説明

電動車両

【課題】スイングアーム内に集中配置した車載バッテリを簡単な構造により効果的に冷却することができる電動車両を提供する。
【解決手段】電動車両1の車体に揺動自在に取り付けられると共に、電動車両1の駆動輪WRを駆動する電動モータMおよび略直方体のバッテリ40a,40bが収納されるスイングアーム30を備える電動車両において、スイングアーム30の揺動軸19寄りの位置に、バッテリ40a,40bを収納する幅広ケース部34を形成し、幅広ケース部34の天井部に、バッテリ40a,40bの上部に空気溜め空間59aを形成するための盛り上がり部58を形成する。バッテリ40a,40bを車体前後方向に並べて配設し、盛り上がり部58は、車体側面視で、バッテリ40a,40bをまたいで上方に凸の略山型とする。盛り上がり部58の表面に放熱用のフィン100を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両に係り、特に、車載バッテリの電力を電動モータに供給し、該電動モータの駆動力によって駆動輪を回転させて走行する電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載バッテリの電力を電動モータに供給し、該電動モータの駆動力によって駆動輪を回転させて走行する電動車両が知られている。
【0003】
特許文献1には、スクータ型の鞍乗型電動2輪車両において、車体に揺動可能に取り付けられたスイングアームの内部に電動モータを収納し、電動モータに電力を供給する複数の車載バッテリを、車体側の足乗せフロアの下部や荷物入れボックスの後部等に分散配置した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3493666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、車載バッテリが車体の各部に分散配置されているため、各車載バッテリに接続する配線が長くなると共に複雑な取り回しが必要となったり、車載バッテリを車体に固定するためのステーが複数必要になるという課題があった。一方、このような課題に対処するためにスイングアーム内に車載バッテリを集中配置しようとすると、走行中に発熱する車載バッテリ同士が近接配置されることで冷却が難しくなり、スイングアーム内の冷却を促進させる電動ファン等を設ける必要が生じるという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、スイングアーム内に集中配置した車載バッテリを簡単な構造により効果的に冷却することができる電動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、電動車両(1)の車体に揺動自在に取り付けられると共に、前記電動車両(1)の駆動輪(WR)を駆動する電動モータ(M)および略直方体のバッテリ(40a,40b)が収納されるスイングアーム(30)を備える電動車両において、前記スイングアーム(30,80,90)の揺動軸(19)寄りの位置に、前記バッテリ(40a,40b)を収納する幅広ケース部(34,84,94)が形成され、前記幅広ケース部(34,84,94)の天井部に、前記バッテリ(40a,40b)の上方に空気溜め空間(59a,82a,92a)を形成するための盛り上がり部(58,88,98)が形成されている点に第1の特徴がある。
【0008】
また、前記バッテリ(40a,40b)は、車体前後方向に2つ並んで配設されており、前記盛り上がり部(58)は、車体側面視で、前記バッテリ(40a,40b)をまたいで上方に凸の略山型とされている点に第2の特徴がある。
【0009】
また、前記盛り上がり部(58)の表面に、放熱用のフィン(100,101)が設けられている点に第3の特徴がある。
【0010】
また、前記バッテリ(40a,40b)は、車体前後方向に2つ並ぶと共に、車体側面視で、車体前側に位置するバッテリ(40a)に対して、車体後側に位置するバッテリ(40b)が車体上方側にオフセットして配設されており、前記幅広ケース部(84)の天井部に前記盛り上がり部(88)を形成することで、車体前側に位置するバッテリ(40a)の上方に空気溜め空間(82a)が設けられる点に第4の特徴がある。
【0011】
また、前記バッテリ(40a,40b)は、車体前後方向に2つ並ぶと共に、車体側面視で、互いに平行に車体後方側に傾斜して配設されており、前記幅広ケース部(94)の天井部に前記盛り上がり部(98)を形成することで、前記バッテリ(40a,40b)の上方に空気溜め空間(92a)が設けられる点に第5の特徴がある。
【0012】
また、前記バッテリ(40a,40b)は、車体前後方向に並ぶ2つの上下方向高さが等しくなるように傾斜して配設されている点に第6の特徴がある。
【0013】
また、車体前方から導いた走行風を前記盛り上がり部(58,88,98)に当てるための冷却ダクト(15)を具備する点に第7の特徴がある。
【0014】
さらに、前記スイングアーム(30)の内部に、少なくとも、前記電動モータ(M)、前記バッテリ(40a,40b)、前記電動モータ(M)の駆動回路やバッテリ(40a,40b)の充電回路を有する基板(50)が収納されている点に第8の特徴がある。
【発明の効果】
【0015】
第1の特徴によれば、スイングアームの揺動軸寄りの位置に、バッテリを収納する幅広ケース部が形成され、幅広ケース部の天井部に、バッテリの上方に空気溜め空間を形成するための盛り上がり部が形成されているので、バッテリで生じた熱がバッテリ上方の空気溜め空間に逃げやすくなると共に、車体上方に突出した盛り上がり部に走行風が当たりやすくなり、バッテリを収納する幅広ケース部の放熱が促進されることとなる。これにより、スイングアーム形状の工夫のみでバッテリの冷却効果を高めることが可能となり、複数のバッテリが集中配置される場合でも、冷却用の電動ファン等を取り付ける必要がなくなり、スイングアーム構造の複雑化を避けることができる。
【0016】
また、バッテリの集中配置が可能となることで、バッテリに接続する配線等の簡略化が可能となり、例えば、2つの同型のバッテリを直列接続する場合には、両バッテリを直列接続するための配線であるバスバーの短縮も可能となる。
【0017】
第2の特徴によれば、バッテリは、車体前後方向に2つ並んで配設されており、盛り上がり部は、車体側面視で、バッテリをまたいで上方に凸の略山型とされているので、前後のバッテリ間で温められた空気が車体上方側に収集しやすくなり、盛り上がり部を設けたことによる冷却効果がさらに向上する。
【0018】
第3の特徴によれば、盛り上がり部の表面に、放熱用のフィンが設けられているので、簡単な構造により、盛り上がり部の表面からの放熱効果がさらに高められる。
【0019】
第4の特徴によれば、バッテリは、車体前後方向に2つ並ぶと共に、車体側面視で、車体前側に位置するバッテリに対して、車体後側に位置するバッテリが車体上方側にオフセットして配設されており、幅広ケース部の天井部に盛り上がり部を形成することで、車体前側に位置するバッテリの上方に空気溜め空間が設けられるので、スイングアーム内のバッテリが、車体前後方向に近接配置されると共に車体上下方向にオフセット配置される場合でも、車体前側のバッテリの上部に形成される空気溜め空間によって冷却効果を高めることが可能となる。また、バッテリの側面に設けられるプラス端子およびマイナス端子が、車体側面視において車体上下方向に離間して設けられている場合には、両バッテリを直列接続するための配線であるバスバーを短縮することが可能となり、構造の簡略化を図ることができる。
【0020】
第5の特徴によれば、バッテリは、車体前後方向に2つ並ぶと共に、車体側面視で、互いに平行に車体後方側に傾斜して配設されており、幅広ケース部の天井部に盛り上がり部を形成することで、バッテリの上方に空気溜め空間が設けられるので、2つのバッテリが傾斜して配設される場合でも、2つのバッテリの上部の空気溜め空間によって冷却効果を高めることができる。また、バッテリの側面に設けられるプラス端子およびマイナス端子が、車体側面視において車体上下方向に離間して設けられている場合には、両バッテリを直列接続するための配線であるバスバーを短縮することが可能となり、さらに構造の簡略化を図ることができる。
【0021】
第6の特徴によれば、バッテリは、車体前後方向に並ぶ2つの上下方向高さが等しくなるように傾斜して配設されているので、幅広ケース部の車体上下方向の寸法を低減して、スイングアーム上部の凸部を低く抑えることができ、これにより、スイングアームの揺動範囲を広げることができる。
【0022】
第7の特徴によれば、車体前方から導いた走行風を盛り上がり部に当てるための冷却ダクトを具備するので、盛り上がり部に積極的に走行風を当てることが可能となり、幅広ケース部の冷却性能をより一層高めることができる。
【0023】
第8の特徴によれば、スイングアームの内部に、少なくとも、電動モータ、バッテリ、電動モータの駆動回路やバッテリの充電回路を有する基板が収納されているので、電動車両において大きな発熱を伴う部品がスイングアーム内に収納されることとなり、スイングアームに設けた冷却構造によってこれらの発熱要素をすべて冷却することができる。これにより、車体側に冷却構造を設ける必要がなくなり車体構造の簡略化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動車両の側面図である。
【図2】スイングアームの本体ケースの拡大側面図である。
【図3】本体ケースの分解斜視図(バッテリ取付時)である。
【図4】本体ケースの分解斜視図(基板および電動モータ取付時)である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る本体ケースの拡大側面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る本体ケースの拡大側面図である。
【図7】本発明の一実施形態の変形例に係る本体ケースの分解斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態の第2変形例に係る本体ケースの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電動車両1の側面図である。電動車両1は、低床フロア16を有するスクータ型の鞍乗型2輪車両であり、スイングアーム(ユニットスイング)30に収納された電動モータMによって後輪WRを駆動する。車体フレーム2の前部には、ステムシャフト(不図示)を回転自在に軸支するヘッドパイプ3が結合されている。ステムシャフトの上部には、ハンドルカバー11で覆われる操向ハンドル8が結合されており、一方の下部には、車軸7によって前輪WFを回動自在に軸支する左右一対のフロントフォーク6が結合されている。
【0026】
車体フレーム2は、ヘッドパイプ3の後部から下方に延びるメインパイプ4と、該メインパイプ4の後端部に連結されて車体後部上方へ延びるリヤフレーム5とを備える。メインパイプ4において、低床フロア16の下部で車体前後方向に指向する部分には、低床フロア16を支持するフロアフレーム15が取り付けられている。メインパイプ4とリヤフレーム5との結合部には、左右一対のピボットプレート17が取り付けられている。
【0027】
スイングアーム30は、車幅方向左側のみにアーム部を有する片持ち式であり、ピボットプレート17に取り付けられたリンク18を貫通する揺動軸19を介して、車体フレーム2に揺動自在に軸支されている。スイングアーム30は、アルミ等の金属からなる一部中空構造体であり、本体ケース31の車幅方向左側にスイングアームカバー35を取り付けた構成とされている。スイングアーム30の内部には、車軸32の近傍に電動モータMが収納され、電動モータMの車体前方側には、電動モータMの制御装置としての基板50が配設されている。電動モータMに電力を供給するバッテリ40a,40bは、車体前後方向に近接配置されると共に、スイングアーム30の車体前方寄りの位置で、かつ基板50の車幅方向右側に配設されている。基板50には、電動モータMの駆動回路や、外部電源からバッテリ40a,40bに充電するための充電回路、スロットル開度とモータ出力との関係を規定するデータマップを記憶したチップ等が含まれる。
【0028】
スイングアーム30の本体ケース31には、車体前方寄りの位置に盛り上がり部58が形成されている。上方に凸形状を有する山型の盛り上がり部58は、バッテリ40a,40bの上方に位置しており、盛り上がり部58の車体前方には、冷却ダクト15の排出口15bが近接配置されている。パイプ状の部材からなる冷却ダクト15は、車体前方側の吸入口15aから取り入れた走行風を車体後方側へ導いて、その排出口15bから排出し、盛り上がり部58の表面を積極的に冷却する機能を有する。
【0029】
後輪WRは、車軸32によってスイングアーム30に回転自在に軸支されており、スイングアーム30の後端部は、リヤクッション26を介してリヤフレーム5に吊り下げられている。また、シート20の下部には、荷物入れスペースとなる収納ボックス21が、左右一対のリヤフレーム5に挟まれるように配設されている。
【0030】
車体フレーム2のメインパイプ4は、車体前方側のフロントカウル13および車体後方側のレッグシールド12で覆われている。ハンドルカバー11の上部には、メータ装置9が配設されており、メータ装置9の車体前方側には前照灯10が取り付けられている。フロントフォーク6の上部には、前輪WFを覆うフロントフェンダ14が固定されている。
【0031】
リヤフレーム5の車幅方向外側はシートカウル23で覆われており、シートカウル23の後端部には尾灯装置24が取り付けられている。尾灯装置24の上方には、リヤフレーム5に結合されたリヤキャリア22が突出しており、尾灯装置24の下方には、後輪WRの後方上方を覆うリヤフェンダ25が設けられている。
【0032】
図2は、スイングアーム30の本体ケース31の拡大側面図である。また、図3は、本体ケース31の分解斜視図である。図2,3では、本体ケース31の車幅方向左側に取り付けられるスイングアームカバー35を取り外した状態を示している。本体ケース31の車体前方側には、略直方体のバッテリ40a,40bを収納するために車幅方向に広がった幅広ケース部34が形成されている。幅広ケース部34を構成する壁面は、その天井部を含めて薄板状部材で形成されている。車体前後方向に並ぶバッテリ40a,40bは、車幅方向左側に開口する収納空間59に対して、車幅方向左側から挿入されるように収められる。
【0033】
幅広ケース部34の車体前方側下部には、揺動軸19(図1参照)の貫通孔19aが形成された左右一対のピボットフランジ37が設けられている。これにより、重量物としてのバッテリ40a,40bがスイングアーム30の揺動軸19に近接配置されることとなり、スイングアーム30の揺動時の慣性モーメントを低減してスムーズな揺動動作が可能となる。
【0034】
車幅方向左側のみに設けられるアーム部33の後端部には、電動モータMの回転を減速する減速機構が収納された減速機ケース71が取り付けられている。減速機構の最終出力軸となる車軸32は、減速機ケース71から車幅方向右側に向けて突出しており、この車軸32の端部に、後輪WRのホイール72が固定されている。一方、減速機ケース71の車幅方向左側には、電動モータMのロータ45が取り付けられる。また、減速機ケース71の上部には、リヤクッション26(図1参照)を取り付けるための貫通孔26aを有する取付フランジ70が設けられている。
【0035】
リチウムイオンを用いて互いに同一構造とされるバッテリ40a,40bは、複数のセルからなるモジュール構造とされており、本実施形態では、車幅方向に5つのセルを並べて1つのモジュールが構成される。バッテリ40a,40bには、それぞれ、車幅方向左側の側面にプラス端子41a,41bおよびマイナス端子42a,42bが設けられている。電導体としてのバスバー43は、バッテリ40aのプラス端子41aとバッテリ40bのマイナス端子42bとを接続することで、両バッテリを直列接続する。マイナス側配線44の一端側は、バッテリ40aのマイナス端子42aに接続される。
【0036】
幅広ケース部34の盛り上がり部58は、収納空間59の天井部を構成する薄板状部材を上方に突出させることで形成されている。これにより、収納されたバッテリ40a,40bの上部に、車体側面視で上方に凸の山型をなす空気溜め空間59aが形成される。
【0037】
バッテリ40a,40bは、本体ケース31に形成された収納空間59内で車体前後方向に近接配置されるため、走行時に発生する熱が、特に、両バッテリの間にこもりやすくなる。しかしながら、本実施形態では、この熱が、両バッテリ40a,40bの上方に形成された空気溜め空間59aに逃げることができる。そして、空気溜め空間59aの熱は、盛り上がり部58の表面から車体外部に放熱されることとなり、これにより、バッテリ40a,40bの冷却効果が高められることとなる。さらに、本実施形態では、車体前方側から導入された走行風を盛り上がり部58に積極的に当てるための冷却ダクト15(図1参照)が設けられており、盛り上がり部58の表面からの放熱が促進される。なお、バッテリ40a,40bは、本体ケース31の車幅方向寸法を最小限に抑えるために、互いに車幅方向にはオフセットしないように配設されている。
【0038】
図4は、基板50およびステータ46の取付状態を示す本体ケース31の分解斜視図である。バッテリ40a,40bを所定位置に収納すると、本体ケース31には、両バッテリの車幅方向左側の側面に近接する仕切板56が複数のボルト等によって取り付けられる。仕切板56は樹脂等の絶縁部材からなり、バッテリ40aのマイナス端子42a(図3参照)に接続されたマイナス側配線44の他端側と、バッテリ40bのプラス端子41b(図3参照)に接続されたプラス側配線47の他端側のみが、仕切板56の上下に形成される隙間から車幅方向左側に突出するように構成されている。
【0039】
電動モータMのステータ46は、ロータ45を車幅方向左側から覆うようにして本体ケース31に固定される。ステータ46の車体前方側には基板50が配設される。基板50の車幅方向左側には多数の冷却フィン51が設けられており、基板50の車体前方側の端部には、車体側に取り回されるハーネス(不図示)を接続するためのコネクタ52,53が設けられている。電気配線としてのハーネスには、バッテリ40a,40bを外部電源(例えば、100Vの商用電源)によって充電するための配線のほか、前輪WFの回転速度を検知する車速センサ信号、イグニッションスイッチの操作信号等の配線を含めることができる。
【0040】
基板50の車体前方側には、スロットルケーブル49によって駆動されるスロットル開度センサ48が配設される。スロットル開度センサ48は、ボルト等により仕切板56に固定される。スロットルケーブル49の端部は、車体フレーム2に沿って車体前方に取り回されて、操向ハンドル8(図1参照)に取り付けられて乗員が回動操作するスロットルグリップに接続される。
【0041】
基板50は、その車体前方側が仕切板56に固定されると共に、車体後方側は本体ケース31にボルト等で固定される。基板50の車体後方側は、車体側面視でアーム部33とオーバーラップする位置まで伸びているため、基板50をボルトで固定することにより、基板50を本体ケース31の剛性メンバーとして利用して、アーム部33の剛性を高めることを可能としている。
【0042】
ステータ46、基板50およびスロットル開度センサ48の取り付けが完了すると、基板50からステータ46に電力を供給するための3相バスバー54が取り付けられる。3相バスバー54は、基板50とステータ46とが近接配置されるために全長が短くて済み、これにより、送電時のロスやノイズの低減を図ることができる。スイングアームカバー35(図1参照)は、スイングアーム30内への水分や埃等の浸入を防ぐため、本体ケース31を密閉するように取り付けられる。
【0043】
本実施形態では、電動モータM、バッテリ40a,40bおよび基板50からなる発熱要素がすべてスイングアーム30の内部に配置されている。このため、各要素の発熱により、スイングアーム30の内部空間の温度が上昇しやすくなるが、幅広ケース部34に設けられた盛り上がり部58によって冷却効果が高められていることで、その他の冷却構造が不要となり、車体構造の複雑化や部品点数の増加も防ぐことができる。
【0044】
図5は、本発明の第2実施形態に係るスイングアームの本体ケース80の拡大側面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。本実施形態では、車体前方側に位置するバッテリ40aに対して、車体後方側に位置するバッテリ40bを車体上方にオフセット配置し、この配置に合わせて本体ケース80が形成されている点に特徴がある。
【0045】
収納空間82を形成する幅広ケース部84の天井部には、車体上方にオフセット配置されるバッテリ40bが収納できるように車体上方に突出した盛り上がり部88が設けられている。これに伴い、車体前方側のバッテリ40aの上部に空気溜め空間82aが形成され、この空気溜め空間82aにより、バッテリ40a,40bに生じた熱が、幅広ケース部84の上面から放熱されやすくなり冷却効果が高められる。
【0046】
また、前側のバッテリ40aに対して後側のバッテリ40bが車体上方にオフセット配置されることにより、バッテリ40aのプラス端子41aとバッテリ40bのマイナス端子42bとを連結するバスバー89の長さを短縮することが可能となる。
【0047】
なお、後側のバッテリ40bの下部に形成される空間83は、各種電気機器の配設スペース等として利用することができる。なお、バッテリ40a,40bは、本体ケースの車幅方向寸法を最小限に抑えるために、互いに車幅方向にはオフセットしないように配設されている。また、不図示のスイングアームカバーは、本体ケース80に合わせた形状とされて本体ケース80を密閉するように構成されている。
【0048】
図6は、本発明の第3実施形態に係るスイングアームの本体ケース90の拡大側面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。本実施形態では、略直方体のバッテリ40a,40bを、それぞれ、車体後方に傾斜させて配置すると共に、この配置に合わせて本体ケース90が形成されている点に特徴がある。
【0049】
収納空間92を形成する幅広ケース部94の天井部には、車体後方に傾斜(車体後方側に所定角度回転)したバッテリ40a,40bが収納できるように、車体上方に突出した盛り上がり部98が設けられている。バッテリ40a,40bは、互いに平行かつ上下の位置が同じ高さになるように配設されており、これにより、バッテリ40aの後方上部かつバッテリ40bの前方上部に空気溜め空間92aが形成される。
【0050】
この空気溜め空間92aによれば、バッテリ40a,40bに生じた熱が、幅広ケース部94の上面から放熱されやすくなって冷却効果が高められる。また、前側のバッテリ40aの前方下部にも前側空気溜め空間93が形成され、この部分からの放熱効果も期待できる。なお、バッテリ40a,40bの下部側に形成される空間95は、各種電気機器の配設スペース等に利用できる。
【0051】
また、バッテリ40a,40bが、それぞれ、車体後方に傾斜させて配置されることにより、バッテリ40aのプラス端子41aとバッテリ40bのマイナス端子42bとを連結するバスバー99の長さを短縮することが可能となる。なお、本実施形態においても、バッテリ40a,40bは、車幅方向にはオフセットしないように配設されており、不図示のスイングアームカバーは、本体ケース90に合わせた形状とされて本体ケース90を密閉するように構成されている。
【0052】
図7および図8は、本発明の一実施形態の変形例および第2変形例に係る本体ケース31の分解斜視図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。この変形例および第2変形例では、本体ケース31の幅広ケース部34に、冷却効果を高めるための冷却フィンが設けられている点に特徴がある。
【0053】
この変形例および第2変形例では、盛り上がり部58を形成する車体前方側の傾斜面、すなわち、冷却ダクト15(図1参照)から積極的に導入された走行風が当たる部分に冷却フィンを形成することで冷却効果を高めている。図7に示した冷却フィン100は、車幅方向に指向させたものであり、図8に示した冷却フィン101は、車体前後方向に指向させたものである。冷却フィン100,101は、本体ケース31と一体に形成するほか、別体式のフィン状の部材を取り付けることで構成してもよい。なお、このような冷却フィンは、盛り上がり部58の車体後方側の傾斜面や、幅広ケース部34の車体前方側の面、または、スイングアームカバー等に形成することもできる。
【0054】
上記したように、本発明に係る電動車両によれば、スイングアームに形成されてバッテリを収納するための幅広ケース部の天井部に、バッテリの上方に空気溜め空間を設けるための盛り上がり部を設けたので、バッテリで温められた空気が空気溜め空間に上って盛り上がり部の表面から放熱されやすくなる。これにより、幅広ケース部の形状の工夫のみでバッテリの冷却効果が高められ、幅広ケース内に複数のバッテリが近接配置される場合でも冷却用の電動ファン等を設ける必要がなくなり、スイングアーム構造の複雑化を避けることが可能となる。
【0055】
なお、電動車両の構造、スイングアームの形状や構造、スイングアームに設けられた幅広ケース部および盛り上がり部の形状や構造、バッテリの形状や構造、バッテリの配設位置、冷却ダクトの形状や配置等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。例えば、両バッテリの間に仕切板を設けてもよい。本発明に係るスイングアーム構造は、電動二輪車に限られず、スイングアームを有する鞍乗型の三/四輪車等の各種車両に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…電動車両、30,80,90…スイングアーム、33…アーム部、34,84,94…幅広ケース部、40a,40b…アーム部、58,88,98…盛り上がり部、59…収納空間、59a,82,92…空気溜め空間、WR…後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両(1)の車体に揺動自在に取り付けられると共に、前記電動車両(1)の駆動輪(WR)を駆動する電動モータ(M)および略直方体のバッテリ(40a,40b)が収納されるスイングアーム(30)を備える電動車両において、
前記スイングアーム(30,80,90)の揺動軸(19)寄りの位置に、前記バッテリ(40a,40b)を収納する幅広ケース部(34,84,94)が形成され、
前記幅広ケース部(34,84,94)の天井部に、前記バッテリ(40a,40b)の上方に空気溜め空間(59a,82a,92a)を形成するための盛り上がり部(58,88,98)が形成されていることを特徴とする電動車両。
【請求項2】
前記バッテリ(40a,40b)は、車体前後方向に2つ並んで配設されており、
前記盛り上がり部(58)は、車体側面視で、前記バッテリ(40a,40b)をまたいで上方に凸の略山型とされていることを特徴とする請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記盛り上がり部(58)の表面に、放熱用のフィン(100,101)が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の電動車両。
【請求項4】
前記バッテリ(40a,40b)は、車体前後方向に2つ並ぶと共に、車体側面視で、車体前側に位置するバッテリ(40a)に対して、車体後側に位置するバッテリ(40b)が車体上方側にオフセットして配設されており、
前記幅広ケース部(84)の天井部に前記盛り上がり部(88)を形成することで、車体前側に位置するバッテリ(40a)の上部に空気溜め空間(82a)が設けられることを特徴とする請求項1に記載の電動車両。
【請求項5】
前記バッテリ(40a,40b)は、車体前後方向に2つ並ぶと共に、車体側面視で、互いに平行に車体後方側に傾斜して配設されており、
前記幅広ケース部(94)の天井部に前記盛り上がり部(98)を形成することで、前記バッテリ(40a,40b)の上方に空気溜め空間(92a)が設けられることを特徴とする請求項1に記載の電動車両。
【請求項6】
前記バッテリ(40a,40b)は、車体前後方向に並ぶ2つの上下方向高さが等しくなるように傾斜して配設されていることを特徴とする請求項5に記載の電動車両。
【請求項7】
車体前方から導いた走行風を前記盛り上がり部(58,88,98)に当てるための冷却ダクト(15)を具備することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の電動車両。
【請求項8】
前記スイングアーム(30)の内部に、少なくとも、前記電動モータ(M)、前記バッテリ(40a,40b)、前記電動モータ(M)の駆動回路やバッテリ(40a,40b)の充電回路を有する基板(50)が収納されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の電動車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−144178(P2012−144178A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4877(P2011−4877)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】