説明

電動弁

【課題】流体中に含まれるスラッジ、金属粉などの異物が送りネジ部に浸入することなく、噛み込みや傷などによりネジ部の摺動性が悪化することなく、弁の作動を円滑かつ確実に行え、しかも、複雑な構成とすることなく、コストを低減することが可能な電動弁を提供する。
【解決手段】ガイドブッシュ24のニードル弁36の挿通孔38とニードル弁との間の間隙を介して、弁室14から流入した流体が、ニードル弁中心から水平方向外側に拡流するようにニードル弁の断面積よりも大きい断面積を有するように形成された水平拡流路44と、水平拡流路を通過した流体が、弁本体内壁に沿って水平方向に環状に流れるように、ガイドブッシュと弁本体内壁との間に形成された外側環状流路48と、外側環状流路を流れる流体が弁室へと還流するように、ガイドブッシュの外壁と弁本体内壁との間に形成された、弁室と連通する縦流路80とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、エアコンなどの空気調和機の冷媒循環回路などに用いられる流量制御弁などの電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、永久磁石からなるローターマグネットを備えたこの種の電動弁では、冷媒流路を流れるスラッジ、金属粉などの異物が、冷媒とともに駆動部に入り、電動弁の作動を阻害することになる。
【0003】
このため、従来より、例えば、特許文献1(特開2000−320712号公報)では、ニードル嵌挿孔とニードルの隙間へスラッジ、金属粉などの異物が侵入するのを防止するために、弁本体に弁室とローター室とを連通する連通孔を設けている構成が開示されている。
【0004】
また、特許文献2(特開2003−172467号公報)では、スラッジ、金属粉などの異物がローター室に滞留するのを防止するために、均圧孔を、固定ネジ部から弁室側に離れた位置のガイドブッシュに穿設した電動弁が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3(特開2008−275120号公報)では、弁室とローター室とを連通する冷媒通路に、冷媒通路を介してスラッジ、金属粉がローター室内へ侵入するのを防止するためのフィルターを設けた電動弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−320712号公報
【特許文献2】特開2003−172467号公報
【特許文献3】特開2008−275120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ステッピングモーター(ローターマグネット)の回転力を送りネジによって、弁体を上下動させて、流体制御を行うように構成したこの種の電動弁では、流体中に含まれるスラッジ、金属粉などの異物が送りネジ部に浸入すると、高い負荷を掛けながら摺動する送りネジ部にとって、噛み込みや傷などにより摺動性の悪化の原因となる。
【0008】
このようにモーターの回転を利用して弁の流量調整を行う電動弁においては、最悪の場合モーターの駆動トルクでは動かなくなる可能性がある。
【0009】
しかしながら、特許文献1の電動弁では、ニードル嵌挿孔の隙間へのスラッジの侵入を防止するための構造であって、ネジ部へのスラッジ、金属粉などの異物の侵入については何ら考慮されていない。
【0010】
このため、特許文献1の電動弁では、ローター室の内部空間内にスラッジ、金属粉などの異物が滞留してしまい、送りネジ部にこれらの異物が侵入して、噛み込みや傷などにより摺動性の悪化の原因となり、弁体の作動に支障をきたすおそれがある。
【0011】
また、特許文献2の電動弁においては、均圧孔を、固定ネジ部から弁室側に離れた位置のガイドブッシュに穿設しておりで、ネジ部へのスラッジ、金属粉などの異物の侵入については何ら考慮されていない。
【0012】
このため、特許文献2の電動弁でも、ローター室の内部空間内にスラッジ、金属粉などの異物が滞留してしまい、送りネジ部にこれらの異物が侵入して、噛み込みや傷などにより摺動性の悪化の原因となり、弁体の作動に支障をきたすおそれがある。
【0013】
さらに、特許文献3の電動弁では、発泡金属、金網などの高価なフィルターを設ける必要があり、コストが高くなってしまう。
【0014】
本発明は、このような現状に鑑み、流体中に含まれるスラッジ、金属粉などの異物が送りネジ部に浸入することなく、噛み込みや傷などによりネジ部の摺動性が悪化することなく、弁の作動を円滑かつ確実に行え、しかも、複雑な構成とすることなく、コストを低減することが可能な電動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の電動弁は、
コイルに通電することによって、ローター室に配置されたローターマグネットが回転することにより、ローターマグネットに固定した弁軸側に設けた雄ネジと、弁本体に固定したガイドブッシュ側に設けた雌ネジが螺合して、前記弁軸先端に設けたニードル弁が上下動することによって弁座に設けられた弁ポートを開閉するように構成した電動弁であって、
前記ガイドブッシュには、
前記ガイドブッシュのニードル弁の挿通孔とニードル弁との間の間隙を介して、弁室から流入した流体が、ニードル弁中心から水平方向外側に拡流するようにニードル弁の断面積よりも大きい断面積を有するように形成された水平拡流路と、
前記水平拡流路を通過した流体が、弁本体内壁に沿って水平方向に環状に流れるように、ガイドブッシュと弁本体内壁との間に形成された外側環状流路と、
前記外側環状流路を流れる流体が弁室へと還流するように、前記ガイドブッシュの外壁と弁本体内壁との間に形成された、前記弁室と連通する縦流路とを備えることを特徴とする。
【0016】
このように構成することによって、弁室を流れる、例えば、スラッジ、金属粉などの異物を含んだ冷媒などの流体が、ガイドブッシュのニードル弁の挿通孔とニードル弁との間の間隙を通過する。
【0017】
そして、このガイドブッシュのニードル弁の挿通孔とニードル弁との間を通過した流体は、ニードル弁の断面積よりも大きい断面積を有するように形成された水平拡流路に入り、ニードル弁中心から水平方向外側に拡流する。
【0018】
この水平拡流路で拡流された流体は、ガイドブッシュと弁本体内壁との間に形成された外側環状流路内を、弁本体内壁に沿って水平方向に環状に流れることになる。
【0019】
そして、外側環状流路を流れる流体は、ガイドブッシュの外壁と弁本体内壁との間に形成された弁室と連通する縦流路を介して、外側環状流路を流れる流体が弁室へと還流する。
【0020】
すなわち、入口継手から出口継手へと流体が流れ続ける弁室内と、流速が低下する外側環状流路との間には、ベルヌーイの定理より圧力差が生じる。すなわち、外側環状流路側が高圧で、弁室側が低圧となるので、外側環状流路から縦流路を介して弁室へと還流する緩やかな流れが発生する。
【0021】
これにより、スラッジ、金属粉などの異物を含んだ冷媒などの流体が、ローター室に滞留することなく、弁室内に吐出されるため、流体中に含まれるスラッジ、金属粉などの異物が送りネジ部に浸入することなく、噛み込みや傷などによりネジ部の摺動性が悪化することなく、動作異常が発生しにくく弁の作動を円滑かつ確実に行え、しかも、複雑な構成とすることなく、コストを低減することが可能である。
【0022】
また、本発明の電動弁は、前記縦流路が、外側環状流路を流れる流体同士が合流し流速が低下する外側環状流路の淀み部に開口するように形成されていることを特徴とする。
【0023】
このように構成することによって、外側環状流路を流れる流体同士が合流し流速が低下する外側環状流路の淀み部では、流速が極めて低下する。
【0024】
従って、入口継手から出口継手へと流体が流れ続ける弁室内と、流速が極めて低下する外側環状流路の淀み部との間には、ベルヌーイの定理より圧力差が生じる。すなわち、外側環状流路の淀み部側が高圧で、弁室側が低圧となるので、外側環状流路から縦流路を介して弁室へと還流する緩やかな流れが発生する。
【0025】
これにより、スラッジ、金属粉などの異物を含んだ冷媒などの流体が、ローター室に滞留することなく、弁室内に吐出されるため、流体中に含まれるスラッジ、金属粉などの異物が送りネジ部に浸入することなく、噛み込みや傷などによりネジ部の摺動性が悪化することなく、動作異常が発生しにくく弁の作動を円滑かつ確実に行える。
【0026】
また、本発明の電動弁は、
前記水平拡流路の外側環状流路との連通出口が、複数形成されるとともに、
前記複数形成された水平拡流路の外側環状流路との連通出口に対応して、前記淀み部が複数形成され、
前記複数形成された淀み部に対応して、前記縦流路が複数形成されていることを特徴とする。
【0027】
このように構成することによって、水平拡流路を拡流された流体が、複数形成された連通出口を介して複数の流れとなって、外側環状流路内を流れる。
【0028】
そして、これに対応して、外側環状流路を流れる流体同士が合流し流速が低下する外側環状流路の淀み部が複数形成されることになる。
【0029】
この複数形成された淀み部に形成された複数の縦流路を介して、スラッジ、金属粉などの異物を含んだ冷媒などの流体が、ローター室に滞留することなく、弁室内に確実に吐出されるため、流体中に含まれるスラッジ、金属粉などの異物が送りネジ部に浸入することなく、噛み込みや傷などによりネジ部の摺動性が悪化することなく、動作異常が発生しにくく弁の作動を円滑かつより確実に行える。
【0030】
また、本発明の電動弁は、前記水平拡流路と外側環状流路とが、軸方向の位置が略同じ水平位置に形成されていることを特徴とする。
【0031】
このように構成することによって、ガイドブッシュのニードル弁の挿通孔とニードル弁との間の間隙を通過してローター室に浸入したスラッジ、金属粉などの異物を含んだ冷媒などの流体が、水平拡流路、外側環状流路、縦流路を介して、流体が弁室へと円滑に還流することになる。
【0032】
従って、スラッジ、金属粉などの異物を含んだ冷媒などの流体が、ローター室に滞留することなく、弁室内により確実に吐出されるため、流体中に含まれるスラッジ、金属粉などの異物が送りネジ部に浸入することなく、噛み込みや傷などによりネジ部の摺動性が悪化することなく、動作異常が発生しにくく弁の作動を円滑かつさらにより確実に行える。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、スラッジ、金属粉などの異物を含んだ冷媒などの流体が、ローター室に滞留することなく、弁室内に吐出されるため、流体中に含まれるスラッジ、金属粉などの異物が送りネジ部に浸入することなく、噛み込みや傷などによりネジ部の摺動性が悪化することなく、動作異常が発生しにくく弁の作動を円滑かつ確実に行え、しかも、複雑な構成とすることなく、コストを低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の電動弁の弁開状態の縦断面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線での縦断面図である。
【図3】図3は、図2のB−B線での断面図である。
【図4】図4は、図3は、図2のC−C線での断面図である。
【図5】図5は、弁閉状態の図1と同様な縦断面図である。
【図6】図6は、本発明の電動弁の別の実施例を示す図3と同様な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
【実施例1】
【0036】
図1は、本発明の電動弁の弁開状態の縦断面図、図2は、図1のA−A線での縦断面図、図3は、図2のB−B線での断面図、図4は、図3は、図2のC−C線での断面図、図5は、弁閉状態の図1と同様な縦断面図である。
図1〜図5において、符号10は、全体で本発明の電動弁を示している。
【0037】
図1〜図2に示したように、本発明の電動弁10は、弁本体12を備えており、弁本体12内には弁室14が形成されている。そして、この弁室14に連通するように、入口継手である第1の配管部材16と、出口継手である第2の配管部材18とが装着されている。
【0038】
また、第1の配管部材16の上部には、弁本体12に弁座20が固定されており、この弁座20に弁ポート22が設けられている。
【0039】
さらに、弁本体12内には、ガイドブッシュ24が固定されている。すなわち、ガイドブッシュ24の下端には、弁座20に嵌着する嵌合部24bが形成されており、弁座20に固定されている。
【0040】
また、ガイドブッシュ24の嵌合部24bの上方に一定間隔離間して、弁室14とローター室28を隔てる隔壁26が形成されており、この隔壁26の端部30が弁本体12の内壁に嵌合することにより、弁本体12内にガイドブッシュ24が固定されている。
【0041】
さらに、弁本体12の上端部に、固定金具32を嵌合することにより、固定金具32の爪部材32aにより、ガイドブッシュ24が弁本体12に固定されている。
【0042】
なお、この実施例では、固定金具32を用いて、ガイドブッシュ24を弁本体12に固定するように構成したが、例えば、溶着、溶接、接着、かしめ加工などの公知の固定方法で、ガイドブッシュ24を弁本体12に固定するように構成することも可能である。
【0043】
この場合には、爪部材32aが存在しないので、後述するように、水平拡流路44を通過した流体が、ガイドブッシュ24の支持部42の外周壁42aと弁本体12の内壁12aとの間に形成された外側環状流路48を、弁本体12の内壁12aに沿って水平方向に環状に円滑に流れることになる。
【0044】
一方、このガイドブッシュ24の嵌合部24bと隔壁26との間に、主流路34が形成されており、隔壁26には、ニードル弁36が挿通される挿通孔38が形成されている。
【0045】
また、この隔壁26の上部には、略筒状のガイド部40が延設されており、ガイド部40の下端には、対抗する2つの支持部42が設けられている。そして、これらの支持部42の間に、図1〜図3に示したように、ニードル弁36の断面積よりも大きい断面積を有するように形成された水平拡流路44が形成されている。
【0046】
さらに、水平拡流路44の2つの対向する連通出口46はそれぞれ、ガイドブッシュ24の支持部42の外周壁42aと弁本体12の内壁12aとの間に形成された外側環状流路48に連通するように構成されている。
【0047】
一方、ガイドブッシュ24のガイド部40には、内周に雌ネジ50aが形成された略円筒形状の雌ネジ部材50が固定されている。この雌ネジ部材50の雌ネジ50aに噛合するように、ローター軸52の下端に形成された雄ネジ部54の雄ネジ54aが螺着されている。
【0048】
このローター軸52に形成されたニードル弁挿通孔56に、ニードル弁36が挿通され、ニードル弁36の基端部に形成された拡径部36aにより、ニードル弁36の抜け落ちが防止されるようになっている。
【0049】
また、ローター軸52の上端の外周には、永久磁石からなる略円筒形のローターマグネット58が、嵌合部58aにより嵌着されている。このローターマグネット58の下端には、弁開ストッパー60が内周方向に突設され、ガイドブッシュ24のガイド部40の上端に外周方向に突設された弁開ストッパー62に、このローターマグネット58の弁開ストッパー60が、弁開時に当接することにより、ストッパーの機能をするように構成されている。
【0050】
同様に、ローター軸52の上端に外周方向に突設された弁閉ストッパー64に、ガイドブッシュ24のガイド部40上端に形成された弁閉ストッパー66が、弁閉時に当接することにより、ストッパーの機能をするように構成されている。
【0051】
また、ローター軸52の上部には、バネ受け金具68が、ローター軸52の上端に嵌合されているとともに、ニードル弁36の基端部に形成された拡径部36aの上方に、バネ受け70が装着されている。そして、これらのバネ受け金具68とバネ受け70との間に圧縮状態のコイルバネ72が介装され、ニードル弁36を弁座20の方向に突出するように付勢するよう構成されている。
【0052】
さらに、弁本体12の上部には、有底筒形状のケース74が溶着などによって固定されており、このケース74の内部に、これらのローターマグネット58などからなる駆動部76が収容されるとともに、ケース74の内部にローター室28が形成されている。
【0053】
また、ケース74の外周に、図1、図5に示したように、コイル78が装着されている。
【0054】
さらに、図2、図3に示したように、ガイドブッシュ24の外壁24aと弁本体12の内壁12aとの間に、弁室14と連通する対向する位置に2つの縦流路80が形成されている。
【0055】
この場合、図3に示したように、縦流路80が、外側環状流路48を流れる流体同士が合流し流速が低下する外側環状流路48の淀み部82に開口するように形成されている。
【0056】
このように構成される電動弁10は、図1、図2の弁開状態においては、コイル78に通電することによって、ローターマグネット58が回転し、このローターマグネット58とともに、ローター軸52、ニードル弁36が一体的に回転して、ローター軸52の雄ネジ部54の雄ネジ54aと、雌ネジ部材50の雌ネジ50aとが噛合して案内され、ニードル弁36が上方に移動する。これにより、ニードル弁36の下端が、弁座20の弁ポート22から離間して、弁開状態となるように構成されている。
【0057】
この際、ローターマグネット58の回転にともなって、ガイドブッシュ24のガイド部40の上端に外周方向に突設された弁開ストッパー62に、ローターマグネット58の弁開ストッパー60が、弁開時に当接することにより、上方位置が規制されるようになっている。
【0058】
そして、この状態から、コイル78に逆の電流を通電することによって、図5に示したように、ローターマグネット58が逆方向に回転し、このローターマグネット58とともに、ローター軸52、ニードル弁36が一体的に回転して、ローター軸52の雄ネジ部54の雄ネジ54aと、雌ネジ部材50の雌ネジ50aとが噛合して案内され、ニードル弁36が下方に移動する。これにより、ニードル弁36の下端が、弁座20の弁ポート22に当接して、弁閉状態となるように構成されている。
【0059】
この際、ローターマグネット58の回転にともなって、ローター軸52の上端に外周方向に突設された弁閉ストッパー64に、ガイドブッシュ24のガイド部40上端に形成された弁閉ストッパー66が、弁閉時に当接することにより、上方位置が規制されるようになっている。
【0060】
ところで、隔壁26に形成されたニードル弁36が挿通される挿通孔38とニードル弁36の隙間を通ったスラッジ、金属粉などの異物が、駆動部76へ侵入すると、高い負荷を掛けながら摺動する送りネジ部(ローター軸52の雄ネジ部54の雄ネジ54aと、雌ネジ部材50の雌ネジ50aとの間)にとって、噛み込みや傷などにより摺動性の悪化の原因となる。
【0061】
このようにモーターの回転を利用して弁の流量調整を行う電動弁10においては、最悪の場合モーターの駆動トルクでは動かなくなる可能性がある。
【0062】
このため、本願発明では、下記のように構成されている。
すなわち、弁開状態では、第1の配管部材16から供給された、例えば、冷媒などの流体が、弁座20に弁ポート22を通り、弁室14に入り、ガイドブッシュ24の主流路34から、流量を調整されて、第2の配管部材18から排出されるようになっている。
【0063】
この際、弁室14のガイドブッシュ24の主流路34を流れる、例えば、スラッジ、金属粉などの異物を含んだ冷媒などの流体の一部が、ガイドブッシュ24の隔壁26に形成されたニードル弁36の挿通孔38と、ニードル弁36との間の間隙を通過する。
【0064】
そして、このガイドブッシュ24のニードル弁36の挿通孔38と、ニードル弁36との間を通過した流体は、ニードル弁36の断面積よりも大きい断面積を有するように形成された水平拡流路44に入り、図3の矢印に示したように、ニードル弁中心から水平方向外側に拡流する。
【0065】
この水平拡流路44で拡流された流体は、水平拡流路44の2つの対向する連通出口46を通過して、ガイドブッシュ24の支持部42の外周壁42aと弁本体12の内壁12aとの間に形成された外側環状流路48内を、図3の矢印に示したように、弁本体12の内壁12aに沿って水平方向に環状に流れることになる。
【0066】
そして、外側環状流路48を流れる流体は、ガイドブッシュ24の外壁24aと弁本体12の内壁12aとの間に形成された弁室14と連通する縦流路80を介して、外側環状流路48を流れる流体が弁室14へと還流する。
【0067】
すなわち、この場合、縦流路80が、外側環状流路48を流れる流体同士が合流し流速が低下する外側環状流路48の淀み部82に開口するように形成されている。
【0068】
従って、外側環状流路48を流れる流体同士が合流し流速が低下する外側環状流路48の淀み部82では、流速が極めて低下する。
【0069】
従って、入口継手である第1の配管部材16から、出口継手である第2の配管部材18へと流体が流れ続ける弁室14内と、流速が極めて低下する外側環状流路48の淀み部82との間には、ベルヌーイの定理より圧力差が生じる。すなわち、外側環状流路48の淀み部82側が高圧で、弁室14側が低圧となるので、外側環状流路48から縦流路80を介して弁室14へと還流する緩やかな流れが発生する。
【0070】
これにより、スラッジ、金属粉などの異物を含んだ冷媒などの流体が、ローター室28に滞留することなく、弁室14内に吐出されるため、流体中に含まれるスラッジ、金属粉などの異物が送りネジ部(ローター軸52の雄ネジ部54の雄ネジ54aと、雌ネジ部材50の雌ネジ50aとの間)に浸入することなく、噛み込みや傷などによりネジ部の摺動性が悪化することなく、動作異常が発生しにくく弁の作動を円滑かつ確実に行える。
【実施例2】
【0071】
図6は、本発明の電動弁の別の実施例を示す図3と同様な断面図である。
【0072】
この実施例の電動弁10は、実施例1に示したと基本的には同様な構成であり、同一の構成部材には、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0073】
この実施例の電動弁10では、図6に示したように、ガイドブッシュ24のガイド部40に4つの水平拡流路44が形成されている。
【0074】
これに対応して、4つの対向する連通出口46が形成されており、外側環状流路48を流れる流体同士が合流し流速が低下する外側環状流路48の4つの淀み部82が形成され、この淀み部82に4つの縦流路80が形成されている。
【0075】
この実施例の電動弁10においても、上記実施例1の電動弁10と同様な効果がえられる。
【0076】
すなわち、上記実施例2に示したように、水平拡流路44、外側環状流路48、淀み部82、縦流路80の個数は制限されることなく適宜変更可能である。
【0077】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、上記実施例では、水平拡流路44、外側環状流路48、淀み部82を、軸方向の位置が略同じ水平位置に形成されているが、これらの水平位置を変更することももちろん可能である。
【0078】
また、上記実施例では、図1〜図2に示した形状の電動弁に用いたが、電動弁の形状は特に限定されるものではなく、あらゆるタイプの永久磁石からなるローターマグネットを備えた電動弁に用いることも可能であるなど本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、例えば、エアコンなどの空気調和機の冷媒循環回路などに用いられる流量制御弁などの電動弁に適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
10 電動弁
12 弁本体
12a 内壁
14 弁室
16 第1の配管部材
18 第2の配管部材
20 弁座
22 弁ポート
24 ガイドブッシュ
24a 外壁
24b 嵌合部
26 隔壁
28 ローター室
30 端部
32 固定金具
32a 爪部材
32a 爪部材
34 主流路
36 ニードル弁
36a 拡径部
38 挿通孔
40 ガイド部
42 支持部
42a 外周壁
44 水平拡流路
46 連通出口
48 外側環状流路
50 雌ネジ部材
50a 雌ネジ
52 ローター軸
54 雄ネジ部
54a 雄ネジ
56 ニードル弁挿通孔
58 ローターマグネット
58a 嵌合部
60 弁開ストッパー
62 弁開ストッパー
64 弁閉ストッパー
66 弁閉ストッパー
68 バネ受け金具
72 コイルバネ
74 ケース
76 駆動部
78 コイル
80 縦流路
82 淀み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルに通電することによって、ローター室に配置されたローターマグネットが回転することにより、ローターマグネットに固定した弁軸側に設けた雄ネジと、弁本体に固定したガイドブッシュ側に設けた雌ネジが螺合して、前記弁軸先端に設けたニードル弁が上下動することによって弁座に設けられた弁ポートを開閉するように構成した電動弁であって、
前記ガイドブッシュには、
前記ガイドブッシュのニードル弁の挿通孔とニードル弁との間の間隙を介して、弁室から流入した流体が、ニードル弁中心から水平方向外側に拡流するようにニードル弁の断面積よりも大きい断面積を有するように形成された水平拡流路と、
前記水平拡流路を通過した流体が、弁本体内壁に沿って水平方向に環状に流れるように、ガイドブッシュと弁本体内壁との間に形成された外側環状流路と、
前記外側環状流路を流れる流体が弁室へと還流するように、前記ガイドブッシュの外壁と弁本体内壁との間に形成された、前記弁室と連通する縦流路とを備えることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記縦流路が、外側環状流路を流れる流体同士が合流し流速が低下する外側環状流路の淀み部に開口するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記水平拡流路の外側環状流路との連通出口が、複数形成されるとともに、
前記複数形成された水平拡流路の外側環状流路との連通出口に対応して、前記淀み部が複数形成され、
前記複数形成された淀み部に対応して、前記縦流路が複数形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記水平拡流路と外側環状流路とが、軸方向の位置が略同じ水平位置に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電動弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−92237(P2013−92237A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235977(P2011−235977)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】