説明

電動機制御装置および冷却装置

【課題】回転位置を検出するセンサを有しない交流電動機をより確実に起動して制御できるようにする。
【解決手段】電動モータの制御を停止した後に電動モータの要求デューティ比dB*が値0より大きくなったときには(S110,S160)、電動モータの制御を停止してからの経過時間tが所定時間tref以上になったときに電動モータを起動して制御する(S160〜S200)。これにより、電動モータをより確実に起動して制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機制御装置および冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動機制御装置としては、電機子巻線U,V,Wを有する固定子(ステータ)と、界磁巻線を有する移動子(ロータ)と、から構成されたモータを制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この制御装置では、インバータから電機子巻線U,V,Wへの交流電圧の供給を停止した状態で界磁巻線に小さい電流を供給して移動子を回転させて測定した電機子巻線U,V,Wに誘起する誘起電圧(電位)に対応する移動子の回転位置と、移動子の回転位置を検出する位置検出器(ホールセンサ)により検出した移動子の回転位置と、の誤差が零となるように位置検出器による移動子の回転位置の基準点を補正し、補正した基準点を用いて得られる回転位置に基づいてインバータ回路に出力するスイッチング信号のタイミングを調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−333884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうした電動機制御装置では、回転位置を検出する回転位置検出センサ(ホールセンサなど)を有しないモータを制御するものもある。この場合、モータの制御の停止後にモータが慣性で回転している最中にモータを再起動しようとすると、モータの回転位置の把握を適正に行なうことができず、その後にモータを適正に制御できないためにその起動が失敗となる場合が生じる。
【0005】
本発明の電動機制御装置および冷却装置は、回転位置を検出するセンサを有しない交流電動機をより確実に起動して制御できるようにすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動機制御装置および冷却装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の第1の電動機制御装置は、
回転位置を検出するセンサを有しない交流電動機を制御する電動機制御装置であって、
前記交流電動機の制御を停止した後に該交流電動機を起動する再起動時には、予め設定された所定時間が経過した以降に前記交流電動機を起動する待機後起動処理を実行する、
ことを特徴とする。
【0008】
この本発明の第1の電動機制御装置では、交流電動機の制御を停止した後に交流電動機を起動する再起動時には、予め設定された所定時間が経過した以降に交流電動機を起動する待機後起動処理を実行する。交流電動機の制御を停止してから交流電動機が回転停止するまでに時間を要する場合、交流電動機が回転している状態でその交流電動機を起動しようとすると交流電動機を適正に起動できない場合が生じる。これに対して、交流電動機の制御を停止してから所定時間が経過した以降に交流電動機を起動することにより、交流電動機をより確実に起動して制御できるようにすることができる。ここで、所定時間は、交流電動機の制御を停止してから交流電動機が回転停止するまでに要する時間やそれよりも若干長い時間であるものとすることもできる。
【0009】
こうした本発明の第1の電動機制御装置において、前記再起動時には、前記交流電動機を起動し、該交流電動機を起動できなかったときに前記待機後起動処理を実行する、ものとすることもできる。こうすれば、交流電動機のより迅速な起動を可能にすると共に交流電動機を起動できなかったときには、その後に交流電動機をより確実に起動することができる。この場合、所定時間は、交流電動機を起動できなかったときから交流電動機が回転停止するまでに要する時間やそれよりも若干長い時間であるものとすることもできる。
【0010】
本発明の第2の電動機制御装置は、
回転位置を検出するセンサを有しない交流電動機を制御する電動機制御装置であって、
前記交流電動機の回転数を検出する回転数センサを有し、
前記交流電動機の制御を停止した後に該交流電動機を起動する再起動時には、前記検出された交流電動機の回転数が予め設定された所定回転数以下になった以降に前記交流電動機を起動する待機後起動処理を実行する、
ことを特徴とする。
【0011】
この本発明の第2の電動機制御装置では、交流電動機の制御を停止した後に交流電動機を起動する再起動時には、交流電動機の回転数が予め設定された所定回転数以下になった以降に交流電動機を起動する待機後起動処理を実行する。交流電動機が回転している状態でその交流電動機を起動しようとすると交流電動機を適正に起動できない場合が生じる。これに対して、交流電動機の回転数が所定回転数以下になった以降に交流電動機を起動することにより、交流電動機をより確実に起動して制御できるようにすることができる。ここで、所定回転数は、交流電動機が略回転停止したと判定可能な回転数の上限であるものとすることもできる。
【0012】
本発明の第1または第2の電動機制御装置において、交流電動機の電流または誘起電圧を用いて推定される該交流電動機の回転位置に基づいて該交流電動機を制御する、ものとすることもできる。
【0013】
本発明の冷却装置は、
発熱を伴う機器を冷却媒体を用いて冷却する冷却装置であって、
交流電動機によって駆動され、前記機器を含む循環流路内で前記冷却媒体を循環させるための電動ポンプと、
前記交流電動機を制御する上述のいずれかの態様の本発明の第1または第2の電動機制御装置、即ち、基本的には、回転位置を検出するセンサを有しない交流電動機を制御する電動機制御装置であって、前記交流電動機制御を停止した後に該交流電動機を起動する再起動時には、予め設定された所定時間が経過した以降に前記交流電動機を起動する待機後起動処理を実行する、ことを特徴とする電動機制御装置や、回転位置を検出するセンサを有しない交流電動機を制御する電動機制御装置であって、前記交流電動機の回転数を検出する回転数センサと、前記交流電動機の制御を停止した後に該交流電動機を起動する再起動時には、前記交流電動機の回転数が予め設定された所定回転数以下になった以降に前記交流電動機を起動する待機後起動処理を実行する、ことを特徴とする電動機制御装置と、
を備えるものとすることもできる。
【0014】
この本発明の冷却装置は、上述のいずれかの態様の本発明の第1または第2の電動機制御装置を備えるから、本発明の第1または第2の電動機制御装置が奏する効果、例えば、交流電動機をより確実に起動して制御できるようにすることができる効果などと同様の効果を奏することができる。ここで、「機器」は、内燃機関や、電動ポンプを駆動する交流電動機とは異なる交流電動機などであるものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例としての冷却装置30を搭載する自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】要求デューティ比設定用マップの一例を示す説明図である。
【図3】実施例の電子制御ユニット50により実行される電動モータ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】変形例の電子制御ユニット50により実行される電動モータ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】変形例の電子制御ユニット50により実行される電動モータ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の一実施例としての冷却装置30を搭載する自動車20の構成の概略を示す構成図である。自動車20は、図1に示すように、車載された機器としてガソリンや軽油などを燃料とするエンジン22と、エンジン22からの動力を変速して駆動輪26a,26bに出力するオートマチックトランスミッション24と、冷却媒体として冷却水を用いてエンジン22を冷却する冷却装置30と、自動車全体を制御すると共に冷却装置30の一部としても機能する電子制御ユニット50と、を備える。
【0018】
冷却装置30は、エンジン22のシリンダブロックやシリンダヘッドに形成されたウォータージャケット31と外気により冷却水を冷却するラジエータ32とに冷却水を循環させる循環流路34と、循環流路34に冷却水を圧送する電動ポンプ36と、を備える。電動ポンプ36は、回転位置を検出するセンサ(例えばレゾルバなど)を有しないいわゆるセンサレスの交流の電動モータ38によって駆動されており、この電動モータ38にはバッテリ40からの直流電力がインバータ42によって三相交流電力に変換されて供給されている。この冷却装置30では、電動モータ38によって電動ポンプ36が駆動されて冷却水を循環流路34内で循環させることにより、エンジン22を冷却する。
【0019】
電子制御ユニット50は、CPU52を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU52の他に処理プログラムを記憶するROM54と、データを一時的に記憶するRAM56と、図示しない入出力ポートとを備える。電子制御ユニット50には、エンジン22の運転状態を検出する各種センサからの信号や、オートマチックトランスミッション24の状態を検出する各種センサからの信号,バッテリ40の状態を検出する各種センサからの信号,電動モータ38のU相,V相に流れる相電流を検出する電流センサ44U,44Vからの相電流Iu,Iv,循環流路34のウォータージャケット31の出口近傍に取り付けられて冷却水の温度を検出する温度センサ46からの冷却水温Twなどが入力ポートを介して入力されている。また、電子制御ユニット50からは、エンジン22の燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの制御を行なうための各種制御信号や、オートマチックトランスミッション24を制御するための各種制御信号,インバータ42へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。ここで、電動機制御装置としては、主として、電子制御ユニット50や電流センサ44U,44Vが相当する。
【0020】
こうして構成された実施例の自動車20に搭載された冷却装置30では、イグニッションオンされると、エンジン22の冷却水温Twに基づいて、図2に例示する要求デューティ比設定用マップを用いて、電動モータ38の要求デューティ比dB*を設定する。ここで、要求デューティ比dB*は、エンジン22の冷却に要する流量の冷却水を電動ポンプ36によって循環流路34に圧送可能な電動モータ38の回転数に対応するデューティ比であり、実施例では、図2に示すように、冷却水温Twがエンジン22を冷却する必要がある温度の下限としての閾値Twref未満の領域では値0を設定し、冷却水温Twが閾値Twref以上の領域では冷却水温Twが高いほど大きくなる傾向に設定するものとした。これは、冷却水温Twが閾値Twref以上の領域では、冷却水温Twが高いほどエンジン22の温度が高くエンジン22をより大きな冷却力で冷却する必要が生じるためである。そして、イグニッションオンされてから初めて要求デューティ比dB*が値0より大きくなったときに、予め設定されたデューティ比dB0を用いて電動モータ38の回転位置に拘わらずにインバータ42をスイッチングすることにより電動モータ38を強制的に起動し、その起動後は、電流センサ44U,44Vからの電動モータ38の三相コイルのU相,V相に流れる相電流Iu,Ivを用いて推定される電動モータ38の回転位置と要求デューティ比dB*とを用いて、要求デューティ比dB*に対応する回転数で電動モータ38が回転するようインバータ42のスイッチングを行なうことにより電動モータ38を制御する。なお、相電流Iu,Ivを用いた電動モータ38の回転位置の推定は、例えば、相電流Iu,Ivから電動モータ38の誘起電圧を推定すると共に該推定した誘起電圧に基づいて回転位置を推定することにより行なうことができる。この場合、電動モータ38の制御を停止しているときには、相電流Iu,Ivが略値0となるため、電動モータ38の回転位置の推定は困難となる。
【0021】
次に、こうして構成された実施例の冷却装置30の動作、特に、電動ポンプ36の駆動に用いられる電動モータ38を制御する動作について説明する。図3は、電子制御ユニット50により実行される電動モータ制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、数十msec毎や数百msec毎)に繰り返し実行される。
【0022】
電動モータ制御ルーチンが実行されると、電子制御ユニット50のCPU52は、まず、電流センサ44U,44Vからの電動モータ38の三相コイルのU相,V相に流れる相電流Iu,Ivや、エンジン22の冷却水温Twに基づいて図2に例示する目標回転数設定用マップを用いて設定された要求デューティ比dB*を入力すると共に(ステップS100)、入力した要求デューティ比dB*が値0より大きいか否かを判定する(ステップS110)。これは、エンジン22を冷却するために電動モータ38を制御する必要があるか否かを判定する処理である。
【0023】
要求デューティ比dB*が値0のときには、電動モータ38を制御する必要はないと判断し、電動モータ38の制御を停止し(ステップS120)、電動モータ38の起動が完了したか否かを示す起動完了フラグFに値0を設定して(ステップS130)、電動モータ38の制御を停止してからの経過時間tの計時を開始していないときにはその計時を開始して(ステップS140,S150)、このルーチンを終了する。なお、電動モータ38が回転している最中に電動モータ38の制御を停止すると、電動モータ38は、慣性によって回転しながら徐々に回転数が小さくなり停止する。
【0024】
そして、次回以降にこのルーチンが実行されたときに、ステップS110で要求デューティ比dB*が値0より大きいときには、起動完了フラグFの値を調べ(ステップS160)、起動完了フラグFが値0のときには、電動モータ38の起動が完了していないと判断し、経過時間tを所定時間trefと比較し(ステップS170)、経過時間tが所定時間tref未満のときには、そのままこのルーチンを終了し、経過時間tが所定時間tref以上のときに、電動モータ38を起動し(ステップS180)、電動モータ38の起動が完了したときに起動完了フラグFに値1を設定して(ステップS190)、このルーチンを終了する。ここで、所定時間trefは、電動モータ38の制御を停止してから電動モータ38が回転停止するまでに要する時間やそれよりも若干長い時間として電動モータ38の仕様などにより定めることができ、例えば、500msecや700msecや1000msecなどを用いることができる。また、電動モータ38の起動は、実施例では、電流センサ44U,44Vからの相電流Iu,Ivなどを用いて電動モータ38の回転位置を推定可能な状態になったときに完了したと判断するものとした。回転位置を検出するセンサを有しないいわゆるセンサレスの電動モータ38を用いる場合、電動モータ38の制御を停止してから電動モータ38が慣性で回転している最中に電動モータ38を起動しようとすると、電動モータ38の回転位置を適正に推定できないためにその後に電動モータ38を適正に制御できずその起動が失敗となる場合が生じる。このことを考慮して、実施例では、経過時間tが所定時間tref以上になって電動モータ38が回転停止していると想定されるときに電動モータ38を起動するものとした。これにより、電動モータ38をより確実に起動して制御することができる。こうして電動モータ38の起動に成功すると、次回以降にこのルーチンが実行されたときに要求デューティ比dB*が値0より大きいときには(ステップS110)、起動完了フラグFが値1であるから(ステップS160)、相電流Iu,Ivなどから推定される電動モータ38の回転位置と要求デューティ比dB*とを用いて電動モータ38を制御して(ステップS200)、このルーチンを終了する。
【0025】
以上説明した実施例の冷却装置30が備える電動機制御装置によれば、電動モータ38の制御を停止した後に要求デューティ比dB*が値0より大きくなったときには、電動モータ38の制御を停止してからの経過時間tが所定時間tref以上になったときに電動モータ38を起動して制御するから、電動モータ38をより確実に起動して制御することができる。
【0026】
実施例の冷却装置30が備える電動機制御装置では、電動モータ38の制御を停止した後に要求デューティ比dB*が値0より大きくなったとき(要求デューティ比dB*が値0より大きく起動完了フラグFが値0のとき)には、経過時間tが所定時間tref以上になったときに電動モータ38を起動するものとしたが、電動モータ38の起動を一旦実行し、その起動に失敗したときにはその失敗からの経過時間t2が所定時間tref2以上になったときに電動モータ38を再起動するものとしてもよい。この場合の電動モータ制御ルーチンの一例を図4に示す。図4のルーチンは、ステップS130〜S150,S170の処理に代えてステップS300〜S360の処理を実行する点を除いて図3の電動モータ制御ルーチンと同一である。したがって、同一の処理については同一のステップ番号を付し、その詳細な説明は省略する。図4の電動モータ制御ルーチンでは、ステップS110で要求デューティ比dB*が値0のときには、電動モータ38の制御を停止し(ステップS120)、起動完了フラグFと、電動モータ38の起動を失敗したか否かを示す起動失敗フラグF2と、に共に値0を設定して(ステップS300)、このルーチンを終了する。そして、次回以降にこのルーチンが実行されたときに、ステップS110で要求デューティ比dB*が値0より大きいときには、ステップS160,S310で起動完了フラグFおよび起動失敗フラグF2が共に値0であるから、電動モータ38を起動し(ステップS320)、電動モータ38の起動が成功したか否かを判定する(ステップS330)。ここで、電動モータ38の起動が成功したか否かの判定は、実施例では、電動モータ38の起動を開始してから所定時間(例えば、数十msecなど)以内に電流センサ44U,44Vからの相電流Iu,Ivを用いて電動モータ38の回転位置を推定可能な状態になったか否かを判定することにより行なうものとした。なお、前述したように、電動モータ38が慣性で回転している最中に電動モータ38を起動しようとしたときには、その起動が失敗となる場合がある。ステップS330で電動モータ38の起動が成功したと判定したときには、起動完了フラグFに値1を設定して(ステップS190)、このルーチンを終了する。この場合、電動モータ38は、より迅速に起動されることになる。一方、電動モータ38の起動に成功しなかった即ち失敗したと判定したときには、起動失敗フラグF2に値1を設定し(ステップS340)、その判定からの経過時間t2の計時を開始して(ステップS350)、このルーチンを終了する。ステップS310で起動失敗フラグF2が値1のときには、経過時間t2を所定時間tref2と比較し(ステップS360)、経過時間t2が所定時間tref2未満のときには、そのままこのルーチンを終了し、経過時間t2が所定時間tref2以上のときに、電動モータ38を起動し(ステップS180)、電動モータ38の起動が完了したときに起動完了フラグFに値1を設定して(ステップS190)、このルーチンを終了する。ここで、所定時間tref2は、電動モータ38の起動に失敗してから電動モータ38が回転停止するまでに要する時間やそれよりも若干長い時間として電動モータ38の仕様などにより定めることができ、例えば、閾値trefと同一の時間などを用いることができる。こうすれば、電動モータ38のより迅速な起動を可能にすることができると共に電動モータ38の起動に失敗した後には電動モータ38をより確実に起動することができる。
【0027】
実施例の冷却装置30が備える電動機制御装置では、電動モータ38の制御を停止した後に要求デューティ比dB*が値0より大きくなったとき(要求デューティ比dB*が値0より大きく起動完了フラグFが値0のとき)には、経過時間tが所定時間tref以上になったときに電動モータ38を起動するものとしたが、電動モータ38の回転数Nmを検出する回転数センサ(回転位置を検出するものではない)を備える場合には、電動モータ38の回転数Nmが所定回転数Nref以下になったときに電動モータ38を起動するものとしてもよい。この場合の電動モータ制御ルーチンの一例を図5に示す。図5のルーチンは、ステップS140,S150,S170の処理に代えてステップS400の処理を実行する点を除いて図3の電動モータ制御ルーチンと同一である。したがって、同一の処理については同一のステップ番号を付し、その詳細な説明は省略する。図5の電動モータ制御ルーチンでは、ステップS110で要求デューティ比dB*が値0より大きく、且つ、ステップS160で起動完了フラグFが値0のときには、電動モータ38の回転数Nmを所定回転数Nrefと比較し(ステップS400)、電動モータ38の回転数Nmが所定回転数Nrefより大きいときにはそのままこのルーチンを終了し、電動モータ38の回転数Nmが所定回転数Nref以下のときには電動モータ38を起動して(ステップS180)、このルーチンを終了する。ここで、所定回転数Nrefは、電動モータ38が略回転停止したと判定可能な回転数の上限として電動モータ38の仕様や回転数センサの検出精度などに基づいて定めることでき、値0より若干大きい値を用いることができる。この場合でも、実施例と同様に、電動モータ38をより確実に起動して制御することができる。
【0028】
実施例の冷却装置30が備える電動機制御装置では、電流センサ44U,44Vにより検出される相電流Iu,Ivに基づいて推定される回転位置を用いて電動モータ38を制御するものとしたが、こうした手法により回転位置を推定して電動モータ38を制御するものに限られず、他の手法(例えば、電動モータ38の誘起電圧を検出したり電動モータ38の各相の電圧に基づいて誘起電圧を推定したりしてこの誘起電圧に基づいて回転位置を推定する手法など)により回転位置を推定して電動モータ38を制御するものとしてもよい。なお、電動モータ38を矩形波制御する場合の電動モータ38の誘起電圧の検出は、電動モータ38に流れる電流が断続的に切り替わるため、電流が通電していないときに行なうことができる。この場合でも、電動モータ38の制御を停止して電動モータ38の回転数が小さくなると、誘導電圧が小さいために、回転位置の推定が困難になる。このため、電動モータ38の制御を停止してから電動モータ38が慣性で回転している最中に電動モータ38を起動しようとすると、電動モータ38の回転位置を適正に推定できずにその起動が失敗となることがある。
【0029】
実施例では、エンジン22を冷却する冷却装置30が備える電動機制御装置として説明したが、冷却装置30は、エンジン22に代えて、動力を入出力するモータやモータを駆動する駆動回路(例えば、インバータなど)など発熱を伴う機器を冷却するものであればよい。
【0030】
また、実施例では、冷却装置30の電動ポンプ36を駆動する電動モータ38を制御する電動機制御装置として説明したが、電動ポンプ36を駆動する電動モータ38に限られず、回転位置を検出するセンサを有しない交流電動機を制御するものであれば如何なるものとしてもよい。
【0031】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例と本発明の第1の電動機制御装置とでは、電動モータ38が「交流電動機」に相当し、電動モータ38の制御を停止した後に要求デューティ比dB*が値0より大きくなったときには、電動モータ38の制御を停止してからの経過時間tが所定時間tref以上になったときに電動モータ38を起動する図3の電動モータ制御ルーチンのステップS170,S180の処理を実行する電子制御ユニット50が「電動機制御装置」に相当する。実施例と本発明の第2の電動機制御装置とでは、電動モータ38が「交流電動機」に相当し、図示しない回転数センサが「回転数センサ」に相当し、電動モータ38の制御を停止した後に要求デューティ比dB*が値0より大きくなったときには、電動モータ38の回転数Nmが所定回転数Nref以下になったときに電動モータ38を起動する図5の電動モータ制御ルーチンのステップS400,S180の処理を実行する電子制御ユニット50が「電動機制御装置」に相当する。
【0032】
ここで、本発明の第1の電動機制御装置における各要素は、以下のように考えることができる。「交流電動機」としては、電動モータ38に限定されるものではなく、同期モータや誘導モータ、ステッピングモータなど、回転位置を検出するセンサを有しないものであれば如何なるタイプの交流電動機としても構わない。「電動機制御装置」としては、電動モータ38の制御を停止した後に要求デューティ比dB*が値0より大きくなったときには、電動モータ38の制御を停止してからの経過時間tが所定時間tref以上になったときに電動モータ38を起動するものに限定されるものではなく、交流電動機の制御を停止した後に交流電動機を起動する再起動時には、交流電動機の制御を停止してから予め設定された所定時間が経過した以降に交流電動機を起動する待機後起動処理を実行する、ものであれば如何なるものとしても構わない。また、本発明の第2の電動機制御装置における各要素は、以下のように考えることができる。「交流電動機」としては、電動モータ38に限定されるものではなく、同期モータや誘導モータ、ステッピングモータなど、回転位置を検出するセンサを有しないものであれば如何なるタイプの交流電動機としても構わない。「電動機制御装置」としては、電動モータ38の制御を停止した後に要求デューティ比dB*が値0より大きくなったときには、電動モータ38の回転数Nmが所定回転数Nref以下になったときに電動モータ38を起動するものに限定されるものではなく、交流電動機の回転数を検出する回転数センサを有し、交流電動機の制御を停止した後に交流電動機を起動する再起動時には、交流電動機の回転数が予め設定された所定回転数以下になった以降に交流電動機を起動する待機後起動処理を実行する、ものであれば如何なるものとしても構わない。なお、「回転数センサ」としては、交流電動機の回転位置を検出せずに回転数を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0033】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0034】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、電動機制御装置や冷却装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
20 自動車、22 エンジン、24 オートマチックトランスミッション、26a,26b 駆動輪、30 冷却装置、31 ウォータージャケット、32 ラジエータ、34 循環流路、36 電動ポンプ、38 電動モータ、40 バッテリ、42 インバータ、44U,44V 電流センサ、46 温度センサ、50 電子制御ユニット、52 CPU、54 ROM、56 RAM。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転位置を検出するセンサを有しない交流電動機を制御する電動機制御装置であって、
前記交流電動機の制御を停止した後に該交流電動機を起動する再起動時には、予め設定された所定時間が経過した以降に前記交流電動機を起動する待機後起動処理を実行する、
ことを特徴とする電動機制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の電動機制御装置であって、
前記再起動時には、前記交流電動機を起動し、該交流電動機を起動できなかったときに前記待機後起動処理を実行する、
電動機制御装置。
【請求項3】
回転位置を検出するセンサを有しない交流電動機を制御する電動機制御装置であって、
前記交流電動機の回転数を検出する回転数センサを有し、
前記交流電動機の制御を停止した後に該交流電動機を起動する再起動時には、前記検出された交流電動機の回転数が予め設定された所定回転数以下になった以降に前記交流電動機を起動する待機後起動処理を実行する、
ことを特徴とする電動機制御装置。
【請求項4】
発熱を伴う機器を冷却媒体を用いて冷却する冷却装置であって、
交流電動機によって駆動され、前記機器を含む循環流路内で前記冷却媒体を循環させるための電動ポンプと、
前記交流電動機を制御する請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の電動機制御装置と、
を備える冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−213434(P2010−213434A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56045(P2009−56045)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】