説明

電力変換装置

【課題】過大なサージ電圧から負荷や電源の絶縁劣化を防ぐことができる電力変換装置を提供する。
【解決手段】インバータ2と電動機4との間にリアクトルLfとコンデンサCfとからなるフィルタ回路が存在する電動機駆動用電力変換装置において、インバータ2を構成する半導体スイッチング素子Su〜Sw,Sx〜Szのそれぞれを、第1乃至第3のオン信号からなる制御信号でオンオフ動作させるとともに、第1と第3のオン信号が出力されている時間と、第1のオン信号が出力されてから第2のオン信号が出力されるまでの時間と、第2のオン信号がオフしてから第3のオン信号が出力されるまでの時間とを、フィルタ回路が有する共振周期Tの長さに正比例して変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体スイッチング素子のスイッチング動作に起因して生じるサージ電圧を抑制することを可能にする電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、交流電動機を駆動する場合、直流電源の電圧を電圧型PWMインバータで正弦波電圧と等価なパルス電圧列(スイッチング周波数以上の成分を取り除くと正弦波となる電圧波形)に変換し、このパルス幅変調された正弦波状の電圧が電動機に印加される。図12は、このような方式で電動機を駆動するシステムの概略構成図である。図12において、1は直流電源、2は直流電源1に接続された三相電圧型PWMインバータ(以下、単にインバータともいう。)、3はインバータ2の半導体スイッチング素子をオンオフさせるための信号を生成する制御装置、4はインバータ2で駆動される電動機である。
【0003】
インバータ2は、半導体スイッチング素子SuとSxを直列に接続したU相、SvとSyを直列に接続したV相およびSwとSzを直列に接続したW相とからなる三相のブリッジで構成されている。
【0004】
インバータ2と電動機4とは配線で接続され、この配線には抵抗成分とインダクタンス成分とが存在する。さらに、インバータ2と電動機4と間の各相の配線間および各相の配線と大地との間には浮遊容量が存在する。図12において、Lsはインバータ2と電動機4との間の配線のインダクタンスを示し、Csは各相の配線と大地または基準電位間の浮遊容量を示す。なお、各相の配線などが有する抵抗成分はその記載を省略している。
【0005】
ここで、直流電源1の正側端子をP、負側端子をNとする。また、インバータ2の半導体スイッチング素子SuとSxの接続中点をU、SvとSyの接続中点をV、SwとSzの接続中点をWとする。また、電動機4の三相入力端子をそれぞれU1,V1,W1とする。
【0006】
このような電動機駆動システムにおいて、制御装置3は、インバータ2の出力電圧指令を直流電源1の電圧で正規化した正弦波信号(変調信号)と所定の三角波信号(キャリア信号)との大小比較をするパルス幅変調演算を行って、パルス幅変調された信号(以下、PWM信号という。)を生成する。次に、生成したPWM信号に基づいて、インバータ2内の半導体スイッチング素子Su〜Sw,Sx〜Szをオンオフ制御するための制御信号を生成する。インバータ2は、制御装置3により生成された制御信号に従って半導体スイッチング素子Su〜Sw,Sx〜Szのオンオフ状態を切り換え、直流電源1の電圧をパルス幅変調された矩形波状のパルス電圧列に変換する。パルス幅変調された矩形波状のパルス電圧列は、インバータ2の出力端子U,V,W間に出力され、配線を介して電動機4の入力端子U1,V1,W1に印加される。
【0007】
ところで、図12に示すようにインバータ2と電動機4との間の配線には、インダクタンスLsと浮遊容量Csが存在する。パルス幅変調された矩形波状のパルス電圧列がこのインダクタンスLsと浮遊容量Csとで構成されるLC回路に印加されると、インバータ2とLC回路との間で共振現象が生じる。
【0008】
図13は、インバータ2の半導体スイッチング素子Suがオンオフ動作をしたときに、電動機4の入力端子U1−V1間に生じる共振電圧を示した図である。以下、各端子の電位基準点は、図12のN点とする。
【0009】
半導体スイッチング素子Suの制御信号がLowからHighに変化すると、半導体スイッチング素子Suがオフ状態からオン状態に変化する。半導体スイッチング素子Suがオフ状態からオン状態に変化すると、インバータ2のU端子電圧が0[V]から直流電源1の電圧Ed[V]に変化する。このインバータ2のU端子電圧は、電動機4の入力端子U1に印加される。このとき、インバータ2とインダクタンスLsと浮遊容量Csの間でLC共振が発生し、電動機4のU1−V1端子間には共振電圧が印加される。
【0010】
この共振電圧は、インバータ2と電動機4との間の配線などが有する抵抗成分(図示せず。)により時間とともに減衰振動するサージ電圧となるが、その最大値は、直流電源1の電圧Ed[V]の約2倍に達する。そして、この過大なサージ電圧およびその時間変化率dv/dtは、電動機4の絶縁破壊を引き起こすことが知られている。
【0011】
このような過大なサージ電圧による電動機の絶縁破壊を防止する方策として、電動機の入力端子部にダイオードブリッジで構成された整流器とその直流端子の両端にコンデンサと抵抗を並列接続してなるサージ電圧抑制装置が提案されている(例えば特許文献1参照。)。また、これを改良したものとして、整流器の直流端子に接続した抵抗に流れる電流を半導体スイッチング素子で制御するサージ電圧抑制装置が提案されている(例えば特許文献2参照。)。また、整流器の直流端子をインバータの入力端子に接続してサージ電圧のエネルギーを電源に回生するサージ電圧抑制方式などが提案されている(例えば特許文献3参照。)。また、インバータと電動機との間にリアクトルを接続し、このリアクトルに抵抗とコンデンサの直列体を並列接続するサージ電圧抑制方法が提案されている(例えば特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8−23682号公報
【特許文献2】特開2006−115667号公報
【特許文献3】特開2010−136564号公報
【特許文献4】特開2007−166708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前記方策では、サージ電圧を抑制するために整流器、抵抗、コンデンサなどからなるサージ電圧抑制装置や、リアクトル、抵抗、コンデンサからなるサージ電圧抑制回路を追加する必要があり、装置の大型化、高価格化を招くことになる。
【0014】
本発明は、このような従来のサージ電圧抑制装置が有していた問題を解決しようとするものであり、その目的は、特別な部品を追加することなく、または最小限の部品の追加により、電動機などの負荷に印加されるサージ電圧を抑制することができる電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、半導体スイッチング素子をオンオフ動作させて直流電圧をパルス列の電圧に変換するとともに出力部に設けられたリアクトルとコンデンサとからなるフィルタ回路により前記パルス列からなる電圧の波形整形を行う電力変換装置において、前記電力変換装置の出力端から出力される前記パルス電圧は第1のパルス電圧と第2のパルス電圧と第3のパルス電圧とで構成されており、前記第1のパルス電圧は前記フィルタ回路が有する共振周期の1/6の時間(以下、時間T1ともいう。)幅を有する電圧であり、前記第2のパルス電圧は前記第1のパルス電圧が出力されてから前記時間T1の2倍の時間(以下、時間T2ともいう。)が経過した後に出力される電圧であり、前記第3のパルス電圧は前記第2のパルス電圧が零になってから前記時間T1が経過した後に前記時間T1の間出力される電圧であり、さらに、前記第1のパルス電圧が出力されている時間T1と、前記第1のパルス電圧が出力されてから前記第2のパルス電圧が出力されるまでの時間T1と、前記第2のパルス電圧が零になってから前記第3のパルス電圧が出力されるまでの時間T1と、前記第3のパルス電圧が出力されている時間T1とを、前記フィルタ回路が有する共振周期の長さ、前記リアクトルのインダクタンス値、前記リアクトルに流れる電流値、前記電流値から定まる前記リアクトルのインダクタンス値のいずれかの大きさに応じて調節することを課題の解決手段とするものである。
【0016】
本発明により、電力変換装置から出力されるパルス電圧の立ち上がり部分は、上記した第1のパルス電圧と第2のパルス電圧とで構成されるので、前記パルス電圧の立ち上がり波形は、第1のパルス電圧の立ち上り時と立下り時および第2のパルス電圧の立ち上り時にフィルタ回路で発生する共振電圧が合成された電圧であり、電圧の振動成分が打消された波形となる。
【0017】
電力変換装置から出力されるパルス電圧の立下がり部分は、上記した第2のパルス電圧と第3のパルス電圧とで構成されるので、前記パルス電圧の立下がり波形は、第2のパルス電圧の立下り時および第3のパルス電圧の立ち上り時と立下り時にフィルタ回路で発生する共振電圧が合成された電圧であり、電圧の振動成分が打消された波形となる。
【0018】
その結果、電力変換装置から出力されるパルス電圧の立ち上がり時および立下り時において、電力変換装置の出力端に発生するサージ電圧を抑制することができるので、電動機などの負荷の入力端におけるLC共振の発生を防止でき、電動機などの負荷に印加されるサージ電圧を抑制することができる。
【0019】
さらに、時間T1を、前記リアクトルのインダクタンス値の平方根、前記リアクトルに流れる電流値に基づいて定めた比率、前記電流値から導出される前記リアクトルのインダクタンス値の平方根のいずれかに正比例して調節するので、より効果的に電力変換装置の出力端に生じるサージ電圧を抑制することができる。
【0020】
また、電力変換装置から出力されるパルス電圧を、第3のパルス電圧を含まず、第1のパルス電圧と第2のパルス電圧とで構成するものとすれば、電力変換装置から出力されるパルス電圧の立ち上り時に生じるサージ電圧のみを抑制することができる。
【0021】
また、電力変換装置から出力されるパルス電圧を、第1のパルス電圧を含まず、第2のパルス電圧と第3のパルス電圧とで構成するものとすれば、電力変換装置から出力されるパルス電圧の立下り時に生じるサージ電圧のみを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る電力変換装置は、半導体スイッチング素子をオン状態に移行させるとき、半導体スイッチング素子をオフ状態から時間T1の間オン→時間T1の間オフ→オンと動作させ、半導体スイッチング素子をオフ状態に移行させるときは、半導体スイッチング素子をオン状態から時間T1の間オフ→時間T1の間オン→オフと動作させるとともに、この時間T1をフィルタ回路の共振周期の1/6の時間となるように調節するので、半導体スイッチング素子がオンオフ動作する時にフィルタ回路で発生する共振電圧が合成されて、電力変換装置の出力端に出力される電圧の振動成分を打消すことができる。その結果、電動機などの負荷の入力端に生じるサージ電圧を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態を説明するための図である。
【図2】(a)PWM信号Psuを説明するための図である。(b)制御信号Gsuの構成を説明するための図である。
【図3】(a)PWM信号Psuを説明するための図である。(b)制御信号Gsuの構成を説明するための図である。(c)U−V間電圧波形を説明するための図である。(d)第1のステップ電圧波形を説明するための図である。(e)第2のステップ電圧波形を説明するための図である。(f)第3のステップ電圧波形を説明するための図である。(g)各ステップ電圧により生じる共振電圧波形を説明するための図である。(h)U1−V1間電圧波形を説明するための図である。
【図4】(a)PWM信号Psuを説明するための図である。(b)制御信号Gsuの構成を説明するための図である。(c)U−V間電圧波形を説明するための図である。(d)第4のステップ電圧波形を説明するための図である。(e)第5のステップ電圧波形を説明するための図である。(f)第6のステップ電圧波形を説明するための図である。(g)各ステップ電圧により生じる共振電圧波形を説明するための図である。(h)U1−V1間電圧波形を説明するための図である。
【図5】(a)半導体スイッチング素子のオンオフ信号を生成する制御装置の一例を説明するための図である。(b)同図(a)の各ブロックの入出信号の関係を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】リアクトルのインダクタンス値と電流との関係を説明するための図である。
【図7】(a)PWM信号Psuを説明するための図である。(b)制御信号Gsuの他の構成を説明するための図である。
【図8】(a)PWM信号Psuを説明するための図である。(b)制御信号Gsuの他の構成を説明するための図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る電力変換装置を説明するための図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る電力変換装置を説明するための図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る電力変換装置を説明するための図である。
【図12】従来技術に係る電力変換装置を説明するための図である。
【図13】図12に示す電力変換装置で電動機を駆動したときの電動機入力端子に発生するサージ電圧を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図11に基づいて詳細に説明する。なお、図1〜図11において、図12に示した構成要素と共通する構成要素には同符号を付し、その説明を省略する。
【0025】
図1は本発明に係る第1の実施形態を説明するための図である。図1において、直流電源1、インバータ2、電動機4、配線のインダクタンスLsおよび浮遊容量Csは、図12に示した構成要素と同じである。また、電動機4はインバータ2から電力の供給を受ける負荷である。
【0026】
図1の制御装置3aは、下記で詳述する制御信号を生成して、インバータ2の半導体スイッチング素子をオンオフ動作させる。また、インバータ2と電動機4との間にはリアクトルLfとコンデンサCfとからなるフィルタ回路が設けられるとともに、フィルタ回路と電動機4との間には電動機4に流れる電流を検出するための電流検出器5が設けられている。
【0027】
電流検出器5から出力される信号は、制御装置3aに入力され、インバータ2が電動機4に流す電流を調節するための出力電圧指令を算出するために用いられる。
制御装置3aは、インバータ2の出力電圧指令を直流電源1の電圧で正規化した正弦波信号(変調信号)と所定の三角波信号(キャリア信号)との大小比較をするパルス幅変調演算を行い、インバータ2内の半導体スイッチング素子Su〜Sw,Sx〜Szをオンオフ制御するための制御信号Gsu〜Gsw,Gsx〜Gszを生成する。制御信号Gsu〜Gsw,Gsx〜GszがHighのとき、半導体スイッチング素子Su〜Sw,Sx〜Szはオンし、制御信号Gsu〜Gsw,Gsx〜GszがLowのとき、半導体スイッチング素子Su〜Sw,Sx〜Szはオフする。
【0028】
制御装置3aから出力される制御信号にしたがって半導体スイッチング素子Su〜Sw,Sx〜Szがオンオフの動作を行い、インバータ2から三相交流電圧(パルス幅変調された矩形波状のパルス電圧列)が出力される。
【0029】
フィルタ回路のリアクトルLfはインバータ2の入力端子U,V,Wと電動機4の入力端子U1,V1,W1との間に挿入される。また、フィルタ回路のコンデンサCfは、その各一端がリアクトルLfと電動機4の入力端子U1、V1,W1との間に接続され、それぞれの他端は一括して直流電源1のN端子側に接続される。
【0030】
インバータから出力されるパルス変調された矩形波状のパルス電圧列は、このフィルタ回路によりほぼ正弦波状の三相交流電圧に波形整形されて電動機4に印加される。
ここで、リアクトルLfのインダクタンス値およびコンデンサCfのキャパシタンス値を配線のインダクタンスLsのインダクタンス値および浮遊容量Csのキャパシタンス値の概ね10倍の値またはこれ以上の値に選べば、インダクタンスLsと浮遊容量Csとで構成されるLC回路に印加される電圧の立ち上がりと立ち下がりは緩やかになる。その結果、インダクタンスLsと浮遊容量Csとで構成されるLC回路の共振を抑制することができる。
【0031】
しかし、挿入したフィルタ回路とインバータ2との間で共振が発生することが考えられる。フィルタ回路の共振周期Tは、リアクトルLfのインダクタンス値L[H]およびコンデンサCfのキャパシタンス値C[F]で定まり、T=2π√(LC)[s]である。
【0032】
そこで、制御装置3aは、生成する各半導体スイッチング素子の制御信号を、それぞれ第1のオン信号G1、第2のオン信号G2及び第3のオン信号G3で構成する。
例えば、制御装置3aは、半導体スイッチング素子Suの制御信号Gsuを図2(a)、(b)のように構成する。図2(a)は、変調信号とキャリア信号との大小比較を行って得られるPWM信号Psuを示す図である。図2(b)は、PWM信号Psuに基づいて生成される制御信号Gsuである。
【0033】
図2(b)において、制御信号Gsuの第1のオン信号G1は、PWM信号PsuがLowからHighになるタイミングで出力される。この第1のオン信号G1は時間T1の期間出力される。時間T1は、リアクトルLfとコンデンサCfとで構成されるフィルタ回路の共振周期Tの1/6の時間である。第2のオン信号G2は、第1のオン信号がオフしてから時間T1を経過した後に出力される。すなわち、第2のオン信号は、PWM信号PsuがLowからHighになってから時間T2(T2=T1×2)が経過した後に出力される。第3のオン信号G3は、PWM信号PsuがHighからLowになってから時間T1を経過した後に出力される。この第3のオン信号G3は時間T1の期間出力される。
【0034】
制御装置3aは、他の半導体スイッチング素子の制御信号も、上記半導体スイッチング素子Suの制御信号Gsuと同じように構成する。
なお、図1において上下直列に接続される各相の半導体スイッチング素子(U相のSuとSx,V相のSvとSy,W相のSwとSz)が同時にオンしないように、上下直列に接続される各相の半導体スイッチング素子の制御信号には休止期間が設けられている。
【0035】
次に、インバータ2は、制御装置3で生成された制御信号に従って半導体スイッチング素子Su〜Sw,Sx〜Szのオンオフ状態を切り換え、直流電源1の電圧をパルス幅変調された矩形波状のパルス電圧列に変換する。パルス幅変調された矩形波状のパルス電圧列は、インバータ2の出力端子U,V,W間に出力され、配線を介して電動機4の入力端子U1,V1,W1に印加される。
【0036】
図3(a)〜(h)は、図1に示した電動機駆動システムにおいて、インバータ2の半導体スイッチング素子Suがオン状態に移行するときにサージ電圧が抑制される原理を示す図である。各端子の電位基準点は図1のN点である。
【0037】
まず、制御装置3aは、半導体スイッチング素子SuのPWM信号Psuを生成する。PWM信号Psuは、U相の出力電圧指令を直流電源1の電圧で正規化した正弦波信号(変調信号)と三角波信号(キャリア信号)との大小比較をすることにより得られる。
【0038】
次に、制御装置3aは、PWM信号PsuがLow(半導体スイッチング素子がオフ)からHigh(半導体スイッチング素子がオン)に立ち上がるタイミングを起点にして時間T1の間、第1のオン信号G1を出力する。その後、同じ時間T1の間オフ信号を出力した後、PWM信号PsuがLowになるまで第2のオン信号G2を出力する。第3のオン信号は、半導体スイッチング素子Suがオン状態からオフ状態に移行するときにサージ電圧を抑制するための信号であるため、その詳細は後述することとし、ここではその説明を省略する。
【0039】
半導体スイッチング素子Suをオフ状態からオン状態に移行させるための制御信号Gsuは、上記第1のオン信号G1と第2のオン信号G2とで構成される。
ここで、第1のオン信号G1が立ち上がるタイミングを第1のタイミング、第1のオン信号G1が立ち下がるタイミングを第2のタイミング、第2のオン信号G2が立ち上がるタイミングを第3のタイミングとする。
【0040】
半導体スイッチング素子Suは、オフ状態から、上記制御信号Gsuにしたがって、第1のタイミングでオンの状態、第2のタイミングでオフの状態、第3のタイミングでオンの状態に順次移行する。その結果、インバータ2のU−V端子間電圧は、制御信号Gsuに対応して、0[V]→Ed[V]→0[V]→Ed[V]と変化する(図3(c)参照。)。
【0041】
ここで、第1,第2,第3のタイミングにおける電圧の変化を、それぞれ第1のステップ電圧、第2のステップ電圧、第3のステップ電圧とする。
このインバータ2の端子U−V間に出力される電圧は、図3(d)〜(f)に示す第1,第2,第3のタイミングで振幅値がEd[V]または−Ed[V]に変化する第1のステップ電圧、第2のステップ電圧、第3のステップ電圧の合成電圧として捉えることができる。第1のステップ電圧は、初期電圧0[V]から第1のタイミングで正側振幅値Ed[V]となる矩形波電圧である。第2のステップ電圧は、初期電圧0[V]から第2のタイミングで負側振幅値−Ed[V]となる矩形波電圧である。第3のステップ電圧は、初期電圧0[V]から第3タイミングで正側振幅値Ed[V]となる矩形波電圧である。
【0042】
ところで、第1から第3のタイミングにおける電圧のステップ変化は、図1に示したリアクトルLfとコンデンサCfとからなるフィルタ回路の共振を引き起こす。図3(g)に示すように、第1のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr1は、初期電圧を0[V]とし、第1のタイミングで中心電圧Ed[V]、振幅値Ed[V]となる正弦波電圧である。第2のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr2は、初期電圧を0[V]とし、第2のタイミングで中心電圧−Ed[V]、振幅Ed[V]となる正弦波電圧である。第3のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr3は、初期電圧を0[V]とし、第3のタイミングで中心電圧Ed[V]、振幅Ed[V]となる正弦波電圧である。
【0043】
また、リアクトルLfのインダクタンス値をL[H]、コンデンサCfのキャパシタンス値をC[F]とすると、第1から第3のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr1〜Vr3の周期TはT=2π√(LC)[s]で表される。したがって、共振周波数fは1/T[Hz]であり、角周波数ωは2πf[rad/s]となる。
【0044】
ここで、時間T1を共振電圧Vr1〜Vr3の周期Tの1/6の時間に設定すれば、第2のステップ電圧と第3のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr2,Vr3は、第1のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr1に対して、それぞれ位相が(4/3)π[rad]遅れ、(2/3)π[rad]遅れの関係になる。
【0045】
したがって、第1から第3のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr1〜Vr3は、Vr1=Ed{1+sin[ωt]}、Vr2=−Ed{1+sin[ωt−(4π/3)]}、Vr3=Ed{1+sin[ωt−(2π/3)]}で表される。
【0046】
上記から、第1のタイミングから第3のタイミングまでの間に電動機4のU1−V1端子に生じる電圧は、第1のステップ電圧によって生じた共振電圧Vr1と第2のステップ電圧によって生じた共振電圧Vr2とを合成した電圧となる(図3(h)参照。)。したがって、この期間に電動機4のU1−V1端子に生じる電圧は、図12に示した共振電圧よりも緩やかな立ち上がりを有する電圧となる。また、第3のタイミング以降は、共振電圧Vr1〜Vr3を合成した電圧である。したがって、第3のタイミング以降に電動機4のU1−V1端子に生じる電圧は、その大きさがEd[V]の直流となる(図3(h)参照。)。
【0047】
以上から、本発明に係る電力変換装置では、半導体スイッチング素子がオフ状態からオン状態に移行しても、電動機4のU1−V1端子間電圧は、0[V]から直流電源1の電圧Ed[V]まで緩やかに立ち上がる電圧となる。また、電動機4のU1−V1端子間には、振動が抑制された電圧が印加される。
【0048】
次に、図1に示した電動機駆動システムにおいて、インバータ2の半導体スイッチング素子Suがオフ状態に移行するときにサージ電圧が抑制される原理を、図4(a)〜(h)を用いて説明する。各端子の電位基準点は、図3の場合と同様、図1のN点である。
【0049】
まず、制御装置3aは、半導体スイッチング素子SuのPWM信号Psuを生成する。PWM信号Psuは、U相の出力電圧指令を直流電源1の電圧で正規化した正弦波信号(変調信号)と三角波信号(キャリア信号)との大小比較をすることにより得られる。
【0050】
制御装置3aは、PWM信号PsuがHigh(半導体スイッチング素子がオン)からLow(半導体スイッチング素子がオフ)に立ち下がるタイミングで第2のオン信号G2をオフする。そして、第2のオン信号G2をオフしてから時間T1を経過した後に第3のオン信号G3を出力する。第3のオン信号G3は時間T1の間出力される。
【0051】
半導体スイッチング素子Suをオフ状態に移行させるための制御信号Gsuは、第2のオン信号G2と第3のオン信号G3に挟まれたオフ期間と第3のオン信号G3とで構成される。
【0052】
ここで、第2のオン信号G2が立ち下がるタイミングを第4のタイミング、第3のオン信号G3が立ち上がるタイミングを第5のタイミング、第3のオン信号が立ち下がるタイミングを第6のタイミングとする。
【0053】
半導体スイッチング素子Suは、オン状態から、上記制御信号Gsuにしたがって、第4のタイミングでオフの状態、第5のタイミングでオンの状態、第6のタイミングでオフの状態に順次移行する。その結果、インバータ2のU−V端子間電圧は、制御信号Gsuに対応して、Ed[V]→0[V]→Ed[V]→0[V]と変化する。(図4(c)参照。)。
【0054】
ここで、第4,第5,第6のタイミングにおける電圧の変化を、それぞれ第4のステップ電圧、第5のステップ電圧、第6のステップ電圧とする。
図4(c)〜(f)に示すように、インバータ2の端子U−V間に出力される電圧は、第4,第5,第6のタイミングでEd[V]または−Ed[V]に変化する第4のステップ電圧、第5のステップ電圧、第6のステップ電圧の合成電圧として捉えることができる。第4のステップ電圧は、初期電圧Ed[V]から第1のタイミングで0[V]となる矩形波電圧である。第5のステップ電圧は、初期電圧−Ed[V]から第2のタイミングで0[V]となる矩形波電圧である。第6のステップ電圧は、初期電圧Ed[V]から第3タイミングで0[V]となる矩形波電圧である。
【0055】
そして、第4から第6のタイミングにおける電圧のステップ変化は、図1に示したリアクトルLfとコンデンサCfとからなるフィルタ回路の共振を引き起こす。第4のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr4は、初期電圧をEd[V]とし、第4のタイミングで中心電圧0[V]、振幅Ed[V]となる正弦波電圧である。第5のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr5は、初期値を−Ed[V]とし、第5のタイミングで中心電圧0[V]、振幅Ed[V]となる正弦波電圧である。第6のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr6は、初期電圧をEd[V]とし、第6のタイミングで中心電圧0[V]、振幅Ed[V]となる正弦波電圧である(図4(g)参照。)。
【0056】
また、第4から第6のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr4〜Vr6の周期TはT=2π√(LC)[s]である。したがって、共振周波数fは1/T[Hz]であり、角周波数ωは2πf[rad/s]となる。
【0057】
ここで、時間T1をVr4〜Vr6の周期Tの1/6に設定すれば、第5のステップ電圧と第6のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr5,Vr6は、第4のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr4に対し、それぞれ位相が(4/3)π[rad]遅れ、(2/3)π[rad]遅れの関係になる。
【0058】
したがって、第4から第6のステップ電圧によって生じる共振電圧Vr4〜Vr6は、
Vr4=Edsin[ωt]、Vr5=Edsin[ωt−(4π/3)]、Vr6=Edsin[ωt−(2π/3)]で表される。
【0059】
上記から、第4のタイミングから第6のタイミングまでの間に電動機4のU1−V1端子に生じる電圧は、第4のステップ電圧によって生じた共振電圧Vr4と第5のステップ電圧によって生じた共振電圧Vr5が合成された電圧となる(図4(h)参照。)。したがって、この期間に電動機4のU1−V1端子に生じる電圧は、図12に示した共振電圧よりも緩やかな立ち下がりを有する電圧となる。また、第6のタイミング以降は、共振電圧Vr4〜Vr6が合成された電圧である。したがって、第6のタイミング以降に電動機4のU1−V1端子に生じる電圧は、その大きさが0[V]の直流となる(図4(h)参照。)。
【0060】
以上から、本発明に係る電力変換装置では、半導体スイッチング素子がオン状態からオフ状態に移行しても、電動機4のU1−V1端子間電圧は、直流電源1の電圧Ed[V]から0[V]まで緩やかに立ち下がる電圧となる。また、電動機4のU1−V1端子間に印加される電圧は、振動が抑制される。
【0061】
次に、制御装置3aについて、図5(a)および図5(b)を用いて説明する。図5(a)は、制御装置3aにおいて、PWM信号Psuから制御信号Gsuを生成する論理の一例を示すブロック図である。また、図5(b)は、図5(a)のブロック図を構成する各ブロックの入出力信号の関係を示すタイミングチャートである。
【0062】
図5(a)において、31はGu1生成部、32はGu2生成部、33は排他的論理演算部XORである。この排他的論理演算部XORの出力が半導体スイッチング素子の制御信号Gsuとなる。
【0063】
まず、Gu1生成部31は、PWM信号Psuを入力とし、この入力信号PsuがLowからHighに変化したとき、時間T1の間Highとなる信号Gu1を出力する。また、Gu1生成部31は、入力信号PsuがHighからLowに変化したとき、時間T1だけHighとなる信号Gu1を出力する。
【0064】
次に、Gu2生成部32は、同じくPWM信号Psuを入力とし、この入力信号PsuがLowからHighに変化したとき、時間T2だけ遅れてLowからHighに変化する信号Gu2を出力する。時間T2は時間T1の2倍の時間である。また、Gu2生成部32は、入力信号PsuがHighからLowに変化したとき、時間T2だけ遅れてHighからLowに変化する信号Gu2を出力する
排他的論理演算部33は、Gu1生成部およびGu2生成部からの制御信号Gu1とGu2とを入力として排他的論理和演算を行い、いずれか1つの入力がHighのときのみHighとなる制御信号Gsuを出力する。したがって、制御信号Gsuは、PWM信号PsuがLowからHighに変化したとき、時間T1の間Highとなり、その後Lowとなって、時間T1(=T2−T1)を経過した後に再度Highとなる。また、制御信号Gsuは、PWM信号PsuがHighからLowに変化したとき、時間T1の間Lowとなり、その後時間T1の間Highとなった後に再度Lowとなる。
【0065】
なお、本発明に係る制御装置3aは、従来技術の制御装置3の後段に、電子回路を用いて構成することができるので、電力変換装置の大型化を招くことはない。
なお、図5(a)に示した制御装置3aは制御信号Gsuを得るための論理の一例であり、他の論理によって図2に示した制御信号Gsuを得ることができれば、本発明に係る効果を発揮することができるのは明らかである。したがって、本発明に係る制御装置3aは、図5(a)に示したブロック図に限定されるものではない。
【0066】
ところで、リアクトルLfとコンデンサCfとからなるフィルタ回路の共振周期TはT=2π√(LC)[s]で表される。すなわち、共振周期TはリアクトルLfのインダクタンス値Lの平方根に正比例する。
【0067】
また、リアクトルLfのインダクタンス値LとリアクトルLfのコイルに流れる電流Ifとの間には図6に示す関係があることが知られている。リアクトルLfの鉄心材料にはフェライト磁石やアモルファス合金に代表される磁性材料が用いられている。このような磁性材料を鉄心に用いたリアクトルは、コイルに流れる電流Ifの値が大きくなるとインダクタンス値Lが低下するという特性を有する。
【0068】
コイルに流れる電流Ifの値が大きくなるにしたがってインダクタンス値Lが変化すると、設定されているフィルタ回路の共振周期Tと実際に発生する共振電圧Vr1〜Vr3,Vr4〜Vr6の周期にずれが生じる。その結果、共振電圧が十分に打消されず、サージ電圧の抑制効果が低減する。
【0069】
そこで、フィルタ回路の共振周期Tの長さに正比例して時間T1,T2を調節し、共振電圧が確実に打消されるようにする必要がある。
フィルタ回路の共振周期Tは、上記のとおりリアクトルLfのインダクタンス値Lの平方根に正比例する。したがって、リアクトルLfのインダクタンス値Lの平方根に正比例するように時間T1,T2を調節すれば、共振電圧が効果的に打消される。また、リアクトルLfのインダクタンス値Lに時間T1,T2の二乗値が正比例するように調節しても、共振電圧が効果的に打消される。
【0070】
リアクトルLfのインダクタンス値Lは、例えば、制御装置3a内に図6に示すリアクトルLfのインダクタンス値Lとコイルに流れる電流値との関係を示すデータテーブルを備えることにより、リアクトルLfに流れる電流値に基づいて求めることができる。
【0071】
リアクトルLfに流れる電流値は、図1に示すように、リアクトルLfとコンデンサCfとからなるフィルタ回路と電動機4との間に設けた電流検出器5で検出された電流値を用いることができる。リアクトルLfに流れる電流のうちコンデンサCfに流れる電流の比率は小さいため、電動機4に流れる電流がリアクトルLfに流れる電流にほぼ一致している。
【0072】
リアクトルに流れる電流をより正確に検出するためには、電流検出器5をインバータ2とリアクトルLfとの間またはリアクトルLfとコンデンサCfとの間に設ければ良い。
また、上記により求めたリアクトルLfのインダクタンス値LとコンデンサCfのキャパシタンス値Cとからフィルタ回路の共振周期Tを算出し、この算出した共振周期Tに正比例して時間T1,T2を調節することもできる。
【0073】
さらに、上記により求めたフィルタ回路の共振周期Tとリアクトルに流れる電流値との相間を示すデータテーブルを予め作成して制御装置3a内に備え、リアクトルLfに流れる電流値に基づいてこのテーブルを参照し、テーブルを参照することにより得られた共振周期に正比例して時間T1,T2を調節することもできる。
【0074】
なお、図7(a),(b)に示すように、制御信号Gsuに第3のオン信号を含まずに、第1のオン信号と第2のオン信号とで構成することができる。制御信号Gsuをこのように構成すれば、半導体スイッチング素子がオンするときに発生するサージ電圧のみを抑制することができる。
【0075】
また、図8(a),(b)に示すように、制御信号Gsuに第1のオン信号を含まずに、第2のオン信号と第3のオン信号とで構成することができる。制御信号Gsuをこのように構成すれば、半導体スイッチング素子がオフするときに発生するサージ電圧のみを抑制することができる。
【0076】
次に、図9は、本発明の他の実施形態を説明するための図である。本実施形態において、図1で示した実施形態と異なる点は、コンデンサCfのそれぞれの他端を一括して直流電源1のP端子側に接続しているところである。
【0077】
リアクトルLfのインダクタンス値L、コンデンサCfのキャパシタンス値Cおよび制御装置3aにおける時間T1とT2は、図1で示した実施形態と同じである。
このようにフィルタ回路を接続しても、時間T1,T2を調節することによって共振電圧を効果的に打消すことができ、フィルタ回路の共振を抑制することができる。その結果、電動機4の入力端子に生じるサージ電圧を抑制することができる。
【0078】
次に、図10は、本発明のさらに他の実施形態を説明するための図である。本実施形態において、図1で示した実施形態と異なる点は、直流電源1aと直流電源1bとを直列に接続して直流電源を構成し、コンデンサCfのそれぞれの他端を一括して直流電源1aと直流電源1bの直列接続点に接続しているところである。リアクトルLfのインダクタンス値L、コンデンサCfのキャパシタンス値Cおよび制御装置3aにおける時間T1とT2は、図1で示した実施形態と同じである。
【0079】
このようにフィルタ回路を接続しても、時間T1,T2を調節することによって共振電圧を効果的に打消すことができ、フィルタ回路の共振を抑制することができる。その結果、電動機4の入力端子に生じるサージ電圧を抑制することができる。
【0080】
次に、図11は、本発明を単相電圧型PWMインバータに適用した実施形態を説明するための図である。本実施形態において、制御装置3bは、インバータ2b内の半導体スイッチング素子の制御信号を第1のオン信号と第2のオン信号と第3のオン信号で構成する。このように、本発明を単相電圧型PWMインバータに適用しても、時間T1,T2を調節することによって共振電圧を効果的に打消すことができ、フィルタ回路の共振を抑制することができる。その結果、電動機4bの入力端子に生じるサージ電圧を抑制することができる。
【0081】
なお、上記した実施形態において、サージ電圧を抑制するために追加する電気部品は、リアクトルLfおよびコンデンサCfであり、従来技術のように、さらにサージ電圧のエネルギーを消費する抵抗や、ダイオードブリッジ回路などを追加する必要はない。したがって、電力変換装置の大型化、高価格化を抑制することができる。
【0082】
また、上述した本発明の実施形態では、三相および単相の電圧型PWMインバータによる電動機駆動システムを例にとって本発明の作用および効果を説明したが、インバータの負荷は電動機に限られず、電動機以外の電気回路または電気部品を負荷とするインバータであっても、同様の作用および効果を発揮することができる。また、インバータは2レベルのインバータに限られず、3レベル以上の多レベルのインバータであってもよい。
【0083】
さらに、変調方式もパルス幅変調方式に限られず、矩形波状の電圧を負荷に対して出力するための方式であればよい。
【符号の説明】
【0084】
1,1a,1b・・・直流電源、2,2b・・・インバータ、3,3a,3b・・・制御装置、4,4b・・・電動機、5・・・電流検出器、31・・・Gu1生成部、32・・・Gu2生成部、33・・・排他的論理演算部、Su〜Sw,Sx〜Sz・・・半導体スイッチング素子、Ls・・・配線のインダクタンス、Cs・・・配線の浮遊容量、Lf・・・リアクトル、Cf・・・コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体スイッチング素子をオンオフ動作させて直流電圧をパルス列の電圧に変換するとともに出力部に設けられたリアクトルとコンデンサとからなるフィルタ回路により前記パルス列からなる電圧の波形整形を行う電力変換装置において、
前記半導体スイッチング素子のオンオフ動作によって生成されるパルス電圧は、第1のパルス電圧と第2のパルス電圧と第3のパルス電圧とで構成されており、
前記第1のパルス電圧は、前記フィルタ回路が有する共振周期の1/6の時間幅を有する電圧であり、
前記第2のパルス電圧は、前記第1のパルス電圧が出力されてから前記第1のパルス電圧の時間幅の2倍の時間が経過した後に出力される電圧であり、
前記第3のパルス電圧は、前記第2のパルス電圧が零になってから前記共振周期の1/6の時間が経過した後に前記共振周期の1/6の時間の間出力される電圧であり、
さらに、前記第1のパルス電圧が出力されている時間と、前記第1のパルス電圧が出力されてから前記第2のパルス電圧が出力されるまでの時間と、前記第2のパルス電圧が零になってから前記第3のパルス電圧が出力されるまでの時間と、前記第3のパルス電圧が出力されている時間とが、前記フィルタ回路が有する共振周期の長さに比例して変化する
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記第1のパルス電圧が出力されている時間と、前記第1のパルス電圧が出力されてから前記第2のパルス電圧が出力されるまでの時間と、前記第2のパルス電圧が零になってから前記第3のパルス電圧が出力されるまでの時間と、前記第3のパルス電圧が出力されている時間とが、前記フィルタ回路が有する共振周期の長さに代えて、前記リアクトルのインダクタンス値の平方根に正比例して変化することを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記第1のパルス電圧が出力されている時間と、前記第1のパルス電圧が出力されてから前記第2のパルス電圧が出力されるまでの時間と、前記第2のパルス電圧が零になってから前記第3のパルス電圧が出力されるまでの時間と、前記第3のパルス電圧が出力されている時間とが、前記フィルタ回路が有する共振周期の長さに代えて、前記リアクトルに流れる電流値に基づいて定められた所定の比率に正比例して変化することを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記第1のパルス電圧が出力されている時間と、前記第1のパルス電圧が出力されてから前記第2のパルス電圧が出力されるまでの時間と、前記第2のパルス電圧が零になってから前記第3のパルス電圧が出力されるまでの時間と、前記第3のパルス電圧が出力されている時間とが、前記フィルタ回路が有する共振周期の長さに代えて、前記リアクトルに流れる電流値から定まる前記リアクトルのインダクタンス値の平方根に比例して変化することを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
前記電力変換装置の出力端から出力される前記パルス電圧には前記第3のパルス電圧が含まれないことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記電力変換装置の出力端から出力される前記パルス電圧には前記第1のパルス電圧が含まれないことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記電力変換装置は半導体スイッチング素子が二相ブリッジに構成されて単相交流電圧を出力することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記電力変換装置は半導体スイッチング素子が三相ブリッジに構成されて三相交流電圧を出力することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
半導体スイッチング素子をオンオフ動作させて直流電圧をパルス列の電圧に変換するとともに出力部に設けられたリアクトルとコンデンサとからなるフィルタ回路により前記パルス列からなる電圧の波形整形を行う電力変換装置の制御装置であって、
前記電力変換装置からパルス電圧を出力させるために前記制御装置が生成する前記半導体スイッチング素子のオン信号は、第1のオン信号と第2のオン信号と第3のオン信号とで構成されており、
前記第1のオン信号は、前記フィルタ回路の共振周期の1/6の時間幅を有する信号であり、
前記第2のオン信号は、前記第1のオン信号が出力されてから前記第1のオン信号の時間幅の2倍の時間が経過した後に出力される信号であり、
前記第3のオン信号は、前記第2のオン信号がオフしてから前記共振周期の1/6の時間が経過した後に前記共振周期の1/6の時間出力される信号であり、
さらに、前記制御装置は、前記第1のオン信号が出力されている時間と、前記第1のオン信号が出力されてから前記第2のオン信号が出力されるまでの時間と、前記第2のオン信号がオフしてから前記第3のオン信号が出力されるまでの時間と、前記第3のオン信号が出力されている時間とを、前記フィルタ回路が有する共振周期の長さに正比例して変化させる
ことを特徴とする制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の制御装置であって、
前記第1のオン信号が出力されている時間と、前記第1のオン信号が出力されてから前記第2のオン信号が出力されるまでの時間と、前記第2のオン信号がオフしてから前記第3のオン信号が出力されるまでの時間と、前記第3のオン信号が出力されている時間とを、前記フィルタ回路が有する共振周期の長さに代えて、前記リアクトルのインダクタンス値の平方根に正比例して変化させることを特徴とする制御装置。
【請求項11】
請求項9に記載の制御装置であって、
前記第1のオン信号が出力されている時間と、前記第1のオン信号が出力されてから前記第2のオン信号が出力されるまでの時間と、前記第2のオン信号がオフしてから前記第3のオン信号が出力されるまでの時間と、前記第3のオン信号が出力されている時間とを、前記フィルタ回路が有する共振周期の長さに代えて、前記リアクトルに流れる電流値に基づいて定められた所定の比率に正比例して変化させることを特徴とする制御装置。
【請求項12】
請求項9に記載の制御装置であって、
前記リアクトルに流れる電流値から前記リアクトルのインダクタンス値を導出し、
前記第1のオン信号が出力されている時間と、前記第1のオン信号が出力されてから前記第2のオン信号が出力されるまでの時間と、前記第2のオン信号がオフしてから前記第3のオン信号が出力されるまでの時間と、前記第3のオン信号が出力されている時間とを、前記フィルタ回路が有する共振周期の長さに代えて、前記導出したインダクタンス値の平方根に正比例して変化させることを特徴とする制御装置。
【請求項13】
前記半導体スイッチング素子の制御信号には前記第3のオン信号が含まれないことを特徴とする請求項9乃至請求項4のいずれか12項に記載の制御装置。
【請求項14】
前記半導体スイッチング素子の制御信号には前記第1のオン信号が含まれないことを特徴とする請求項9乃至請求項12のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項15】
半導体スイッチング素子をオンオフ動作させて直流電圧をパルス列の電圧に変換するとともに出力部に設けられたリアクトルとコンデンサとからなるフィルタ回路により前記パルス列からなる電圧の波形整形を行う電力変換装置であって、
請求項9乃至請求項14のいずれか1項に記載の制御装置を備えることを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−5586(P2013−5586A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134210(P2011−134210)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】