説明

電動緊急遮断弁

【課題】シンプルな構造で緊急遮断弁の開度を変えられるようにする。
【解決手段】弁の開閉機構を出力軸20とモータ21とを接続する伝達機構にバネ23を設けただけの簡素化した構造として、弁の開度は、モータ21と電磁クラッチブレーキ27を駆動回路がコントロールする。駆動回路にモータ電流を検出する電流検出リレーを設ける。電流検出リレーは、モータ電流を検出すると、弁を係止する電磁クラッチブレーキ27への駆動電流の供給を遮断して弁を解放し、モータ21の作動によってバネ23を巻き締めあるいは伸長しながら開度を変えられるようにする。一方、モータ電流が検出されないと、電磁クラッチブレーキ27へ駆動電流を供給して電磁クラッチブレーキ27の作動によって弁の開度を保持する。また、停電時は、電磁クラッチブレーキ27への駆動電流が消失することにより、バネ23の伸長力でもって弁を緊急遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弁の開度を変えられるようにした電動緊急遮断弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
弁の開度を変えられる遮断弁として、例えば、特許文献1に示す4線式配線(交流入力端子と開入力端子及び閉入力端子)のものがある。この遮断弁(カバーケースを外してある)は、図5に示すように、弁1を一端に取り付ける出力軸2の他端に減速ギヤ3を介して開閉用モータ4と歯合する駆動ギヤ5を取り付けてある。また、前記出力軸2には、図6に示すように、弁1と駆動ギヤ5間に太陽ギヤ6を取り付けたスリーブ7が挿通され、そのスリーブ7の下部に取り付けた太陽ギヤ6の周囲に遊星ギヤ8を配置してある。さらに、その遊星ギヤ8の外側に、リングの内側に歯の形成されたインターナルギヤ9を嵌めることにより遊星機構10を形成するとともに、スリーブ7の下方に鍔状の支持板11を設けて前記遊星機構10を支持するようにしてある。
一方、スリーブ7の上部には、円形のプレート12と扇形ギヤ13が取り付けられている。扇形ギヤ13は、扇形の周に歯が形成されたもので、図6のように、円形プレート12の上に取り付けられており、取り付けた扇形ギヤ13の一側が円形プレート12に設けたピン14と接するようになっている。また、この円形プレート12と支持板11とは、遊星ギヤ8を挿通する連結軸15で連結されており、円形プレート12上の扇形ギヤ13は、ゼンマイバネ16に取り付けられた巻き上げギヤ17と歯合している。この巻き上げギヤ17は、減速ギヤ18を介してバネ巻き上げモータ19のピニオンギヤと歯合する。
【0003】
このように構成される遮断弁では、扇形ギヤ13が円形プレート12のピン14と接した状態で、バネ巻き上げモータ19を作動してゼンマイバネ16を巻き上げ(巻き締め)ると、扇形ギヤ13が図6の矢印のように左回りに回転し、ピン14から離れた状態で保持される。このとき、バネ巻き上げモータ19は通電状態を維持する。
この状態で、開閉用モータ4を作動して、太陽ギヤ6が、図6の破線矢印のように左回りに回転すると、各遊星ギヤ8は、右回りに自転しながら左回りに公転する。このとき、遊星ギヤ8と連結軸15で連結された円形プレート12と出力軸2は一体となって左回りに回転するため、弁1は開放されることになり、開閉用モータ4を逆回転させれば、弁1を閉じることができるのである。
一方、緊急時に電源が遮断されると、バネ巻き上げモータ19がオフとなり、ゼンマイバネ16が解放されて巻き戻り、巻き上げギヤ17、減速ギヤ18、巻き上げモータ19が巻き上げ時と逆方向に回転するとともに、巻き上げギヤ17と歯合する扇形ギヤ13が、図5の矢印と逆に右回りに回転して円形プレート12のピン14を押す。そのため、ピン14が押された前記プレート12は左回りに回転するため、前記プレート12と連結された各遊星ギヤ8は、左回りに自転しながら右回りに公転することになる。
その結果、太陽ギヤ6が回転して出力軸2を右回りに回転して弁1を閉じることができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−38238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の緊急遮断弁では、遊星機構を使用して弁の開度を変えられるようにしたため構造が複雑である。そのため、機構が複雑になる分、故障する確率も高く、それを防止するために組み立て作業も難しい。また、組み立て管理する箇所も多くなり、高コストであるという問題がある。
【0006】
そこで、この発明の課題は、遊星機構のような複雑な構造を採用することなく、シンプルな構造で開度を変えられるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、この発明では、弁を接続した出力軸と可逆モータを複数のギヤを組み合わせた伝達機構を介して連結し、前記弁を閉じる方向へ付勢するバネと制動用の電磁ブレーキを設け、前記モータを作動して弁を開放しながらバネを巻き締めたのち電磁ブレーキを作動させるようにした遮断弁本体と、駆動回路から成り、前記駆動回路にモータ電流検出手段を設け、前記モータ電流検出手段が、モータ電流を検出すると、前記電磁ブレーキと前記ブレーキへ駆動電流を供給する電源回路との接続を開(OFF)にし、一方、モータ電流が検出されないと、前記電磁ブレーキと電源回路との接続を閉じる(ON)とともに、前記電源回路が緊急時の停電で停止した際、電磁ブレーキが解放状態となる構成を採用したのである。
【0008】
このような構成を採用することにより、弁の開度を調整するためにモータへ通電すると、その通電によるモータ電流をモータ電流検出手段が検出して、電源回路から電磁ブレーキへの駆動電流をオフにする。そのため、弁を保持していた電磁ブレーキは解放状態となり、解放された弁はモータの作動によってバネを巻き締め、あるいは巻き締めたバネを伸長しながら開度を変更することができる。そして、所定の開度に達してモータへの通電を停止すると、モータ電流検出手段は、モータ電流が検出されなくなるため、電源回路からの電磁ブレーキへの駆動電流をオンにする。したがって、駆動電流が供給された電磁ブレーキは作動して所定の開度を保持することができる。
このとき、停電により、電源回路から電磁ブレーキへの駆動電流が消失すると、電磁ブレーキは解放状態になる。そのため、所定の開度に応じて巻き締められたバネの伸長力により弁は閉じられる。
【0009】
このとき、上記モータ電流検出手段が、複数のダイオードを順方向にして直列に接続した直列回路を互いに極性が逆になるようにして並列に接続し、モータ電流の供給路に挿入される並列回路で構成される電流検出部と、フォトカプラの発光素子の入出力端子を前記並列回路の両端に接続し、受光素子側入出力端子を介して電磁ブレーキへ電流を供給するようにしたスイッチ部とからなる構成を採用することができる。
【0010】
このように構成することにより、電流検出部の並列回路を構成する直列回路は、供給路にモータ電流が流れると電位差(直列に接続したダイオード数×0.6V(飽和電圧))を生じる。そのため、この電位差を電源として、並列回路の両端に接続されたスイッチ部のフォトカプラの発光素子を作動する。そして、その発光素子の作動によって、受光素子側入出力端子をオフにすることにより、電磁ブレーキを電源供給路からの電流供給が断たれた解放状態として、モータにより弁の開閉ができるようにする。
一方、モータ電流が断たれると(ダイオード数×飽和電圧より低くなると)、並列回路の電位差がゼロとなるため、フォトカプラの発光素子が消灯し、受光素子側の入出力端子をオンにする。こうすることにより、電磁ブレーキに電流が供給されて弁の位置を保持することができる。
また、この保持した状態で停電になると、電磁ブレーキは、電流供給が断たれるため解放状態となる。そのため、所定の開度に応じて巻き締められたバネの伸長力により弁は閉じられる。
【0011】
また、このとき、上記弁が閉じたことを検出する全閉センサと、弁が開放したことを検出する全開センサを設け、前記全閉センサは弁が閉じるとモータ電流の供給路をオフとし、弁が開き始めるとモータ電流の供給路をオンとし、一方、前記全開センサは弁が開放するとモータ電流の供給路をオフとし、弁が閉じ始めるとモータ電流の供給路をオンとする構成を採用することができる。
【0012】
このような構成を採用することにより、モータを作動して弁が全開位置に達すると、その状態を全開センサが検出してモータ電流の供給路をオフとする。このため、そのモータ電流のオフをモータ電流検出手段が検出して電磁ブレーキが作動することにより、全開位置を保持する。
一方、モータを作動して弁が全閉位置に達すると、その状態を全閉センサが検出してモータ電流の供給路をオフとする。このため、そのモータ電流のオフをモータ電流検出手段が検出して電磁ブレーキを作動することにより、全閉位置を保持する。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、上記のように構成したことにより、シンプルな構造で緊急遮断弁の開度を変えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態の斜視図
【図2】実施形態の回路図
【図3】(a)作用説明図、(b)作用説明図、(c)作用説明図
【図4】実施例1の回路図
【図5】従来例の斜視図
【図6】図5の分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
この形態の電動緊急遮断弁は、遮断弁本体と駆動回路とから成っている。
【0016】
遮断弁本体は、図1に示すように、先端に弁(図示せず)の取り付けられる出力軸20と開閉モータ(以下、モータ)21を複数のギヤを組み合わせた伝達機構22を介して接続し、前記伝達機構22に付勢用のバネ(例えば、ゼンマイバネ)23を取り付ける構造となっている。
【0017】
すなわち、出力軸20は、平歯車が取り付けられ、先端に弁を取り付ける構成となっている。また、出力軸20の後端には、2個のカムを90度の位相差でもって取り付け、そのカムに、全開位置設定マイクロスイッチLS1と全閉位置設定マイクロスイッチLS2の2つのマイクロスイッチを取り付けて、弁の開閉を検出できるようにしてある。
ここでは、全開位置設定マイクロスイッチLS1と全閉位置設定マイクロスイッチLS2に常閉接点(b接点)タイプのものを使用しており、常時はオンで弁の開放(または閉鎖)時にオフとなる。
【0018】
モータ21は交流レバーシブルモータのモータ軸にギヤヘッド26を取り付けたものに、制動用の電磁クラッチブレーキ27を搭載したもので、前記クラッチブレーキ27でモータ軸をスライドさせてピニオンギヤを取り付けたギヤヘッド26を伝達機構22に係合したり、モータ軸を固定して伝達機構22に接続した弁をロックしたりできるようになっている。
なお、この形態では、モータ21に交流レバーシブルモータを採用したが、モータ21は、交流レバーシブルモータに限定されるものではない。後述のように電流検出リレーDTRを変更することで、直流モータを使用することが可能である。
伝達機構22は、ピッチの異なる伝達ギヤを組み合わせて、所要のトルクが得られるようになっており、先に述べたバネ23を出力軸20と係合する伝達歯車に取り付け、弁が閉じる方向に付勢するようになっている。
【0019】
この遮断弁では、モータ21を作動して弁を開放状態にすると、伝達機構のバネも巻き取られる(巻き締める)。また、巻き取られたバネは、後述するように、電磁クラッチブレーキ27を解放すると、伸長して弁を閉鎖状態にする。
【0020】
駆動回路は、図2に示すように、モータ電流検出手段としての電流検出リレーDTR、開方向制御リレーR1、閉方向制御リレーR2、全開位置設定マイクロスイッチLS1、全閉位置設定マイクロスイッチLS2、整流回路33で構成されており、開指令スイッチ接続端子T1、閉指令スイッチ接続端子T2及び電源接続端子T3、T4の4線式入力となっている。
【0021】
開指令スイッチ接続端子T1は、開方向制御リレー接点r1を介してモータ21の開入力端子40と接続されている。一方、閉指令スイッチ接続端子T2は、閉方向制御リレー接点r2を介してモータ21の閉入力端子41と接続されている。
また、前記モータ21の主コイルと補助コイルの共通端子42は、電流検出リレーDTRを介して電源接続端子T3、T4の一方T3と接続されている。
【0022】
電流検出リレーDTRは、ここでは、常閉接点出力を有する機械式リレーを採用しており、電流を検出すると(電流がコイルに流れると)接点「開」となって出力がオフになり、電流が検出されないと(電流がコイルに流れないと)接点「閉」となって出力はオンになる。
また、この電流検出リレーDTRと接続された一方の電源接続端子T3と、残りの端子T4は、整流回路33と接続されている。
整流回路33は、ここでは、電源トランス、ブリッジ整流器及びブロックコンデンサで構成した全波整流回路となっている
この整流回路33には、3つの回路が並列に接続されている。
すなわち、閉方向制御リレーR2と全閉位置設定マイクロスイッチ(常閉「b」接点)LS2を直列に接続した第1の直列回路45と、開方向制御リレーR1と全開位置設定マイクロスイッチ(常閉「b」接点)LS1を直列に接続した第2の直列回路46及び電磁クラッチブレーキ回路27が並列に接続されており、前記第2の直列回路46と電磁クラッチブレーキ回路27間に、電流検出リレー接点47を配した構成となっている。
【0023】
また、図2のように、駆動回路の4線式入力の開指令スイッチ接続端子T1と閉指令スイッチ接続端子T2には、操作スイッチ50を接続する。操作スイッチ50は、中間オフ付の切り替え接点スイッチ(例えば、3接点のロータリースイッチの中間接点をフリー接続としたものでも可)で、前記スイッチ50の入出力端子を開指令スイッチ接続端子T1と閉指令スイッチ接続端子T2に接続し、前記操作スイッチ50の共通接点を交流電源のもう一方の端子T4と接続する。
【0024】
このように構成される電動緊急遮断弁では、電源投入前は、弁は閉の位置にある。そのため、常閉接点の全開位置設定マイクロスイッチLS1は接点「閉」でオフとなり、常閉接点の全閉位置設定マイクロスイッチLS2は接点「開」でオンになっている。
【0025】
いま、電源接続端子T3、T4に交流電源を接続し、電源を投入すると、電動緊急遮断弁は、操作スイッチ50によって以下のように動作する。
(1)電源投入直後の初期の状態、
操作スイッチ50のポジションが「開指令スイッチ接続」端子T1側あるいは「閉指令スイッチ接続」端子T2側のどちらでもなく、図2のように、中間オフのポジションにある場合。
この場合、電源投入直後の弁は、閉じた状態なので図2に示すように、全開位置設定マイクロスイッチLS1は接点「閉」でオフであり、開方向制御リレーR1はオンであって、開方向制御リレー接点r1はオン(「閉」)状態に保持される。
一方、全閉位置設定マイクロスイッチLS2は接点「開」でオンであり、閉方向制御リレーR2がオフになって、閉方向制御リレー接点r2もオフ(「開」)状態である。
このとき、操作スイッチ50は、中間オフのポジションなので、「開指令スイッチ接続」端子T1あるいは「閉指令スイッチ接続」端子T2のいずれの端子T1、T2にも交流電源からの電力は供給されずモータ電流は流れない。したがって、電流検出リレーDTRはオフとなり、電流検出リレー接点47はオン(「閉」)状態となるため、電磁クラッチブレーキ27が作動して弁は全閉状態に保持される。
【0026】
(2)弁を全閉から全開放する場合(操作スイッチ50のポジションを「開指令スイッチ接続」端子T1側へ操作する。)、
この場合、全閉状態の各接点のポジションは、図2に示すように、全開位置設定マイクロスイッチLS1は接点「閉」でオフであり、開方向制御リレーR1はオンであって、開方向制御リレー接点r1はオン(「閉」)状態に保持されている。また、全閉位置設定マイクロスイッチLS2は接点「開」でオンであり、閉方向制御リレーR2がオフとなって、閉方向制御リレー接点r2はオフ(「開」)状態となっている。
そのため、開方向制御リレー接点r1を介して交流電源からモータ21の開入力端子40へ電力が供給され、モータ電流が流れて電流検出リレーDTRがオンとなる。
その結果、電流検出リレー接点47はオフ(「開」)となり、電磁クラッチブレーキ27への給電が断たれる。そのため、前記ブレーキ27の係止から解放された弁は、モータ21の作動でもって開弁方向へバネ23を巻き締めながら回動する。
このとき、モータ21が回動を開始すると、常閉接点の全閉位置設定マイクロスイッチLS2は接点「閉」でオフとなり、閉方向制御リレーR2がオンとなって、閉方向制御リレー接点r2はオン(「閉」)状態を保持する。
そして、回動する弁が全開位置に達すると、図3(a)に示すように、常閉接点である全開位置設定マイクロスイッチLS1は接点「開」となってオフとなり、開方向制御リレーR1はオフとなって、開方向制御リレー接点r1はオフ(「開」)状態になる。そのため、モータ21への給電が遮断されモータ電流が流れなくなって、電流検出リレーDTRはオフとなる。
その結果、電流検出リレー接点47はオン(「閉」)となり、電磁クラッチブレーキ27への給電が開始されるため、電磁クラッチブレーキ27が作動して弁は全開状態で保持される。
【0027】
(3)弁を全開放から全閉鎖する場合、
操作スイッチ50のポジションを「閉指令スイッチ接続」端子T2側へ操作する。
この場合、弁が全開状態の各接点のポジションは、図3(a)に示すように、常閉接点である全開位置設定マイクロスイッチLS1は接点「開」でオンであり、開方向制御リレーR1はオフであって、開方向制御リレー接点r1はオフ(「開」)状態である。また、常閉接点の全閉位置設定マイクロスイッチLS2は接点「閉」でオフであり、閉方向制御リレーR2がオンとなって、閉方向制御リレー接点r2はオン(「閉」)状態である。
そのため、操作スイッチ50を「閉指令スイッチ接続」端子T2側に操作すると、閉方向制御リレー接点r2を介して交流電源からモータ21の閉入力端子41へ電力が供給され、モータ電流が流れて電流検出リレーDTRがオンとなる。
その結果、電流検出リレー接点47はオフ(「開」)状態となり、電磁クラッチブレーキ27への給電が断たれるため、前記ブレーキ27の保持から解放された弁は、モータ21の作動により、閉弁方向へバネ23を伸長しながら回動する。
そして、回動する弁が全閉位置に達すると、図3(b)に示すように、常閉接点である全開位置設定マイクロスイッチLS1は接点「閉」となってオフとなり、開方向制御リレーR1はオンとなって、開方向制御リレー接点r1はオン(「閉」)状態になる。また、常閉接点の全閉位置設定マイクロスイッチLS2は接点「開」となってオンとなり、閉方向制御リレーR2はオフとなって、閉方向制御リレー接点r2はオフ(「開」)状態になる。
したがって、モータ21への給電が遮断されてモータ電流が流れなくなるため、電流検出リレーDTRはオフとなる。
その結果、電流検出リレー接点47はオン(「閉」)となり、電磁クラッチブレーキ27への給電が行われ、電磁クラッチブレーキ27が作動して弁は全閉状態で保持される。
【0028】
(4)弁を所要の開度(中間位置)で保持する場合、
操作スイッチ50のポジションを「開指令スイッチ接続」端子T1側あるいは「閉指令スイッチ接続」端子T2側のいずれかに操作して、所要の開度になったところで、中間オフのポジションに操作する。
例えば、全閉状態から操作スイッチ50のポジションを「開指令スイッチ接続」端子T1側に操作して、所要の開度になったところで、中間オフのポジションに操作する場合を考える。
この場合、全閉状態での各接点のポジションは、図3(b)に示すように、常閉接点の全開位置設定マイクロスイッチLS1は接点「閉」でオフであり、開方向制御リレーR1はオンとなって、開方向制御リレー接点r1はオン(閉)状態である。また、常閉接点の全閉位置設定マイクロスイッチLS2は接点「開」でオンであり、閉方向制御リレーR2はオフとなって、閉方向制御リレー接点r2はオフ(「開」)状態となっている。
そのため、操作スイッチ50のポジションを「開指令スイッチ接続」端子T1側に操作すると、開方向制御リレー接点r1を介して交流電源からモータ21の開入力端子40へ電力が供給され、モータ電流が流れて電流検出リレーDTRがオンとなる。
その結果、電流検出リレー接点47はオフ(「開」)状態となり、電磁クラッチブレーキ27への給電が断たれるため、前記ブレーキ27の係止から解放された弁は、モータ21の作動でもって開弁方向へバネ23を巻き締めながら回動する。
このとき、モータ21が回動を開始すると、常閉接点の全閉位置設定マイクロスイッチLS2は接点「開」となってオフとなるため、閉方向制御リレーR2がオンとなって、閉方向制御リレー接点r2はオン(「閉」)状態になる。
この状態で、操作スイッチ50のポジションを所要の開度になったところで中間オフのポジションに操作する。すると、図3(c)のように、モータ21への給電がストップするため、モータ電流が流れなくなって、電流検出リレーDTRはオフとなる。
その結果、電流検出リレー接点47はオン(「開」)状態となり、電磁クラッチブレーキ27への給電が開始されるため、作動した電磁クラッチブレーキ27により弁は所要の開度で保持される。
さらに、開度を変える場合は、図3(c)のように、開方向制御リレーR1の接点r1と閉方向制御リレーR2の接点r2がオン(「閉」)となっているので、操作スイッチ50のポジションを「開指令スイッチ接続」端子T1側あるいは「閉指令スイッチ接続」端子T2側のいずれかに操作すればモータ21に電流を流すことができる。このようにモータ電流が流れると、電流検出リレーDTRがオンとなり、電流検出リレー接点47はオフ(「開」)状態となって、電磁クラッチブレーキ27への給電が断たれるため、前記ブレーキ27の係止から解放された弁は、モータ21の作動でもってバネ23を巻き締めながら、あるいは伸長しながら弁の開度を変えることができる。
そして、弁の開度が所要の位置になったところで、操作スイッチ50のポジションを中間オフのポジションに操作すると、モータ21への給電がストップし、モータ電流が流れなくなって、電流検出リレーDTRがオフとなる。
その結果、電流検出リレー接点47はオン(「閉」)状態となり、電磁クラッチブレーキ27への給電が開始されるため、作動した電磁クラッチブレーキ27により、弁は所要の開度で保持される。
また、この状態から、弁を全開状態あるいは全閉状態にする場合は、操作スイッチ50のポジションを「開指令スイッチ接続」端子T1側あるいは「閉指令スイッチ接続」端子T2側のいずれかに操作すればよい。このように操作すれば、モータ電流が流れて、電流検出リレーDTRがオンとなり、電流検出リレー接点47がオフ(「開」)状態となって、電磁クラッチブレーキ27への給電を断つことができるため、モータ21の作動でもってバネ23を巻き締めながら、あるいは伸長しながら、弁を全開状態あるいは全閉状態にすることができる。
その際、全開の場合は、弁が全開になった時点で、常閉接点の全開位置設定マイクロスイッチLS1が接点「開」となってオンとなり、開方向制御リレーR1はオフになるため、開方向制御リレー接点r1はオフ(「開」)状態に保持される。また、全閉の場合は、弁が全閉になった時点で、常閉接点の全閉位置設定マイクロスイッチLS2が接点「開」となってオンとなり、閉方向制御リレーR2はオフとなって、閉方向制御リレーR2の接点r2はオン(「開」)状態に保持される。
このように、弁の開度を自在に変えられるのである。
【0029】
(5)停電時
弁を全開放で保持している場合、または、弁を所要の開度(中間位置)で保持している場合において、緊急事態により停電が発生し、整流回路33から電磁クラッチブレーキ27への駆動電流が消失すると、電磁クラッチブレーキ27が解放状態になって、所定の開度に応じて巻き締められたバネ23の伸長力により弁は閉じられる。
このとき、閉鎖された弁には、流体に抗するためバネ圧で押されることが必要であり、このようなバネ圧が弁を閉じた際に発生できるようにバネ23の巻き締め量を設定する必要があることは当然である。
【0030】
このように、弁の開閉機構を出力軸20とモータ21とを接続する伝達機構22にバネ23を設けただけの簡素化した構造として、弁の開閉位置は、電磁クラッチブレーキを駆動回路がコントロールすることによって保持できるようにし、かつ、停電時に電磁クラッチブレーキ27が開放(フリー)することで、バネ23の伸長力でもって弁を緊急遮断できるようにしたのである。
その結果、緊急遮断弁の部品点数及び組み立て工数の削減が可能となり、コストダウンが図れる。
また、機構部分の組み立て管理する箇所が少なくなり、故障の確率も低くできる。
また、設置や点検の後にわざわざバネ23を巻き上げてセットする必要がなく、即開閉動作が可能である。そのため、バネ巻き上げ完了検出用のスイッチも必要ない。
【実施例1】
【0031】
この実施例1は、電流検出リレーDTRの一つの例を示すものである。
この実施例1の前記電流検出リレーDTRは、図4に示すように、電流検出部60とスイッチ部61とで構成されている。
電流検出部60は、複数のダイオードDを順方向にして直列に接続した直列回路62を互いに極性が逆になるようにして並列に接続したもので、前記並列回路63をモータ電流路に挿入する。
こうすることにより、前記並列回路63は、モータ電流路にモータ電流が流れると電位差(直列に接続したダイオード数×0.6V(飽和電圧))を生じる。このとき、上記のようなダイオードDを直列に接続した直列回路を互いに極性が逆になるようにして接続した並列回路としたことにより、供給路に流れるモータ電流は、交流、直流、モータの反転に関わらず検出できる。
一方、スイッチ部61は、フォトカプラ64を使用したもので、フォトカプラ64の発光素子65の入出力端子を前記並列回路63の両端に接続し、受光素子の入出力端子を介して電磁クラッチブレーキ27へ電流を供給するというものである。
ここで、図4のものでは、発光素子65にダイオードを2個使用して、2個のダイオードを互いの極性が逆となるようにして並列に接続したことにより、モータ電流を電流の流れる向きに関係なく検出できるようにしてある。
そのため、モータ21には、交流モータだけでなく、モータ電流の向きが正逆転で変わる直流モータを使用することも可能である。
なお、図4の破線のように、受光素子の出力は電磁クラッチブレーキ27の仕様や駆動回路の構成に合わせて反転させた出力とすることは当然である。
【0032】
このように構成される電流検出リレーDTRは、モータ電流路に挿入された電流検出部60の並列回路63が、電流路にモータ電流が流れると電位差(直列に接続したダイオード数×0.6V(飽和電圧))を生じる。そのため、この電位差で並列回路63の両端に接続されたスイッチ部61(フォトカプラ64)の発光素子65が発光して受光素子側の入出力端子間をオンにする。
そして、例えば、図4の破線で示すように、モータ電流路に挿入されるトランジスタスイッチ回路をオフにすることで、電磁クラッチブレーキ27への電流供給を断って解放状態とすることにより、弁の開閉ができるようにするのである。
一方、モータ電流が断たれると(ダイオード数×飽和電圧より低くなると)、並列回路63の電位差がゼロとなるため、前記スイッチ部61の発光素子65が消灯し、受光素子はオフとなる。そのため、受光素子オフで、電磁クラッチブレーキ27へ電流を供給できるようにすることで、電磁クラッチブレーキ27を作動して弁の位置を保持するようにできる。
また、この保持した状態で、停電になると、電磁クラッチブレーキ27は、電流供給が断たれた解放状態となる。そのため、所定の開度に応じて巻き締められたバネの伸長力により弁は閉じることができるのである。
【0033】
このように、電流検出リレーDTRを半導体で構成することができるので、信頼性を向上できる。また、電流検出部のダイオードの数を適宜設定することで、ノイズなどに対する耐性を向上できる。
【符号の説明】
【0034】
20 出力軸
21 モータ
22 伝達機構
23 バネ
27 電磁クラッチブレーキ
45 第1の直列回路
46 第2の直列回路
60 電流検出部
61 スイッチ部
62 直列回路
63 並列回路
64 フォトカプラ
65 発光素子
D ダイオード
DTR 電流検出リレー
LS1 全開位置設定マイクロスイッチ
LS2 全閉位置設定マイクロスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁を接続した出力軸と可逆モータを複数のギヤを組み合わせた伝達機構を介して連結し、前記弁を閉じる方向へ付勢するバネと制動用の電磁ブレーキを設け、前記モータを作動して弁を開放しながらバネを巻き締めたのち電磁ブレーキを作動させるようにした遮断弁本体と、駆動回路から成り、
前記駆動回路にモータ電流検出手段を設け、前記モータ電流検出手段が、モータ電流を検出すると、前記電磁ブレーキと前記ブレーキへ駆動電流を供給する電源回路との接続を開(OFF)にし、一方、モータ電流が検出されないと、前記電磁ブレーキと電源回路との接続を閉じる(ON)とともに、前記電源回路が緊急時の停電で停止した際、電磁ブレーキが解放状態となることを特徴とする電動緊急遮断弁。
【請求項2】
上記モータ電流検出手段が、複数のダイオードを順方向にして直列に接続した直列回路を互いに極性が逆になるようにして並列に接続し、モータ電流の供給路に挿入される並列回路で構成される電流検出部と、フォトカプラの発光素子の入出力端子を前記並列回路の両端に接続し、受光素子側入出力端子を介して電磁ブレーキへ電流を供給するようにしたスイッチ部をとからなることを特徴とする請求項1に記載の電動緊急遮断弁。
【請求項3】
上記弁が閉じたことを検出する全閉センサと、弁の開放したことを検出する全開センサを設け、前記全閉センサは弁が閉じるとモータ電流の供給路をオフとし、弁が開き始めるとモータ電流の供給路をオンとし、一方、前記全開センサは弁が開放するとモータ電流の供給路をオフとし、弁が閉じ始めるとモータ電流の供給路をオンとすることを特徴とする請求項1または2に記載の電動緊急遮断弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−219895(P2012−219895A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85305(P2011−85305)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(591136838)株式会社カワデン (13)
【Fターム(参考)】