説明

電動アクチュエータ

【課題】 出力軸の回動の駆動力として伝達されるべき減速歯車の回転力が、出力軸を傾かせる力として作用しても、回転角検出装置の本体とシャフトの適正な角度(略直角)を保ちながら保持する。
【解決手段】 保持具62は、ベース部51に締結される締結部62aと、回転角検出装置60を装着する装着部62bと、一対の軸受部56の軸受中心を結ぶ仮想直線L5に対する出力軸57の傾きに応じて変位する受動部62cを有し、受動部62cの変位に応じて装着部62bを変位させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば流体配管における弁体を所定の角度範囲で回動することにより、流路断面積を連続的に変化させ、その弁体を流れる流体の流量を制御することのできる電動アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような弁体を回動するための電動アクチュエータとして、弁体に接続され、所定の角度だけ回動するように内蔵したモータからの駆動力をその弁体に伝達する出力軸と、その出力軸の角度情報を得るためのポテンショメータのシャフトとが一対の歯車を介して連結された構成が知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この先行技術によれば、出力軸は、プレート状のベース部の下方で所定の間隔をおいて離間配置された一対の軸受部によりベース部の上下面に対して直交する方向に回動軸心を有するように取り付けられている。
【0004】
その出力軸は、一対の軸受部により回動可能に軸支されているが、一対の歯車を介してポテンショメータと連結させることにより、出力軸からポテンショメータに対して所望の減速又は増速の変換に対応して歯車比を適宜選択することができる。
【0005】
これにより、出力軸が90°回転式と多回転式のいずれの場合であっても、一対の歯車を除いて電動アクチュエータを共用することができる。
【0006】
さらに、一対の歯車を介さずに出力軸とポテンショメータを直結することにより、前述した一対の歯車から生じるバックラッシュが少なくなり弁体の回転角度の計測精度を改善した構成も知られていた(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
その従来の技術を、図8を参照しながら説明する。
【0008】
図8において、電動コントロール弁101は、配管(図示せず)に設置されたボール弁102(バルブ)と、その開閉操作を行う電動操作ユニット103を有する。
【0009】
また、ボール弁102(二方弁)は、一端から他端に向かって流体が流動する本体121とその内部に固設された一対の弁座122と、外周面が弁座122に当接する略球体状の弁体123と、弁体123を約90°の範囲で回動する弁棒124を有している。
【0010】
電動操作ユニット103は、一端側(下端)がそれと同軸に連結された出力軸131を有している。
【0011】
また、出力軸131は、その中間部においてベース141に設けられた軸受133とプレート142に設けられた軸受134によりプレート142に回転自在に支持されている。
【0012】
そして、モータ105の回転力が一乃至複数の減速歯車106a〜106eを介して出力軸131に固定された駆動歯車132に伝達されるため、モータ105の出力は増力されて出力軸131が回転駆動される。
【0013】
これにより、弁体123の開閉動作を円滑に行うことができる。
【0014】
また、制御基板107は、プレート142に立設された複数(例えば、2つ)のステイ144で支持され、出力軸131は制御基板107を突き抜けるような長さを有する。
【0015】
さらに、出力軸131の反負荷側である一端側(上端)には、その回転角度を検出してバルブの全開位置及び全閉位置を含む現在開度に対応する角度データを取得するためのポテンショメータ109が直結されている。
【0016】
これにより、前述したような一対の歯車から生じるバックラッシュがなくなるため、回転角度の検出精度を高めることができる。
【0017】
そして、ポテンショメータ109において、金属製摺接子の設けられた可変側端子は、出力軸131によって抵抗体の上を回動するため、その可変側端子を制御回路108に接続することにより、現在角度データに応じた電気信号を制御回路108に入力することができる。
【0018】
さらに、回転角度を検出するためのシャフトを支持するベアリングを内蔵し、そのシャフトの回動と連動して抵抗体と連続的に摺接するブラシを有し、そのブラシの位置に応じた電圧出力により回転角度の検出を行う抵抗体式の回転センサも知られていた(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】 特開平5−141558号公報
【特許文献2】 特開2009−115220号公報
【特許文献3】 特開平6−185975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、従来技術のような構成の電動アクチュエータにおいては、弁体が閉じようとする動きが阻害されるような過負荷が出力軸に加わると、モータから出力軸に伝達された回転力が出力軸を傾かせようとする力として作用するため、出力軸の傾きがポテンショメータのシャフトの傾きにも直接影響し易いという課題を有していた。
【0021】
例えば、弁体と流体配管との間に異物が挟まった場合や弁体自体の変形等により弁体がスムーズに開閉しない、所謂過負荷の場合においては、弁体に接続された出力軸が回動し難くなった分、モータから一乃至複数の減速歯車を介して出力軸の回動の駆動力として伝達されるべき力の大部分が、減速歯車から出力軸に固定された駆動歯車に対してその出力軸を傾かせようとする力として作用する。
【0022】
一方、出力軸が滑らかに回動するように、あらかじめ出力軸と、それを軸支する一対の軸受部との間又はそれぞれの軸受部とその軸受部を格納する格納部との間の径方向にはそれぞれわずかな隙間が設定されている。
【0023】
例えば、出力軸の外径は基準寸法Aに対しマイナス公差で製作され、それを軸支する一対の軸受部の内径は基準寸法Aに対しプラス公差で製作されている。
【0024】
また、それぞれの軸受部の外径は基準寸法Bに対しマイナス公差で製作され、その軸受部を格納する格納部の内径は基準寸法Bに対しプラス公差で製作されている。
【0025】
その結果、両者の間には「はめあい」を可能とする寸法差(隙間)が存在するため、出力軸に対して負荷が加わらない時における一対の軸受部の軸受中心を結ぶ仮想直線に対し、出力軸が傾く原因となっていた。
【0026】
一方、ポテンショメータの本体は制御基板等に実装されしっかりと固定されているため、その本体に対しては出力軸に直結されたポテンショメータのシャフトにも同様の傾きが生じることとなる。
【0027】
したがって、出力軸が傾くとポテンショメータの本体下部の下面とシャフトを適正な角度(例えば略直角、以下同じ)で維持することが困難であった。
【0028】
その結果、そのシャフトの傾きによりポテンショメータの本体の抵抗体とシャフトに連動したブラシとの摺接状態が変化し、正確な回転角度の計測精度が得られないという課題があった。
【0029】
また、ポテンショメータが、抵抗式ではなく、磁気センサがシャフトに取り付けられた様式であっても、その本体とシャフトが適正な角度を保つことを前提として設計されているため、同様の課題があった。
【0030】
また、いずれの様式であっても、本体に対してそのシャフトはベアリングを介して摺動可能に取り付けられているため、出力軸が傾くとそれに直結されたシャフトもベアリングに対して偏心して片当たりするため、そのベアリングやシャフトに摩耗が生じ短寿命化する懸念も生じていた。
【0031】
さらに、出力軸の反負荷側にポテンショメータのシャフトが直結された場合ではなく、ポテンショメータの本体が制御基板等に実装されしっかりと固定され、そのポテンショメータのシャフトが一対の変速ギアを介して出力軸の回転角度を検知するという、所謂非直結型の場合であっても、出力軸の傾きがその一対の変速ギヤを介してポテンショメータのシャフトの傾きとして伝達されてしまうため、同様の課題があった。
【0032】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、出力軸の傾きに応じて回転角検出装置を変位させることのできる保持具を備えた電動アクチャエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0033】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電動アクチュエータは、ベース部と、そのベース部に対して直交する方向に回動または回転の軸心を有する出力軸と、出力軸を回動または回転可能に軸支するように離間配置された一対の軸受部と、出力軸の回転角度の変位を検出する回転角検出装置と、その回転角検出装置を支持する保持具とを備えた電動アクチュエータであって、保持具は、出力軸に対して負荷が加わらない時における一対の軸受部の軸受中心を結ぶ仮想直線に対して出力軸が所定の角度以上に傾いた場合、その傾きに応じて変位する受動部と、その受動部と連動することにより、回転角検出装置の本体を変位させる装着部と、を有することを特徴としている。
【0034】
この構成によれば、弁体の閉じようとする動きを阻害するような過負荷が出力軸に加わり、モータから出力軸に伝達された回転力が出力軸を傾かせようとする力として作用しても、出力軸の傾きが回転角検出装置のシャフトの傾きに直接影響し難いという効果が得られる。
【0035】
つまり、モータから一乃至複数の減速歯車を介して出力軸の回動の駆動力として伝達されるべき力の大部分が、減速歯車から出力軸に固定された駆動歯車に対して出力軸を傾かせようとする力として作用し、出力軸が傾いてもその傾きの大きさに応じて回転角検出装置も変位するため、回転角検出装置の本体に対するシャフトの傾きが軽減される。
【0036】
すなわち、回転角検出装置は、保持具により本体とシャフトの適正な角度を保ちながら保持される。
【0037】
その結果、回転角検出装置の本体の抵抗体とシャフトに連動したブラシとの摺接状態が変化することが少なくなるため、より正確な回転角度の計測精度が得られる。
【0038】
そして、シャフトが片当たりすることによるシャフトやベアリングの摩耗が少なくなり、短寿命化の懸念も少なくなる。
【0039】
また、本発明の電動アクチュエータは、前記構成に加え、保持具の装着部は、受動部の変位に応じて、回転角検出装置の本体と、回転角検出装置のシャフトとの角度を、出力軸が所定の角度以上に傾く前の状態に保つように回転角検出装置の本体を変位させることが好ましい。
【0040】
この構成によれば、回転角検出装置は、保持具により本体とシャフトの適正な角度を保ちながら保持される。
【0041】
その結果、回転角検出装置の本体の抵抗体とシャフトに連動したブラシとの摺接状態が変化することが少なくなるため、より正確な回転角度の計測精度が得られる。
【0042】
そして、シャフトが片当たりすることによるシャフトやベアリングの摩耗が少なくなり、短寿命化の懸念も少なくなる。
【0043】
また、本発明の電動アクチュエータは、前記構成に加え、保持具は、ベース部に締結される締結部と、装着部と締結部の間を連結する弾性部材とを有し、その弾性部材の中間部分に受動部を備えることが好ましい。
【0044】
この構成によれば、装着部と締結部とが弾性部材によって連結されているので、出力軸の傾きに応じて容易に装着部を変位させることができるのに加え、出力軸の過負荷が解消されれば傾きのない通常の状態に復元させることも容易となる。
【0045】
つまり、電動アクチュエータの作動時において、出力軸のわずかな傾きに応じて受動部を介し保持具が復元可能にたわむことにより、回転角検出装置は、本体とシャフトの適正な角度を保ちながら保持される。
【0046】
また、本発明の電動アクチュエータは、前記構成に加え、少なくとも3箇所において折り曲げ部を有する平板状の金属部材から構成され、一方端の折り曲げ部が締結部を構成し、他方端の折り曲げ部が装着部を構成し、中間部分を開口した折り曲げ部が受動部を構成することが好ましい。
【0047】
この構成によれば、平板状の金属部材を所定の折り曲げ加工することで容易に簡素な保持具を製作できる。
【0048】
また、受動部を構成するため、金属部材の中間部分を開口した折り曲げ部を設けたことにより、主平板が傾くようにたわむ方向の弾性だけでなく、主平板が捻れるような方向の弾性も得やすくなるため、出力軸の傾きに応じて受動部がより変位し易くなるという効果が得られる。
【0049】
また、本発明の電動アクチュエータは、前記構成に加え、保持具は、ベース部に締結される締結部と、受動部と装着部との間を連結する第1の弾性部材と、装着部と締結部との間を連結する第2の弾性部材とを有し、一対の軸受部のうち、出力軸の反負荷側に位置する軸受部の外周部分は、受動部の円形開口部と嵌合することが好ましい。
【0050】
この構成によれば、受動部と締結部との間の一部が弾性部材によって連結されているので、出力軸の傾きに応じて軸受部を介して容易に受動部を変位させることができるのに加え、出力軸の過負荷が解消されれば傾きのない通常の状態に復元させることも容易となる。
【0051】
つまり、電動アクチュエータの作動時において、出力軸のわずかな傾きに応じて受動部を介し保持具が復元可能にたわむことにより、回転角検出装置は、本体とシャフトの適正な角度を保ちながら保持される。
【発明の効果】
【0052】
本発明の電動アクチュエータによれば、回転角検出装置の本体とシャフトの適正な角度を保ちながら保持できる保持具を備えた電動アクチャエータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】従来の電動コントロール弁の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における保持具の全体斜視図
【図3】本発明の実施の形態1における保持具の実装状態を示す部分断面図
【図4】(a)駆動歯車と減速歯車に対して保持具の受動部の変位する方向を示す概略平面図、(b)駆動歯車と減速歯車の噛み合い状態を示す部分拡大概略図
【図5】本発明の実施の形態2における電動アクチュエータの部分断面図
【図6】(a)本発明の実施の形態2における保持具の全体斜視図、(b)本発明の実施の形態2における保持具のX方向の背面図
【図7】本発明の実施の形態2における保持具の実装状態を示す図
【図8】従来の電動コントロール弁の断面図
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0055】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における電動アクチュエータの部分断面図で、図2は、本発明の実施の形態1における保持具の全体斜視図で、図3は、本発明の実施の形態1における保持具の実装状態を示す部分断面図で、図4(a)は、駆動歯車と減速歯車に対して保持具の受動部の変位する方向を示す概略平面図で、図4(b)は、駆動歯車と減速歯車の噛み合い状態を示す部分拡大概略図である。
【0056】
まず、図1で示したように、電動アクチュエータ10において、水平方向に広がるプレート状のベース部11は、水平方向に配置されている。
【0057】
そして、ベース部11の外周部の段差部分と上カバー部13との間には、可撓性を有するガスケット12が挟み込まれているため、外部との密閉性が良好に保たれている。
【0058】
また、ベース部11は、例えばADC(アルミダイキャスト)又はS45C(炭素の添加量が0.45%の炭素鋼)等の比較的剛性の高い素材で形成されており、その上部に配置されたモータ14や下部に配置された減速歯車32(図4(a)参照)等が相互に連動するように所定の強度を有している。
【0059】
そして、ベース部11の中央からやや左側には丸い開口11a(図3参照)が形成され、ベース部11の上下面に対して直交する方向(垂直方向)に回動の軸心を有する出力軸15が回動又は回転可能に軸支されている。
【0060】
ここで、ケーブルコネクタ16に接続されたケーブル17の入力端子(図示せず)に対して、外部の交流電源から所定の電力が供給されると、その電力が2点鎖線で示した電源基板18を介して所定の電圧に変換された後にコントロールパネル19に供給される。
【0061】
そうすると、モータ14は、外部からケーブル17とは異なる別ケーブル(図示せず)から入力される制御信号に応じて正転又は逆転の所定の回転駆動力を発生する。
【0062】
次に、モータ14の回転駆動力は、モータ14の回転軸(図示せず)に直結されたモータ歯車31(図4(a)参照)に伝達される。
【0063】
次に、モータ歯車31の回転駆動力は、ベース部11の下方に配置された前述の減速歯車32(図4(a)参照)を介し、最終的に出力軸15に直結された駆動歯車30(図4(a)参照)に伝達される。
【0064】
その際、モータ14の回転駆動力は、モータ歯車31、減速歯車32及び駆動歯車30の組み合わせやそれらの歯車比に応じて所定のトルクまで増大され、最終的に出力軸15まで伝達される。
【0065】
これにより、出力軸15の負荷側(図1では下方側)に接続される弁体(図示せず)等を回動又は回転する駆動力に変換される。
【0066】
一方、出力軸15の反負荷側(図1では上方側)には、回転角検出装置20のシャフト20a(図3参照)がカップリング部材28(図3参照)を介して接続(回転角検出装置20のシャフト20aが出力軸15と固定的に結合されているため、これを直結型と称する)されているため、その出力軸15の回転角度の変位を精度良く検出できるようになっている。
【0067】
そして、回転角検出装置20は、シャフト20aの回転角度の変位に応じた電圧又は電流信号をコントロールパネル19に出力する。
【0068】
次に、コントロールパネル19は、回転角検出装置20から出力された電圧又は電流信号と外部から別ケーブルを介して入力された制御信号に応じて、所定の処理がなされ、最終的に出力軸15の所望の回動制御を行っている。
【0069】
また、コントロールパネル19の周囲は、絶縁カバー21で取り囲まれているので、起動中の振動などの影響による電気的かつ機械的な接触を未然に防止できるようになっている。
【0070】
ここで、破線で示した上下に並ぶ一対の軸受部22は、いずれもベース部11の下方に位置し、出力軸15の軸心がベース部11の上下面に対して直交する位置を確保できるように、例えば30mm〜100mmの所定の間隔をおいて離間配置されている。
【0071】
これにより、出力軸15は、一対の軸受部22により、それらの軸受中心を結ぶ仮想直線L1(一点鎖線の直線)を回動軸心として、回動又は回転可能に軸支される。
【0072】
ここで、仮想直線L1(一点鎖線の直線)は、出力軸15に対して負荷が加わらない時における一対の軸受部22の軸受中心を結ぶ仮想直線である。
【0073】
一方、保持具25は、回転角検出装置20のシャフト20a(図3参照)が出力軸15の回動の軸心上(仮想直線L1上)に位置するように回転角検出装置20の本体を支持している。
【0074】
また、保持具25の下部に位置する締結部25a(図2参照)は、横に並ぶ2つの固定ネジ26により2箇所がベース部11の上面に締結されている。
【0075】
これにより、保持具25は、その長手方向(上下方向)が出力軸15の回動の軸心(仮想直線L1)と略平行になるようにベース部11の上部に固定される。
【0076】
以上の構成により、出力軸15の反負荷側と回転角検出装置20のシャフト20aを同軸心上で接続(固定的に結合)させることが可能となっている。
【0077】
加えて、保持具25は、回転角検出装置20を、その本体とシャフト20aの適正な角度(例えば、略直角)を保ちながら保持している。
【0078】
その結果、回転角検出装置20の本体内の抵抗体とシャフト20aに連動したブラシとの摺接状態の変化が少なくなるため、シャフト20aの回転角度の変位を回転角検出装置20により精度良く検出できるようになっている。
【0079】
また、オペレータは、開度表示部23を観察することにより、出力軸15の開度の状態を容易に感知できる。
【0080】
これにより、オペレータは、外部から電力や制御信号が与えられない状態であっても、ベース部11の下方へ突出するように取り付けられた手動操作軸24を手動で回しながら出力軸15の開度を調整できる。
【0081】
したがって、出力軸15の負荷側に接続された弁体のメンテナンスやトラブル処置にも容易に対応できる。
【0082】
次に、図2を参照して保持具25の基本構成について説明する。
【0083】
まず、保持具25は、その長手方向(上下方向)の直交断面形状が、板厚が0.5〜2.6mmで、幅が20.0〜60.0mmの矩形となるよう、平板状の金属部材から構成されている。
【0084】
そして、保持具25は、少なくとも3箇所において折り曲げ部を有し、下方端の折り曲げ部が締結部25aを構成し、上方端の折り曲げ部が回転角検出装置20の本体を装着する装着部25bを構成し、中間部分を開口した折り曲げ部が受動部25cを構成している。
【0085】
ここで、受動部25cは、装着部25bと締結部25aとの中間部分に備えられているが、弾性部材である主平板25dに一体的に形成されている。
【0086】
また、これら3つの折り曲げ部は、長手方向(上下方向)に伸張する主平板25dに対していずれも略直角に折り曲げられ、その付け根部分が塑性変形されているので、いずれにおいてもその折り曲げ角度が保たれている。
【0087】
なお、装着部25bと受動部25cは、同一の方向に折り曲げられているが、締結部25aは、その方向に対して真反対の方向に折り曲げられている。
【0088】
特に、受動部25cは、装着部25bと締結部25aを連結する主平板25dの一部分が上向きのコの字状に切断され、その部分が主平板25dから切り離され直角に折り曲げられるため、その折り曲げ加工と同時に矩形の開口部25eが形成される。
【0089】
この開口部25eを形成することにより、主平板25dの幅方向の両側に、その直交断面形状における幅方向の長さと板厚方向の長さの比が1:1〜3:1の範囲となる矩形の連結部25fが設けられることになる。
【0090】
そして、締結部25aには、前述した固定ネジ26(図1及び図3参照)が挿通される締め孔25gが2箇所に形成されている。
【0091】
さらに、装着部25bには、回転角検出装置20の本体を嵌挿するための円形開口部25hが設けられ、受動部25cには、例えば割りブッシュ等の摺接部材27(図3参照)を圧入するための円形開口部25iが設けられている。
【0092】
なお、保持具25の金属素材としては、例えばSECC(亜鉛めっき)鋼板やばね用ステンレス鋼が好ましく、このような金属素材を選択することにより、主平板25dと連結部25fにおいて所定の弾性が得られるとともに、孔空けや折り曲げ等のプレス成形加工も容易となっている。
【0093】
また、保持具25に対して出力軸15を傾かせるような比較的大きな力が作用しても弾性部材としての機能を有効に発揮できる。
【0094】
換言すれば、出力軸15が所定の角度以上に傾いた場合、出力軸15の傾きに応じて受動部25cが変位し、受動部25cと連動する装着部25bを変位させることができる。
【0095】
加えて、出力軸15を傾かせる力が解除される(過負荷が解消される)と、出力軸15を、倒れのない自然の状態(出力軸15の軸心が、出力軸15に対して負荷が加わらない時における、一対の軸受部22の軸受中心を結ぶ仮想直線L1と略一致又は略平行となる状態)に復元させることも容易となる。
【0096】
すなわち、装着部25bは、受動部25cと連動することにより、主平板25dの弾性変形により締結部25aを支点として振り子の動作のように受動部25cと同じ方向に変位し、出力軸15を傾かせる力が解除される(過負荷が解消される)と主平板25dの復元力により変位前の元の位置に自然に戻る。
【0097】
また、前述したように受動部25cは、装着部25bと締結部25aとの間を連結する弾性部材である主平板25dの中間部分を開口した折り曲げ部により構成されている。
【0098】
したがって、主平板25dは、その幅方向の両側に、弾性部材の連結部25fも有することになり、主平板25dが倒れるように傾く方向だけでなく、主平板25dが長手方向(上下方向)を仮想中心軸として捻れるような方向の弾性も得やすくなる。
【0099】
これにより、保持具25が平板状の金属部材であっても、弾性を有する方向の範囲が拡がり、出力軸15が所定の角度以上に傾いた場合、その傾きに応じて受動部25cが変位し易くなるという効果が得られる。
【0100】
以上述べたように、出力軸15に過負荷が与えられると、モータ14から減速歯車32を介して出力軸15を回動する駆動力として伝達されるべき力の大部分が、減速歯車32から出力軸15に固定された駆動歯車30に対して出力軸15を傾かせようとする力として作用する。
【0101】
そして、出力軸15が所定の角度以上に傾いたとしても、受動部25cと連動して装着部25bが変位するため、その傾きに応じてその回転角検出装置20の本体を変位させることができる。
【0102】
これにより、回転角検出装置20の本体に対するシャフト20a(図3参照)の傾きが軽減される。
【0103】
つまり、電動アクチュエータ10の作動時において、出力軸15が所定の角度以上に傾いた場合、その傾きに応じて受動部25cを介し保持具25の主平板25dが復元可能にたわむことにより、回転角検出装置20は、保持具25により、本体とシャフト20aが適正な角度を保ちながら保持される。
【0104】
なお、本実施の形態1における回転角検出装置20の本体とシャフト20aの適正な角度とは、出力軸15が所定の角度以上に傾く前の状態における角度であって、本体下面とシャフト20aの回動軸心との角度が略直角となる角度である。
【0105】
次に、図3を参照し、保持具25の実装状態とその作用について詳細に説明する。
【0106】
ここで、保持具25の断面をハッチングで示したが、保持具25は、下方に位置する締結部25aの下面がベース部11の上面と接触した状態で、2つの締め孔26g(図2参照)に挿通された固定ネジ26により強固にベース部11に締結されている。
【0107】
その結果、保持具25は、その長手方向(上下方向)が出力軸15の回動の軸心と平行になるようにベース部11の上部に立設される。
【0108】
一方、上方に位置する装着部25bの円形開口部25h(図2参照)には、回転角検出装置20の本体下部20bが嵌挿された状態で、雄ねじ部20cにナット20dが螺合されて締め付けられている。
【0109】
その際、回転角検出装置20の本体とナット20dとの間に、装着部25bとその真下に嵌挿されるゆるみ止め用のワッシャ類が併せて挟着されるため、回転角検出装置20が装着部25bに対して強固に締結される。
【0110】
また、受動部25cには、前述したように円形開口部25i(図2参照)が予め形成され、その円形開口部25iに、例えば下方端に鍔の付いた割りブッシュ等の摺接部材27が圧入により嵌合されている。
【0111】
また、回転角検出装置20の本体下部20bから突出したシャフト20aの下方端面と、出力軸15の反負荷側の上方端面とを当接させ、シャフト20aと出力軸15のそれぞれをセットビス(図示せず)でカップリング部材28に固定することにより、シャフト20aと出力軸15が同じ回動の軸心上で直結型に接続される。
【0112】
さらに、カップリング部材28の中央からやや下がった部分には、上下方向の位置を規制するためのCリング29がその外周凹部に嵌挿されている。
【0113】
そして、カップリング部材28は、摺接部材27の内周側に摺接するように配置されている。
【0114】
ここで、例えば摺接部材27を構成する割りブッシュの全長を7mm、内径をφ12mmと設定すれば、その内径とカップリング部材28の外径との寸法差を1μm〜22μmに設定するのが好ましい。
【0115】
通常、出力軸15は、一対の軸受部22の内径と出力軸15の外径との寸法差(はめあいを可能とする隙間)等により0.08度〜0.8度の範囲で傾くと想定されるが、これは摺接部材27の下端部が例えば矢印Mの方向に約40μm〜400μmの長さで変位するのに相当する。
【0116】
このため、摺接部材27の内径とカップリング部材28の外径との寸法差を上述した範囲に設定することにより、出力軸15の傾きが0.08度〜0.8度の範囲であっても、その傾きに応じて受動部25cを十分に変位させることが可能となっている。
【0117】
また、保持具25において、締結部25aから装着部25bまでの全高Hを50mmと設定すれば、その全高Hに対して締結部25aから受動部25cまでの高さhは、全高Hの50%〜70%の範囲に設定するのが好ましい。
【0118】
この範囲であれば、保持具25において受動部25cと装着部25bは、主平板25dの弾性変形により、締結部25aを支点として振り子の動作のように同一方向に変位するが、出力軸15を傾かせる力が解除される(過負荷が解消される)と主平板25dの復元力により変位前の元の位置に自然に戻る。
【0119】
なお、本図でも明らかなように、出力軸15が例えば矢印Mで示した方向に倒れるように傾くと、カップリング部材28も同じ方向に変位して、カップリング部材28と摺接部材27が摺接(滑りながら接触)するため、出力軸15を傾かせる力によって受動部25cもほぼ同じ方向に変位する。
【0120】
なお、両者間の摺接がスムーズに行われるためには、摺接部材27の素材として、モリブデンコーティング剤や銅系ポーラス材等を選択するのが好ましく、カップリング部材28の素材としてはそれよりも硬度の高いSS400、S45C等の炭素鋼を選択するのが好ましい。
【0121】
以上のような構成にすることにより、一対の軸受部22の軸受中心を結ぶ仮想直線L1(図1参照)に対して、出力軸15が所定の角度以上に傾いた場合、出力軸15の傾きに応じて受動部25cが変位し、その変位に応じて装着部25bも連動して変位する。
【0122】
すなわち、電動アクチュエータ10の作動時において、出力軸15が所定の角度以上に傾いた場合、その出力軸15を傾かせようとする力がカップリング部材28から摺接部材27に作用し、その傾きの大きさや方向に応じて受動部25cを介し保持具25の主平板25dが倒れる方向や捻れる方向へ弾性変形するため、装着部25bも受動部25cとほぼ同じ方向に変位する。
【0123】
これにより、保持具は、回転角検出装置20を、その本体とシャフト20aの適正な角度を保ちながら保持できる。
【0124】
次に、図4(a)、(b)を参照して、前述した出力軸15に固定された駆動歯車30とそれに噛み合う減速歯車32の配置に対する受動部25cの変位する方向を説明する。
【0125】
本図においては、出力軸15に固定された駆動歯車30とそれと噛み合う減速歯車32は、いずれも平歯車であって、それらと受動部25cの変位方向の位置関係を上方から見た概略図で示している。
【0126】
図4(a)で示したように、例えば図示しない弁体が閉じられる際においては、モータ14の回転軸に直結されたモータ歯車31は矢印で示した時計方向に回転し、その回転駆動力は、反時計方向に回転する減速歯車32を介し、出力軸15の駆動歯車30を時計方向に回動する駆動力として伝達される。
【0127】
ここで、一点鎖線で示した仮想直線L2は、駆動歯車30と減速歯車32のそれぞれの軸心を同一直交断面上で結ぶ直線であり、この仮想直線L2に対し、受動部25cの変位する方向を矢印Tで示した。
【0128】
これらモータ歯車31、減速歯車32及び駆動歯車30は、いずれも図1で示した一対の軸受部22に挟まれた空間に配置されているため、出力軸15の負荷側に弁体を介して過負荷が加わると、モータ14から出力軸15に伝達された回転力が出力軸15を傾かせようとする力として作用するため、出力軸15の負荷側を支点とした傾きが生じる。
【0129】
ここで、仮想直線L2を基準とした場合に、出力軸15の傾きによる受動部25cの変位方向(矢印Tの方向)の角度θは、最大で図4(b)で示した反時計回りの減速歯車32とそれと噛み合う時計回りの駆動歯車30の噛み合い圧力角α(仮想直線L2と直線L3の間の角度)に相当するため、0度から噛み合い圧力角αの範囲に収まる。
【0130】
なお、噛み合い圧力角αとは、歯面の一点(普通はピッチ点)において、その半径線と歯形への接線(直線L3)とのなす角であって、これを図4(b)に示している。
【0131】
つまり、平歯車の場合であれば、噛み合い圧力角αは20度であるため、出力軸15が所定の角度以上に傾いた場合における受動部25cの変位方向の角度θは、0度から20度の範囲に存在することになる。
【0132】
一方、保持具25においては、二点鎖線で示した直線L4に沿った方向において、最も効率よく、倒れるように傾く方向の弾性が得られる。
【0133】
しかしながら、前述したように主平板25dの中間部分に開口部25eが形成され、その幅方向の両側に連結部25fを有するため、主平板25dが捻れる方向の弾性も得られ易くなっているため、矢印Tの方向においても十分な弾性を有している。
【0134】
以上のように、モータ14から減速歯車32を介して出力軸15の回動の駆動力として伝達されるべき力の大部分が、減速歯車32から出力軸15に固定された駆動歯車30に対して出力軸15を傾かせようとする力として作用し、出力軸15が所定の角度以上に傾いた場合、その傾きに応じて、効率よく受動部25cを変位させることができる。
【0135】
したがって、保持具25は、回転角検出装置20を、その本体とシャフト20aの適正な角度を保ちながら保持できるため、その分だけ回転角検出装置20の本体に対するシャフト20aの傾きが軽減される。
【0136】
その結果、回転角検出装置20の本体の抵抗体とシャフト20aに連動したブラシとの摺接状態が変化することが少なくなるため、より正確な回転角度の計測精度が得られる。
【0137】
また、シャフト20aが片当たりすることによるシャフト20aやベアリング(図示せず)の摩耗が少なくなり、短寿命化の懸念も少なくなる。
【0138】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2における電動アクチュエータの部分断面図で、図6(a)は、本発明の実施の形態2における保持具の全体斜視図で、図6(b)は、本発明の実施の形態2における保持具のX方向の背面図で、図7は、本発明の実施の形態2における保持具の実装状態を示す斜視図である。
【0139】
まず、図5で示したように、電動アクチュエータ50において、プレート状のベース部51は、水平方向に配置されているため、その上下面は水平方向に広がっている。
【0140】
そして、ベース部51の外周部の外側において、下カバー部52と上カバー部53との間には、可撓性を有するガスケット54が挟み込まれているため、外部との密閉性が良好に保たれている。
【0141】
ここで、ベース部51は、例えばADC(アルミダイキャスト)又はS45C(炭素の添加量が0.45%の炭素鋼)等の比較的剛性の高い素材で形成されており、その上部に配置されたモータ55や下部に配置された減速歯車(図示せず)等が相互に連動するように所定の強度を有している。
【0142】
そして、ベース部51の略中央には、丸い開口が形成され、一対の軸受部56のうち出力軸57の反負荷側(図5では上方側)に位置する方が格納されている。
【0143】
また、下カバー部52の下方の内側には、一対の軸受部56のうち出力軸57の負荷側(図5では下方側)に位置する方が格納されており、これら一対の軸受部56により、ベース部51(ベース部51の上下面)に対して直交する方向(垂直方向)に回動の軸心を有する出力軸57が回動又は回転可能に軸支されている。
【0144】
ここで、ケーブルコネクタ(図示せず)に接続されたケーブルの入力端子(図示せず)に対して、外部の交流電源から所定の電力が供給されると、その電力の一部が所定の電圧に変換された後に2点鎖線で示したコントロールパネル58に供給される。
【0145】
そうすると、モータ55は、外部から上記ケーブルとは異なる別ケーブル(図示せず)から入力される制御信号に応じて正転又は逆転の所定の回転駆動力を発生する。
【0146】
次に、モータ55の回転駆動力は、モータ55の回転軸(図示せず)に直結されたモータ歯車(図示せず)に伝達される。
【0147】
次に、モータ歯車の回転駆動力は、ベース部51の下方に配置された前述の減速歯車を介し、最終的に出力軸57に直結された駆動歯車59に伝達される。
【0148】
その際、モータ55の回転駆動力は、モータ歯車、減速歯車及び駆動歯車59の組み合わせやそれらの歯車比に応じて所定のトルクまで増大され、最終的に出力軸57まで伝達される。
【0149】
このようにして、出力軸57の負荷側(図5では下方側)に接続される弁体(図示せず)等を回動する駆動力に変換される。
【0150】
一方、出力軸57の反負荷側(図5では上方側)には、回転角検出装置60のシャフト60aが一対の歯車61を介して接続され(回転角検出装置60のシャフト60aが出力軸57と固定的に結合されていないため、これを非直結型と称する)、その出力軸57の回転角度の変位を精度良く検出できるようになっている。
【0151】
そして、回転角検出装置60は、シャフト60aの回転角度の変位に応じた電圧又は電流信号をコントロールパネル58に出力する。
【0152】
次に、コントロールパネル58は、回転角検出装置60から出力された電圧又は電流信号と外部から別ケーブルを介して入力された制御信号に応じて、所定の処理がなされ、最終的に出力軸57の所望の回動制御を行っている。
【0153】
また、コントロールパネル58の周囲は、必要に応じ絶縁カバー(図示せず)で取り囲まれているので、起動中の振動などの影響による電気的かつ機械的な接触を未然に防止できるようになっている。
【0154】
ここで、前述したように上下に並ぶ一対の軸受部56のうち、反負荷側の方がベース部51の略中央に形成された丸い開口(格納部)に格納され、負荷側の方が下カバー部52の下方の内側(格納部)に格納されている。
【0155】
そして、一対の軸受部56は、出力軸57の軸心がベース部51の上下面に対して直交する位置を確保できるように、例えば30mm〜100mmの所定の間隔をおいて離間配置されている。
【0156】
これにより、出力軸57は、一対の軸受部56により、それらの軸受中心を結ぶ仮想直線L5(一点鎖線の直線)を回動軸心として、回動又は回転可能に軸支される。
【0157】
ここで、仮想直線L5(一点鎖線の直線)は、出力軸57に対して負荷が加わらない時における一対の軸受部56の軸受中心を結ぶ仮想直線である。
【0158】
一方、ハッチングでその断面を示した保持具62は、回転角検出装置60のシャフト60aが一対の歯車61を介して出力軸57の回転角度の変位を精度良く検出できるように、回転角検出装置60の本体を支持している。
【0159】
また、保持具62の一方端において延設された締結部62a(図6(a)と図6(b)参照)は、固定ネジ63(図7参照)を締め孔62g(図6(a)と図6(b)参照)を挿通させてベース部51に螺合することにより、ベース部51の上面に締結される。
【0160】
一方、保持具62の他方端に位置する受動部62cには、円形開口部62i(図6(a)参照)が予め形成され、その円形開口部62iに、前述した一対の軸受部56のうち、反負荷側(図5では上方側)の方の外周部分が嵌合している。
【0161】
さらに、保持具62は、受動部62cと締結部62aの間を連結する2つの弾性部材を有し、それら弾性部材に挟まれた部分に装着部62b(図6(a)と図6(b)参照)を備えている。
【0162】
また、上方に位置する装着部62bの円形開口部62h(図6(a)参照)には、回転角検出装置60の本体下部60bが嵌挿された状態で、雄ねじ部60cにナット60dが螺合されて締め付けられている。
【0163】
その際、回転角検出装置60の本体とナット60dとの間に、保持具62の装着部62bとその真下に嵌挿されるゆるみ止め用のワッシャ類が併せて挟着されるため、回転角検出装置60が装着部62bに対して強固(ゆるみなく)に締結される。
【0164】
以上の構成により、出力軸57の反負荷側(図5では上方側)には、回転角検出装置60のシャフト60aが一対の歯車61を介して接続(非直結型の接続)されているため、その出力軸57の回転角度の変位を精度良く検出することが可能となっている。
【0165】
加えて、保持具62は、回転角検出装置60を、その本体とシャフト60aの適正な角度を保ちながら保持している。
【0166】
なお、本実施の形態2における回転角検出装置60の本体とシャフト60aの適正な角度とは、出力軸57が所定の角度以上に傾く前の状態における角度であって、本体下面とシャフト60aの回動軸心との角度が略直角となる角度である。
【0167】
その結果、回転角検出装置60の本体内の抵抗体とシャフト60aに連動したブラシとの摺接状態の変化が少なくなるため、シャフト60aの回転角度の変位を回転角検出装置60により精度良く検出できるようになっている。
【0168】
次に、図6(a)、図6(b)及び図7を参照して、保持具62の基本構成と保持具62が電動アクチュエータ50に実装された状態とその作用について説明する。
【0169】
ここで、図6(a)、図6(b)及び図7における説明を容易にするため、保持具62の全長方向をX方向、幅方向をY方向、高さ方向をZ方向とし、X方向、Y方向およびZ方向は、相互に直交する方向を示すものとする。
【0170】
まず、保持具62は、板厚が0.5〜2.6mmの平板状の金属部材が複数箇所で折り曲げられて成形加工されている。
【0171】
そして、右端の折り曲げ部が締結部62aを構成し、左端の円環形状(リング形状)の折り曲げ部が受動部62cを構成し、それらの中間部分に位置しZ方向の最上部に相当する平坦部分が、回転角検出装置60の本体を装着する装着部62bを構成している。
【0172】
また、保持具62は、締結部62aから受動部62cまでのX方向の全長が50〜70mm、Y方向の最大幅長が35〜50mm、締結部62aの底面から装着部62bの上面までのZ方向の全高が6〜10mmの範囲に収まるように成形加工されている。
【0173】
そして、前述したように保持具62の受動部62cには、その外周部の円形部分と同心円状に開口された円形開口部62iが予め形成され、前述した一対の軸受部56のうち、反負荷側(上側)の方の外周部分は、円形開口部62iと嵌合している。
【0174】
さらに、上方に位置する装着部62bの略中央に開口された円形開口部62hには、回転角検出装置60の本体下部60bが嵌挿された状態で、雄ねじ部60cにナット60dが螺合されて締め付けられている。
【0175】
以上のような構成により、出力軸57に対して負荷が加わらない時において一対の軸受部56の軸受中心を結ぶ仮想直線L5(図5参照)に対して出力軸57が所定の角度以上に傾いた場合、その傾きに応じて一対の軸受部56のうち、反負荷側(上側)の方が水平方向(傾きを伴うこともある)に変位するため、受動部62cも同様に略同じ方向へ変位する。
【0176】
そうすると、装着部62bは、受動部62cと連動して回転角検出装置60の本体を略同じ方向へ変位させる。
【0177】
また、装着部62bは、受動部62cと締結部62aとの中間部分に備えられているが、これらを接続するための連結部62dや連結部62eと一体的に形成されている。
【0178】
そして、受動部62cと装着部62bとの間を連結する連結部62dが第1の弾性部材を構成し、装着部62bと締結部62aとの間を連結する連結部62eが第2の弾性部材を構成している。
【0179】
連結部62dと連結部62eは、いずれもXY平面に対してZ方向に垂下するように装着部62bに対して折り曲げられ、それぞれ所定のZ方向の高さを確保した位置でさらに折り曲げられ、一方は受動部62cに接続され、他方は締結部62aに接続されている。
【0180】
また、それら複数の折り曲げ部は、いずれも付け根部分が塑性変形されているので、その折り曲げ角度が保たれている。
【0181】
ここで、保持具62の金属素材としては、例えばSECC(亜鉛めっき)鋼板やばね用ステンレス鋼が好ましく、このような金属素材を選択することにより、弾性部材として所定の弾性が得られるとともに、孔空けや折り曲げ等のプレス成形加工も容易となっている。
【0182】
また、保持具62に対して出力軸57を傾かせるような比較的大きな力が作用しても弾性部材としての復元機能を有効に発揮できる。
【0183】
換言すれば、出力軸57が所定の角度以上に傾いた場合、出力軸57の傾きに応じて受動部62cが変位し、受動部62cと連動して装着部62bを略同じ方向に変位させることができる。
【0184】
加えて、出力軸57を傾かせる力が解除される(過負荷が解消される)と、出力軸57を、倒れのない自然の状態(出力軸57の軸心が、出力軸57に対して負荷が加わらない時における、一対の軸受部56の軸受中心を結ぶ仮想直線L5と略一致又は略平行となる状態)に復元させることも容易となる。
【0185】
すなわち、装着部62bは、連結部62dや連結部62eの弾性変形により受動部62cと連動することにより、締結部62aを支点としてベース部51の上下面と平行な水平方向に回転角検出装置60の本体を変位させる。
【0186】
ここで、出力軸57がX方向において所定の角度以上の傾きを生じた場合は、装着部62bは、連結部62dや連結部62eのたわむ(折り曲げ角が変わる)ような弾性変形により、受動部62cと連動して、例えば締結部62aを支点として全長が大きくなる方向又は全長が小さくなる方向に変位する。
【0187】
また、装着部62bは、出力軸57がY方向において所定の角度以上の傾きを生じた場合は、連結部62dや連結部62eの捻れるような弾性変形により、受動部62cと連動して、例えば締結部62aを支点として幅方向(Y方向)にも変位する。
【0188】
このように、保持具62が平板状の金属部材であっても、弾性を有する方向の範囲が拡がり、出力軸57が所定の角度以上に傾いた場合、その傾きに応じて受動部62cが変位し易くなるという効果が得られる。
【0189】
以上述べたように、仮に出力軸57に過負荷が与えられると、モータ55から減速歯車(図示せず)を介して出力軸57を回動又は回転する駆動力として伝達されるべき力の大部分が、減速歯車から出力軸57に固定された駆動歯車59に対して出力軸57を傾かせようとする力として作用する。
【0190】
そして、出力軸57が所定の角度以上に傾くと、その傾きが一対の歯車61を介してシャフト60aにも作用するため、シャフト60a(図5参照)が回転角検出装置60の本体に対して適正な角度を保てなくなるように変化しようとする。
【0191】
しかしながら、出力軸57が所定の角度以上に傾いたとしても、受動部62cと連動して装着部62bも変位するため、その傾きに応じてその回転角検出装置60の本体を変位させることができる。
【0192】
これにより、回転角検出装置60の本体に対するシャフト60aの傾きが軽減される。
【0193】
つまり、電動アクチュエータ50の作動時において、出力軸57が所定の角度以上に傾いた場合、その傾きに応じて受動部62cを介し保持具62の連結部62dや連結部62eを含む弾性部材が復元可能にたわむことにより、回転角検出装置60は、保持具62の作用により、本体とシャフト60aが適正な角度を保ちながら保持される。
【0194】
その結果、回転角検出装置60の本体の抵抗体とシャフト60aに連動したブラシとの摺接状態が変化することが少なくなるため、より正確な回転角度の計測精度が得られる。
【0195】
また、シャフト60aが片当たりすることによるシャフト60aやベアリング(図示せず)の摩耗が少なくなり、短寿命化の懸念も少なくなる。
【0196】
また、マイナス公差で製作された出力軸57の外径とプラス公差で製作された一対の軸受部56の内径との寸法差と、一対の軸受部56の間隔により決定される所定の角度以上に傾いた場合(例えば、0.08度〜0.8度の範囲の傾きを生じた場合)に、受動部62cと連動して装着部62bが変位するように板厚、寸法、素材および形態を選定することが好ましい。
【0197】
なお、本発明の技術的範囲は、上述した2つの実施の形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変形が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的な手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態の変形例についても本発明の技術的範囲に含まれるものとする。
【0198】
例えば、上記の2つの実施の形態の説明においては、ボールバルブ等のバルブステム90°回転形の場合について説明したが、ダイヤフラムバルブ等のバルブステム多回転形に適用することができる。
【0199】
そのため、出力軸が回動又は回転のいずれの動作であっても適用可能である。
【0200】
また、出力軸の反負荷側に回転角検出装置のシャフトを接続する方法として、前述したようにカップリング部材のような接合金具を介して出力軸とシャフトを連結する以外に、例えばかしめ、溶接、接着など他のあらゆる方法を用いてもよい。
【0201】
また、本実施の形態1における保持具の装着部、受動部及び締結部は、いずれも長手方向(上下方向)に伸張する保持具の主平板に対していずれも略直角に折り曲げられ、全体として一体成形されているが、それぞれを別部材で構成し、接合金具、かしめ、溶接、接着などの方法で連結してもよい。
【0202】
同様に、本実施の形態2における保持具の受動部及び締結部は、いずれも全長方向(水平方向)に延設する装着部に対していずれも略直角に折り曲げられた連結部を介して全体として一体成形されているが、それぞれを別部材又は別素材で構成し、適宜、接合金具、かしめ、溶接、接着など周知の接合方法で連結してもよい。
【0203】
また、保持具の形態についても、適宜場所に応じて板厚、成形寸法又は位置関係等を変化させてもよいし、適宜切り欠きや開口などを設けて弾性部材としての機能をより発揮できる形状にしてもよいし、締結部を一箇所だけでなく複数箇所に設けてもよい。
【0204】
さらには、実施の形態1や実施の形態2における保持具は、平板状の金属部材の事例で説明したが、所望の効果が得られるのであれば、それ以外の形状や樹脂などの素材であってもよいし、その一方端が必ずしもベース部に締結される必要もない。
【0205】
本発明にかかる電動アクチュエータは、例えば流体配管における弁体を所定の角度範囲で回動することにより、流路断面積を連続的に変化させ、その弁体を流れる流体の流量を制御することのできる電動アクチュエータとして有用である。
【符号の説明】
【0206】
10 電動アクチュエータ
11 ベース部
11a 開口
12 ガスケット
13 上カバー部
14 モータ
15 出力軸
16 ケーブルコネクタ
17 ケーブル
18 電源基板
19 コントロールパネル
20 回転角検出装置
20a シャフト
20b 本体下部
20c 雄ねじ部
20d ナット
21 絶縁カバー
22 一対の軸受部
23 開度表示部
24 手動操作軸
25 保持具
25a 締結部
25b 装着部
25c 受動部
25d 主平板
25e 開口部
25f 連結部
25g 締め孔
25h、25i 円形開口部
26 固定ネジ
27 摺接部材
28 カップリング部材
29 Cリング
30 駆動歯車
31 モータ歯車
32 減速歯車
50 電動アクチュエータ
51 ベース部
52 下カバー部
53 上カバー部
54 ガスケット
55 モータ
56 一対の軸受部
57 出力軸
58 コントロールパネル
59 駆動歯車
60 回転角検出装置
60a シャフト
60b 本体下部
60c 雄ねじ部
60d ナット
61 一対の歯車
62 保持具
62a 締結部
62b 装着部
62c 受動部
62d、62e 連結部
62h、62i 円形開口部
62g 締め孔
63 固定ネジ
M、T 矢印
L1、L2、L5 仮想直線
L3、L4 直線
H 全高
h 高さ
θ 角度
α 噛み合い圧力角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、そのベース部に対して直交する方向に回動または回転の軸心を有する出力軸と、前記出力軸を回動または回転可能に軸支するように離間配置された一対の軸受部と、前記出力軸の回転角度の変位を検出する回転角検出装置と、その回転角検出装置を支持する保持具とを備えた電動アクチュエータであって、
前記保持具は、前記出力軸に対して負荷が加わらない時における前記一対の軸受部の軸受中心を結ぶ仮想直線に対して前記出力軸が所定の角度以上に傾いた場合、その傾きに応じて変位する受動部と、
その受動部と連動することにより、前記回転角検出装置の本体を変位させる装着部と、を有することを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記保持具の前記装着部は、前記受動部の変位に応じて、前記回転角検出装置の本体と、前記回転角検出装置のシャフトとの角度を、前記出力軸が前記所定の角度以上に傾く前の状態に保つように前記回転角検出装置の本体を変位させることを特徴とする請求項1記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記保持具は、前記ベース部に締結される締結部と、前記装着部と前記締結部の間を連結する弾性部材とを有し、その弾性部材の中間部分に前記受動部を備えることを特徴とする請求項1または2記載の電動アクチュエータ。
【請求項4】
前記保持具は、少なくとも3箇所において折り曲げ部を有する平板状の金属部材から構成され、一方端の折り曲げ部が前記締結部を構成し、他方端の折り曲げ部が前記装着部を構成し、中間部分を開口した折り曲げ部が前記受動部を構成することを特徴とする請求項3記載の電動アクチュエータ。
【請求項5】
前記保持具は、前記ベース部に締結される締結部と、前記受動部と前記装着部との間を連結する第1の弾性部材と、前記装着部と前記締結部との間を連結する第2の弾性部材とを有し、前記一対の軸受部のうち、前記出力軸の反負荷側に位置する軸受部の外周部分は、前記受動部の円形開口部と嵌合することを特徴とする請求項1または2記載の電動アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−110945(P2013−110945A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268344(P2011−268344)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(390001166)株式会社エム・システム技研 (25)
【Fターム(参考)】