説明

電動送風機とそれを用いた電気掃除機

【課題】騒音の低い電動送風機を提供すること。
【解決手段】シャフト3に設けられた整流子12とロータコア10にロータ巻線11が施されて構成されるロータ14と、前記ロータ14の外周に位置し磁束を発生するステータ9と、前記ステータ9を保持すると共に前記ロータ14を回転自在に保持するブラケット15と、前記シャフト3の一端に取着され複数の羽根4aを有するインペラ4と、前記インペラ4の外周に位置し前記インペラ4から吐き出された風を整流するディフューザ5と、前記インペラ4と前記ディフューザ5を覆うケーシング6とを備え、前記ディフューザ5と前記ケーシング6との間に防音壁17を設けたもので、電動送風機から発する騒音(特にインペラ4から吐き出される風の噴出し方向に発生する高周波音)を大幅に低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機用の電動送風機と電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な電動送風機の構成について、図6の図面を用いて説明する。
【0003】
図6は、従来の電動送風機の構成を示す半断面図である。
【0004】
図6に示すように、従来の電動送風機1は、電動機2と、電動機2の出力軸であるシャフト3の一端に設けられ複数の羽根4aを有するインペラ4と、インペラ4の外周に位置するディフューザ5と、インペラ4とディフューザ5とを覆うケーシング6によって構成される。
【0005】
電動機2は、ステータコア7にステータ巻線8を施してなるステータ9と、シャフト3に具備されるロータコア10にロータ巻線11を施し、整流子12を同軸上に配置してシャフト3の両端に設けられた軸受13によって回転自在に支持されたロータ14と、ロータ14の整流子12に通電するカーボンブラシ16から構成される。
【0006】
ロータ14は、軸受13を介しブラケット15に固定され、ステータ9は、ロータ14を覆うようブラケット15の内面に固定される。また、ケーシング6はインペラ4とディフューザ5を覆うようにブラケット15の一端に圧入保持される。
【0007】
上記のように構成された従来の電動送風機1が運転される場合、電動機2は、カーボンブラシ16から整流子12を通じてロータ巻線11に通電される。そして、ステータ巻線8で生成される磁界と、ロータ巻線11の磁界との作用によりロータ14の回転位置が移動する。ロータ14の回転位置が移動しても、整流子12とカーボンブラシ16が常に接触するように構成されているため、ロータ巻線11への通電は継続され、ロータ14の回転が継続するように電動機2は動作する。
【0008】
この動作に連動してシャフト3に連結されたインペラ4の回転により、インペラ4内部が外気圧に対して負圧となり風を吸引する。吸引された風は、インペラ4の吸気口18より進入し、ディフューザ5の通路、電動機2内部を通り、最終的には電動送風機1外部へと排出される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−132369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の電動送風機の構成においては、電動送風機内部に防音構成を設けておらず、特に、インペラ4の羽根4aの数と回転数との積の周波数で発する高周波音(電気掃除機特有のキーンという高い音)についての対応が不十分であった。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、騒音を大幅に低減した電動送風機及び電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電動送風機は、シャフトに設けられた整流子とロータコアにロータ巻線が施されて構成されるロータと、前記ロータの外周に位置し磁束を発生するステータと、前記ステータを保持すると共に前記ロータを回転自在に保持するブラケットと、前記シャフトの一端に取着され複数の羽根を有するインペラと、前記インペラの外周に位置し前記インペラから吐き出された風を整流するディフューザと、前記インペラと前記ディフューザを覆うケーシングとを備え、前記ディフューザと前記ケーシングとの間に防音壁を設けたもので、電動送風機から発する騒音(特に、インペラから吐き出される風の噴出し方向に発生する高周波音)を大幅に低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電動送風機及び電気掃除機は、騒音を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における電動送風機の半断面図
【図2】本発明の実施の形態2における電動送風機の半断面図
【図3】本発明の実施の形態3における電動送風機の半断面図
【図4】本発明の実施の形態4における電動送風機の半断面図
【図5】本発明の実施の形態5における電気掃除機の構成図
【図6】従来の電動送風機の半断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、シャフトに設けられた整流子とロータコアにロータ巻線が施されて構成されるロータと、前記ロータの外周に位置し磁束を発生するステータと、前記ステータを保持すると共に前記ロータを回転自在に保持するブラケットと、前記シャフトの一端に取着され複数の羽根を有するインペラと、前記インペラの外周に位置し前記インペラから吐き出された風を整流するディフューザと、前記インペラと前記ディフューザを覆うケーシングとを備え、前記ディフューザと前記ケーシングとの間に防音壁を設けたもので、電動送風機から発する騒音(特に、インペラから吐き出される風の噴出し方向に発生する高周波音)を大幅に低減することができる。
【0016】
第2の発明は、特に、第1の発明の防音壁を複数の壁で構成し、前記複数の壁と壁との間に空気の閉空間を設けたもので、防音壁からケーシング側へと透過する音を低減することができる。
【0017】
第3の発明は、特に、第2の発明の複数で構成された防音壁と防音壁との間の少なくとも一つに防音材を設けたもので、防音壁からケーシング側へと透過する音をさらに低減することができる。
【0018】
第4の発明は、特に、第3の発明の複数で構成された防音壁と防音壁との間でインペラ側に位置する空間の少なくとも一つに、通気性のある防音材を設け、かつ、 インペラ側に位置する前記防音壁を、複数の開口部を有するメッシュ状としたもので、インペラから吐き出された風が防音材を介することになり、さらに騒音を低減することができる。
【0019】
第5の発明に係る電気掃除機は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動送風機を用いたもので、低騒音な電気掃除機が実現できる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における電動送風機の半断面図である。なお、上記従来の電動送風機と同一構成部品については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0022】
図1において、本実施の形態における電動送風機1は、電動機2と、電動機2の出力軸であるシャフト3の一端に設けられ複数の羽根4aを有するインペラ4と、インペラ4の外周に位置するディフューザ5と、ディフューザ5の外周側とケーシング6側面内壁との間に位置する防音壁17と、インペラ4とディフューザ5と防音壁17とを覆うケーシング6によって構成される。
【0023】
電動機2は、ステータコア7にステータ巻線8を施してなるステータ9と、シャフト3に具備されるロータコア10にロータ巻線11を施し、整流子12を同軸上に配置してシャフト3の両端に設けられた軸受13によって回転自在に支持されたロータ14と、ロータ14の整流子12へと通電するカーボンブラシ16から構成される。
【0024】
ロータ14は、軸受13を介しブラケット15に固定され、ステータ9は、ロータ14を覆うようブラケット15の内面に固定される。また、ケーシング6は、インペラ4とディフューザ5と防音壁17を覆うようにブラケット15の一端に圧入保持される。
【0025】
上記のように構成された本実施の形態における電動送風機において、電動送風機1が運転される場合、電動機2は、カーボンブラシ16から整流子12を通じてロータ巻線11に通電される。そして、ステータ巻線8で生成される磁界と、ロータ巻線11の磁界との作用によりロータ14の回転位置が移動する。ロータ14の回転位置が移動しても、整流子12とカーボンブラシ16が常に接触するように構成されているため、ロータ巻線11への通電は継続され、ロータ14の回転が継続するように電動機2は動作する。
【0026】
この動作に連動してシャフト3に連結されたインペラ4の回転により、インペラ4内部が外気圧に対して負圧となり風を吸引する。吸引された風は、インペラ4の吸気口18より進入し、ディフューザ5の上流通路19、防音壁17の内壁側面20、ディフューザ5の下流通路21、電動機2内部を通り、最終的には、電動送風機1の外部へと排出される。
【0027】
この際、インペラ4は、羽根4aと回転数との積の周波数で発する高周波音を発しているが、この高周波音は、指向性を有しており、特に、インペラ4の風の吹き出し方向(遠心方向)に集中している。
【0028】
そこで、本実施の形態のようにインペラ4の遠心方向、つまりはディフューザ5の外周側とケーシング6側面内壁との間に防音壁17を設けることにより、高周波音を大幅に低減することができる。
【0029】
以上のように、本実施の形態においては、電動送風機の騒音を大幅に低減することができる。
【0030】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における電動送風機の半断面図である。なお、上記実施の形態1における電動送風機と同一部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0031】
本実施の形態における電動送風機は、図2に示すように、防音壁17を複数壁とし、複数の防音壁17の壁と壁との間に空気の閉空間22を設けたものである。
【0032】
これによって、同一部材の単純な防音壁17に対して、壁と壁との間に、インペラ4から吐き出された風を進入させない閉空間22を設けることにより、音の伝搬をさらに抑えることができる。
【0033】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3における電動送風機の半断面図である。なお、上記実施の形態1、2における電動送風機と同一部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0034】
本実施の形態における電動送風機は、図3に示すように、複数で構成された防音壁17と防音壁17との間に防音材23を設けたものである。
これによって、単純空気の閉空間に対して、より音を伝搬しづらい防音材23を配することで、より騒音を低下させることができる。
【0035】
(実施の形態4)
図4は、本発明の実施の形態4における電動送風機の半断面図である。なお、上記実施の形態における電動送風機と同一部分については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0036】
本実施の形態における電動送風機は、図4に示すように、複数で構成された防音壁17と防音壁17との間に通気性のある防音材23を設け、かつ、 インペラ4側に位置する防音壁17を、複数の開口部17aを有するメッシュ状24としている。
【0037】
これによって、インペラ4から吐き出された風は、防音壁17のメッシュ状24の開口部17aを通り、通気性のある防音材23を通過した上で、電動送風機1の外部へ排出されるため、風自体の吸音を行うこととなり、さらに騒音を低下させることができる。
【0038】
(実施の形態5)
図5は、本発明の実施の形態5における電気掃除機の構成図である。
【0039】
本実施の形態における電気掃除機は、図5に示すように、掃除機本体34と、掃除機本体34と連通したホース35と、ホース35の一端と連通した延長管36と、延長管36の端部に設けた操作ハンドル37と、延長管36の一端と連通した床用吸込具38とを備え、掃除機本体34内には、吸引力を発生させる電動送風機1を内蔵し、この電動送風機1の上流側には、吸引した塵埃を貯める集塵室39を有している。本実施の形態では、電動送風機1には、上記各実施の形態1〜4で示した電動送風機1のいずれかを用いているものである。
【0040】
以上のように構成された本実施の形態における電気掃除機の動作について説明すると、使用者が操作ハンドル37を持って電気掃除機の運転を開始すると、電動送風機1から吸引力が発生し、床面を移動する床用吸込具38から塵埃を吸い込む。吸引された塵埃は、空気とともに延長管36、ホース35を経て集塵室39へ流れ、集塵室39で、塵埃と空気を分離し、塵埃を集塵室39に貯め込み、空気だけを電動送風機1が吸引する。
【0041】
電動送風機1が吸引した空気は、電動送風機1内部を通過し、さらに掃除機本体34内部を通過して掃除機本体34の外部へ排出される。
【0042】
以上のように、本実施の形態における電気掃除機の掃除機本体34は、騒音を大幅に低減した電動送風機1を内蔵しているので、低騒音で、快適な掃除ができる電気掃除機を提
供することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、本発明にかかる電動送風機とそれを用いた電気掃除機は、電動送風機の騒音の低減が図れるので、電動送風機を用いる家庭用電化機器、産業機器等の用途にも幅広く適用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 電動送風機
2 電動機
3 シャフト
4 インペラ
4a 羽根
5 ディフューザ
6 ケーシング
7 ステータコア
8 ステータ巻線
9 ステータ
10 ロータコア
11 ロータ巻線
12 整流子
13 軸受
14 ロータ
15 ブラケット
16 カーボンブラシ
17 防音壁
18 吸気口
19 上流通路
20 内壁側面
21 下流通路
22 閉空間
23 防音材
24 メッシュ状
34 掃除機本体
35 ホース
36 延長管
37 操作ハンドル
38 床用吸込具
39 集塵室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトに設けられた整流子とロータコアにロータ巻線が施されて構成されるロータと、前記ロータの外周に位置し磁束を発生するステータと、前記ステータを保持すると共に前記ロータを回転自在に保持するブラケットと、前記シャフトの一端に取着され複数の羽根を有するインペラと、前記インペラの外周に位置し前記インペラから吐き出された風を整流するディフューザと、前記インペラと前記ディフューザを覆うケーシングとを備え、前記ディフューザと前記ケーシングとの間に防音壁を設けた電動送風機。
【請求項2】
防音壁を複数の壁で構成し、前記複数の壁と壁との間に空気の閉空間を設けた請求項1に記載の電動送風機。
【請求項3】
複数で構成された防音壁と防音壁との間の少なくとも一つに防音材を設けた請求項2に記載の電動送風機。
【請求項4】
複数で構成された防音壁と防音壁との間でインペラ側に位置する空間の少なくとも一つに、通気性のある防音材を設け、かつ、 インペラ側に位置する前記防音壁を、複数の開口部を有するメッシュ状とした請求項3に記載の電動送風機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動送風機を用いた電気掃除機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−237219(P2012−237219A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105957(P2011−105957)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】