説明

電力設備位置情報システム

【課題】電力設備に影響をあたえうる火災の発生を迅速かつ適切に案内すること。
【解決手段】所定の防災情報システムを構成する防災情報管理装置との間で通信をおこない、当該防災情報管理装置から火災の発生現場に関する情報を含む火災情報を取得し、取得された火災情報および電力設備の設置位置情報に基づいて、火災の発生現場と当該火災の発生現場から所定範囲内に設置されている電力設備との位置関係を示す位置関係案内情報を生成する。そして、生成された位置関係案内情報を、表示装置に出力するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火災による電力設備の被害を抑制するための対応を支援する電力設備位置情報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
送電線、配電線(以下、電力線と言う)、発電所、変電所(以下、電気所と言う)、通信線などの電力設備のうち、たとえば、家屋などの建設物に近い位置に施設されている電力設備は、当該電力設備の近隣の家屋において火災が発生した場合に当該火災による炎や熱および家屋の倒壊による被害を直接的に被ることがある。また、電力設備のうち、たとえば、山間部に施設されている電力設備は、山間部において山林火災が発生した場合に、火災による炎や熱および樹木の倒壊による被害を直接的に被ることがある。
【0003】
電力設備が火災によって被る被害としては、たとえば、電力線の損壊による電気事故の発生が挙げられる。具体的には、たとえば、電力線直下で火災が発生した場合、電力線が炎焼したり熱によって溶断されたりするなど、電力線が損壊するおそれがある。電力線が損壊することによって電気事故が発生した場合、長時間にわたって電力の供給に支障が発生する。
【0004】
また、電力設備が火災によって被る影響としては、たとえば、電力線が周辺の建設物や樹木に接触することによる電気事故の発生が挙げられる。具体的には、たとえば、電力線周辺で火災が発生した場合、風向・風速などの気象条件によっては電力線温度が過剰に上昇するおそれがある。電線温度が過剰に上昇した場合、電力線の弛度が低下し、自重によって垂れ下がった電力線が建設物や樹木に接触して電気事故が発生するおそれがある。このような、電力線が建設物や樹木に接触することによる電気事故が発生した場合、短時間の供給支障が発生する。
【0005】
従来、上述したような火災による電気事故の未然防止を図るため、圏域消防本部などから火災情報を入手するとともに、収集した情報に基づいて火災現場における電力設備の状況確認および対応をおこなっていた。具体的には、従来、たとえば、火災情報を入手した場合は火災現場へ急行して設備状況を確認し、電気事故のおそれがあると判断した場合は系統切替などの措置を講じるようにしていた。給電運転要則においては、「火災により送電線路の事故発生のおそれがある場合、再閉路装置(H・MRec)を不使用(ロック)とする。」と定められている。
【0006】
火災情報は、あらかじめ圏域消防本部などに提示してある送電線路経過図に基づいておこなわれ、圏域消防本部などによって火災現場が送電線や電気所の近辺であると判断された場合にのみ、圏域消防本部などから制御所へ電話連絡によって火災発生場所の住所が伝えられていた。制御所の当直者は、圏域消防本部などから伝えられた火災発生場所の住所に基づいて、火災による被害の発生が懸念される電力設備を市販の地図を用いて調べていた。
【0007】
また、従来、たとえば、火災や災害等(以下「災害」という)の災害状況や災害地点等に応じた緊急車両の出動計画が登録されており、災害時に当該出動計画から出動する緊急車両を指定する自動出動指定手段と、災害地点を検索する検索手段とを有する指令制御装置と、自動出動指定装置から指定された緊急車両に出動指令等を送信する指令送信装置と、広地域の気象情報を収集する1又は複数の広地域気象情報収集装置と、狭地域の地域気象情報を収集する1又は複数の地域気象情報収集装置と、気象情報及び地域気象情報を表示するモニタとを有し、災害が発生すると、災害地点の地域気象情報をモニタに表示させるようにした技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−203289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来の技術では、圏域消防本部などにおける判断は個人個人の判断能力に依存しているのが現状であり、圏域消防本部などにおける判断には個人差があるため、判断にばらつきがあるという問題があった。また、圏域消防本部などにおける判断には個人差があるため、真に必要な情報の連絡漏れが懸念されるという問題があった。
【0010】
また、上述した従来の技術では、圏域消防本部などから入手する火災情報は火災発生場所の住所のみであるため、実際の火災現場に即して迅速に対応することが難しいという問題があった。具体的には、たとえば、出火当初は送電線や電気所近辺ではない火災現場が、消火活動の遅延や風向・風速などの気象条件により延焼範囲が拡大した場合、電力設備への影響が懸念される。
【0011】
また、上述した従来の技術では、圏域消防本部などから伝えられた火災発生場所の住所に基づいて、制御所の当直者が火災による影響が懸念される電力設備を市販の地図を用いて調べていたため、該当する電力設備を特定するまでに時間を要していたという問題があった。
【0012】
また、上述した従来の技術では、たとえば、火災情報を入手していない状況で火災が原因による電気事故が発生した場合、閉路しなくてもよい送配電路が閉路されるなど、不必要(好ましくない)な再閉路措置がおこなわれることがあるという問題があった。これにより、波及事故回数が増え、電力会社への電気利用者の信頼が低下しかねないという問題があった。
【0013】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、電力設備に影響をあたえうる火災の発生を迅速かつ適切に案内することができる電力設備位置情報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる電力設備位置情報システムは、所定の防災情報システムを構成する防災情報管理装置との間で通信をおこない、当該防災情報管理装置から火災の発生現場に関する情報を含む火災情報を取得する火災情報取得手段と、電力設備の設置位置に関する設置位置情報を記憶する記憶手段と、前記火災情報取得手段によって取得された火災情報および前記記憶手段によって記憶された設置位置情報に基づいて、火災の発生現場と当該火災の発生現場から所定範囲内に設置されている電力設備との位置関係を示す位置関係案内情報を生成する案内情報生成手段と、前記案内情報生成手段によって生成された位置関係案内情報を、表示装置に出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる電力設備位置情報システムは、上記の発明において、前記案内情報生成手段が、前記火災情報取得手段によって取得された火災情報および前記記憶手段によって記憶された設置位置情報に基づいて、火災の発生現場を含む地図あるいは電力系統図における該当位置に、火災の発生現場および当該火災の発生現場から所定範囲内に設置されている電力設備をそれぞれ示す指示情報を重ね合わせた位置関係案内情報を生成することを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる電力設備位置情報システムは、上記の発明において、前記火災情報取得手段によって前記火災情報が取得された場合、気象に関する気象情報を記憶する気象情報管理装置に対して通信をおこない、取得された前記火災情報に基づいて、前記気象情報管理装置から火災発生現場および当該火災発生現場周辺の気象情報を取得する気象情報取得手段と、前記火災情報取得手段によって取得された火災情報および前記気象情報取得手段によって取得された気象情報に基づいて、火災による予測延焼範囲を算出する予測延焼範囲算出手段と、を備え、前記案内情報生成手段が、前記予測延焼範囲算出手段によって算出された予測延焼範囲および前記記憶手段によって記憶された設置位置情報に基づいて、前記地図あるいは前記電力系統図における該当位置に、火災による予測延焼範囲および当該火災による予測延焼範囲内に設置されている電力設備をそれぞれ示す指示情報を重ね合わせた位置関係案内情報を生成することを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる電力設備位置情報システムは、上記の発明において、前記電力設備が、送電路中に設けられた複数の再閉路装置であって、前記出力手段が、前記火災情報取得手段によって取得された火災情報および前記記憶手段によって記憶された設置位置情報に基づいて、火災の発生現場および当該火災の発生現場から所定範囲内に設置されている再閉路装置における再閉路の禁止を指示する指示情報を前記表示装置に出力することを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる電力設備位置情報システムは、上記の発明において、前記出力手段が、前記指示情報を火災の発生現場および当該火災の発生現場から所定範囲内に設置されている再閉路装置に対して出力することを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる電力設備位置情報システムは、上記の発明において、前記出力手段が、配電路において、前記火災の発生現場よりも負荷側に設けられた配電線路によって当該負荷に対しておこなわれる配電が、別の配電線路によっておこなわれるように、前記負荷への配電線路の変更を指示する転負荷指示情報を、前記表示装置に出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
この発明にかかる電力設備位置情報システムによれば、電力設備に影響をあたえうる火災の発生を迅速かつ適切に案内することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明にかかる実施の形態の防災情報共有システムの構成を示す説明図である。
【図2】コンピュータ装置のハードウエア構成を示す説明図である。
【図3】この発明にかかる実施の形態の防災情報共有システムにおける電力設備位置情報システムの機能的構成を示すブロック図である。
【図4】表示画面例を示す説明図である。
【図5】再閉路装置の動作条件設定画面の一例を示す説明図である。
【図6】この発明にかかる実施の形態の防災情報共有システムにおける電力設備位置情報システムの動作の概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる電力設備位置情報システムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
(電力設備位置情報システムの構成)
まず、この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムを含む防災情報共有システムの構成について説明する。図1は、この発明にかかる実施の形態の防災情報共有システムの構成を示す説明図である。図1において、この発明にかかる実施の形態の防災情報共有システム100は、火災情報収集装置110と、複数の集配信装置120と、を含んで構成されている。
【0024】
火災情報収集装置110は、たとえば国や市町村などが運用する防災情報システムにおけるサーバコンピュータによって実現することができる。火災情報収集装置110は、インターネットなどのネットワーク111に接続されており、ネットワークを介して火災情報収集装置110に接続された各コンピュータ装置との間で通信することにより、当該コンピュータ装置に対して火災情報を提供する。
【0025】
火災情報は、火災の発生現場に関する情報を含んでいる。火災の発生現場に関する情報は、具体的には、たとえば、火災の発生現場の住所を示す情報とすることができる。また、火災情報は、火災の発生日時に関する情報を含んでいてもよい。火災の発生日時に関する情報は、具体的には、たとえば、圏域消防本部などにおいて火災発生の通報を受けた日時を示す情報とすることができる。あるいは、火災の発生日時に関する情報は、具体的には、たとえば、圏域消防本部などにおいて火災発生の通報を受けた際に、通報者が申告した日時を示す情報であってもよい。
【0026】
また、火災情報は、火災の鎮火日時に関する情報や、火災による被害状況を示す情報などを含んでいてもよい。火災情報は、たとえば、火災情報収集装置110を管理する管理者によって追加、更新される。火災情報のうち、火災による被害状況を示す情報については、火災情報収集装置110を管理する管理者に加えて、防災情報システムを構成する各コンピュータ装置を管理する管理者によって追加されるものであってもよい。
【0027】
複数の集配信装置120は、それぞれ、パーソナルコンピュータなどのコンピュータ装置によって実現され、イントラネット(Intranet)などのネットワーク121に接続されている。イントラネットは、たとえば企業など、単一の管理主体によって管理され、限定された範囲でのコンピュータネットワークを構築している。このため、複数の集配信装置120は、限定された範囲でのコンピュータネットワークを構築している。この実施の形態においては、コンピュータネットワークの構築にかかる複数の集配信装置120によって、電力設備位置情報システムを実現することができる。
【0028】
複数の集配信装置120のうちの一部の集配信装置120は、インターネットなどのネットワーク111に接続されている。インターネットなどのネットワーク111に接続される集配信装置120は、インターネットなどのネットワーク111を介して火災情報収集装置110に接続され、当該火災情報収集装置110との間での通信が可能とされる。
【0029】
インターネットなどのネットワーク111に接続される集配信装置120は、1台であってもよいし、複数台であってもよい。インターネットなどのネットワーク111に接続される集配信装置120が複数台存在する場合、インターネットなどのネットワーク111に接続されるこれらの複数台の集配信装置120は、それぞれ、インターネットなどのネットワーク111を介して火災情報収集装置110に接続され、火災情報収集装置110との間での通信が可能とされる。あるいは、火災情報収集装置110がイントラネットなどのネットワーク121に接続され、これによって複数の集配信装置120のそれぞれと火災情報収集装置110とが通信可能とされていてもよい。
【0030】
電力設備位置情報システムを構成する集配信装置120のうち、少なくとも一部の集配信装置120には、表示装置122(122a、122b、122c)が接続されている。表示装置122は、たとえば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなど、公知の各種の表示装置122によって実現することができる。
【0031】
集配信装置120に接続される表示装置122は、たとえば、電力設備位置情報システムが出力する位置関係案内情報を表示する表示装置122(122a)以外に、電力系統監視システムにおいて電力系統の状態を示すための表示装置122(122b)によって実現してもよい。電力系統監視システムについては、公知の技術を用いて容易に実現可能であるため説明を省略する。
【0032】
また、集配信装置120に接続される表示装置122は、たとえば、配電自動化システムに供される表示装置122(122c)によって実現するようにしてもよい。配電自動化システムは、配電線路の電圧、電流情報、事故情報をシステム内に設けられた各センサによって収集することによって配電線路を常時監視するとともに当該システムを構成する各電力設備を制御する。
【0033】
配電自動化システムにおいては、たとえば、配電線路の開閉器のON(作動)/OFF(作動禁止)を遠方(中央監視センターなど)から制御することができる。配電自動化システムにおいては、光ケーブルを用いた光電送によって遠隔制御を実現することができる。また、配電自動化システムにおいては、ケーブルを用いた光電送をおこなうことにより、情報量の増大や伝送速度の高速化を図ることができる。配電自動化システムについては、公知の技術を用いて容易に実現可能であるため説明を省略する。
【0034】
また、電力設備位置情報システムを構成する集配信装置120のうち、少なくとも一部の集配信装置120には、キーボードおよびポインティングデバイスなどの入力操作手段123が接続されている。入力操作手段123は、表示装置122が接続される集配信装置120に接続される。集配信装置120においては、入力操作手段123には接続されず、表示装置122のみが接続されていてもよい。すなわち、電力設備位置情報システムを構成する集配信装置120は、表示することによる情報の出力のみをおこなうものであってもよい。
【0035】
(コンピュータ装置のハードウエア構成)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムにおける火災情報収集装置110および集配信装置120を実現するコンピュータ装置について説明する。図2は、コンピュータ装置のハードウエア構成を示す説明図である。図2において、コンピュータ装置は、CPU201と、ROM202と、RAM203と、HDD(ハードディスクドライブ)204と、HD(ハードディスク)205と、FDD(フロッピー(登録商標)ディスクドライブ)206と、着脱可能な記録媒体の一例としてのFD(フロッピーディスク)207と、I/F(インターフェース)208と、を備えている。また、各構成部はバス209によってそれぞれ接続されている。
【0036】
CPU201は、コンピュータ装置全体の制御を司る。ROM202は、ブートプログラムなどのプログラムを記憶している。RAM203は、CPU201のワークエリアとして使用される。HDD204は、CPU201の制御にしたがってHD205に対するデータのリード/ライトを制御する。HD205は、HDD204の制御で書き込まれたデータを記憶する。
【0037】
FDD206は、CPU201の制御にしたがってFD207に対するデータのリード/ライトを制御する。FD207は、FDD206の制御で書き込まれたデータを記憶する。着脱可能な記録媒体として、FD207の他、CD−ROM(CD−RW)、MO、DVD(Digital Versatile Disk)などであってもよい。
【0038】
I/F208は、通信回線を通じてインターネットなどのネットワーク111に接続され、当該ネットワーク111を介して外部装置に接続される。そして、I/F208は、インターネットなどのネットワーク111と内部とのインターフェースを司り、コンピュータ装置と外部装置との間におけるデータの入出力を制御する。
【0039】
また、コンピュータ装置が集配信装置120を実現する場合、I/F208は、イントラネットなどのネットワーク121に接続され、当該ネットワーク121を介して別の集配信装置120を実現するコンピュータ装置に接続される。この場合、I/F208は、イントラネットなどのネットワーク121と内部とのインターフェースを司り、コンピュータ装置と別の集配信装置120を実現するコンピュータ装置との間におけるデータの入出力を制御する。
【0040】
また、コンピュータ装置が集配信装置120を実現する場合、I/F208には、表示装置122、キーボード、ポインティングデバイスなどの入力操作手段123が接続されていてもよい。表示装置122は、カーソル、アイコン、ツールボックスをはじめ、文書、画像、機能情報などのデータに関するウインドウ(ブラウザ)を表示する。具体的には、表示装置122としては、たとえば、CRT、TFT液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどによって実現することができる。
【0041】
入力操作手段123を実現するキーボードは、文字、数値、各種指示などの入力のためのキーを備え、データ入力をおこなう。また、入力操作手段123を実現するポインティングデバイスは、カーソルの移動や範囲選択、あるいはウインドウの移動やサイズの変更などをおこなう。具体的には、入力操作手段123を実現するポインティングデバイスは、たとえば、マウスやタッチパッドによって実現することができる。入力操作手段123を実現するポインティングデバイスとして同様の機能を備えるものであれば、マウスやタッチパッドに代えて、あるいは加えて、トラックボール、ジョイスティックなどであってもよい。
【0042】
(電力設備位置情報システムの機能的構成)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムの機能的構成について説明する。図3は、この発明にかかる実施の形態の防災情報共有システム100における電力設備位置情報システムの機能的構成を示すブロック図である。
【0043】
図3において、この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムは、火災情報取得部301と、計時部302と、記憶部303と、案内情報生成部304と、出力部307と、気象情報取得部305と、予測延焼範囲算出部306と、を備えている。火災情報取得部301、記憶部303、案内情報生成部304、出力部307、気象情報取得部305、および、予測延焼範囲算出部306は、電力設備位置情報システムを構成する複数の集配信装置120のうちの一部あるいはすべての集配信装置120を実現するコンピュータ装置が備える各部によってその機能を実現することができる。
【0044】
火災情報取得部301は、所定の防災情報システムを構成する防災情報管理装置との間で通信をおこない、当該防災情報管理装置から火災の発生現場に関する情報を含む火災情報を取得する。火災情報は、火災が発生するごとに防災情報管理装置から電力設備位置情報システムへ送信される。
【0045】
あるいは、火災情報取得部301は、所定の防災情報システムを構成する防災情報管理装置との間で通信をおこない、当該防災情報管理装置から火災の発生現場に関する情報を含む火災情報を取得するようにしてもよい。この場合、所定間隔は、たとえば「10分ごと」、「3分ごと」のように、前回火災情報を取得してからの経過時間によって定めることができる。また、所定時間は、たとえば「正時(0時、1時、2時、・・・など)」、「8時10分」、「9時25分」などのように、時刻によって定めるようにしてもよい。
【0046】
上記所定の間隔は、一定間隔(一定周期)であってもよいし、不定期間隔(不定周期)であってもよい。計時部302は、前回火災情報を取得してからの経過時間あるいは現在時刻を計時する。火災情報取得部301は、計時部302によって計時される経過時間あるいは現在時刻に基づいて、所定間隔が経過したかどうかを判断することができる。
【0047】
記憶部303は、電力設備の設置位置に関する設置位置情報を記憶する。設置位置情報は、たとえば、「××県○○市△△町1丁目2番3号」などのように、電力設備の設置場所を示す住所とすることができる。また、設置位置情報は、たとえば、緯度および経度を示す情報であってもよい。さらに、設置位置情報は、たとえば、緯度・経度に基づいて地域をほぼ同じ大きさに分けることによって生成される網の目(メッシュ)を識別するためのコード(メッシュコード)であってもよい。
【0048】
設置位置情報をメッシュコードによって実現する場合、具体的には、たとえば、標準地域メッシュによって定められる第1次メッシュ(第1次地域区画)、第2次メッシュ(第2次地域区画)、第3次メッシュ(第3次地域区画)、あるいは、第3次メッシュより細分化した分割地域メッシュなど、公知の各種のメッシュに基づくメッシュコードを用いることができる。
【0049】
また、記憶部303は、上記の設置位置情報と、各電力設備を識別する設備識別情報と、を関連づけて記憶している。これにより、設置位置情報あるいは設備識別情報のいずれかがわかれば、設備識別情報あるいは設置位置情報を特定することができる。そして、これによって、どの電力設備がどこに設置されているかを容易かつ確実に把握することができる。設置位置情報および火災の発生現場に関する情報に基づいて、各電力設備と火災の発生現場との距離を算出することができる。
【0050】
案内情報生成部304は、位置関係案内情報を生成する。案内情報生成部304は、たとえば、火災情報取得部301によって取得された火災情報および記憶部303によって記憶された設置位置情報に基づいて、火災の発生現場と当該火災の発生現場から所定範囲内に設置されている電力設備との位置関係を示す位置関係案内情報を生成する。
【0051】
この場合、位置関係案内情報は、たとえば、火災の発生現場の住所を示す情報と、当該火災の発生現場付近(火災の発生現場から所定範囲内)における電力設備の有無を示す情報と、によって構成することができる。所定範囲は、火災が発生した現場の周辺環境や風向き、風速などに応じて可変されるものであってもよい。この場合、具体的には、たとえば、風速が高い場合は、風速が低い場合よりも広い所定範囲を設定することができる。
【0052】
火災の発生現場の住所を示す情報および当該火災の発生現場付近における電力設備の有無を示す情報を含む位置関係案内情報は、たとえば、文字によってあらわすことができる。また、位置関係案内情報は、たとえば、火災の発生現場を含む地図における該当位置に、火災の発生現場および当該火災の発生現場から所定範囲内に設置されている電力設備をそれぞれ示す指示情報を重ね合わせた図形情報であってもよい。
【0053】
また、案内情報生成部304は、たとえば、火災情報取得部301によって取得された火災情報および記憶部303によって記憶された設置位置情報に基づいて、電力系統監視システムの電力系統図における該当位置に、指示情報を重ね合わせた位置関係案内情報を生成するようにしてもよい。電力系統は、発電所において発電された電力を最終的な受電設備に供給するための発電・変電・送電・配電を統合したシステムであり、送電系統や配電系統などに分類することができる。
【0054】
この場合、電力設備は、具体的には、たとえば、発電所における各種設備、変電所における各種設備、および、発電所から受電設備まで電力を供給するための各種設備によって実現することができる。発電所から受電設備まで電力を供給するための各種設備は、たとえば、鉄塔などに架け渡された電線を用いて送配電をおこなう架空送配電方式の場合は、電線、架空地線、碍子、鉄塔などによって電力設備を実現することができる。地中送電の場合は、管路などが含まれる。
【0055】
さらに、案内情報生成部304は、たとえば、火災情報取得部301によって取得された火災情報および記憶部303によって記憶された設置位置情報に基づいて、配電自動化システムのシステム構成を示すシステム図における該当位置に、指示情報を重ね合わせた位置関係案内情報を生成するようにしてもよい。
【0056】
この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムにおいて、電力設備は、発電や送配電にかかわる設備であって、たとえば、送電路中に設けられた複数の再閉路装置とすることができる。また、電力設備は、たとえば、発電所や変電所、当該発電所や変電所間を接続する送配電線、送配電線を支持する鉄塔や電柱などであってもよい。
【0057】
指示情報は、電力設備を示すのみでなく、たとえば、「電力設備の動作を停止するかどうか」、「電力設備の動作を停止する時期」、「電力設備の動作を停止した後の動作再開の時期」など、電力設備の動作に関する情報とすることができる。あるいは、指示情報は、たとえば、電力設備の動作停止を指示する情報や、電力設備の動作の早急な停止を指示する案内情報とすることができる。
【0058】
気象情報取得部305は、火災情報取得部301によって火災情報が取得された場合、取得された火災情報に基づいて、気象情報管理装置から火災発生現場および当該火災発生現場周辺の気象情報を取得する。具体的には、気象情報取得部305は、気象に関する気象情報を記憶する気象情報管理装置に対して通信をおこなうことによって気象情報を取得する。
【0059】
気象情報は、たとえば、火災情報に含まれる火災の発生現場に関する情報に基づいて、火災の発生現場を含む地域における風向き、風速、湿度などを示す情報を含んでいる。また、気象情報は、たとえば、火災の発生現場を含む地域における乾燥や強風などについての注意報や警報の有無を示す情報を含んでいてもよい。
【0060】
予測延焼範囲算出部306は、火災情報取得部301によって取得された火災情報および気象情報取得部305によって取得された気象情報に基づいて、火災による予測延焼範囲を算出する。予測延焼範囲算出部306は、たとえば、火災発生現場よりも風下に位置する地域を、火災による予測延焼範囲として算出する。火災による予測延焼範囲の広さは、たとえば、風速に基づいて算出することができる。
【0061】
また、予測延焼範囲算出部306は、たとえば、過去の火災情報に基づいて、予測延焼範囲を算出するようにしてもよい。この場合、具体的には、たとえば、記憶部303において過去の火災に関する情報を記憶しておき、記憶されている過去の火災に関する情報と、今回の火災情報と、気象情報と、に基づいて、過去の火災に際して延焼状態を加味した予測延焼範囲を算出する。これによって、たとえば、特定の地域において発生する傾向にある特殊性の高い火災に際する予測延焼範囲の算出結果に対する信頼性の向上を図ることができる。
【0062】
上記の案内情報生成部304は、予測延焼範囲算出部306によって算出された予測延焼範囲および記憶部303によって記憶された設置位置情報に基づいて、地図における該当する位置に、火災による予測延焼範囲および当該火災による予測延焼範囲内に設置されている電力設備をそれぞれ示す指示情報を重ね合わせた位置関係案内情報を生成してもよい。
【0063】
出力部307は、案内情報生成部304によって生成された位置関係案内情報を、表示装置122に出力する。位置関係案内情報が出力される集配信装置120は、たとえば、電力設備位置情報システムを構成するとともに表示装置122が接続された複数の集配信装置120のうち、特定の集配信装置120のみとすることができる。特定の集配信装置120は、たとえば、火災の発生の有無を監視する監視センターに設置された集配信装置120とすることができる。
【0064】
また、特定の集配信装置120は、たとえば、電力設備位置情報システムを構成するとともに表示装置122が接続された複数の集配信装置120のうち、火災の発生現場から所定範囲内に設置された集配信装置120であってもよい。火災の発生現場から所定範囲内に設置された集配信装置120は、火災情報取得部301によって取得された火災情報に含まれる火災の発生現場に関する情報および所定範囲を特定する情報に基づいて特定することができる。所定範囲は、たとえば、電力設備位置情報システムの管理者などによって適宜任意の距離範囲を設定することができる。位置関係案内情報が出力される集配信装置120は、電力設備位置情報システムを構成するとともに表示装置122が接続された複数の集配信装置120のすべてであってもよい。
【0065】
出力部307によって出力された位置関係案内情報を受信した表示装置122は、受信された位置関係案内情報に基づいて表示画面400を表示する。図4は、表示画面例を示す説明図である。図4において、表示画面400においては、火災の発生現場を含む地図401と、当該地図において火災の発生現場を案内する案内情報402と、電力設備を示す指示情報403と、が表示されている。
【0066】
また、出力部307は、火災情報取得部301によって取得された火災情報および記憶部303によって記憶された設置位置情報に基づいて、火災の発生現場および当該火災の発生現場から所定範囲内に設置されている電力設備の動作に関する指示情報を表示装置122に出力してもよい。
【0067】
具体的には、出力部307は、たとえば、電力設備が送電路中に設けられた複数の再閉路装置である場合に、火災情報取得部301によって取得された火災情報および記憶部303によって記憶された設置位置情報に基づいて、火災の発生現場および当該火災の発生現場から所定範囲内に設置されている再閉路装置における再閉路の禁止を指示する指示情報を表示装置122に出力する。
【0068】
また、出力部307は、たとえば、電力設備が送電路中に設けられた複数の再閉路装置である場合に、火災の発生現場および当該火災の発生現場から所定範囲内に設置されている再閉路装置に対して、再閉路の禁止を指示する指示情報を出力するようにしてもよい。これにより、電力設備位置情報システムの管理者などが、電力設備位置情報システムにおける表示装置122に表示された位置関係案内情報を確認し、再閉路装置における再閉路を禁止する操作をおこなうことなく、再閉路を禁止する必要が生じた場合には迅速かつ確実に再閉路を禁止することができる。
【0069】
ここで、再閉路装置の動作条件を手動で設定する場合の手順について説明する。図5は、再閉路装置の動作条件設定画面の一例を示す説明図である。図5において、動作条件設定画面500は、たとえば、電力系統監視システムにおいて電力系統の状態を示すための表示装置122に表示することができる。動作条件設定画面500は、電力系統監視システムを起動した状態で、電力系統の管理者が「制御」モードへ移行する指示入力操作(図5における符号501を参照)をおこなうことによって表示される。
【0070】
動作条件設定画面500において、まず、制御対象すなわち動作条件の設定対象とする電力設備に相当するアイコンを指定する。この実施の形態においては、符号502によって示されるアイコンに相当する電力設備を、動作条件の設定対象としている。電力系統監視システムにおいては、電力設備に相当するアイコン502が選択されると、制御ポジション子画面510を、動作条件設定画面500に重ねて表示する。
【0071】
そして、制御ポジション子画面510において、該当する電力設備(図5においては「43RC」で示される同期調相機)を指定した状態で、指定した電力設備の動作条件(使用/不使用)を設定する。その後、「転送」キー511を操作する。「転送」キー511の操作によって、制御ポジション子画面510において設定された動作条件(たとえば「43RCを不使用にする」など)が、該当する電力設備に転送され、指定した設定がなされる。
【0072】
また、出力部307は、配電路において、火災の発生現場よりも負荷側に設けられた配電線路によって当該負荷に対しておこなわれる配電が、別の配電線路によっておこなわれるように、該当する負荷への配電線路の変更を指示する転負荷指示情報を、表示装置122に出力するようにしてもよい。転負荷指示情報は、配電線路の変更を指示する情報のみであってもよいし、配電線路の変更を指示する情報および変更後の配電線路を特定する情報を含んでいてもよい。
【0073】
また、出力部307は、案内情報生成部304によって生成された位置関係案内情報が、電力系統監視システムの電力系統図における該当位置に指示情報を重ね合わせた位置関係案内情報である場合は、電力設備位置情報システムが出力する位置関係案内情報を表示する表示装置122に対して当該位置関係案内情報を出力してもよい。
【0074】
この場合、出力部307は、たとえば、電力系統監視システムの電力系統図における該当位置に指示情報を重ね合わせた位置関係案内情報を、電力設備位置情報システムを構成する集配信装置120に接続された表示装置122に代えて、電力系統監視システムの電力系統図を表示する表示装置122に対してのみ送信する。あるいは、この場合、出力部307は、たとえば、電力系統監視システムの電力系統図における該当位置に指示情報を重ね合わせた位置関係案内情報を、電力設備位置情報システムを構成する集配信装置120に接続された表示装置122に加えて、電力系統監視システムの電力系統図を表示する表示装置122に対して送信するようにしてもよい。
【0075】
また、出力部307は、案内情報生成部304によって生成された位置関係案内情報が、配電自動化システムのシステム構成を示すシステム図における該当位置に指示情報を重ね合わせた位置関係案内情報である場合は、当該システム図を表示する表示装置122に対して、案内情報生成部304によって生成された位置関係案内情報を出力してもよい。
【0076】
この場合、出力部307は、たとえば、配電自動化システムのシステム構成を示すシステム図における該当位置に指示情報を重ね合わせた位置関係案内情報を、電力設備位置情報システムを構成する集配信装置120に接続された表示装置122に代えて、配電自動化システムのシステム図を表示する表示装置122に対してのみ送信する。あるいは、この場合、出力部307は、たとえば、配電自動化システムのシステム構成を示すシステム図における該当位置に指示情報を重ね合わせた位置関係案内情報を、電力設備位置情報システムを構成する集配信装置120に接続された表示装置122に加えて、配電自動化システムのシステム図を表示する表示装置122に対して送信するようにしてもよい。
【0077】
(電力設備位置情報システムにおける動作)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムにおける動作の概略について説明する。図6は、この発明にかかる実施の形態の防災情報共有システム100における電力設備位置情報システムの動作の概略を示すフローチャートである。
【0078】
図6のフローチャートにおいて、まず、この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムは、火災情報を取得するまで待機する(ステップS601:No)。火災情報を取得した場合(ステップS601:Yes)は、取得された火災情報に含まれる火災の発生現場に関する情報(図6においては「住所データ」と記載)を符号化する(ステップS602)。
【0079】
つぎに、鎮火情報を取得したか否かを判断する(ステップS603)。ステップS603においては、たとえば、火災情報を取得した後に、防災情報管理装置から電力設備位置情報システムへ送信された鎮火情報を受信したか否かを判断する。あるいは、ステップS603においては、たとえば、火災情報を取得した後に、防災情報管理装置に対して所定時間ごとに通信をおこない、当該防災情報管理装置において該当する火災に関する鎮火情報の取得をおこなってもよい。
【0080】
ステップS603において鎮火情報を取得した場合(ステップS603:Yes)は、一連の処理を終了する。また、ステップS603において鎮火情報を取得していない場合(ステップS603:No)は、気象情報管理装置に対して通信をおこなって気象情報を取得する(ステップS604)。
【0081】
ステップS604における気象情報の取得は、火災情報を取得するごとにおこなってもよいし、火災情報の取得の有無にかかわらず定期的におこなってもよい。気象情報の取得を定期的におこなう場合、前回気象情報を取得してから所定時間が経過するごとに最新の気象情報の取得をおこなう。そして、ステップS601:Yesにおいて取得された火災情報、および、ステップS604において取得された気象情報に基づいて、延焼予測範囲を算出する(ステップS605)。
【0082】
そして、ステップS601:Yesにおいて取得された火災情報、ステップS604において取得された気象情報、および、ステップS605において算出された延焼予測範囲に基づいて、位置関係案内情報を生成する(ステップS606)。これにより、ステップS606においては、延焼予測範囲を加味した位置関係案内情報が生成される。また、ステップS606においては、火災情報のみに基づいて位置関係案内情報を生成してもよい。
【0083】
つぎに、ステップS601:Yesにおいて取得された火災情報に含まれる、火災の発生現場に関する情報(住所データ)に基づいて、ステップS606において生成された位置関係案内情報の出力先を特定する(ステップS607)。ステップS607においては、電力設備位置情報システムを構成するとともに表示装置122が接続された複数の集配信装置120のうち、火災の発生現場から所定範囲内に設置された集配信装置120のような特定の集配信装置120に接続された表示装置122を出力先として特定することができる。あるいは、ステップS607においては、電力設備位置情報システムを構成するとともに表示装置122が接続されたすべての集配信装置120に接続された表示装置122を出力先として特定してもよい。
【0084】
その後、ステップS607において特定された出力先に対して、ステップS606において生成された位置関係案内情報を出力する(ステップS608)。ステップS608において出力された位置関係案内情報を受信した表示装置122は、受信された位置関係案内情報に基づいて、たとえば、火災の発生現場を含む地図に、火災の発生現場および当該火災の発生現場から所定範囲内に設置されている電力設備が示された図形情報を表示する。
【0085】
つぎに、ステップS601:Yesにおいて取得された火災情報に基づいて、火災の発生現場が、送電線路付近であるか否かを判断する(ステップS609)。ステップS609においては、たとえば、水平面内において火災の発生現場から所定の距離範囲内に設置されている送電線あるいは当該送電線を指示する鉄塔などの構造物の有無を判断する。
【0086】
ステップS609において、火災の発生現場が送電線路付近ではない場合(ステップS609:No)は、ステップS611へ移行する。一方、ステップS609において、火災の発生現場が送電線路付近である場合(ステップS609:Yes)は、該当する集配信装置120に対して指示情報を出力する(ステップS610)。ステップS610においては、たとえば、再閉路の禁止を指示する指示情報を、該当する集配信装置120に対して出力する。
【0087】
また、ステップS601:Yesにおいて取得された火災情報に基づいて、火災の発生現場が、配電線路付近であるか否かを判断する(ステップS611)。ステップS611においては、たとえば、水平面内において火災の発生現場から所定の距離範囲内に設置されている配電線あるいは当該配電線を指示する構造物の有無を判断する。火災の発生現場が配電線路付近ではない場合(ステップS611:No)は、一連の処理を終了する。
【0088】
ステップS611において、火災の発生現場が配電線路付近である場合(ステップS611:Yes)は、自動逆送手順情報を生成し(ステップS612)、生成された自動逆送手順情報を該当する集配信装置120に対して出力して(ステップS613)、一連の処理を終了する。
【0089】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムは、所定の防災情報システムを構成する防災情報管理装置との間で通信をおこない、当該防災情報管理装置から火災の発生現場に関する情報を含む火災情報を取得する火災情報取得部301と、電力設備の設置位置に関する設置位置情報を記憶する記憶部303と、火災情報取得部301によって取得された火災情報および記憶部303によって記憶された設置位置情報に基づいて、火災の発生現場と当該火災の発生現場から所定範囲内に設置されている電力設備との位置関係を示す位置関係案内情報を生成する案内情報生成部304と、案内情報生成部304によって生成された位置関係案内情報を、表示装置122に出力する出力部307と、を備えたことを特徴としている。
【0090】
この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムによれば、火災が発生した場合には、火災の発生現場および当該火災による影響を受ける可能性がある電力設備の有無を、迅速かつ容易に把握することができる。また、この発明によれば、所定間隔ごとに火災情報を取得することにより、情報提供の失念や情報提供者ごとの判断のばらつきなど人為的な理由によって火災発生の情報伝達に不備が生じることを防止することができる。これによって、火災の発生および当該火災による電力設備への影響についての判断を、迅速かつ確実におこなうことができる。
【0091】
また、この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムは、案内情報生成部304が、火災情報取得部301によって取得された火災情報および記憶部303によって記憶された設置位置情報に基づいて、火災の発生現場を含む地図あるいは電力系統図における該当位置に、火災の発生現場および当該火災の発生現場から所定範囲内に設置されている電力設備をそれぞれ示す指示情報を重ね合わせた位置関係案内情報を生成することを特徴としている。
【0092】
この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムによれば、火災が発生した場合には、火災の発生現場および当該火災による影響を受ける可能性がある電力設備の有無を、迅速かつ容易に把握することができる。また、この発明によれば、所定間隔ごとに火災情報を取得することにより、情報提供の失念や情報提供者ごとの判断のばらつきなど人為的な理由によって火災発生の情報伝達に不備が生じることを防止することができる。これによって、火災の発生および当該火災による電力設備への影響についての判断を、迅速かつ確実におこなうことができる。
【0093】
また、この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムは、火災情報取得部301によって火災情報が取得された場合、気象に関する気象情報を記憶する気象情報管理装置に対して通信をおこない、取得された火災情報に基づいて、気象情報管理装置から火災発生現場および当該火災発生現場周辺の気象情報を取得する気象情報取得部305と、火災情報取得部301によって取得された火災情報および気象情報取得部305によって取得された気象情報に基づいて、火災による予測延焼範囲を算出する予測延焼範囲算出部306と、を備え、案内情報生成部304が、予測延焼範囲算出部306によって算出された予測延焼範囲および記憶部303によって記憶された設置位置情報に基づいて、火災の発生現場を含む地図あるいは電力系統図における該当位置に、火災による予測延焼範囲および当該火災による予測延焼範囲内に設置されている電力設備をそれぞれ示す指示情報を重ね合わせた位置関係案内情報を生成することを特徴としている。
【0094】
この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムによれば、火災発生現場および当該火災発生現場周辺の気象情報に基づいて、気象条件によっては火災による影響を受ける可能性がある電力設備の有無を、迅速かつ容易に把握することができる。また、この発明によれば、火災情報が取得されるごとに気象情報を取得し、予測延焼範囲を算出することにより、算出された予測延焼範囲の信頼性の向上を図ることができる。これによって、火災の発生および当該火災による電力設備への影響を抑制する対応を、迅速かつ確実におこなうことができる。
【0095】
また、この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムは、電力設備が、送電路中に設けられた複数の再閉路装置であって、出力部307は、火災情報取得部301によって取得された火災情報および記憶部303によって記憶された設置位置情報に基づいて、火災の発生現場および当該火災の発生現場から所定範囲内に設置されている再閉路装置における再閉路の禁止を指示する指示情報を表示装置122に出力することを特徴としている。
【0096】
この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムによれば、電気事故発生時における再試充電操作の検討に際しての判断の一要素を、表示装置122を介して案内することができる。これによって、電気事故発生時における再試充電操作の検討の迅速化、および、適切な再閉路の禁止処置による安全性の向上を図ることができる。
【0097】
また、この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムは、出力部307が、指示情報を火災の発生現場および当該火災の発生現場から所定範囲内に設置されている再閉路装置に対して出力することを特徴としている。この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムによれば、電気事故発生時の再試充電操作について、作業者による判断を介することなく該当する再閉路装置における再閉路を禁止することができる。これによって、火災に起因する電気事故の拡大予防措置を迅速におこなうことができるとともに、電気事故が発生した場合にも事故復旧方針を迅速に策定することができる。
【0098】
また、この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムは、出力部307が、配電路において、火災の発生現場よりも負荷側に設けられた配電線路によって当該負荷に対しておこなわれる配電が、別の配電線路によっておこなわれるように、負荷への配電線路の変更を指示する転負荷指示情報を、表示装置122に出力することを特徴としている。
【0099】
この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムによれば、表示装置122を介して転負荷指示情報を案内することにより、火災の発生現場よりも負荷側に設けられた配電線路を別の配電線路に変更する転負荷を迅速におこなわせるように支援することができる。これによって、たとえば、火災の発生現場よりも負荷側に設けられた配電線路が損傷した場合にも、当該損傷によって配電線路における電力供給にきたす支障量を減少させることができる。
【0100】
このように、この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムによれば、配電線路経過地の火災においては、配電自動化システムと連係させることにより、順送方向から見て火災発生地点から負荷側の配電線路を自動で予め転負荷させることができる。
【0101】
上述したように、この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムによれば、火災発生時における迅速な情報収集をおこない、収集した情報に基づいて火災による影響を受けるおそれがある電力設備の迅速な把握を実現することができる。また、この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムによれば、送電線路の再閉路装置を不使用とするための操作を迅速に実施することができるとともに、たとえば失念など人為的な理由によって圏域消防本部からの情報提供が迅速になされない場合のバックアップとして機能させることができる。
【0102】
さらに、この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムによれば、電力設備状況の確認のための現場出動要請を迅速に発令することができる。これによって、火災の発生後迅速に火災発生現場周辺の電力設備に対する対策をおこなうことができ、火災の発生によって電力設備が損傷することを極力回避することができる。
【0103】
また、この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムによれば、電気事故の発生に際して、当該電気事故の原因が火災によるものであるか火災以外の原因によるものであるかを判断(推測)しやすくすることができる。そして、電気事故の原因を的確に判断することにより、電気事故が発生した際の再試充電操作検討の判断を容易かつ適切におこなうことができる。また、判断を適切におこなうことができるので、火災の発生を特定する課と当該火災に対する対応をおこなう課とが異なる場合にも、たとえば設備主管課などの対応をおこなう課(作業者)に対して適切な情報を迅速に提供することができる。
【0104】
また、この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムによれば、火災の発生および当該火災の発生による電気事故の発生を迅速かつ高精度に判断できるので、電気事故が発生した際の原因特定を迅速におこなうことができる。そして、電気事故が発生した際の原因特定を迅速におこなうことにより、当該電気事故の復旧方針を迅速に策定することができる。さらに、この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムによれば、自動配電システムと連動し、転負荷などの対策をおこなうことにより、配電線路の供給支障量の減少を図ることができる。
【0105】
なお、上述した実施の形態においては、イントラネットなどのネットワークを介して接続された複数の集配信装置120によってこの発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムを実現するようにしたが、これに限るものではない。この発明にかかる実施の形態の電力設備位置情報システムは、1台の集配信装置120によって実現するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上のように、この発明にかかる電力設備位置情報システムは、火災による電力設備の被害を抑制するための対応を支援する電力設備位置情報システムに有用であり、特に、火災の発生現場と電力設備との位置関係の迅速な把握を支援する電力設備位置情報システムに適している。
【符号の説明】
【0107】
100 防災情報共有システム
110 火災情報収集装置
120 集配信装置
301 火災情報取得部
302 計時部
303 記憶部
304 案内情報生成部
305 気象情報取得部
306 予測延焼範囲算出部
307 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の防災情報システムを構成する防災情報管理装置との間で通信をおこない、当該防災情報管理装置から火災の発生現場に関する情報を含む火災情報を取得する火災情報取得手段と、
電力設備の設置位置に関する設置位置情報を記憶する記憶手段と、
前記火災情報取得手段によって取得された火災情報および前記記憶手段によって記憶された設置位置情報に基づいて、火災の発生現場と当該火災の発生現場から所定範囲内に設置されている電力設備との位置関係を示す位置関係案内情報を生成する案内情報生成手段と、
前記案内情報生成手段によって生成された位置関係案内情報を、表示装置に出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする電力設備位置情報システム。
【請求項2】
前記案内情報生成手段は、前記火災情報取得手段によって取得された火災情報および前記記憶手段によって記憶された設置位置情報に基づいて、火災の発生現場を含む地図あるいは電力系統図における該当位置に、火災の発生現場および当該火災の発生現場から所定範囲内に設置されている電力設備をそれぞれ示す指示情報を重ね合わせた位置関係案内情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の電力設備位置情報システム。
【請求項3】
前記火災情報取得手段によって前記火災情報が取得された場合、気象に関する気象情報を記憶する気象情報管理装置に対して通信をおこない、取得された前記火災情報に基づいて、前記気象情報管理装置から火災発生現場および当該火災発生現場周辺の気象情報を取得する気象情報取得手段と、
前記火災情報取得手段によって取得された火災情報および前記気象情報取得手段によって取得された気象情報に基づいて、火災による予測延焼範囲を算出する予測延焼範囲算出手段と、
を備え、
前記案内情報生成手段は、
前記予測延焼範囲算出手段によって算出された予測延焼範囲および前記記憶手段によって記憶された設置位置情報に基づいて、前記地図あるいは前記電力系統図における該当位置に、火災による予測延焼範囲および当該火災による予測延焼範囲内に設置されている電力設備をそれぞれ示す指示情報を重ね合わせた位置関係案内情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の電力設備位置情報システム。
【請求項4】
前記電力設備は、送電路中に設けられた複数の再閉路装置であって、
前記出力手段は、前記火災情報取得手段によって取得された火災情報および前記記憶手段によって記憶された設置位置情報に基づいて、火災の発生現場および当該火災の発生現場から所定範囲内に設置されている再閉路装置における再閉路の禁止を指示する指示情報を前記表示装置に出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の電力設備位置情報システム。
【請求項5】
前記出力手段は、前記指示情報を火災の発生現場および当該火災の発生現場から所定範囲内に設置されている再閉路装置に対して出力することを特徴とする請求項4に記載の電力設備位置情報システム。
【請求項6】
前記出力手段は、配電路において、前記火災の発生現場よりも負荷側に設けられた配電線路によって当該負荷に対しておこなわれる配電が、別の配電線路によっておこなわれるように、前記負荷への配電線路の変更を指示する転負荷指示情報を、前記表示装置122に出力することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の電力設備位置情報システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−188283(P2011−188283A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51913(P2010−51913)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】