説明

電動アクチュエータのカム構造

【課題】 マイクロスイッチの誤動作を防止するとともに、カム部材の位置調整を容易に行うことのできる電動アクチュエータのカム構造を提供する。
【解決手段】 全開検知カム部材8および全閉検知カム部材9のカム部22は、その外周部分の厚さ寸法が中心部分に比較して小さくなるように形成されているとともに、溝形成部18の上下面の少なくとも一面は、取付部16の中心部分の上下面より内側に位置するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータのカム構造に係り、特に、ボールバルブ、バタフライバルブ等の回転バルブなどに搭載され、バルブの弁体を電動により開閉動作させる電動アクチュエータに好適な電動アクチュエータのカム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転バルブなどを電動により回転制御する電動アクチュエータが多く用いられており、この電動アクチュエータは、電動モータを回転駆動させて歯車伝達機構を介してバルブの開閉軸を回転動作させることにより、バルブの開閉動作を行うようになっている。
【0003】
そして、このような電動アクチュエータにおいては、従来から、電動モータの回転駆動により回転駆動される制御軸にカム部材を固定し、このカム部材によりマイクロスイッチをON、OFF動作させることにより、バルブの全開位置および全閉位置の検出を行うようにしていた(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−045278号
【特許文献2】実開平06−062770号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数のマイクロスイッチを積層配置した状態で、複数のカム部材を積層配置した場合に、各マイクロスイッチの高さ寸法精度のばらつきやレバーの垂れ量のばらつきがあった場合に、各カム部材の高さ方向の位置がマイクロスイッチのレバー位置に対してずれてしまい、隣接するカム部材によりマイクロスイッチを動作させてしまう誤動作を招くという問題を有している。
【0006】
また、各カム部材は、制御軸に対して強く固定されており、しかも、各カム部材が接触した状態で積層されているため、カム部材の調整用溝にドライバなどの調整用工具を差し込んで、各カム部材の周方向の位置調整を行う場合に、隣接するカム部材が供回りしてしまい、調整が困難であるという問題を有している。しかも、カム部材の位置調整を行う場合に、強い力を必要とするため、調整用工具の調整用溝への差し込みが不十分な場合には、調整用工具の破損を招いてしまうという問題をも有している。
【0007】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、マイクロスイッチの誤動作を防止するとともに、カム部材の位置調整を容易に行うことのできる電動アクチュエータのカム構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、制御軸に固定される取付部と、前記取付部の外周に突出形成され位置調整用溝が形成された溝形成部と、前記取付部の外周側に形成され外周面が全開位置または全閉位置を検出するマイクロスイッチのレバーを動作させる所定のカム形状に形成されたカム部とを備えてなるカム部材を備え、前記カム部材を、前記制御軸に複数積層して固定してなる電動アクチュエータのカム構造において、
前記カム部材の前記カム部は、その外周部分の厚さ寸法が中心部分に比較して小さくなるように形成されているとともに、前記溝形成部の上下面の少なくとも一面は、前記取付部の中心部分の上下面より内側に位置するように形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記調整用溝は、調整用工具が最奥部まで到達できるように幅寸法が大きく形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2において、前記溝形成部の先端部上下部分に、上下方向に突出する位置合わせ突起がそれぞれ形成されており、前記位置合わせ突起の上下面の少なくとも一面が、前記取付部の中心部分の上下面より内側に位置するように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、カム部材のカム部をその外周部分の厚さ寸法が中心部分に比較して小さくなるように形成するとともに、溝形成部の上下面の少なくとも一面を取付部の中心部分の上下面より内側に位置するように形成するようにしているので、各カム部材を回転させた際に、隣接するカム部材との接触面積を低減させることができ、各カム部材の共回りの発生を確実に防止することが可能となる。また、マイクロスイッチのレバーの位置がずれた場合でも、隣接するカム部材によるマイクロスイッチのレバーへの接触を確実に防止することができ、マイクロスイッチの誤動作を防止することができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、調整用溝を調整用工具が最奥部まで到達できるように幅寸法を大きく形成するようにしているので、調整用工具を調整用溝に十分に差し込むことができ、調整用工具の破損を防止して、確実にカム部材の位置調整を行うことが可能となる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、溝形成部の先端部上下部分に形成された位置合わせ突起の上下面の少なくとも一面を取付部の中心部分の上下面より内側に位置するように形成するようにしているので、位置合わせ突起により、調整用溝部分の強度を高めることができ、しかも、各カム部材の共回りの発生を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る電動アクチュエータのカム構造の実施形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明に係るカム構造が適用される電動アクチュエータの実施形態を示したものであり、本発明に係る電動アクチュエータ1は、図示しない回転バルブに装着される基台2と、この基台2の上方に所定の空間が確保されるように基台2の上面を被覆するカバー部材3とを備えている。基台2の上方には、地板4が基台2との間に所定間隙を有するように設置されており、地板4の上面には、単層誘導式の電動モータ5が搭載されている。また、基台2には、図示しないバルブの弁体の回転軸に連結される出力軸6が配設されており、この基台2と地板4との間には、電動モータ5の回転駆動力を出力軸6に伝達するための図示しない歯車伝達機構が収容されている。
【0016】
図1および図2に示すように、出力軸6の上端部には、カバー部材3の上面まで延設された制御軸7が連結されており、制御軸7の外周下方には、出力軸6および制御軸7の回転動作によりバルブの全開位置および全閉位置に対応する全開検知カム部材8および全閉検知カム部材9がそれぞれ2つずつ取付けられている。全開検知カム部材8は、本実施形態においては、バルブの全開位置に対応する全開検知信号用カム部材8aと、全開モータ停止用カム部材8bとから構成されており、全閉検知カム部材9は、本実施形態においては、バルブの全閉位置に対応する全閉検知信号用カム部材9aと、全閉モータ停止用カム部材9bとから構成されている。
【0017】
また、地板4の上面であって制御棒の近傍には、全開位置または全閉位置を検知する4つのマイクロスイッチ10がそれぞれ重ねて配置されており、これら各マイクロスイッチ10には、図3および図4に示すように、ON、OFF動作用のレバー11,11…が設けられている。
【0018】
これら各マイクロスイッチ10は、上方から順次、全開検知信号用カム部材8aにより動作されてバルブの全開位置検出信号を出力する全開検出信号出力用マイクロスイッチ10a、全閉検知信号用カム部材9aにより動作されてバルブの全閉位置検出信号を出力する全閉検出信号出力用マイクロスイッチ10b、全開モータ停止用カム部材8bにより動作されて全開位置で電動モータ5の停止信号を出力する全開モータ停止信号出力用マイクロスイッチ10c、全閉モータ停止用カム部材9bにより動作されて全閉位置で電動モータ5の停止信号を出力する全閉モータ停止信号出力用マイクロスイッチ10dとされている。
【0019】
制御軸7の上端部には、上面が球面とされたバルブの開度インジケータ12が取付けられており、カバー部材3には、開度インジケータ12を視認するための視認窓13が形成されている。
【0020】
電動モータ5の近傍には、支持板14が配設されており、支持板14には、所定の駆動回路が組み込まれた駆動回路基板15が取付けられている。この駆動回路基板15には、図示しないバルブの開閉制御システムからの電力が供給されるように構成されている。
【0021】
次に、本発明に係るカム構造について図5から図8を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態においては、全開検知カム部材8および全閉検知カム部材9の形状は同一であるので、全開検知カム部材8について説明する。
【0022】
全開検知カム部材8は、例えば、トレランスリングなどからなる取付部16を備えており、この取付部16には、制御軸7の外周に装着するための中心孔17が形成されている。取付部16の外周の2カ所には、溝形成部18,18が直径方向外方に突出するように形成されており、各溝形成部18の間には、それぞれ調整用溝19が形成されている。図8に示すように、この調整用溝19は、本実施形態においては、調整用工具20が最奥部まで到達できるように幅寸法が大きく形成されている。この幅寸法は、調整用工具20の厚さ寸法に応じて適宜設定されるものであり、図8においては、調整用工具20としてドライバを用いた場合を示している。
【0023】
また、取付部16の溝形成部18の先端部上下部分には、上下方向に突出する位置合わせ突起21が調整用溝19の両側に位置するようにそれぞれ形成されている。本実施形態においては、下側の位置合わせ突起21の下面は、取付部16の中心部分の最下面より内側に位置するように形成され、取付部16の最下面と溝形成部18の位置合わせ突起21の下面との間に間隙sが形成されるように構成されている。これにより、図7に斜線で示すように、全開検知カム部材8と隣接する全開検知カム部材8との接触面が、取付部16の中心部分のみとなり、全開検知カム部材8同士の接触面積の低減を図ることができる。
【0024】
なお、本実施形態においては、位置合わせ突起21の下面のみを取付部16の中心部分の最下面より内側に位置するように形成するようにしたが、位置合わせ突起21の上面のみあるいは位置合わせ突起21の上下面を取付部16の中心部分の上下面より内側に位置するように形成してもよい。
【0025】
また、取付部16の外周側には、外周面が所定のカム形状に形成されたカム部22が取付部16と一体に形成されている。カム部22の外周部分には、その厚さ寸法が中心部分に比較して小さくなるように段部23が形成されている。
【0026】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0027】
本実施形態においては、制御軸7の外周下方に、全開検知カム部材8および全閉検知カム部材9がそれぞれ2つずつ積層して取付けた状態で、マイクロスイッチ10のON、OFF動作を適正に行わせるために、所定の全閉位置あるいは全開位置に基づいて、調整用工具20を調整用溝19に差し込んで全開検知カム部材8または全閉検知カム部材9を回転動作させることにより、全開検知カム部材8および全閉検知カム部材9の位置調整を行う。
【0028】
この位置調整の手順についてさらに詳細に説明する。
前述のように、本実施形態においては、各マイクロスイッチは、全開検出信号出力用マイクロスイッチ10a、全閉検出信号出力用マイクロスイッチ10b、全開モータ停止信号出力用マイクロスイッチ10c、全閉モータ停止信号出力用マイクロスイッチ10dとされている。そして、全開検出信号出力用マイクロスイッチ10aと全開モータ停止信号出力用マイクロスイッチ10c、全閉検出信号出力用マイクロスイッチ10bと全閉モータ停止信号出力用マイクロスイッチ10dとは、それぞれ完全に位置を一致させるものではなく、図3に示すように、互いに制御軸の回転軸を中心として約6°の角度をずらして位置調整を行うものである。これは、全開モータ停止信号出力用マイクロスイッチ10cまたは全閉モータ停止信号出力用マイクロスイッチ10dにより電動モータの停止信号が出力されるより前に、全開検出信号出力用マイクロスイッチ10aまたは全閉検出信号出力用マイクロスイッチ10bにより、全開または全閉の位置検出信号を出力して各種制御を行うことができるようにするためである。
【0029】
例えば、本実施形態においては、位置合わせ突起21の突出部分の幅寸法は、バルブの全開位置に対応する全開検知信号用カム部材8aにおける位置合わせ突起21の突出部分の端縁を、全開モータ停止用カム部材8bにおける位置合わせ突起21の突出部分の端縁に合わせることにより、全開検知信号用カム部材8aと全開モータ停止用カム部材8bとが6°程度ずらして位置調整できる寸法に形成されている。
【0030】
そのため、全開検知信号用カム部材8aにおける位置合わせ突起21の突出部分の端縁を、全開モータ停止用カム部材8bにおける位置合わせ突起21の突出部分の端縁に合わせるだけで、各カム部材8a,8b,9a,9bの位置調整を容易に行うことができるものである。なお、全閉検知信号用カム部材9aおよび全閉モータ停止用カム部材9bについても同様である。
【0031】
また、本実施形態においては、下側の位置合わせ突起21の下面が取付部16の中心部分の最下面より内側に位置するように形成され、取付部16の最下面と溝形成部18の位置合わせ突起21の下面との間に間隙sが形成されるように構成されているので、全開検知カム部材8または全閉検知カム部材9を回転させた際に、隣接する全開検知カム部材8または全閉検知カム部材9との接触面積が少ないので、共回りの発生を確実に防止することが可能となる。
【0032】
また、各マイクロスイッチ10を横向きに積層して配置しているので、マイクロスイッチ10の寸法精度のばらつきが累積されるとともに、各マイクロスイッチ10のレバー11が重力により下方に垂れ下がることがある。これにより、レバー11の位置がずれて配置されてしまうことがあるが、本実施形態においては、カム部22の外周部分にその厚さ寸法が中心部分に比較して小さくなるように段部23が形成されているので、レバー11の位置がずれた場合でも、隣接する全開検知カム部材8によるマイクロスイッチ10のレバー11への接触を確実に防止することができ、マイクロスイッチ10の誤動作を防止することができる。
【0033】
さらに、調整用溝19の幅寸法を、調整用工具20が最奥部まで到達できるように大きく形成されているので、調整用工具20を調整用溝19に十分に差し込むことができ、調整用工具20の破損を防止して、確実に全開検知カム部材8の位置調整を行うことが可能となる。
【0034】
したがって、本実施形態においては、位置調整時に、全開検知カム部材8または全閉検知カム部材9を回転させた際に、隣接する全開検知カム部材8または全閉検知カム部材9との接触面積が少ないので、共回りの発生を確実に防止することができ、また、マイクロスイッチ10のレバー11の位置がずれて配置された場合でも、隣接する全開検知カム部材8または全閉検知カム部材9によるマイクロスイッチ10のレバー11への接触を確実に防止することができ、その結果、マイクロスイッチ10の誤動作を防止することができる。さらに、調整用工具20を調整用溝19に十分に差し込むことができ、調整用工具20の破損を防止して、確実に全開検知カム部材8または全閉検知カム部材9の位置調整を行うことが可能となる。
【0035】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るカム構造が適用される電動アクチュエータの実施形態を示す正面図である。
【図2】本発明に係るカム構造が適用される電動アクチュエータの一部の斜視図である。
【図3】本発明に係るカム構造が適用される電動アクチュエータのカム部材部分の斜視図である。
【図4】本発明に係るカム構造に適用されるカム部材とマイクロスイッチを示す平面図である。
【図5】本発明に係るカム構造に適用されるカム部材の一部を断面とした正面図である。
【図6】本発明に係るカム構造に適用されるカム部材の底面を示す図である。
【図7】本発明に係るカム構造の使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 電動アクチュエータ
5 電動モータ
8 全開検知カム部材
9 全閉検知カム部材
10 マイクロスイッチ
11 レバー
16 取付部
17 中心孔
18 溝形成部
19 調整用溝
20 調整用工具
21 位置合わせ突起
22 カム部
23 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御軸に固定される取付部と、前記取付部の外周に突出形成され位置調整用溝が形成された溝形成部と、前記取付部の外周側に形成され外周面が全開位置または全閉位置を検出するマイクロスイッチのレバーを動作させる所定のカム形状に形成されたカム部とを備えてなるカム部材を備え、前記カム部材を、前記制御軸に複数積層して固定してなる電動アクチュエータのカム構造において、
前記カム部材の前記カム部は、その外周部分の厚さ寸法が中心部分に比較して小さくなるように形成されているとともに、前記溝形成部の上下面の少なくとも一面は、前記取付部の中心部分の上下面より内側に位置するように形成されていることを特徴とする電動アクチュエータのカム構造。
【請求項2】
前記調整用溝は、調整用工具が最奥部まで到達できるように幅寸法が大きく形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動アクチュエータのカム構造。
【請求項3】
前記溝形成部の先端部上下部分に、上下方向に突出する位置合わせ突起がそれぞれ形成されており、前記位置合わせ突起の上下面の少なくとも一面が、前記取付部の中心部分の上下面より内側に位置するように形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動アクチュエータのカム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−254147(P2009−254147A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99518(P2008−99518)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】