電動車両
【課題】ホイールと車軸との結合部を外乱から保護することが可能となる電動車両を提供する。
【解決手段】電動車両において、車軸52は、ホイール90の両側面から延出するように該ホイール90に対して略同軸に貫通した中空の筒状軸であり、車軸52の中空部分には、該車軸52の両端部から延出するように、モータ軸16aが車軸52と略同軸に挿通している。この場合、車軸52の一方の端部から延出したモータ軸16aの基端部にモータ16が連結され、ホイール90とモータ16との間には、車軸52の一方の端部側とホイール90とを結合する結合部192と、結合部192を囲繞するようにホイール90とモータ16との間をシールするラビリンス構造190とが設けられている。
【解決手段】電動車両において、車軸52は、ホイール90の両側面から延出するように該ホイール90に対して略同軸に貫通した中空の筒状軸であり、車軸52の中空部分には、該車軸52の両端部から延出するように、モータ軸16aが車軸52と略同軸に挿通している。この場合、車軸52の一方の端部から延出したモータ軸16aの基端部にモータ16が連結され、ホイール90とモータ16との間には、車軸52の一方の端部側とホイール90とを結合する結合部192と、結合部192を囲繞するようにホイール90とモータ16との間をシールするラビリンス構造190とが設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの出力を減速機構を介して車軸に伝達することによりホイールを回転させる電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、モータの出力を減速機構を介して車軸に伝達することによりホイールを回転させる電動車両が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車軸(駆動軸)に対してモータと減速機構とホイールとの順に同軸に連結し、該駆動軸のモータ側の一端部とホイール側の他端部とをナットで締め付ける構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−89439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、モータ軸と減速機構とが一側に片寄って重量バランスが悪い上に、反対側のホイール側面に駆動軸とホイールとを締め付けるナットが露出することになり、電動車両の走行時に車輪が巻き上げた飛び石や、乗員等の人のナットへのアクセス等の外乱に起因して、ナットが影響を受ける可能性がある。
【0006】
本発明は、係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、モータと減速機構とをホイールの両側に振り分けて配置しながらも、ホイールと車軸との結合部を外乱から保護することが可能となる電動車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、
モータ(16)の出力を減速機構(160)を介して車軸(52)に伝達することによりホイール(90)を回転させる電動車両(10)において、
前記車軸(52)は、前記ホイール(90)の両側面から延出するように該ホイール(90)に対して略同軸に貫通した中空の筒状軸であり、
前記筒状軸(52)の中空部分には、該筒状軸(52)の両端部から延出するように前記モータ(16)のモータ軸(16a)が前記筒状軸(52)と略同軸に挿通し、
前記筒状軸(52)の一方の端部から延出した前記モータ軸(16a)の基端部には前記モータ(16)が連結され、
前記筒状軸(52)の他方の端部から延出した前記モータ軸(16a)の先端部には前記減速機構(160)が連結され、
前記ホイール(90)と前記モータ(16)との間には、前記筒状軸(52)の一方の端部側と前記ホイール(90)とを結合する結合部(192)と、前記結合部(192)を囲繞するように前記ホイール(90)と前記モータ(16)との間をシールするシール部(190、194)とが配設されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の電動車両(10)において、
前記結合部(192)は、前記筒状軸(52)の一方の端部に形成されたネジ部と、前記ネジ部に螺合して前記ホイール(90)と前記筒状軸(52)とを結合させるナット(172)とから構成されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の電動車両(10)において、
前記モータ(16)を収容するモータケース(44)と、
前記モータケース(44)と前記ホイール(90)との間で前記モータ軸(16a)、前記筒状軸(52)及び前記結合部(192)を囲繞するように介挿され、前記ホイール(90)に対して前記モータケース(44)を相対回転可能に取り付ける第1のベアリング(194)と、
をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3記載の電動車両(10)において、
前記モータケース(44)における前記結合部(192)と対向する箇所(195)は、前記ナット(172)を避けるようにテーパ状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項3又は4記載の電動車両(10)において、
前記モータ(16)及び前記モータケース(44)から構成されるモータモジュール(46)と、
前記減速機構(160)と該減速機構(160)を収容する減速機構ケース(48)とから構成される減速機構モジュール(50)と、
前記減速機構ケース(48)と前記ホイール(90)との間で前記モータ軸(16a)及び前記筒状軸(52)を囲繞するように介挿され、前記ホイール(90)に対して前記減速機構ケース(48)を相対回転可能に取り付ける第2のベアリング(254)と、
をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項5記載の電動車両(10)において、
前記減速機構ケース(48)と前記ホイール(90)との間には、前記第2のベアリング(254)を囲繞するようにラビリンス構造(252)が形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項6記載の電動車両(10)において、
前記ホイール(90)の回転を制動するブレーキ(260)をさらに備え、
前記ブレーキ(260)は、前記減速機構ケース(48)と前記ホイール(90)との間における前記ラビリンス構造(252)と前記第2のベアリング(254)との間の中空部分に配置されることを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項5〜7のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記モータケース(44)と前記モータ軸(16a)との間に介挿され、前記モータ軸(16a)に対して前記モータケース(44)を相対回転可能に支持する第3のベアリング(198、200)をさらに備え、
前記第1〜第3のベアリング(194、198、200、254)のうち、少なくとも1つのベアリングには、シールが施されていることを特徴とする。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項3〜8のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記シール部(190、194)は、前記モータケース(44)と前記ホイール(90)との間で前記第1のベアリング(194)を囲繞するように形成されたラビリンス構造(190)、及び/又は、シールが施された前記第1のベアリング(194)であることを特徴とする。
【0016】
請求項10に係る発明は、請求項2〜9のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記モータ軸(16a)の先端部には、ドライバー又は六角レンチが差し込み可能な穴部(214)、あるいは、ボルトの頭部(282)が設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項11に係る発明は、請求項2〜10のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記減速機構(160)は、
前記モータ軸(16a)の先端部に形成された第1の歯車(216)と、
前記モータ軸(16a)の前方に配置され、前記第1の歯車(216)に噛合する第2の歯車(220)と、
前記筒状軸(52)及び前記モータ軸(16a)の前方で前記筒状軸(52)及び前記モータ軸(16a)と略平行に配置され、前記第2の歯車(220)と略同軸に連結される減速軸(218)と、
前記減速軸(218)における前記ホイール(90)側に形成された第3の歯車(222)と、
前記筒状軸(52)の他方の端部側で該筒状軸(52)と略同軸に連結され、前記第3の歯車(222)に噛合する第4の歯車(224)と、
を具備し、
前記減速軸(218)における前記第2の歯車(220)側の端部には、ドライバー又は六角レンチが差し込み可能な穴部(286)、あるいは、ボルトの頭部(288)が設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項12に係る発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記筒状軸(52)の他方の端部と前記モータ軸(16a)との間には、シール部材(232)が介挿されていることを特徴とする。
【0019】
請求項13に係る発明は、請求項1〜12のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記モータ(16)と前記減速機構(160)とをそれぞれ支持することにより、前記モータ軸(16a)、前記筒状軸(52)及び前記ホイール(90)を支持する両持ち式のスイングアーム(14)をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、ホイールの片側では、モータ軸の基端部にモータが連結され、その反対側では、前記モータ軸の先端部に減速機構が連結されているので、重量バランスが取りやすくなる上、前記ホイールと前記モータとの間において、車軸としての筒状軸の一方の端部側と前記ホイールとを結合部で結合すると共に、該結合部を囲繞するようにシール部で前記ホイールと前記モータとの間をシールしているので、前記結合部は、前記シール部によってシールされた密閉空間に配置される。これにより、電動車両の走行時に車輪が巻き上げた飛び石や、乗員等の人のナットへのアクセス等の外乱から前記結合部を保護することが可能となる。
【0021】
また、請求項1に記載の発明では、下記の効果も得られる。
【0022】
前記筒状軸の中空部分に前記モータ軸が該筒状軸と略同軸に挿通しているため、前記ホイールを回転させるためのシャフトの構造が前記モータ軸及び前記筒状軸の二重構造となり、該シャフトの剛性を高めることができる。
【0023】
また、前記ホイール、前記筒状軸及び前記モータ軸が略同軸に配置され、該モータ軸に対して前記モータ及び前記減速機構がそれぞれ連結され、さらには、前記減速機構が前記筒状軸及び前記結合部を介して前記ホイールに連結されているため、前記モータから前記モータ軸、前記減速機構、前記筒状軸及び前記結合部を介して前記ホイールに至る該ホイールの駆動系が前記ホイールの軸上に配置されることになる。これにより、前記ホイールの両側面から前記駆動系を突出させることなく、該ホイールに対して前記駆動系をコンパクトに配置することが可能となる。また、前記ホイール周辺のスペースの自由度も高まると共に、前記減速機構において、前記モータの回転駆動力に基づき前記ホイールのトルクを容易に大きくすることができる。
【0024】
請求項2に記載の発明によれば、前記結合部は、前記筒状軸の一方の端部に形成されたネジ部と、前記ネジ部に螺合するナットとから構成されるので、前記筒状軸と前記ホイールとの結合を容易に行うことができる。
【0025】
また、前記シール部によってシールされる前記ホイールと前記モータとの間の密閉空間に前記結合部が配設されるため、外部からの泥等の侵入を阻止することができ、この結果、ネジナメに対応して前記ナットのピットを粗く形成する必要がなくなり、この結果、該ピットを精細な形状に形成して締め付け精度を上げることができる。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、モータケースと前記ホイールとの間に第1のベアリングを介挿したので、前記駆動系の剛性をさらに高めることができる。
【0027】
請求項4に記載の発明によれば、前記モータケースにおける前記結合部と対向する箇所を、前記ナットを避けるようにテーパ状に形成することで、前記モータケース(の前記モータ)を前記ホイール側に寄せることができる。これにより、前記電動車両の走行中に前記ナットが緩んだ場合でも、テーパ部分と前記ナットとの接触によって前記ナットを締め付けることが可能になると共に、前記ホイールに対して前記モータケースを一層コンパクトに収容することができる。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、減速機構ケースと前記ホイールとの間に第2のベアリングを介挿したので、前記駆動系の剛性をより一層高めることができる。
【0029】
請求項6に記載の発明によれば、前記減速機構ケースと前記ホイールとの間で、前記第2のベアリングを囲繞するようにラビリンス構造を形成することにより、外部からのゴミ等の侵入を阻止することができる。
【0030】
請求項7に記載の発明によれば、前記ラビリンス構造と前記第2のベアリングとの間の中空部分にブレーキを配設することにより、外部環境の影響を排除しつつ、前記ホイールの回転を効率よく制動することができる。
【0031】
請求項8に記載の発明によれば、前記モータケースと前記モータ軸との間に第3のベアリングを介挿することで、前記第1〜第3のベアリングのうち、少なくとも1つのベアリングにシールを施せば、外部からのゴミ等の侵入を効果的に阻止して、前記結合部又は前記ブレーキを前記外乱から確実に保護することができる。また、前記第1〜第3のベアリングをシールすれば、前記ホイールと前記モータモジュール及び前記減速機構モジュールとのシールを容易に且つ効率よく行うことができる。
【0032】
請求項9に記載の発明によれば、前記モータケースと前記ホイールとの間で前記第1のベアリングを囲繞するように形成されたラビリンス構造、及び/又は、シールが施された前記第1のベアリングを前記シール部とすることにより、外部からのゴミ等の侵入を確実に且つ効率よく阻止することができる。
【0033】
請求項10に記載の発明によれば、前記モータ軸の先端部に穴部又はボルトの頭部を形成することにより、前記ナットを固定しながら、ドライバー又は六角レンチで前記穴部を回すか、あるいは、レンチを用いて前記ボルトの頭部を回すと、その回転力が前記減速機構を介して前記筒状軸に伝達され、小さな回転力で前記結合部に大きな締付力を発生させることができる。
【0034】
請求項11に記載の発明によれば、減速軸における第2の歯車側の端部に穴部又はボルトの頭部を形成することにより、前記ナットを固定しながら、前記ナットを固定しながら、ドライバー又は六角レンチで前記穴部を回すか、あるいは、レンチを用いて前記ボルトの頭部を回すと、その回転力が前記筒状軸に伝達される。この場合でも、小さな回転力で前記結合部に大きな締付力を発生させることができる。
【0035】
請求項12に記載の発明によれば、前記筒状軸の他方の端部と前記モータ軸との間にシール部材を介挿することにより、前記モータ軸の回転速度と前記減速機構により減速された前記筒状軸の回転速度との差が小さくなり、耐久性を向上させることができる。
【0036】
請求項13に記載の発明によれば、両持ち式のスイングアームで前記モータと前記減速機構とを支持することにより、前記モータ軸、前記筒状軸及び前記ホイールの左右両側で支持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態に係る電動二輪車の左側面図である。
【図2】図1の電動二輪車の右側面図である。
【図3】両持ち式のスイングアームに支持されるモータモジュール、減速機構モジュール、モータ軸、車軸及び後輪の概略平面図である。
【図4】図3のスイングアームにおける左側のアームの一部分解斜視図である。
【図5】図5Aは、図4のアーム部の側面図であり、図5Bは、図4のアーム部の断面図である。
【図6】図3のモータモジュールの分解斜視図である。
【図7】図3のモータモジュール、減速機構モジュール、モータ軸、車軸及び後輪の断面図である。
【図8】図7の減速機構モジュールの他の構成例を示す断面図である。
【図9】図7の減速機構モジュールの他の構成例を示す断面図である。
【図10】図7の減速機構モジュールの他の構成例を示す断面図である。
【図11】図7の減速機構モジュールの他の構成例を示す断面図である。
【図12】スイングアームと減速機構モジュールとの結合に関する他の構成を図示した電動二輪車の右側面図である。
【図13】図12の他の構成を図示した、スイングアーム、モータモジュール、減速機構モジュール、モータ軸、車軸及び後輪の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明に係る電動車両の好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0039】
図1は、本実施形態に係る電動二輪車(電動車両)10の左側面図であり、図2は、該電動二輪車10の右側面図である。
【0040】
電動二輪車10は、ステップフロア12を有するスクーター型の二輪車であり、スイングアーム14に設けられたモータ16(図3参照)の回転駆動力で後輪WRを駆動する。モータ16に電力を供給する高電圧(例えば、72V)のメインバッテリ18は、複数のバッテリセルが直列接続された複数のモジュールを有する。
【0041】
メインフレーム20の上端部には、ステアリングステム22を回転自在に軸支するヘッドパイプ24が結合されている。ステアリングステム22には、前輪WFを回転可能に軸支する左右一対のフロントフォーク26l、26rが取付けられている。前輪WFは、ステアリングステム22の上部に取付けられたアクセルグリップを有するステアリングハンドル28によって操舵可能とされている。ステアリングハンドル28には、アクセルグリップの回動角、つまり、アクセル開度を検出するスロットルセンサ30が設けられている。
【0042】
メインフレーム20には、車体後方に延びている左右一対のサイドフレーム32l、32rが連結され、左右一対のサイドフレーム32l、32rには、車体上後方に延びているリアフレーム34l、34rが連結されている。サイドフレーム32l、32rの後部には、スイングアームピボット36が形成されたピボットプレート38l、38rが取付けられている。
【0043】
スイングアームピボット36には、左右両側のアーム40l、40rで後輪WRを支持する両持ち式のスイングアーム14の前端部42が揺動可能に軸支されている。スイングアーム14の後端部としての左側のモータケース44(を含むモータモジュール46)と右側の減速機構ケース48(を含む減速機構モジュール50)とには、後輪WRが車軸52(図3参照)を介して回転自在に軸支されている。モータケース44及び減速機構ケース48は、リアサスペンション54l、54rによってリアフレーム34l、34rにそれぞれ吊り下げられている。また、リアフレーム34l、34rには、テールライト56が設けられる。
【0044】
ピボットプレート38lには、サイドスタンド58が設けられ、サイドスタンド58は、該サイドスタンド58が所定位置に格納されているときに検出信号を出力するサイドスタンドスイッチ60を有する。
【0045】
メインバッテリ18の前部には、空気導入パイプ62l、62rが連結され、メインバッテリ18の後部には吸気ファン64が設けられる。吸気ファン64によって空気導入パイプ62l、62rからメインバッテリ18に空気が導入されて車体後方に排出される。これにより、メインバッテリ18が発生した熱を外気によって冷却することができる。
【0046】
左右一対のリアフレーム34l、34rの間には、荷室66が設けられ、この荷室66から下部に突出している荷室底部68には、メインバッテリ18又は外部から充電される低電圧(例えば、12V)のサブバッテリ70が収納される。また、荷室66には、メインバッテリ18から供給される直流電流を交流電流に変換してモータ16に供給するPDU(パワードライブユニット)72が設けられる。荷室66の後方には、DC−DCダウンコンバータ(以下、ダウンコンバータとよぶ)74が設けられる。荷室66の上には、荷室66の蓋を兼用する運転者シート76が設けられ、運転者シート76には、運転者が着座したときに作動して着座信号を出力するシートスイッチ78が設けられる。なお、荷室66とモータ16との間には、PDU72からモータ16に交流電流を供給するための電力供給ライン80が設けられている。
【0047】
ヘッドパイプ24の前部にはブラケット82が結合され、このブラケット82の前端部には、ヘッドライト84が取付けられている。また、ステアリングハンドル28の近傍に車速等の表示を行うメータユニット86が設けられている。
【0048】
次に、電動二輪車10の後輪WR周辺の構成について、両持ち式のスイングアーム14との関係で、図1〜図7を参照しながら説明する。
【0049】
スイングアーム14は、前述のように、後輪WRを左右両側のアーム40l、40rで支持する両持ち式のスイングアームである。
【0050】
具体的に、スイングアーム14の前端部42(第5のアーム部、第8のアーム部)は、スイングアームピボット36が挿通する中空の円筒部42aと、円筒部42aの左右両側から後方にそれぞれ延在するアーム部42l、42rと、左右両側のアーム部42l、42rを連結する連結部42bとから構成される。
【0051】
左側のアーム40lは、前端部42からホイールアッシーとしての後輪WRを構成するホイール90の左側面側(一方の側面側)にまで延在している。すなわち、アーム40lは、前述のアーム部42lと、アーム部42lの後部に対して車幅方向に結合されたアーム部92(連結部、第3のアーム部)と、該アーム部92に対して車幅方向に結合されたアーム部94(連結部、第4のアーム部)と、アーム部92の後部に対して車幅方向に結合されたモータケース44とから構成される。
【0052】
また、モータケース44は、モータ16が配置可能な凹部が形成された収容部44a(第1のアーム部)と、モータ16が収容部44aの凹部に配置された状態で、収容部44aに対して車幅方向に覆い被さることにより、収容部44aと共働してモータ16を閉塞する蓋部44b(第2のアーム部)とから構成される。従って、モータ16を収容部44aに配置し、該収容部44aに蓋部44bを被せてモータケース44を構成することにより、モータ16及びモータケース44を含むモータモジュール46が構成される。
【0053】
アーム部42l、92、94、収容部44a及び蓋部44bは、電動二輪車10の車幅方向(図3の左右方向)に互いに結合されている。
【0054】
具体的に、アーム部42lの後端部から板状部96a、96bが上下方向に延在している。また、アーム部92は、その前端部がアーム部42lの後端部及び板状部96a、96bの左側を覆うように、全体的に、断面略C字状に形成された板状部材であり、その右側には、板状部98a、98bが上下方向に延在している。さらに、アーム部94は、断面略C字状のアーム部92と対向するように断面略C字状に形成された板状部材であり、その左側には、板状部98a、98bに対向するように板状部100a、100bが上下方向に延在している。さらにまた、収容部44aの前端部には、アーム部92の各板状部98a、98bに指向するようにアーム部102a、102bが前方に延在している。
【0055】
従って、板状部96a、96bの後端部と板状部98a、98bの前端部とを重ね合わせ、板状部98a、98bの前端部に形成された孔108a、108bにボルト110a、110bをそれぞれ挿通させて、板状部96a、96bの後端で車幅方向に溶接固定されたナット112a、112bに螺合させれば、アーム部42lとアーム部92とを車幅方向に結合させることができる。
【0056】
また、板状部98a、98bの中央部分と板状部100a、100bとを重ね合わせ、板状部98a、98bの中央部分に形成された合計で3つの孔114a〜114c(板状部98aの2つの孔114a、114b及び板状部98bの1つの孔114c)と、3つの孔114a〜114cに対向するように板状部100a、100bに形成された3つの孔116a〜116cとに、ボルト118a〜118cをそれぞれ挿通させて、板状部100a、100bに固定された溶接ナット120a〜120cに螺合させれば、アーム部92とアーム部94とを車幅方向に結合させることができる。
【0057】
さらに、板状部98a、98bの後端部とアーム部102a、102bの先端部とを重ね合わせ、板状部98a、98bの後端部にそれぞれ形成された孔122a、122bに、ボルト126a、126bを挿通させて、アーム部102a、102bの先端部にそれぞれ形成されたネジ孔124a、124bに螺合させれば、アーム部92とアーム部102a、102b(を備えた収容部44a)とを車幅方向に結合させることができる。
【0058】
さらにまた、側面視で略円形状の収容部44aには、周方向に沿って4つのネジ穴128a〜128dが形成されると共に、略円盤状の蓋部44bには、各ネジ穴128a〜128dに対向して孔130a〜130dが形成されている(図6参照)。従って、各ネジ穴128a〜128dと各孔130a〜130dとを位置合わせした状態で、各孔130a〜130dに各ボルト132a〜132dをそれぞれ挿通させて、各ネジ穴128a〜128dと螺合させれば、蓋部44bと収容部44aとを車幅方向に結合させることができる。
【0059】
なお、収容部44aの底部は、平坦な形状に加工されると共に、蓋部44bの底部も、収容部44aの底部に対応して平坦な形状に加工されている。また、収容部44aの後部には、後方に指向してアーム部102cが延在し、アーム部102cの先端部分に形成された孔124cには、リアサスペンション54lが連結されている。
【0060】
収容部44aのアーム部102aとアーム部102bとの間の箇所には、前方に膨出する膨出部134が形成されると共に、蓋部44bには、膨出部134に対応するように前方に膨出する膨出部136が形成されている。
【0061】
モータ16は、中空円筒の車軸52(図7参照)に対して略同軸に挿通するモータ軸16aと、モータ軸16aに対して略同軸に連結されたロータ16bと、ロータ16bを囲繞する環状のステータ16cとから構成されるインナロータ型の三相モータであり、収容部44aの凹部にステータ16cを固定し、該ステータ16cの内方にモータ軸16aが貫通するロータ16bを配置することによりモータケース44に収容される(図3、図5及び図6参照)。この場合、モータ16における膨出部134、136側の箇所には、該膨出部134、136に挟み込まれるように、バスバー型の接続端子138a〜138c(接続部)が前方に指向して設けられている。
【0062】
前述したように、断面略C字状のアーム部92、94が車幅方向に結合されるため、各アーム部92、94の結合によって、C字の部分には、前後方向に延在する中空部140が形成される(図5A及び図5B参照)。また、PDU72からは、電力供給ライン80が出ている(図1〜図3参照)。この電力供給ライン80は、PDU72が収容される荷室66後方から下方に延び、スイングアーム14のアーム部42l側方を通って、上方に向かって円弧状にカーブするアーム部94の先端部142a、142b間から中空部140に進入して、接続端子138a〜138cに至る。
【0063】
この場合、電力供給ライン80は、三相線としてのバスバー80a〜80cから構成されている。各バスバー80a〜80cは、荷室66からアーム部94の先端部142a、142bまでの間は、絶縁シース144によって外部から電気的に絶縁されている。中空部140では、電気絶縁材料からなる断面略C字状の支持部材150が、ネジ146及びナット148の螺合によってアーム部94に固定されている。そのため、各バスバー80a〜80cは、各アーム部92、94と接触しないように支持部材150に支持されている。また、各バスバー80a〜80cのモータ16側の先端部には、ネジ152a〜152cが挿通する孔154a〜154cが形成されている。
【0064】
従って、ネジ152a〜152cが孔154a〜154cを挿通して、各接続端子138a〜138cに形成されたネジ孔156a〜156cにそれぞれ螺合することにより、バスバー80a〜80cを接続端子138a〜138cに固定(接続)させることができ、この結果、PDU72からバスバー80a〜80c及び接続端子138a〜138cを介してモータ16に三相の交流電流を供給し、ロータ16b及びモータ軸16aを回転駆動させることが可能となる。
【0065】
一方、右側のアーム40rは、前端部42からホイール90の右側面側(他方の側面側)にまで延在している(図2及び図3参照)。すなわち、アーム40rは、前述のアーム部42rと、アーム部42rの後部に結合された減速機構ケース48とから構成される。
【0066】
また、減速機構ケース48は、ホイール90の右側面側に設けられ、減速機構160が配置可能な凹部が形成された第1収容部48aと、減速機構160の側部を囲繞するように第1収容部48aに対して車幅方向に結合された第2収容部48bと、第1及び第2収容部48a、48b(第6のアーム部)に減速機構160が配置された状態で、車幅方向に第2収容部48bに覆い被さることにより、第1及び第2収容部48a、48bと共働して減速機構160を閉塞する蓋部48c(第7のアーム部)とから構成される。従って、減速機構160を第1及び第2収容部48a、48bに配置し、第2収容部48bに蓋部48cを被せて減速機構ケース48を構成することにより、減速機構160及び減速機構ケース48を含む減速機構モジュール50が構成される。
【0067】
アーム40rでは、アーム部42r、第1収容部48a、第2収容部48b及び蓋部48cは、車幅方向に互いに結合されている。
【0068】
具体的に、アーム部42rの後端から、側面視でV字状の板状部162が後方に延在している。また、第1収容部48aから板状部162に指向するようにアーム部164a、164bが延在している。従って、ボルト166a、166bを図示しない板状部162の2つの孔にそれぞれ挿通させて、アーム部164a、164bの図示しないネジ穴に螺合させることにより、(アーム部42rの)板状部162と(第1収容部48aの)アーム部164a、164bとを車幅方向に結合させることができる。また、第1収容部48aと、第2収容部48bと、蓋部48cとについても、図示しないボルト等を用いて車幅方向に順に結合させることができる。
【0069】
なお、第1収容部48aの後部には、後方に指向してアーム部164cが延在し、アーム部164cの先端部分に形成された孔168には、リアサスペンション54rが連結されている。リアサスペンション54rは、図3の平面視で、リアサスペンション54lよりも前方でアーム部164cと連結されている。
【0070】
減速機構160は、ホイール90の右側面側にまで延在したモータ軸16aに連結されると共に、モータ16の駆動によって回転するモータ軸16aの回転速度よりも低い回転速度に減速して車軸52を回転させることにより、該車軸52に連結されたホイール90を含む後輪WRを回転させる。
【0071】
次に、ホイール90と、該ホイール90の左右両側に配置されたモータモジュール46及び減速機構モジュール50とについて、図7の断面図を参照しながらさらに具体的に説明する。
【0072】
ホイールアッシーとしての後輪WRを構成するホイール90には、中空円筒の車軸52が略同軸に貫通している。この場合、車軸52のうち、ホイール90を貫通する左側部分の外径及び内径は、減速機構160に連結される右側部分の外径及び内径よりもそれぞれ小さい。そのため、車軸52は、段差を持った筒状軸として構成されている。また、車軸52の外周面におけるホイール90の貫通部分にはスプライン加工が施され、ホイール90のスプライン溝と噛合している(図3及び図7参照)。さらに、ホイール90から僅かに突出する車軸52の左端部(一方の端部)には、図示しないネジ溝(ネジ部)が形成されている。そのため、ワッシャ170を車軸52に装着した状態でナット172と前記ネジ溝とが螺合することにより、ホイール90と車軸52とを結合することができる。なお、ネジ溝、ワッシャ170及びナット172によって、ホイール90と車軸52とを結合する結合部192が構成される。
【0073】
車軸52には、該車軸52の両端部から左右両側に延出するようにモータ軸16aが略同軸に挿通している。この場合、モータ軸16aは、車軸52の中空部分の形状に合わせ、段差を持った円柱軸として構成される。
【0074】
モータ軸16aは、モータ16のロータ16bを貫通している。ロータ16bから左方に突出するモータ軸16aの左端部には、図示しないネジ溝が形成されており、ワッシャ174を装着した状態でナット176と前記ネジ溝とが螺合することにより、モータ軸16aとロータ16bとを結合することができる。また、蓋部44bの中心部には、モータ軸16aの左端部に対向するように、取り外し可能なキャップ180が配設されている。
【0075】
また、収容部44aのホイール90側には、モータ軸16aを囲繞するようにホイール90側に突出する環状の突出部182、184が設けられ、ホイール90の収容部44a側には、モータ軸16aを囲繞するように収容部44a側に突出する環状の突出部186、188が、前述の突出部182、184間に設けられている。
【0076】
この場合、収容部44aの突出部184とホイール90の突出部188との間はラビリンス構造190となっている。
【0077】
また、各突出部184、188よりも内方に設けられた各突出部182、186間には、ベアリング194(第1のベアリング)が配設されており、該ベアリング194によりモータケース44(モータモジュール46)は、ホイール90に対して相対回転可能に支持されることになる。よって、ラビリンス構造190により、電動二輪車10の走行時に後輪WRが巻き上げた飛び石等のベアリング194への直接的な飛散が抑制される。なお、このベアリング194は、シールベアリングを用いることでモータ軸16a側を密閉空間としている。
【0078】
さらに、突出部182のナット172に対向する箇所は、該ナット172を避けるように(ナット172に向かって拡開するように)テーパ状に形成されたテーパ部195として構成される。
【0079】
さらにまた、モータ軸16aにおけるロータ16bと車軸52との間の箇所は段差となっており、この段差にカラー196が装着されている。また、ロータ16bとカラー196と突出部182との間には、ベアリング198が介挿され、一方で、ロータ16bのキャップ180側と蓋部44bとの間には、ベアリング200が装着されている。これらのベアリング198、200によって、モータケース44は、モータ軸16a及びロータ16bに対して相対回転可能に支持されることになる。なお、これらのベアリング198、200もシールベアリングである。
【0080】
一方、モータ軸16aの右端部は、ベアリング210、212を介して第2収容部48b及び蓋部48cに支持されている。
【0081】
減速機構160は、モータ軸16aにおけるベアリング210、212間の箇所に形成されたギヤ部216(第1の歯車)と、モータ軸16a及び車軸52の前方でモータ軸16a及び車軸52と略平行に配設された減速軸218と、減速軸218の蓋部48c側に配設され、ギヤ部216に噛合するギヤ220(第2の歯車)と、減速軸218のホイール90側に形成されたギヤ部222(第3の歯車)と、車軸52の右端部に配設され、ギヤ部222に噛合するギヤ224(第4の歯車)とを含み構成されている。
【0082】
そして、減速機構ケース48内において、減速軸218の両端部は、ベアリング226、228を介して第1収容部48a及び蓋部48cに支持され、ギヤ224は、ベアリング230を介して車軸52の右端部と第2収容部48bとに固定されている。さらに、ギヤ部216、222及びギヤ220、224の焼き付き防止のために、減速機構160にはオイルが注入されている。そのため、車軸52の右端部とモータ軸16aとの間や、第1収容部48aのホイール90側と車軸52との間には、オイルシール232、234が介挿されている。
【0083】
ホイール90における第1収容部48aに対向する箇所には、環状凹部240が形成され、第1収容部48aのホイール90側にも、環状凹部240に対向するように環状凹部242が形成されている。そのため、ホイール90の右側面には、車軸52を囲繞するように第1収容部48a側に突出する環状の突出部244、246が形成され、第1収容部48aのホイール90側には、車軸52を囲繞するようにホイール90側に突出する環状の突出部248、250が形成される。
【0084】
この場合、ホイール90の突出部246と第1収容部48aの突出部250との間にはラビリンス構造252が形成されており、環状凹部240、242により形成される突出部246、250内方の空間は、該ラビリンス構造252により密閉空間となる。
【0085】
また、各突出部246、250よりも内方に形成された各突出部244、248と車軸52との間には、シールベアリングであるベアリング254(第2のベアリング)が配設されており、該ベアリング254により減速機構ケース48(減速機構モジュール50)は、ホイール90に対して相対回転可能に支持される。
【0086】
さらに、ラビリンス構造252により形成された密閉空間における環状凹部240側には、車軸52を囲繞するようにドラムブレーキ260が配設されている。
【0087】
ドラムブレーキ260は、公知のドラムブレーキ機構であり、ホイール90に装着されたドラム262と、ライニング264が取り付けられたリーディングシュー266と、ライニング268が取り付けられたトレーリングシュー270とを含み構成されている。この場合、リーディングシュー266とトレーリングシュー270との間には、図示しないバネ部材が介挿されており、油圧シリンダ等により、前記バネ部材の引張力に抗して、リーディングシュー266とトレーリングシュー270とを前後方向に離間させると、リーディングシュー266のライニング264と、トレーリングシュー270のライニング268とがドラム262をそれぞれ押圧し、この結果、ドラム262が装着されたホイール90の回転を制動させることができる。
【0088】
なお、本実施形態では、ホイール90の回転を制動できるのであれば、ドラムブレーキ260に代えてディスクブレーキを使用してもよいことは勿論である。
【0089】
本実施形態に係る電動二輪車10は、以上のように構成されるものであり、次に、電動二輪車10への後輪WR、モータモジュール46及び減速機構モジュール50の取り付け、取り外し、及び、交換(取り付け、取り外しの双方)の作業について、図1〜図7を参照しながら説明する。
【0090】
最初に、電動二輪車10への後輪WR、モータモジュール46及び減速機構モジュール50の取り付けについて説明する。
【0091】
先ず、モータ軸16a及び車軸52が取り付けられた減速機構モジュール50を電動二輪車10に取り付ける。この場合、作業者は、スイングアーム14のアーム部42rから延在する板状部162の2つの孔にボルト166a、166bを挿通し、減速機構モジュール50側のアーム部164a、164bの図示しないネジ穴に該ボルト166a、166bを螺合させることにより、板状部162とアーム部164a、164bとを車幅方向に結合させる。また、作業者は、車軸52にドラムブレーキ260を装着し、その後、アーム部164cの孔168にリアサスペンション54rを連結させる。
【0092】
次に、ホイールアッシーである後輪WRを車軸52に取り付ける。
【0093】
この場合、作業者は、車軸52の左端部に形成されたスプライン構造と、ホイール90に形成されたスプライン溝とが嵌合するように後輪WRを車軸52に取り付ける。なお、ホイール90にはベアリング194も予め装着されている。
【0094】
次に、作業者は、後輪WRを固定した状態で、レンチを用いてナット172を締め付ける。
【0095】
次に、作業者は、モータモジュール46をモータ軸16aに取り付ける。
【0096】
この場合、作業者は、カラー196をモータ軸16aに装着した後に、モータ軸16aがロータ16bの中空部分(中心軸)を挿通するようにモータモジュール46をモータ軸16aに取り付ける。その後、蓋部44bからキャップ180を取り外し、モータ軸16aにワッシャ174を装着した後、モータ軸16aのネジ溝とナット176とを螺合させ、モータ軸16aとロータ16bとを固定させる。モータ軸16aとロータ16bとの固定後、作業者は、蓋部44bにキャップ180を取り付け、次に、アーム部102cの孔124cにリアサスペンション54lを取り付ける。
【0097】
次に、アーム部42l、92、94及びモータケース44を車幅方向に結合する。
【0098】
この場合、先ず、バスバー80a〜80cと接続端子138a〜138cとを接続させる。すなわち、ネジ152a〜152cを孔154a〜154cに挿通させて、各接続端子138a〜138cのネジ孔156a〜156cにそれぞれ螺合させることで、バスバー80a〜80cと接続端子138a〜138cとを接続させる。
【0099】
次に、アーム部92とアーム部42lとを車幅方向に結合させると共に、アーム部92とアーム部102a、102bとを車幅方向に結合させる。
【0100】
この場合、アーム部92の板状部98a、98bの孔122a、122bに、ボルト126a、126bを挿通させて、アーム部102a、102bのネジ孔124a、124bに螺合させれば、アーム部92とアーム部102a、102bとを車幅方向に結合させることができる。また、板状部98a、98bの孔108a、108bにボルト110a、110bをそれぞれ挿通させて、ナット112a、112bに螺合させれば、アーム部42lとアーム部92とを車幅方向に結合させることができる。
【0101】
さらに、バスバー80a〜80cを支持部材150で支持させた状態で、孔114a〜114cと、孔116a〜116cとに、ボルト118a〜118cをそれぞれ挿通させて、溶接ナット120a〜120cに螺合させれば、アーム部92とアーム部94とを車幅方向に結合させると共に、各アーム部92、94の内壁にバスバー80a〜80cを接触させることなく、中空部140内に支持することができる。
【0102】
以上のようにして、電動二輪車10に対して後輪WR、モータモジュール46及び減速機構モジュール50を取り付けることができる。
【0103】
次に、電動二輪車10からの後輪WR、モータモジュール46及び減速機構モジュール50の取り外しについては、前述した取り付け作業と逆の順序で取り外せばよい。
【0104】
なお、本実施形態では、スイングアーム14の左のアーム40lがアーム部42l、92、94及びモータケース44に分割可能であると共に、側面視で、後輪WRの外周又は外側が分割箇所(アーム部42lとアーム部92との分割箇所)であるため、アーム部42l、92、94の車幅方向への結合を解除することにより、モータモジュール46及び後輪WRを一方向に取り外すことができる。ここで、後輪WRの外周とは、該外周そのものに限定されることはなく、外周の近傍(後輪WRの外径よりも多少の小径又は大径の箇所)も含む概念である。
【0105】
また、後輪WR、モータモジュール46及び減速機構モジュール50の交換作業についても、前述した取り付け及び取り外しの作業を適用すれば、容易に行うことができる。
【0106】
以上説明したように、本実施形態に係る電動二輪車10によれば、ホイール90の左側面(一方の側面)側にモータ16が配置されると共に、該ホイール90の右側面(他方の側面)側に減速機構160が配置される。この場合、ホイール90に連結された車軸52の中空部分をモータ軸16aが貫通して、該車軸52の左端部及び右端部からそれぞれ延出している。そして、モータ軸16aの左端部には、モータ16のロータ16bが連結されると共に、モータ軸16aの右端部には減速機構160が連結されている。このように、ホイール90の片側にモータ16が配置され、その反対側に減速機構160が配置されているので、重量バランスを取りやすくなる。また、車軸52の中空部分にモータ軸16aが該車軸52と略同軸に挿通しているため、ホイール90を回転させるためのシャフトの構造がモータ軸16a及び車軸52の二重構造となり、該シャフトの剛性を高めることができる。
【0107】
また、ホイール90、車軸52及びモータ軸16aが略同軸に配置され、該モータ軸16aに対してモータ16及び減速機構160がそれぞれ連結され、さらには、減速機構160が車軸52を介してホイール90に連結されているため、モータ16からモータ軸16a、減速機構160及び車軸52を介してホイール90に至る該ホイール90の駆動系がホイール90の軸上に配置されることになる。これにより、ホイール90の左側面側又は右側面側に駆動系を突出させることなく、該ホイール90に対して駆動系をコンパクトに配置することが可能となる。また、ホイール90周辺のスペースの自由度も高まると共に、減速機構160において、モータ16の回転駆動力に基づきホイール90のトルクを容易に大きくすることができる。
【0108】
このように、本実施形態では、ホイール90の周辺を上述のように構成することで、重量バランスを取りやすく、且つ、該ホイール90に対してモータ16等の駆動系をコンパクトに配置することが可能となる電動二輪車10を実現することができる。
【0109】
また、上述のように重量バランスを取ることで、両持ち式のスイングアーム14を必要以上に強固(高剛性)したり、あるいは、必要以上に大重量とすることなく、モータ16を含むモータモジュール46、及び、減速機構160を含む減速機構モジュール50を介してホイール90、車軸52及びモータ軸16aを左右両側で支持することが可能となる。
【0110】
さらに、モータ16をモータモジュール46としてモジュール化すると共に、減速機構160を減速機構モジュール50としてモジュール化することにより、ホイール90に対するモータモジュール46(モータ16)及び減速機構モジュール50(減速機構160)の取り付け、取り外し又は交換が容易になると共に、ゴミや埃等の異物がモータ16や減速機構160に付着乃至滞積するゴミカミを防止することができる。
【0111】
さらにまた、モータモジュール46がベアリング198を介してホイール90に相対回転可能に取り付けられると共に、減速機構モジュール50がベアリング254を介してホイール90に相対回転可能に取り付けられるので、ホイール90に対するモータモジュール46及び減速機構モジュール50の取り付け、取り外し又は交換を一層容易に行うことができる。
【0112】
また、モータモジュール46及び減速機構モジュール50にリアサスペンション54l、54rをそれぞれ取り付けることで、路面の凹凸等に起因した衝撃を効果的に吸収し、電動二輪車10の乗員の乗り心地を向上させることができる。
【0113】
さらに、モータ軸16aの左端部をロータ16bに固定すると共に、モータ軸16aの右端部を減速機構160側のベアリング210、212で支持しているので、モータ軸16aに対するロータ16b及び減速機構160の取り付け、取り外し又は交換に係る作業性を向上することができる。
【0114】
さらにまた、車軸52及びモータ軸16aの前方に減速機構160の主要部分である減速軸218、ギヤ220及びギヤ部222が設けられるため、減速機構160の重心位置が車軸52及びモータ軸16aよりも前方に位置することになり、この結果、重量バランスに優れた電動二輪車10を実現することができる。
【0115】
また、ホイール90の右側面側にドラムブレーキ260が車軸52及びモータ軸16aに貫通した状態で配置されるため、重量バランスを取りつつ、ホイール90の回転を確実に制動することができる。
【0116】
また、本実施形態に係る電動二輪車10によれば、スイングアーム14におけるホイール90の左側面側(左のアーム40l)を、分割可能な複数のアーム部42l、92、94及びモータケース44から構成することにより、ホイール90の左側面側において、電動二輪車10からアーム部92、94を取り外すだけで、ホイール90及びモータ16を一方向から取り外し、あるいは、一方向に取り付けることが可能となる。すなわち、電動二輪車10からアーム部92、94を取り外せば、ホイール90の左側面側から後輪WR(ホイールアッシー)及びモータケース44を容易に取り外し、あるいは、容易に取り付けることが可能となる。従って、ホイール90及びモータ16の取り付け及び取り外しに係る作業効率を向上させることができる。さらに、モータケース44が左のアーム40lの一構成要素であるため、部品点数の増加も抑制することができる。
【0117】
このように、本実施形態では、ホイール90の周辺を上述のように構成することで、重量バランスを取りやすく、且つ、ホイール90とモータ16との取り付け、取り外し及び交換に係る作業効率を向上させることが可能となる電動二輪車10を実現することができる。
【0118】
さらに、モータケース44に連結されるアーム部92、94の中空部140に電力供給ライン80を配設することにより、該電力供給ライン80を適切に保護することが可能になると共に、電動二輪車10におけるスイングアーム14の箇所での見栄えが良くなる。また、金属材料からなるアーム部92、94であっても、支持部材150によってアーム部92、94の内壁と電力供給ライン80との接触が回避されるので、該電力供給ライン80のショートを確実に防止することができる。
【0119】
また、モータケース44の前方側で、モータ16側の接続端子138a〜138cと電力供給ライン80であるバスバー80a〜80cとを接続することにより、モータ16と電力供給ライン80との接続箇所を保護することができる。このように、接続端子138a〜138cがバスバー80a〜80cの固定部であるため、接続端子138a〜138cに対するバスバー80a〜80cの取り付け作業が容易となる。
【0120】
各アーム部42l、92、94及びモータケース44を車幅方向に結合することにより、作業者は、電動二輪車10の左側にいる状態で、ホイール90及びモータ16の取り外し、取り付け又は交換を遂行することができるので、該作業者の作業負担を軽減しつつ、作業を効率よく行うことが可能となる。また、各アーム部42l、92、94及びモータケース44を車幅方向に結合することで、作業対象となる構成要素のみ取り外せばよいので、作業効率をさらに向上することができる。また、アーム部92、94を車幅方向に結合することにより、電力供給ライン80を挿通させるための中空部140を確実に形成することができる。
【0121】
さらに、複数のボルト110a、110b、118a〜118c、126a、126b、132a〜132d、ナット112a、112b、及び、溶接ナット120a〜120cを用いて、各アーム部42l、92、94及びモータケース44を車幅方向に結合することにより、作業者は、取り付け、取り外し又は交換に係る作業を一層効率よく行うことができる。
【0122】
スイングアーム14におけるホイール90の右側面側(右のアーム40r)も、分割可能なアーム部42r及び減速機構ケース48から構成されているので、ホイール90の右側面側において、電動二輪車10から減速機構160の取り外し、取り付け又は交換を行うことが可能となる。この場合でも、減速機構160の取り付け、取り外し及び交換に係る作業効率を向上させることができる。
【0123】
また、減速機構ケース48をアーム40rの構成要素とすることにより、部品点数の増加も抑制することができる。さらに、アーム部42r及び減速機構ケース48をボルト166a、166bによって車幅方向に結合することにより、減速機構ケース48のみ取り外せばよいので、作業効率の向上を図ることができる。
【0124】
さらにまた、モータケース44の底部を略平坦に形成することにより、モータケース44の下面が地面に接触することを抑制することができる。
【0125】
さらに、本実施形態に係る電動二輪車10によれば、前述のように、ホイール90の片側であるモータ軸16aの左端部にモータ16が連結され、その反対側であるモータ軸16aの右端部に減速機構160が連結されているので、重量バランスが取りやすくなる上、ホイール90とモータケース44との間において、車軸52の左端部側とホイール90とを結合部192で結合すると共に、該結合部192を囲繞するようにラビリンス構造190でホイール90とモータケース44との間をシールしているので、結合部192は、ラビリンス構造190によってシールされた密閉空間に配置される。これにより、電動二輪車10の走行時に後輪WRが巻き上げた飛び石や、乗員等の人のナット172へのアクセス等の外乱から結合部192を保護することが可能となる。また、外部からの泥等の侵入を阻止することができ、この結果、ネジナメに対応してナット172のピットを粗く形成する必要がなくなり、この結果、該ピットを精細な形状に形成して締め付け精度を上げることができる。
【0126】
また、結合部192は、車軸52の外周面に形成されたネジ溝と、ワッシャ170と、ネジ溝に螺合するナット172とから構成されるので、車軸52とホイール90との結合を容易に行うことができる。
【0127】
また、モータケース44とホイール90との間にベアリング194を介挿したので、駆動系の剛性をさらに高めることができる。
【0128】
モータケース44における結合部192と対向する箇所(テーパ部195)を、ナット172を避けるようにテーパ状に形成することで、モータケース44(のモータ16)をホイール90側に寄せることができ、ホイール90に対してモータケース44を一層コンパクトに収容することができる。
【0129】
また、ナット172が右ネジで締まるタイプであれば、電動二輪車10の走行中にナット172が緩んだ場合でも、後輪WRがナット172の締まる方向に回転しているため、テーパ部分とナット172との接触によって、電動二輪車10の走行でナット172を自然と締め付けることが可能になる。
【0130】
また、減速機構ケース48とホイール90との間にベアリング254を介挿したので、駆動系の剛性をより一層高めることができる。
【0131】
さらに、減速機構ケース48とホイール90との間で、ベアリング254を囲繞するようにラビリンス構造252を形成することにより、外部からのゴミ等の侵入を阻止することができる。また、ラビリンス構造252とベアリング254との間の中空部分にドラムブレーキ260を配設することにより、外部環境の影響を排除しつつ、ホイール90の回転を効率よく制動することができる。
【0132】
また、モータケース44とモータ軸16aとの間にベアリング198、200を介挿し、ベアリング194、198、200、254を全てシールベアリングとすれば、外部からのゴミ等の侵入を効果的に阻止して、結合部192又はドラムブレーキ260を外乱から確実に保護することができると共に、ホイール90とモータモジュール46及び減速機構モジュール50とのシールを容易に且つ効率よく行うことができる。
【0133】
また、車軸52の右端部とモータ軸16aとの間にオイルシール232を介挿することにより、モータ軸16aの回転速度と減速機構160により減速された車軸52の回転速度との差が小さくなり、耐久性を向上させることができる。
【0134】
次に、本実施形態の変形例について、図8〜図13を参照しながら説明する。
【0135】
図8は、ドライバー又は六角レンチを差し込み可能な穴部214がモータ軸16aの右端部に形成されると共に、蓋部48cにおける穴部214と対向する箇所にキャップ280が装着されている場合を図示したものである。
【0136】
この変形例において、作業者がナット172を締め付ける際、該作業者は、キャップ280を取り外して、ドライバー又は六角レンチを穴部214に差し込む一方で、レンチによりナット172を固定し、この状態で、ドライバー又は六角レンチを用いてモータ軸16aを回転させると、ドライバー又は六角レンチによるモータ軸16aの小さな回転力が、ギヤ部216、ギヤ220、減速軸218、ギヤ部222及びギヤ224を介して車軸52に伝達されるので、結合部192に大きな締付力が発生して、該大きな締付力でホイール90に対してナット172を容易に締め付けることができる。
【0137】
このように、図8の変形例では、モータ軸16aの右端部に穴部214を形成することにより、ナット172を固定しながらドライバー又は六角レンチで穴部214を回すと、その回転力が減速機構160を介して車軸52に伝達されるので、小さな回転力で結合部192に大きな締付力を発生させることができる。
【0138】
図9は、蓋部48cにキャップ280が装着され、一方で、モータ軸16aの右端部にボルトの頭部282が設けられている場合を図示したものである。この場合でも、一方のレンチでナット172を固定すると共に、キャップ280を外した状態で他方のレンチでボルトの頭部282を回せば、その回転力が減速機構160を介して車軸52に伝達されるので、小さな回転力で結合部192に大きな締付力を発生させることができ、この結果、該大きな締付力でホイール90に対してナット172を容易に締め付けることができる。
【0139】
図10は、蓋部48cにキャップ284が装着され、一方で、減速軸218の右端部にドライバー又は六角レンチを差し込むことが可能な穴部286が設けられている場合を図示したものである。この場合でも、レンチでナット172を固定すると共に、キャップ284を外した状態でドライバー又は六角レンチを穴部286を差し込んで減速軸218を回せば、図8及び図9の構成程の大きな締付力ではないが、穴部286での小さな回転力に対して、ある程度大きな締付力を結合部192に発生させることができ、この結果、ナット172をホイール90に締め付けることができる。
【0140】
図11は、蓋部48cにキャップ284が装着され、一方で、減速軸218の右端部にボルトの頭部288が設けられている場合を図示したものである。この場合でも、一方のレンチでナット172を固定すると共に、キャップ284を外した状態で他方のレンチを用いてボルトの頭部288を回せば、図10の場合と同様に、ボルトの頭部288での小さな回転力に対して、ある程度大きな締付力を結合部192に発生させることができ、この結果、ナット172をホイール90に締め付けることができる。
【0141】
図12及び図13は、第1収容部48aから前方に向かって4本のアーム部290が延在し、これらのアーム部290に対向して、板状部162の先端に平板状の後端部292が形成され、後端部292で前後方向に形成された図示しない孔を複数のボルト294がそれぞれ挿通して、各アーム部290の図示しないネジ穴に螺合することにより、板状部162と各アーム部290とが4本のボルト294によって前後方向に結合される場合を図示したものである。このように、電動二輪車10が走行する前後方向に結合することにより、せん断力(前後方向にかかる力)に強い結合を実現することができる。
【0142】
以上、本発明について好適な実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。また、特許請求の範囲に記載された括弧書きの符号は、本発明の理解の容易化のために添付図面中の符号に倣って付したものであり、本発明がその符号をつけた要素に限定して解釈されるものではない。
【符号の説明】
【0143】
10…電動二輪車 14…スイングアーム
16…モータ 16a…モータ軸
16b…ロータ 16c…ステータ
40l、40r…アーム
42l、42r、92、94、102a〜102c、164a〜164c、290…アーム部
44…モータケース 44a…収容部
44b、48c…蓋部 46…モータモジュール
48…減速機構ケース 48a…第1収容部
48b…第2収容部 50…減速機構モジュール
52…車軸 54l、54r…リアサスペンション
80…電力供給ライン 80a〜80c…バスバー
90…ホイール
110a、110b、118a〜118c、126a、126b、132a〜132d、166a、166b、294…ボルト
112a、112b、172…ナット 120a〜120c…溶接ナット
124a、124b、156a〜156c…ネジ孔
128a〜128d…ネジ穴 138a〜138c…接続端子
140…中空部 150…支持部材
152a〜152c…ネジ 154a〜154c…孔
160…減速機構 162…板状部
170…ワッシャ
182、184、186、188、244、246、248、250…突出部
190、252…ラビリンス構造
194、198、200、210、212、226、228、230、254…ベアリング 195…テーパ部
214、286…穴部 216、222…ギヤ部
218…減速軸 220、224…ギヤ
232、234…オイルシール 282、288…頭部
WR…後輪
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの出力を減速機構を介して車軸に伝達することによりホイールを回転させる電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、モータの出力を減速機構を介して車軸に伝達することによりホイールを回転させる電動車両が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車軸(駆動軸)に対してモータと減速機構とホイールとの順に同軸に連結し、該駆動軸のモータ側の一端部とホイール側の他端部とをナットで締め付ける構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−89439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、モータ軸と減速機構とが一側に片寄って重量バランスが悪い上に、反対側のホイール側面に駆動軸とホイールとを締め付けるナットが露出することになり、電動車両の走行時に車輪が巻き上げた飛び石や、乗員等の人のナットへのアクセス等の外乱に起因して、ナットが影響を受ける可能性がある。
【0006】
本発明は、係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、モータと減速機構とをホイールの両側に振り分けて配置しながらも、ホイールと車軸との結合部を外乱から保護することが可能となる電動車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、
モータ(16)の出力を減速機構(160)を介して車軸(52)に伝達することによりホイール(90)を回転させる電動車両(10)において、
前記車軸(52)は、前記ホイール(90)の両側面から延出するように該ホイール(90)に対して略同軸に貫通した中空の筒状軸であり、
前記筒状軸(52)の中空部分には、該筒状軸(52)の両端部から延出するように前記モータ(16)のモータ軸(16a)が前記筒状軸(52)と略同軸に挿通し、
前記筒状軸(52)の一方の端部から延出した前記モータ軸(16a)の基端部には前記モータ(16)が連結され、
前記筒状軸(52)の他方の端部から延出した前記モータ軸(16a)の先端部には前記減速機構(160)が連結され、
前記ホイール(90)と前記モータ(16)との間には、前記筒状軸(52)の一方の端部側と前記ホイール(90)とを結合する結合部(192)と、前記結合部(192)を囲繞するように前記ホイール(90)と前記モータ(16)との間をシールするシール部(190、194)とが配設されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の電動車両(10)において、
前記結合部(192)は、前記筒状軸(52)の一方の端部に形成されたネジ部と、前記ネジ部に螺合して前記ホイール(90)と前記筒状軸(52)とを結合させるナット(172)とから構成されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の電動車両(10)において、
前記モータ(16)を収容するモータケース(44)と、
前記モータケース(44)と前記ホイール(90)との間で前記モータ軸(16a)、前記筒状軸(52)及び前記結合部(192)を囲繞するように介挿され、前記ホイール(90)に対して前記モータケース(44)を相対回転可能に取り付ける第1のベアリング(194)と、
をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3記載の電動車両(10)において、
前記モータケース(44)における前記結合部(192)と対向する箇所(195)は、前記ナット(172)を避けるようにテーパ状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項3又は4記載の電動車両(10)において、
前記モータ(16)及び前記モータケース(44)から構成されるモータモジュール(46)と、
前記減速機構(160)と該減速機構(160)を収容する減速機構ケース(48)とから構成される減速機構モジュール(50)と、
前記減速機構ケース(48)と前記ホイール(90)との間で前記モータ軸(16a)及び前記筒状軸(52)を囲繞するように介挿され、前記ホイール(90)に対して前記減速機構ケース(48)を相対回転可能に取り付ける第2のベアリング(254)と、
をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項5記載の電動車両(10)において、
前記減速機構ケース(48)と前記ホイール(90)との間には、前記第2のベアリング(254)を囲繞するようにラビリンス構造(252)が形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項6記載の電動車両(10)において、
前記ホイール(90)の回転を制動するブレーキ(260)をさらに備え、
前記ブレーキ(260)は、前記減速機構ケース(48)と前記ホイール(90)との間における前記ラビリンス構造(252)と前記第2のベアリング(254)との間の中空部分に配置されることを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項5〜7のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記モータケース(44)と前記モータ軸(16a)との間に介挿され、前記モータ軸(16a)に対して前記モータケース(44)を相対回転可能に支持する第3のベアリング(198、200)をさらに備え、
前記第1〜第3のベアリング(194、198、200、254)のうち、少なくとも1つのベアリングには、シールが施されていることを特徴とする。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項3〜8のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記シール部(190、194)は、前記モータケース(44)と前記ホイール(90)との間で前記第1のベアリング(194)を囲繞するように形成されたラビリンス構造(190)、及び/又は、シールが施された前記第1のベアリング(194)であることを特徴とする。
【0016】
請求項10に係る発明は、請求項2〜9のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記モータ軸(16a)の先端部には、ドライバー又は六角レンチが差し込み可能な穴部(214)、あるいは、ボルトの頭部(282)が設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項11に係る発明は、請求項2〜10のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記減速機構(160)は、
前記モータ軸(16a)の先端部に形成された第1の歯車(216)と、
前記モータ軸(16a)の前方に配置され、前記第1の歯車(216)に噛合する第2の歯車(220)と、
前記筒状軸(52)及び前記モータ軸(16a)の前方で前記筒状軸(52)及び前記モータ軸(16a)と略平行に配置され、前記第2の歯車(220)と略同軸に連結される減速軸(218)と、
前記減速軸(218)における前記ホイール(90)側に形成された第3の歯車(222)と、
前記筒状軸(52)の他方の端部側で該筒状軸(52)と略同軸に連結され、前記第3の歯車(222)に噛合する第4の歯車(224)と、
を具備し、
前記減速軸(218)における前記第2の歯車(220)側の端部には、ドライバー又は六角レンチが差し込み可能な穴部(286)、あるいは、ボルトの頭部(288)が設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項12に係る発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記筒状軸(52)の他方の端部と前記モータ軸(16a)との間には、シール部材(232)が介挿されていることを特徴とする。
【0019】
請求項13に係る発明は、請求項1〜12のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記モータ(16)と前記減速機構(160)とをそれぞれ支持することにより、前記モータ軸(16a)、前記筒状軸(52)及び前記ホイール(90)を支持する両持ち式のスイングアーム(14)をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、ホイールの片側では、モータ軸の基端部にモータが連結され、その反対側では、前記モータ軸の先端部に減速機構が連結されているので、重量バランスが取りやすくなる上、前記ホイールと前記モータとの間において、車軸としての筒状軸の一方の端部側と前記ホイールとを結合部で結合すると共に、該結合部を囲繞するようにシール部で前記ホイールと前記モータとの間をシールしているので、前記結合部は、前記シール部によってシールされた密閉空間に配置される。これにより、電動車両の走行時に車輪が巻き上げた飛び石や、乗員等の人のナットへのアクセス等の外乱から前記結合部を保護することが可能となる。
【0021】
また、請求項1に記載の発明では、下記の効果も得られる。
【0022】
前記筒状軸の中空部分に前記モータ軸が該筒状軸と略同軸に挿通しているため、前記ホイールを回転させるためのシャフトの構造が前記モータ軸及び前記筒状軸の二重構造となり、該シャフトの剛性を高めることができる。
【0023】
また、前記ホイール、前記筒状軸及び前記モータ軸が略同軸に配置され、該モータ軸に対して前記モータ及び前記減速機構がそれぞれ連結され、さらには、前記減速機構が前記筒状軸及び前記結合部を介して前記ホイールに連結されているため、前記モータから前記モータ軸、前記減速機構、前記筒状軸及び前記結合部を介して前記ホイールに至る該ホイールの駆動系が前記ホイールの軸上に配置されることになる。これにより、前記ホイールの両側面から前記駆動系を突出させることなく、該ホイールに対して前記駆動系をコンパクトに配置することが可能となる。また、前記ホイール周辺のスペースの自由度も高まると共に、前記減速機構において、前記モータの回転駆動力に基づき前記ホイールのトルクを容易に大きくすることができる。
【0024】
請求項2に記載の発明によれば、前記結合部は、前記筒状軸の一方の端部に形成されたネジ部と、前記ネジ部に螺合するナットとから構成されるので、前記筒状軸と前記ホイールとの結合を容易に行うことができる。
【0025】
また、前記シール部によってシールされる前記ホイールと前記モータとの間の密閉空間に前記結合部が配設されるため、外部からの泥等の侵入を阻止することができ、この結果、ネジナメに対応して前記ナットのピットを粗く形成する必要がなくなり、この結果、該ピットを精細な形状に形成して締め付け精度を上げることができる。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、モータケースと前記ホイールとの間に第1のベアリングを介挿したので、前記駆動系の剛性をさらに高めることができる。
【0027】
請求項4に記載の発明によれば、前記モータケースにおける前記結合部と対向する箇所を、前記ナットを避けるようにテーパ状に形成することで、前記モータケース(の前記モータ)を前記ホイール側に寄せることができる。これにより、前記電動車両の走行中に前記ナットが緩んだ場合でも、テーパ部分と前記ナットとの接触によって前記ナットを締め付けることが可能になると共に、前記ホイールに対して前記モータケースを一層コンパクトに収容することができる。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、減速機構ケースと前記ホイールとの間に第2のベアリングを介挿したので、前記駆動系の剛性をより一層高めることができる。
【0029】
請求項6に記載の発明によれば、前記減速機構ケースと前記ホイールとの間で、前記第2のベアリングを囲繞するようにラビリンス構造を形成することにより、外部からのゴミ等の侵入を阻止することができる。
【0030】
請求項7に記載の発明によれば、前記ラビリンス構造と前記第2のベアリングとの間の中空部分にブレーキを配設することにより、外部環境の影響を排除しつつ、前記ホイールの回転を効率よく制動することができる。
【0031】
請求項8に記載の発明によれば、前記モータケースと前記モータ軸との間に第3のベアリングを介挿することで、前記第1〜第3のベアリングのうち、少なくとも1つのベアリングにシールを施せば、外部からのゴミ等の侵入を効果的に阻止して、前記結合部又は前記ブレーキを前記外乱から確実に保護することができる。また、前記第1〜第3のベアリングをシールすれば、前記ホイールと前記モータモジュール及び前記減速機構モジュールとのシールを容易に且つ効率よく行うことができる。
【0032】
請求項9に記載の発明によれば、前記モータケースと前記ホイールとの間で前記第1のベアリングを囲繞するように形成されたラビリンス構造、及び/又は、シールが施された前記第1のベアリングを前記シール部とすることにより、外部からのゴミ等の侵入を確実に且つ効率よく阻止することができる。
【0033】
請求項10に記載の発明によれば、前記モータ軸の先端部に穴部又はボルトの頭部を形成することにより、前記ナットを固定しながら、ドライバー又は六角レンチで前記穴部を回すか、あるいは、レンチを用いて前記ボルトの頭部を回すと、その回転力が前記減速機構を介して前記筒状軸に伝達され、小さな回転力で前記結合部に大きな締付力を発生させることができる。
【0034】
請求項11に記載の発明によれば、減速軸における第2の歯車側の端部に穴部又はボルトの頭部を形成することにより、前記ナットを固定しながら、前記ナットを固定しながら、ドライバー又は六角レンチで前記穴部を回すか、あるいは、レンチを用いて前記ボルトの頭部を回すと、その回転力が前記筒状軸に伝達される。この場合でも、小さな回転力で前記結合部に大きな締付力を発生させることができる。
【0035】
請求項12に記載の発明によれば、前記筒状軸の他方の端部と前記モータ軸との間にシール部材を介挿することにより、前記モータ軸の回転速度と前記減速機構により減速された前記筒状軸の回転速度との差が小さくなり、耐久性を向上させることができる。
【0036】
請求項13に記載の発明によれば、両持ち式のスイングアームで前記モータと前記減速機構とを支持することにより、前記モータ軸、前記筒状軸及び前記ホイールの左右両側で支持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態に係る電動二輪車の左側面図である。
【図2】図1の電動二輪車の右側面図である。
【図3】両持ち式のスイングアームに支持されるモータモジュール、減速機構モジュール、モータ軸、車軸及び後輪の概略平面図である。
【図4】図3のスイングアームにおける左側のアームの一部分解斜視図である。
【図5】図5Aは、図4のアーム部の側面図であり、図5Bは、図4のアーム部の断面図である。
【図6】図3のモータモジュールの分解斜視図である。
【図7】図3のモータモジュール、減速機構モジュール、モータ軸、車軸及び後輪の断面図である。
【図8】図7の減速機構モジュールの他の構成例を示す断面図である。
【図9】図7の減速機構モジュールの他の構成例を示す断面図である。
【図10】図7の減速機構モジュールの他の構成例を示す断面図である。
【図11】図7の減速機構モジュールの他の構成例を示す断面図である。
【図12】スイングアームと減速機構モジュールとの結合に関する他の構成を図示した電動二輪車の右側面図である。
【図13】図12の他の構成を図示した、スイングアーム、モータモジュール、減速機構モジュール、モータ軸、車軸及び後輪の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明に係る電動車両の好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0039】
図1は、本実施形態に係る電動二輪車(電動車両)10の左側面図であり、図2は、該電動二輪車10の右側面図である。
【0040】
電動二輪車10は、ステップフロア12を有するスクーター型の二輪車であり、スイングアーム14に設けられたモータ16(図3参照)の回転駆動力で後輪WRを駆動する。モータ16に電力を供給する高電圧(例えば、72V)のメインバッテリ18は、複数のバッテリセルが直列接続された複数のモジュールを有する。
【0041】
メインフレーム20の上端部には、ステアリングステム22を回転自在に軸支するヘッドパイプ24が結合されている。ステアリングステム22には、前輪WFを回転可能に軸支する左右一対のフロントフォーク26l、26rが取付けられている。前輪WFは、ステアリングステム22の上部に取付けられたアクセルグリップを有するステアリングハンドル28によって操舵可能とされている。ステアリングハンドル28には、アクセルグリップの回動角、つまり、アクセル開度を検出するスロットルセンサ30が設けられている。
【0042】
メインフレーム20には、車体後方に延びている左右一対のサイドフレーム32l、32rが連結され、左右一対のサイドフレーム32l、32rには、車体上後方に延びているリアフレーム34l、34rが連結されている。サイドフレーム32l、32rの後部には、スイングアームピボット36が形成されたピボットプレート38l、38rが取付けられている。
【0043】
スイングアームピボット36には、左右両側のアーム40l、40rで後輪WRを支持する両持ち式のスイングアーム14の前端部42が揺動可能に軸支されている。スイングアーム14の後端部としての左側のモータケース44(を含むモータモジュール46)と右側の減速機構ケース48(を含む減速機構モジュール50)とには、後輪WRが車軸52(図3参照)を介して回転自在に軸支されている。モータケース44及び減速機構ケース48は、リアサスペンション54l、54rによってリアフレーム34l、34rにそれぞれ吊り下げられている。また、リアフレーム34l、34rには、テールライト56が設けられる。
【0044】
ピボットプレート38lには、サイドスタンド58が設けられ、サイドスタンド58は、該サイドスタンド58が所定位置に格納されているときに検出信号を出力するサイドスタンドスイッチ60を有する。
【0045】
メインバッテリ18の前部には、空気導入パイプ62l、62rが連結され、メインバッテリ18の後部には吸気ファン64が設けられる。吸気ファン64によって空気導入パイプ62l、62rからメインバッテリ18に空気が導入されて車体後方に排出される。これにより、メインバッテリ18が発生した熱を外気によって冷却することができる。
【0046】
左右一対のリアフレーム34l、34rの間には、荷室66が設けられ、この荷室66から下部に突出している荷室底部68には、メインバッテリ18又は外部から充電される低電圧(例えば、12V)のサブバッテリ70が収納される。また、荷室66には、メインバッテリ18から供給される直流電流を交流電流に変換してモータ16に供給するPDU(パワードライブユニット)72が設けられる。荷室66の後方には、DC−DCダウンコンバータ(以下、ダウンコンバータとよぶ)74が設けられる。荷室66の上には、荷室66の蓋を兼用する運転者シート76が設けられ、運転者シート76には、運転者が着座したときに作動して着座信号を出力するシートスイッチ78が設けられる。なお、荷室66とモータ16との間には、PDU72からモータ16に交流電流を供給するための電力供給ライン80が設けられている。
【0047】
ヘッドパイプ24の前部にはブラケット82が結合され、このブラケット82の前端部には、ヘッドライト84が取付けられている。また、ステアリングハンドル28の近傍に車速等の表示を行うメータユニット86が設けられている。
【0048】
次に、電動二輪車10の後輪WR周辺の構成について、両持ち式のスイングアーム14との関係で、図1〜図7を参照しながら説明する。
【0049】
スイングアーム14は、前述のように、後輪WRを左右両側のアーム40l、40rで支持する両持ち式のスイングアームである。
【0050】
具体的に、スイングアーム14の前端部42(第5のアーム部、第8のアーム部)は、スイングアームピボット36が挿通する中空の円筒部42aと、円筒部42aの左右両側から後方にそれぞれ延在するアーム部42l、42rと、左右両側のアーム部42l、42rを連結する連結部42bとから構成される。
【0051】
左側のアーム40lは、前端部42からホイールアッシーとしての後輪WRを構成するホイール90の左側面側(一方の側面側)にまで延在している。すなわち、アーム40lは、前述のアーム部42lと、アーム部42lの後部に対して車幅方向に結合されたアーム部92(連結部、第3のアーム部)と、該アーム部92に対して車幅方向に結合されたアーム部94(連結部、第4のアーム部)と、アーム部92の後部に対して車幅方向に結合されたモータケース44とから構成される。
【0052】
また、モータケース44は、モータ16が配置可能な凹部が形成された収容部44a(第1のアーム部)と、モータ16が収容部44aの凹部に配置された状態で、収容部44aに対して車幅方向に覆い被さることにより、収容部44aと共働してモータ16を閉塞する蓋部44b(第2のアーム部)とから構成される。従って、モータ16を収容部44aに配置し、該収容部44aに蓋部44bを被せてモータケース44を構成することにより、モータ16及びモータケース44を含むモータモジュール46が構成される。
【0053】
アーム部42l、92、94、収容部44a及び蓋部44bは、電動二輪車10の車幅方向(図3の左右方向)に互いに結合されている。
【0054】
具体的に、アーム部42lの後端部から板状部96a、96bが上下方向に延在している。また、アーム部92は、その前端部がアーム部42lの後端部及び板状部96a、96bの左側を覆うように、全体的に、断面略C字状に形成された板状部材であり、その右側には、板状部98a、98bが上下方向に延在している。さらに、アーム部94は、断面略C字状のアーム部92と対向するように断面略C字状に形成された板状部材であり、その左側には、板状部98a、98bに対向するように板状部100a、100bが上下方向に延在している。さらにまた、収容部44aの前端部には、アーム部92の各板状部98a、98bに指向するようにアーム部102a、102bが前方に延在している。
【0055】
従って、板状部96a、96bの後端部と板状部98a、98bの前端部とを重ね合わせ、板状部98a、98bの前端部に形成された孔108a、108bにボルト110a、110bをそれぞれ挿通させて、板状部96a、96bの後端で車幅方向に溶接固定されたナット112a、112bに螺合させれば、アーム部42lとアーム部92とを車幅方向に結合させることができる。
【0056】
また、板状部98a、98bの中央部分と板状部100a、100bとを重ね合わせ、板状部98a、98bの中央部分に形成された合計で3つの孔114a〜114c(板状部98aの2つの孔114a、114b及び板状部98bの1つの孔114c)と、3つの孔114a〜114cに対向するように板状部100a、100bに形成された3つの孔116a〜116cとに、ボルト118a〜118cをそれぞれ挿通させて、板状部100a、100bに固定された溶接ナット120a〜120cに螺合させれば、アーム部92とアーム部94とを車幅方向に結合させることができる。
【0057】
さらに、板状部98a、98bの後端部とアーム部102a、102bの先端部とを重ね合わせ、板状部98a、98bの後端部にそれぞれ形成された孔122a、122bに、ボルト126a、126bを挿通させて、アーム部102a、102bの先端部にそれぞれ形成されたネジ孔124a、124bに螺合させれば、アーム部92とアーム部102a、102b(を備えた収容部44a)とを車幅方向に結合させることができる。
【0058】
さらにまた、側面視で略円形状の収容部44aには、周方向に沿って4つのネジ穴128a〜128dが形成されると共に、略円盤状の蓋部44bには、各ネジ穴128a〜128dに対向して孔130a〜130dが形成されている(図6参照)。従って、各ネジ穴128a〜128dと各孔130a〜130dとを位置合わせした状態で、各孔130a〜130dに各ボルト132a〜132dをそれぞれ挿通させて、各ネジ穴128a〜128dと螺合させれば、蓋部44bと収容部44aとを車幅方向に結合させることができる。
【0059】
なお、収容部44aの底部は、平坦な形状に加工されると共に、蓋部44bの底部も、収容部44aの底部に対応して平坦な形状に加工されている。また、収容部44aの後部には、後方に指向してアーム部102cが延在し、アーム部102cの先端部分に形成された孔124cには、リアサスペンション54lが連結されている。
【0060】
収容部44aのアーム部102aとアーム部102bとの間の箇所には、前方に膨出する膨出部134が形成されると共に、蓋部44bには、膨出部134に対応するように前方に膨出する膨出部136が形成されている。
【0061】
モータ16は、中空円筒の車軸52(図7参照)に対して略同軸に挿通するモータ軸16aと、モータ軸16aに対して略同軸に連結されたロータ16bと、ロータ16bを囲繞する環状のステータ16cとから構成されるインナロータ型の三相モータであり、収容部44aの凹部にステータ16cを固定し、該ステータ16cの内方にモータ軸16aが貫通するロータ16bを配置することによりモータケース44に収容される(図3、図5及び図6参照)。この場合、モータ16における膨出部134、136側の箇所には、該膨出部134、136に挟み込まれるように、バスバー型の接続端子138a〜138c(接続部)が前方に指向して設けられている。
【0062】
前述したように、断面略C字状のアーム部92、94が車幅方向に結合されるため、各アーム部92、94の結合によって、C字の部分には、前後方向に延在する中空部140が形成される(図5A及び図5B参照)。また、PDU72からは、電力供給ライン80が出ている(図1〜図3参照)。この電力供給ライン80は、PDU72が収容される荷室66後方から下方に延び、スイングアーム14のアーム部42l側方を通って、上方に向かって円弧状にカーブするアーム部94の先端部142a、142b間から中空部140に進入して、接続端子138a〜138cに至る。
【0063】
この場合、電力供給ライン80は、三相線としてのバスバー80a〜80cから構成されている。各バスバー80a〜80cは、荷室66からアーム部94の先端部142a、142bまでの間は、絶縁シース144によって外部から電気的に絶縁されている。中空部140では、電気絶縁材料からなる断面略C字状の支持部材150が、ネジ146及びナット148の螺合によってアーム部94に固定されている。そのため、各バスバー80a〜80cは、各アーム部92、94と接触しないように支持部材150に支持されている。また、各バスバー80a〜80cのモータ16側の先端部には、ネジ152a〜152cが挿通する孔154a〜154cが形成されている。
【0064】
従って、ネジ152a〜152cが孔154a〜154cを挿通して、各接続端子138a〜138cに形成されたネジ孔156a〜156cにそれぞれ螺合することにより、バスバー80a〜80cを接続端子138a〜138cに固定(接続)させることができ、この結果、PDU72からバスバー80a〜80c及び接続端子138a〜138cを介してモータ16に三相の交流電流を供給し、ロータ16b及びモータ軸16aを回転駆動させることが可能となる。
【0065】
一方、右側のアーム40rは、前端部42からホイール90の右側面側(他方の側面側)にまで延在している(図2及び図3参照)。すなわち、アーム40rは、前述のアーム部42rと、アーム部42rの後部に結合された減速機構ケース48とから構成される。
【0066】
また、減速機構ケース48は、ホイール90の右側面側に設けられ、減速機構160が配置可能な凹部が形成された第1収容部48aと、減速機構160の側部を囲繞するように第1収容部48aに対して車幅方向に結合された第2収容部48bと、第1及び第2収容部48a、48b(第6のアーム部)に減速機構160が配置された状態で、車幅方向に第2収容部48bに覆い被さることにより、第1及び第2収容部48a、48bと共働して減速機構160を閉塞する蓋部48c(第7のアーム部)とから構成される。従って、減速機構160を第1及び第2収容部48a、48bに配置し、第2収容部48bに蓋部48cを被せて減速機構ケース48を構成することにより、減速機構160及び減速機構ケース48を含む減速機構モジュール50が構成される。
【0067】
アーム40rでは、アーム部42r、第1収容部48a、第2収容部48b及び蓋部48cは、車幅方向に互いに結合されている。
【0068】
具体的に、アーム部42rの後端から、側面視でV字状の板状部162が後方に延在している。また、第1収容部48aから板状部162に指向するようにアーム部164a、164bが延在している。従って、ボルト166a、166bを図示しない板状部162の2つの孔にそれぞれ挿通させて、アーム部164a、164bの図示しないネジ穴に螺合させることにより、(アーム部42rの)板状部162と(第1収容部48aの)アーム部164a、164bとを車幅方向に結合させることができる。また、第1収容部48aと、第2収容部48bと、蓋部48cとについても、図示しないボルト等を用いて車幅方向に順に結合させることができる。
【0069】
なお、第1収容部48aの後部には、後方に指向してアーム部164cが延在し、アーム部164cの先端部分に形成された孔168には、リアサスペンション54rが連結されている。リアサスペンション54rは、図3の平面視で、リアサスペンション54lよりも前方でアーム部164cと連結されている。
【0070】
減速機構160は、ホイール90の右側面側にまで延在したモータ軸16aに連結されると共に、モータ16の駆動によって回転するモータ軸16aの回転速度よりも低い回転速度に減速して車軸52を回転させることにより、該車軸52に連結されたホイール90を含む後輪WRを回転させる。
【0071】
次に、ホイール90と、該ホイール90の左右両側に配置されたモータモジュール46及び減速機構モジュール50とについて、図7の断面図を参照しながらさらに具体的に説明する。
【0072】
ホイールアッシーとしての後輪WRを構成するホイール90には、中空円筒の車軸52が略同軸に貫通している。この場合、車軸52のうち、ホイール90を貫通する左側部分の外径及び内径は、減速機構160に連結される右側部分の外径及び内径よりもそれぞれ小さい。そのため、車軸52は、段差を持った筒状軸として構成されている。また、車軸52の外周面におけるホイール90の貫通部分にはスプライン加工が施され、ホイール90のスプライン溝と噛合している(図3及び図7参照)。さらに、ホイール90から僅かに突出する車軸52の左端部(一方の端部)には、図示しないネジ溝(ネジ部)が形成されている。そのため、ワッシャ170を車軸52に装着した状態でナット172と前記ネジ溝とが螺合することにより、ホイール90と車軸52とを結合することができる。なお、ネジ溝、ワッシャ170及びナット172によって、ホイール90と車軸52とを結合する結合部192が構成される。
【0073】
車軸52には、該車軸52の両端部から左右両側に延出するようにモータ軸16aが略同軸に挿通している。この場合、モータ軸16aは、車軸52の中空部分の形状に合わせ、段差を持った円柱軸として構成される。
【0074】
モータ軸16aは、モータ16のロータ16bを貫通している。ロータ16bから左方に突出するモータ軸16aの左端部には、図示しないネジ溝が形成されており、ワッシャ174を装着した状態でナット176と前記ネジ溝とが螺合することにより、モータ軸16aとロータ16bとを結合することができる。また、蓋部44bの中心部には、モータ軸16aの左端部に対向するように、取り外し可能なキャップ180が配設されている。
【0075】
また、収容部44aのホイール90側には、モータ軸16aを囲繞するようにホイール90側に突出する環状の突出部182、184が設けられ、ホイール90の収容部44a側には、モータ軸16aを囲繞するように収容部44a側に突出する環状の突出部186、188が、前述の突出部182、184間に設けられている。
【0076】
この場合、収容部44aの突出部184とホイール90の突出部188との間はラビリンス構造190となっている。
【0077】
また、各突出部184、188よりも内方に設けられた各突出部182、186間には、ベアリング194(第1のベアリング)が配設されており、該ベアリング194によりモータケース44(モータモジュール46)は、ホイール90に対して相対回転可能に支持されることになる。よって、ラビリンス構造190により、電動二輪車10の走行時に後輪WRが巻き上げた飛び石等のベアリング194への直接的な飛散が抑制される。なお、このベアリング194は、シールベアリングを用いることでモータ軸16a側を密閉空間としている。
【0078】
さらに、突出部182のナット172に対向する箇所は、該ナット172を避けるように(ナット172に向かって拡開するように)テーパ状に形成されたテーパ部195として構成される。
【0079】
さらにまた、モータ軸16aにおけるロータ16bと車軸52との間の箇所は段差となっており、この段差にカラー196が装着されている。また、ロータ16bとカラー196と突出部182との間には、ベアリング198が介挿され、一方で、ロータ16bのキャップ180側と蓋部44bとの間には、ベアリング200が装着されている。これらのベアリング198、200によって、モータケース44は、モータ軸16a及びロータ16bに対して相対回転可能に支持されることになる。なお、これらのベアリング198、200もシールベアリングである。
【0080】
一方、モータ軸16aの右端部は、ベアリング210、212を介して第2収容部48b及び蓋部48cに支持されている。
【0081】
減速機構160は、モータ軸16aにおけるベアリング210、212間の箇所に形成されたギヤ部216(第1の歯車)と、モータ軸16a及び車軸52の前方でモータ軸16a及び車軸52と略平行に配設された減速軸218と、減速軸218の蓋部48c側に配設され、ギヤ部216に噛合するギヤ220(第2の歯車)と、減速軸218のホイール90側に形成されたギヤ部222(第3の歯車)と、車軸52の右端部に配設され、ギヤ部222に噛合するギヤ224(第4の歯車)とを含み構成されている。
【0082】
そして、減速機構ケース48内において、減速軸218の両端部は、ベアリング226、228を介して第1収容部48a及び蓋部48cに支持され、ギヤ224は、ベアリング230を介して車軸52の右端部と第2収容部48bとに固定されている。さらに、ギヤ部216、222及びギヤ220、224の焼き付き防止のために、減速機構160にはオイルが注入されている。そのため、車軸52の右端部とモータ軸16aとの間や、第1収容部48aのホイール90側と車軸52との間には、オイルシール232、234が介挿されている。
【0083】
ホイール90における第1収容部48aに対向する箇所には、環状凹部240が形成され、第1収容部48aのホイール90側にも、環状凹部240に対向するように環状凹部242が形成されている。そのため、ホイール90の右側面には、車軸52を囲繞するように第1収容部48a側に突出する環状の突出部244、246が形成され、第1収容部48aのホイール90側には、車軸52を囲繞するようにホイール90側に突出する環状の突出部248、250が形成される。
【0084】
この場合、ホイール90の突出部246と第1収容部48aの突出部250との間にはラビリンス構造252が形成されており、環状凹部240、242により形成される突出部246、250内方の空間は、該ラビリンス構造252により密閉空間となる。
【0085】
また、各突出部246、250よりも内方に形成された各突出部244、248と車軸52との間には、シールベアリングであるベアリング254(第2のベアリング)が配設されており、該ベアリング254により減速機構ケース48(減速機構モジュール50)は、ホイール90に対して相対回転可能に支持される。
【0086】
さらに、ラビリンス構造252により形成された密閉空間における環状凹部240側には、車軸52を囲繞するようにドラムブレーキ260が配設されている。
【0087】
ドラムブレーキ260は、公知のドラムブレーキ機構であり、ホイール90に装着されたドラム262と、ライニング264が取り付けられたリーディングシュー266と、ライニング268が取り付けられたトレーリングシュー270とを含み構成されている。この場合、リーディングシュー266とトレーリングシュー270との間には、図示しないバネ部材が介挿されており、油圧シリンダ等により、前記バネ部材の引張力に抗して、リーディングシュー266とトレーリングシュー270とを前後方向に離間させると、リーディングシュー266のライニング264と、トレーリングシュー270のライニング268とがドラム262をそれぞれ押圧し、この結果、ドラム262が装着されたホイール90の回転を制動させることができる。
【0088】
なお、本実施形態では、ホイール90の回転を制動できるのであれば、ドラムブレーキ260に代えてディスクブレーキを使用してもよいことは勿論である。
【0089】
本実施形態に係る電動二輪車10は、以上のように構成されるものであり、次に、電動二輪車10への後輪WR、モータモジュール46及び減速機構モジュール50の取り付け、取り外し、及び、交換(取り付け、取り外しの双方)の作業について、図1〜図7を参照しながら説明する。
【0090】
最初に、電動二輪車10への後輪WR、モータモジュール46及び減速機構モジュール50の取り付けについて説明する。
【0091】
先ず、モータ軸16a及び車軸52が取り付けられた減速機構モジュール50を電動二輪車10に取り付ける。この場合、作業者は、スイングアーム14のアーム部42rから延在する板状部162の2つの孔にボルト166a、166bを挿通し、減速機構モジュール50側のアーム部164a、164bの図示しないネジ穴に該ボルト166a、166bを螺合させることにより、板状部162とアーム部164a、164bとを車幅方向に結合させる。また、作業者は、車軸52にドラムブレーキ260を装着し、その後、アーム部164cの孔168にリアサスペンション54rを連結させる。
【0092】
次に、ホイールアッシーである後輪WRを車軸52に取り付ける。
【0093】
この場合、作業者は、車軸52の左端部に形成されたスプライン構造と、ホイール90に形成されたスプライン溝とが嵌合するように後輪WRを車軸52に取り付ける。なお、ホイール90にはベアリング194も予め装着されている。
【0094】
次に、作業者は、後輪WRを固定した状態で、レンチを用いてナット172を締め付ける。
【0095】
次に、作業者は、モータモジュール46をモータ軸16aに取り付ける。
【0096】
この場合、作業者は、カラー196をモータ軸16aに装着した後に、モータ軸16aがロータ16bの中空部分(中心軸)を挿通するようにモータモジュール46をモータ軸16aに取り付ける。その後、蓋部44bからキャップ180を取り外し、モータ軸16aにワッシャ174を装着した後、モータ軸16aのネジ溝とナット176とを螺合させ、モータ軸16aとロータ16bとを固定させる。モータ軸16aとロータ16bとの固定後、作業者は、蓋部44bにキャップ180を取り付け、次に、アーム部102cの孔124cにリアサスペンション54lを取り付ける。
【0097】
次に、アーム部42l、92、94及びモータケース44を車幅方向に結合する。
【0098】
この場合、先ず、バスバー80a〜80cと接続端子138a〜138cとを接続させる。すなわち、ネジ152a〜152cを孔154a〜154cに挿通させて、各接続端子138a〜138cのネジ孔156a〜156cにそれぞれ螺合させることで、バスバー80a〜80cと接続端子138a〜138cとを接続させる。
【0099】
次に、アーム部92とアーム部42lとを車幅方向に結合させると共に、アーム部92とアーム部102a、102bとを車幅方向に結合させる。
【0100】
この場合、アーム部92の板状部98a、98bの孔122a、122bに、ボルト126a、126bを挿通させて、アーム部102a、102bのネジ孔124a、124bに螺合させれば、アーム部92とアーム部102a、102bとを車幅方向に結合させることができる。また、板状部98a、98bの孔108a、108bにボルト110a、110bをそれぞれ挿通させて、ナット112a、112bに螺合させれば、アーム部42lとアーム部92とを車幅方向に結合させることができる。
【0101】
さらに、バスバー80a〜80cを支持部材150で支持させた状態で、孔114a〜114cと、孔116a〜116cとに、ボルト118a〜118cをそれぞれ挿通させて、溶接ナット120a〜120cに螺合させれば、アーム部92とアーム部94とを車幅方向に結合させると共に、各アーム部92、94の内壁にバスバー80a〜80cを接触させることなく、中空部140内に支持することができる。
【0102】
以上のようにして、電動二輪車10に対して後輪WR、モータモジュール46及び減速機構モジュール50を取り付けることができる。
【0103】
次に、電動二輪車10からの後輪WR、モータモジュール46及び減速機構モジュール50の取り外しについては、前述した取り付け作業と逆の順序で取り外せばよい。
【0104】
なお、本実施形態では、スイングアーム14の左のアーム40lがアーム部42l、92、94及びモータケース44に分割可能であると共に、側面視で、後輪WRの外周又は外側が分割箇所(アーム部42lとアーム部92との分割箇所)であるため、アーム部42l、92、94の車幅方向への結合を解除することにより、モータモジュール46及び後輪WRを一方向に取り外すことができる。ここで、後輪WRの外周とは、該外周そのものに限定されることはなく、外周の近傍(後輪WRの外径よりも多少の小径又は大径の箇所)も含む概念である。
【0105】
また、後輪WR、モータモジュール46及び減速機構モジュール50の交換作業についても、前述した取り付け及び取り外しの作業を適用すれば、容易に行うことができる。
【0106】
以上説明したように、本実施形態に係る電動二輪車10によれば、ホイール90の左側面(一方の側面)側にモータ16が配置されると共に、該ホイール90の右側面(他方の側面)側に減速機構160が配置される。この場合、ホイール90に連結された車軸52の中空部分をモータ軸16aが貫通して、該車軸52の左端部及び右端部からそれぞれ延出している。そして、モータ軸16aの左端部には、モータ16のロータ16bが連結されると共に、モータ軸16aの右端部には減速機構160が連結されている。このように、ホイール90の片側にモータ16が配置され、その反対側に減速機構160が配置されているので、重量バランスを取りやすくなる。また、車軸52の中空部分にモータ軸16aが該車軸52と略同軸に挿通しているため、ホイール90を回転させるためのシャフトの構造がモータ軸16a及び車軸52の二重構造となり、該シャフトの剛性を高めることができる。
【0107】
また、ホイール90、車軸52及びモータ軸16aが略同軸に配置され、該モータ軸16aに対してモータ16及び減速機構160がそれぞれ連結され、さらには、減速機構160が車軸52を介してホイール90に連結されているため、モータ16からモータ軸16a、減速機構160及び車軸52を介してホイール90に至る該ホイール90の駆動系がホイール90の軸上に配置されることになる。これにより、ホイール90の左側面側又は右側面側に駆動系を突出させることなく、該ホイール90に対して駆動系をコンパクトに配置することが可能となる。また、ホイール90周辺のスペースの自由度も高まると共に、減速機構160において、モータ16の回転駆動力に基づきホイール90のトルクを容易に大きくすることができる。
【0108】
このように、本実施形態では、ホイール90の周辺を上述のように構成することで、重量バランスを取りやすく、且つ、該ホイール90に対してモータ16等の駆動系をコンパクトに配置することが可能となる電動二輪車10を実現することができる。
【0109】
また、上述のように重量バランスを取ることで、両持ち式のスイングアーム14を必要以上に強固(高剛性)したり、あるいは、必要以上に大重量とすることなく、モータ16を含むモータモジュール46、及び、減速機構160を含む減速機構モジュール50を介してホイール90、車軸52及びモータ軸16aを左右両側で支持することが可能となる。
【0110】
さらに、モータ16をモータモジュール46としてモジュール化すると共に、減速機構160を減速機構モジュール50としてモジュール化することにより、ホイール90に対するモータモジュール46(モータ16)及び減速機構モジュール50(減速機構160)の取り付け、取り外し又は交換が容易になると共に、ゴミや埃等の異物がモータ16や減速機構160に付着乃至滞積するゴミカミを防止することができる。
【0111】
さらにまた、モータモジュール46がベアリング198を介してホイール90に相対回転可能に取り付けられると共に、減速機構モジュール50がベアリング254を介してホイール90に相対回転可能に取り付けられるので、ホイール90に対するモータモジュール46及び減速機構モジュール50の取り付け、取り外し又は交換を一層容易に行うことができる。
【0112】
また、モータモジュール46及び減速機構モジュール50にリアサスペンション54l、54rをそれぞれ取り付けることで、路面の凹凸等に起因した衝撃を効果的に吸収し、電動二輪車10の乗員の乗り心地を向上させることができる。
【0113】
さらに、モータ軸16aの左端部をロータ16bに固定すると共に、モータ軸16aの右端部を減速機構160側のベアリング210、212で支持しているので、モータ軸16aに対するロータ16b及び減速機構160の取り付け、取り外し又は交換に係る作業性を向上することができる。
【0114】
さらにまた、車軸52及びモータ軸16aの前方に減速機構160の主要部分である減速軸218、ギヤ220及びギヤ部222が設けられるため、減速機構160の重心位置が車軸52及びモータ軸16aよりも前方に位置することになり、この結果、重量バランスに優れた電動二輪車10を実現することができる。
【0115】
また、ホイール90の右側面側にドラムブレーキ260が車軸52及びモータ軸16aに貫通した状態で配置されるため、重量バランスを取りつつ、ホイール90の回転を確実に制動することができる。
【0116】
また、本実施形態に係る電動二輪車10によれば、スイングアーム14におけるホイール90の左側面側(左のアーム40l)を、分割可能な複数のアーム部42l、92、94及びモータケース44から構成することにより、ホイール90の左側面側において、電動二輪車10からアーム部92、94を取り外すだけで、ホイール90及びモータ16を一方向から取り外し、あるいは、一方向に取り付けることが可能となる。すなわち、電動二輪車10からアーム部92、94を取り外せば、ホイール90の左側面側から後輪WR(ホイールアッシー)及びモータケース44を容易に取り外し、あるいは、容易に取り付けることが可能となる。従って、ホイール90及びモータ16の取り付け及び取り外しに係る作業効率を向上させることができる。さらに、モータケース44が左のアーム40lの一構成要素であるため、部品点数の増加も抑制することができる。
【0117】
このように、本実施形態では、ホイール90の周辺を上述のように構成することで、重量バランスを取りやすく、且つ、ホイール90とモータ16との取り付け、取り外し及び交換に係る作業効率を向上させることが可能となる電動二輪車10を実現することができる。
【0118】
さらに、モータケース44に連結されるアーム部92、94の中空部140に電力供給ライン80を配設することにより、該電力供給ライン80を適切に保護することが可能になると共に、電動二輪車10におけるスイングアーム14の箇所での見栄えが良くなる。また、金属材料からなるアーム部92、94であっても、支持部材150によってアーム部92、94の内壁と電力供給ライン80との接触が回避されるので、該電力供給ライン80のショートを確実に防止することができる。
【0119】
また、モータケース44の前方側で、モータ16側の接続端子138a〜138cと電力供給ライン80であるバスバー80a〜80cとを接続することにより、モータ16と電力供給ライン80との接続箇所を保護することができる。このように、接続端子138a〜138cがバスバー80a〜80cの固定部であるため、接続端子138a〜138cに対するバスバー80a〜80cの取り付け作業が容易となる。
【0120】
各アーム部42l、92、94及びモータケース44を車幅方向に結合することにより、作業者は、電動二輪車10の左側にいる状態で、ホイール90及びモータ16の取り外し、取り付け又は交換を遂行することができるので、該作業者の作業負担を軽減しつつ、作業を効率よく行うことが可能となる。また、各アーム部42l、92、94及びモータケース44を車幅方向に結合することで、作業対象となる構成要素のみ取り外せばよいので、作業効率をさらに向上することができる。また、アーム部92、94を車幅方向に結合することにより、電力供給ライン80を挿通させるための中空部140を確実に形成することができる。
【0121】
さらに、複数のボルト110a、110b、118a〜118c、126a、126b、132a〜132d、ナット112a、112b、及び、溶接ナット120a〜120cを用いて、各アーム部42l、92、94及びモータケース44を車幅方向に結合することにより、作業者は、取り付け、取り外し又は交換に係る作業を一層効率よく行うことができる。
【0122】
スイングアーム14におけるホイール90の右側面側(右のアーム40r)も、分割可能なアーム部42r及び減速機構ケース48から構成されているので、ホイール90の右側面側において、電動二輪車10から減速機構160の取り外し、取り付け又は交換を行うことが可能となる。この場合でも、減速機構160の取り付け、取り外し及び交換に係る作業効率を向上させることができる。
【0123】
また、減速機構ケース48をアーム40rの構成要素とすることにより、部品点数の増加も抑制することができる。さらに、アーム部42r及び減速機構ケース48をボルト166a、166bによって車幅方向に結合することにより、減速機構ケース48のみ取り外せばよいので、作業効率の向上を図ることができる。
【0124】
さらにまた、モータケース44の底部を略平坦に形成することにより、モータケース44の下面が地面に接触することを抑制することができる。
【0125】
さらに、本実施形態に係る電動二輪車10によれば、前述のように、ホイール90の片側であるモータ軸16aの左端部にモータ16が連結され、その反対側であるモータ軸16aの右端部に減速機構160が連結されているので、重量バランスが取りやすくなる上、ホイール90とモータケース44との間において、車軸52の左端部側とホイール90とを結合部192で結合すると共に、該結合部192を囲繞するようにラビリンス構造190でホイール90とモータケース44との間をシールしているので、結合部192は、ラビリンス構造190によってシールされた密閉空間に配置される。これにより、電動二輪車10の走行時に後輪WRが巻き上げた飛び石や、乗員等の人のナット172へのアクセス等の外乱から結合部192を保護することが可能となる。また、外部からの泥等の侵入を阻止することができ、この結果、ネジナメに対応してナット172のピットを粗く形成する必要がなくなり、この結果、該ピットを精細な形状に形成して締め付け精度を上げることができる。
【0126】
また、結合部192は、車軸52の外周面に形成されたネジ溝と、ワッシャ170と、ネジ溝に螺合するナット172とから構成されるので、車軸52とホイール90との結合を容易に行うことができる。
【0127】
また、モータケース44とホイール90との間にベアリング194を介挿したので、駆動系の剛性をさらに高めることができる。
【0128】
モータケース44における結合部192と対向する箇所(テーパ部195)を、ナット172を避けるようにテーパ状に形成することで、モータケース44(のモータ16)をホイール90側に寄せることができ、ホイール90に対してモータケース44を一層コンパクトに収容することができる。
【0129】
また、ナット172が右ネジで締まるタイプであれば、電動二輪車10の走行中にナット172が緩んだ場合でも、後輪WRがナット172の締まる方向に回転しているため、テーパ部分とナット172との接触によって、電動二輪車10の走行でナット172を自然と締め付けることが可能になる。
【0130】
また、減速機構ケース48とホイール90との間にベアリング254を介挿したので、駆動系の剛性をより一層高めることができる。
【0131】
さらに、減速機構ケース48とホイール90との間で、ベアリング254を囲繞するようにラビリンス構造252を形成することにより、外部からのゴミ等の侵入を阻止することができる。また、ラビリンス構造252とベアリング254との間の中空部分にドラムブレーキ260を配設することにより、外部環境の影響を排除しつつ、ホイール90の回転を効率よく制動することができる。
【0132】
また、モータケース44とモータ軸16aとの間にベアリング198、200を介挿し、ベアリング194、198、200、254を全てシールベアリングとすれば、外部からのゴミ等の侵入を効果的に阻止して、結合部192又はドラムブレーキ260を外乱から確実に保護することができると共に、ホイール90とモータモジュール46及び減速機構モジュール50とのシールを容易に且つ効率よく行うことができる。
【0133】
また、車軸52の右端部とモータ軸16aとの間にオイルシール232を介挿することにより、モータ軸16aの回転速度と減速機構160により減速された車軸52の回転速度との差が小さくなり、耐久性を向上させることができる。
【0134】
次に、本実施形態の変形例について、図8〜図13を参照しながら説明する。
【0135】
図8は、ドライバー又は六角レンチを差し込み可能な穴部214がモータ軸16aの右端部に形成されると共に、蓋部48cにおける穴部214と対向する箇所にキャップ280が装着されている場合を図示したものである。
【0136】
この変形例において、作業者がナット172を締め付ける際、該作業者は、キャップ280を取り外して、ドライバー又は六角レンチを穴部214に差し込む一方で、レンチによりナット172を固定し、この状態で、ドライバー又は六角レンチを用いてモータ軸16aを回転させると、ドライバー又は六角レンチによるモータ軸16aの小さな回転力が、ギヤ部216、ギヤ220、減速軸218、ギヤ部222及びギヤ224を介して車軸52に伝達されるので、結合部192に大きな締付力が発生して、該大きな締付力でホイール90に対してナット172を容易に締め付けることができる。
【0137】
このように、図8の変形例では、モータ軸16aの右端部に穴部214を形成することにより、ナット172を固定しながらドライバー又は六角レンチで穴部214を回すと、その回転力が減速機構160を介して車軸52に伝達されるので、小さな回転力で結合部192に大きな締付力を発生させることができる。
【0138】
図9は、蓋部48cにキャップ280が装着され、一方で、モータ軸16aの右端部にボルトの頭部282が設けられている場合を図示したものである。この場合でも、一方のレンチでナット172を固定すると共に、キャップ280を外した状態で他方のレンチでボルトの頭部282を回せば、その回転力が減速機構160を介して車軸52に伝達されるので、小さな回転力で結合部192に大きな締付力を発生させることができ、この結果、該大きな締付力でホイール90に対してナット172を容易に締め付けることができる。
【0139】
図10は、蓋部48cにキャップ284が装着され、一方で、減速軸218の右端部にドライバー又は六角レンチを差し込むことが可能な穴部286が設けられている場合を図示したものである。この場合でも、レンチでナット172を固定すると共に、キャップ284を外した状態でドライバー又は六角レンチを穴部286を差し込んで減速軸218を回せば、図8及び図9の構成程の大きな締付力ではないが、穴部286での小さな回転力に対して、ある程度大きな締付力を結合部192に発生させることができ、この結果、ナット172をホイール90に締め付けることができる。
【0140】
図11は、蓋部48cにキャップ284が装着され、一方で、減速軸218の右端部にボルトの頭部288が設けられている場合を図示したものである。この場合でも、一方のレンチでナット172を固定すると共に、キャップ284を外した状態で他方のレンチを用いてボルトの頭部288を回せば、図10の場合と同様に、ボルトの頭部288での小さな回転力に対して、ある程度大きな締付力を結合部192に発生させることができ、この結果、ナット172をホイール90に締め付けることができる。
【0141】
図12及び図13は、第1収容部48aから前方に向かって4本のアーム部290が延在し、これらのアーム部290に対向して、板状部162の先端に平板状の後端部292が形成され、後端部292で前後方向に形成された図示しない孔を複数のボルト294がそれぞれ挿通して、各アーム部290の図示しないネジ穴に螺合することにより、板状部162と各アーム部290とが4本のボルト294によって前後方向に結合される場合を図示したものである。このように、電動二輪車10が走行する前後方向に結合することにより、せん断力(前後方向にかかる力)に強い結合を実現することができる。
【0142】
以上、本発明について好適な実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。また、特許請求の範囲に記載された括弧書きの符号は、本発明の理解の容易化のために添付図面中の符号に倣って付したものであり、本発明がその符号をつけた要素に限定して解釈されるものではない。
【符号の説明】
【0143】
10…電動二輪車 14…スイングアーム
16…モータ 16a…モータ軸
16b…ロータ 16c…ステータ
40l、40r…アーム
42l、42r、92、94、102a〜102c、164a〜164c、290…アーム部
44…モータケース 44a…収容部
44b、48c…蓋部 46…モータモジュール
48…減速機構ケース 48a…第1収容部
48b…第2収容部 50…減速機構モジュール
52…車軸 54l、54r…リアサスペンション
80…電力供給ライン 80a〜80c…バスバー
90…ホイール
110a、110b、118a〜118c、126a、126b、132a〜132d、166a、166b、294…ボルト
112a、112b、172…ナット 120a〜120c…溶接ナット
124a、124b、156a〜156c…ネジ孔
128a〜128d…ネジ穴 138a〜138c…接続端子
140…中空部 150…支持部材
152a〜152c…ネジ 154a〜154c…孔
160…減速機構 162…板状部
170…ワッシャ
182、184、186、188、244、246、248、250…突出部
190、252…ラビリンス構造
194、198、200、210、212、226、228、230、254…ベアリング 195…テーパ部
214、286…穴部 216、222…ギヤ部
218…減速軸 220、224…ギヤ
232、234…オイルシール 282、288…頭部
WR…後輪
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(16)の出力を減速機構(160)を介して車軸(52)に伝達することによりホイール(90)を回転させる電動車両(10)において、
前記車軸(52)は、前記ホイール(90)の両側面から延出するように該ホイール(90)に対して略同軸に貫通した中空の筒状軸であり、
前記筒状軸(52)の中空部分には、該筒状軸(52)の両端部から延出するように前記モータ(16)のモータ軸(16a)が前記筒状軸(52)と略同軸に挿通し、
前記筒状軸(52)の一方の端部から延出した前記モータ軸(16a)の基端部には前記モータ(16)が連結され、
前記筒状軸(52)の他方の端部から延出した前記モータ軸(16a)の先端部には前記減速機構(160)が連結され、
前記ホイール(90)と前記モータ(16)との間には、前記筒状軸(52)の一方の端部側と前記ホイール(90)とを結合する結合部(192)と、前記結合部(192)を囲繞するように前記ホイール(90)と前記モータ(16)との間をシールするシール部(190、194)とが配設されている
ことを特徴とする電動車両。
【請求項2】
請求項1記載の電動車両(10)において、
前記結合部(192)は、前記筒状軸(52)の一方の端部に形成されたネジ部と、前記ネジ部に螺合して前記ホイール(90)と前記筒状軸(52)とを結合させるナット(172)とから構成される
ことを特徴とする電動車両。
【請求項3】
請求項2記載の電動車両(10)において、
前記モータ(16)を収容するモータケース(44)と、
前記モータケース(44)と前記ホイール(90)との間で前記モータ軸(16a)、前記筒状軸(52)及び前記結合部(192)を囲繞するように介挿され、前記ホイール(90)に対して前記モータケース(44)を相対回転可能に取り付ける第1のベアリング(194)と、
をさらに備える
ことを特徴とする電動車両。
【請求項4】
請求項3記載の電動車両(10)において、
前記モータケース(44)における前記結合部(192)と対向する箇所(195)は、前記ナット(172)を避けるようにテーパ状に形成されている
ことを特徴とする電動車両。
【請求項5】
請求項3又は4記載の電動車両(10)において、
前記モータ(16)及び前記モータケース(44)から構成されるモータモジュール(46)と、
前記減速機構(160)と該減速機構(160)を収容する減速機構ケース(48)とから構成される減速機構モジュール(50)と、
前記減速機構ケース(48)と前記ホイール(90)との間で前記モータ軸(16a)及び前記筒状軸(52)を囲繞するように介挿され、前記ホイール(90)に対して前記減速機構ケース(48)を相対回転可能に取り付ける第2のベアリング(254)と、
をさらに備える
ことを特徴とする電動車両。
【請求項6】
請求項5記載の電動車両(10)において、
前記減速機構ケース(48)と前記ホイール(90)との間には、前記第2のベアリング(254)を囲繞するようにラビリンス構造(252)が形成されている
ことを特徴とする電動車両。
【請求項7】
請求項6記載の電動車両(10)において、
前記ホイール(90)の回転を制動するブレーキ(260)をさらに備え、
前記ブレーキ(260)は、前記減速機構ケース(48)と前記ホイール(90)との間における前記ラビリンス構造(252)と前記第2のベアリング(254)との間の中空部分に配置される
ことを特徴とする電動車両。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記モータケース(44)と前記モータ軸(16a)との間に介挿され、前記モータ軸(16a)に対して前記モータケース(44)を相対回転可能に支持する第3のベアリング(198、200)をさらに備え、
前記第1〜第3のベアリング(194、198、200、254)のうち、少なくとも1つのベアリングには、シールが施されている
ことを特徴とする電動車両。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記シール部(190、194)は、前記モータケース(44)と前記ホイール(90)との間で前記第1のベアリング(194)を囲繞するように形成されたラビリンス構造(190)、及び/又は、シールが施された前記第1のベアリング(194)である
ことを特徴とする電動車両。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記モータ軸(16a)の先端部には、ドライバー又は六角レンチが差し込み可能な穴部(214)、あるいは、ボルトの頭部(282)が設けられている
ことを特徴とする電動車両。
【請求項11】
請求項2〜10のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記減速機構(160)は、
前記モータ軸(16a)の先端部に形成された第1の歯車(216)と、
前記モータ軸(16a)の前方に配置され、前記第1の歯車(216)に噛合する第2の歯車(220)と、
前記筒状軸(52)及び前記モータ軸(16a)の前方で前記筒状軸(52)及び前記モータ軸(16a)と略平行に配置され、前記第2の歯車(220)と略同軸に連結される減速軸(218)と、
前記減速軸(218)における前記ホイール(90)側に形成された第3の歯車(222)と、
前記筒状軸(52)の他方の端部側で該筒状軸(52)と略同軸に連結され、前記第3の歯車(222)に噛合する第4の歯車(224)と、
を具備し、
前記減速軸(218)における前記第2の歯車(220)側の端部には、ドライバー又は六角レンチが差し込み可能な穴部(286)、あるいは、ボルトの頭部(288)が設けられている
ことを特徴とする電動車両。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記筒状軸(52)の他方の端部と前記モータ軸(16a)との間には、シール部材(232)が介挿されている
ことを特徴とする電動車両。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記モータ(16)と前記減速機構(160)とをそれぞれ支持することにより、前記モータ軸(16a)、前記筒状軸(52)及び前記ホイール(90)を支持する両持ち式のスイングアーム(14)をさらに備える
ことを特徴とする電動車両。
【請求項1】
モータ(16)の出力を減速機構(160)を介して車軸(52)に伝達することによりホイール(90)を回転させる電動車両(10)において、
前記車軸(52)は、前記ホイール(90)の両側面から延出するように該ホイール(90)に対して略同軸に貫通した中空の筒状軸であり、
前記筒状軸(52)の中空部分には、該筒状軸(52)の両端部から延出するように前記モータ(16)のモータ軸(16a)が前記筒状軸(52)と略同軸に挿通し、
前記筒状軸(52)の一方の端部から延出した前記モータ軸(16a)の基端部には前記モータ(16)が連結され、
前記筒状軸(52)の他方の端部から延出した前記モータ軸(16a)の先端部には前記減速機構(160)が連結され、
前記ホイール(90)と前記モータ(16)との間には、前記筒状軸(52)の一方の端部側と前記ホイール(90)とを結合する結合部(192)と、前記結合部(192)を囲繞するように前記ホイール(90)と前記モータ(16)との間をシールするシール部(190、194)とが配設されている
ことを特徴とする電動車両。
【請求項2】
請求項1記載の電動車両(10)において、
前記結合部(192)は、前記筒状軸(52)の一方の端部に形成されたネジ部と、前記ネジ部に螺合して前記ホイール(90)と前記筒状軸(52)とを結合させるナット(172)とから構成される
ことを特徴とする電動車両。
【請求項3】
請求項2記載の電動車両(10)において、
前記モータ(16)を収容するモータケース(44)と、
前記モータケース(44)と前記ホイール(90)との間で前記モータ軸(16a)、前記筒状軸(52)及び前記結合部(192)を囲繞するように介挿され、前記ホイール(90)に対して前記モータケース(44)を相対回転可能に取り付ける第1のベアリング(194)と、
をさらに備える
ことを特徴とする電動車両。
【請求項4】
請求項3記載の電動車両(10)において、
前記モータケース(44)における前記結合部(192)と対向する箇所(195)は、前記ナット(172)を避けるようにテーパ状に形成されている
ことを特徴とする電動車両。
【請求項5】
請求項3又は4記載の電動車両(10)において、
前記モータ(16)及び前記モータケース(44)から構成されるモータモジュール(46)と、
前記減速機構(160)と該減速機構(160)を収容する減速機構ケース(48)とから構成される減速機構モジュール(50)と、
前記減速機構ケース(48)と前記ホイール(90)との間で前記モータ軸(16a)及び前記筒状軸(52)を囲繞するように介挿され、前記ホイール(90)に対して前記減速機構ケース(48)を相対回転可能に取り付ける第2のベアリング(254)と、
をさらに備える
ことを特徴とする電動車両。
【請求項6】
請求項5記載の電動車両(10)において、
前記減速機構ケース(48)と前記ホイール(90)との間には、前記第2のベアリング(254)を囲繞するようにラビリンス構造(252)が形成されている
ことを特徴とする電動車両。
【請求項7】
請求項6記載の電動車両(10)において、
前記ホイール(90)の回転を制動するブレーキ(260)をさらに備え、
前記ブレーキ(260)は、前記減速機構ケース(48)と前記ホイール(90)との間における前記ラビリンス構造(252)と前記第2のベアリング(254)との間の中空部分に配置される
ことを特徴とする電動車両。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記モータケース(44)と前記モータ軸(16a)との間に介挿され、前記モータ軸(16a)に対して前記モータケース(44)を相対回転可能に支持する第3のベアリング(198、200)をさらに備え、
前記第1〜第3のベアリング(194、198、200、254)のうち、少なくとも1つのベアリングには、シールが施されている
ことを特徴とする電動車両。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記シール部(190、194)は、前記モータケース(44)と前記ホイール(90)との間で前記第1のベアリング(194)を囲繞するように形成されたラビリンス構造(190)、及び/又は、シールが施された前記第1のベアリング(194)である
ことを特徴とする電動車両。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記モータ軸(16a)の先端部には、ドライバー又は六角レンチが差し込み可能な穴部(214)、あるいは、ボルトの頭部(282)が設けられている
ことを特徴とする電動車両。
【請求項11】
請求項2〜10のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記減速機構(160)は、
前記モータ軸(16a)の先端部に形成された第1の歯車(216)と、
前記モータ軸(16a)の前方に配置され、前記第1の歯車(216)に噛合する第2の歯車(220)と、
前記筒状軸(52)及び前記モータ軸(16a)の前方で前記筒状軸(52)及び前記モータ軸(16a)と略平行に配置され、前記第2の歯車(220)と略同軸に連結される減速軸(218)と、
前記減速軸(218)における前記ホイール(90)側に形成された第3の歯車(222)と、
前記筒状軸(52)の他方の端部側で該筒状軸(52)と略同軸に連結され、前記第3の歯車(222)に噛合する第4の歯車(224)と、
を具備し、
前記減速軸(218)における前記第2の歯車(220)側の端部には、ドライバー又は六角レンチが差し込み可能な穴部(286)、あるいは、ボルトの頭部(288)が設けられている
ことを特徴とする電動車両。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記筒状軸(52)の他方の端部と前記モータ軸(16a)との間には、シール部材(232)が介挿されている
ことを特徴とする電動車両。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の電動車両(10)において、
前記モータ(16)と前記減速機構(160)とをそれぞれ支持することにより、前記モータ軸(16a)、前記筒状軸(52)及び前記ホイール(90)を支持する両持ち式のスイングアーム(14)をさらに備える
ことを特徴とする電動車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−214150(P2012−214150A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81263(P2011−81263)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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