説明

電動圧縮機

【課題】大型化・コストアップを招くことなく、潤滑油分離能力に優れた電動圧縮機を提供する。
【解決手段】モ−タ部(図示せず)とモータ部で駆動される圧縮部(図示せず)とを収納する主容器(図示せず)と、前記主容器の前記モ−タ部側端部に配されると共に圧縮部に潤滑油を供給する給油装置(図示せず)と、前記主容器の前記モ−タ部側開口部と向かい合う形で装着された副容器102を備え、副容器102内の中央部に給油装置を配して、吐出冷媒の通路を略ド−ナツ状としたもので、副容器102の略ドーナツ状通路に吐出冷媒を導くことにより冷媒は円周状の流れを発生し、潤滑油を含んだ冷媒には遠心力を生じることとなり、円柱状の分離室を構成する新たな部品を追加することなく、電動圧縮機の拡大を招くことなく潤滑油分離能力の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置などに使用される電動圧縮機に関するもので、特に、冷媒中に溶け込んだ潤滑油を分離する潤滑油分離機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の電動圧縮機として、図3〜5に示すようなものがあった。図3は、従来の電動圧縮機の断面図、図4は、同電動圧縮機の吐出冷媒の通路を形成する副容器の概略図、図5は、同副容器の断面図である。
【0003】
電動圧縮機100で圧縮された高温高圧のガス冷媒は、配管を通って凝縮器(図示せず)で凝縮されて液冷媒となり、膨張弁(図示せず)で減圧されて低温低圧となった冷媒は、蒸発器(図示せず)で空調室内の空気と熱交換されて蒸発し、電動圧縮機100へ戻る。蒸発器で室内の空気を冷却することで快適な空調を得ることが出来る。
【0004】
図3〜5において、電動圧縮機100は、主容器101と、副容器102と、インバータケース103によって密閉容器として形成される。主容器101内に、モータ部141及び圧縮部142が収容され、インバータケース103内にインバータ104が収容されたものである。
【0005】
副容器102は、外周壁136と、給油壁137を備えている。
【0006】
モータ部141は、交流3相モータであり、ロータ105とステータ106で構成されている。ロータ105の回転軸107は、スライドブッシュ108とベアリング109を介して圧縮部142を構成する可動スクロール110に接続されている。そしてモータ部141は、インバータ104から出力される電力(電流)を受けて駆動する。
【0007】
圧縮部142は、上記モータ部141の駆動によって作動し、主容器101に開けられた吸入ポート111から冷凍回路中の低温低圧のガス冷媒を吸い込み、吸入通路(図示せず)を通って、固定スクロール113と可動スクロール110とで構成される圧縮室114で、ガス冷媒を圧縮して高温高圧ガス冷媒にする。
【0008】
高温高圧ガス冷媒は、吐出弁115を押し上げて吐出され、高圧通路116を通って主容器101内の高圧空間に流入し、副容器102に設けられている吐出ポート117から冷凍回路中へ吐き出される。
【0009】
圧縮された高温高圧の吐出ガスは、主容器101の端面に設けられた1個もしくは複数個の孔(図示せず)を通過し、副容器102に流入する。さらに吐出ポート117から冷凍回路中へ吐き出される間に、潤滑油を含んだ吐出ガスが副容器102の壁に衝突することで、潤滑油が分離され重力により副容器102の下部に蓄えられる。潤滑油は通路120を通って副容器102の中央部に構成された給油空間122に給油装置121の作動により吸い上げられる。
【0010】
従来、この種の電動圧縮機は、圧縮機構摺動部を潤滑する潤滑油の一部が圧縮された流体と共に電動圧縮機から吐出され、冷凍サイクル中を循環することとなる。流体と共に吐出される潤滑油の量がサイクル中に多く吐出されるほどシステム効率が低下することは従来からよく知られている。
【0011】
かかる事情から、システム効率の向上を図るため、圧縮機構により圧縮された流体から潤滑油を分離する遠心分離式の円柱状分離室を設けた電動圧縮機が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
かかる電動圧縮機では、吐出冷媒に含まれる潤滑油を、遠心力により分離する円柱状の分離室と、吐出冷媒を分離室に導く導入孔および分離された潤滑油を排出する排出孔が形成され、さらに分離された潤滑油を蓄える貯油室が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−82352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前記特許文献1に記載されたような従来の電動圧縮機の構成では、円柱状の分離室を冷凍システムへの吐出口へ接続し、さらに導入孔・排出孔を円周接線方向にレイアウトする必要があるため、部品構成が制約を受けるとともにコストアップにも繋がるという課題を有していた。
【0015】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、円柱状の分離室を構成する新たな部品を追加することなく、また、電動圧縮機の拡大を招くことなく潤滑油分離能力の向上を図ることができる電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る電動圧縮機は、主容器内に、モ−タ部と、前記モ−タ部に回転軸を介して連結され圧縮室内に吸入された冷媒を圧縮して吐出する圧縮部とを収納し、前記主容器の前記モ−タ部側端部に配されると共に前記圧縮部に潤滑油を供給する給油装置を具備し、前記主容器の前記モ−タ部側開口部と向かい合う形で副容器が装着された電動圧縮機において、前記副容器内の中央部に給油装置を配して、吐出冷媒の通路を略ド−ナツ状としたもので、副容器の略ドーナツ状通路に吐出冷媒を導くことにより冷媒は円周状の流れを発生し、潤滑油を含んだ冷媒には遠心力を生じることとなり、円柱状の分離室を構成する新たな部品を追加することなく、圧縮機の拡大を招くことなく潤滑油分離能力の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の電動圧縮機の潤滑油分離機構は、円柱状の分離室を構成する新たな部品を追加することなく、圧縮機の拡大を招くことなく潤滑油分離能力の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1における電動圧縮機の吐出冷媒の通路を形成する副容器の概略図
【図2】同副容器の断面図
【図3】従来の電動圧縮機の断面図
【図4】同電動圧縮機の吐出冷媒の通路を形成する副容器の概略図
【図5】同副容器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の発明は、主容器内に、モ−タ部と、前記モ−タ部に回転軸を介して連結され圧縮室内に吸入された冷媒を圧縮して吐出する圧縮部とを収納し、前記主容器の前記モ−タ部側端部に配されると共に前記圧縮部に潤滑油を供給する給油装置を具備し、前記主容器の
前記モ−タ部側開口部と向かい合う形で副容器が装着された電動圧縮機において、前記副容器内の中央部に給油装置を配して、吐出冷媒の通路を略ド−ナツ状としたもので、副容器の略ドーナツ状通路に吐出冷媒を導くことにより冷媒は円周状の流れを発生し、潤滑油を含んだ冷媒には遠心力を生じることとなり、円柱状の分離室を構成する新たな部品を追加することなく、圧縮機の拡大を招くことなく潤滑油分離能力の向上を図ることができる。
【0020】
第2の発明は、特に、第1の発明の副容器の外周上部に、分離された潤滑油を蓄える貯油室を設置し、前記貯油室と給油装置を連通する連通路を備えたもので、遠心力により分離された潤滑油を蓄える貯油室を前記副容器の上部に設置することにより、重力を利用してスムーズに中央部に形成された給油装置へ潤滑油を移動させることが可能となる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における電動圧縮機の吐出冷媒の通路を形成する副容器の概略図、図2は、同副容器の断面図である。なお、上記従来の電動圧縮機と同一部分は、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0023】
本実施の形態における電動圧縮機は、車両(自動車)用の冷凍回路に適用されるものである。
【0024】
図1、2において、本実施の形態における電動圧縮機は、副容器102の外周壁136と給油空間122を区切る給油壁137とを結ぶ吐出仕切り壁131を構成している。吐出仕切り壁131は、図1に示すように吐出直前通路138を挟んで貯油室壁133と反対側に構成され、また吐出仕切り壁131を挟んで吐出直前通路138と反対側に位置する場所に、吐出ガス導入孔130を主容器101の端面に設ける。
【0025】
さらに給油装置121を内蔵する給油空間122を、副容器102の中央部に配置し、副容器102の外周壁136と給油壁137が略ド−ナツ状となるようにする。
【0026】
以上のように構成された本実施の形態における電動圧縮機の作用、動作を以下に説明する。
【0027】
圧縮室114で圧縮された吐出ガスは、潤滑油を含んだ状態で吐出ガス導入孔130を通過して副容器102に導かれる。その後吐出ガスの通路は、副容器102の外周壁136と給油壁137で囲まれた略ド−ナツ状の空間となり、必然的に、吐出ガスは円状の流れとなる。したがって、潤滑油を含む吐出ガスには遠心力が発生し、比重の大きい潤滑油は、略ド−ナツ状の通路の外周側へ分布することとなる。
【0028】
そこで給油壁137で囲まれた給油空間122の上方で、さらに吐出直前通路138の上流位置に貯油室壁133を図1に示すように設置する。遠心力により、略ド−ナツ状の通路の外周側へ分布した潤滑油は、貯油室132に蓄えられることとなり、さらに蓄えられた潤滑油は、貯油室132と給油空間122を結ぶ連通路134を通って、給油空間122に重力にてスム−ズに移動することとなる。
【0029】
このような構成とすることで、大型化・コストアップを招くことなく遠心力を利用した効率的な潤滑油分離機構を構成し、また分離した潤滑油をスム−ズに給油装置121まで導くことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の電動圧縮機は、円柱状の分離室を構成する新たな部品を追加することなく、圧縮機の拡大を招くことなく潤滑油分離能力の向上を図ることができるもので、車両用、家庭用を問わず各種空調装置に適用できる。
【符号の説明】
【0031】
100 電動圧縮機
101 主容器
102 副容器
103 インバータケース
104 インバータ
105 ロータ
106 ステータ
107 回転軸
108 スライドブッシュ
109 ベアリング
110 可動スクロール
113 固定スクロール
114 圧縮室
115 吐出弁
116 高圧通路
120 通路
121 給油装置
122 給油空間
130 吐出ガス導入孔
131 吐出仕切り壁
132 貯油室
133 貯油室壁
134 連通路
136 外周壁
137 給油壁
138 吐出直前通路
141 モータ部
142 圧縮部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主容器内に、モ−タ部と、前記モ−タ部に回転軸を介して連結され圧縮室内に吸入された冷媒を圧縮して吐出する圧縮部とを収納し、前記主容器の前記モ−タ部側端部に配されると共に前記圧縮部に潤滑油を供給する給油装置を具備し、前記主容器の前記モ−タ部側開口部と向かい合う形で副容器が装着された電動圧縮機において、前記副容器内の中央部に給油装置を配して、吐出冷媒の通路を略ド−ナツ状としたことを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
副容器の外周上部に、分離された潤滑油を蓄える貯油室を設置し、前記貯油室と給油装置を連通する連通路を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−60911(P2013−60911A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200468(P2011−200468)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】