説明

電動機

【課題】モータケースから導出されたステータコイルの口出し線に絶縁不良が発生することを防止する。
【解決手段】本実施形態の電動機は、モータケース内に設けられたステータコイルの複数本の口出し線を、モータケースの外部へ導出するようにしたものにおいて、モータケースに、当該モータケースから導出される前記複数本の口出し線を案内配置するための口出し線ガイドを備える。口出し線ガイドは、前記複数本の口出し線を互いに離間させた状態で個別に収容配置するガイド溝を複数本有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機においては、モータケース内に設けられたステータコイルの複数本の口出し線(リード線)がモータケースの外部へ導出されている。それらモータケースの外部へ導出された複数本の口出し線の先端部は例えば端子台に固定され、その端子台において、外部の接続線例えばインバータ回路の接続線と接続される。
【0003】
このような構成の電動機においては、モータケースの外部へ導出された複数本の口出し線は、モータケースから導出された部分から端子台に固定される部分までの間は拘束されておらず、自由状態となっている。このため、電動機に発生する振動により、口出し線がモータケースに接触したり、異相の口出し線同士が接触したりして絶縁不良が発生してしまうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−125170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、モータケースから導出されるステータコイルの口出し線に絶縁不良が発生することを防止できる電動機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の電動機は、モータケース内に設けられたステータコイルの複数本の口出し線を、モータケースの外部へ導出するようにしたものにおいて、モータケースに、当該モータケースから導出される前記複数本の口出し線を案内配置するための口出し線ガイドを備える。口出し線ガイドは、前記複数本の口出し線を互いに離間させた状態で個別に収容配置するガイド溝を複数本有している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態における電動機の縦断側面図
【図2】口出し線ガイドの斜視図
【図3】口出し線部分の平面図
【図4】図3のX4−X4線に沿う縦断正面図
【図5】図4のX5−X5線に沿う縦断側面図
【図6】第2実施形態における図2相当図
【図7】図3相当図
【図8】図4相当図
【図9】図5相当図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、複数の実施形態による電動機を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について図1〜図5を参照して説明する。図1に示すように第1実施形態の電動機1は、この場合三相の同期モータで、モータケース2を備えている。モータケース2は、円筒状をなすケース主体部3と、図1の左側に存する正面側ブラケット4と、図1の右側に存する後面側ブラケット5とを組み合わせて構成される。ケース主体部3は図1の左右方向に延びる円筒状をなしていて、そのケース主体部3の内周部に、ステータ6が設けられている。ステータ6は、ステータコア7と、ステータコイル8とを備えている。ステータコア7は、例えば珪素鋼板を多数枚積層した短円筒状をなしていて、このステータコア7に、三相のステータコイル8が巻装されている。正面側ブラケット4は、ケース主体部3の正面側の開口部を塞ぐように装着される。後面側ブラケット5は、ケース主体部3の後面側の開口部を塞ぐように装着される。したがって、ステータ6は、モータケース2内に収納された状態で設けられている。
【0009】
ステータ6の内周部側にはロータ10が回転可能に配設されている。このロータ10の回転軸11は、ステータ6の軸方向(図1の左右方向)に延びていて、正面側(図1の左側)の一端部11aが軸受12を介して正面側ブラケット4に回転可能に支持され、後面側の他端部11bが軸受13を介して後面側ブラケット5に回転可能に支持されている。正面側ブラケット4の径方向の中央部には、後方側(図1において右側)へ突出するロータ支持部15が形成されていて、このロータ支持部15に、軸受12を介して回転軸11の一端部11aが支持されている。ロータ支持部15の正面外側(図1の左側)には凹部15aが形成されていて、回転軸11の一端部11aが、その凹部15a内に突出している。
【0010】
回転軸11において、凹部15aの外側(正面側)に突出した一端部11aには、レゾルバロータ16がアダプタ16aを介して取り付けられている。このレゾルバロータ16は、回転軸11と一体に回転する。凹部15a内には、レゾルバロータ16を囲繞するようにして環状のレゾルバステータ17が固定状態に設けられている。これらレゾルバロータ16とレゾルバステータ17によりレゾルバ18を構成している。レゾルバ18は、ロータ10の回転位置を検出するものである。
【0011】
正面側ブラケット4の外側(正面側)には、凹部15aの開口部を塞ぐようにカバー19がねじ止めされている。なお、レゾルバステータ17から引き出されたリード線20は、正面側ブラケット4の外側へ導出されている。
【0012】
後面側ブラケット5の径方向の中央部にも、前方側(図1において左側)へ突出するロータ支持部21が形成されていて、このロータ支持部21に、軸受13を介して回転軸11の他端部11bが支持されている。ロータ支持部21の後面外側(図1の右側)にも凹部21aが形成されていて、回転軸11の他端部11bが、その凹部21a内に突出している。
【0013】
モータケース2のうちケース主体部3の上面部における前部側には、図3にも示すように、端子台23がねじ24により固定状態に取り付けられている。また、この端子台23の前部側には取付板25が配置されていて、この取付板25が、ねじ26により正面側ブラケット4の上部に固定状態に取り付けられている。正面側ブラケット4の上部には、口出し線導出用の開口部からなる導出口27(図1参照)が形成されている。また、取付板25には、その導出口27の上方に対応する部位に位置させて、口出し線導出用の開口部からなる導出口28が導出口27に連通するように形成されている。
【0014】
そして、前記ステータコイル8の複数本の引出し線30が、前記正面側ブラケット4の導出口27、および取付板23の導出口28を通してモータケース2の外部(上部)へ導出されている。この場合、ステータコイル8は、三相でかつダブルスター結線されていて、その口出し線30は、図3および図4に示すように6本存している。これら6本の口出し線30は同相同士が2本ずつ並べられて3組に分けられていて、各組の2本の口出し線30の先端部に1個の金属製の接続端子31が圧着により取り付けられている。したがって、接続端子31は3個存している。各接続端子31には、取付孔31aが形成されている。各口出し線30は、図示しない導線の周りが絶縁被覆によって覆われている。
【0015】
前記取付板25の導出口28部分には、口出し線ガイド32が配置されている。この口出し線ガイド32は、絶縁材この場合合成樹脂にて形成されたもので、図2に示すように、平板状をなす取付部33と、この取付部33から下方へ延びるガイド部34とを一体に有していて、取付部33の左右両端部には上下方向に延びる取付孔35が形成されている。この口出し線ガイド32は、ガイド部34を導出口28から導出口27にかけて挿入した状態で、取付部33の取付孔35に挿通したねじ36により、前記取付板25の上面部に固定状態に取り付けられている。ガイド部34には、それぞれ上下方向に延びるガイド溝37が複数本、この場合3本形成されている。各ガイド溝37は、前面側が開口し、上面側からみてU字状をなしている。
【0016】
そして、前記導出口27および導出口28を通して外部へ導出される3組の口出し線30は、3本のガイド溝37に分けて収容配置するようにして配線されている。3組の各口出し線30は、上向きの状態から先端部が後方に向けてほぼ90度曲がるよう曲線状に曲げられ、先端部の接続端子31が端子台23の上面に配置されている。そして、各接続端子31には、図1に二点鎖線で示すように、外部接続線、例えばインバータ用接続線38が、端子台23においてねじ39により接続される。
【0017】
上記した実施形態によれば、モータケース2に、複数本この場合3本のガイド溝37を有する口出し線ガイド32を設け、モータケース2内から導出口27および導出口28を通して外部へ導出されるステータコイル8の3組の口出し線30を、互いに離間させた状態で3本のガイド溝37に個別に収容配置した状態で配線する構成とした。これにより、ステータコイル8の3組の口出し線30がモータケース2に不用意に接触したり、異相の口出し線30同士が接触したりすることを防止することができ、絶縁不良が発生することを防止できるようになる。
【0018】
(第2実施形態)
次に第2実施形態について図6〜図9を参照して説明する。この第2実施形態においては、特に口出し線ガイド40の構成が、第1実施形態の口出し線ガイド32とは異なっている。口出し線ガイド40は、口出し線ガイド32と同様に絶縁材この場合合成樹脂にて形成されたもので、図6に示すように、上部の取付部41と、この取付部41から下方へ延びるガイド部42とを一体に有している。このうち、取付部41の高さ寸法(厚さ寸法)は、前記口出し線ガイド32の取付部33の高さ寸法よりも大きく形成されている。取付部41の左右両端部には、上下方向に延びる取付孔43が形成されている。
【0019】
この口出し線ガイド40も、第1実施形態の口出し線ガイド32と同様に、ガイド部42を導出口28から導出口27にかけて挿入した状態で、取付部41の取付孔43に挿通したねじ44により、前記取付板25の上面部に固定状態に取り付けられている。ガイド部42にも、それぞれ上下方向に延びる3本のガイド溝45,46,47が形成されている。各ガイド溝45,46,47は、前記ガイド溝37と同様に前面側が開口し、上面側からみてU字状をなしている。
【0020】
3本の各ガイド溝45〜47は、上部が取付部41の上面側まで延びている。このうち、中央部のガイド溝46は、図7に示すように、まっすぐ後方に向けて延びているが、左側(図7において上側)のガイド溝45は、後端部側ほど中央部のガイド溝46からの離間距離が大きくなるように、中央部のガイド溝46に対して左方向に斜めに向いて延びている。また、右側(図7において下側)のガイド溝47も、後端部側ほど中央部のガイド溝46からの離間距離が大きくなるように、中央部のガイド溝46に対して右方向に斜めに向いて延びている。各ガイド溝45,46,47において、取付部41に対応する底部に相当する部分には、曲面状をなす屈曲補助部48(図9参照)が設けられている。
【0021】
そして、前記導出口27および導出口28を通して外部へ導出される3組の口出し線30は、3本のガイド溝45,46,47に分けて収容配置するようにして配線される。3組の各口出し線30は、図9に示すように上向きの状態から先端部が後方に向けて90度曲線状に曲げられ、先端部の接続端子31が端子台23の上面に配置される。このとき、各口出し線30は、曲面状をなす屈曲補助部48を利用して屈曲させることで、曲線状に容易に屈曲させることができる。また、図7に示すように、3組の口出し線30のうち左側のガイド溝45に配線される口出し線30は、中央部のガイド溝46に配線される口出し線30に対して先端部側(後端部側)ほど離間寸法が大きくなるように左斜め方向に配置され、右側のガイド溝47に配線される口出し線30は、中央部のガイド溝46に配線された口出し線30に対して先端部側(後端部側)ほど離間寸法が大きくなるように右斜め方向に配置される。したがって、口出し線ガイド40における3本のガイド溝45,46,47は、ここに配置される口出し線30の先端部側ほど隣り合ったガイド溝間の離間寸法が大きくなるように延びている。
【0022】
上記した実施形態によれば、特に、口出し線ガイド40に設けられた3本のガイド溝45,46,47は、ここに配置される口出し線30の先端部側ほど隣り合ったガイド溝間の離間寸法が大きくなるように延びているので、3組の口出し線30を所定の位置まで容易に導くことができ、また、異相の口出し線30の絶縁空間距離を一層確実に確保することができ、絶縁不良が発生することを一層確実に防止することができる。
【0023】
また、各ガイド溝45,46,47に屈曲補助部48を設けているので、各ガイド溝45,46,47に配置される口出し線30を屈曲させる際にその屈曲補助部48を利用することで、容易に屈曲させることができる利点がある。
【0024】
(その他の実施形態)
ステータコイル8の口出し線30は、2本を一組にしたものに限られず、1本ずつに分けられたものにも適用できる。また、電動機としては、同期モータに限られず、誘導モータにも適用できる。
【0025】
以上のように本実施形態の電動機によれば、モータケースに、当該モータケースから導出されるステータコイルの複数本の口出し線を案内配置するための口出し線ガイドを備え、その口出し線ガイドは、前記複数本の口出し線を互いに離間させた状態で個別に収容配置するガイド溝を複数本有する構成とした。これにより、ステータコイルの口出し線がモータケースに不用意に接触したり、異相の口出し線同士が接触したりすることを防止することができ、絶縁不良が発生することを防止できるようになる。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
図面中、1は電動機、2はモータケース、6はステータ、8はステータコイル、23は端子台、30は口出し線、31は接続端子、32は口出し線ガイド、37はガイド溝、38はインバータ用接続線(外部接続線)、40は口出し線ガイド、45,46,47はガイド溝、48は屈曲補助部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータケース内に設けられたステータコイルの複数本の口出し線を、前記モータケースの外部へ導出するようにした電動機において、
前記モータケースに、当該モータケースから導出される前記複数本の口出し線を案内配置するための口出し線ガイドを備え、
前記口出し線ガイドは、前記複数本の口出し線を互いに離間させた状態で個別に収容配置するガイド溝を複数本有していることを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記複数本のガイド溝は、前記口出し線の先端部側ほど隣り合ったガイド溝間の離間寸法が大きくなるように延びていることを特徴とする請求項1記載の電動機。
【請求項3】
前記口出し線ガイドにあって前記口出し線を屈曲させる部分に対応させて、曲面状をなす屈曲補助部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の電動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−249461(P2012−249461A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120365(P2011−120365)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(500414800)東芝産業機器製造株式会社 (137)
【Fターム(参考)】