説明

電動射出成形機の停電時の運転方法、および電動射出成形機

【課題】停電時に、電動射出成形機のサーボアンプに電力を供給して適切な状態で停止して金型を保護できる電動射出成形機の運転方法を提供する。
【解決手段】電動射出成形機1において、交流電圧を直流電圧に変換する交流直流変換器2の直流回路(P、N)側に、直流電圧を電力として貯蔵すると共に貯蔵した電力を直流回路に供給できる、電力貯蔵装置3を備える。正常時は、電力貯蔵装置3に所定の電力を貯蔵する。型閉工程中、型開工程中、または突出工程中において、交流電圧の異常を検出すると、電力貯蔵装置3から直流電圧を供給してこれらの工程を完了させ、その後電動射出成形機1を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停電発生時あるいは供給電圧異常時に、電動射出成形機のサーボアンプに電力を供給して適切な状態で停止するように電動射出成形機を運転して、金型を保護する電動射出成形機の運転方法、およびそのような運転方法を実施する電動射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、従来周知のように、一対の金型、これらの金型を型締する型締装置、樹脂を溶融して金型内に射出する射出装置等から構成され、射出装置は、射出シリンダ、この射出シリンダ内で回転方向と軸方向とに駆動されるスクリュ等から構成されている。電動射出成形機においては、このような型締装置、スクリュ等は、それぞれに独立して設けられているサーボモータによって駆動されるようになっている。電動射出成形機には電源装置が設けられており、この電源装置は、工場の受電設備から供給される所定の三相交流電圧を直流電圧に整流する。この整流された直流電圧が、各サーボモータを駆動するサーボアンプに供給されるようになっている。
【0003】
電動式射出成形機に取り付けられる金型には色々な種類のものがある。例えば適切な抜き勾配が形成されて脱型し易い形状になっている成形品の場合には、金型を比較的シンプルな2枚プレートから構成することができる。しかしながら成形品の形状によってはキャビティから成形品を取り出すことができない、いわゆるアンダーカット部が形成されてしまうものもある。このような場合には、金型内に駆動可能な中子が設けられる。型締装置の型締動作と連動させて中子を駆動すると、中子と金型の他の部材とからキャビティが形成される。このキャビティに溶融樹脂を射出して冷却固化後、型開動作に連動させて中子を駆動すると成形品から中子が待避する。そうすると成形品を取り出すことができる。金型を、いわゆる3枚プレートから構成することもできる。従来周知のように3枚プレートからなる金型は、型開時に適切な順序で各プレートを開くと、成形品の取り出し時に成形品からスプルを分離することができ、効率よく成形品を得ることができる。このように中子を備えた金型、3枚プレートからなる金型等は、金型内に駆動部材が設けられている。これらの駆動部材は型締装置の型開閉動作、あるいはエジェクタ装置の突出動作と連動させて駆動するようになっている。しかしながら停電、工場供給電圧の低下、あるいは工場供給電圧における規定値を超える周波数変動等の異常発生時には、型締装置やエジェクタ装置がどのような状態になるか保障できず、型開閉動作や突出動作と駆動部材とが互いに連動できるとは限らない。そうすると高価な金型が破損してしまうこともある。従って金型の破損を防止する対策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−51754号公報
【特許文献2】特開2002−118967号公報
【特許文献3】特開2004−216829号公報
【特許文献4】特開2009−241287号公報
【0005】
特許文献1には、所定の型開防止装置を備えた電動トグル型締装置が記載されている。特許文献1に記載の型開防止装置は、クロスヘッドに設けられており、該クロスヘッドを駆動するボールネジをブロックすることができる。従って型締状態において型開防止装置を駆動すると型締状態が維持されることになり、この状態で停電が発生しても金型は開かない。これによって中子等の駆動部品を備えた金型が取り付けられていても、意図しないタイミングで型開されないので、金型の破損を防止することができる。
【0006】
特許文献2には、所定の電源電圧保持装置を備えた電動射出成形機が記載されている。電源電圧保持装置は、電動射出成形機の電源装置の直流電圧側に設けられており、各サーボモータを駆動するサーボアンプと並列に接続されている。この電源電圧保持装置は、所定のモータと、このモータに交流電圧を供給するインバータと、モータの回転による運動エネルギを電力に変換して直流電圧に回生する回生コンバータとから構成されている。通常の運転時においてはインバータから供給される交流電圧によってモータを高速に回転する。すなわち運動エネルギとして貯蔵する。そして工場供給電圧の低下等の異常が発生して、電源装置が供給している直流電圧の低下を検出したら、回生コンバータによってモータの回転による運動エネルギーを電力に変換して直流電圧に回生する。これによって各サーボアンプに安定した直流電圧を供給することができる。工場の供給電圧が正常に復帰したら電源電圧保持装置を停止する。このようにして一時的な工場供給電圧の異常が発生しても、型開閉動作、突出動作等が停止することはなく、駆動部材を備えた金型が破損することを防止できる。
【0007】
特許文献3には、交流電圧を直流電圧に変換するコンバータを3個備えた電動射出成形機が記載されている。コンバータのそれぞれには独立した直流電圧回路が設けられ、それぞれの回路は、サーボモータを駆動する駆動用の直流電圧、サーボモータを制御する制御用の直流電圧、そして制御装置を駆動する制御装置用の直流電圧を供給するようになっている。特許文献3に記載の電動射出成形機において、これらの直流電圧回路には、それぞれエネルギー蓄積用のコンデンサが設けられ、正負の電圧線間に接続されている。従って交流電圧が停電した場合であっても、エネルギー蓄積用のコンデンサから供給される直流電圧によって所定の時間だけサーボモータを駆動することができる。これによって例えば型締力が発生しているときに停電が検出された場合には、型締装置を型開方向に駆動することができ金型を保護することができる。
【0008】
特許文献4は本出願人によって提案されている文献であり、本発明と直接的な関係はないが、電力供給装置を備えた電動射出成形機が記載されている。この電力供給装置は、電動射出成形機の電源装置の直流電圧側に設けられており、各サーボモータを駆動するサーボアンプと並列に接続されている。この電力供給装置は、コイルとコンデンサと2個のスイッチと2個のダイオードとからなる電力貯蔵回路を備えており、直流電圧から電力の供給を受けて、回路内に昇圧した状態で電力を貯蔵することができる。そして短時間に大電力が必要な射出工程において、回路内に貯蔵した電力を直流電圧側に供給する。そうすると電動射出成形機への供給電力を平滑化することができ、工場の受電設備の負担を低減することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の電動射出成形機、あるいは特許文献2に記載の電動射出成形機によっても、停電、工場供給電圧の低下、あるいは工場供給電圧における規定値を超える周波数変動等の異常に対応することができ金型を保護することはできる。しかしながら問題も見受けられる。例えば特許文献1に記載の電動射出成形機の場合、型開防止装置が駆動されている状態であれば停電が発生しても型開しないので問題はないが、他の場合、例えば型開閉の動作中に停電が発生すると型盤装置が慣性によって動いて金型を破損してしまうことがある。また型開防止に関しては考慮されているが突出動作に関しては考慮されていない。従って中子等の駆動部分を備え、突出動作と連係してこれを駆動する必要のある金型の場合には、駆動部分が動作しているにも拘わらず停電等によって突出動作が停止することがあり金型が破損してしまう。特許文献2に記載の電動射出成形機の場合、電源電圧保持装置によって電力をモータの回転による運動エネルギとして貯蔵することができ、工場の供給電圧の低下等の異常時に直流電圧に変換して回生することができる。従って所定の時間だけ直流電圧を維持して運転を継続することができ、一時的に工場の供給電圧の低下に対応することはできる。しかしながら工場の供給電圧が短時間で正常に回復する保障はなく、所定の時間内に電圧が正常に戻らない場合には直流電圧の供給が停止してしまう。そうすると電動射出成形機は停止することになり、このときの型開閉状態は不定になって金型を確実に保護することはできない。つまり特許文献2に記載の電源電圧保持装置は、電動射出成形機を安全な状態にして停止させることを目的としていないので、工場の供給電圧が短時間で復旧しない場合、金型の破損が発生する可能性がある。特許文献3に記載の電動射出成形機の場合には、エネルギー蓄積用のコンデンサに電力が貯蔵されるので、停電時にも所定の時間はサーボモータを駆動できるようになっており、ある程度金型を保護することはできる。しかしながらエネルギー蓄積用のコンデンサによっては、安定した直流電圧が得られる保証はなく、サーボモータが確実に駆動できるとは限らない。エネルギー蓄積用のコンデンサを検討すると、これらは正負の電圧線間に接続されているだけであり、実質的にはコンバータからのリップル電圧を平滑化する従来の平滑用コンデンサと同様の構成である。そうすると電荷が放出されるに従って直流電圧が低下することになる。つまりサーボモータを確実に駆動できる保障がない。また直流電圧回路が3系統に別れていて互いに独立しているので、駆動用の直流電圧と制御用の直流電圧と制御装置用の直流電圧のうち1系統でも電圧が低下してしまうとサーボモータが駆動できないという問題もある。そうするとサーボモータを駆動できない状態になる可能性がそれだけ大きくなってしまう。つまり特許文献3に記載の電動射出成形機によっては、停電時に確実に金型を保護できる保障がない。特許文献4に記載の電力供給装置を検討すると、この電力供給装置は射出工程において、工場から供給される電圧に代わって電力を供給するように構成されている。しかしながら型開閉工程、突出工程中に停電が発生しても電力を供給しないので、他の文献に記載の電動射出成形機のように金型を保護することはできない。
【0010】
本発明は、上記したような従来の問題点あるいは課題を解決した、電動射出成形機の運転方法、および電動射出成形機を提供することを目的とし、具体的には、停電時あるいは供給電圧異常時に、電動射出成形機のサーボアンプに安定した電圧の電力を供給して適切な状態で停止するように電動射出成形機を運転して、金型を保護する電動射出成形機の運転方法、およびそのような運転方法を実施する電動射出成形機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、所定の電力貯蔵装置を備えた電動射出成形機の運転方法として構成する。電動射出成形機を構成している、スクリュ、型締装置、成形品突出装置等の各部材はサーボモータによって駆動され、サーボモータはサーボアンプによって駆動される。電動射出成形機には、交流電源からの交流電圧を整流して直流回路に直流電圧を供給する交流直流変換器が設けられており、この直流電圧によって各サーボアンプに電力が供給されている。電力貯蔵装置は直流回路に接続し、直流電圧を電力として貯蔵すると共に貯蔵した電力を直流回路に供給するように構成する。このとき供給する直流電圧は、電圧が所定の変動範囲に維持されるようにする。このような電力貯蔵装置を備えた電動射出成形機において、交流電圧が正常なときは電力貯蔵装置に所定の電力を貯蔵するようにする。そして金型を型閉じする型閉工程中、金型を型開きする型開工程中、または成形品を突き出す突出工程中において、交流電圧の異常を検出すると、電力貯蔵装置から直流電圧を供給してこれらの工程を完了させ、その後電動射出成形機を停止するように構成する。
【0012】
すなわち、請求項1に記載の発明は、交流電源からの交流電圧を整流して直流回路に直流電圧を供給する交流直流変換器と、前記直流回路からの直流電圧を電力として貯蔵すると共に貯蔵した電力を前記直流回路に供給する電力貯蔵装置とを備え、スクリュ、型締装置、成形品突出装置等の各部材を駆動するサーボモータのサーボアンプが前記直流回路からの直流電圧によって駆動されるようになっている電動射出成形機において、前記交流電圧が正常なときは前記電力貯蔵装置に所定の電力を貯蔵するようにし、型締装置または成形品突出装置を駆動中に、前記交流電圧の異常を検出すると、電圧が所定の変動範囲に維持されるように前記電力貯蔵装置から直流電圧を供給して前記型締装置または前記成形品突出装置の駆動を完了し、その後電動射出成形機を停止することを特徴とする電動射出成形機の運転方法として構成される。
請求項2に記載の発明は、交流電源からの交流電圧を整流して直流回路に直流電圧を供給する交流直流変換器と、前記直流回路からの直流電圧を電力として貯蔵すると共に貯蔵した電力を前記直流回路に供給する電力貯蔵装置とを備え、スクリュ、型締装置、成形品突出装置等の各部材を駆動するサーボモータのサーボアンプが前記直流回路からの直流電圧によって駆動されるようになっている電動射出成形機において、前記交流電圧が正常なときは前記電力貯蔵装置に所定の電力を貯蔵するようにし、金型を型閉じする型閉工程中、金型を型開きする型開工程中、または成形品を突き出す突出工程中において、前記交流電圧の異常を検出すると、電圧が所定の変動範囲に維持されるように前記電力貯蔵装置から直流電圧を供給して前記型閉工程、前記型開工程、または前記突出工程を完了し、その後電動射出成形機を停止することを特徴とする電動射出成形機の運転方法として構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の運転方法において、前記交流電圧の異常には、停電、電圧振幅の低下、あるいは規定値を越える周波数変動が含まれることを特徴とする電動射出成形機の運転方法として構成される。
【0013】
請求項4に記載の発明は、交流電源からの交流電圧を整流して直流回路に直流電圧を供給する交流直流変換器を備え、スクリュ、型締装置、成形品突出装置等の各部材を駆動するサーボモータのサーボアンプが前記直流回路からの直流電圧によって駆動されるようになっている電動射出成形機であって、前記直流回路には、直流電圧を電力として貯蔵すると共に貯蔵した電力を前記直流回路に供給する電力貯蔵装置が接続され、前記交流電源には、交流電圧を監視する監視装置が設けられ、前記監視装置において監視される交流電圧が正常のときは、前記電力貯蔵装置に所定の電力が貯蔵され、型締装置または成形品突出装置が駆動中に、前記監視装置において交流電圧の異常が検出されると、電圧が所定の変動範囲に維持されるように前記電力貯蔵装置から直流電圧が供給されて前記型締装置または前記成形品突出装置の駆動が完了するようになっており、その後電動射出成形機が停止されるように構成される。
請求項5に記載の発明は、交流電源からの交流電圧を整流して直流回路に直流電圧を供給する交流直流変換器を備え、スクリュ、型締装置、成形品突出装置等の各部材を駆動するサーボモータのサーボアンプが前記直流回路からの直流電圧によって駆動されるようになっている電動射出成形機であって、前記直流回路には、直流電圧を電力として貯蔵すると共に貯蔵した電力を前記直流回路に供給する電力貯蔵装置が接続され、前記交流電源には、交流電圧を監視する監視装置が設けられ、前記監視装置において監視される交流電圧が正常のときは、前記電力貯蔵装置に所定の電力が貯蔵され、金型を型閉じする型閉工程中、金型を型開きする型開工程中、または成形品を突き出す突出工程中に、前記監視装置において交流電圧の異常が検出されると、電圧が所定の変動範囲に維持されるように前記電力貯蔵装置から直流電圧が供給されて前記型閉工程、前記型開工程または前記突出工程が完了するようになっており、その後電動射出成形機が停止されるように構成される。
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の電動射出成形機において、前記交流電圧の異常には、停電、電圧振幅の低下、あるいは規定値を越える周波数変動が含まれるように構成される。
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれかの項に記載の電動射出成形機において、前記電力貯蔵装置は、コンデンサとコイルと所定のスイッチとを備え、前記直流回路からの直流電圧は前記コイルを経由して前記コンデンサに電力として貯蔵され、前記スイッチが駆動されると、前記コンデンサに貯蔵された電力が前記コイルを経由して前記直流回路に供給されるように構成される。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の電動射出成形機において、前記コンデンサに電力を貯蔵するとき前記直流回路からの直流電圧よりも高電圧の状態で貯蔵し、前記コンデンサから前記直流回路に直流電圧を供給するとき前記コンデンサ内に貯蔵された電力を降圧して供給するように構成される。
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の電動射出成形機において、前記コンデンサに電力を貯蔵するとき前記直流回路からの直流電圧よりも低電圧の状態で貯蔵し、前記コンデンサから前記直流回路に直流電圧を供給するとき前記コンデンサ内に貯蔵された電力を昇圧して供給するように構成される。
請求項10に記載の発明は、請求項5〜9のいずれかの項に記載の電動射出成形機において、前記直流回路には前記直流回路の直流電圧を降圧するDC/DCコンバータが設けられ、少なくとも前記監視装置において交流電圧の異常が検出されたときは、前記サーボアンプを制御する制御用電圧が、前記DC/DCコンバータから供給されるように構成される。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明は、交流電源からの交流電圧を整流して直流回路に直流電圧を供給する交流直流変換器と、直流回路からの直流電圧を電力として貯蔵すると共に貯蔵した電力を直流回路に供給する電力貯蔵装置とを備え、スクリュ、型締装置、成形品突出装置等の各部材を駆動するサーボモータのサーボアンプが直流回路からの直流電圧によって駆動されるようになっている電動射出成形機の運転方法として構成される。そしてこの運転方法は、交流電圧が正常なときは電力貯蔵装置に所定の電力を貯蔵するようにし、型締装置または成形品突出装置を駆動中に、交流電圧の異常を検出すると、電圧が所定の変動範囲に維持されるように電力貯蔵装置から直流電圧を供給して型締装置または成形品突出装置の駆動を完了し、その後電動射出成形機を停止するように構成されている。そうすると停電時であっても安定した直流電圧が供給されてサーボモータは確実に動作できることになる。そして型締装置または成形品突出装置が停止した状態で電動射出成形機が停止すると共に、これら装置には、部材が能動的に動き出してしまうような機械的エネルギ、あるいはポテンシャルエネルギは残留しないことになる。従ってサーボモータを無負荷にしても装置が動き出すことはなく安定している。これによって金型の動作と無関係に型開閉したり突出動作をしないので、金型の破損を防止することができる。また他の発明によると、電動射出成形機の運転方法は、交流電圧が正常なときに電力貯蔵装置に所定の電力を貯蔵するようにし、金型を型閉じする型閉工程中、金型を型開きする型開工程中、または成形品を突き出す突出工程中において、交流電圧の異常を検出すると、電圧が所定の変動範囲に維持されるように電力貯蔵装置から直流電圧を供給して型閉工程、型開工程、または突出工程を完了させ、その後電動射出成形機を停止するように構成されている。従ってこの発明によっても型締装置または突出装置は安定した状態で停止することになり、金型を保護することができる。また他の発明によると、このような運転方法を実施するように構成されている電動射出成形機において、電力貯蔵装置は、コンデンサとコイルと所定のスイッチとを備え、直流回路からの直流電圧はコイルを経由してコンデンサに電力として貯蔵され、スイッチが駆動されると、コンデンサに貯蔵された電力がコイルを経由して直流回路に供給されるように構成されている。従って比較的シンプルな回路から電力貯蔵装置を構成することができ、安定した直流電圧を供給することができる。そして他の発明によると、このコンデンサに電力を貯蔵するとき直流回路からの直流電圧よりも高電圧の状態で貯蔵し、コンデンサから直流回路に直流電圧を供給するときコンデンサ内に貯蔵された電力を降圧して供給する。また他の発明によるとコンデンサに電力を貯蔵するとき直流回路からの直流電圧よりも低電圧の状態で貯蔵し、コンデンサから直流回路に直流電圧を供給するときコンデンサ内に貯蔵された電力を昇圧して供給する。このように電力を昇圧/降圧して供給するので、直流電圧の変動を所望の範囲に制御するとき、容易に制御できることになる。さらには他の発明によると、直流回路には直流回路の直流電圧を降圧するDC/DCコンバータが設けられ、少なくとも監視装置において交流電圧の異常が検出されたときは、サーボアンプを制御する制御用電圧が、DC/DCコンバータから供給されるように構成されている。そうすると直流電圧が供給されている限り、確実にサーボアンプの制御用電圧が供給されることになり、サーボモータを駆動できることが保障される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態に係る電力貯蔵装置を備えた電動射出成形機において、電力貯蔵装置と各サーボアンプの接続状態を模式的に示す平面図である。
【図2】本実施の形態に係る電力貯蔵装置の電力貯蔵回路を示す回路図である。
【図3】本実施の形態に係る電力貯蔵回路の作用を模式的に示す図であり、その(ア)、(イ)は電力貯蔵回路に電力を貯蔵する場合の回路の動作状態を、その(ウ)、(エ)は貯蔵された電力を正端子と負端子から供給する場合の回路の動作状態を、それぞれ説明する動作説明図である。
【図4】本実施の形態に係る電動射出成形機において、交流電圧の異常を検出した場合の運転方法を示すフローチャートである。
【図5】本実施の形態に係る電動射出成形機において、交流電圧の異常を検出した場合の運転方法を示すグラフである。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る電力貯蔵装置の電力貯蔵回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る電動射出成形機1も、従来周知の電動射出成形機と同様に、3相交流電源PWから供給される3相交流電圧を整流してサーボアンプに直流電圧が供給されるようになっている。従って本実施の形態に係る電動射出成形機1も、図1に示されているように交流直流変換器2が設けられ、交流直流変換器2は3相交流電源PWに接続されていると共に直流回路P、Nに接続されている。交流直流変換器2は、詳しくは説明しないが3相交流電圧を直流電圧に変換するコンバータであり、従来周知のダイオード整流回路、PWMコンバータ等から構成されている。図1には示されていないが交流直流変換器2の内部には、直流回路の正負の電圧線P、N間に平滑化コンデンサが接続され、直流電圧が平滑化されるようになっている。
【0017】
電動射出成形機1の各装置を駆動するサーボモータ、すなわちスクリュを軸方向に駆動するサーボモータSM1、回転方向に駆動するサーボモータSM2、型開閉装置を駆動するサーボモータSM3、エジェクタピンを駆動するサーボモータSM4、…は、それぞれ対応するサーボアンプSA1、SA2、…によって駆動されるようになっている。これらのサーボアンプSA1、SA2、…は、それぞれの正の端子が直流回路P、Nの正の電圧線Pに接続されている。従って交流直流変換器2から、これらのサーボアンプSA1、SA2、…に直流電圧が供給されるようになっている。
【0018】
本実施の形態に係る電動射出成形機1には、直流電圧を電力として貯蔵できると共に貯蔵した電力を直流電圧として直流回路P、N側に供給することができる装置、すなわち電力貯蔵装置3が設けられている。これによって停電等の3相交流電圧異常時にも、一時的に電力を供給してサーボモータSM1、…を駆動できるようになっている。電力貯蔵装置3は正の電圧線Pに接続されている。電力貯蔵装置3については後で詳しく説明する。
【0019】
本実施の形態に係る電動射出成形機1においても各装置を制御する制御装置5が設けられているが、この制御装置5を駆動する電力は停電時であっても安定して供給されるように、その供給手段は二重化されている。具体的には、3相交流電源PWからの交流電圧と電力貯蔵装置3からの直流電圧の、いずれからも電力の供給を受けられるようになっている。つまり3相交流電源PWには制御電源用AC/DCコンバータ6が、電力貯蔵装置3の正の電圧線Pには制御電源用DC/DCコンバータ7がそれぞれ設けられ、所定の電圧の直流電圧に変換されている。そしてこれらのコンバータ6、7からの電圧線は切換スイッチSWに入力されている。この切換スイッチSWは、半導体スイッチ、機械式スイッチ等のいずれのスイッチから構成されていてもよく、制御装置5からの信号によって作動するようになっている。この切換スイッチSWによって制御装置5の駆動用電力の供給先が、制御電源用AC/DCコンバータ6から、あるいは電源用DC/DCコンバータ7から適宜選択される。
【0020】
本実施の形態においては、交流直流変換器2の交流回路側に交流電圧監視装置9が設けられている。この装置は信号線によって制御装置5に接続されており、3相交流電圧を監視して、停電、電圧低下、規定値を超える周波数変動等の交流電圧異常を検出したら制御装置5に異常が通知されるようになっている。なお、規定値を越える周波数変動とは、周波数が所定の割合、例えば5%を越えて変動するような周波数が不安定な状態をいう。
【0021】
本実施の形態に係る電力貯蔵装置3について詳しく説明する。電力貯蔵装置3は、図2に示されているように、電力貯蔵回路11と、これを制御する制御回路12とから構成されている。電力貯蔵回路11は直流回路P、Nに接続されており、直流回路P、Nの正の電圧線に接続されている正端子Pと、負の電圧線すなわち接地された電圧線に接続されている負端子Nとを備えている。電力貯蔵回路11はこれらの正端子Pと負端子Nと、1個のコンデンサCと、1個のコイルLと、第1と第2のスイッチ回路SW1、SW2とから構成されている。第1のスイッチ回路SW1は第1のトランジスタTr1と第1のダイオードD1とから、第2のスイッチ回路SW2は第2のトランジスタTr2と第2のダイオードD2とからなる。コンデンサCには例えば電気二重層キャパシタが採用され、トランジスタTr1、Tr2には例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、すなわちIGBTが採用されている。より詳しく電力貯蔵回路11を説明すると、負端子Nと、正端子Pと、正端子Pに接続されているコイルLは、第1、2のループ回路LP1、LP2で共有されている。すなわち、第1のループ回路LP1は、負端子Nと、正端子Pと、コイルLと、第1のスイッチ回路SW1とコンデンサCが直列に接続された回路であり、第2のループ回路LP2は、負端子Nと、正端子Pと、コイルLと、第2のスイッチ回路SW2が直列に接続された回路になっている。スイッチ回路SW1、SW2はいずれも、1個のダイオードと1個のトランジスタが並列に接続された回路であり、一方の方向には自由に電流を流すが、反対の方向にはトランジスタがONしたとき、すなわちスイッチングしたときのみ電流を流す、電流の流れを制御する回路になっている。具体的には、第1のスイッチ回路SW1は、第1のダイオードD1が正端子Pから負端子Nの方向に電流を流すように接続され、第1のトランジスタTr1は、ONすると逆方向に電流を流すように、第1のダイオードD1と並列に接続されている。そして、第2のスイッチ回路SW2は、第2のダイオードD2が負端子Nから正端子Pの方向に電流を流すように接続され、第2のトランジスタTr2は、ONすると逆方向に電流を流すように、第2のダイオードD2と並列に接続されている。
【0022】
図3により本実施の形態に係る電力貯蔵回路11の作用を説明する。電力貯蔵回路11は、初期状態においては、第1のダイオードD1が、正端子PからコンデンサCの向きに自由に電流を流す向きに設けられているので、コンデンサCの正(+)電極側の電位は、正端子Pの電位と等しい。従って、貯蔵電圧V2は、正負端子P、Nの端子間電圧V1と等しくなっている。この状態から電力を貯蔵する場合について説明する。図3の(ア)に示されているように、第2のトランジスタTr2をスイッチング、すなわちONする。そうすると、電流は矢印YAのように流れる。電流が流れて所定の時間が経過するとコイルLに磁気エネルギが蓄積される。第2のトランジスタTr2をOFFする。そうすると、図3の(イ)に示されているように、コイルLに蓄積された磁気エネルギによって瞬間的に矢印YBの方向の高電圧の起電力がコイルLに生じる。生じた起電力によって第1のダイオードD1を経由して矢印YCのように電流が流れて、コンデンサCに電力が貯蔵される。すなわち、コイルLの作用によって直流電圧が昇圧されてコンデンサCに蓄電される。以下、第2のトランジスタTr2のON/OFFを繰り返すと、コンデンサCに電力が貯蔵されて、貯蔵電圧V2は端子間電圧V1よりも高電圧になる。
【0023】
電力貯蔵回路11において、貯蔵した電力を直流電圧として外部に出力する場合について説明する。前節の動作によってコンデンサCに電力が貯蔵されると、貯蔵電圧V2と端子間電圧V1とには、
V2>V1
の関係が成立することになる。この状態で第1のトランジスタTr1をONすると、図3の(ウ)に示されているように、矢印YDの方向に電流が流れる。電流が流れると、コイルLに磁気エネルギーが蓄積されるとともに、コイルLには矢印YEの方向に起電力が生じる。すなわち、貯蔵電圧V2と端子電圧V1との電位差をコイルLの起電力が分担している。次に、第1のトランジスタTr1をOFFする。そうすると、図3の(エ)に示されているように、コイルLに蓄積された磁気エネルギーによって、コイルLの電流を維持するように、矢印YFの方向の高電圧の起電力がコイルLに生じ、コイルLに生じた起電力によって、第2のダイオードD2を経由して矢印YGのように電流が流れる。このように、第1のトランジスタTr1のON/OFFを繰り返すと、端子間電圧V1から外部に所定の直流電圧を出力することができる。すなわち、電力供給を行うことができる。なお、電力貯蔵回路11から直流回路P、Nに電力供給を行うときには、直流電圧の変動が5%以内に維持されるようにトランジスタTr1のON/OFFを制御するようにする。つまり実質的に、高電圧の貯蔵電圧V2を端子間電圧V1に降圧して供給することになる。正負端子P、Nに接続されている交流直流変換器2には、前記したように平滑用コンデンサが設けられている。この平滑用コンデンサによっても端子間電圧V1の変動が抑制されることになる。
【0024】
電動射出成形機1には、駆動部品を有する金型も取り付けられる。例えば中子を備えた金型、3枚プレートからなる金型等が取り付けられる。これらの金型は、型締装置の型開閉動作、あるいは成形品突出装置の突出動作に連動して駆動部品を駆動する必要があり、停電等が発生して型締装置や成形品突出装置が停止した場合、駆動部材だけが単独で動作すると金型が破損してしまう。本実施の形態に係る電動射出成形機1は電力貯蔵回路11を備えているので、停電等の異常が発生しても型締装置や成形品突出装置を適切な状態になるまで駆動するようになっている。金型においても異常時に所定時間だけ電力が供給されるように考慮されていれば、確実に金型の破損を防止することができる。本実施の形態に係る電動射出成形機1の運転方法を説明する。
【0025】
3相交流電圧が正常な場合の運転方法を説明する。この場合、交流電圧監視装置9において3相交流電圧が検出される。切換スイッチSWは標準状態になっており、制御電源用AC/DCコンバータ6側に切り換えられている。3相交流電源PWからの3相交流電圧は制御電源用AC/DCコンバータ6において所定の直流電圧に変換され、制御装置5はこの直流電圧によって駆動される。3相交流電圧は交流直流変換器2において直流電圧に変換され、直流回路P、Nに供給される。それぞれのサーボアンプSA1、SA2、…において交流電圧を生成して、所定のサーボモータSM1、SM2、…を駆動する。すなわち射出工程においては射出軸を、計量(可塑化)工程においては可塑化軸を、型開工程や型閉工程においては型開閉軸を、突出工程においては突出軸を、それぞれ駆動する。これによって成形サイクルの各工程を実施する。
【0026】
本実施の形態に係る電動射出成形機1においては、このように3相交流電圧が正常なときに電力貯蔵装置3に電力を貯蔵する。制御装置5から電力貯蔵装置3に指令を出す。電力貯蔵装置3の制御回路12は、電力貯蔵回路11の第2のトランジスタTr2のON/OFFを繰り返す。既に説明したように直流回路P、Nからの直流電圧の供給を受けてコンデンサCに所定の電力が貯蔵される。貯蔵電圧V2が所定の電圧に達したら、第2のトランジスタTr2の駆動を停止する。
【0027】
停電発生時、あるいは3相交流電圧の電圧低下、規定値を超える周波数変動等の異常時の運転方法を説明する。図4に示されているように、これらの事象が発生すると、交流電圧監視装置9において異常が検出され、制御装置5に通知される(ステップS1)。制御装置5は切換スイッチSWを切り換える。そうすると直流回路P、N側からの直流電圧が制御電源用DC/DCコンバータ7において所定の電圧に変換されて制御装置5に駆動用電力として供給される(ステップS2)。3相交流電圧の供給に異常が発生しても、交流直流変換器2には平滑化コンデンサが設けられているので、短時間であれば電力の供給を受けることができる。制御装置5は、電動射出成形機1において現在実施している工程の種類を判断する(ステップS3)。詳しく説明すると、図1において「工程管理」ブロックと「工程判断&完了確認」ブロックとによって模式的に示されているように、制御装置5内においては、各工程を管理している工程管理処理と、この工程管理処理からの情報を得て工程判断や工程完了確認をする工程判断&完了確認処理とが実行されている。工程管理処理からは、工程判断&完了確認処理に対して、電動射出成形機1において現在実施されている工程に関する情報が送られ、該工程が完了したタイミングでその完了通知が送られる。従って、工程判断&完了確認処理において、現在実施している工程の種類を判断することができるようになっている。このようにして判断した現在の工程が、型締装置を駆動する型閉工程、型開工程、あるいは成形品突出装置を駆動する突出工程を実施している場合には、金型と連動しないで型締装置や成形品突出装置が駆動してしまうと金型を破損する可能性がある。これらの工程を実施していると判断したら制御装置5は電力貯蔵装置3に電力供給の指令を出力する。電力貯蔵装置3の制御回路12は、電力貯蔵回路11の第1のトランジスタTr1のON/OFFを繰り返す。そうすると電力貯蔵装置3に貯蔵された電力が直流電圧として直流回路P、Nに供給される(ステップS4)。制御装置5は、現在実施中の工程を完了させる。すなわち型閉工程が実施中であれば型閉工程を完了させ、型開工程が実施中であれば型開工程を完了させる。具体的には、工程判断&完了確認処理において、現在の工程が完了した旨の完了通知を受け取るまで処理を継続し、完了通知を受けたら次のステップに移行する(ステップS5)。工程の完了を確認後、制御装置5は電力貯蔵装置3に電力供給の停止の指令を出力する。電力貯蔵装置3は直流電圧の供給を停止する(ステップS6)。電動射出成形機1の全装置を停止する(ステップS7)。ステップS3において、現在実施中の工程が他の工程であると判断した場合、すなわち射出工程、保圧工程あるいは計量(可塑化)工程を実施中の場合、金型を破損する恐れはない。この場合ステップS7に移行して電動射出成形機1の全装置を停止する。図5には、成形サイクルの各工程において停電が発生した場合の、電力貯蔵装置3の電力供給の実施の有無が示されている。停電が発生したタイミングは矢印で示されており、射出工程、保圧工程、計量(可塑化)工程において停電が発生した場合には電力貯蔵装置3から電力は供給されない。しかしながら型閉工程、型開工程、突出工程において停電が発生した場合には、これらの工程が完了するまで電力貯蔵装置3から電力が供給される。
【0028】
本実施の形態に係る電力貯蔵装置3は、停電発生時あるいは3相交流電圧の異常時以外でも電力を供給することができる。これによって3相交流電源PWからの電力供給を平滑化することができる。成形サイクルにおいては、射出工程において最大の電力を短時間に消費するが、他の工程で消費される電力は比較的小さい。そこで射出工程時における最大電力を電力貯蔵装置3によって供給するようにすれば、3相交流電源PWからの電力供給を平滑化でき、交流直流変換器2も能力の小さなものから構成することができる。射出工程において電力貯蔵装置3から大量の電力を供給しても、その後に実施する工程は保圧工程、計量(可塑化)工程であり、これらは比較的時間が長く、そして停電等が発生しても電力を供給する必要がない。電力貯蔵装置3には、これらの工程において十分な電力を貯蔵することができる。
【0029】
本実施の形態に係る電動射出成形機1は、上記実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。例えば上記実施の形態においては電力貯蔵回路11は、直流回路からの直流電圧を電力としてコンデンサに貯蔵するときに電圧を昇圧して貯蔵し、供給するときは電圧を降圧して供給するように説明したが、異なる方式で電力を貯蔵・供給することもできる。図6には、異なる方式で電力を貯蔵・供給する第2の実施の形態に係る電力貯蔵回路11’が示されている。第2の実施の形態に係る電力貯蔵回路11’も、前実施の形態に係る電力貯蔵回路11と同様に、正負端子P、N、コンデンサC’、コイルL’、第1、2のスイッチSW1’、SW2’から構成されている。電力貯蔵回路11’にも2個の回路が形成され、一方の回路は、第1のスイッチ回路SW1’と正負端子P、Nと第2のスイッチ回路SW2’が直列に接続された回路になっており、他方の回路はコンデンサC’とコイルL’と正負端子P、Nと第2のスイッチ回路SW2’が直列に接続された回路になっている。つまり正負端子P、Nと第2のスイッチ回路SW2’は共通している。そして第1のスイッチ回路SW1’は、並列に接続された第1のトランジスタTr1’と第1のダイオードD1’とから構成され、第1のダイオードD1’は負端子Nから正端子Pに電流を流す向きに、第1のトランジスタTr1’はONされると逆方向に電流を流す向きに設けられている。また第2のスイッチ回路SW2’も、並列に接続された第2のトランジスタTr2’と第2のダイオードD2’とから構成され、第2のダイオードD2’は負端子Nから正端子Pに電流を流す向きに、第2のトランジスタTr2’はONされると逆方向に電流を流す向きに設けられている。第2の実施の形態に係る電力貯蔵回路11’において電力を貯蔵する場合、第2のトランジスタTr2’をON/OFFする。第2のトランジスタTr2’がONのとき、電流は正端子P、第2のトランジスタTr2’、コイルL’、コンデンサC’、負端子Nを流れ、OFFのとき電流がコイルL’、コンデンサC’、第1のダイオードD1’を流れる。これによってコンデンサC’に電力を貯蔵できる。このときコンデンサC’の貯蔵電圧は正負端子P、Nの端子間電圧より低い。電力貯蔵回路11’から直流電圧を供給するとき、第1のトランジスタTr1’をON/OFFする。第1のトランジスタTr1’がONのとき、電流がコンデンサC’、コイルL’、第1のトランジスタTr1’を流れ、OFFのとき、電流がコンデンサC’、コイルL’、第2のダイオードD2’、正負端子P、Nを流れる。これによって直流電圧を供給できる。このとき、コンデンサC’からの貯蔵電圧はコイルL’によって昇圧されて直流電圧に供給されることになる。このようにして第2の実施の形態に係る電力貯蔵回路11’によっても前実施の形態に係る電力貯蔵回路11と同様に安定した電圧の直流電圧を供給できる。
【0030】
他の変形も可能であり、電力貯蔵装置3は、コンデンサに電力を貯蔵するように構成される必要はない。例えば蓄電池に電力を貯蔵するようになっていてもよく、あるいは特許文献2に記載の装置のように、モータ等を回転させて運動エネルギとして貯蔵するようにしてもよい。あるいは、特開2010−058317号公報に記載の装置のように構成されていてもよく、この装置においては内部に設けられているコイルに電流を流して電磁エネルギとして電力を貯蔵し、所定のスイッチを駆動すると電力が直流電圧に変換されて外部に供給できるようになっている。要するに電力貯蔵装置3は、貯蔵した電力または運動エネルギを、直流電圧として供給することができ、直流電圧が電圧の変動が所定の範囲に維持されるように構成されていればよい。電力貯蔵装置3以外に関しても変形が可能である。例えば本実施の形態においては、制御装置5の駆動電力は、3相交流電源からの3相交流電圧と直流回路からの直流電圧との双方から供給されるように説明したが、例えば所定の電力バックアップ装置を設けるようにすれば、3相交流電源のみから供給されるように構成することもできる。
【符号の説明】
【0031】
1 電動射出成形機 2 交流直流変換器
3 電力貯蔵装置 5 制御装置
6 制御電源用AC/DCコンバータ
7 制御電源用DC/DCコンバータ
9 交流電圧監視装置 11 電力貯蔵回路
12 制御回路
P 正端子 N 負端子
PW 3相交流電源 L コイル
D1、D2 ダイオード C コンデンサ
SW1、SW2 第1、2のスイッチ
SA1、SA2、SA3、SA4 サーボアンプ
SM1、SM2、SM3、SM4 サーボモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの交流電圧を整流して直流回路に直流電圧を供給する交流直流変換器と、前記直流回路からの直流電圧を電力として貯蔵すると共に貯蔵した電力を前記直流回路に供給する電力貯蔵装置とを備え、スクリュ、型締装置、成形品突出装置等の各部材を駆動するサーボモータのサーボアンプが前記直流回路からの直流電圧によって駆動されるようになっている電動射出成形機において、
前記交流電圧が正常なときは前記電力貯蔵装置に所定の電力を貯蔵するようにし、
型締装置または成形品突出装置を駆動中に、前記交流電圧の異常を検出すると、電圧が所定の変動範囲に維持されるように前記電力貯蔵装置から直流電圧を供給して前記型締装置または前記成形品突出装置の駆動を完了し、その後電動射出成形機を停止することを特徴とする電動射出成形機の運転方法。
【請求項2】
交流電源からの交流電圧を整流して直流回路に直流電圧を供給する交流直流変換器と、前記直流回路からの直流電圧を電力として貯蔵すると共に貯蔵した電力を前記直流回路に供給する電力貯蔵装置とを備え、スクリュ、型締装置、成形品突出装置等の各部材を駆動するサーボモータのサーボアンプが前記直流回路からの直流電圧によって駆動されるようになっている電動射出成形機において、
前記交流電圧が正常なときは前記電力貯蔵装置に所定の電力を貯蔵するようにし、
金型を型閉じする型閉工程中、金型を型開きする型開工程中、または成形品を突き出す突出工程中において、前記交流電圧の異常を検出すると、電圧が所定の変動範囲に維持されるように前記電力貯蔵装置から直流電圧を供給して前記型閉工程、前記型開工程、または前記突出工程を完了し、その後電動射出成形機を停止することを特徴とする電動射出成形機の運転方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の運転方法において、前記交流電圧の異常には、停電、電圧振幅の低下、あるいは規定値を越える周波数変動が含まれることを特徴とする電動射出成形機の運転方法。
【請求項4】
交流電源からの交流電圧を整流して直流回路に直流電圧を供給する交流直流変換器を備え、スクリュ、型締装置、成形品突出装置等の各部材を駆動するサーボモータのサーボアンプが前記直流回路からの直流電圧によって駆動されるようになっている電動射出成形機であって、
前記直流回路には、直流電圧を電力として貯蔵すると共に貯蔵した電力を前記直流回路に供給する電力貯蔵装置が接続され、
前記交流電源には、交流電圧を監視する監視装置が設けられ、
前記監視装置において監視される交流電圧が正常のときは、前記電力貯蔵装置に所定の電力が貯蔵され、
型締装置または成形品突出装置が駆動中に、前記監視装置において交流電圧の異常が検出されると、電圧が所定の変動範囲に維持されるように前記電力貯蔵装置から直流電圧が供給されて前記型締装置または前記成形品突出装置の駆動が完了するようになっており、その後電動射出成形機が停止されることを特徴とする電動射出成形機。
【請求項5】
交流電源からの交流電圧を整流して直流回路に直流電圧を供給する交流直流変換器を備え、スクリュ、型締装置、成形品突出装置等の各部材を駆動するサーボモータのサーボアンプが前記直流回路からの直流電圧によって駆動されるようになっている電動射出成形機であって、
前記直流回路には、直流電圧を電力として貯蔵すると共に貯蔵した電力を前記直流回路に供給する電力貯蔵装置が接続され、
前記交流電源には、交流電圧を監視する監視装置が設けられ、
前記監視装置において監視される交流電圧が正常のときは、前記電力貯蔵装置に所定の電力が貯蔵され、
金型を型閉じする型閉工程中、金型を型開きする型開工程中、または成形品を突き出す突出工程中に、前記監視装置において交流電圧の異常が検出されると、電圧が所定の変動範囲に維持されるように前記電力貯蔵装置から直流電圧が供給されて前記型閉工程、前記型開工程または前記突出工程が完了するようになっており、その後電動射出成形機が停止されることを特徴とする電動射出成形機。
【請求項6】
請求項4または5に記載の電動射出成形機において、前記交流電圧の異常には、停電、電圧振幅の低下、あるいは規定値を越える周波数変動が含まれることを特徴とする電動射出成形機。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかの項に記載の電動射出成形機において、前記電力貯蔵装置は、コンデンサとコイルと所定のスイッチとを備え、前記直流回路からの直流電圧は前記コイルを経由して前記コンデンサに電力として貯蔵され、前記スイッチが駆動されると、前記コンデンサに貯蔵された電力が前記コイルを経由して前記直流回路に供給されるようになっていることを特徴とする電動射出成形機の電力貯蔵装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電動射出成形機において、前記コンデンサに電力を貯蔵するとき前記直流回路からの直流電圧よりも高電圧の状態で貯蔵し、前記コンデンサから前記直流回路に直流電圧を供給するとき前記コンデンサ内に貯蔵された電力を降圧して供給することを特徴とする電動射出成形機の電力貯蔵装置。
【請求項9】
請求項7に記載の電動射出成形機において、前記コンデンサに電力を貯蔵するとき前記直流回路からの直流電圧よりも低電圧の状態で貯蔵し、前記コンデンサから前記直流回路に直流電圧を供給するとき前記コンデンサ内に貯蔵された電力を昇圧して供給することを特徴とする電動射出成形機の電力貯蔵装置。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれかの項に記載の電動射出成形機において、前記直流回路には前記直流回路の直流電圧を降圧するDC/DCコンバータが設けられ、少なくとも前記監視装置において交流電圧の異常が検出されたときは、前記サーボアンプを制御する制御用電圧が、前記DC/DCコンバータから供給されるようになっていることを特徴とする電動射出成形機の電力貯蔵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−18152(P2013−18152A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151838(P2011−151838)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】