説明

電力変換装置

【課題】短絡動作による利点を享受することが可能でありながら、交流−直流変換の動作時に短絡動作が行われることによる不具合を、防止することが可能となる電力変換装置を提供する。
【解決手段】直流電源ラインと交流電源ラインの間にブリッジ回路を備え、該ブリッジ回路を用いて直流電源ライン側から交流電源ライン側への直流−交流変換を行う直流−交流変換モード、および、該ブリッジ回路を用いて交流電源ライン側から直流電源ライン側への交流−直流変換を行う交流−直流変換モード、の動作モードを有し、交流電源ライン間に設けられ、交流電源ライン間を短絡させる短絡動作を実行する、電源ライン短絡回路と、動作モードを切替える動作モード切替部と、交流−直流変換モードであるときに、短絡動作が実行されないようにする短絡動作禁止部と、を備えた電力変換装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向に電力変換を行う電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力変換に用いられる各種のインバータ装置などが提案されている。その一つとして特許文献1には、フルブリッジインバータを備えたインバータ装置であって、電源ライン短絡回路を有するもの(従来例)が提案されている。このインバータ装置は、所定の条件下(従来例の場合は、フルブリッジインバータに対する駆動パルス信号がオフ期間で、フルブリッジインバータの出力電流が下降するとき)に、電源ライン短絡回路によって電源ライン間を短絡させる。
【0003】
このような動作が行われることにより、フルブリッジインバータの出力電流に生じるリプルをその出力電流の平均値が零となる辺りで小さくすることができ、直流から交流への変換効率の向上およびノイズの低減が図られる。また更に、直流電源回路への電流の逆流を防ぎ、直流電源回路の負側出力端の電位の変動幅を小さく抑えて、漏洩電流を低減させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−89541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来例は、電力の直流−交流変換を伴う系統連系動作時に、所定の条件下で電源ライン間を短絡させる動作(短絡動作)を行い、各種改善が図られるようにしたものである。
【0006】
ここで、一方向への直流−交流変換(系統連系動作など)だけでなく、その逆方向への交流−直流変換(整流動作など)をも行うようにした双方向電力変換装置について考える。双方向電力変換装置においても、先述したような電源ライン短絡回路を設けておき、直流−交流変換の動作時に短絡動作が行われるようにすることで、上述したような改善効果を得ることが可能である。
【0007】
しかしながら、交流−直流変換の動作時に短絡動作が実行されると、電力変換の動作に不具合を来たすことになる。本発明はこの問題に鑑み、短絡動作による利点を享受することが可能でありながら、交流−直流変換の動作時に短絡動作が行われることによる不具合を、防止することが可能となる電力変換装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る電力変換装置は、直流電源ラインと交流電源ラインの間に設けられたブリッジ回路を備え、該ブリッジ回路を用いて直流電源ライン側から交流電源ライン側への直流−交流変換を行う直流−交流変換モード、および、該ブリッジ回路を用いて交流電源ライン側から直流電源ライン側への交流−直流変換を行う交流−直流変換モード、の動作モードを有する電力変換装置であって、前記交流電源ライン間に設けられ、該交流電源ライン間を短絡させる短絡動作を実行する、電源ライン短絡回路と、前記動作モードを切替える動作モード切替部と、交流−直流変換モードであるときに、前記短絡動作が実行されないようにする短絡動作禁止部と、を備えた構成とする。
【0009】
本構成によれば、短絡動作が行われる一方で、交流−直流変換モードであるときには短絡動作の実行は行われない。そのため、短絡動作による利点を享受することが可能でありながら、交流−直流変換の動作時に短絡動作が行われることによる不具合を、防止することが可能となる。
【0010】
また上記構成としてより具体的には、前記ブリッジ回路は、スイッチング素子がブリッジ接続されて形成されており、前記交流電源ラインを介してリアクタに接続されているものであって、前記電源ライン短絡回路は、前記短絡動作により、前記ブリッジ回路と前記リアクタとの間において、前記交流電源ライン間を短絡させる構成としてもよい。
【0011】
また上記構成としてより具体的には、入力される直流電力の電圧値を検出する電圧検出部を備え、前記動作モード切替部は、前記検出の結果に基づいて、前記動作モードを切替える構成としても良い。
【0012】
また上記構成としてより具体的には、ユーザによって操作される操作スイッチを備え、前記動作モード切替部は、前記操作スイッチの操作に基づいて、前記動作モードを切替える構成としても良い。
【0013】
また上記構成としてより具体的には、前記動作モード切替部は、現在の時間帯に基づいて、前記動作モードを切替える構成としても良い。
【0014】
また上記構成としてより具体的には、前記動作モード切替部は、外部から与えられる動作モード切替指示に応じて、前記動作モードを切替える構成としても良い。
【0015】
また上記構成としてより具体的には、前記電源ライン短絡回路は、ONとOFFの何れか一方を表す短絡制御信号を受取るようになっており、該短絡制御信号のONのタイミングで前記交流電源ライン間を短絡させることにより、前記短絡動作を行う構成としても良い。
【0016】
また上記構成において、前記動作モード切替部は、前記動作モードに応じてONとOFFが切替えられる動作モード切替信号を出力するようになっており、前記短絡動作禁止部は、前記動作モード切替信号と前記短絡制御信号との論理積を算出することにより、交流−直流変換モードであるときにはOFFに固定されるように、前記短絡制御信号を修正する構成としてもよい。
【0017】
また上記構成において、前記電源ライン短絡回路の一部に介在して設けられ、その箇所の接続と分離を切替えるように開閉する接続スイッチを備え、前記短絡動作禁止部は、交流−直流変換モードであるときには、前記接続スイッチを開状態に固定する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
上述した通り、本発明に係る電力変換装置によれば、短絡動作が行われる一方で、交流−直流変換モードであるときには短絡動作の実行は行われない。そのため、短絡動作による利点を享受することが可能でありながら、交流−直流変換の動作時に短絡動作が行われることによる不具合を、防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置の構成図である。
【図2】電力変換装置の使用形態に関する説明図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る電力変換装置の構成図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る電力変換装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について、第1実施形態から第3実施形態の各々を例に挙げて、以下に説明する。
【0021】
1.第1実施形態
[電力変換装置の構成等について]
まず第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る電力変換装置の構成図である。本図に示すように当該電力変換装置1は、直流変換回路11、PWMブリッジ回路12、電源ライン短絡回路13、リアクタ(L1〜L3)、コンデンサ(C1、C2)、直流側端子T1、および交流側端子T2を有している。また電力変換装置1は、動作モード切替信号生成部20、および第1〜第4駆動回路(21〜24)を有している。なお、電力変換装置1に設けられている各接地点(GND)の電位は、互いに同じ電位である必要は無く、異なる電位であっても良い。すなわち図1(後述する図3および図4についても同様)における各GND記号の箇所の電位は、互いに同じであっても良く、異なっていても良い。
【0022】
なお電力変換装置1は、直流側端子T1には直流電源DCが接続され、交流側端子T2には交流電源ACが接続された形態で使用される。直流電源DCは、直流電力の充放電を行う二次電池であっても良く、その他の種類の直流電源であっても良い。また交流電源ACは、配電系統であっても良く、その他の種類の交流電源であっても良い。また各端子には、電源とともに(或いはこれに代えて)負荷が接続されても構わない。
【0023】
直流変換回路11は、双方向に直流電圧の変換を行う回路である。本実施形態では、直流変換回路の一種として、双方向チョッパ回路が採用されている。直流変換回路11は、スイッチング素子(Q1、Q2)、およびリアクタL1を有している。なお本発明の各実施形態では、スイッチング素子はNチャネル型MOSFETであるとするが、他種のものが採用されていても構わない。
【0024】
スイッチング素子Q1のソースはスイッチング素子Q2のドレインとリアクタL1の一端に接続されている。スイッチング素子Q1のドレインは、PWMブリッジ回路12(スイッチング素子Q3とQ5のドレイン)、およびコンデンサC1の一端に接続されている。スイッチング素子Q2のソースは、PWMブリッジ回路12(スイッチング素子Q4とQ6のソース)、コンデンサC1の他端、および直流側端子T1の負極側に接続されている。またリアクタL1の他端は、直流側端子T1の正極側に接続されている。
【0025】
なお各スイッチング素子(Q1、Q2)には、アノードがソースに接続され、カソードがドレインに接続されるようにして、ダイオードが接続されている。直流変換回路11は、各スイッチング素子(Q1、Q2)の開閉動作(ソース−ドレイン間における導通/非導通の切替動作)によって、双方向に直流電圧を変換することが可能である。なお直流変換回路11が行う直流電圧の変換は、昇圧と降圧の何れであっても構わない。
【0026】
PWMブリッジ回路12は、双方向の電力変換(一方向へは直流−交流変換、その逆方向へは交流−直流変換)を行う回路であり、フルブリッジ接続された各スイッチング素子(Q3〜Q6)を有している。
【0027】
各スイッチング素子(Q3〜Q6)の接続形態としては、スイッチング素子Q3のソースにスイッチング素子Q4のドレインが接続され、スイッチング素子Q5のソースにスイッチング素子Q6のドレインが接続され、スイッチング素子Q3のドレインにスイッチング素子Q5のドレインが接続され、スイッチング素子Q4のソースにスイッチング素子Q6のソースが接続されている。なお各スイッチング素子(Q3〜Q6)には、逆並列の形態で(アノードがソースに接続され、カソードがドレインに接続されるようにして)、ダイオードが接続されている。
【0028】
また、スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4との接続点は、リアクタL2を介して、交流側端子T2の一方に接続されており、スイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6との接続点は、リアクタL3を介して、交流側端子T2の他方に接続されている。PWMブリッジ回路12は、各スイッチング素子(Q3〜Q6)の開閉動作によって、双方向の電力変換を行うことが可能である。
【0029】
なおPWMブリッジ回路12は、直流側端子T1に近い側に設けられた直流電力を伝送する直流電源ラインと、交流側端子T2に近い側に設けられた交流電力を伝送する交流電源ライン(図1に示すように、上側と下側がある)との間に、設けられている。またPWMブリッジ回路12は、交流電源ラインを介してリアクタL2およびL3に接続されている。
【0030】
電源ライン短絡回路13は、後述する短絡動作を実現させるための回路であり、スイッチング素子Q7およびQ8を有している。スイッチング素子Q7のソースは、PWMブリッジ回路12とリアクタL2の間(上側の交流電源ライン)に接続されており、スイッチング素子Q7のドレインは、スイッチング素子Q8のドレインに接続されている。またスイッチング素子Q8のソースは、PWMブリッジ回路12とリアクタL3の間(下側の交流電源ライン)に接続されている。
【0031】
なおスイッチング素子Q7には、アノードがソースに接続され、カソードがドレインに接続されるようにして、ダイオードが接続されている。またスイッチング素子Q8には、アノードがソースに接続され、カソードがドレインに接続されるようにして、ダイオードが接続されている。
【0032】
電源ライン短絡回路13によれば、スイッチング素子Q7のみが閉状態(導通状態)となることで、交流電源ラインは下側から上側の方向について短絡する。またスイッチング素子Q8のみが閉状態となることで、交流電源ラインは上側から下側の方向について短絡する。またスイッチング素子Q7とQ8の何れもが開状態(非導通状態)であるときは、交流電源ライン間は短絡しない。
【0033】
またコンデンサC2は、一端がリアクタL2と一方の交流側端子T2との間に接続され、他端がリアクタL3と他方の交流側端子T2との間に接続されている。
【0034】
動作モード切替信号生成部20は、電力変換装置1の動作モード(動作形態)を切替えるための動作モード切替信号を生成する。なお電力変換装置1は、「直流−交流変換モード」と「交流−直流変換モード」の各動作モードを有しており、何れかが択一的に設定される。
【0035】
直流−交流変換モードは、直流側端子T1から入力される直流電力に対して、PWMブリッジ回路12を用いて直流電源ライン側から交流電源ライン側への直流−交流変換を行い、交流側端子T2から出力するように動作する動作モードである。また交流−直流変換モードは、交流側端子T2から入力される交流電力に対して、PWMブリッジ回路12を用いて交流電源ライン側から直流電源ライン側への交流−直流変換を行い、交流側端子T1から出力するように動作する動作モードである。
【0036】
動作モード切替信号生成部20は、予め決められた動作モード切替条件に従い、電力変換装置1の動作モードを直流−交流変換モードと交流−直流変換モードとの間で切替えるための、動作モード切替信号を生成する。なお動作モード切替条件については、改めて詳細に説明する。
【0037】
第1駆動回路21は、スイッチング素子Q3を駆動させるための駆動信号S3、および、スイッチング素子Q7を駆動させるための駆動信号S7を生成する。なお、スイッチング素子Q3およびQ7は、それぞれ、駆動信号S3およびS7に応じて、開閉動作を行うようになっている。
【0038】
第2駆動回路22は、スイッチング素子Q2を駆動させるための駆動信号S2、スイッチング素子Q4を駆動させるための駆動信号S4、および、スイッチング素子Q6を駆動させるための駆動信号S6を生成する。なお、スイッチング素子Q2、Q4、およびQ6は、それぞれ、駆動信号S2、S4、およびS6に応じて、開閉動作を行うようになっている。
【0039】
第3駆動回路23は、スイッチング素子Q5を駆動させるための駆動信号S5、および、スイッチング素子Q8を駆動させるための駆動信号S8を生成する。なお、スイッチング素子Q5およびQ8は、それぞれ、駆動信号S5およびS8に応じて、開閉動作を行うようになっている。
【0040】
第4駆動回路24は、スイッチング素子Q1を駆動させるための駆動信号S1を生成する。なお、スイッチング素子Q1は、駆動信号S1に応じて開閉動作を行うようになっている。また各駆動信号(S1〜S8)は、何れもスイッチング素子を開閉動作させることが可能なパルス信号である。
【0041】
[基本動作について]
各駆動回路(21〜24)は、駆動制御回路(不図示)から与えられる指示に従って、駆動信号S1〜S6を生成するようになっている。この駆動制御回路は、動作モード切替信号生成部20から動作モード切替信号を受取って、現在の動作モードを認識する。
【0042】
そして駆動制御回路は、直流−交流変換モードにおいては、先述した直流−交流変換モードの動作が実現されるように各駆動回路(21〜24)に指示を出し、各駆動回路に駆動信号S1〜S6を生成させる。一方、駆動制御回路は、交流−直流変換モードにおいては、先述した交流−直流変換モードの動作が実現されるように各駆動回路(21〜24)に指示を出し、各駆動回路に駆動信号S1〜S6を生成させる。
【0043】
これにより電力変換装置1は、直流−交流変換モードのときは、直流側端子T1から入力される直流入力電力に対して、直流変換回路11を用いた電圧変換(昇圧または降圧)、および、PWMブリッジ回路12を用いた直流−交流変換を順に行い、交流側端子T2から出力するように動作する。すなわち、図1における右方向に向かって電力を変換するように動作する。なお直流変換回路11を用いた電圧変換は、所望の交流波形が出力可能となるように適切に行われる。
【0044】
その一方で電力変換装置1は、交流−直流変換モードのときは、交流側端子T2から入力される交流入力電力に対して、PWMブリッジ回路12を用いた交流−直流変換、および、直流変換回路11を用いた電圧変換(昇圧または高圧)を順に行い、直流側端子T1から出力するように動作する。すなわち、図1における左方向に向かって電力を変換するように動作する。なお直流変換回路11を用いた電圧変換は、所望の電圧値が得られるように適切に行われる。
【0045】
なお、各駆動回路(21〜24)が駆動信号S1〜S6を生成する手法については、既に知られている種々の手法に準じたものとすることが出来る。例えば、所定の正弦波信号と三角波信号との電圧比較に基づくパルス幅変調(PWM)により、パルス信号である駆動信号が生成されるようにしても良い。また直流−交流変換モードの際には、特許文献1の場合と同様の手法により、駆動信号が生成されるようにしても良い。
【0046】
[短絡動作について]
電源ライン短絡回路13は、先述したように交流電源ライン間に設けられており、スイッチング素子(Q7、Q8)の開閉動作によって、この交流電源ライン間を短絡させることが可能である。そして第1駆動回路21および第3駆動回路23は、所定の短絡動作が実行されるように、それぞれ、駆動信号S7および駆動信号S8を生成するようになっている。
【0047】
なお駆動信号S7および駆動信号S8は、ON(短絡の実行)とOFF(短絡の不実行)の何れか一方を表す、短絡制御信号と見ることも出来る。各スイッチング素子(Q7、Q8)は、対応する短絡制御信号のONのタイミングで閉状態となり、交流電源ライン間を短絡させることになる。
【0048】
ここで短絡動作は、所定の条件下で交流電源ライン間を短絡させ、電力の直流−交流変換についての各種改善を図るための動作である。一例として短絡動作は、PWMブリッジ回路12で直流−交流変換を行う際に、交流電圧波形の極性に同期して、交流電源ライン間を片方向に短絡させる(交流電圧が正値の時は図1での上向きに短絡させ、負値の時は図1での下向きに短絡させる)動作である。
【0049】
このような内容の短絡動作によれば、電源ライン短絡回路13の両端の電圧を3レベル化し、高効率な直流−交流変換が可能となる。なお短絡動作の内容はこれに限定されるものではなく、例えば特許文献1に開示された動作に準じたものとすること等も可能である。
【0050】
但し短絡動作は、直流−交流変換モードにおいて実行される場合は、各種改善の効果が得られるが、交流−直流変換モードにおいて実行されると、電力変換の動作に不具合を来たすことになる。そこで電力変換装置1は、交流−直流変換モードであるときに、短絡動作が実行されないようにする手段(禁止する手段)を備えている。
【0051】
本実施形態では、第1駆動回路21および第3駆動回路23は、動作モード切替信号生成部20から動作モード切替信号が入力され、交流−直流変換モードにおいては、スイッチング素子Q7とQ8の何れについても開状態に固定するようになっている。これにより、直流−交流変換モードにおいては短絡動作が実行される一方、交流−直流変換モードにおいては短絡動作が実行されないようになっている。
【0052】
[動作モード切替条件について]
先述した通り、動作モード切替信号生成部20は、予め決められた動作モード切替条件に従い、動作モード切替信号を生成する。動作モード切替条件は、電力変換装置1の用途や使用環境などに応じて、様々な条件としておくことが可能である。ここでは、動作モード切替条件の具体例を幾つか挙げ、以下に説明する。
【0053】
(1)電圧値に基づいた条件とする場合
直流電源DCが、例えば充放電の可能な二次電池である場合を想定する。この場合、二次電池の電圧値が比較的高い状況では、二次電池の充電量は比較的多く(よって、現時点では充電を行う必要性は低い)、逆に二次電池の電圧値が比較的低い状況では、二次電池の充電量は比較的少ない(よって、現時点では充電を行う必要性が高い)と言える。
【0054】
この観点から見れば、電力変換装置1が入力される直流電力の電圧値(例えば各直流側端子T1間の電圧値であり、二次電池の電圧値を反映している)を検出するようにしておき、当該電圧値が所定の第1閾値以上であるときに、直流−交流変換モードに切替える動作モード切替信号が生成され、当該電圧値が所定の第2閾値(第1閾値と同じであってもよい)以下であるときに、交流−直流変換モードに切替える動作モード切替信号が生成されることが好ましい。
【0055】
そこで、このように動作モード切替信号が生成されるように、動作モード切替条件を設定しておくことが可能である。これにより、二次電池の充電量を適切な状態に維持することが容易となる。
【0056】
(2)売電価格等に応じた条件とする場合
直流電源DCが例えば太陽電池(電力会社等への売電が可能な電源)であり、交流電源ACが配電系統であって、直流負荷(ヒータ等)が直流側端子T1に接続されている場合を想定する。売電価格と買電価格は異なることがあり、電力変換装置1の利用者(電力の需要家等)にとっては、売電価格の方が高いときに売電を行うことが好ましいと考えられる。そこで電力変換装置の動作モードは、売電価格の方が高くなると見込まれる状況では、売電が促進されるように直流−交流変換モードとなり、そうでない状況では、買電が促進されるように交流−直流変換モードとなることが好ましい。
【0057】
この観点から見れば、電力変換装置1が売電価格の方が高くなると見込まれる状況であるかを判定するようにしておき、高くなると見込まれるときに、直流−交流変換モードに切替える動作モード切替信号が生成され、そうでないときに、交流−直流変換モードに切替える動作モード切替信号が生成されることが好ましい。そこで、このように動作モード切替信号が生成されるように、動作モード切替条件を設定しておくことが可能である。
【0058】
なお多くの場合、時間帯によって、売電価格の方が高くなったり低くなったりする傾向がある。そのため、売電価格の方が高くなると見込まれる状況であるかを判定するにあたっては、現在の時間帯の情報を用いるようにしても良い。すなわち電力変換装置1は、時計機能を用いて現在の時間帯を把握し、現在の時間帯に基づいて動作モードを切替える(例えば、昼間の時間帯では直流−交流変換モードとし、夜間の時間帯では交流−直流変換モードとする)ようにしても良い。
【0059】
また、電力会社等が売買電価格の情報を送信するようになっている場合、電力変換装置1はこの情報を受信し、当該情報に基づいて、売電価格の方が高くなると見込まれる状況であるかを判定するようにしても良い。
【0060】
(3)操作スイッチの操作に基づく条件とする場合
また電力変換装置1に、ユーザの操作(動作モードを切替えるための操作)を受付けるための操作スイッチを設けておき、動作モード切替条件を、この操作スイッチの操作に基づいた条件としても良い。
【0061】
すなわち、直流−交流変換モードに切替えるための操作がなされたときは、直流−交流変換モードに切替える動作モード切替信号が生成され、交流−直流変換モードに切替えるための操作がなされたときは、交流−直流変換モードに切替える動作モード切替信号が生成されるように、動作モード切替条件を設定しておくことが可能である。これにより、ユーザの意図を反映させるように、動作モードを設定することが可能となる。
【0062】
(4)コントローラの指示に基づく条件とする場合
また電力変換装置1の使用形態としては、例えば図2に示すように、一または複数の電力変換装置1(図2では、電力変換装置A〜Cを例示している)を制御するコントローラ2が設けられ、それぞれの電力変換装置1が、コントローラ2に接続された状態で使用されることがある。
【0063】
この場合、コントローラ2が、各電力変換装置1に対して動作モード切替指示を与えるようにしておき、各電力変換装置1は、この指示に従って、動作モード切替信号を生成するようにしても良い。すなわちコントローラ2から、直流−交流変換モードに切替える旨の指示がなされたときは、直流−交流変換モードに切替える動作モード切替信号が生成され、交流−直流変換モードに切替える旨の指示がなされたときは、交流−直流変換モードに切替える動作モード切替信号が生成されるように、動作モード切替条件を設定しておくことが可能である。
【0064】
なおコントローラ2は、例えば現在の時間帯の情報に基づき、昼間においては直流−交流変換モードの動作(二次電池を放電する動作など)を行わせ、夜間においては交流−直流変換モードの動作(二次電池を充電する動作など)を行わせるように、各電力変換装置1に動作モード切替指示を出すようにしても良い。
【0065】
またコントローラ2は、図2に示すように各電力変換装置1に接続されている二次電池などの直流電源(或いは負荷)の電圧値を検出し、当該電圧値が所定の第1閾値以上であるときに、その電力変換装置1に対しては直流−交流変換モードの動作(二次電池を放電する動作)を行わせ、当該電圧値が所定の第2閾値(第1閾値と同じであってもよい)以下であるときに、その電力変換装置1に対しては交流−直流変換モードの動作(二次電池を充電する動作)を行わせるように、動作モード切替指示を出すようにしても良い。
【0066】
なお図2に示すコントローラ2は、電力変換装置1の外部に設けられており、各電力変換装置1に対して、外部から動作モード切替指示を与えるようになっている。但しコントローラ2は、電力変換装置1の内部に設けられていても構わない。また電力変換装置1自体が、コントローラ2に相当する機能部(制御部)を有していても構わない。
【0067】
2.第2実施形態
次に第2実施形態について説明する。なお本実施形態は、短絡動作を禁止するための手段に関する点を除き、基本的には第1実施形態と同等である。以下の説明においては、第1実施形態と異なる部分の説明に重点を置き、第1実施形態と共通する部分の説明については省略することがある。
【0068】
図3は、本実施形態に係る電力変換装置の構成図である。本図に示すように、当該電力変換装置1は、二つのAND回路(31、32)を有している。また動作モード切替信号生成部20は、動作モード切替信号として、ON(AND回路において論理「1」を表す状態)とOFFの(AND回路において論理「0」を表す状態)の何れか一方を表す信号を生成するようになっている。
【0069】
なおONの状態は、直流−交流変換モードを表し、OFFの状態は、交流−直流変換モードを表している。動作モード切替信号がONからOFFに遷移したときは、動作モードは直流−交流変換モードから交流−直流変換モードに切替えられ、逆にOFFからONに遷移したときは、動作モードは交流−直流変換モードから直流−交流変換モードに切替えられることになる。
【0070】
AND回路31は、動作モード切替信号および駆動信号S7(短絡制御信号)が入力されるようになっている。なお駆動信号S7は、スイッチング素子Q7を閉状態とするON(AND回路において論理「1」を表す状態)と開状態とするOFF(AND回路において論理「0」を表す状態)の何れか一方を表すパルス信号である。
【0071】
AND回路31は、入力されるこれらの信号の論理積である駆動信号S7´を、スイッチング素子Q7に出力する。つまりAND回路31は、駆動信号S7の代わりに駆動信号S7´が、スイッチング素子Q7の駆動信号となるようにする。
【0072】
これにより、直流−交流変換モード(動作モード切替信号がONの期間)においては、駆動信号S7と同じ内容の駆動信号S7´が、スイッチング素子Q7に出力される。一方で、交流−直流変換モード(動作モード切替信号がOFFの期間)においては、駆動信号S7の内容に関わらずOFFに固定された駆動信号S7´が、スイッチング素子Q7に出力される。
【0073】
またAND回路32は、動作モード切替信号および駆動信号S8(短絡制御信号)が入力されるようになっている。なお駆動信号S8は、スイッチング素子Q8を閉状態とするON(AND回路において論理「1」を表す状態)と開状態とするOFF(AND回路において論理「0」を表す状態)の何れか一方を表すパルス信号である。
【0074】
AND回路32は、入力されるこれらの信号の論理積である駆動信号S8´を、スイッチング素子Q8に出力する。つまりAND回路32は、駆動信号S8の代わりに駆動信号S8´が、スイッチング素子Q8の駆動信号となるようにする。
【0075】
これにより、直流−交流変換モード(動作モード切替信号がONの期間)においては、駆動信号S8と同じ内容の駆動信号S8´が、スイッチング素子Q8に出力される。一方で、交流−直流変換モード(動作モード切替信号がOFFの期間)においては、駆動信号S8の内容に関わらずOFFに固定された駆動信号S8´が、スイッチング素子Q8に出力される。
【0076】
このように各AND回路(31、32)は、動作モード切替信号と短絡制御信号との論理積を算出することにより、交流−直流変換モードであるときにはOFFに固定されるように、短絡制御信号を修正するようになっている。
【0077】
そのため交流−直流変換モードにおいては、スイッチング素子Q7およびQ8は何れも開状態に固定され、電源ライン短絡回路13による交流電源ライン間の短絡は、行われないようになっている。これにより電力変換装置1は、直流−交流変換モードにおいては短絡動作が実行され、交流−直流変換モードにおいては、短絡動作の実行が禁止されるようになっている。
【0078】
なお本実施形態では、各AND回路(31、32)を利用して、短絡動作の実行の禁止を実現させるようになっている。そのため、第1駆動回路21や第3駆動回路23に、動作モード切替信号に応じて駆動信号(S7、S8)の状態を変える機能を設ける必要は無く、本実施形態では当該機能は設けられていない。そのため、第1駆動回路21や第3駆動回路23の構成や動作は、第1実施形態の場合に比べて簡潔となっている。
【0079】
またAND回路(31、32)の形態は特に限定されない。例えばAND回路は、駆動回路(21、23)の内部と外部の何れに設けられていても良い。またハードウェアとしてのAND回路が設けられても良く、AND回路の処理がソフトウェアを用いて行われるようにしても良い。
【0080】
3.第3実施形態
次に第3実施形態について説明する。なお本実施形態は、短絡動作を禁止するための手段に関する点を除き、基本的には第1実施形態と同等である。以下の説明においては、第1実施形態と異なる部分の説明に重点を置き、第1実施形態と共通する部分の説明については省略することがある。
【0081】
図4は、本実施形態に係る電力変換装置の構成図である。本図に示すように、当該電力変換装置1は、接続スイッチSWおよび第5駆動回路25を有している。接続スイッチSWは、電源ライン短絡回路13の一部に介在して設けられており、自身が開閉することにより、その箇所の接続/分離を切替える。
【0082】
接続スイッチSWが開いているときは、スイッチング素子Q7およびQ8の状態に関わらず、電源ライン短絡回路13によって交流電源ライン間が短絡されることはない。また接続スイッチSWが閉じているときは、スイッチング素子Q7およびQ8の状態に応じ、電源ライン短絡回路13によって交流電源ライン間が短絡されることになる。
【0083】
また第5駆動回路25は、動作モード切替信号を受取り、この信号に応じて接続スイッチSWの開閉を制御する。すなわち第5駆動回路25は、直流−交流変換モードに切替える動作モード切替信号を受取ったときは、接続スイッチSWを閉状態に切替えて固定し、交流−直流変換モードに切替える動作モード切替信号を受取ったときは、接続スイッチSWを開状態に切替えて固定する。
【0084】
このように、交流−直流変換モードの期間においては、接続スイッチSWは開状態に固定され、電源ライン短絡回路13による交流電源ライン間の短絡は禁止される。そのため電力変換装置1は、直流−交流変換モードにおいては短絡動作が実行されるようにし、交流−直流変換モードにおいては、短絡動作の実行が禁止されるようになっている。
【0085】
なお接続スイッチSWとしては、半導体スイッチング素子などを用いることが可能である。また他のスイッチング素子とは異なり、あまり高速な開閉を必要としないため、リレー等の機械的なスイッチを用いることも可能である。なお半導体スイッチング素子を用いる場合は、逆阻止IGBT等のように、閉状態では双方向に導通し、開状態では完全に遮断するものを用いる必要がある。
【0086】
また接続スイッチSWを設ける位置については、図4に示すように各スイッチング素子(Q7、Q8)同士の間とする他、上側の交流電源ラインとスイッチング素子Q7との間、或いは、下側の交流電源ラインとスイッチング素子Q8との間としても構わない。
【0087】
なお本実施形態では、接続スイッチSWを利用して、短絡動作の実行の禁止を実現させるようになっている。そのため、第1駆動回路21や第3駆動回路23に、動作モード切替信号に応じて駆動信号(S7、S8)の状態を変える機能を設ける必要は無く、本実施形態では当該機能は設けられていない。そのため、第1駆動回路21や第3駆動回路23の構成や動作は、第1実施形態の場合に比べて簡潔となっている。
【0088】
4.その他
以上に説明した通り、各実施形態に係る電力変換装置1は、直流電源ラインと交流電源ラインの間にPWMブリッジ回路12を備え、PWMブリッジ回路12を用いて直流電源ライン側から交流電源ライン側への直流−交流変換を行う直流−交流変換モード、および、PWMブリッジ回路12を用いて交流電源ライン側から直流電源ライン側への交流−直流変換を行う交流−直流変換モード、の動作モードを有している。
【0089】
また電力変換装置1は、交流電源ライン間に設けられ、交流電源ライン間を短絡させる短絡動作を実行する電源ライン短絡回路13と、動作モードを切替える機能部(動作モード切替部)と、交流−直流変換モードであるときに、短絡動作が実行されないようにする機能部(短絡動作禁止部)と、を備えている。
【0090】
そのため電力変換装置1によれば、短絡動作が行われる一方で、交流−直流変換モードであるときには短絡動作の実行は行われない。そのため、短絡動作による利点を享受することが可能でありながら、交流−直流変換の動作時に短絡動作が行われることによる不具合を、防止することが可能となっている。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、双方向に電力を変換する電力変換装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 電力変換装置
2 コントローラ
11 直流変換回路
12 PWMブリッジ回路
13 電源ライン短絡回路
20 動作モード切替信号生成部
21 第1駆動回路
22 第2駆動回路
23 第3駆動回路
24 第4駆動回路
25 第5駆動回路
31 AND回路
32 AND回路
C1〜C2 コンデンサ
L1〜L3 リアクタ
Q1〜Q8 スイッチング素子
1〜S8 駆動信号
SW 接続スイッチ
T1 直流側端子
T2 交流側端子
DC 直流電源
AC 交流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源ラインと交流電源ラインの間にブリッジ回路を備え、
該ブリッジ回路を用いて直流電源ライン側から交流電源ライン側への直流−交流変換を行う直流−交流変換モード、および、該ブリッジ回路を用いて交流電源ライン側から直流電源ライン側への交流−直流変換を行う交流−直流変換モード、の動作モードを有する電力変換装置であって、
前記交流電源ライン間に設けられ、該交流電源ライン間を短絡させる短絡動作を実行する、電源ライン短絡回路と、
前記動作モードを切替える動作モード切替部と、
交流−直流変換モードであるときに、前記短絡動作が実行されないようにする短絡動作禁止部と、
を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記ブリッジ回路は、
スイッチング素子がブリッジ接続されて形成されており、
前記交流電源ラインを介してリアクタに接続されているものであって、
前記電源ライン短絡回路は、
前記短絡動作により、前記ブリッジ回路と前記リアクタとの間において、前記交流電源ライン間を短絡させることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
入力される直流電力の電圧値を検出する電圧検出部を備え、
前記動作モード切替部は、
前記検出の結果に基づいて、前記動作モードを切替えることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
ユーザによって操作される操作スイッチを備え、
前記動作モード切替部は、
前記操作スイッチの操作に基づいて、前記動作モードを切替えることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記動作モード切替部は、
現在の時間帯に基づいて、前記動作モードを切替えることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記動作モード切替部は、
外部から与えられる動作モード切替指示に応じて、前記動作モードを切替えることを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記電源ライン短絡回路は、
ONとOFFの何れか一方を表す短絡制御信号を受取るようになっており、
該短絡制御信号のONのタイミングで前記交流電源ライン間を短絡させることにより、前記短絡動作を行うことを特徴とする請求項2から請求項6の何れかに記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記動作モード切替部は、
前記動作モードに応じてONとOFFが切替えられる動作モード切替信号を出力するようになっており、
前記短絡動作禁止部は、
前記動作モード切替信号と前記短絡制御信号との論理積を算出することにより、交流−直流変換モードであるときにはOFFに固定されるように、前記短絡制御信号を修正することを特徴とする請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記電源ライン短絡回路の一部に介在して設けられ、その箇所の接続と分離を切替えるように開閉する接続スイッチを備え、
前記短絡動作禁止部は、
交流−直流変換モードであるときには、前記接続スイッチを開状態に固定することを特徴とする請求項2から請求項7の何れかに記載の電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−205390(P2012−205390A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67713(P2011−67713)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】