説明

電動機

【課題】シール剤による電動機内部への水等の侵入を完全に防ぐことが出来なかった。さらにシール剤の塗布量が多すぎると回転子に接触し、音が発生したり電動機の効率低下を招いていた。
また、磁束の強弱により発生する振動が、外枠の剛性の弱い部位を振動させてしまう。その結果、その振動が音となって発生し、その電動機を組み込んでいる機器周辺に音が漏れ、近傍にいる人間に不快感を与えてしまう。
【解決手段】外枠の合せ面近傍の電動機内部側に空間部を設けたり、外枠の合せ面の最小径よりも小さい径で外枠に円周状のリブを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風用等に用いられる電動機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動機は、例えば、図2に記載されているものがあった。(例えば、特許文献1参照)
図3(a)にその電動機の軸方向の断面図を示し、図3(b)にその電動機の分解図を示す。軸4に圧入固定された回転子5は軸4に圧入固定された軸受3を介し、外枠A1と外枠B6の軸受ハウジング部に挿入固定され、軸4を中心に自由に回転が可能である。回転子5にはブラシホルダー7に保持されているブラシを介して外部から電流が供給され磁束が発生する。一方、外枠A1に固定された磁石2からも磁束が発生され、その両者の磁束の吸引作用や反発作用によって回転子5が回転する。ここで回転子5と磁石2から発生する磁束の授受される方向は軸方向である。このように固定子または磁石2と回転子5の対向面が軸4に対して垂直に位置する電動機は、径方向の長さに対して軸方向の長さが小さくなる外枠の構造が可能である。すなわち、薄型の電動機を提供できる利点がある。この利点を生かし車などのエンジンルームなどに搭載される送風用電動機として用いられている。設置場所が風雨にさらされ電動機内部への水等の侵入防止として、外枠A1と外枠B6の合せ面9にはシール剤を塗布している。
【特許文献1】特開2003−153500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成では、シール剤の塗布量が少なくなり電動機内部への水等の侵入を完全に防ぐことが出来なかった。さらにシール剤の塗布量が多すぎると回転子5に接触し、音が発生したり電動機の効率低下を招いていた。
【0004】
また、固定子または磁石2と回転子5との間で授受される磁束の方向が軸方向であり、その固定子または磁石2と回転子5を保持している外枠A1と外枠B6は薄型の構造のため、磁束の強弱により発生する振動が、それらの剛性の弱い部位を振動させてしまう。その結果、その振動が音となって発生し、その電動機を組み込んでいる機器周辺に音が漏れ、近傍にいる人間に不快感を与えてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記従来の課題を解決するために本発明の電動機は、外枠の合せ面近傍の電動機内部側に空間部を設けたり、外枠の合せ面の最小径よりも小さい径で外枠に円周状のリブを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
以上のように、本発明の電動機によれば、シール剤を確実に塗布することが出来、塗布したシール剤が回転子に接触し音が発生したり電動機の効率低下を招くこと無く電動機内部への水等の侵入を完全に防ぐことが出来る。
【0007】
また、コストをかけずに外枠の剛性を強くさせることができ、固定子または磁石と回転子との間で授受される磁束の強弱により発生する振動があっても、外枠の剛性の弱い部位がなくなるため外枠の振動も抑制され、その結果、従来発生していた音もなくなり、その機器周辺にいる人間への不快感もなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
外枠の合せ面近傍の電動機内部側に空間部を設けたり、外枠の合せ面の最小径よりも小さい径で外枠に円周状のリブを設けたものである。以下に、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の実施例1における電動機の軸方向の断面図である。他の部品や同じ構成については同じ符号を用い、説明と図を省略する。
軸4に圧入固定された回転子5は軸4に圧入固定された軸受3を介し、外枠A1と外枠B10の軸受ハウジング部に挿入固定され、軸4を中心に自由に回転が可能である。回転子5にはブラシホルダー7に保持されているブラシを介して外部から電流が供給され磁束が発生する。一方、外枠1に固定された磁石2からも磁束が発生され、その両者の磁束の吸引作用や反発作用によって回転子5が回転する。ここで回転子5と磁石2から発生する磁束の授受される方向は軸方向であるところまでは背景技術と同様である。
【0010】
ここで外枠A1と外枠B10との合せ面9にシール剤を塗布し組み立てるのであるが、外枠10の円周状のリブ13の径を、外枠A1と外枠B10との合せ面の最小径よりも小さい径14(ΦC)としている。よって、外枠A1と外枠B10との合せ面の電動機内部側近傍に空間部12が形成される。外枠A1と外枠B10との合せ面にシール剤を塗布し、この空間部12にもシール剤を充填すればシール剤の塗布量が多くなり、合せ面9から電動機内部への水等の侵入を完全に防ぐことが出来、さらにこの空間部12にシール剤が溜り回転子5側へは溢れ出ない。よって、回転子5にシール剤が接触し音が発生したり、電動機の効率低下を招くことも防止出来る。
【実施例2】
【0011】
実施例2についても図1を用いて説明する。
【0012】
軸4に圧入固定された回転子5は軸4に圧入固定された軸受3を介し、外枠A1と外枠B10の軸受ハウジング部に挿入固定され、軸4を中心に自由に回転が可能である。回転子5にはブラシホルダー7に保持されているブラシを介して外部から電流が供給され磁束が発生する。一方、外枠1に固定された磁石2からも磁束が発生され、その両者の磁束の吸引作用や反発作用によって回転子5が回転する。ここで回転子5と磁石2から発生する磁束の授受される方向は軸方向であるところまでは背景技術と同様である。
【0013】
磁束の吸引作用や反発作用の方向が軸方向のため、それにより発生する振動によって外枠A1や外枠B10が軸方向に振動しようとする。外枠A1には剛性の大きい磁石2が強固に固定されているため剛性は大きくなり振動し難い。一方、外枠B10は磁石2のように剛性の大きい部品とは固定されていない為、軸方向に振動し易い。そこで外枠10の円周状のリブ13の径を外枠A1と外枠B10との合せ面の最小径よりも小さい径14(ΦC)とし、背景技術のそれよりも小さくしている。その為外枠B10の剛性が大きくなり、外枠B10の振動もし難くし、その振動によって発生する音も減少させる。この形態は材料や加工のコストが上がらず効果的である。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明の電動機によれば、シール剤を確実に塗布することが出来、塗布したシール剤が回転子に接触し音が発生したり電動機の効率低下を招くこと無く、電動機内部への水等の侵入を完全に防ぐことが出来る。
【0015】
また、コストをかけずに外枠の剛性を強くさせることができ、固定子または磁石と回転子との間で授受される磁束の強弱により発生する振動があっても、外枠の剛性の弱い部位がなくなるため外枠の振動も抑制され、その結果、従来発生していた音もなくなり、その機器周辺にいる人間への不快感もなくすことができるので、送風用等に用いられる電動機等の用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1、実施例2における電動機の軸方向の断面図
【図2】従来の電動機の斜視図
【図3】従来の電動機、(a)軸方向の断面図、(b)分解図
【符号の説明】
【0017】
1 外枠A
2 磁石
3 軸受
4 軸
5 回転子
6 外枠B
7 ブラシホルダー
8 ネジ
9 外枠A1と外枠B6の合せ面
10 本発明の外枠B
11 本発明のブラシホルダー
12 空間部
13 円周状のリブ
14 13の径寸法(ΦC)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子または磁石と回転子の対向面が軸に対して垂直に位置し、固定子または磁石と回転子との間で授受される磁束の方向が軸方向である電動機において、外枠の合せ面近傍の電動機内部側に空間部を設けた電動機。
【請求項2】
固定子または磁石と回転子の対向面が軸に対して垂直に位置し、固定子または磁石と回転子との間で授受される磁束の方向が軸方向である電動機において、外枠の合せ面の最小径よりも小さい径で外枠に円周状のリブを設けた電動機。
【請求項3】
外枠の合せ面近傍の電動機内部側の空間部にシール剤を溜めた、請求項1に記載の電動機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−254554(P2006−254554A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65265(P2005−65265)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】