説明

電動圧縮機

【課題】 冷媒の流量が少ない場合であっても、駆動回路部の発熱部を確実に冷却することができる電動圧縮機を提供する。
【解決手段】本発明に係る電動圧縮機1は、冷媒を圧縮する圧縮機10と、圧縮機10に組み付けられる電動モータ20と、圧縮機10に組み付けられて熱負荷変化に応じて電動モータ20の回転数を制御するインバーター30とを備え、圧縮機10とインバーター30との間に形成される冷媒流路40を通過した冷媒がインバーター30の発熱部(例えば、駆動回路31)を冷却する。この冷媒流路40には、冷媒流路40内を通過する冷媒の流量に応じて、冷媒の流れ方向を変換する流れ方向変換部100が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機と駆動回路部との間に形成される冷媒流路を通過した冷媒が駆動回路部の発熱部を冷却する電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等に用いられる電動圧縮機(コンプレッサ)は、冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機に組み付けられる電動モータと、圧縮機の電動モータと逆側に組み付けられて熱負荷変化に応じて電動モータの回転数を制御する駆動回路部(インバーター)とを備えている。
【0003】
この圧縮機と駆動回路部との間、すなわち、圧縮機と駆動回路部との組付部分には、低温冷媒が通過する冷媒流路が形成される。この冷媒流路を通過する低温冷媒が駆動回路部の発熱部(例えば、駆動回路)を通過することによって、駆動回路部を冷却できる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平8−538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の電動圧縮機では、低温冷媒によって発熱部を冷却し続けているが、低温冷媒の流量が多い場合には適正な冷却が得られる反面、低温冷媒の流量が少ない場合には発熱部を冷却し難いという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、冷媒の流量が少ない場合であっても、駆動回路部の発熱部を確実に冷却することができる電動圧縮機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、冷媒を圧縮する圧縮機(圧縮機10)と、前記圧縮機に組み付けられる電動モータ(電動モータ20)と、前記圧縮機に組み付けられて熱負荷変化に応じて前記電動モータの回転数を制御する駆動回路部(インバーター30)とを備え、前記圧縮機と前記駆動回路部との間に形成される冷媒流路(冷媒流路40)を通過した前記冷媒が前記駆動回路部の発熱部(例えば、駆動回路31)を冷却する電動圧縮機(電動圧縮機1)であって、前記冷媒流路には、前記冷媒流路内を通過する前記冷媒の流量に応じて、前記冷媒の流れ方向を変換する流れ方向変換部(流れ方向変換部100)が設けられることを要旨とする。
【0008】
かかる特徴によれば、冷媒流路には、冷媒流路内を通過する冷媒の流量に応じて、冷媒の流れ方向を変換する流れ方向変換部が設けられる。これにより、流れ方向変換部は、冷媒の流量が少ない場合に駆動回路部の発熱部に向けて冷媒の流れ方向を変換できる。このため、冷媒の流量が少ない場合であっても、駆動回路部の発熱部を確実に冷却することができる。
【0009】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記冷媒流路には、前記流れ方向変換部を収容する凹部(凹部200)が設けられ、前記流れ方向変換部は、前記冷媒流路と前記凹部との境界に設けられることを要旨とする。
【0010】
かかる特徴によれば、冷媒流路には、凹部が設けられる。これにより、冷媒流路内を通過する冷媒の圧力脈動による流れ方向変換部が発する異音を減衰させることができる。このため、冷媒が冷媒流路内を通過することに起因する振動や異音を抑制できる。
【0011】
また、流れ方向変換部は、冷媒流路と凹部との境界に設けられる。これにより、冷媒の流量が多い場合であっても、流れ方向変換部を凹部内に収容させることができる。このため、流れ方向変換部が冷媒の流れを邪魔することなく、冷媒が冷媒流路内をスムーズに通過できる。
【0012】
本発明の第3の特徴は、本発明の第1又は第2の特徴に係り、前記駆動回路部の発熱部は、前記冷媒流路に隣接する駆動回路であり、前記流れ方向変換部は、前記駆動回路と対向する位置に設けられることを要旨とする。
【0013】
かかる特徴によれば、流れ方向変換部は、駆動回路と対向する位置に設けられる。これにより、冷媒の流量が少ない場合であっても、駆動回路部の発熱部としての駆動回路をより確実に冷却することができる。
【0014】
本発明の第4の特徴は、本発明の第1乃至第3の特徴に係り、前記流れ方向変換部は、前記冷媒流路内で回転可能な板状の回転体(回転体110)と、前記回転体を回転駆動させる駆動部(駆動部120)とを備えることを要旨とする。
【0015】
かかる特徴によれば、流れ方向変換部は、回転体と、駆動部とを備える。これにより、冷媒流路内を通過する冷媒の流量に応じて、駆動部により回転体が回転可能となる。このため、冷媒の流量が少ない場合に冷媒の流れ方向を変換させることや、冷媒の流量が多い場合に冷媒の流れ方向を変換させないことなど、冷媒の流量に応じて回転体の角度(倒れ込み角度)を変更しやすくなる。
【0016】
本発明の第5の特徴は、本発明の第4の特徴に係り、前記回転体の長さ(L)は、前記冷媒流路内での前記冷媒の流れ方向に直交する幅(W2)よりも短いことを要旨とする。
【0017】
なお、回転体の長さ(L)が冷媒流路内での前記冷媒の流れ方向に直交する幅(W2)よりも長いと、冷媒流路を流れる冷媒を塞き止めてしまい、冷媒が流れないことに起因する電動圧縮機の故障が生じる可能性がある。
【0018】
本発明の第6の特徴は、本発明の第4又は第5の特徴に係り、前記駆動部は、前記冷媒流路内を通過する前記冷媒の流量が少ない場合に、前記回転体が前記冷媒流路の壁面から立ち上がるように前記回転体を付勢するバネによって構成されることを要旨とする。
【0019】
かかる特徴によれば、駆動部は、冷媒流路内を通過する冷媒の流量が少ない場合に、回転体が冷媒流路の壁面から立ち上がるように回転体を付勢するバネによって構成される。これにより、冷媒の流量が少ない場合に冷媒の流れ方向を変換できることに加えて、駆動部がモータなどによって構成される場合と比較して、流れ方向変換部を安価に製造でき、コスト高を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の特徴によれば、冷媒の流量が少ない場合であっても、駆動回路部の発熱部を確実に冷却することができる電動圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本実施形態に係る電動圧縮機1を示す縦断面図である。
【図2】図2(a)は、本実施形態に係るインバーター30を示す斜視図であり、図2(b)は、本実施形態に係る圧縮機10及び電動モータ20を示す斜視図である。
【図3】図3(a)は、本実施形態に係るインバーター30を示す正面図(図2(a)のA矢視図)であり、図3(b)は、本実施形態に係る圧縮機10を示す正面図(図2(b)のB矢視図)である。
【図4】図4(a)は、本実施形態に係る流れ方向変換部100を示す斜視図であり、図4(b)は、本実施形態に係る流れ方向変換部100近傍を示す図である。
【図5】図5(a)は、冷媒の流量が多い状態における冷媒流路40を示す図であり、図5(b)は、冷媒の流量が少ない状態における冷媒流路40を示す図である。
【図6】図6(a)は、回転体110の倒れ込み角度に対する冷媒の流量を示す図であり、図6(b)は、インバーター30の温度に対する冷媒の流量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る電動圧縮機の実施形態について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)電動圧縮機の構成、(2)冷媒流路の構成、(3)流れ方向変換部の動き、(4)作用・効果、(5)その他の実施形態について説明する。
【0023】
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0024】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0025】
ここで、本実施形態に係る電動圧縮機1は、車両用空調装置の冷却システムに用いられるものである。この電動圧縮機1は、冷媒を圧縮する圧縮機10と、圧縮機10に組み付けられる電動モータ20と、圧縮機10に組み付けられて熱負荷変化に応じて電動モータ20の回転数を制御するインバーター30とを備え、圧縮機10とインバーター30との間に形成される冷媒流路40を通過した冷媒がインバーター30の発熱部(駆動回路31)を冷却する。また、冷媒流路40には、冷媒流路40内を通過する冷媒の流れ方向を変換する流れ方向変換部100が設けられる。
【0026】
(1)電動圧縮機の構成
以下において、上述した電動圧縮機1の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る電動圧縮機1を示す縦断面図である。図2(a)は、本実施形態に係るインバーター30を示す斜視図であり、図2(b)は、本実施形態に係る圧縮機10及び電動モータ20を示す斜視図である。
【0027】
図1及び図2に示すように、電動圧縮機1は、円筒状のハウジング50を備えている。このハウジング50は、インバーター30を収容するフロントハウジング50Fと、圧縮機10を収容するミドルハウジング50Mと、電動モータ20を収容するリアハウジング50Rとによって構成される。これらのフロントハウジング50F、ミドルハウジング50M及びリアハウジング50Rはボルト等(不図示)により互いに結合されることによって、ハウジング50の内部に密閉された空間が形成される。
【0028】
圧縮機10は、円筒状のシリンダブロック11と、シリンダブロック11の両側に設けられた一対のサイドブロック12,12と、ベーン溝(不図示)が形成されるロータ13と、ベーン溝に収容される複数枚のベーン14とによって大略構成される。
【0029】
シリンダブロック11には、内周が滑らかな楕円形状の内壁面15Aを有したシリンダ室15が内部に形成されており、このシリンダ室15は、一対のサイドブロック12,12によって両側が覆われている。このシリンダ室15内の中心部にロータ13が配置されている。
【0030】
また、シリンダ室15内には、電動モータ20の回転軸23に連結されたロータ軸16が貫通しており、このロータ軸16にロータ13が支持されている。そして、電動モータ20の回転駆動力によりロータ軸16が回転することでロータ13がシリンダ室15内で回転する。
【0031】
ロータ13は、ロータ軸16に固定され、周方向に等間隔で形成される複数のベーン溝内で移動可能に設けられる。このベーン溝内に収容される複数枚のベーン14は、圧縮機10が駆動することでロータ13が回転すると、遠心力及びベーン溝の底部に供給される背圧を受けて頂部をシリンダ室15に摺動しながら径方向に移動する。そして、ベーン14とシリンダ室15の内壁面15Aとに供給される冷媒は、ロータ13がロータ軸16を介して電動モータ20の回転駆動力によって回転することで圧縮される。
【0032】
電動モータ20は、リアハウジング50Rの内周面に沿って複数配置されるコイル21と、コイル21に発生する磁気によって回転するモータロータ22と、モータロータ22の中心に固定され回転する回転軸23とによって大略構成される。
【0033】
モータロータ22は、回転軸23上に圧入固定され、この回転軸23の両端は、ベアリング24a、24bによってリアハウジング50Rと、電動モータ20とサイドブロック12の間に配置される仕切壁17とに回転自在に支持されている。この回転軸23に上述したロータ軸16が連結され、電動モータ20の回転駆動力が回転軸23からロータ軸16を介してロータ13に伝達されて、ロータ13が回転する。
【0034】
なお、本実施形態の電動モータ20は、モータロータ22の回転角度を検出することができる、いわゆるセンサー付きの電動モータであって、センサー(不図示)によってモータロータ22の回転角度が検出され、この検出結果がインバーター30に伝達される。また、回転角度を検出するセンサーとしては、例えば、モータロータ22に組み付けられた磁石の位置を検出してモータロータ22の回転角度を検出する等が挙げられる。
【0035】
インバーター30は、フロントハウジング50Fに収容された駆動回路部によって構成されている。インバーター30は、圧縮機10の電動モータ20と逆側に組み付けられている。このインバーター30は、モータロータ22の回転角度の検出結果に基づいて、電動モータ20のコイル21への通電を制御する。インバーター30は、発熱部としての駆動回路31を有している。
【0036】
このインバーター30と上述した圧縮機10との間(すなわち、フロントハウジング50Fとミドルハウジング50Mとの間)には、図2に示すように、冷媒が通過する冷媒流路40が設けられる。なお、冷媒流路40の詳細については、後述する。
【0037】
このような電動圧縮機1は、インバーター30の駆動回路31から電動モータ20のコイル21に電流が流れてモータロータ22が回転し、モータロータ22に固定された回転軸23が回転する。回転軸23が回転すると回転軸23の一端側に連結されたロータ軸16に回転駆動力が伝達されてロータ13が回転し、吸入口41から吸入された冷媒を圧縮する。圧縮された冷媒は、ミドルハウジング50Mを通ってリアハウジング50Rに入り、リアハウジング50Rの電動モータ20を冷却しながら通過して吐出口51から外方へ吐出される。なお、電動圧縮機1が停止すると、モータロータ22が検出した回転角度結果に基づき、ロータ13が停止する。
【0038】
(2)冷媒流路の構成
次に、上述した冷媒流路40の構成について、図2〜図4を参照しながら説明する。なお、図3(a)は、本実施形態に係るインバーター30を示す正面図(図2(a)のA矢視図)であり、図3(b)は、本実施形態に係る圧縮機10を示す正面図(図2(b)のB矢視図)である。図4(a)は、本実施形態に係る流れ方向変換部100を示す斜視図であり、図4(b)は、本実施形態に係る流れ方向変換部100近傍を示す図である。
【0039】
図2及び図3に示すように、冷媒流路40は、電動圧縮機1内に冷媒を吸入する吸入口41と、吸入した冷媒を圧縮機10へ吐出する吐出口42との間に設けられる。この冷媒流路40の途中には、冷媒流路40内を通過する冷媒の流れ方向を変換する流れ方向変換部100と、流れ方向変換部100が収容されるとともに冷媒の圧力脈動により流れ方向変換部100が発する不要な振動を減衰させるダンパ室用の凹部200とが設けられている。
【0040】
流れ方向変換部100は、冷媒流路40と凹部200との境界に設けられる。また、流れ方向変換部100は、駆動回路31と対向する位置に設けられる。この流れ方向変換部100は、図4(a)及び図4(b)に示すように、冷媒流路40内で回転可能な板状の回転体110と、回転体110を回転駆動させる駆動部120とを備える。
【0041】
回転体110は、冷媒流路40内を通過する冷媒の流れ方向を変更するL字状のフラップによって構成される。回転体110は、冷媒流路40内において回転軸111を中心に回転可能に設けられる。
【0042】
この回転体110の長さLは、冷媒流路40内での冷媒の流れ方向に直交する幅W2よりも短い。また、回転体110の幅W1(奥行寸法)は、冷媒流路40の深さD(奥行寸法)よりも短い。
【0043】
駆動部120は、回転体110の一端(回転軸111)を固定支持している。この駆動部120は、回転体110を回転駆動させるバネによって構成される。具体的には、駆動部120は、冷媒流路40内を通過する冷媒の流量が少ない場合に、回転体110が冷媒流路40の壁面から立ち上がるように回転体110を付勢している。
【0044】
(3)流れ方向変換部の動き
次に、上述した流れ方向変換部100の動きについて、図5及び図6を参照しながら説明する。図5(a)は、冷媒の流量が多い状態における冷媒流路40を示す図であり、図5(b)は、冷媒の流量が少ない状態における冷媒流路40を示す図である。図6(a)は、回転体110の倒れ込み角度(縦軸)に対する冷媒の流量(横軸)を示す図であり、図6(b)は、インバーター30の温度(縦軸)に対する冷媒の流量(横軸)を示す図である。
【0045】
本実施形態では、回転体110は、冷媒流路40内を通過する冷媒の流量に応じて所定の回転角度(例えば、0〜90度)の範囲内において自動的に回動する。
【0046】
具体的には、図5(a)に示すように、冷媒流路40内を通過する冷媒の流量が多い場合には、回転体110は、凹部200内に収容される。すなわち、図6(a)に示すように、回転体110は、倒れ込み角度が大きくなる。
【0047】
一方、図5(b)に示すように、冷媒流路40内を通過する冷媒の流量が少ない場合には、回転体110は、駆動部120(バネ)の付勢によって立ち上がる。すなわち、図6(a)に示すように、回転体110は、倒れ込み角度が小さくなる。
【0048】
これにより、図6(b)に示すように、冷媒流路40内に回転体110が設けられていると、回転体110が設けられていない場合と比較して、冷媒の流量が少ない場合であっても、冷媒の流れをインバーター30の駆動回路31へ変更することができ、駆動回路31を確実に冷却することができる。
【0049】
(4)作用・効果
以上説明した本実施形態では、冷媒流路40には、冷媒流路40内を通過する冷媒の流量に応じて、冷媒の流れ方向を変換する流れ方向変換部100が設けられる。これにより、流れ方向変換部100は、冷媒の流量が少ない場合に駆動回路部の発熱部に向けて冷媒の流れ方向を変換できる。このため、冷媒の流量が少ない場合であっても、インバーター30の駆動回路31を確実に冷却することができる。
【0050】
本実施形態では、冷媒流路40には、凹部200が設けられる。これにより、冷媒流路40内を通過する冷媒の圧力脈動による流れ方向変換部100が発する異音を減衰させることができる。このため、冷媒が冷媒流路40内を通過することに起因する振動や異音を抑制できる。
【0051】
また、流れ方向変換部100は、冷媒流路40と凹部200との境界に設けられる。これにより、冷媒の流量が多い場合であっても、流れ方向変換部100を凹部200内に収容させることができる。このため、流れ方向変換部100が冷媒の流れを邪魔することなく、冷媒が冷媒流路40内をスムーズに通過できる。
【0052】
本実施形態では、流れ方向変換部100は、駆動回路31と対向する位置に設けられる。これにより、冷媒の流量が少ない場合であっても、インバーター30の発熱部としての駆動回路31をより確実に冷却することができる。
【0053】
本実施形態では、流れ方向変換部100は、回転体110と、駆動部120とを備える。これにより、冷媒流路40内を通過する冷媒の流量に応じて、駆動部120により回転体110が回転可能となる。このため、冷媒の流量が少ない場合に冷媒の流れ方向を変換させることや、冷媒の流量が多い場合に冷媒の流れ方向を変換させないことなど、冷媒の流量に応じて回転体110の角度(倒れ込み角度)を変更しやすくなる。
【0054】
本実施形態では、回転体110の長さLは、冷媒流路40内での冷媒の流れ方向に直交する幅W2よりも短い。なお、回転体110の長さ(L)が冷媒流路40内での冷媒の流れ方向に直交する幅(W2)よりも長いと、冷媒流路40を流れる冷媒を塞き止めてしまい、冷媒が流れないことに起因する電動圧縮機1の故障が生じる可能性がある。
【0055】
また、回転体110の幅W1(奥行寸法)は、冷媒流路40の深さD(奥行寸法)よりも短い。なお、回転体110の幅W1が冷媒流路40の深さDよりも長いと、冷媒流路40を流れる冷媒を塞き止めてしまい、冷媒が流れないことに起因する電動圧縮機1の故障が生じる可能性がある。
【0056】
本実施形態では、駆動部120は、冷媒流路40内を通過する冷媒の流量が少ない場合に、回転体110が冷媒流路40の壁面から立ち上がるように回転体110を付勢するバネによって構成される。これにより、冷媒の流量が少ない場合に冷媒の流れ方向を変換できることに加えて、駆動部120がモータなどによって構成される場合と比較して、流れ方向変換部100を安価に製造でき、コスト高を抑制することができる。
【0057】
(5)その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0058】
例えば、本発明の実施形態は、次のように変更することができる。具体的には、電動圧縮機1は、車両用空調装置の冷却システムに用いられるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、その他の冷却システムに用いられてもよい。
【0059】
また、インバーター30の発熱部としては、駆動回路31であるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、その他の部材であってもよく、冷媒によりインバーター30が冷却されればよい。
【0060】
また、インバーター30は、圧縮機10の電動モータ20と逆側に組み付けられているものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、電動モータ20を挟んで圧縮機10に組み付けられてもよい。
【0061】
また、冷媒流路40には、凹部200が設けられているものとして説明したが、これに限定されるものではなく、凹部が設けられていなくても勿論よい。
【0062】
また、回転体110は、冷媒流路40内を通過する冷媒の流れ方向を変更するL字状のフラップによって構成されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、冷媒流路40内を通過する冷媒の流れ方向を変更できる構成(例えば、複数の板状部材や棒状部材)であればよい。
【0063】
また、駆動部120(バネ)は、冷媒流路40内を通過する冷媒の流量が少ない場合に、回転体110が冷媒流路40の壁面から立ち上がるように回転体110を付勢しているものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、駆動部120(バネ)は、冷媒流路40内を通過する冷媒の流量が多い場合に、回転体110が冷媒流路40の壁面から立ち上がるように回転体110を付勢していてもよい。この場合、流れ方向変換部100は、冷媒の流量が多い場合に冷媒流路40内を通過する冷媒をある程度塞き止めることも可能である。従って、インバーター30の駆動回路31を冷却し過ぎてしまうことを防止でき、インバーター30に結露等が生じることを防止できる。
【0064】
また、駆動部120は、回転体110を回転駆動させるバネによって構成されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、回転体110を回転させる構成(例えば、モータ)であればよい。この場合、回転体110は、冷媒流路40内を通過する冷媒の流量に応じて所定の回転角度(例えば、0〜90度)の範囲内においてモータ等の制御によって回動されてもよい。
【0065】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められる。
【符号の説明】
【0066】
1…電動圧縮機
10…圧縮機
20…電動モータ
30…インバーター(駆動回路部)
31…駆動回路
40…冷媒流路
50…ハウジング
100…流れ方向変換部
110…回転体
120…駆動部
200…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機に組み付けられる電動モータと、前記圧縮機に組み付けられて熱負荷変化に応じて前記電動モータの回転数を制御する駆動回路部とを備え、前記圧縮機と前記駆動回路部との間に形成される冷媒流路を通過した前記冷媒が前記駆動回路部の発熱部を冷却する電動圧縮機であって、
前記冷媒流路には、前記冷媒流路内を通過する前記冷媒の流量に応じて、前記冷媒の流れ方向を変換する流れ方向変換部が設けられることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動圧縮機であって、
前記冷媒流路には、前記流れ方向変換部が収容される凹部が設けられ、
前記流れ方向変換部は、前記冷媒流路と前記凹部との境界に設けられることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電動圧縮機であって、
前記駆動回路部の発熱部は、前記冷媒流路に隣接する駆動回路であり、
前記流れ方向変換部は、前記駆動回路と対向する位置に設けられることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の電動圧縮機であって、
前記流れ方向変換部は、
前記冷媒流路内で回転可能な板状の回転体と、
前記回転体を回転駆動させる駆動部とを備えることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項5】
請求項4に記載の電動圧縮機であって、
前記回転体の長さは、前記冷媒流路内での前記冷媒の流れ方向に直交する幅よりも短いことを特徴とする電動圧縮機。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の電動圧縮機であって、
前記駆動部は、前記冷媒流路内を通過する前記冷媒の流量が少ない場合に、前記回転体が前記冷媒流路の壁面から立ち上がるように前記回転体を付勢するバネによって構成されることを特徴とする電動圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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