説明

電動圧縮機

【課題】簡単な構造と作業で、電気絶縁性能を強化できる電動圧縮機を提供する。
【解決手段】モータ(図示せず)と、前記モータにより駆動される圧縮手段(図示せず)と、前記モータ及び前記圧縮手段を収納する金属筐体(図示せず)と、絶縁部材4を介して保持された給電用端子2を備えると共に、前記金属筐体の開口部(図示せず)に設けられた給電ターミナル1を備え、前記給電用端子2を通す穴9を設けた絶縁板8を、前記金属筐体の内側の給電用端子2に通し、さらに前記絶縁部材4に密着させたもので、絶縁板8の穴9に給電用端子2を通すという簡単な作業で、給電ターミナル1を大型化することなく、給電用端子2と金属筐体、台座3などとの沿面距離が、絶縁板8の表と裏の両面分追加されるため、電気絶縁性能を強化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関するもので、特に、電動圧縮機の給電ターミナルと金属筐体との間の絶縁不良防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電動圧縮機とし、図5、6に示されるようなものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、上記特許文献1に記載された従来の電動圧縮機の断面図である。
【0004】
図5において、従来の電動圧縮機11は、金属筐体14の内部にモータ15と、圧縮手段である圧縮機構部13とが収納されており、圧縮機構部13がモータ15で駆動されることにより、吸入管16から吸入された気体冷媒が圧縮されて吐出管12から排出される。モータ15への電力は、金属筐体14の側面に設けた開口部14aに取着された給電ターミナル1を介して外部から供給される。
【0005】
図6は、図5に示す電動圧縮機11の給電ターミナル1近傍の構造を拡大して示す部分断面図である。この給電ターミナル1の給電用端子2と金属筐体14(台座3)との間の絶縁不良防止に関しては、給電ターミナル1の給電用端子2などを絶縁性樹脂により覆うことが提案されている。
【0006】
図6において、給電ターミナル1の給電用端子2は、台座3と絶縁部材4により電気絶縁され固定されている。
【0007】
給電用端子2には、モータ15からのリード線6がハタ型端子5を介して、電気接続される。給電用端子2、ハタ型端子5の露出部は、絶縁樹脂カバー7により覆われており、両矢印で示す沿面距離が確保される。
【0008】
図7は、給電用端子2、ハタ型端子5の露出部は、絶縁樹脂カバー7により覆われておらず、両矢印で示す沿面距離しか確保できない絶縁不良防止前の事例を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−182655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に記載されたような従来の電動圧縮機における給電ターミナルに関しては、次のような課題がある。給電用端子2、ハタ型端子5の露出部は、絶縁樹脂カバー7により覆うことにより、沿面距離が確保される。しかしながら、絶縁樹脂カバー7で露出部を覆う際に、隙間が生じないようにするために作業面、構造面で難しさがあった。
【0011】
また、電動圧縮機に使用されるオイル、冷媒が変更されると、それらの電気絶縁抵抗が変化することで、電動圧縮機としての電気絶縁性能が変化してしまうことになる。そのため、オイル、冷媒が変更される都度、電気絶縁性能に直結する給電ターミナルの構造見直しや再設計が必要になる。
【0012】
そして、絶縁部材を長くして沿面距離を確保すると、給電用端子2が長くなり、給電ターミナル1が大型化するという課題があった。
【0013】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、給電ターミナルが大型化することなく、簡単な構造と作業で電気絶縁性能を強化することができる電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来の課題を解決するために、本発明の電動圧縮機は、モータと、前記モータにより駆動される圧縮手段と、前記モータ及び前記圧縮手段を収納する金属筐体と、絶縁部材を介して保持された給電用端子を備えると共に、前記金属筐体の開口部に設けられた給電ターミナルを備え、前記給電用端子を通す穴を設けた絶縁板を、前記金属筐体の内側の給電用端子に通し、さらに前記絶縁部材に密着させたもので、給電用端子と金属筐体、給電ターミナルを配した台座などとの沿面距離が、絶縁板の表と裏の両面分追加されるため、電気絶縁性能を強化することができる。また、給電用端子を通す穴を設けた絶縁板を、金属筐体内側の給電用端子に通すだけであるので、大型化することなく、構造は単純であり作業は容易に行える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電動圧縮機は、給電ターミナルが大型化することなく、簡単な構造と作業で電気絶縁性能を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1における電動圧縮機の給電ターミナル近傍を示す部分断面図
【図2】同電動圧縮機の絶縁板の平面図
【図3】本発明の実施の形態2における電動圧縮機の絶縁板の平面図
【図4】本発明の実施の形態3における電動圧縮機の絶縁板の斜視図
【図5】従来の電動圧縮機の断面図
【図6】同電動圧縮機の給電ターミナル近傍を示す部分断面図
【図7】同給電ターミナル近傍を示す部分断面図(絶縁不良防止前)
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の発明は、モータと、前記モータにより駆動される圧縮手段と、前記モータ及び前記圧縮手段を収納する金属筐体と、絶縁部材を介して保持された給電用端子を備えると共に、前記金属筐体の開口部に設けられた給電ターミナルを備え、前記給電用端子を通す穴を設けた絶縁板を、前記金属筐体の内側の給電用端子に通し、さらに前記絶縁部材に密着させたもので、給電用端子と金属筐体、給電ターミナルを配した台座などとの沿面距離が、絶縁板の表と裏の両面分追加されるため、電気絶縁性能を強化することができる。また、給電用端子を通す穴を設けた絶縁板を、金属筐体内側の給電用端子に通すだけであるので、大型化することなく、構造は単純であり作業は容易に行える。
【0018】
第2の発明は、特に、第1の発明の金属筐体内側の給電用端子に接続される接続部材により、絶縁板が押さえられ前記絶縁部材に密着されるもので、絶縁板の絶縁部材への密着が特段の部材を用いることなく行える。
【0019】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の絶縁板を、弾性を有する弾性部材で形成したもので、絶縁部材に凸凹が存在しても、絶縁板の絶縁部材への密着を隙間無く行うことができる。
【0020】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか一つの発明の絶縁板に、給電用端子を通す穴を複数設けたもので、モータが3相モータの場合、給電用端子が3本となるが、絶縁板に給電用端子を通す穴を3個設けることで、1枚の絶縁板で、作業を更に容易にできる。また、給電ターミナルの中央部においては、給電用端子と台座との沿面距離が無くなるため、更に電気絶縁性能を強化することができる。
【0021】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか一つの発明の絶縁板に、平面に起伏をつくりだす構造物を設けたもので、給電用端子と金属筐体、台座などとの沿面距離が、絶縁板の表と裏の両面分だけでなく、起伏をつくりだす構造物分も追加されるため、電気絶縁性能を更に強化することができる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における電動圧縮機の給電ターミナル近傍を示す部分断面図、図2は、同電動圧縮機の絶縁板の平面図である。
【0024】
本実施の形態における電動圧縮機の給電ターミナル近傍と、従来の電動圧縮機の給電ターミナル近傍(図6参照)との主な相違点は、本実施の形態では、絶縁樹脂カバー7を使用せず、絶縁板8を設けた点で、他の構成は、従来の電動圧縮機のそれと同一である。したがって、従来の電動圧縮機の給電ターミナルと同一部分には、同一符号を付して、その説明は省略する。
【0025】
図1において、給電ターミナル1の給電用端子2は、台座3と絶縁部材4により電気絶縁され、絶縁部材4を介して、台座3に固定されている。給電用端子2には、モータ15からのリード線6がハタ型端子5を介して、電気接続されている。
【0026】
図2に、給電用端子2を通す穴9を設けた絶縁板8の平面図を示す。図1において、絶縁板8を、金属筐体14の内側の給電用端子2に通し、絶縁部材4に密着させている。
【0027】
これにより、給電用端子2と台座3(金属筐体14)との沿面距離が、絶縁板8の表と裏の両面分追加されるため(図1に、両矢印で表示)、電気絶縁性能を強化することができる。また、給電用端子2を通す穴9を設けた絶縁板8を、金属筐体14の内側の給電用端子2に通すだけであるので、大型化することなく、構造は単純であり作業は容易に行える。
【0028】
なお、絶縁板8を絶縁部材4に密着させる方法としては、給電用端子2を通す穴9の穴径を、給電用端子2の直径に対してきつくして、圧入、接着剤固定などのほか、金属筐体14の内側の給電用端子2に接続されるハタ型端子5、コネクタなどの接続部材(図示せず)により、絶縁板8が押さえられ絶縁部材4に密着させることもできる。
【0029】
これにより、絶縁板8の絶縁部材4への密着が特段の部材を準備することなく行える。また、接続部と絶縁板8との間にバネを介在させても良い。
【0030】
また、絶縁板8を、弾性を有する弾性部材で形成しても良い。これにより、絶縁部材4に凸凹が存在しても、絶縁板8の絶縁部材4への密着を隙間無く行うことができる。
【0031】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における電動圧縮機の絶縁板の平面図である。なお、上
記実施の形態1における電動圧縮機と同一部分には、同一符号を付して、その説明は省略する。
【0032】
上記実施の形態1における絶縁板8では、給電用端子2を通す穴9を1個設けたのに対し、本実施の形態では、図3に示すように、絶縁板10に、穴9を3個設けたものである。
【0033】
これにより、モータ15が3相モータの場合、給電用端子2が3本となるが、絶縁板10に、給電用端子2を通す穴9を3個設けることで、絶縁板を1枚として、作業を更に容易にできる。また、給電ターミナル1の中央部においては、給電用端子2と台座3との沿面距離が無くなるため、更に電気絶縁性能を強化することができる。
【0034】
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3における電動圧縮機の絶縁板の斜視図である。なお、上記実施の形態における電動圧縮機と同一部分には、同一符号を付して、その説明は省略する。
【0035】
本実施の形態における電動圧縮機は、図4に示すように、絶縁板17に、平面に起伏をつくりだす構造物としての壁18を設けたもので、これにより、給電用端子2と台座3(金属筐体14)などとの沿面距離が、絶縁板17の表と裏の両面分だけでなく、起伏をつくりだす構造物としての壁18分も追加されるため(両矢印で表示)、電気絶縁性能を更に強化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明にかかる電動圧縮機は、給電ターミナルが大型化することなく、簡単な構造と作業で電気絶縁性能を強化することができるので、民生用、産業用、各種電動圧縮機に適用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 給電ターミナル
2 給電用端子
3 台座
4 絶縁部材
5 ハタ型端子
6 リード線
8、10、17 絶縁板
9 穴
11 電動圧縮機
13 圧縮機構部(圧縮手段)
14 金属筐体
15 モータ
18 壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータにより駆動される圧縮手段と、前記モータ及び前記圧縮手段を収納する金属筐体と、絶縁部材を介して保持された給電用端子を備えると共に、前記金属筐体の開口部に設けられた給電ターミナルを備え、前記給電用端子を通す穴を設けた絶縁板を、前記金属筐体の内側の給電用端子に通し、さらに前記絶縁部材に密着させたことを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
金属筐体内側の給電用端子に接続される接続部材により、絶縁板が押さえられ前記絶縁部材に密着されることを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
絶縁板を、弾性を有する弾性部材で形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の電動圧縮機。
【請求項4】
絶縁板に、給電用端子を通す穴を複数設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動圧縮機。
【請求項5】
絶縁板に、平面に起伏をつくりだす構造物を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−60815(P2013−60815A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197962(P2011−197962)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】