説明

電動車両の制御装置

【課題】車速を調整するアクセル機構に車両の前進および後進の両方の機能を持たせて操作性を容易にすることができる電動車両の制御装置を提供する。
【解決手段】通常可動域α1と微速可動域α2とでアクセル操作を可能にする。非アクセル操作時にスロットル開度を最小開度側に戻すスロットルバネを有する。スロットル開度に応じてモータを駆動する駆動部を有する。スロットルバネは微速可動域α2の中間位置である微速基準開度SL0までアクセルグリップを付勢してスロットル開度を小さくする。微速可動域α2では、微速基準開度SL0を基準にスロットル開度が大きい領域α2Fでは電動車両を微小車速で前進させる一方、微速基準開度SL0を基準にスロットル開度が小さい領域α2Rでは電動車両を予定の微小車速で後進させるように駆動部にモータ駆動指令を供給する微速制御部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の制御装置に関し、特に、車両の前進および後進が可能な電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前進および後進が可能な車両が開示されている。この従来の車両においては、後進モードを設定するためのモード設定操作スイッチとしての機能と、車両の駆動源であるモータを逆方向に(つまり車両の後進方向に)回転させる機能とを、単一の後進スイッチに持たせている。後進スイッチの長押しによって後進モードを設定したときは、後進スイッチを操作して車両を後進させることができ、かつ、アクセルグリップを操作して車両を前進させることができる。また、特許文献1は、後進モードを設定するためのスイッチを後進スイッチとは別に専用で設ける構成も開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−120597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された車両は、駐車時のように、前進と後進とを繰り返し切り換える必要があるときの操作の煩雑さを解消する目的を有するものであるが、後進時に操作が必要なスイッチが依然として多く、操作の煩雑さをより一層改善する余地がある。
【0005】
本発明の目的は、後進時のスイッチ操作を少なくして操作の煩雑さを一層改善することができる電動車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、通常可動域内で最小開度から第1の方向にスロットル開度を大きくするアクセル操作を可能にするアクセルグリップと、非アクセル操作時にスロットル開度を前記最小開度側に戻すバネ手段を有するアクセル機構と、前記アクセル機構によるスロットル開度に応じてモータを駆動する駆動部とを有する電動車両(例えば鞍乗り型電動車両)の制御装置において、前記最小開度からさらに前記第1の方向とは反対方向の第2の方向に設定した微速可動域と、前記通常可動域および前記微速可動域との間に位置規制手段を設け、前記アクセル機構が、前記最小開度からさらに前記位置規制手段に抗って前記第1の方向とは反対方向の第2の方向に設定した微速可動域までスロットル開度を操作可能に構成されるとともに、前記バネ手段が、前記微速可動域の中間位置である微速基準開度まで前記アクセルグリップを付勢してスロットル開度を小さくするように設定され、前記微速可動域では、前記微速基準開度を基準にスロットル開度が大きい領域では電動車両を予定の微小車速で前進させる一方、前記微速基準開度を基準にスロットル開度が小さい領域では電動車両を予定の微小車速で後進させるように前記駆動部にモータ駆動指令を供給する微速制御部を備えている点に第1の特徴がある。
【0007】
また、本発明は、前記微速制御部が、前記微速基準開度に対するスロットル開度の偏差が大きいほど前進および後進の車速を大きくするように設定したモータ駆動指令を前記駆動部に供給するように構成されている点に第2の特徴がある。
【0008】
また、本発明は、前記微速制御部が、スロットル開度が前記クリープ域にあるときに前記予定の微小車速よりさらに小さいクリープ速度で電動車両を前進または後進させるクリープ制御部を有している点に第3の特徴がある。
【0009】
また、本発明は、前記微速制御部が、電動車両が停車しているときに該電動車両を予定の微車速で前進または後進させるように構成されている点に第4の特徴がある。
【0010】
また、本発明は、前記微速制御部が、スロットル開度が前記微速基準開度に予定時間以上保持されていたときに電動車両を予定の微車速で前進または後進させるように構成されている点に第5の特徴がある。
【0011】
また、本発明は、アクセル操作によって前記位置規制手段を超えてスロットル開度を変化させる際に、アクセル操作に応じて該位置規制手段による規制を解除する解除手段を備えている点に第6の特徴がある。
【0012】
また、本発明は、前記位置規制手段が、前記アクセルグリップ側に設けられるストッパと、スロットル開度が小さくなる方向では前記ストッパに当接する係止部とからなり、前記解除手段が、前記係止部に前記ストッパが当接するのを回避させるため前記ストッパを移動させる係止回避手段を含んでいる点に第7の特徴がある。
【0013】
また、本発明は、前記ストッパおよび前記係止部の外形面のうち、前記スロットル開度が大きくなる方向にアクセル操作したときの互いの当接面が、所定の逃げ角で当接するように勾配を有して形成されている点に第8の特徴がある。
【0014】
また、本発明は、前記微速制御部が、電動車両の傾斜角度に基づいて電動車両が転倒していないことが検出されていないと判断されたときに電動車両を予定の微車速で前進または後進させるように構成されている点に第9の特徴がある。
【0015】
また、本発明は、前記微速制御部が、運転者がシートに着座していないときに電動車両を予定の微車速で前進または後進させるように構成されている点に第10の特徴がある。
【0016】
また、本発明は、電動車両を押し歩き可能な速度を予め設定し、この予め設定された押し歩き速度よりも車速が小さいときに、前記微速制御部が、前記押し歩き速度より小さい微車速で電動車両を前進または後進させるように構成されている点に第11の特徴がある。
【0017】
さらに、本発明は、電動車両を押し歩き可能な速度を予め設定し、この予め設定された押し歩き速度よりも車速が大きいときに、前記微速制御部が、電動車両を停止させるように前記駆動部にモータ駆動指令を供給するように構成されている点に第12の特徴がある。
【発明の効果】
【0018】
第1の特徴を有する本発明によれば、通常可動域から微速可動域まで位置規制手段を超えてアクセルグリップを回転操作して、微速可動域内で、微速基準開度を中心に第1方向および第2方向にアクセルグリップを操作することによって、簡単な操作で電動車両をモータによって微小速度で前後に動かすことができる。微速可動域において微小車速で前進および後進の双方が可能なので、押し歩きや、ハンドルの切り返しを伴う車庫入れもアクセルハンドルの操作のみで簡単に行える。
【0019】
第2の特徴を有する本発明によれば、微速可動域内で、アクセルグリップの操作量に応じて車速を可変することができる。
【0020】
第3の特徴を有する本発明によれば、クリープ域では予定の微小車速よりさらに小さいクリープ速度で電動車両を前進または後進させることができる。
【0021】
第4の特徴を有する本発明によれば、電動車両が停車しているという前提条件のときにアクセルグリップを微速可動域に操作すれば、予定の微車速で前進または後進させることができる。
【0022】
第5の特徴を有する本発明によれば、スロットル開度が微速基準開度に予定時間以上保持されていたときに電動車両を予定の微車速で前進または後進させられるので、誤操作で微速可動域までアクセルグリップ操作をしても、直ちに微速制御に入らない。したがって、運転者の確実な意思によって微速制御を開始することができる。
【0023】
第6の特徴を有する本発明によれば、位置規制手段を超えてスロットル開度を変化させる際に、アクセル操作によって該位置規制手段による規制を解除するので、運転者の確実な意思のもとに微小車速で電動車両を運転することができる。
【0024】
第7の特徴を有する本発明によれば、前記位置規制手段が、係止回避手段を操作によって解除されるので、より確実な運転者の確実な意思のもとに微小車速で電動車両を運転することができる。
【0025】
第8の特徴を有する本発明によれば、微速可動域から通常可動域へスロットル開度が大きくなる方向にアクセル操作したときに前記係止回避手段によらずに当接面の勾配を利用し通常可動域へアクセル操作することができる。
【0026】
第9の特徴を有する本発明によれば、電動車両が転倒しているときはこれを起こそうとしてアクセルグリップに手を添えるか、アクセルグリップを握っていることが想定されるので、アクセルグリップ操作による不必要な微速制御を行わないようにすることができる。
【0027】
第10の特徴を有する本発明によれば、運転者がシートに着座していないときに電動車両を予定の微車速で前進または後進させるようにして押し歩きに対応することができる。
【0028】
第11の特徴を有する本発明によれば、押し歩き速度よりも車速が小さいときに、通常行われる押し歩き速度より小さい微車速で電動車両を前進または後進させられるので、速度に制限を設けることにより、運転者が操作を可能な速度領域で微速制御を行うことができる。
【0029】
第12の特徴を有する本発明によれば、押し歩き速度よりも車速が大きいときに、電動車両を停止させられので、人によって可能な押し歩き速度を超えて電動車両が動かされることがないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動車両におけるアクセルグリップの操作角度と動作モードとの関連を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る制御装置を適用するのに好適な電動車両を示す左側面図である。
【図3】アクセル機構を示すステアリング操作部の要部断面図である。
【図4】図3のA−A位置での断面図であり
【図5】スロットルドラムを電動車両の右側から見た模式図である。
【図6】モータの制御システムを示すブロック図である。
【図7】制御システムの動作を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施形態に係るステアリングハンドルの要部断面図である。
【図9】第2の実施形態に係る電動車両におけるアクセルグリップの操作角度と動作モードとの関連を示す図である。
【図10】第2の実施形態に係る制御システムの動作を示すフローチャートである。
【図11】変形例に係る制御システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る制御装置を備えた電動車両の左側面図である。電動車両1は低床フロアを有するスクータ型二輪車であり、車体フレーム3に各構成部分が直接または他の部材を介して間接的に取り付けられている。車体フレーム3は、ヘッドパイプ31と、ヘッドパイプ31に先端が接合されて後端が下方に延びている前フレーム部分32と、前フレーム部分32から車体幅方向左右にそれぞれ分岐して車体後方寄りに延びている一対のメインフレーム部分33と、メインフレーム部分33から車体上後方に延びているリヤフレーム部分36とからなる。
【0032】
ヘッドパイプ31には、前輪WFを支持するフロントフォーク2が操舵自在に支持される。フロントフォーク2から上部に延長されてヘッドパイプ31で支持されるステアリング軸41の上部には、アクセルグリップを有するステアリングハンドル46が連結される。ステアリングハンドル46には、アクセルグリップの回動角つまりアクセル開度を検知するスロットルセンサ23が設けられる。
【0033】
ヘッドパイプ31の前部にはパイプからなるブラケット37が結合され、このブラケット37の前端部には、ヘッドライト25が取り付けられ、ヘッドライト25の上方にはブラケット37で支持されるフロントキャリア26が設けられる。
【0034】
車体フレーム3の、メインフレーム部分33とリヤフレーム部分36との中間領域に車体後方に向けて延在するブラケット34が接合されており、このブラケット34には、車体幅方向に延在しているピボット軸35が設けられ、このピボット軸35によってスイングアーム17が上下揺動自在に支持される。スイングアーム17には、車両駆動源としてのモータ18が設けられ、モータ18の出力は後輪車軸19に伝達され、後輪車軸19に支持された後輪WRを駆動する。後輪車軸19を含むハウジングとリヤフレーム部分36とは、リヤサスペンション20によって連結される。また、スイングアーム17には、モータ18の回転数を検出する車速センサ30が設けられる。
【0035】
ブラケット34には、停車中に車体を支持するサイドスタンド24が設けられ、サイドスタンド24は、該サイドスタンド24が所定位置に格納されているときに検出信号を出力するサイドスタンドスイッチ28を有する。
【0036】
メインフレーム部分33には、複数のバッテリセルからなる高電圧(例えば72ボルト定格)のメインバッテリ4が搭載され、メインバッテリ4の上部はカバー40で覆われる。メインバッテリ4の前部には、空気導入パイプ38が連結され、メインバッテリ4の後部には吸気ファン39が設けられる。吸気ファン39によって空気導入パイプ38からメインバッテリ4に空気が導入され、この空気はメインバッテリ4を冷却した後、車体後方に排出される。なお、空気導入パイプ38には、図示しないエアクリーナを通して空気を導入するのがよい。
【0037】
リヤフレーム部分36の上にはメインバッテリ4を充電する充電器から延びる充電ケーブル42のプラグ43を結合することができるソケット44が設けられる。リヤフレーム部分36には、さらにリヤキャリヤ29やテールライト27が設けられる。
【0038】
左右一対のリヤフレーム部分36の間には荷室50が設けられ、この荷室50から下部に突出している荷室底部51には、メインバッテリ4で充電される低電圧(例えば、12ボルト定格)のサブバッテリ5が収容される。スイングアーム17には、モータ18を制御するパワー・ドライブ・ユニット(PDU)45が設けられる。
【0039】
荷室50の上には、荷室50の蓋を兼用する運転者シート21が設けられ、運転者シート21には、運転者が着座したときに作動して着座信号を出力するシートスイッチ22が設けられる。なお、例えば、荷室50の底部に、電動車両1の左右方向の傾斜角度を検出する傾斜センサを設けることができる。
【0040】
図3はアクセル機構を示すステアリング操作部の要部断面図である。図3において、パイプからなるステアリングハンドル46の右側端部に配置されるアクセル機構90は、ステアリングハンドル46の外周に遊嵌される金属製のスリーブ49と、スリーブ49のさらに外周を覆うゴム製のグリップカバー52とからなるアクセルグリップ48と、スリーブ49の左側端部に形成されるフランジ53に結合されるスロットルドラム54とを備える。スリーブ49には、前記フランジ53からさらに右側にもう一つのフランジ55が形成される。スリーブ49はステアリングハンドル46の外周面に沿って周方向に回転させることができる。グリップカバー52はスリーブ49の外周面に接着または嵌合される。ステアリングハンドル46の端部にはキャップ56が嵌められる。
【0041】
さらに、アクセル機構90において、スロットルドラム54の左側にはステアリングハンドル46に対してアクセルグリップ48を車体前方側つまり微速可動域側α2(図1等参照)に付勢するためのスロットルバネ57が設けられる(本実施形態では、ねじりコイルばねを使用した例を想定する)。アクセルグリップ48の左側にはスイッチケース58が設けられる。スイッチケース58は、ステアリングハンドル46の周方向で分割される二つの部分からなり、ボルト59、60を使用して一体に組み立てられる。スイッチケース58の右側壁581には、スリーブ49の二つのフランジ53、55に内周部が係合する孔582が形成され、この係合部によって、ステアリングハンドル46の軸方向でのスイッチケース58に対するスリーブ49の動きを規制している。
【0042】
スイッチケース58は、ステアリングハンドル46を貫通するピン61に係合する孔(図示せず)を有しており、この孔とピン61との係合によって、ステアリングハンドル46の周方向および軸方向での位置を規定している。スロットルバネ57の左端はスイッチケース58の左側壁583のボス584に係止され、スロットルバネ57の右端はスロットルドラム54の左側面のボス541に係止される。
【0043】
スロットルドラム54は、一方の面(スリーブ49側の面)に被検出部621を有するフランジ62を有しており、被検出部621には、非接触式センサ(例えば、磁気センサ)からなるスロットルセンサ23が対向して配置される。スロットルセンサ23はスイッチケース58の右側壁581に固定される。
【0044】
スイッチケース58には、スロットルドラム54の回転を通常可動域α1(図1等参照)の車体前方側で規制するストッパ64と、ストッパ64による規制を解除する解除ボタン65とを含む解除装置66が取り付けられる。解除装置66のストッパ64から延びているステム67がスイッチケース58の壁部585を貫通して外側に突出し、この突出部分に解除ボタン65が結合される。スイッチケース58の内側にはステム67を取り囲むバネケース68が設けられ、壁部585の内面に固定される。ステム67にはワッシャ69が一体に取り付けられ、このワッシャ69とバネケース68の底部に設けられる他方のワッシャ70との間には解除ボタン65を初期位置に復帰させる方向に付勢する圧縮コイルバネ(以下、「復帰バネ」という)71が配置される。この復帰バネ71によってワッシャ69が壁部585の内面に押しつけられ、解除ボタン65の最大突出位置(図3に点線で示す)が規定される。
【0045】
ステム67の先端がストッパ64の機能を果たす。つまり、ストッパ64は、スロットルドラム54のフランジ62の外周部で、被検出部621が設けられている面側に突出した係止部72に対して後述する態様で係合する。
【0046】
スイッチケース58に対するステム67の回転止め機構が設けられる。ステム67は横断面を矩形形状にし、ステム67が貫通するスイッチケース58の壁部585の孔およびバネケース68の底部に設けられる孔の少なくとも一方は、ステム67の横断面形状に適合する矩形孔とする。これによって、ステム67が軸回り方向でその回転が規制される。
【0047】
図4は図3のA−A位置での断面図であり、ストッパ64と係止部72との係合関係を示す。係止部72とストッパ64とは、スロットルドラム54の、前方向つまりスロットルバネ57で付勢される方向でそれぞれ対向する係止面721、641を有している。また、係止部72とストッパ64とは、フランジ62の面622に対して勾配θを有する遷移面642、722をそれぞれ備える。
【0048】
さらに、スイッチケース58の内周面には係止部72の面721が当接して微速可動域α2の前方向限界を規定する微速限界ストッパ73(図5参照)が設けられる。運転者は、係止部72が微速限界ストッパ73に当接する位置までアクセルグリップ48を前方向に回すことができる。
【0049】
図5を参照してアクセルグリップ48の動作と電動車両1の動きを説明する。図5はスロットルドラム54を電動車両1の右側から見た模式図である。アクセルグリップ48で回されるスロットルドラム54に係止部72が設けられ、この係止部72と所定位置でそれぞれ係合するストッパ64および微速限界ストッパ73が設けられる。
【0050】
上記構成において、運転者は電動車両1を前進方向に加速する通常運転時にはアクセルグリップ48を通常可動域α1内で操作することができる。係止部72がストッパ64に当接するとスロットルドラム54は、それ以上の車体前方側への動きを停止され、通常可動域α1の車体前方側位置が規定される。そこで、解除ボタン65を押すと、ストッパ64が押し下がられて(スロットルボディ54の中心方向に動かされて)、ストッパ64と係止部72との係合が外れて通常可動域α1の車体前方側位置の規制が解除される。規制が解除されると、アクセルグリップ48はスロットルバネ57によって微速可動域α2内にまで回される。スロットルバネ57は、微速可動域α2内でスロットルバネ57が平衡状態になる位置(微速基準開度SL0)までアクセルグリップ48を付勢する。アクセルグリップ48の位置を、以下、「スロットル開度TH」という。
【0051】
微速可動域α2内では電動車両1を微速で前進または後進させることができる。すなわち、アクセルグリップ48を、微速基準開度SL0からクリープ域αDZを超えて車体前方側の微速後進域α2Rに回すと、微速基準開度SL0を基準にその回転量に応じた微速(例えば、毎時3km以下の車速)で電動車両1が後進するようにモータ18が駆動される。以下、微速基準開度SL0を基準にしたアクセルグリップ48の回動量を、絶対的なスロットル開度THと区別してスロットル微小開度THmとよぶ。
【0052】
係止部72が微速限界ストッパ73に当接する位置までアクセルグリップ48を回すと微速最大値(例えば、毎時3km)で電動車両1は後進される。そして、クリープ域αDZではモータ18は例えば毎時1km程度の車速を目標車速として電動車両1を走行させるように駆動される。
【0053】
一方、微速基準開度SL0からクリープ域αDZを超えて車体後方側の微速前進域α2Fにアクセルグリップ48を回すと微速基準開度SL0を基準にその回転量に応じた微速(例えば、毎時5km以下の車速)で電動車両1が前進するようにモータ18が駆動される。すなわち、係止部72の遷移面722がストッパ64の遷移面642に当接する位置までアクセルグリップ48を戻すと微速最大値(例えば、毎時5km)で電動車両1は前進される。
【0054】
微速可動域α2でアクセルグリップ48が車体後方側の最大位置に回されて係止部72とストッパ64とが遷移面722、642において当接し、その位置からアクセルグリップ48を通常可動域α1側に動作させると、係止部72は遷移面722、642に設けられている勾配θを利用してストッパ64を乗り超えて通常可動域α1に移ることができる。このストッパ64の乗り越えが可能なように、スロットルドラム54は剛性が小さくて撓みやすい樹脂で製作される。
【0055】
図1はステアリングハンドル46の右側に設けられるアクセルグリップの操作角度と動作モードとの関連を示す図である。図1において、通常モードでのステアリングハンドル46に対するアクセルグリップ48の操作範囲(以下、「通常可動域」という)α1が設けられる。通常可動域α1は、一例として87°に設定される。この通常可動域α1で、アクセルグリップ48を図1における反時計方向(以下、「車体後方側」という)に回せば、電動車両1は加速され、アクセルグリップ48を図1における時計方向(以下、「車体前方側」という)に回せば、電動車両1は減速する。
【0056】
アクセルグリップ48は通常可動域α1の最減速角度位置からさらに車体前方側に回すことが可能であり、通常可動域α1から車体前方側にアクセルグリップ48の微速モードでの操作範囲(以下、「微速可動域」という)α2が設けられる。微速可動域α2は例えば角度40°の範囲で設定される。さらに、この微速可動域α2は、車体後方側の角度領域である微速前進域α2Fと車両前方側の角度領域である微速後進域α2Rとを含んでいる。通常可動域α1から微速可動域α2への移行は、ステアリングハンドル46に設けられる解除ボタン65を押して、可動域の制限を解除することによって可能になる。
【0057】
アクセルグリップ48は、スロットルバネ57によって車体前方側にアクセルグリップ48を回転させるように付勢されており、アクセルグリップ48を加速方向つまり車体後方側に回す操作をすると、スロットルバネ57が捻られて、そのねじり量に応じてねじり量を回復させるようにバネ力が生じる。したがって、アクセル開位置でアクセルグリップ48を離すとアクセルグリップ48はこのバネ力で車体前方側に設けられるストッパ64で規制される位置まで回転する。つまり、このストッパによってアクセルグリップ48の通常可動域α1における前方側位置が規定される。
【0058】
解除ボタン65が操作されてアクセルグリップ48の、車体前方側への回転規制が解除されるとアクセルグリップ48は微速可動域α2の中間位置にまで回転し、前記スロットルバネ57のねじり量が完全に元に戻った位置(微速基準開度SL0)でスロットルバネ57は平衡状態となる。
【0059】
微速可動域α2の中で微速基準開度SL0から車体後方側が微速前進域α2Fであり、微速基準開度SL0から車体前方側が微速後進域α2Rである。また、微速前進域α2Fと微速後進域α2Rとの間、つまり微速基準開度SL0を基準に車体前方側および後方側の双方に跨る所定のクリープ角度またはクリープ域αDZを設ける。前進および後進が急に切り替わる唐突感を回避するためである。
【0060】
微速前進域α2Fと微速後進域α2Rはほぼ同一角度(したがって、例えば、20°)になるようにスロットルバネの定数を設定するのがよい。微速前進域α2Fではスロットル開度THに応じて所定の微小車速で電動車両1を前進させる方向にモータ18を回転させ、微速後進域α2Rではスロットル開度THに応じて所定の微小速度で電動車両1を後進させる方向にモータ18を回転させる。
【0061】
図6はアクセルグリップ48の操作によるモータ18の制御システムを示すブロック図である。制御システムは、スロットルセンサ23、車速センサ30、シートスイッチ22、および傾斜センサ47と、これらの検出出力に応じて、電動車両1を前進・後進させるようにモータ18を駆動する駆動部81を有する制御ユニット80とが含まれる。
【0062】
制御ユニット80は、車速判別部82と、微速制御部83と、通常走行制御部85とを有する。微速制御部83にはクリープ制御部84を含みことができる。車速判別部82は、車速センサ30の検出出力に基づいて電動車両1が走行しているのか否かを判別する。微速制御部83は車速判別部82で電動車両1が走行していないと判別されたときにスロットル開度THm力に基づいて微速前進・微速後進制御を行う。クリープ制御部84はスロットル開度THmがクリープ域αDZ内にあるときに微速前進速度および微速後進速度よりさらに小さいクリープ速度で電動車両1を走行させる制御を行う。微速制御部83は、微速前進指令および微速後進指令、並びにクリープ前進指令およびクリープ後進指令を出力する。
【0063】
通常走行制御部85は車速がゼロでなくスロットル開度THが微速基準開度SL0に予定時間以上保持されていない場合に付勢されて、スロットル開度THに応じて通常開度指令を出力する。駆動部81は微速制御部83および通常速度制御部85から出力される指令を入力されると各指令に応じてモータ18を駆動する。
【0064】
なお、後述する第2の実施形態では、スロットルセンサ23および車速センサ30の検出出力に加えてシートスイッチ22および傾斜スイッチ47の検出出力を考慮して微速前進および微速後進ならびにクリープ前進およびクリープ後進制御を行う。つまり電動車両1が転倒しておらず、車速がゼロではなく、かつシートスイッチ22がオンでないときに微速制御部83が付勢可能となる。なお、押し歩き可能な大きさに相当する値に設定される規定車速よ小さい車速である場合に微速制御部83を付勢するようにすることもできる。
【0065】
図7は制御システムの動作を示すフローチャートである。ステップS1では、スロットル開度THが通常可動域α1内にあるか否かを判別する。以下の説明において、スロットル開度THはすべてスロットルセンサ23の検出出力に基づいて検出されるものとする。したがって、ステップS1の判断はスロットルセンサ23の検出出力が通常可動域α1に相当する検出信号であるか否かによって行われる。スロットル開度THが通常可動域α1にある場合は、ステップS2に進んで微速可能フラグをオフにする。ステップS3では、スロットル開度THに応じた通常開度指令をモータ18の駆動部81に出力する。
【0066】
ステップS1でスロットル開度THが通常可動域α1にないと判断された場合は、ステップS4に進み、微速可動域α2にあるときにオンにされている微速可能フラグがオンか否かを判別する。微速可能フラグがオンならば、ステップS5に進んでアクセルグリップ48が微速基準開度SL0よりも車体前方側に回されているか、つまりスロットル開度THが微速基準開度SL0より小さいか否かを判断する。ステップS5が肯定の場合、さらにステップS6において、スロットル開度THが車体前方側でクリープ域αDZから外れているどうかを判断する。スロットル開度THがクリープ域αDZの外にある場合は、ステップS7に進み、スロットル開度THmに応じた微速後進指令をモータ18の駆動部81に出力する。スロットル開度THがクリープ域αDZの中にある場合、ステップS6は否定となり、ステップS8に進んでクリープ後進指令をモータ18の駆動部81に出力する。
【0067】
スロットル開度THが微速基準開度SL0よりも小さくない場合はステップS5が否定となって、ステップS9に進み、スロットル開度THが車体後方側でクリープ域αDZから外れているかどうかを判断する。ステップS9が肯定の場合は、ステップS10に進み、スロットル開度THmに応じた微速前進指令をモータ18の駆動部81に出力する。スロットル開度THがクリープ域αDZの中にある場合、ステップS9は否定となり、ステップS11に進んでクリープ前進指令をモータ18の駆動部81に出力する。
【0068】
ステップS4で微速可能フラグがオンになっていない場合は、ステップS4からステップS12に進んで車速がゼロか否かを判断する。この判断は車速センサ30の検出出力によって行われる。車速がゼロの場合、つまり電動車両1が動いていないときは、ステップS13に進み、スロットル開度THが微速基準開度SL0に予定時間T1以上維持されているか、つまりアクセルグリップ48が予定時間T1以上操作されていないかどうかが判断される。ステップS13が肯定の場合、つまり電動車両1が停車しており、かつアクセルグリップ48の回動操作も行われていない場合は、ステップS14に進んで微速可能フラグをオンにする。この微速可能フラグがオンになった後、ステップS4は肯定となるので、ステップS7およびステップS10では微速可動域α2内でのスロットル開度THmに応じたモータ18の微小回転駆動が実行される。
【0069】
ステップS12またはステップS13が否定の場合、つまり電動車両1が動いているか、またはスロットル開度THが微速基準開度SL0に予定時間T1以上保持されている場合、ステップS15に進んで速度ゼロの指令をモータ18の駆動部81に出力する。
【0070】
次に、第2の実施形態を説明する。図8は第2の実施形態に係るステアリングハンドル46の要部断面図であり、図3と同符号は同一または同等部分である。第2の実施形態のアクセルグリップ48は図3に示したものとは違い、スロットルドラム54の位置を規制する係止部72やストッパ64、並びにこの規制を解除する解除ボタン65やステム67等を含む可動域解除装置66は設けていない。
【0071】
スロットルドラム54のフランジ55には、スイッチケース58の右側壁581の内面に対向する側に凹み(孔でもよい)74が形成され、右側壁581側には、スロットルドラム54の半径方向で凹み74と一致する位置に凸部(好ましくは部分球形の凸部)75が形成される。凹み74に凸部75は、スロットル開度THが微速基準開度SL0に位置したときに互いが係合するように位置が決定される。前進と後進とで切り替わる位置で凹み74に対して凸部75が嵌ったり脱出したりする際のクリック感を運転者が感じることで制御の切り替わりを判別することができる。
【0072】
図9は第2の実施形態におけるアクセルグリップ48の位置と電動車両1の走行モードとの関係を示す模式図である。図9において、スロットル開度THの位置に応じた通常可動域α1と微速可動域α2とが設けられ、微速可動域α2に微速前進域α2Fと微速後進域α2Rとが設けられる。微速前進域α2Fと微速後進域α2Rとの境界は微速基準開度SL0である。微速基準開度SL0の前後に亘ってクリープ域αDZが設けられる。このクリープ域αDZでは、微速前進速度または微速後進速度よりも小さい速度で電動車両1が走行するようにモータ18が駆動される。
【0073】
図10は第2の実施形態に係る制御システムの動作を示すフローチャートである。図10において、ステップS21ではスロットル開度THが微速基準開度SL0にあるか否かを判断する。ステップS21が肯定ならば、ステップS22に進んで電動車両1の車速がゼロか否かを判断する。ステップS21は制御を初期状態にするための判断である。ステップS22が肯定ならば、ステップS23に進んで傾斜センサ47の検出出力が予定の転倒角度以上に電動車両1が傾斜しているか否かを判断する。ステップS21〜S23のいずれかひとつでも判断が否定となれば、モータ18を停止させる指令を出力する(ステップS24)。
【0074】
ステップS23が肯定ならば、スロットル開度THが停止位置にあり、かつ電動車両1が動いておらず、かつ転倒もしていないと判断されてステップS25に進む。ステップS25では、シートスイッチ22がオンか否か、つまり運転者がシート21に座っているか否かが判断される。シートスイッチ22がオンならば、ステップS26ではスロットル開度THが微速可動域α2の外にあるか否かが判断される。ステップS26が肯定の場合、スロットル開度THが通常可動域α1にあると判断され、ステップS27に進んでスロットル開度THに応じた通常開度指令をモータ18の駆動部81に出力する。
【0075】
ステップS25またはステップS26が否定の場合、つまり運転者が乗車したままでモータを微速回転(電動車両1を徐行)するか、乗車しないでモータ18を微速回転させる場合は、走行ステップS28に進んで車速が規定車速以下か否かが判断される。規定車速は微速前進および微速後進の制限車速を超えて、かつ電動車両1の押し歩きが可能な程度の車速に設定される。押し歩き可能な車速は予め決定しておく。車速が電動車両1を押し歩きすることが想定される範囲内の車速で電動車両1を押し歩きさせることができる。
【0076】
車速が規定車速以下であれば、ステップS29に進み、スロットル開度THが微速前進域α2Fにあるか否かが判断される。スロットル開度THが微速前進域α2Fにある場合は、ステップS30に進んでスロットル開度THがクリープ域αDZの外かどうかを判断する。
【0077】
ステップS30が肯定ならば、ステップS31に進んでスロットル開度THmに応じて微速前進指令をモータ18の駆動部に出力する。ステップS30が否定ならば、ステップS32に進んでクリープ前進指令をモータ18の駆動部81に出力する。
【0078】
ステップS29で、スロットル開度THが微速前進域α2Fにないと判断された場合は、ステップS33に進み、スロットル開度THが微速後進域α2Rにあるか否かが判断される。スロットル開度THが微速後進域α2Rにある場合は、ステップS34に進んでアクセルグリップ48の位置がクリープ域αDZの外かどうかを判断する。ステップS34が肯定ならば、ステップS35に進んでスロットル開度THに応じて微速後進指令をモータ18の駆動部81に出力する。ステップS34が否定ならば、ステップS36に進んでクリープ後進指令をモータ18の駆動部に出力する。
【0079】
車速が規定車速以上である場合、またはスロットル開度THが微速前進域α2Fではなく(ステップS29が否定)、かつ微速後進域α2Rにもない(ステップS33が否定)場合は、ステップS37に進んでモータ18を停止させる指令を出力する。
【0080】
次に、第2の実施形態の変形例を説明する。図11は変形例に係る制御システムの動作を示すフローチャートである。ステップS41、S42、S43、S44、S45、S46およびS47は、図10のステップS21、S22、S23、S24、S25、S26およびS27と同様に処理されるので説明を省略する。
【0081】
ステップS45が否定のとき、処理はステップS48に進む。ステップS48では電動車両1の車速がゼロか否かを判断する。ステップS48が肯定の場合、ステップS49に進んでスロットル開度THが微速基準開度SL0にあるか否かを判断する。ステップS49が肯定の場合、ステップS50に進む。ステップS48、S49が否定の場合、ステップS47に進む。
【0082】
ステップS50では傾斜センサ47の検出出力が予定の転倒角度以上に電動車両1が傾斜しているか否かを判断する。ステップS50が肯定ならば、ステップS51に進んでシートスイッチ22がオフか否か、つまり運転者がシート21に座っていないか否かが判断される。車速がゼロであり(ステップS48肯定)、スロットル開度THが微速基準開度SL0にあり(ステップS49肯定)、電動車両1が転倒しておらず(ステップS50肯定)、しかも運転者がシートに座っていない場合(ステップS51肯定)にステップS52以降で微速前進・微速後進の処理に移行する。ステップS48、S49が否定のときはステップS47に進み、ステップS50、S51が否定のときはステップS44に進む。
【0083】
ステップS52、S53、S54、およびS55は図10のステップS29、S30、S31、およびS32と同様に処理され、ステップS56、S57、S58、およびS59は図10のステップS33、S34、S35、およびS36と同様に処理され、ステップS60はステップS37と同様に処理されるのでステップ毎の詳細な説明は省略する。
【0084】
要するに、この変形例では、電動車両1の走行中、シートスイッチ22がオフ(運転者がシート21に座っていない)場合でも車速がゼロである場合は運転停止にせず、微速前進または微速後進を可能にして、電動車両1の押し歩きを可能にしている。すなわち、車速センサ30、スロットルセンサ23、傾斜センサ47、シートスイッチ22の出力が所定の条件で揃った場合にのみ、押し歩きによる微速前進・微速後進の運転を可能にしている。一方、運転者がシート21に座っていて車速がゼロでない場合はスロットル開度THに応じた通常の運転を可能にする。
【0085】
なお、図11に示した処理において、ステップS51とステップS52との間に、図10に示したステップS28の判断、つまり、車速判断の処理を付加してもよい。
【0086】
本発明は、上述の実施形態に限定されず、請求項に記載された範囲内でさらなる変形が可能である。例えば、電動車両1は2輪車に限らず、鞍乗り型の三輪車や四輪車にも適用可能である。また、スロットルセンサは非接触式に限定されるものではなくアクセルグリップの回動角度を接触式のポテンショメータであってもよい。
【符号の説明】
【0087】
23…スロットルセンサ、 30…車速センサ、 46…ステアリングハンドル、 48…アクセルグリップ、 54…スロットルドラム、 57…スロットルバネ、 58…スイッチケース、 64…ストッパ、 65…解除ボタン、 72…係止部、 80…制御ユニット、 81…モータの駆動部、 82…車速判別部、 83…微速制御部、 84…クリープ制御部、 85…通常制御部、 90…アクセル機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常可動域(α1)内で最小開度から第1の方向にスロットル開度(TH)を大きくするアクセル操作を可能にするアクセルグリップ(48)と、非アクセル操作時にスロットル開度(TH)を前記最小開度側に戻すバネ手段(57)を有するアクセル機構(90)と、前記アクセル機構によるスロットル開度(TH)に応じてモータ(18)を駆動する駆動部(81)とを有する電動車両の制御装置において、
前記最小開度からさらに前記第1の方向とは反対方向の第2の方向に設定した微速可動域(α2)と、前記通常可動域(α1)および前記微速可動域(α2)との間に位置規制手段(64、72)を設け、
前記アクセル機構(90)が、前記最小開度からさらに前記位置規制手段(64、72)に抗って前記第1の方向とは反対方向の第2の方向に設定した微速可動域(α2)までスロットル開度を操作可能に構成されるとともに、
前記バネ手段(57)が、前記微速可動域(α2)の中間位置である微速基準開度(SL0)まで前記アクセルグリップ(48)を付勢してスロットル開度(TH)を小さくするように設定され、
前記微速可動域(α2)では、前記微速基準開度(SL0)を基準にスロットル開度(TH)が大きい領域(α2F)では電動車両(1)を予定の微小車速で前進させる一方、前記微速基準開度(SL0)を基準にスロットル開度(TH)が小さい領域(α2R)では電動車両(1)を予定の微小車速で後進させるように前記駆動部(81)にモータ駆動指令を供給する微速制御部(83)を備えていることを特徴とする電動車両の制御装置。
【請求項2】
前記微速制御部(83)が、前記微速基準開度(SL0)に対するスロットル開度(TH)の偏差が大きいほど前進および後進の車速を大きくするように設定したモータ駆動指令を前記駆動部(81)に供給するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の電動車両の制御装置。
【請求項3】
前記微速基準開度(SL0)を跨ぐクリープ域(αDZ)を設け、
前記微速制御部(83)が、スロットル開度(TH)が前記クリープ域(αDZ)にあるときに前記予定の微小車速よりさらに小さいクリープ速度で電動車両(1)を前進または後進させるクリープ制御部(84)を有していることを特徴とする請求項1または2記載の電動車両の制御装置。
【請求項4】
車速センサ(30)を備え、
前記微速制御部(83)が、電動車両(1)が停車しているときに該電動車両(1)を予定の微車速で前進または後進させるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電動車両の制御装置。
【請求項5】
タイマ手段を備え、
前記微速制御部(83)が、スロットル開度(TH)が前記微速基準開度(SL0)に予定時間(T)以上保持されていたときに電動車両(1)を予定の微車速で前進または後進させるように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電動車両の制御装置。
【請求項6】
アクセル操作によって前記位置規制手段(64、72)を超えてスロットル開度(TH)を変化させる際に、アクセル操作に応じて該位置規制手段による規制を解除する解除手段(65)を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電動車両の制御装置。
【請求項7】
前記位置規制手段(64、72)が、前記アクセルグリップ(48)側に設けられるストッパ(64)と、スロットル開度(TH)が小さくなる方向では前記ストッパ(64)に当接する係止部(72)とからなり、
前記解除手段(65)が、前記係止部(72)に前記ストッパ(64)が当接するのを回避させるため前記ストッパ(64)を移動させる係止回避手段(65)を含んでいることを特徴とする請求項6記載の電動車両の制御装置。
【請求項8】
前記ストッパ(64)および前記係止部(72)の外形面のうち、前記スロットル開度(TH)が大きくなる方向にアクセル操作したときの互いの当接面が、所定の逃げ角で当接するように勾配(θ)を有して形成されていることを特徴とする請求項7記載の電動車両の制御装置。
【請求項9】
電動車両(1)が垂直に立っている状態から側方への傾斜角度を検出する予定角度傾斜センサ(47)を備え、
前記微速制御部(83)が、前記傾斜角度に基づいて電動車両(1)が転倒していないことが検出されていないと判断されたときに電動車両(1)を予定の微車速で前進または後進させるように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電動車両の制御装置。
【請求項10】
運転者がシート(21)に着座しているときに検出信号を出力するシートスイッチ(22)を備え、
前記微速制御部(83)が、運転者がシート(21)に着座していないときに電動車両(1)を予定の微車速で前進または後進させるように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電動車両の制御装置。
【請求項11】
電動車両(1)を押し歩き可能な速度を予め設定し、この予め設定された押し歩き速度
よりも車速が小さいときに、前記微速制御部(83)が、前記押し歩き速度より小さい微車速で電動車両(1)を前進または後進させるように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電動車両の制御装置。
【請求項12】
電動車両(1)を押し歩き可能な速度を予め設定し、この予め設定された押し歩き速度
よりも車速が大きいときに、前記微速制御部(83)が、電動車両(1)を停止させるように前記駆動部(85)にモータ駆動指令を供給するように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電動車両の制御装置。
【請求項13】
電動車両(1)が、鞍乗り型電動車であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の電動車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−157097(P2012−157097A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11839(P2011−11839)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】