説明

電動送風機とそれを用いた電気掃除機

【課題】掃除機本体の前方に透過する騒音を低減した電動送風機の提供。
【解決手段】中央に貫通孔を備えた円板状のプレート18に対し平行に配され中央に吸引口7を備えたシュラウド17と、プレート18とシュラウド17の間に、貫通孔を中心に回転対称に配設された複数の湾曲したブレード16からなるインペラ4を備え、インペラ4の入口部中央には、プレート18内面上のブレード16の吸引口7側略端部を基点とし、全周方向から吸引口7の中心に向かって立ち上がる傾斜面30aを有するハブ30を備え、傾斜面30aの直径を、吸引口7近傍で最小とし、吸引口7から遠ざかるに従って徐々に大きくなるようにし、インペラ4としての吸込口は、ハブ30と吸引口7とで形成される略円筒形となり、空気は電動送風機1の軸に対して略垂直な全周方向から流入するもので、吸引口7から出てくる騒音をハブ30の壁面で抑え、騒音を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動送風機及びそれを用いた電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電動送風機と電気掃除機として、図5に示されるようなものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5は、上記特許文献1に記載された従来の電動送風機および、それを用いた電気掃除機の部分断面を示すものである。
【0004】
図5において、ファンケース5は、電動送風機1のインペラ4、エアガイド11を覆うと共に、その吸引口7付近には、樹脂ガイド20がファンケース5に一体成形されている。樹脂ガイド20の凹部20aには、円環状の軟質部材15がはめ込まれ、電動送風機1全体は、モータケース13で覆われ、掃除機本体14に内蔵されている。
【0005】
以上のように構成された従来の電動送風機及び電気掃除機について、以下その動作、作用を説明する。
【0006】
電動送風機1に電圧が印加されると、インペラ4が高速回転することにより、掃除機本体14の前方より空気が流入し、樹脂ガイド20を経て、電動送風機1内部へと流れ込み、電動送風機1の内部を冷却し、排気口12より排出される。
【0007】
電動送風機1の回転により、インペラ4の残留アンバランスの影響で、電動送風機1の振動が、それを支えている樹脂ガイド20から軟質部材15を伝達し、掃除機本体14に伝わろうとする。 そのとき、軟質部材15の径は、ファンケース5の径よりも小さく設定されているため 、電動送風機1の触れは小さく、その部分で掃除機本体14に接続されているので、振動が伝わりにくい。 すなわち、振動の伝播に起因する電気掃除機の騒音を抑える効果があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−29259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたような従来の電動送風機の構成では、電動送風機1の吸引口7から発せられる騒音は、電気掃除機の集塵室(図示せず)に逆戻りし、外郭を透過して、使用者に不快感を与えるといった課題があった。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、インペラへの空気の流入を電動送風機の軸方向からではなく、軸に垂直な方向から行うようにし、吸引口には、インペラから排出される騒音がダイレクトに前方に伝わらないようにして、騒音を抑えた電動送風機及び電気掃除機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の電動送風機は、インペラと、前記インペラ外周部から下部にかけて配されたエアガイドと、前記インペラおよび前記エアガイドを内
包するファンケースを備えた電動送風機であって、前記インペラは、中央に貫通孔を備えた円板状のプレートと、前記プレートに対して平行に配され中央に吸引口を備えたシュラウドと、前記プレートと前記シュラウドの間に、前記貫通孔を中心に回転対称に配設された複数の湾曲したブレードからなり、前記インペラの入口部中央には、前記プレート内面上の前記ブレードの前記吸引口側略端部を基点とし、全周方向から、前記吸引口の中心に向かって立ち上がる傾斜面を有するハブを備え、前記ハブの傾斜面を、前記吸引口近傍で、その直径が最小となったあと、前記吸引口から遠ざかるに従って、その直径が徐々に大きくなるように形成し、前記インペラとしての吸込口は、前記ハブと前記吸引口とで形成される略円筒形となり、空気は電動送風機の軸に対して略垂直な全周方向から流入するもので、インペラの吸込口から発生し、電気掃除機の本体前方を透過して出てくる騒音をハブの壁面にて抑えることができ、電動送風機の騒音低減に効果を発揮するものである。
【0012】
また、本発明の電気掃除機は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動送風機を用いたもので、電気掃除機の吸気側から透過する騒音を抑えた電気掃除機が実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、吸気側への騒音の伝播を抑えた電動送風機および電気掃除機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における電動送風機の構成を示す部分断面図
【図2】本発明の実施の形態2における電動送風機の斜視図
【図3】本発明の実施の形態3における電動送風機の部分断面図
【図4】同電動送風機を内蔵した電気掃除機の要部断面図
【図5】従来の電動送風機および電気掃除機の部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明は、インペラと、前記インペラ外周部から下部にかけて配されたエアガイドと、前記インペラおよび前記エアガイドを内包するファンケースを備えた電動送風機であって、前記インペラは、中央に貫通孔を備えた円板状のプレートと、前記プレートに対して平行に配され中央に吸引口を備えたシュラウドと、前記プレートと前記シュラウドの間に、前記貫通孔を中心に回転対称に配設された複数の湾曲したブレードからなり、前記インペラの入口部中央には、前記プレート内面上の前記ブレードの前記吸引口側略端部を基点とし、全周方向から、前記吸引口の中心に向かって立ち上がる傾斜面を有するハブを備え、前記ハブの傾斜面を、前記吸引口近傍で、その直径が最小となったあと、前記吸引口から遠ざかるに従って、その直径が徐々に大きくなるように形成し、前記インペラとしての吸込口は、前記ハブと前記吸引口とで形成される略円筒形となり、空気は電動送風機の軸に対して略垂直な全周方向から流入するもので、インペラの吸込口から発生し、電気掃除機の本体前方を透過して出てくる騒音をハブの壁面にて抑えることができ、電動送風機の騒音低減に効果を発揮するものである。
【0016】
第2の発明は、特に、第1の発明の円板上のプレートの平面から、ハブの傾斜面への接合部は、連続した滑らかなRで形成されたもので、気流がハブからブレードにかけて、スムーズに流れることになり、乱流の発生を抑えることができるので、流路内の損失を抑えた電動送風機を実現できるものである。
【0017】
第3の発明は、特に、第1又は第2の発明のハブの直径が略最小となる位置で、電動送風機の軸に垂直な面で前記ハブを上下に分割し、少なくとも一方のハブの表面に、ブレードから連なると共に3次元曲面を持つ複数の羽根を備えたもので、インペラ入口での衝突損失を低減でき、空気性能の向上が図れるものである。
【0018】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか一つの発明のハブとインペラを電動送風機の回転軸に締結する締結手段を、前記ハブの傾斜面裏側の流路に関係のないスペースに格納したもので、負荷側の軸受から、締結手段までの距離を短くでき、インペラのブレを抑えることができるので、より振動の小さい電動送風機を提供できる。
【0019】
第5の発明に係る電気掃除機は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動送風機を用いたもので、電気掃除機の吸気側から透過する騒音を抑えた電気掃除機が実現できる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における電動送風機の構成を示す部分断面図である。なお、従来の電動送風機と同一構成部品については、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0022】
図1において、本実施の形態における電動送風機1のブラケット9は、内部にステータ2、および高速回転するロータ3を有し、インペラ4は、ロータ3の回転軸6に固定され、ロータ3と共に回転する。インペラ4は、下側で、中央に貫通孔(図示せず)を備えた円板状のプレート18と、上側で、プレート18と平行に配され略傘型形状をしたシュラウド17と、その間に挟持された複数の湾曲したブレード16からなる。
【0023】
また、その外側には、エアガイド11があり、インペラ4から排出された気流を整え、圧力回復させる役割を果たす。さらにインペラ4、エアガイド11の外側は、ファンケース5で覆われ、全体として、電動送風機1を構成している。
【0024】
また、インペラ4の中央には、ブレード16の中央側端部付近から、傾斜が始まり、吸引口7外部へと傾斜が連なるハブ30が回転軸6に取り付けられ、回転軸6終端を、締結手段となるナット31によって、回転自在に締結されている。
【0025】
ハブ30の傾斜面30aは、滑らかなR曲面によって構成され、プレート18の内面と接する傾斜の始点においては、ハブ30の傾斜から、プレート18にかけて、全周方向に対し、連続的なRで段差のないように接続されている。
【0026】
ハブ30の傾斜面30aは、吸引口7近傍で、その直径が最小となったあと、さらに吸引口7から遠ざかるに従って、その直径が徐々に大きくなるように形成され、インペラ4としての吸込口は、ハブ30と吸引口7とで形成される略円筒形となり、空気は、電動送風機1の軸に対して略垂直な全周方向から流入するようになっている。
【0027】
以上のように構成された本実施の形態における電動送風機の動作を以下に説明する。
【0028】
電動送風機1に電圧が印加されると、ロータ3が高速で回転する。次にロータ3が回転することにより回転軸6に固定されたインペラ4が回転する。インペラ4が高速回転すると、外気がハブ30とファンケース5の間に形成される横方向の開口部から流入する。このとき、ハブ30の傾斜面30aは滑らかなRで形成されており、気流は、ロスなくスムーズに流れる。また、インペラ4内部において、ハブ30の外周端から、プレート18へと連なる箇所は、同拡大図に示すように、ハブ30の傾斜面30aのRの中心方向と、ブレード16の端面の直線がちょうど一致しており、段差のない、滑らかな接合となっている。
【0029】
そして、気流は、インペラ4で増速され、その外周から排出される。排出された空気は、エアガイド11を通過する際、圧力変換され、静圧が増す。その後、気流は、ブラケット9内部へと進み、ステータ2、ロータ3等を冷却した後、排気口12より排出される。
【0030】
このようなタイプの電動送風機では、高速回転するインペラ4の外周と、エアガイド11の羽根がかなり近接しており、インペラ4のブレード16が、エアガイド11の羽根11aを高速で横切る際に、耳障りな高周波の騒音を発する。また、空気の流れそのものによる、風切り音も発生する。そして、それらの騒音は、大部分が、空気の流れにのって、排気口12から排出されるが、一部は、流れとは逆に、吸引口7から、発せられるものもある。
【0031】
従来の電動送風機では、その騒音を遮るものがなく、電気掃除機の前方から、外部へ透過し、使用者に不快感を与えるものであったが、本実施の形態では、吸引口7を覆うように設けられたハブ30によって、軸方向へまっすぐ排出される騒音は抑えられ、ハブ30に反射して減衰し、軸とは垂直な方向に排出される。通常、その方向には、電気掃除機の壁面が存在し、電気掃除機の前方への騒音の伝播が抑えられる。また、ハブ30を吸音効果のある材料で構成すると、さらにその効果は高まる。また、ハブ30の傾斜面30aに微小な複数の貫通孔を設け、その裏側のデッドスペースに吸音効果のある吸音材等を置くことによっても、さらなる吸音効果が得られる。
【0032】
このように本実施の形態によれば、インペラ4の中央に設けた、滑らかな傾斜面30aで形成され、吸引口7前方を遮蔽し、空気の流入する方向を略90°変換するハブ30の作用により、インペラ4から逆流する騒音を減衰し、その方向をも略90°曲げることにより、空気性能を維持したまま、前方よりの騒音を抑制することができる電動送風機を実現するものである。
【0033】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における電動送風機の斜視図である。なお、上記第1の実施の形態における電動送風機と同一構成部品については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0034】
図2は、本実施の形態における電動送風機のファンケース5の一部を断面で表したもので、インペラ4の中央には、3次元曲面をもつ羽根19aを備えたインデューサ19が設けられ、その羽根19aはブレード16へと連なっている。インデューサ19の上には、ハブ30取り付けられ、ナット31により電動送風機1の回転軸6に締結されている。
【0035】
本実施の形態では、ハブ30の直径が略最小となる位置で、電動送風機1の軸に垂直な面でハブ30を上下に分割し、下方のハブ30の表面に羽根19aを設けている。
【0036】
また、ファンケース5の中央部付近には、吸気ガイド40が設けられている。
【0037】
以上のように構成された本実施の形態における電動送風機の動作、作用は以下のとおりである。
【0038】
電動送風機1に電圧が印加されるとロータ3が高速で回転する。次にロータ3が回転することにより、回転軸6に固定されたインペラ4が回転する。インペラ4が高速回転すると、外気がハブ30と吸気ガイド40の間に形成された横方向の開口部から流入する。流入した気流は、インデューサ19の3次元曲面の羽根19aの作用により、動圧と静圧を生み出すとともに、入口での衝突損失が軽減され、羽根19aのないときよりも、高い空
気性能を得ることができる。
【0039】
このように本実施の形態によれば、インペラ4の中央に設けた、インデューサ19の作用により、高い空気性能を備え、かつ前方よりの騒音を抑制することができる電動送風機を実現するものである。
【0040】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3における電動送風機の部分断面図、図4は、同電動送風機を内蔵した電気掃除機の要部断面図である。なお、上記実施の形態1、2における電動送風機と同一構成部品については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0041】
本実施の形態における電動送風機においては、図3に示すように、ナット31は、ハブ30の断面において、その傾斜面30aの裏側の空間内に位置している。また、図4は、同電動送風機を掃除機本体14の中に組み込んだ状態の断面図であり、電動送風機1を納める部分だけを示している。
【0042】
図4に示すように、電動送風機1を、掃除機本体14の中に組み込んだ状態においては、吸引口7の前方には、すぐ近くに集塵室(図示せず)を隔てる隔壁23が存在し、スペースはほとんどない。ところが、本実施の形態における電動送風機1であれば、ハブ30を締結するナット31が、ハブ30の傾斜面30a裏側の空間に納められているため、隔壁23までのスペースがわずかであっても、本構成をとることができる。
【0043】
また、図4からわかるように、吸引口7を覆うように設けられたハブ30によって、軸方向へまっすぐ排出される騒音は抑えられ、ハブ30に反射して減衰し、回転軸6とは垂直な方向に排出される。その方向には、隔壁23から延設された、真空を保つための、タイトリブ24が円周上に存在し、騒音は遮られる。よって、電気掃除機の前方への騒音の伝播が一層抑えられる。
【0044】
このように本実施の形態によれば、ハブ30を締結するナット31をハブ30の傾斜面30aの裏側の空間に納めたことにより、掃除機本体14内のわずかなスペースにも、本実施の形態における電動送風機1を格納することができ、掃除機本体14前方よりの騒音を抑制することができる電気掃除機を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明にかかる電動送風機とそれを用いた電気掃除機は、電動送風機の騒音の低減、ならびに電気掃除機の騒音の低減が図れるので、電動送風機を用いる家庭用電化機器、産業機器等の用途にも幅広く適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 電動送風機
2 ステータ
3 ロータ
4 インペラ
5 ファンケース
6 回転軸
7 吸引口
9 ブラケット
11 エアガイド
12 排気口
13 モータケース
14 掃除機本体
15 軟質部材
16 ブレード
17 シュラウド
18 プレート
19 インデューサ
20 樹脂ガイド
23 隔壁
24 タイトリブ
30 ハブ
30a 傾斜面
31 ナット(締結手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラと、前記インペラ外周部から下部にかけて配されたエアガイドと、前記インペラおよび前記エアガイドを内包するファンケースを備えた電動送風機であって、前記インペラは、中央に貫通孔を備えた円板状のプレートと、前記プレートに対して平行に配され中央に吸引口を備えたシュラウドと、前記プレートと前記シュラウドの間に、前記貫通孔を中心に回転対称に配設された複数の湾曲したブレードからなり、前記インペラの入口部中央には、前記プレート内面上の前記ブレードの前記吸引口側略端部を基点とし、全周方向から、前記吸引口の中心に向かって立ち上がる傾斜面を有するハブを備え、前記ハブの傾斜面を、前記吸引口近傍で、その直径が最小となったあと、前記吸引口から遠ざかるに従って、その直径が徐々に大きくなるように形成し、前記インペラとしての吸込口は、前記ハブと前記吸引口とで形成される略円筒形となり、空気は電動送風機の軸に対して略垂直な全周方向から流入することを特徴とする電動送風機。
【請求項2】
円板上のプレートの平面から、ハブの傾斜面への接合部は、連続した滑らかなRで形成された請求項1に記載の電動送風機。
【請求項3】
ハブの直径が略最小となる位置で、電動送風機の軸に垂直な面で前記ハブを上下に分割し、少なくとも一方のハブの表面に、ブレードから連なると共に3次元曲面を持つ複数の羽根を備えた請求項1または2に記載の電動送風機。
【請求項4】
ハブとインペラを電動送風機の回転軸に締結する締結手段を、前記ハブの傾斜面裏側の流路に関係のないスペースに格納した請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動送風機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動送風機を用いた電気掃除機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−53527(P2013−53527A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190303(P2011−190303)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】