令値および、自セルの直流コンデンサ203の電圧VCの情報をもとにスイッチング素子20、と202のためのゲートパルスを生成する。
【0059】
また、本実施例において、セル台数が6Nである場合、第6Nセルが送信した光シリアル信号フレームは、中央制御装置107に戻される。
【0060】
次に、図2を用いて、セル105の構成を説明する。
【0061】
セル105の主回路は、ハイサイド・スイッチング素子201,ローサイド・スイッチング素子202,直流コンデンサ203とからなる双方向チョッパ回路である。直流コンデンサ203の電圧をVCと呼ぶことにする。ただし、直流コンデンサ203は電池などの直流電圧源でもよい。
【0062】
また、ハイサイド・スイッチング素子201とローサイド・スイッチング素子202を総称して、スイッチング素子と呼ぶことにする。
【0063】
本実施例では、スイッチング素子201,202とをIGBTとしているが、本発明はスイッチング素子201,202がGate−Turn−Off Thysistor(GTO),Gate−Commutated Turn−off Thyristor(GCT),Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor(MOSFET)、その他のオン・オフ制御素子の場合にも適用可能である。
【0064】
各セル105はセル制御装置204,自給電源208を備えており、セル制御装置204は光トランシーバ205と光ファイバーケーブル111を介して隣接する他のセル105のセル制御装置204または中央制御装置107と接続する。
【0065】
本発明は、セル制御装置204に電源を供給する自給電源208を備えていることが特徴であり、その効果については後述する。
【0066】
セル制御装置204は、スイッチング素子201,202を駆動するためのゲートパルスを生成し、これをゲートドライバ206に送信する。
【0067】
ゲートドライバ206は、スイッチング素子201,202のゲート・エミッタ間に適切な電圧を印加し、スイッチング素子201,202をターンオンまたはターンオフさせる。
【0068】
直流電圧センサ207は直流コンデンサ電圧VCを検出し、その瞬時値信号をセル制御装置204に伝送する。
【0069】
各セル制御装置204の電位は、各セル204のローサイド・スイッチング素子202のエミッタ端子と同電位であり、図2ではこの点をG(CELL)点で表わしている。
【0070】
また、前記セル制御装置204は、前記中央制御装置107から光ファイバーケーブル111を介して送られてきた自セル105の出力電圧指令値、および、自セルの直流コンデンサ203の電圧VCの情報をもとにスイッチング素子201,202のためのゲートパルスを生成する。
【0071】
また、自給電源208は、直流コンデンサ203と並列に接続され、前記セル制御装置204に電源を供給する。また、前記自給電源208は、ゲートドライバ206に電源を供給してもよい。また、前記自給電源208は直流コンデンサ203から電力を供給されるので電圧VCがある電圧(Vm)以下になると動作を停止する。
【0072】
本実施例では、中央制御装置からの信号が各セル制御装置とシリアルに通信されるため、通信する信号の情報量に比例して信号伝送遅延時間が蓄積される。1制御周期内に全セルの信号処理が完了しない場合、前記電力変換器103を正常に制御できなくなる。そのため、通信する信号の情報量を削減することは非常に重要である。
【0073】
以下に、本実施例における信号の伝送遅れについて述べる。
【0074】
本実施例では、光ファイバーケーブルをデイジーチェーン接続しているため、あるセル制御装置204が隣接する他のセル制御装置204に信号を伝送するまでに遅延時間が生じる。
【0075】
全てのセルは光ファイバーケーブルを用いてデイジーチェーン接続されているため、中央制御装置107から遠いセルでは、セル間の信号伝送の遅延が蓄積する。したがって、中央制御装置107から各セルへ制御信号が伝達されるまでの遅延時間は、セル毎に異なる。
【0076】
したがって、デイジーチェーン接続に起因してセル毎に異なる遅延時間のバランスを確保することが重要である。
【0077】
ここで、セル番号を定義する。セル番号は、各セル105のセル制御装置204がその内部に保存している情報である。
【0078】
セル番号とは、中央制御装置107から該セル105までの、光ファイバーケーブル111〜114によるデイジーチェーン接続の順番である。そのセル番号がKであるセル105を第Kセルと呼ぶことにする。第Kセルは、中央制御装置107からK番目に情報を受信するセルである。
【0079】
以下、遅延バランス時間TBについて説明する。
【0080】
遅延バランス時間TBとは、中央制御装置107から各セル105への信号伝送遅延時間を大略等しくするための時間であり、セル毎に異なる値をもつ。
【0081】
実施例1では、中央制御装置107から送信された光シリアル信号は、6N台のセル105を通り、再び中央制御装置107に戻される。
【0082】
したがって、中央制御装置107は、6N台のセルを光シリアル信号が通過する時間(全遅延時間)TDを計測できる。
【0083】
例えば、中央制御装置107および各セル制御装置204の初期化時において、中央制御装置107が遅延時間測定のための試験用光シリアル信号フレームを使用して全遅延時間TDを計測し、TDのディジタル値を、全セルに光シリアル伝送することができる。
【0084】
これにより、全てのセル105は、全セル(6N台)分の全遅延時間TDの情報を持っている。また、各セルは、自セルが第何セルかという情報(セル番号K)を持っている。
【0085】
ここで、第Kセルの遅延バランス時間をTB(K)とすると、TB(K)を次式で与えることにより、中央制御装置107から各セル105への信号伝送遅延時間を大略等しくすることができる。
〔式1〕
TB(K)=(1−K/6N)・TD
【0086】
次に、本発明の効果を説明する。本発明は、自給電源208を用いてセル制御装置204に電力を供給することで、中央制御装置107で直流コンデンサの以上信号を設けなくても故障を検出できることが特徴である。以下詳細に説明する。
【0087】
以下では1例として、各セル105のうち1つのセル、例えばH番目のセルの直流コンデンサ電圧が低下した場合の故障検出法について述べる。
【0088】
H番目のセルの直流コンデンサ電圧が低下し、一定電圧(Vm)を下回ると前記自給電源208が、前記セル制御装置204に電力が供給できなくなる。
【0089】
前記セル制御装置204は電力が供給されないため、中央制御装置107または、隣接する他のセル制御装置との通信ができなくなる。
【0090】
このため、H番目のセル制御装置はH−1番目のセル制御装置、または中央制御装置に通信が完了したことを伝えることができない。よって、H−1番目のセル制御装置は、H番目のセル制御装置が通信できなかったことを逆周りに各セル制御装置を介して中央制御装置107へ伝達する。
【0091】
中央制御装置107は、H番目のセル制御装置と通信できなかったことを検知したことで、H番目のセル制御装置の直流コンデンサの異常と判定することができる。
【0092】
よって、直流電圧の状態を通信によって常に監視する必要がなく、通信ビットの有効活用ができる。
【0093】
さらに、本実施例では、中央制御装置107が光トランシーバを2つ備えている場合、中央制御装置107は通常の順番による通信(1から6N番目のセルへの通信)とは逆周りの通信(6N番目から1番目のセルへの通信)を実施することで、1台セルが停止した場合でも、セル段数に冗長性を持たせておくことで運転継続が可能である。
【0094】
以下に、本実施例における、1台セルが停止した場合における運転継続方法について述べる。
【0095】
1台セルが停止した場合、双方向(1番目から6N番目および6N番目から1番目のセルへの通信の2通り)に通信していれば、停止したセル以外の各セルへの通信は可能である。
【0096】
ただし、全台が運転している場合と1台セルが停止した場合の遅延バランス時間TBが異なる。
【0097】
そのため、中央制御装置は、H番目のセルが停止したことを検知したときに各セルの遅延バランス時間を再度設定する。
【0098】
例えば、H番目のセルが停止した場合、全台が運転していた場合の遅延バランス時間をTBとした場合、順方向から通信を行うK番目のセル(1からH−1番目のセル)の遅延バランス時間TB1(K)は、式2の値にすることにより、中央制御装置107から各セル105への信号伝送遅延時間を大略等しくすることができる。
〔式2〕
TB1(K)={2(H−1)−K}・TD/6N
【0099】
また、逆方向からの通信を行うK番目のセル(H+1から6N番目のセル)の遅延バランス時間TB2(K)は、式3の値にすることにより、中央制御装置107から各セル105への信号伝送遅延時間を大略等しくすることができる。
〔式3〕
TB2(K)={18N−2(H+1)−K}・TD/6N
【0100】
また、短絡スイッチ209をセルの出力に並列に接続し、前記短絡スイッチの駆動電力を前記自給電源208から供給すればよい。
【0101】
短絡スイッチ209は、前記セル105が故障した場合、前記セル105の出力を短絡する手段であり、前記自給電源208から駆動電力がない場合、前記セル105の出力を短絡するノーマリーオンのスイッチである。
【0102】
前記自給電源208が停止すると、前記短絡スイッチ209によって異常セルの出力は短絡されるため、セルの段数に冗長性を持たせておくことで、セルが故障してもシステムとして運転継続させることも可能である。
【0103】
また、本実施例のその他の効果として、セル制御装置204およびゲートドライバ206の電力を主回路から供給できるため、絶縁トランスなどによって対地電位との絶縁を取る必要がなく、セルの小型・軽量化できる。この効果は、前述した故障ビットの有無の構成とは関係しない。
【実施例2】
【0104】
本発明を実施する第2の形態について説明する。実施例1では中央制御装置と各セル制御装置の通信を数珠繋ぎ、いわゆるデイジーチェーン方式であったが、実施例2では図3に示すように中央制御装置は、個別に各セル制御装置と通信を行う、いわゆるスター結線方式であることが異なる。
【0105】
以下では、実施例2の構成において、実施例1の構成と異なる部分についてのみ説明する。
【0106】
図3は、本発明の第2の実施形態を表した回路図である。
【0107】
中央制御装置107は、6N個光トランシーバ110を備えており、光トランシーバ110から光ファイバーケーブル111を介して、各セル105に出力電圧指令値を送信する。
【0108】
本実施例では、中央制御装置107から各セルのセル制御装置204へは、パラレルで信号を伝送するため、必要な光トランシーバの数が増加する。本実施例の電力変換装置303に適用することで、信号の情報量を削減できるため、信号処理能力が低い安価な光トランシーバを使用できるため、装置の低コスト化が図れる。
【0109】
次に、本発明の効果について説明する。本実施例でも、自給電源208を用いてセル制御装置204に電力を供給することで、セルの直流コンデンサの異常を中央制御装置で信号を設けなくても、故障を検出できる。以下より詳細に説明する。
【0110】
各セル105のうち1つのセルの直流コンデンサ電圧VCが低下した場合を例にとり説明する(以後、直流コンデンサ電圧が低下したセル105を異常セルと呼ぶ)。
【0111】
異常セルの直流コンデンサ電圧VCが低下し、Vmを下回ると前記自給電源208が停止し、前記セル制御装置204に電力が供給できなくなる。
【0112】
前記セル制御装置204は電力が供給されないため、中央制御装置107との通信ができなくなる。
【0113】
中央制御装置107は、異常セルと通信ができなくなった時点で異常セルの直流コンデンサが異常だと判定することができる。
【0114】
中央制御装置107は、直流コンデンサの異常を通信によって常に監視する必要がなく、通信ビットの有効活用ができる。
【0115】
また、短絡スイッチ209をセルの出力に並列に接続し、前記短絡スイッチの駆動電力を前記自給電源208から供給することで、1台セルが停止した場合に前記自給電源208から駆動電力が供給されなくなるため、前記セル105の出力が短絡され、1台セルが故障してもシステムとして運転継続させることも可能である。
【0116】
本実施例では、各セル105としてチョッパセルを取り上げたが、本発明は、フルブリッジセルにも適用可能である。
【0117】
また、本実施例では、電力変換装置103として三相電力系統に連系する三相MMCを取り上げたが、本発明は、単相系統に連系する単相MMCや、モータを駆動するMMCにも適用可能である。
【0118】
また、本発明はカスケード・マルチレベル変換器(CMC)にも適用可能である。
【0119】
そして、本実施例のその他の効果として、セル制御装置204およびゲートドライバ206の電力を主回路から供給できるため、絶縁トランスなどによって対地電位との絶縁を取る必要がなく、セルの小型・軽量化できる。この効果は、前述した故障ビットの有無の構成とは関係しない。
【実施例3】
【0120】
本発明を実施する第3の形態について説明する。実施例1では、セル制御装置の駆動電力を各セルの直流コンデンサから自給電源を介して供給していたが、本実施例では、スイッチング素子に印加される電圧から自給電源を介して供給しているところが異なる。
【0121】
以下では、実施例3の構成において、実施例1の構成と異なる部分についてのみ説明する。
【0122】
図4は、本発明の第3の実施形態を表した回路図である。
【0123】
ハイサイド・スイッチング素子201およびローサイド・スイッチング素子202は、両スイッチング素子がOFF状態のときはVC/2、片方のスイッチング素子がON状態のときは、VCと大略零のパルス状の電圧が印加される。
【0124】
自給電源401は、ハイサイド・スイッチング素子201に印加する電圧を利用して電力を供給する。また、自給電源402は、ローサイド・スイッチング素子202に印加する電圧を利用して電力を供給する。
【0125】
自給電源401は、ハイサイド・スイッチング素子201を駆動するゲートドライバ403に電力を供給する。
【0126】
自給電源402は、ローサイド・スイッチング素子202を駆動するゲートドライバ404,セル制御装置204および短絡スイッチ209に電力を供給する。
【0127】
次に、本実施例においても本特許の特徴である自給電源からセル制御装置へ電力を供給することで、通信で常時監視することなくセルのスイッチング素子の異常を検知できることについて述べる。
【0128】
各セル105のローサイド・スイッチング素子202が短絡故障した場合について述べる(以後、スイッチング素子が故障したセル105を故障セルと呼ぶ)。
【0129】
故障セルのローサイド・スイッチング素子202が短絡故障するとローサイド・スイッチング素子には電圧が印加されず、前記自給電源402は停止し、前記セル制御装置204に電力が供給できなくなる。
【0130】
前記セル制御装置204は電力が供給されなくなるため、中央制御装置107との通信ができなくなる。
【0131】
中央制御装置107は、通信ができなくなった時点で故障セルをローサイド・スイッチング素子故障だと判定することができる。
【0132】
また、セル制御装置204の電力を、ハイサイド・スイッチング素子201に印加する電圧を利用して電力を供給する自給電源401から供給すると、ハイサイド・スイッチング素子が短絡故障をした場合、自給電源401が停止し、前記セル制御装置204に電力が供給されなくなるため、中央制御装置107との通信ができなくなるため、中央制御装置107は、通信ができなくなった時点で故障セルをハイサイド・スイッチング素子故障だと判定することができる。
【0133】
上記のように、中央制御装置107は、ハイサイド・スイッチング素子201または、ローサイド・スイッチング素子202の異常を通信によって常に監視する必要がなく、通信ビットの有効活用ができる。
【0134】
また、セルが故障した場合でも、本実施例の電力変換装置の運転を継続させる場合は、短絡スイッチ209をセルの出力に並列に接続し、前記短絡スイッチの駆動電力を前記自給電源401または前記自給電源402から供給すればよい。
【0135】
短絡スイッチ209は、前記セル105が故障した場合、前記セル105の出力を短絡する手段であり、前記自給電源401または402から駆動電力がない場合、前記セル105の出力を短絡するノーマリーオンのスイッチである。
【0136】
前記自給電源401または前記自給電源402が停止すると、前記短絡スイッチ209によって異常セルの出力は短絡されるため、セルの段数に冗長性を持たせておくことで、セルが故障してもシステムとして運転継続させることも可能である。
【0137】
本実施例では、各セル105としてチョッパセルを取り上げたが、本発明は、フルブリッジセルにも適用可能である。
【0138】
また、本実施例では、電力変換装置103として三相電力系統に連系する三相MMCを取り上げたが、本発明は、単相系統に連系する単相MMCや、モータを駆動するMMCにも適用可能である。
【0139】
また、本発明はカスケード・マルチレベル変換器(CMC)にも適用可能である。そして、本実施例のその他の効果として、セル制御装置204およびゲートドライバ403または404の電力を主回路から供給できるため、絶縁トランスなどによって対地電位との絶縁を取る必要がなく、セルの小型・軽量化できる。尚、この効果は、前述した故障ビットの有無の構成とは関係しない
【実施例4】
【0140】
本発明を実施する第4の形態について説明する。本実施例は、実施例1,実施例2または実施例3で用いる自給電源の1例である。
【0141】
本実施例を実施例1,実施例2または実施例3に適用することで、セルを構成する直流コンデンサの異常またはスイッチング素子の故障ビットを中央制御装置に送信しなくとも検出できる。
【0142】
図5は、本発明の第4の実施形態を表した回路図である。
【0143】
まず、本発明の特徴であるセル制御装置に主回路から電力を供給できることを特徴として自給電源500の構成について説明する。自給電源500は、入力端子501と502の間に放電防止ダイオード503,制限抵抗504および給電コンデンサ505の直列体を接続する。前記給電コンデンサに並列にツェナーダイオードなどの電圧制限手段506および電圧調整回路507が接続される。電圧調整回路507の出力は、出力端子508および509に接続される。
【0144】
次に自給電源500の動作を説明する。
【0145】
構成や用途によるが、入力端子501,502には、数百Vから数千Vの直流電圧またはパルス状の電圧が印加され、給電コンデンサ505を充電する。放電防止ダイオード503は前記給電コンデンサ505に充電された電荷が放電するのを防ぐ。ただし、実施例1または実施例2のように入力電圧が概略一定とみなせる場合は削減することもできる。
【0146】
前記給電コンデンサ505の電圧VCQが一定以上の電圧Vlimになると電圧制限手段506が動作し、給電コンデンサ505の電圧を概ね一定に制限する。電圧制限手段506が動作し給電コンデンサ505の電圧VCQが概ね一定になると、電圧調整回路507が動作する。電圧調整回路は給電コンデンサ505の電圧VCQを負荷が必要な電圧に変換し、出力端子508,509に出力する。
【0147】
本発明の自給電源500は、入力端子501,502に印加される電圧VinがVlim以下になると、給電コンデンサ505の電圧VCQを一定にならず電圧調整回路507が動作を停止し、出力端子508,509には電圧が出力されない。
【0148】
実施例1,実施例2または実施例3のセル制御装置204に電力が供給されなくなるため、中央制御装置107と通信できなくなる。
【0149】
中央制御装置107は通信できなくなったことを認識すると、直流コンデンサ203,ハイサイド・スイッチング素子201、またはローサイド・スイッチング素子202の異常と判定する。
【0150】
上記のように、中央制御装置107は、直流コンデンサ203またはスイッチング素子201,202の異常を通信によって常に監視する必要がなく、通信ビットの有効活用ができる。
【0151】
また、本実施例のその他の効果として、セル制御装置およびゲートドライバの電力を主回路から供給できるため、絶縁トランスなどによって対地電位との絶縁を取る必要がなく、セルの小型・軽量化できる。尚、この効果は、前述した故障ビットの有無の構成とは関係しない。
【実施例5】
【0152】
本発明を実施する第5の形態について説明する。本実施例は、実施例1または実施例2で用いる自給電源の1例である。
【0153】
本実施例を実施例1または実施例に適用することで、セルを構成する直流コンデンサの故障ビットを中央制御装置に送信しなくとも検出できる。
【0154】
また、本実施例では実施例4で用いた制限抵抗による損失がなくなるため、低損失で電力を供給できる。
【0155】
図6は、本発明の第5の実施形態を表した回路図である。
【0156】
また、本実施例は、本発明の特徴であるセル制御装置に主回路から電力を供給できる自給電源において、自給電源を構成する各電圧調整回路の出力を並列にして各電圧調整回路の出力バランスさせることにより、分圧給電コンデンサの電圧バランスを一定に保つことができ、実施例4で必要であった制限抵抗が削減できることが特徴である。
【0157】
まず、自給電源600の構成を説明する。自給電源600は、入力端子601と602の間に複数の分圧給電コンデンサ603の直列体が接続される。前記各分圧給電コンデンサ603にはそれぞれ電圧調整回路604が接続される。前記各電圧調整回路604の出力は、それぞれ並列に接続され、出力端子508,509に接続される。
【0158】
次に、本発明の自給電源600の動作を説明する。
【0159】
入力端子601,602に印加される電圧Vinを分圧給電コンデンサ603により分圧する。前記各電圧調整回路604は、前記各分圧給電コンデンサ603の電圧をゲートドライバやセル制御装置などの負荷が必要とする電圧に変換し、各電圧調整回路604の出力端子を並列に接続し、出力端子605,606にから電力を供給する。ただし、電圧調整回路604は入力電圧が一定以下(Vmin)になると出力を停止する機能を有する。
【0160】
各電圧調整回路604は出力を並列に接続しているため、前記各電圧調整回路604の出力は概ね等しくなり、前記分圧給電コンデンサ603の電圧は互いに概ね等しくなる。
【0161】
また、図6には図示していないが、各分圧給電コンデンサ603の電圧を検出し、各電圧調整回路604の出力を調整することにより、各分圧給電コンデンサ603の電圧バランスをとることもできる。
【0162】
本発明の自給電源600は、入力端子601,602に印加される電圧が低下し、各分圧給電コンデンサの電圧がVmin以下になると、電圧調整回路604が動作を停止し、出力端子605,606から電力は供給されなくなる。
【0163】
よって、実施例1,実施例2のセル制御装置204に電力が供給されなくなるため、中央制御装置107と通信できなくなる。
【0164】
中央制御装置107は通信できなくなったことを認識すると、直流コンデンサ203の異常と判定する。
【0165】
上記のように、中央制御装置107は、直流コンデンサ203異常を通信によって常に監視する必要がなく、通信ビットの有効活用ができる。
【0166】
また、本実施例のその他の効果として、セル制御装置およびゲートドライバの電力を主回路から供給できるため、絶縁トランスなどによって対地電位との絶縁を取る必要がなく、セルの小型・軽量化できる。尚、この効果は、前述した故障ビットの有無の構成とは関係しない。
【実施例6】
【0167】
本発明を実施する第6の形態について説明する。本実施例は、実施例4または実施例5で用いる電圧調整回路の変形である。
【0168】
本実施例を実施例4または実施例5に適用することで、電圧調整回路が停止する際にゲートドライバが誤パルスを出力する可能性を低減することができる。
【0169】
図7は、本発明の第6の実施形態を表した回路図である。
【0170】
また、本実施例は、本発明の特徴であるセル制御装置へ主回路から電力を供給できる自給電源を含むセルにおいて、ゲートドライバの方がセル制御装置よりも先に停止するように電圧調整回路の各出力に接続する各バックアップコンデンサの静電容量を決定することが特徴である。
【0171】
まず、本実施例の構成を説明する。電圧調整回路703からゲートドライバへ電力を供給する出力端子706,708との間に並列にバックアップコンデンサ704を、電圧調整回路703からセル制御装置へ電力を供給する出力端子707,708との間に並列にバックアップコンデンサ705を接続する。
【0172】
次に、本実施例の動作を説明する。電圧調整回路703は、入力端子701,702に印加される電圧をゲートドライバ及びセル制御装置が必要な電圧に変換し、ゲートドライバには出力端子706,708を介して、セル制御装置には出力端子707,708を介して電力を供給する。バックアップコンデンサ704,705の静電容量を下記のように選ぶことで、電圧調整回路703が停止した場合、ゲートドライバをセル制御装置よりも先に停止させることにより、セル制御装置が停止する際に誤パルスを出力した場合でもスイッチング素子を誤点弧させなくすることができる。
【0173】
ゲートドライバに出力する電圧をVGD、消費する電力をPGD、セル制御装置に出力する電圧をVCC、消費する電力をPCCとすると、バックアップコンデンサ704および705の静電容量CGD,CCCは式5の関係を満たすようにすれば、バックアップコンデンサ704の電圧の方がバックアップコンデンサ705の電圧より先に低下する。
〔式5〕
CGD<[{PGD・(VCC)2}/PCC・(VGD)2]・CCC
【0174】
以上のように、各バックアップコンデンサの静電容量を決定することにより、電圧調整回路703が停止した場合、ゲートドライバをセル制御装置よりも先に停止させることができ、スイッチング素子が誤点弧することを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明は、交流電力をいったん直流電力に変換する無効電力補償装置(SVC,STATCOM)やモータドライブ用電力変換装置,直流送電システム(HVDC)などの電力変換器を用いる機器に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0176】
101 三相電力系統
102 変圧器
103,303 電力変換装置
104 変換器アーム
105 セル(単位変換器)
106 リアクトル
107 中央制御装置
108 交流電圧センサ
109 電流センサ
110,205 光トランシーバ
111 光ファイバーケーブル
112 負荷装置
201 ハイサイド・スイッチング素子
202 ローサイド・スイッチング素子
203 直流コンデンサ
204 セル制御装置
206,403,404 ゲートドライバ
207 直流電圧センサ
208,401,402,500,600 自給電源
209 短絡スイッチ
501,502,601,602,701,702 入力端子
503 放電防止ダイオード
504 制限抵抗
505 給電コンデンサ
506 電圧制限手段
507,604,703 電圧調整回路
508,509,605,706,707,708 出力端子
603 分圧給電コンデンサ
704,705 バックアップコンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カスケード接続された複数のセルを備える電力変換装置において、
前記各セルに主回路から電力を供給する自給電源を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1の電力変換装置において、
中央制御装置と前記セルを制御するセル制御装置とを備え、
該セル制御装置の電源を前記自給電源から供給することを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1、又は2の電力変換装置において、
前記セルは、スイッチング素子と直流コンデンサから構成された主回路と、
前記直流コンデンサの電圧を検出する直流電圧センサと、
前記中央制御装置からの信号を受信し、前記セル制御装置は前記スイッチング素子のゲートパルスを生成し、
前記セル制御装置からのゲートパルスを受信し、スイッチング素子をオン・オフさせるゲートドライバとを備え、
前記自給電源は前記セル制御装置とゲートドライバに電源を供給することを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちの1つの電力変換装置において、
前記中央制御装置と各セル制御装置は光ファイバーケーブルでデイジーチェーン接続されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のうちの1つの電力変換装置において、
前記中央制御装置と各セル制御装置は光ファイバーケーブルでスター結線接続されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちの1つの電力変換装置において、
前記セルの主回路は、スイッチング素子と直流コンデンサを備え、
前記セルの前記直流コンデンサまたはスイッチング素子が故障したことを判別する信号を中央制御装置とセル制御装置間で通信することを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちの1つの電力変換装置において、
前記中央制御装置は前記セル制御装置と通信ができなくなったことをもって、該セルの直流コンデンサまたはスイッチング素子の故障と判定することを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちの1つの電力変換装置において、
前記自給電源は直流コンデンサから供給することを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のうちの1つの電力変換装置において、
前記自給電源はスイッチング素子に印加される電圧から供給することを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のうちの1つの電力変換装置において、
前記自給電源は複数の分圧用給電コンデンサからなる直列体と、前記各分圧用給電コンデンサの電圧を調整する電圧調整回路を備え、該各電圧調整回路の出力が並列に接続されたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項10の電力変換装置において、
前記電圧調整回路は、各分圧用給電コンデンサの電圧を検出して、前記各電圧調整回路の出力を調整する機能を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項1乃至9のうちの1つの電力変換装置において、
前記自給電源は電力を蓄積する給電コンデンサと、
該給電コンデンサの放電を防止する放電防止ダイオードと、
前記主回路から前記自給電源に流れ込む電流を制限する制限抵抗と、
前記給電コンデンサの電圧を一定に制御する電圧制限手段と、
前記給電コンデンサの電圧を調整する電圧調整回路を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちの1つの電力変換装置において、
前記電圧調整回路は複数の出力端子を備え、該電圧調整回路の出力端子と並列にバックアップコンデンサを接続し、該バックアップコンデンサの放電時定数に差をつけたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項14】
請求項1乃至14のうちの1つの電力変換装置において、前記セルの出力端子にノーマリーオンの短絡スイッチを接続し、前記短絡スイッチの駆動電力を前記自給電源から供給することを特徴とする電力変換装置。
【請求項15】
請求項4に記載の電力変換装置において、
前記中央制御装置は、各セルのうち一つが故障した場合、該故障したセルを特定する手段を備え、該故障したセル以外のセルに各セルのセル制御装置と中央制御装置との間の通信の伝送遅延時間をバランスさせる信号を伝送することを特徴とする電力変換装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−193615(P2011−193615A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56903(P2010−56903)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】