説明

電動流体圧アクチュエータ

【課題】大容量の流体圧シリンダや電動モータを用いることなく、電動流体圧アクチュエータの出力を向上可能とする。
【解決手段】電動モータ2で駆動される油圧ポンプ1と、油圧ポンプ1からの作動油によってロッド15が進退する油圧シリンダ10と、油圧ポンプ1からの作動油の一部を蓄圧するアキュムレータ20とを備え、油圧シリンダ10は、ロッド15が連結されるピストン11と、油圧ポンプ1から双方向に吐出される作動油が各々導かれるピストン側油室12aとロッド側油室12bがピストン11にて画成されるシリンダ部12と、シリンダ部12に連結されるピストン13と、ピストン13にロッド15が退出する方向への推力を付与する背圧室14aが画成されるシリンダ部14とを備え、油圧ポンプ1からピストン側油室12aに作動油が導かれる際には油圧ポンプ1の吐出圧に基づいてアキュムレータ20の作動油が背圧室14aに導かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータで駆動される流体圧ポンプからの作動流体によって作動する電動流体圧アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体圧ポンプを電動モータで駆動し、その流体圧ポンプから供給される作動流体によって流体圧シリンダのロッドを進退させる電動流体圧アクチュエータが用いられている。特許文献1には、電動モータで駆動される油圧ポンプと作動油を貯留するタンクとが、油圧シリンダと平行に配設された油圧駆動ユニットが開示されている。この油圧駆動ユニットでは、電動モータの正逆回転の切り換えによって、油圧シリンダのロッドを進退させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−132683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような油圧駆動ユニットでは、油圧シリンダの出力を向上させるためには、大容量の油圧ポンプや電動モータを用いて作動圧力を高圧にする必要がある。そのため、装置が大型化するとともに、消費電力が増加するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、大容量の流体圧シリンダや電動モータを用いることなく、流体圧シリンダの出力を向上可能な電動流体圧アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、作動流体を双方向に吐出可能な流体圧ポンプと、前記流体圧ポンプを駆動する電動モータと、前記流体圧ポンプから吐出される作動流体によって進退するロッドを有する流体圧シリンダと、を備える電動流体圧アクチュエータであって、前記流体圧ポンプから吐出される作動流体の一部が導かれて蓄圧可能なアキュムレータを備え、前記流体圧シリンダは、前記ロッドが連結される第一ピストンと、前記第一ピストンが摺動自在に挿入され、前記流体圧ポンプから双方向に吐出される作動流体が各々導かれるピストン側流体室とロッド側流体室とが、前記第一ピストンにて画成される第一シリンダ部と、前記第一シリンダ部に連結される第二ピストンと、前記第二ピストンが摺動自在に挿入され、前記第二ピストンに前記ロッドが退出する方向への推力を付与する背圧室が、前記第二ピストンの背面に画成される第二シリンダ部と、を備え、前記流体圧ポンプから前記ピストン側流体室に作動流体が導かれる際には、前記流体圧ポンプの吐出圧に基づいて、前記アキュムレータに蓄圧された作動流体が前記背圧室に導かれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、流体圧ポンプから吐出された作動流体がピストン側流体室に導かれてロッドを退出させるのと同時に、流体圧ポンプからピストン側流体室に導かれる作動流体の圧力に基づいて、第一シリンダに連結される第二ピストンを、アキュムレータから作動流体が導かれる背圧室の推力によってロッドが退出する方向に摺動させる。よって、流体圧ポンプからの作動流体によるロッドの退出動作が、アキュムレータからの作動流体によってアシストされることとなる。したがって、大容量のシリンダや電動モータを用いることなく、流体圧シリンダの出力を向上可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る電動流体圧アクチュエータの回路図である。
【図2】流体圧ポンプが一方向に回転して流体圧シリンダが伸長する場合における電動流体圧アクチュエータの回路図である。
【図3】流体圧ポンプが他方向に回転して流体圧シリンダが収縮する場合における電動流体圧アクチュエータの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
まず、図1を参照して、本発明の実施の形態に係る電動流体圧アクチュエータとしての電動油圧アクチュエータ100の構成について説明する。電動油圧アクチュエータ100では、流体圧として油圧を使用する。
【0011】
電動油圧アクチュエータ100は、作動油を双方向に吐出可能な流体圧ポンプとしての油圧ポンプ1と、油圧ポンプを駆動する電動モータ2と、油圧ポンプ1から吐出される作動油によって進退するロッド15を有する流体圧シリンダとしての油圧シリンダ10とを備える。
【0012】
また、電動油圧アクチュエータ100は、油圧ポンプ1から吐出される作動油の一部が導かれて蓄圧可能なアキュムレータ20と、油圧ポンプ1と油圧シリンダ10とを連結する一対の給排流路3と給排流路4と、給排流路3,4に各々配設されるオペレートチェック弁5とオペレートチェック弁6と、作動油を貯留するタンク31とを備える。
【0013】
油圧ポンプ1は、互いに噛合する一対のギヤ間をポンプ室として、ギヤの回転によって移動するポンプ室が、一方向から作動油を吸い込んで他方向から吐出するギヤポンプである。油圧ポンプ1は、電動モータ2の回転方向に応じて双方向に回転し、その回転に応じた方向に作動油を吐出可能である。
【0014】
電動モータ2は、作業者によって操作されるスイッチ(図示省略)からの信号がコントローラ(図示省略)に入力され、そのコントローラから発せられる信号に基づいて駆動される。
【0015】
油圧シリンダ10は、ロッド15が連結されるピストン11と、ピストン11が摺動自在に挿入されるシリンダ部12と、シリンダ部12に連結されるピストン13と、ピストン13が摺動自在に挿入されるシリンダ部14とを備える。このピストン11が第一ピストンに該当し、シリンダ部12が第一シリンダ部に該当し、ピストン13が第二ピストンに該当し、シリンダ部14が第二シリンダ部に該当する。
【0016】
油圧シリンダ10は、シリンダ部14が固定され、ロッド15の自由端が外部の負荷(図示省略)に連結される。油圧シリンダ10は、シリンダ部14に対するロッド15の進退によって伸縮して、その分だけ負荷を移動させるものである。
【0017】
ピストン11は、シリンダ部12から突出して設けられるロッド15を介して負荷と連結される。ピストン11がシリンダ部12内を摺動すると、ロッド15がシリンダ部12に対して進退する。
【0018】
シリンダ部12は、作動油の圧力に応じてピストン11が内部を摺動可能な複動型のシリンダである。シリンダ部12には、ピストン側流体室としてのピストン側油室12aと、ロッド側流体室としてのロッド側油室12bとが、ピストン11にて画成される。ピストン側油室12aとロッド側油室12bとは、油圧ポンプ1から双方向に吐出される作動油が各々導かれて拡縮する。
【0019】
ピストン13は、シリンダ部12におけるピストン側油室12aの底面12cにロッド13aを介して連結される。ピストン13がシリンダ部14内を摺動すると、シリンダ部12がピストン13と一体に摺動し、シリンダ部14に対してシリンダ部12が進退する。
【0020】
ピストン13は、ピストン11と比較して大径に形成される。即ち、ピストン13の受圧面積は、ピストン11の受圧面積と比較して大きい。
【0021】
ロッド13aは、シリンダ部12から外部に突出して設けられる。ロッド13aの基端部はピストン13に連結され、先端部はシリンダ部12に連結される。
【0022】
シリンダ部14は、シリンダ部12と直列に形成される。シリンダ部14には、背圧室14aとロッド側流体室14bとが、ピストン13にて画成される。
【0023】
背圧室14aは、ピストン13の背面13bに画成される。背圧室14aには、油圧ポンプ1からピストン側油室12aに導かれる際に、油圧ポンプ1の吐出圧に基づいて、アキュムレータ20に蓄圧された作動油が導かれる。背圧室14aは、作動油が供給されて拡張すると、ロッド15が退出する方向への推力をピストン13に付与する。
【0024】
背圧室14aは、後述するパイロット切換弁21,22が切り換えられることによって、内部の作動油が排出可能となる。これにより、ピストン13は、背圧室14aを収縮させる方向に摺動可能となる。ロッド13aは、その自重によって、又は外部の負荷からロッド15を介して入力される力によって、背圧室14aを収縮させながらシリンダ部14内へ進入する。
【0025】
ロッド側流体室14bには、空気などの圧縮可能な気体が封入される。ロッド側流体室14bは、アキュムレータ20から導かれる作動油によって背圧室14aが拡張したときに収縮し、内部の作動油が排出されて背圧室14aが収縮したときに拡張する。
【0026】
アキュムレータ20は、後述するパイロット切換弁21とチェック弁23とを介して背圧室14aと連通可能に設けられる。チェック弁23が設けられるため、作動油は、アキュムレータ20から背圧室14aへの一方向にのみ流れる。
【0027】
また、アキュムレータ20は、後述するパイロット切換弁22とチェック弁24とを介して給排流路4と連通可能に設けられる。チェック弁24が設けられるため、作動油は、給排流路4からアキュムレータ20への一方向にのみ流れる。
【0028】
給排流路3は、油圧ポンプ1とピストン側油室12aとを連結する流路である。給排流路3には、油圧ポンプ1が停止したときに作動油の流れを停止するオペレートチェック弁5と、油圧シリンダ10のハンチングを防止するためのスローリターン弁8とが設けられる。
【0029】
オペレートチェック弁5は、電動モータ2が停止して油圧ポンプ1が停止したときに、閉状態となって給排流路3における作動油の流れを遮断するものである。これにより、電動モータ2が停止したときには、作動油の流れが停止して、油圧シリンダ10の長さが維持されることとなる。
【0030】
オペレートチェック弁5は、電動モータ2が回転して油圧ポンプ1からピストン側油室12aに作動油が導かれると開状態となる。これにより、ロッド15がシリンダ部12から退出するときに、油圧ポンプ1からピストン側油室12aへの作動油の供給が可能となる。
【0031】
また、オペレートチェック弁5は、パイロット流路5aを介して反対側の給排流路4に連結される。オペレートチェック弁5は、給排流路4における作動油の圧力によってパイロット駆動されて開状態となる。これにより、油圧ポンプ1からロッド側油室12bに作動油が供給されてロッド15がシリンダ部12内に進入するときに、ピストン側油室12aから油圧ポンプ1へ作動油を戻すことが可能となる。
【0032】
スローリターン弁8は、ピストン側油室12aとオペレートチェック弁5との間に設けられる絞り弁である。スローリターン弁8は、ロッド15がシリンダ部12内に進入する方向へのピストン11の摺動によってピストン側油室12aから排出される作動油の流路を絞って抵抗を付与するものである。スローリターン弁8が設けられることによって、ロッド15の先端部に連結される負荷の自重によってロッド15がシリンダ部12内に進入するような場合に、ピストン11が断続的に振動を繰り返すハンチング現象が防止される。
【0033】
給排流路3には、ピストン側油室12aとオペレートチェック弁5との間における作動油の圧力が上昇した場合に作動油をタンクに戻すリリーフ流路43と、オペレートチェック弁5と油圧ポンプ1との間における作動油の圧力が上昇した場合に作動油をタンクに戻すリリーフ流路41とが連結される。リリーフ流路43とリリーフ流路41とには、リリーフ弁43aとリリーフ弁41aとが各々配設される。これにより、ロッド15がシリンダ部12から退出してストローク端となった場合や過負荷となった場合には、給排流路3内の作動油がタンク31に戻されることとなる。
【0034】
給排流路4は、油圧ポンプ1とロッド側油室12bとを連結する流路である。給排流路4には、油圧ポンプ1が停止したときに作動油の流れを停止するオペレートチェック弁6が設けられる。
【0035】
オペレートチェック弁6は、電動モータ2が停止して油圧ポンプ1が停止したときに、閉状態となって給排流路4における作動油の流れを遮断するものである。これにより、電動モータ2が停止したときには、油圧シリンダ10の長さが維持されることとなる。
【0036】
オペレートチェック弁6は、電動モータ2が回転して油圧ポンプ1からロッド側油室12bに作動油が導かれると開状態となる。これにより、ロッド15がシリンダ部12内に進入するときの、油圧ポンプ1からロッド側油室12bへの作動油の供給が可能となる。
【0037】
また、オペレートチェック弁6は、パイロット流路6aを介して反対側の給排流路3に連結される。オペレートチェック弁6は、給排流路3における作動油の圧力によってパイロット駆動されて開状態となる。これにより、ロッド15がシリンダ部12から退出するときの、ロッド側油室12bから油圧ポンプ1へ作動油を戻すことが可能となる。
【0038】
給排流路4には、ロッド側油室12bとオペレートチェック弁6との間における作動油の圧力が上昇した場合に作動油をタンクに戻すリリーフ流路44と、オペレートチェック弁6と油圧ポンプ1との間における作動油の圧力が上昇した場合に作動油をタンクに戻すリリーフ流路42とが連結される。リリーフ流路44とリリーフ流路42とには、リリーフ弁44aとリリーフ弁42aとが各々配設される。これにより、ロッド15がシリンダ部12内に進入してストローク端となった場合や過負荷となった場合には、給排流路4内の作動油がタンク31に戻されることとなる。
【0039】
タンク31には、油圧ポンプ1における吸込流量と吐出流量との間における後述する流量差を補うための作動油が貯留される。また、タンク31には、後述するパイロット切換弁21,22が切り換えられたときに、背圧室14aから排出される作動油が戻される。
【0040】
電動油圧アクチュエータ100は、油圧ポンプ1の前後における作動油の流量を調整するためのパイロット切換弁30と、作業者が手動で操作可能な非常用手動弁50とを備える。
【0041】
シリンダ部12の内部をピストン11が摺動した場合に、ピストン側油室12aとロッド側油室12bとが拡縮される容積を比較すると、ロッド15が挿通する分だけピストン側油室12aと比較してロッド側油室12bの方が拡縮される容積が小さい。これにより、ロッド15がシリンダ部12から退出する場合には、ピストン側油室12aに供給される作動油の体積は、ピストン11の移動によってロッド側油室12bから排出される作動油の体積と比較して大きくなる。ロッド15がシリンダ部12内に進入する場合も同様に、ピストン11の移動によってピストン側油室12aから排出される作動油の体積は、ロッド側油室12bに供給される作動油の体積と比較して大きくなる。そこで、パイロット切換弁30を設けることによって、油圧ポンプ1における吸込流量と吐出流量との間の流量差を補っている。
【0042】
パイロット切換弁30は、第一ポジション30aと第二ポジション30bと第三ポジション30cとを有する三ポジションの切換弁である。パイロット切換弁30は、油圧ポンプ1の停止時には、両端がばねによって付勢されて第二ポジション30bが連通するように切り換えられている。このとき、パイロット切換弁30は、給排流路3,4とタンク31との間を遮断している。
【0043】
パイロット切換弁30は、油圧ポンプ1から吐出された作動油がピストン側油室12aに導かれる場合には、給排流路3における作動油の圧力によってパイロット駆動されて、第一ポジション30aが連通するように切り換えられる。このとき、パイロット切換弁30は、給排流路4とタンク31との間を連通させる。これにより、ロッド15の体積の分だけ、作動油をタンク31から給排流路4に導き、油圧ポンプ1の吸込流量を補うことが可能となる。
【0044】
パイロット切換弁30は、油圧ポンプ1から吐出された作動油がロッド側油室12bに導かれる場合には、給排流路4における作動油の圧力によってパイロット駆動されて、第三ポジション30cが連通するように切り換えられる。このとき、パイロット切換弁30は、給排流路3とタンク31との間を連通させる。これにより、ロッド15の体積の分だけ、作動油を給排流路3からタンク31に戻すことが可能となる。
【0045】
また、この状態において、アキュムレータ20に蓄圧された作動油の圧力が低下している場合には、油圧ポンプ1から吐出された作動油の一部がアキュムレータ20に導かれる。よって、アキュムレータ20に導かれる体積の分だけ、作動油をタンク31から給排流路3に導き、油圧ポンプ1の吸込流量を補うことが可能となる。
【0046】
非常用手動弁50は、全ポートを閉じる第一ポジション50aと、給排流路3,4をともにタンク31に連通する第二ポジション50bとを有する。非常用手動弁50は、作業者が手動で操作可能なスイッチ51を有する。非常用手動弁50は、非常時に作業者によってスイッチ51が操作されると、第二ポジション50bに切り換えられ、給排流路3,4内の作動油をタンク31に導くこととなる。これにより、油圧シリンダ10の伸縮動作は停止し、作業者が手動で油圧シリンダ10を伸縮させることが可能となる。
【0047】
電動油圧アクチュエータ100は、給排流路3における作動油の圧力に基づいて切り換えられるパイロット切換弁21と、給排流路4における作動油の圧力に基づいて切り換えられるパイロット切換弁22とを備える。このパイロット切換弁21が第一パイロット切換弁に該当し、パイロット切換弁22が第二パイロット切換弁に該当する。
【0048】
パイロット切換弁21は、油圧ポンプ1から吐出されてピストン側油室12aに導かれる作動油の圧力をパイロット圧として、アキュムレータ20に蓄圧された作動油を背圧室14aに導くように切り換えられる。具体的には、以下のとおりである。
【0049】
パイロット切換弁21は、第一ポジション21aと第二ポジション21bとを有する二ポジションの切換弁である。パイロット切換弁21は、給排流路3に連結されるパイロット流路21cを有する。
【0050】
パイロット切換弁21は、油圧ポンプ1の停止時には、ばねによって付勢されて第一ポジション21aが連通するように切り換えられている。このとき、パイロット切換弁21は、アキュムレータ20から導かれる作動油を遮断し、背圧室14aとタンク31とを連通可能とする。
【0051】
パイロット切換弁21は、油圧ポンプ1から吐出された作動油がピストン側油室12aに導かれる場合に、給排流路3からパイロット流路21cを介して伝達される作動油の圧力がばね力と比較して大きくなることでパイロット駆動され、第二ポジション21bが連通するように切り換えられる。
【0052】
このとき、パイロット切換弁21は、背圧室14aとタンク31との間を遮断し、アキュムレータ20と背圧室14aとを連通させる。これにより、アキュムレータ20に蓄圧された作動油が背圧室14aに導かれることとなる。
【0053】
よって、油圧ポンプ1から吐出された作動油がピストン側油室12aに導かれてロッド15がシリンダ部12から退出するとともに、アキュムレータ20から導かれる作動油で背圧室14aが拡張してロッド13aがシリンダ部14から退出し、油圧シリンダ10は伸長することとなる。
【0054】
パイロット切換弁22は、油圧ポンプ1から吐出されてロッド側油室12bに導かれる作動油の圧力をパイロット圧として、油圧ポンプ1から吐出される作動油の一部をアキュムレータ20に導くように切り換えられる。具体的には、以下のとおりである。
【0055】
パイロット切換弁22は、第一ポジション22aと第二ポジション22bとを有する二ポジションの切換弁である。パイロット切換弁22は、給排流路4に連結されるパイロット流路22cを有する。
【0056】
パイロット切換弁22は、油圧ポンプ1の停止時には、ばねによって付勢されて第一ポジション22aが連通するように切り換えられている。このとき、パイロット切換弁22は、背圧室14aとタンク31との間を遮断し、アキュムレータ20と給排流路4との間を遮断する。
【0057】
パイロット切換弁22は、油圧ポンプ1から吐出された作動油がロッド側油室12bに導かれる場合に、給排流路4からパイロット流路22cを介して伝達される作動油の圧力がばね力と比較して大きくなることでパイロット駆動され、第二ポジション22bが連通するように切り換えられる。
【0058】
このとき、パイロット切換弁22は、アキュムレータ20と給排流路4とを連通させる。これにより、油圧ポンプ1から吐出されてロッド側油室12bに導かれる作動油の一部が、アキュムレータ20に導かれて蓄圧されることとなる。同時に、パイロット切換弁22は、背圧室14aとタンク31との間をパイロット切換弁21を介して連通させる。これにより、背圧室14a内の作動油がタンク31に導かれることとなる。
【0059】
よって、油圧ポンプ1から吐出された作動油がロッド側油室12bに導かれてロッド15がシリンダ部12内に進入するとともに、背圧室14a内の作動油が排出されることでロッド13aがシリンダ部14内に進入し、油圧シリンダ10は収縮することとなる。
【0060】
なお、パイロット切換弁21とパイロット切換弁22とを用いるのではなく、給排流路3と給排流路4との各々における作動油の圧力を検出する圧力センサを設け、その圧力センサの信号に基づいてコントローラによって切り換えられる電磁式切換弁を用いてもよい。
【0061】
パイロット切換弁22と給排流路4との間には、絞り弁9が設けられる。そのため、油圧ポンプ1から吐出された作動油のうち、パイロット切換弁22に導かれる作動油の体積は、ロッド側油室12bに導かれる作動油の体積と比較して小さくなる。よって、ロッド側油室12bに導かれる作動油が減少することによってロッド15がシリンダ部12内に進入する動作が妨げられることはない。
【0062】
以下、図2及び図3を参照して、電動油圧アクチュエータ100の作用について説明する。
【0063】
まず、図2を参照して、油圧シリンダ10が伸長する場合について説明する。
【0064】
電動モータ2の駆動によって油圧ポンプ1が一方向に回転すると、油圧ポンプ1から給排流路3に向けて作動油が吐出される。油圧ポンプ1から吐出された作動油は、オペレートチェック弁5を開状態として通過し、スローリターン弁8を通過してシリンダ部12のピストン側油室12aに供給される。このとき、作動油の流量は、スローリターン弁8に設けられるバイパス流路のチェック弁を通過できるため絞られることはない。
【0065】
油圧ポンプ1から供給される作動油によってピストン側油室12aが拡張すると、ピストン11は、ロッド15がシリンダ部12から退出する方向に摺動する。これにより、ロッド15はシリンダ部12から退出することとなる。このとき、オペレートチェック弁6は、パイロット流路6aを介して伝達される給排流路3内の作動油の圧力によって開状態とされている。よって、ロッド側油室12b内の作動油が排出されて油圧ポンプ1に戻され、ロッド側油室12bは収縮する。
【0066】
パイロット切換弁30は、給排流路3内の作動油の圧力によってパイロット駆動されて第一ポジション30aに切り換えられ、タンク31と給排流路4とを連通している。これにより、油圧ポンプ1の吐出流量と比較してロッド15の体積の分だけ少ない吸込流量が、タンク31からパイロット切換弁30を介して給排流路4に供給される作動油によって補われる。
【0067】
パイロット切換弁21は、給排流路3内の作動油の圧力によって、第二ポジション21bに切り換えられる。これにより、アキュムレータ20内に蓄圧された作動油が、チェック弁23とパイロット切換弁21とを通過してシリンダ部14の背圧室14aに供給される。
【0068】
アキュムレータ20から供給される作動油によって背圧室14aが拡張すると、ピストン13は、ロッド13aがシリンダ部14から退出する方向に摺動する。これにより、シリンダ部12は、シリンダ部14に対してロッド15と同方向に移動することとなる。
【0069】
以上より、油圧ポンプ1から吐出された作動油がピストン側油室12aに導かれてロッド15がシリンダ部12から退出するとともに、アキュムレータ20から導かれる作動油で背圧室14aが拡張してロッド13aがシリンダ部14から退出し、油圧シリンダ10は伸長することとなる。よって、油圧ポンプ1からの作動油によるロッド15の退出動作が、アキュムレータ20からの作動油によってアシストされることとなる。したがって、大容量のシリンダや電動モータを用いることなく、電動油圧アクチュエータ100の出力を向上可能である。
【0070】
このとき、ロッド13aは、ロッド15がシリンダ部12から退出しはじめる作動初期においてシリンダ部14から退出する。その後、ロッド13aは、ロッド15が未だシリンダ部12からの退出を続けているうちにストローク端までストロークして停止する。よって、油圧シリンダ10の作動初期における高出力化が可能である。そのため、電動油圧アクチュエータ100は、昇降リフタなど、作動初期に大きな出力を必要とする油圧機器に好適である。
【0071】
なお、アキュムレータ20の蓄圧容量や、ピストン13のストローク量を調整することによって、アシスト特性を変更することも可能である。
【0072】
次に、図3を参照して、油圧シリンダ10が収縮する場合について説明する。
【0073】
電動モータ2の駆動によって油圧ポンプ1が他方向に回転すると、油圧ポンプ1から給排流路4に向けて作動油が吐出される。油圧ポンプ1から吐出された作動油は、オペレートチェック弁6を開状態として通過し、シリンダ部12のロッド側油室12bに供給される。
【0074】
油圧ポンプ1から供給される作動油によってロッド側油室12bが拡張すると、ピストン11は、ロッド15がシリンダ部12内に進入する方向に摺動する。これにより、ロッド15は、シリンダ部12内に進入することとなる。このとき、オペレートチェック弁5は、パイロット流路5aを介して伝達される給排流路4内の作動油の圧力によって開状態とされている。よって、ピストン側油室12a内の作動油が排出されて油圧ポンプ1に戻され、ピストン側油室12aは収縮する。
【0075】
パイロット切換弁30は、給排流路4内の作動油の圧力によってパイロット駆動されて第三ポジション30cに切り換えられ、タンク31と給排流路3とを連通している。これにより、油圧ポンプ1の吐出流量と比較してロッド15の体積の分だけ多い油圧ポンプ1の吸込流量が、タンク31に戻されることとなる。
【0076】
パイロット切換弁22は、給排流路4内の作動油の圧力によって、第二ポジション22bに切り換えられる。これにより、背圧室14a内の作動油が、パイロット切換弁21とパイロット切換弁22とを通過してタンク31に戻される。作動油が排出されることによって背圧室14aが収縮すると、ピストン13は、ロッド13aがシリンダ部14内に進入する方向に摺動する。
【0077】
以上より、油圧ポンプ1から吐出された作動油がロッド側油室12bに導かれてロッド15がシリンダ部12内に進入するとともに、背圧室14a内の作動油が排出されることでロッド13aがシリンダ部14内に進入し、油圧シリンダ10は収縮することとなる。
【0078】
同時に、給排流路4内の作動油の一部が、パイロット切換弁22とチェック弁24とを通過してアキュムレータ20に導かれる。これにより、アキュムレータ20に蓄圧された作動油の圧力が低下している場合には、油圧ポンプ1から吐出された作動油の一部がアキュムレータ20に導かれることとなる。
【0079】
なお、アキュムレータ20に作動油を導いて蓄圧させる間は、その分の作動油がタンク31から給排流路3に導かれて油圧ポンプ1に供給されるため、不足分の吸込流量が補われる。
【0080】
以上の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0081】
油圧ポンプ1から吐出された作動油がピストン側油室12aに導かれてロッド15を退出させるのと同時に、油圧ポンプ1からピストン側油室12aに導かれる作動油の圧力に基づいて、シリンダ部12に連結されるピストン13を、アキュムレータ20から作動油が導かれる背圧室14aの推力によってロッド15が退出する方向に摺動させる。よって、油圧ポンプ1からの作動油によるロッド15の退出動作が、アキュムレータ20からの作動油によってアシストされることとなる。したがって、大容量のシリンダや電動モータを用いることなく、電動油圧アクチュエータ100の出力を向上可能である。
【0082】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、機械,設備,治具などを省力化,自動化するためのアクチュエータとして利用することができる。
【符号の説明】
【0084】
100 電動油圧アクチュエータ(電動流体圧アクチュエータ)
1 油圧ポンプ(流体圧ポンプ)
2 電動モータ
3 給排流路
4 給排流路
5 オペレートチェック弁
6 オペレートチェック弁
10 油圧シリンダ(流体圧シリンダ)
11 ピストン(第一ピストン)
12 シリンダ部(第一シリンダ部)
12a ピストン側油室(ピストン側流体室)
12b ロッド側油室(ロッド側流体室)
13 ピストン(第二ピストン)
13a ロッド
14 シリンダ部(第二シリンダ部)
14a 背圧室
15 ロッド
20 アキュムレータ
21 パイロット切換弁
22 パイロット切換弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を双方向に吐出可能な流体圧ポンプと、
前記流体圧ポンプを駆動する電動モータと、
前記流体圧ポンプから吐出される作動流体によって進退するロッドを有する流体圧シリンダと、を備える電動流体圧アクチュエータであって、
前記流体圧ポンプから吐出される作動流体の一部が導かれて蓄圧可能なアキュムレータを備え、
前記流体圧シリンダは、
前記ロッドが連結される第一ピストンと、
前記第一ピストンが摺動自在に挿入され、前記流体圧ポンプから双方向に吐出される作動流体が各々導かれるピストン側流体室とロッド側流体室とが、前記第一ピストンにて画成される第一シリンダ部と、
前記第一シリンダ部に連結される第二ピストンと、
前記第二ピストンが摺動自在に挿入され、前記第二ピストンに前記ロッドが退出する方向への推力を付与する背圧室が、前記第二ピストンの背面に画成される第二シリンダ部と、を備え、
前記流体圧ポンプから前記ピストン側流体室に作動流体が導かれる際には、前記流体圧ポンプの吐出圧に基づいて、前記アキュムレータに蓄圧された作動流体が前記背圧室に導かれることを特徴とする電動流体圧アクチュエータ。
【請求項2】
前記流体圧ポンプから吐出されて前記ピストン側流体室に導かれる作動流体の圧力をパイロット圧として、前記アキュムレータに蓄圧された作動流体を前記背圧室に導くように切り換えられる第一パイロット切換弁を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の電動流体圧アクチュエータ。
【請求項3】
前記流体圧ポンプから吐出されて前記ロッド側流体室に導かれる作動流体の圧力をパイロット圧として、前記流体圧ポンプから吐出される作動流体の一部を前記アキュムレータに導くように切り換えられる第二パイロット切換弁を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動流体圧アクチュエータ。
【請求項4】
作動流体が貯留されるタンクを備え、
前記第二パイロット切換弁は、前記流体圧ポンプから吐出されて前記ロッド側流体室に導かれる作動流体の圧力をパイロット圧として、前記背圧室内の作動流体を前記タンクに導くように切り換えられることを特徴とする請求項3に記載の電動流体圧アクチュエータ。
【請求項5】
前記第二ピストンには、前記第二シリンダ部から突出するロッドが連結され、当該ロッドの先端部は、前記ピストン側流体室の底面に連結されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の電動流体圧アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−202495(P2012−202495A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68218(P2011−68218)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】