説明

電動車両、施設内誘導システムおよび施設内誘導方法

【課題】施設内において、周囲の人物に配慮した自動搬送を行い得ると共に、操作が容易な電動車両、施設内誘導システムおよび施設内誘導方法を実現する。
【解決手段】病院などの施設内において、目的の部屋まで患者を搬送する電動車椅子1であって、目的の部屋を特定するための診察情報が記録された診察券2を読み取る記録媒体読み取り部18と、診察情報に基づいて、車椅子本体を目的の部屋まで移動させるための移動情報を生成する移動情報生成部19と、移動情報に基づいて、車椅子本体を移動させる移動制御部20と、移動制御部20により特定された現在位置と、移動情報に基づいて、車椅子本体の移動方向を投写表示する投写表示部21と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
病院などの施設内において、検査室や診察室など目的の部屋まで患者を搬送する電動車両、施設内誘導システムおよび施設内誘導方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
病院は、診察科の細分化により患者の動線が複雑化し、特に高齢者にとって迷いやすい場所となっている。しかし、病院も人手不足により高齢者に手を貸せない状況にある。そこで、近年、電動車両(電動車椅子、電動カートなど)を利用した自動搬送システムが注目されている。従来、この種のシステムとして、受付端末装置と、電動車両と、管理サーバーと、を含む診察順番待ちシステムが知られている(例えば、特許文献1)。当該システムでは、電動車両の利用者(患者)が、受付端末装置に必要な情報を入力することによって受付を行う。その後、管理サーバーが、院内マップ上における電動車両の現在位置と、目的の部屋の位置と、に基づいて走行指令データを生成し、これを電動車両に送信することで、電動車両による自動搬送機能(自動走行機能)を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−113044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の電動車両を実際に病院内で使用する場合は、周囲の人物との接触に十分配慮しなければならない。もちろん、上記の特許文献1に記載の電動車両にも、障害物センサーを用いて、人物などの障害物を迂回する旨が記載されているが、多くの人物が行き交う病院内においては不十分である。例えば、電動車両の急な迂回により、周囲の人物がつまずいたり転倒したりすることが考えられる。特に病院内では、目、耳、足などが不自由な人物が多く存在するため、その危険性は高い。このように、電動車両の自動搬送には、周囲の人物に配慮した機能が求められている。
一方、特許文献1に記載の診察順番待ちシステムは、患者が受付端末装置を用いて受付操作を行うことが前提となっている。このため、高齢者や子供など、電子機器の操作に不慣れな患者は利用しづらいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑み、病院などの施設内において、周囲の人物に配慮した自動搬送を行い得ると共に、操作が容易な電動車両、施設内誘導システムおよび施設内誘導方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動車両は、施設内において、目的の部屋まで人物を搬送する電動車両であって、目的の部屋を特定するための部屋情報が記録された記録媒体を読み取る記録媒体読み取り部と、部屋情報に基づいて、車両本体を目的の部屋まで移動させるための移動情報を生成する移動情報生成部と、移動情報に基づいて、車両本体を移動させる移動制御部と、移動制御部により特定された現在位置と、移動情報に基づいて、車両本体の移動方向を投写表示する投写表示部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の施設内誘導システムは、上記に記載の電動車両と、記録媒体と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の施設内誘導方法は、施設内において、電動車両により、目的の部屋まで人物を搬送する施設内誘導方法であって、電動車両が、目的の部屋を特定するための部屋情報が記録された記録媒体を読み取る記録媒体読み取りステップと、部屋情報に基づいて、車両本体を目的の部屋まで移動させるための移動情報を生成する移動情報生成ステップと、移動情報に基づいて、車両本体を移動させながら、車両本体の移動方向を床面に投写表示する搬送ステップと、を実行することを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、車両本体の移動方向を投写表示するため、周囲の人物が電動車両の移動方向(進行方向)を把握することができる。これにより、電動車両の移動によって、周囲の人物がつまずいたり転倒したりする危険性を低減することができる。また、本発明の施設内誘導システムは、電動車両と記録媒体だけで実現可能であるため、システム導入時およびシステム稼動に伴う維持管理費など、施設側のコスト負担を軽減することができる。また、電動車両を利用する利用者も、記録媒体を読み取らせるだけの簡単操作で良いため、利便性が良い。
【0010】
上記に記載の電動車両において、投写表示部は、床面および壁面の少なくとも一方を投写面として、投写表示を行うことが好ましい。
【0011】
この構成によれば、床面や壁面を投写面とすることにより、周囲の人物に分かり易く電動車両の移動方向を示すことができる。また、スクリーンなどの投写媒体を必要としないため、投写方向や投写サイズの制約が少なく投写制御が容易である。
【0012】
上記に記載の電動車両において、投写表示部は、車両本体の移動中、車両本体の移動方向前方および後方の床面に対して投写表示を行うことが好ましい。
【0013】
この構成によれば、電動車両の前方を歩行している人物および電動車両の後方を歩行している人物の双方に対して、電動車両の移動方向を示すことができる。つまり、電動車両の周囲に存在する全ての人物に対して、もれなく注意を促すことができる。
【0014】
上記に記載の電動車両において、投写表示部は、エレベーター待ちの状態において、その旨のメッセージを壁面に対して投写表示することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、電動車両がエレベーター待ちの状態であることを、周囲の人物および利用者に対して示すことができる。
【0016】
上記に記載の電動車両において、車両本体の周囲における人物の有無を検出する人物検出部をさらに備え、投写表示部は、エレベーター待ちの状態において、人物検出部により人物が検出された場合、当該人物が検出された方向に位置する壁面への投写を禁止することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、周囲の人物に対して投写してしまい(人体を投写面の一部として投写するなど)、その人物に不快な思いをさせてしまうといった不具合がない。
【0018】
上記に記載の電動車両において、移動制御部は、投写表示部による投写を開始した後、移動を開始することが好ましい。
【0019】
例えば、投写表示と移動開始とを同じタイミングとした場合、周囲の人物が車両本体の移動方向を把握することができず、つまずいたり転倒したりする危険性がある。この構成によれば、移動開始前に投写表示を行うため、そのような危険性を低減することができる。また、電動車両が利用者の意図しない方向に突然移動開始することによる、利用者の精神的な動揺も軽減することができる。
【0020】
上記に記載の電動車両において、移動制御部により特定された現在位置と、移動情報に基づいて、音声案内を行う音声案内部をさらに備え、音声案内部は、少なくとも移動開始時および移動停止時に音声案内を行うことが好ましい。
【0021】
この構成によれば、移動開始時および移動停止時(進行開始時および進行停止時)に音声案内を行うことで、周囲の人物および利用者に対して、その旨を知らせることができる。これにより、電動車両が突然移動開始および移動停止することによる、周囲の人物の危険性を低減できると共に、利用者の精神的な動揺を軽減することができる。
【0022】
上記に記載の電動車両において、移動情報は、車両本体を施設内の所定場所から目的の部屋まで往復移動させるための情報であることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、記録媒体を1回読み取らせるだけで、所定場所(例えば、施設の受付場所)から目的の部屋までの往復の自動搬送を実現させることができる。
【0024】
上記に記載の電動車両において、目的の部屋が複数存在する場合、部屋情報には、各部屋への移動順序を示す情報が含まれ、移動制御部は、各部屋への到着を判別した場合、移動順序にしたがって、到着した部屋から次の部屋に向けて車両本体を移動させることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、記録媒体を1回読み取らせるだけで、例えば、病院内のレントゲン室、診察室、処置室など、複数の部屋への自動搬送を実現させることができる。
【0026】
本発明の他の施設内誘導システムは、施設内において、目的の部屋まで人物を搬送する1以上の電動車両と、1以上の電動車両と通信可能に構成された施設内サーバーと、を備えた施設内誘導システムであって、電動車両は、目的の部屋を特定するための部屋情報が記録された記録媒体を読み取る記録媒体読み取り部と、部屋情報を施設内サーバーに送信する情報送信部と、施設内サーバーから、車両本体を目的の部屋まで移動させるための移動情報を受信する移動情報受信部と、移動情報に基づいて、車両本体を移動させる移動制御部と、移動制御部により特定された現在位置と、移動情報に基づいて、車両本体の移動方向を投写表示する投写表示部と、を備え、施設内サーバーは、電動車両から受信した部屋情報に基づいて、移動情報を生成する移動情報生成部と、生成した移動情報を電動車両に送信する移動情報送信部と、を備えたことを特徴とする。
【0027】
本発明の他の施設内誘導方法は、施設内において、目的の部屋まで人物を搬送する1以上の電動車両と、1以上の電動車両と通信可能に構成された施設内サーバーと、を備えた施設内誘導システムによる施設内誘導方法であって、電動車両が、目的の部屋を特定するための部屋情報が記録された記録媒体を読み取る記録媒体読み取りステップと、部屋情報を施設内サーバーに送信する部屋情報送信ステップと、施設内サーバーが、電動車両から受信した部屋情報に基づいて、電動車両を目的の部屋まで移動させるための移動情報を生成する移動情報生成ステップと、生成した移動情報を電動車両に送信する移動情報送信ステップと、電動車両が、施設内サーバーから、移動情報を受信する移動情報受信ステップと、移動情報に基づいて、車両本体を移動させながら、車両本体の移動方向を床面に投写表示する搬送ステップと、を実行することを特徴とする。
【0028】
これらの構成によれば、車両本体の移動方向を投写表示するため、周囲の人物が電動車両の移動方向(進行方向)を把握することができる。これにより、周囲の人物がつまずいたり転倒したりする危険性を低減することができる。また、施設内サーバーが移動情報を生成し、各電動車両は、施設内サーバーから受信した移動情報に基づいて移動制御および投写制御するだけで良いため、各電動車両に高性能の制御装置を必要としない。また、施設内サーバーで集中管理ができるため、メンテナンスが容易である。また、電動車両を利用する利用者も、記録媒体を読み取らせるだけの簡単操作で良いため、利便性が良い。
【0029】
上記に記載の施設内誘導システムにおいて、部屋情報送信部は、部屋情報と共に、車両本体の現在位置を示す現在位置情報を施設内サーバーに送信し、施設内サーバーは、各部屋の位置情報が記録された施設内マップを記憶する施設内マップ記憶部をさらに備え、移動情報生成部は、電動車両から受信した部屋情報、現在位置情報および施設内マップに基づいて、移動情報を生成することが好ましい。
【0030】
この構成によれば、施設内サーバーは、任意の場所(電動車両の現在位置)からの移動情報を生成することができる。これにより、例えば、何らかの原因で電動車両が停止してしまったり、移動ルートから外れてしまったりした場合でも、支障なく移動を再開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態に係る病院内誘導システムの構成を示すブロック図である。
【図2】電動車椅子の側面図および正面図である。
【図3】電動車椅子による床面への投写表示例を示す図である。
【図4】電動車椅子による壁面への投写表示例を示す図である。
【図5】電動車椅子の磁気センサーを利用した自動搬送と、当該自動搬送に伴う床面への投写表示例を示す図である。
【図6】電動車椅子の一連の動作を示すフローチャートである。
【図7】図6のサブフローであり、電動車椅子の搬送時における動作を示すフローチャートである。
【図8】電動車椅子の無線通信を利用した自動搬送と、当該自動搬送に伴う床面への投写表示例を示す図である。
【図9】第2実施形態に係る病院内誘導システムのシステム構成図である。
【図10】第2実施形態に係る病院内誘導システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[第1実施形態]
以下、本発明の電動車両、施設内誘導システムおよび施設内誘導方法について、図面を参照しながら説明する。本実施形態では、病院内で利用される施設内誘導システムを例示する。図1は、第1実施形態に係る病院内誘導システムSY1(施設内誘導システム)の構成を示すブロック図である。本実施形態では、電動車両として、電動車椅子1を例示する。同図に示すように、病院内誘導システムSY1は、病院内において、患者(人物,以下、「利用者5」とも称する)を自動搬送するための電動車椅子1と、個々の患者に提供される診察券2(記録媒体)と、を備えている。患者は、病院に到着すると、不図示の受付端末に診察券2を挿入する。このとき受付端末では、当該診察券2に、診察情報(部屋情報)を書き込む。診察情報とは、患者の行き先となる検査室や診察室などの部屋コードと、その移動順序と、を含む情報である。同図の例では、受付場所(電動車椅子1の待機場所)から、まず部屋コード「0035」の部屋に行って、検査・診察・処置などを受けた後、部屋コード「0049」の部屋に移動する。その後、さらに部屋コード「0051」の部屋に行って、その日の診察が完了することを意味している。患者は、この診察情報が書き込まれた診察券2を、電動車椅子1の診察券挿入口11に挿入し、読み取らせることで、自動搬送サービスを受けることができる。このように、本実施形態の受付操作および電動車椅子1の自動搬送は、受付端末に診察券2を挿入するだけの簡単操作となっている。
【0033】
なお、診察情報は、磁気情報であっても良いし、電子情報であっても良い。また、バーコードや2次元コードなどのコード画像であっても良い。また、電子情報やコード画像などの場合は、診察券2を挿入するのではなく、非接触で読みとらせることが可能である。さらに、電子情報の場合は、赤外線通信や短距離無線通信などの無線通信を用いて診察情報を書き込んでも良い。また、診察情報を書き込む媒体としては、診察券2ではなくカルテ(図示省略)でも良い。この場合は、カルテを、所定の挿入口に挿入し、電動車椅子1に読み取らせる。また、診察券2やカルテを読み取らせるのではなく、電動車椅子1に、部屋コードを入力するための入力部を搭載し、患者自身で直接部屋コードを入力する構成としても良い。
【0034】
続いて、電動車椅子1の構成について説明する。電動車椅子1は、診察券挿入口11、人物検出部12、操作部13、タイヤ14、磁気センサー17、記録媒体読み取り部18、移動情報生成部19、移動制御部20、投写表示部21、音声案内部22、病院内マップ記憶部23(施設内マップ記憶部)および無線通信部24を有している。
【0035】
診察券挿入口11は、診察券2の挿入口である。人物検出部12は、電動車椅子1の周囲における人物の有無を検出するものであり、人感センサー(赤外線センサー)などによって実現される。本実施形態では、主に電動車椅子1の移動方向前方における人物の有無を検出する。操作部13は、患者自身が電動車椅子1の操作を行うためのものである。なお、電動車椅子1の故障時や、火事などの緊急時には、当該操作部13の操作によって、マニュアル走行が可能である。
【0036】
タイヤ14は、一対の前輪14aおよび一対の後輪14bから成り(図2参照)、移動制御部20によって駆動制御される。磁気センサー17は、病院内の通路60(電動車椅子1の走行路)上またはその床内に、略等間隔で配置された発磁体61を検出する(図5参照)。記録媒体読み取り部18は、診察券挿入口11に挿入された診察券2を読み取り、診察情報を取得する。なお、記録媒体読み取り部18は、磁気リーダー、ICタグリーダー、コードリーダーなどを採用可能である。病院内マップ記憶部23は、病院内の各部屋の位置情報、エレベーターの位置情報、受付場所の位置情報、並びに通路情報(曲がり角の曲率、通路幅、発磁体61の位置)などが記録された病院内マップを記憶している。
【0037】
移動情報生成部19は、取得した診察情報に基づいて、電動車椅子1を目的の部屋まで移動させるための移動情報を生成する。ここで、移動情報とは、電動車椅子1を病院内の受付場所(所定場所)から目的の部屋まで往復移動させるための情報である。また、上記のとおり、診察情報に複数の部屋コードが含まれている場合は、各部屋コードに関連付けられている移動順序に従って各部屋を順に回り、最終的に受付場所に戻るまでの移動情報を生成する。なお、移動情報生成部19は、病院内マップ記憶部23に記憶されている病院内マップ(施設内マップ)と、各部屋コードとを照合して、各部屋コードの部屋が、病院内のどこに位置するのかを判定し、電動車椅子1の移動ルートを決定する。また、この移動ルートにしたがって、直進、右左折、移動停止(エレベーターの搭乗など)などの情報を含む移動情報を生成する。
【0038】
移動制御部20は、移動情報に基づいて、タイヤ14を駆動制御することにより、電動車椅子1を移動させる。なお、移動制御部20は、人物検出部12により移動方向前方に人物(障害物を含む)が検出された場合、一旦停止するか、それを退避するように移動制御を行う。また、操作部13によりマニュアル走行操作が行われた場合は、それに従う。また、移動制御部20は、磁気センサー17の検出結果に基づいて、発磁体61に沿った走行を行う。また、発磁体61から取得した位置情報に基づいて、電動車椅子1の現在位置を特定し、当該現在位置と移動情報とを照合しながら、タイヤ14の回転量、回転速度および進行方向を制御する。
【0039】
投写表示部21は、小型のプロジェクター15を有し、移動制御部20と連動して電動車椅子1の移動方向を投写表示する。具体的には、移動制御部20によって特定された現在位置と、移動情報に基づいて、投写すべき投写画像I(直進や右左折を示す矢印画像,図3参照)を決定し、当該投写画像Iを、電動車椅子1の移動方向前方および後方に投写する。これにより、電動車椅子1の周囲の人物および患者に対して、注意喚起を行うことができる。なお、プロジェクター15の表示方式は、液晶表示方式、CRT表示方式およびライトスイッチ表示方式(マイクロミラーデバイス方式)などを採用可能である。
【0040】
音声案内部22は、スピーカー16を有し、移動制御部20と連動して(移動制御部20によって特定された現在位置と、移動情報に基づいて)電動車椅子1の移動に関する音声案内を行う。本実施形態では、主に電動車椅子1の移動開始時および移動停止時に、その旨の音声案内を行う。これにより、電動車椅子1が突然移動開始したり移動停止したりすることによる、周囲の人物の危険性を低減できると共に、患者の精神的な動揺を軽減することができる。
【0041】
無線通信部24は、エレベーターの昇降制御装置(図示省略)と無線通信を行うためのものである。電動車椅子1は、エレベーター待ちの状態において、昇降制御装置に対し、その階への着床を指令すると共に、着床時にはその旨を示す情報を受信してエレベーターに搭乗する。これにより、患者が何ら操作を行うことなく、エレベーターに搭乗することが可能である。なお、通信手段は、近距離無線通信であっても良いし、赤外線通信であっても良い。
【0042】
次に、図2を参照し、電動車椅子1の本体構造について説明する。同図(a)は、電動車椅子1を左側から見た側面図であり、同図(b)は、電動車椅子1の正面図である。両図に示すように、電動車椅子1は、ジョイスティック13aを備えた操作部13、ジョイスティック13aの下側且つ患者側に設けられた診察券挿入口11、ジョイスティック13aの下側右側部に設けられたスピーカー16、ジョイスティック13aの下側前方に設けられた無線通信部24、走行輪を構成する前輪14aおよび後輪14b、患者が着座する座席シート31、背もたれ部分に相当するバックサポート32、バックサポート32の上端後側に設けられた左右一対の介助用把持部材33r,33l、肘置きとなる左右一対のアームレスト34r,34l、足置きとなるフットレスト35、フットレスト35の先端に設けられた左右一対の足掛け部36r,36l、フットレスト35の下端部に設けられた磁気センサー17、足掛け部36r,36lの下端部左右中央付近に取り付けられた前方プロジェクター15a、座席シート31を支持する支持フレーム37の後端部左右中央付近に設けられた後方プロジェクター15b、左右一対のアームレスト34r,34lをそれぞれ支持する支持部材38r,38l、支持部材38r,38lの前方下端部にそれぞれ設けられた左右一対の人物検出部12r,12l(人感センサー)を備えている。
【0043】
前方プロジェクター15aは、その投写レンズが電動車椅子1の前方に向くように一対の吊り下げ金具39を介して吊り下げられている。また、前方プロジェクター15aは、レンズシフトにより、床面および正面の壁面に向けた投写が可能である。また、後方プロジェクター15bは、その投写レンズが電動車椅子1の後方に向くように固定設置されている。後方プロジェクター15bは、壁面投写が不要であるため、必ずしもレンズシフト機能を有する必要はない。
【0044】
なお、各部材の配置は、同図の例に限られるものではない。例えば、前方プロジェクター15aを足掛け部36r,36lの左右いずれかの端部に固定配置しても良いし、後方プロジェクター15bを支持フレーム37の後端部下側に吊り下げても良い。
【0045】
次に、図3および図4を参照し、プロジェクター15から投写される投写画像Iについて説明する。図3は、床面に向けて投写される投写画像Ia,Ibの一例を示す図である。同図(a)は、電動車椅子1が直進している状態で投写される投写画像Ia,Ibを示したものであり、同図(b)は、電動車椅子1が右折する直前および右折中に投写される投写画像Ia,Ibを示したものである。両図に示すように、前方プロジェクター15aおよび後方プロジェクター15bから投写される投写画像Ia,Ibは、同一画像であり、電動車椅子1の前方を歩行している人物および電動車椅子1の後方を歩行している人物の双方、すなわち周囲に存在する全ての人物に対して、移動方向を明示する。また、前方プロジェクター15aから投写される投写画像Iaは、利用者5も視認可能であるため、利用者5に対して、移動方向を示す役割もある。投写画像Ia,Ibの画像データは、予め電動車椅子1内に設けられたメモリ(図示省略)内に格納されており、投写表示部21は、複数の画像データ(複数の移動方向を示す画像データ)の中から選択的に1の画像データを投写する。
【0046】
なお、同図の例では、矢印で移動方向を示しているが、文字や記号を用いて移動方向を示しても良い。また、進行方向に応じて投写画像Ia,Ibの色や大きさを可変しても良い。さらに、床面の色や周囲の光量(明るさ)に応じて、プロジェクター15の輝度を調節したり、投写画像Ia,Ibの色を可変したりしても良い。さらに、左右のレンズシフト機能を利用し、右折時には右側にレンズシフトし、左折時には左側にレンズシフトさせるなど、右左折に応じて投写位置を可変しても良い。
【0047】
図4は、壁面に向けて投写される投写画像Icの一例を示す図である。本実施形態では、エレベーター待ちの状態において壁面表示を行う。この場合、前方プロジェクター15aにより、エレベーターの扉50を投写面として投写する。このように、エレベーター待ちの状態で投写を行うことで、周囲の人物に対して注意を促すことができる。また、電動車椅子1が停止している理由を、利用者5に対して示すことができる。
【0048】
なお、同図において符号51は、エレベーターの昇降制御装置と無線通信を行うためのエレベーター用通信アンテナである。電動車椅子1は、無線通信部24により、エレベーター用通信アンテナ51と通信し、着床指令(行き先階を指定する行き先階情報の送信)を行う。これにより、戸開き、戸閉め、出発などエレベーターの一連の動作を自動制御することができる。また、電動車椅子1(投写表示部21)は、人物検出部12により、電動車椅子1の前方に人物の存在を検出した場合、投写画像Icの投写を禁止する。これにより、電動車椅子1の前方に居る人物に対して投写を行うなど、他の患者に不快な思いをさせることを防止できる。
【0049】
次に、図5を参照し、電動車椅子1の磁気センサー17を利用した自動搬送と、当該自動搬送に伴う床面への投写表示について説明する。上記のとおり、病院内の通路60には、略等間隔で発磁体61が配置されており、電動車椅子1は、障害物を検知した場合を除き、当該発磁体61に沿って走行する。同図は、電動車椅子1が、図示の位置から最初の角を左折し、その後次の角を右折して進行する場合を例示している。また、点線矢印は、その付近を通過する際に投写される投写画像Iを示している。つまり、同図に示す例の場合、電動車椅子1(投写表示部21)は、最初の角に至るまで、直進を示す矢印の投写画像Iを投写し、左折位置の直前から左折終了まで、左折を示す矢印の投写画像Iを投写する。電動車椅子1が左折した後は、次の角に至るまで、直進を示す矢印の投写画像Iを投写し、右折位置の直前から右折終了まで、右折を示す矢印の投写画像Iを投写する。電動車椅子1が右折した後は、再度直進を示す矢印の投写画像Iを投写する。このように、投写表示部21は、電動車椅子1の走行中、移動方向を示す投写画像Iを常に投写し続ける。
【0050】
次に、図6および図7を参照し、電動車椅子1の一連の動作を説明する。なお、図6のフローチャートにおいて点線枠は、利用者5の操作を伴う工程であることを意味している。図6に示すように、電動車椅子1は、利用者5により診察券挿入口11に診察券2が挿入され(S11)、不図示の電源ボタンがONされると(S12)、診察券2から診察情報を取得する(S13)。また、取得した診察情報に基づいて移動情報を生成し(S14)、i番目(i=1、2・・・)の部屋までの搬送を行う(S15)。当該搬送工程では、移動制御部20の制御に伴って、投写表示部21による投写表示と、音声案内部22による音声案内を行う(図7にて詳述する)。
【0051】
i番目の部屋までの搬送を終えると、診察情報に含まれる全ての部屋コードに対応する全ての部屋を回ったか否かを判別し(S16)、全ての部屋を回り終えていない場合は(S16:No)、iをカウントアップして(S17)、次の部屋までの搬送を行う(S15)。一方、全ての部屋を回り終えた場合は(S16:Yes)、最後の部屋から受付場所までの搬送を行う(S18)。当該搬送工程でも、S15と同様に、投写表示および音声案内を行う。
【0052】
次に、図7を参照し、図6のフローチャートのS15およびS18に相当する搬送時の動作について説明する。電動車椅子1は、まず行き先の床面表示を行う(S21)。ここでは、前方プロジェクター15aにより、例えば「○階の○○診察室へ向かいます」などのテキストメッセージを表示する。続いて、移動方向の床面表示を開始すると共に音声案内を行う。床面表示としては、例えば図5に示した例の場合、直進を示す矢印の投写画像Iを前方プロジェクター15aおよび後方プロジェクター15bにより投写する。また、音声案内としては、「移動を開始します。」などの音声メッセージをスピーカー16から出力する。
【0053】
その後(床面表示または音声案内から所定時間経過後)、電動車椅子1は、移動を開始する(タイヤ14の駆動を開始する,S23)。移動中は、移動情報および磁気センサー17の検出結果に応じて、移動方向に変更があるか否かを判別し(S24)、変更がある場合は(S24:Yes)、床面表示の移動方向を切り替える(S25)。また、変更がない場合は(S24:No)、S25を省略する。
【0054】
続いて、電動車椅子1は、目的の場所(目的の部屋または受付場所)に到着したか否かを判別し(S26)、到着した場合は(S26:Yes)、搬送動作を終了する。なお、目的の部屋に到着した後、電動車椅子1の電源ボタンがOFFされた場合は、再度電源ボタンがONされたときに、S21において最初の目的の部屋(1番目の部屋)が行き先として表示される。このため、表示された行き先が異なる場合は、操作部13により、2番目の部屋、3番目の部屋を行き先として変更する必要がある。
【0055】
一方、目的の場所に到着していない場合は(S26:No)、エレベーター前に到着したか否かを判別する(S27)。到着していない場合は(S27:No)、S24以降を繰り返す。エレベーター前に到着した場合は(S27:Yes)、移動停止する旨の音声案内と共に、前方プロジェクター15aによりエレベーター待ちの壁面表示(図4参照)を行う(S28)。なお、フローチャートには特に記載しないが、この時点で、無線通信部24によりエレベーター用通信アンテナ51に向けて、行き先階情報の送信を行う。また、エレベーター待ちを行っている間は、前方に人物が存在するか否かを判別し(S29)、存在する場合には(S29:Yes)、壁面表示を停止する(S30)。また、存在しない場合は(S29:No)、S30を省略する。その後、エレベーターが着床したか否かを判別し(S31)、着床した場合は(S31:Yes)、エレベーターに搭乗するため移動を開始する旨の音声案内と共に、壁面表示を終了し(S32)、S22に戻る。すなわち、エレベーターから下りた後も、移動方向の床面表示開始後(S22)、移動を開始することとなる(S23)。また、エレベーターが着床していない場合は(S31:No)、着床するまでS28以降を繰り返す。
【0056】
以上説明したとおり、本発明の第1実施形態によれば、電動車椅子1が、その自動搬送中において移動方向を投写表示するため、周囲の人物が電動車椅子1の移動方向を把握することができる。これにより、電動車椅子1の移動によって、周囲の人物がつまずいたり転倒したりする危険性を低減することができる。また、本実施形態の病院内誘導システムSY1は、電動車椅子1と診察券2だけで実現可能であるため、システム導入時およびシステム稼動に伴う維持管理費など、病院側のコスト負担を軽減することができる。また、電動車椅子1を利用する利用者5も、診察券2を読み取らせるだけの簡単操作で良いため、利便性が良い。
【0057】
また、投写表示部21は、床面や壁面を投写面として投写するため、周囲の人物に分かり易く電動車椅子1の移動方向を示すことができる。また、スクリーンなどの投写媒体を必要としないため、投写方向や投写サイズの制約が少なく投写制御が容易である。また、移動制御部20は、投写表示部21による投写を開始した後、移動を開始するため、電動車椅子1が突然移動開始したことによる、周囲の人物の危険性や利用者5の精神的な動揺を軽減することができる。
【0058】
また、移動情報生成部19は、移動情報として、電動車椅子1を受付場所から目的の部屋まで往復移動させるための情報を生成するため、利用者5は、診察券2を1回読み取らせるだけの簡単操作で、往復の自動搬送を実現させることができる。また、目的の部屋が複数存在する場合は、移動順序にしたがって各部屋を移動させることができるため、さらに利便性が良い。
【0059】
なお、上記の実施形態では、発磁体61をセンシングしながら自動搬送を行うものとしたが、図8に示すように、ガイドポスト62と通信を行いながら自動搬送を行っても良い。この場合、ガイドポスト62は、病院内の通路60上またはその天井などに略等間隔で設けられ、それぞれ異なるポストIDが付与されている。この場合、電動車椅子1(移動制御部20)は、無線通信部24により取得したポストIDおよび電波強度に応じて、現在位置を特定し、タイヤ14の駆動制御を行う。この構成によれば、磁気センサー17を省略可能であるため、電動車椅子1のコスト軽減を図ることができる。また、床面に発磁体61を配置したり埋め込んだりする必要がないため、システム導入が容易である。
【0060】
また、通路60上に発磁体61やガイドポスト62を配置するのではなく、電動車椅子1にジャイロセンサーなど進行方向を検知するセンサーを搭載し、当該検知に基づいて、現在位置を特定しても良い。また、発磁体61やガイドポスト62と共にジャイロセンサーを利用し、より正確に現在位置を特定できるようにしても良い。
【0061】
[第2実施形態]
次に、図9および図10を参照し、本発明の第2実施形態について説明する。上記の実施形態では、移動情報を電動車椅子1によって生成したが、本実施形態では、病院内サーバー7(施設内サーバー)によって生成する点で異なる。以下、第1実施形態と異なる点のみ説明する。なお、本実施形態において、第1実施形態と同様の構成部分については同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と同様の構成部分について適用される変形例は、本実施形態についても同様に適用される。
【0062】
図9は、第2実施形態に係る病院内誘導システムSY2のシステム構成図である。本実施形態の病院内誘導システムSY2は、電動車椅子1と、診察券2と、病院内サーバー7と、受付場所に配置された通信アンテナ8と、病院内サーバー7と通信アンテナ8とを接続するイントラネットなどのネットワークNTと、を備えている。電動車椅子1は、受付場所にて、病院内サーバー7から通信アンテナ8を介して移動情報を受信し、当該移動情報に基づいて自動搬送を行う。
【0063】
なお、通信アンテナ8を、病院内の通路60上またはその天井などに略等間隔で設け、それぞれ異なるIDを付与することで、図8に示したガイドポスト62として利用することが可能である。
【0064】
次に、図10を参照し、電動車椅子1および病院内サーバー7の構成について説明する。同図に示すように、病院内サーバー7は、病院内マップ記憶部71、診察情報受信部72、移動情報生成部73および移動情報送信部74を有している。
【0065】
病院内マップ記憶部71は、第1実施形態の病院内マップ記憶部23に相当し、病院内の各部屋の位置情報や通路情報などが記録された病院内マップを記憶している。診察情報受信部72は、通信アンテナ8を介して、電動車椅子1が読み取った診察情報と、電動車椅子1の現在位置を示す現在位置情報と、を受信する。現在位置情報とは、発磁体61から取得した位置情報や、ガイドポスト62から読み取ったポストIDに基づく情報である。
【0066】
移動情報生成部73は、第1実施形態の移動情報生成部19に相当し、受信した診察情報に基づいて、電動車椅子1を目的の部屋まで移動させるための移動情報を生成する。なお、本実施形態の移動情報生成部73は、受信した現在位置情報に基づいて、電動車椅子1を、受付場所からではなく現在位置から移動させるための情報を生成する。これにより、電動車椅子1は、病院内サーバー7から受信した移動情報に基づいて、病院内の任意の場所から移動を開始することができる。移動情報送信部74は、移動情報生成部73により生成された移動情報を、電動車椅子1に対し、通信アンテナ8を介して送信する。
【0067】
一方、電動車椅子1は、第1実施形態と比較して、移動情報生成部19が省略された構成となっている。また、本実施形態の無線通信部24は、病院内サーバー7に対して診察情報を送信する診察情報送信部24a、並びに病院内サーバー7から移動情報を受信する移動情報受信部24bとして機能する。この構成により、本実施形態の電動車椅子1は、診察券2から読み取った診察情報を、診察情報送信部24aにより病院内サーバー7に送信する。その後、病院内サーバー7によって生成された移動情報を移動情報受信部24bにより受信し、当該移動情報に基づいて、移動制御部20による移動制御、並びに投写表示および音声案内を行う。
【0068】
以上説明したとおり、本発明の第2実施形態によれば、病院内サーバー7が移動情報を生成し、各電動車椅子1は、病院内サーバー7ーから受信した移動情報に基づいて移動制御するだけで良いため、各電動車椅子1に高性能の制御装置を必要としない。また、病院内サーバー7で集中管理ができるため、メンテナンスが容易である。
【0069】
また、病院内サーバー7は、電動車椅子1から受信した診察情報および現在位置情報と、病院内マップとに基づいて移動情報を生成するため、任意の場所(電動車椅子1の現在位置)を始点とした移動情報を生成することができる。これにより、例えば、何らかの原因で電動車椅子1が停止してしまったり、移動ルートから外れてしまったりした場合でも、支障なく移動を再開することができる。
【0070】
以上、2つの実施形態を示したが、投写表示について、以下の変形例が考えられる。例えば、上記の実施形態では、電動車椅子1の走行中に床面表示を行い、電動車椅子1の停止中(エレベーター待ちの状態)において壁面表示を行うものとしたが、走行中に壁面表示を行っても良いし、停止中に床面表示を行っても良い。但し、壁面表示については、走行中であっても、人物の存在を検出した場合は、その方向への投写を中止することが好ましい。
【0071】
また、上記の実施形態では、電動車椅子1の走行中、常に投写画像Iを投写し続けるものとしたが、所定時間間隔で投写を行っても良い。つまり、時間間隔の長い点滅状態で投写画像Iを投写しても良い。また、移動方向が切り替わるときのみ、投写画像Iを投写しても良い。さらに、操作部13により、所定の操作が行われたときのみ投写したり、所定の操作が行われたときのみ投写しなかったりしても良い。
【0072】
また、上記の各実施形態では、投写画像Iとして、移動方向やメッセージを投写したが、移動情報生成部19,73により、目的の場所までの所要時間や到着予定時刻を算出し、それらを投写画像Iに含めて投写しても良い。この構成によれば、目的の場所までの移動にどの位の時間がかかるのかを利用者5が把握することができるため、安心して乗車することができる。
【0073】
また、エレベーター待ちの壁面表示を行う際は、昇降制御装置との通信結果に基づいて、エレベーターの待ち時間(あと何秒で、エレベーターが着床するか)を投写画像Icの一部に投写しても良い。この構成によれば、電動車椅子1の利用者5および周囲の人物が、エレベーターの待ち時間を知ることができ、利便性が良い。
【0074】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。例えば、上記の各実施形態では、病院内で利用される病院内誘導システムSY1,SY2を例示したが、公共施設や学校など他の施設に適用しても良い。特に、部屋数や階数の多い施設への適用が効果的である。また、上記の各実施形態では、電動車両として、電動車椅子1を例示したが、電動カートやシニアカーなど他の福祉用電動車両に本発明を適用しても良い。ここで言う、電動カートやシニアカーとは、スクーターや小型4輪車のような外見を有する電動車両を指す。この場合、前輪付近またはフロントバンパーに、前方プロジェクター15aを搭載し、後輪付近またはリアバンパーに、後方プロジェクター15bを搭載することが好ましい。
【0075】
また、上記の各実施形態に示した病院内誘導システムSY1,SY2における各部をプログラムとして提供することが可能である。また、そのプログラムを記録媒体(図示省略)に格納して提供することも可能である。すなわち、コンピューターを、本実施形態の病院内誘導システムSY1,SY2の各部として機能させるためのプログラム、およびそれを記録した記録媒体も、本発明の権利範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1…電動車椅子 2…診察券 5…利用者 7…病院内サーバー 8…通信アンテナ 11…診察券挿入口 12…人物検出部 13…操作部 15…プロジェクター 16…スピーカー 17…磁気センサー 31…座席シート 32…バックサポート 34…アームレスト 35…フットレスト 38…支持部材 50…扉 51…エレベーター用通信アンテナ 60…通路 61…発磁体 62…ガイドポスト I…投写画像 SY…病院内誘導システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内において、目的の部屋まで人物を搬送する電動車両であって、
前記目的の部屋を特定するための部屋情報が記録された記録媒体を読み取る記録媒体読み取り部と、
前記部屋情報に基づいて、車両本体を前記目的の部屋まで移動させるための移動情報を生成する移動情報生成部と、
前記移動情報に基づいて、前記車両本体を移動させる移動制御部と、
前記移動制御部により特定された現在位置と、前記移動情報に基づいて、前記車両本体の移動方向を投写表示する投写表示部と、を備えたことを特徴とする電動車両。
【請求項2】
前記投写表示部は、床面および壁面の少なくとも一方を投写面として、投写表示を行うことを特徴とする請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記投写表示部は、前記車両本体の移動中、前記車両本体の移動方向前方および後方の床面に対して投写表示を行うことを特徴とする請求項2に記載の電動車両。
【請求項4】
前記投写表示部は、エレベーター待ちの状態において、その旨のメッセージを壁面に対して投写表示することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項5】
前記車両本体の周囲における人物の有無を検出する人物検出部をさらに備え、
前記投写表示部は、エレベーター待ちの状態において、前記人物検出部により人物が検出された場合、当該人物が検出された方向に位置する前記壁面への投写を禁止することを特徴とする請求項4に記載の電動車両。
【請求項6】
前記移動制御部は、前記投写表示部による投写を開始した後、移動を開始することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項7】
前記移動制御部により特定された現在位置と、前記移動情報に基づいて、音声案内を行う音声案内部をさらに備え、
前記音声案内部は、少なくとも移動開始時および移動停止時に音声案内を行うことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項8】
前記移動情報は、前記車両本体を前記施設内の所定場所から前記目的の部屋まで往復移動させるための情報であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項9】
前記目的の部屋が複数存在する場合、前記部屋情報には、各部屋への移動順序を示す情報が含まれ、
前記移動制御部は、各部屋への到着を判別した場合、前記移動順序にしたがって、前記到着した部屋から次の部屋に向けて前記車両本体を移動させることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の電動車両。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の電動車両と、
前記記録媒体と、を備えたことを特徴とする施設内誘導システム。
【請求項11】
施設内において、目的の部屋まで人物を搬送する1以上の電動車両と、
前記1以上の電動車両と通信可能に構成された施設内サーバーと、を備えた施設内誘導システムであって、
前記電動車両は、
前記目的の部屋を特定するための部屋情報が記録された記録媒体を読み取る記録媒体読み取り部と、
前記部屋情報を前記施設内サーバーに送信する部屋情報送信部と、
前記施設内サーバーから、車両本体を前記目的の部屋まで移動させるための移動情報を受信する移動情報受信部と、
前記移動情報に基づいて、前記車両本体を移動させる移動制御部と、
前記移動制御部により特定された現在位置と、前記移動情報に基づいて、前記車両本体の移動方向を投写表示する投写表示部と、を備え、
前記施設内サーバーは、
前記電動車両から受信した部屋情報に基づいて、前記移動情報を生成する移動情報生成部と、
生成した前記移動情報を前記電動車両に送信する移動情報送信部と、を備えたことを特徴とする施設内誘導システム。
【請求項12】
前記部屋情報送信部は、前記部屋情報と共に、前記車両本体の現在位置を示す現在位置情報を前記施設内サーバーに送信し、
前記施設内サーバーは、
各部屋の位置情報が記録された施設内マップを記憶する施設内マップ記憶部をさらに備え、
前記移動情報生成部は、前記電動車両から受信した前記部屋情報、前記現在位置情報および前記施設内マップに基づいて、前記移動情報を生成することを特徴とする請求項11に記載の施設内誘導システム。
【請求項13】
施設内において、電動車両により、目的の部屋まで人物を搬送する施設内誘導方法であって、
前記電動車両が、
前記目的の部屋を特定するための部屋情報が記録された記録媒体を読み取る記録媒体読み取りステップと、
前記部屋情報に基づいて、車両本体を前記目的の部屋まで移動させるための移動情報を生成する移動情報生成ステップと、
前記移動情報に基づいて、前記車両本体を移動させながら、前記車両本体の移動方向を床面に投写表示する搬送ステップと、を実行することを特徴とする施設内誘導方法。
【請求項14】
施設内において、目的の部屋まで人物を搬送する1以上の電動車両と、
前記1以上の電動車両と通信可能に構成された施設内サーバーと、を備えた施設内誘導システムによる施設内誘導方法であって、
前記電動車両が、前記目的の部屋を特定するための部屋情報が記録された記録媒体を読み取る記録媒体読み取りステップと、
前記部屋情報を前記施設内サーバーに送信する情報送信ステップと、
前記施設内サーバーが、前記電動車両から受信した部屋情報に基づいて、前記電動車両を前記目的の部屋まで移動させるための移動情報を生成する移動情報生成ステップと、
生成した前記移動情報を前記電動車両に送信する移動情報送信ステップと、
前記電動車両が、前記施設内サーバーから、前記移動情報を受信する移動情報受信ステップと、
前記移動情報に基づいて、前記車両本体を移動させながら、前記車両本体の移動方向を床面に投写表示する搬送ステップと、を実行することを特徴とする施設内誘導方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−156057(P2011−156057A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18861(P2010−18861)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】