説明

電動アシストターボチャージャの冷却装置

【課題】電動アシストターボチャージャのモータを冷却できる電動アシストターボチャージャの冷却装置を提供する。
【解決手段】ターボチャージャのターボ軸23にモータ12のロータ13を連結した電動アシストターボチャージャ10において、ターボ軸23を軸承するベアリングハウジング28とターボチャージャのコンプレッサハウジング27とをモータケース11で接続すると共にモータケース11内にロータ13とステータ14からなるモータ12を収容し、そのステータ14外周のモータケース11に主水冷室15を形成し、その主水冷室15にエンジン冷却水とは別系統の冷却水を供給する冷却水ライン35を接続したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャに電動機(モータ)を組み合わせた電動アシストターボチャージャに係り、特にその電動アシストターボチャージャのモータを冷却するための電動アシストターボチャージャの冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3に示すようにターボチャージャ20は、タービン21とコンプレッサ22をターボ軸23で連結して構成される。タービン21は、タービンホイール24とタービンホイール24を囲み、排ガスが導入されるタービンハウジング25からなり、コンプレッサ22は、コンプレッサホイール26を囲み、吸気が導入されるコンプレッサハウジング27からなり、タービンホイール24とコンプレッサホイール26を連結するターボ軸23がベアリングハウジング28内に収容されると共にベアリングハウジング28内に設けた軸受部29で軸承される。ベアリングハウジング28の上部には、潤滑油を軸受部29に供給する潤滑油入口30が設けられ、下部には潤滑油排出路31が形成される。
【0003】
図4は、ターボチャージャ20をエンジン40に付加した際の吸排気系と潤滑油による冷却系統を示したものである。
【0004】
ターボチャージャ20は、エンジン40のエギゾーストパイプ41にタービン21が接続され、インテークパイプ42にコンプレッサ22が接続され、エンジン40の燃焼室43から排気された排ガスがエギゾーストパイプ41を通してタービン21に供給されて、タービン21を駆動し、吸気はエアクリーナ44からコンプレッサ22に導入されて圧縮され、インタークーラ46で冷却され、吸気スロットル45を介してエンジン40の燃焼室43に導入される。
【0005】
このターボチャージャ20は、ベアリングハウジング28内の軸受部29の潤滑のためと、排ガスからの受熱による軸受部29の冷却のために、エンジン40からの潤滑油を、オイル供給管47を通してベアリングハウジング28内に導入し、軸受部29を潤滑すると共に冷却するようになっており、ベアリングハウジング28に供給された潤滑油は、潤滑油排出路31からオイル戻し管48にてオイルパンへ戻され、再度ベアリングハウジング28内に循環されるようになっている。
【0006】
このエンジン40にターボチャージャ20を付加したシステムでは、エンジンの低回転域での過給圧の立ち上がりが悪く、低回転時に高トルクが要求されてもエンジンの出力特性が良好でない問題がある。
【0007】
そこで最近は、ターボチャージャのターボ軸にモータのロータを直結し、高トルクが要求されたときにモータでターボ軸を回転して過給圧を上げ、また逆にタービンの回転でモータを発電機として使用する電動アシストターボチャージャが開発されてる(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−169629号公報
【特許文献2】特開2006−320143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この電動アシストターボチャージャにおいては、ベアリングハウジングとコンプレッサーハウジングの間にモータを設置したものであるが、モータ駆動時にステータの自己発熱およびタービンからの受熱により、モータの温度が200℃以上に上昇するため、駆動力低下が生じる問題があると共にブースト立ち上がり時間の遅れが生じ、排ガス性能の悪化、ドライビングレスポンス性の悪化が生じると共に、モータの耐熱性にも問題を生じる。
【0010】
そこで、モータをエンジン冷却水で冷却することが考えられるが、エンジン冷却水はシリンダブロックやシリンダヘッドを冷却するものであり、ステータの急激な発熱に冷却能力が追従できない問題がある。またステータからの放熱で冷却水温度が上昇した場合、同一系統内の他の冷却部への冷却が満足できない問題もある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、電動アシストターボチャージャのモータを冷却できる電動アシストターボチャージャの冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、ターボチャージャのターボ軸にモータのロータを連結した電動アシストターボチャージャにおいて、ターボ軸を軸承するベアリングハウジングとターボチャージャのコンプレッサハウジングとをモータケースで接続すると共にモータケース内にロータとステータからなるモータを収容し、そのステータ外周のモータケースに主水冷室を形成し、その主水冷室にエンジン冷却水とは別系統の冷却水を供給する冷却水ラインを接続したことを特徴とする電動アシストターボチャージャの冷却装置である。
【0013】
請求項2の発明は、前記ベアリングハウジングに、前記主水冷室と連通する副水冷室が形成され、前記モータケースの下部に前記主水冷室の冷却水入口が設けられ、ベアリングハウジングの上部に副水冷室の冷却水出口が設けられ、その冷却水入口と冷却水出口間にサブラジエータを含む冷却水ラインが接続される請求項1記載の電動アシストターボチャージャの冷却装置である。
【0014】
請求項3の発明は、前記冷却水ラインには電動冷水ポンプが接続される請求項2記載の電動アシストターボチャージャの冷却装置である。
【0015】
請求項4の発明は、サブラジエータは、エンジンを冷却するラジエータに対して車両方向前方に設けられる請求項2又は3記載の電動アシストターボチャージャの冷却装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、モータのステータの冷却性能が向上し、モータ駆動力の低下を防止できると共にモータを発電機として使用する際には発電効率を向上させることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図である。
【図2】図1における電動アシストターボチャージャの詳細断面図である。
【図3】従来のターボチャージャを示す断面図である。
【図4】従来のターボチャージャをエンジンの吸排気系に組み込んだ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0019】
先ず、図2により、本発明の電動アシストターボチャージャを説明する。
【0020】
図2において、電動アシストターボチャージャ10は、モータ12の構成を除いて、タービンとコンプレッサは、図3で説明したターボチャージャ20のタービン21とコンプレッサ22の構造と基本的に同じであり、同一符号を付すと共にその説明は省略する。
【0021】
さて、ベアリングハウジング28とコンプレッサハウジング27とはモータケース11で接続され、そのモータケース11内にモータ12が設けられて電動アシストターボチャージャ10が構成される。
【0022】
モータ12は、ターボ軸23に連結されたロータ13と、そのロータ13の外周にエアギャップを介して配置されるステータ14とからなり、そのステータ14を囲繞するようにモータケース11が設けられると共にモータケース11内に主水冷室15が形成される。
【0023】
またベアリングハウジング28には、主水冷室15と連通する副水冷室19が形成される。
【0024】
主水冷室15を形成するモータケース11は、外周壁11oと、ベアリングハウジング28と接する側壁11sと、コンプレッサハウジング27と接する側壁11rと、その両側壁11s、11rを連結する内周壁11iとで形成され、その内周壁11iが、ステータ14と接するステータ外周壁部16aと、ステータ14のコンプレッサハウジング27側端面中央に沿って延びるステータ端面壁部16bと、ステータ端面壁部16bの内周端とベアリングハウジング28側の側壁11sとを結ぶ内周壁部16cとで形成される。
【0025】
主水冷室15は、コンプレッサハウジング27と接する側壁11rと内周壁11iのステータ外周壁部16aと外周壁11oとで形成される中空リング状の冷却水流路15aと、内周壁11iのステータ端面壁部16bと、内周壁部16cとベアリングハウジング28側の側壁11sとで形成される端面冷却流路15bとで構成される。
【0026】
このモータケース11の側壁11sとベアリングハウジング28との間には、ベアリングハウジング28からステータ14の端面への入熱を阻止する断熱ガスケット18が設けられる。モータケース11の側壁11sの内周には、オイルシール17が設けられる。
【0027】
また、ベアリングハウジング28の断熱ガスケット18側には、ターボ軸23のスラスト荷重を受けるスラスト軸受32が設けられる。
【0028】
ベアリングハウジング28に形成される副水冷室19は、主水冷室15の上側部と接続され、タービン21に延びる導入流路19aと、タービンハウジング25側に形成された環状の冷却流路19bとで構成される。
【0029】
なお、本実施の形態では、ターボ軸23を図3と同様に軸受部29で直接軸承した例を示しているがボールベアリングで軸承するように構成してもよい。
【0030】
モータケース11の下部には、主水冷室15に冷却水を導入する冷却水入口33が設けられ、ベアリングハウジング28の上部には、副水冷室19の環状の冷却流路19bから冷却水を排出する冷却水出口34が設けられる。
【0031】
ベアリンハウジング28の軸受部29とスラスト軸受32への潤滑油の供給は、図4で説明したようにシリンダブロック40s、シリンダヘッド40hを通った潤滑油がオイル供給管47を通してベアリングハウジング28内に導入され、軸受部29とスラスト軸受32を潤滑すると共に冷却し、潤滑油排出路31からオイル戻し管48にてオイルパンへ戻されて循環されるようになっている。
【0032】
さて、図1は、図2で説明した電動アシストターボチャージャ10を高圧段として、図3で説明したターボチャージャ20を低圧段として、エンジン40の吸排気系に組み込むと共に冷却系統に組み込んだ本発明の実施の形態を示したものである。
【0033】
エンジン40からの排ガスのエギゾーストライン41aには、電動アシストターボチャージャ10Hのタービン21Hが接続され、その下流にターボチャージャ20Lのタービン21Lが接続される。また、エンジン40からの排ガスのエギゾーストライン41aには、電動アシストターボチャージャ10Hをバイパスしてターボチャージャ20Lのタービン21に直接排ガスを流すバイパスライン41bが接続される。
【0034】
インタークーラ46に至るインテークライン42aには、ターボチャージャ20Lのコンプレッサ22Lが接続されると共に電動アシストターボチャージャ10Hのコンプレッサ22Hが接続される。またインテークライン42aには、電動アシストターボチャージャ10Hをバイパスしてターボチャージャ20Lのコンプレッサ22Lから直接インタークーラ46に過給吸気を流すバイパスライン42bが接続される。
【0035】
インタークーラ46の下流側のインテークライン42aはエンジン40の吸気系に接続され、またその下流側のインテークライン42aには、エンジン40からの排ガスのエギゾーストライン41aから分岐したEGRライン49が接続される。このEGRライン49には、前段側EGRクーラ58aと後段側EGRクーラ58bが接続される。
【0036】
エンジン40のエンジン冷却水ライン50は、エンジン40で駆動される冷却水ポンプ51を有し、冷却水ポンプ51からの冷却水は、オイルクーラ52を通し、エンジン40のシリンダブロック40sとシリンダヘッド40hを通ってエンジン40を冷却し、コントロールバルブ53、アウトレットパイプ54を介してラジエータ55に流れて冷却され、再度冷却水ポンプ51に戻って循環されるように構成される。また、コントロールバルブ53から冷却水が冷却水ポンプ51の吸込側に戻るようにされ、さらにシリンダヘッド40hからの冷却水の一部がキャブヒータ56を通して冷却水ポンプ51の吸込側に戻るようにされる。
【0037】
次に本発明の電動アシストターボチャージャ10の冷却水ライン35を説明する。
【0038】
先ずラジエータ55の車両側前方にはサブラジエータ36が設けられ、また電動モータで駆動される電動冷却水ポンプ37が設けられ、この電動冷却水ポンプ37とサブラジエータ36とで冷却水ライン35が構成される。
【0039】
冷却水ライン35の冷却水は、電動冷却水ポンプ37から、電動アシストターボチャージャ10Hの主水冷室15と副水冷室19に流れ、後段のEGRクーラ52bを通ってサブラジエータ36に流れ、サブラジエータ36から再度電動冷却水ポンプ37にて循環されるようになっている。
【0040】
また、ラジエータ55とサブラジエータ36には、給水用リザーバータンク57が接続され冷却水が給水できるようになっている。
【0041】
次に本実施の形態の作用を説明する。
【0042】
先ず、低負荷時には、エンジン40からの排ガスが、エギゾーストライン41aにて、電動アシストターボチャージャ10Hのタービン21Hに流れ、さらにターボチャージャ20Lのタービン21Lに流れて排気される。一方吸気は、インテークライン42aから、ターボチャージャ20Lのコンプレッサ22Lを通し、電動アシストターボチャージャ10Hのコンプレッサ22Hを通ってエンジン40に過給される。
【0043】
一方高負荷時には、エンジン40からの排ガスが、エギゾーストライン41aからバイパスライン41bを通ってターボチャージャ20Lのタービン21Lに流れて排気され、吸気はターボチャージャ20Lのコンプレッサ22Lからバイパスライン42bを通ってインタークーラ46を介してエンジン40に過給される。
【0044】
また低負荷と高負荷の間の中負荷時には、バイパスライン41b、42bでの通気量が制御されて、電動アシストターボチャージャ10Hとターボチャージャ20Lの双方が駆動されるようになっている。
【0045】
さて、低負荷時に高トルクが要求され過給圧を上げる際には、電動アシストターボチャージャ10Hのモータ12のステータ14のコイルに通電してロータ13を回転し、ターボ軸23を介してコンプレッサ22Hを駆動し、またタービン21Hの駆動から発電する際には、ステータ14のコイルに生じた回生電流でバッテリを充電する。
【0046】
このモータ12の駆動時には、ステータ14が200℃に発熱するため、冷却水ライン35からの冷却水をモータケース11内の主水冷室15内に流すと共に、ベアリングハウジング28の副水冷室19に流すことで、モータ12の温度を80℃以下に冷却することができる。また副水冷室19では、タービン21側からベアリングハウジング28に伝達される熱をカットする。さらに主水冷室15では、ステータ14の端面を冷却する端面冷却流路15bが形成されており、これによりタービン21からベアリングハウジング28を通しての伝熱をカットすることができ、またベアリングハウジング28とモータケース11間に設けた断熱ガスケット18により受熱をカットすることができる。この断熱ガスケット18は、ベアリングハウジング28のスラスト軸受32と隣接するよう設けられており、そのスラスト軸受32に供給される潤滑油による冷却効果と併せて、タービン21側からモータ12に伝わる熱をカットすることができる。
【0047】
この冷却水ライン35は、エンジン冷却水ライン50と独立して設けられるため、電動冷却水ポンプ37による冷却水循環量を、モータ12の発熱量に応じて自在に変えることができると共に、エンジン40の冷却水系統に影響を与えることなく冷却性能を可変することが可能となる。
【0048】
また、冷却水ライン35には、EGRライン49の後段側EGRクーラ58bが接続され、電動アシストターボチャージャ10Hのモータ12を冷却する他に、そのモータ12の不作動時に、前段側EGRクーラ58aで、エンジン冷却水ライン50の冷却水で冷却され、後段側EGRクーラ58bを通るEGRガスを、冷却水ライン35の冷却水で、さらに冷却することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 電動アシストターボチャージャ
11 モータケース
12 モータ
13 ロータ
14 ステータ
15 主水冷室
19 副水冷室
21 タービン
22 コンプレッサ
23 ターボ軸
27 コンプレッサハウジング
28 ベアリングハウジング
35 冷却水ライン
36 サブラジエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボチャージャのターボ軸にモータのロータを連結した電動アシストターボチャージャにおいて、ターボ軸を軸承するベアリングハウジングとターボチャージャのコンプレッサハウジングとをモータケースで接続すると共にモータケース内にロータとステータからなるモータを収容し、そのステータ外周のモータケースに主水冷室を形成し、その主水冷室にエンジン冷却水とは別系統の冷却水を供給する冷却水ラインを接続したことを特徴とする電動アシストターボチャージャの冷却装置。
【請求項2】
前記ベアリングハウジングに、前記主水冷室と連通する副水冷室が形成され、前記モータケースの下部に前記主水冷室の冷却水入口が設けられ、ベアリングハウジングの上部に副水冷室の冷却水出口が設けられ、その冷却水入口と冷却水出口間にサブラジエータを含む冷却水ラインが接続される請求項1記載の電動アシストターボチャージャの冷却装置。
【請求項3】
前記冷却水ラインには電動冷水ポンプが接続される請求項2記載の電動アシストターボチャージャの冷却装置。
【請求項4】
サブラジエータは、エンジンを冷却するラジエータに対して車両方向前方に設けられる請求項2又は3記載の電動アシストターボチャージャの冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−97611(P2012−97611A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244391(P2010−244391)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】