説明

電動送風機

【課題】2段構成ディフューザを備えた電動送風機においては、ディフューザの上段流路、下段流路を通過したそれぞれの空気がディフューザ出口で衝突して生じる乱流の影響により、空気の円滑な流れが阻害され、電動送風機としての送風性能を低下させてしまうという課題があった。
【解決手段】ディフューザ8の整流流路を上下の流路に区切る円環状プレート8cに連接しディフューザ8の下段流路を覆うよう設けられた環状壁12により、ディフューザ8の上段流路を流れる空気と下段流路を流れる空気との衝突を防止し、電動送風機としての送風性能の低下を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気掃除機等に使用される電動送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電気掃除機等に使用される電動送風機は、電動機(モータ)と、電動機の回転軸に取り付けられた遠心型の送風ファン(遠心ファン)と、遠心ファンから排出された空気を整流するディフューザとを備える。
【0003】
遠心ファンから排出された空気がディフューザの入り口を通過する際、大きな圧力脈動を原因とした騒音(NZ音)が発生する。従来は、ディフューザを上下2段構成とし、それぞれで発生するNZ音の音圧の放出タイミングをずらすことにより騒音を低減していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−56740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電動送風機においては、ディフューザの上段、下段を通過したそれぞれの空気はディフューザ出口で衝突し乱流を生じさせていた。そのため、空気の円滑な流れが阻害され、電動送風機としての送風性能を低下させてしまうという課題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、騒音を低減しつつ送風性能の低下を防止する電動送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電動送風機は、電動機と、この電動機の回転軸に取り付けられた遠心ファンと、この遠心ファンの外周部に配設され該遠心ファンから吐出される空気を整流する整流風路が形成されたディフューザと、前記遠心ファンと前記ディフューザとを覆ったファンケースとを備えた電動送風機であって、前記ディフューザは、前記整流風路を仕切板により上下風路に区画するとともに、前記仕切板の前記風路の出口側端部に前記上側風路を流れる空気と前記下側風路を流れる空気が混合するのを防止する案内壁を連接して設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成された電動送風機は、円環状プレート(仕切板)に連接しディフューザの下段流路(下側風路)を覆うよう設けられた環状壁(案内壁)を備えるので、ディフューザの上段流路(上側風路)を流れる空気と下段流路を流れる空気の衝突を原因とする乱流を生じさせない。そのため各空気の円滑な流れを阻害されることはなく、電動送風機としての送風性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係る電動送風機の断面斜視図。
【図2】実施の形態1に係る電動送風機の要部断面図。
【図3】実施の形態1に係るディフューザの拡大斜視図。
【図4】実施の形態1に係る他の変形例のディフューザの拡大斜視図。
【図5】実施の形態1に係る図4のディフューザの平面図。
【図6】実施の形態1に係る3段構成のディフューザを備えた電動送風機の要部断面図。
【図7】実施の形態2に係るディフューザの拡大斜視図。
【図8】実施の形態2に係るディフューザの平面図。
【図9】実施の形態3に係る電動送風機の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下図面を用いて本発明の実施の形態1を説明する。図1は実施の形態1に係る電動送風機の断面斜視図を示す。図2は実施の形態1に係る電動送風機の要部断面図を示す。図3は実施の形態1に係るディフューザの拡大斜視図を示す。図4は実施の形態1に係る他の変形例のディフューザの拡大斜視図を示す。図5は実施の形態1に係る図4のディフューザの平面図を示す。図6は実施の形態1に係る3段構成のディフューザを備えた電動送風機の要部断面図を示す。
【0011】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る電動送風機1は、電動機2と、ナット3によって電動機2の回転軸4に取り付けられ、複数のファンブレード5aとファンブレード5aを狭持する前面シュラウド5b及び後面シュラウド5cとからなる遠心ファン5と、遠心ファン5と後述するディフューザ8とを覆い、ブラケット孔6aを有するブラケット6に圧入されたファンカバー(ファンケース)7と、遠心ファン5の吐出口に対向する位置に吸込口が備えられ、遠心ファン5の外周方向に吐出された空気を整流する整流流路(整流風路)が形成されたディフューザ8と、ディフューザ8の整流流路を上下の流路に区画する円環状プレート(仕切板)8cと、円環状プレート8cの整流流路の出口側端部から下段流路(上側風路)を覆うように回転軸4の軸方向に延在して配設された環状壁(案内壁)12と、ディフューザ8と回転軸4に垂直な面に対して対向する位置に設けられディフューザ8の下段流路を流れる空気を電動機に導くリターンガイド(戻り風路)9とから構成される。
【0012】
環状壁12は、ファンカバー7とディフューザ8の外周部との間に形成された流路内に、回転軸4の軸方向に延在して配設、つまり、ディフューザ8の下段流路(下側風路)の出口側開口に対向して配設されているので、上段流路を流れる空気と下段流路を流れる空気との混合を防止することが可能となる。なおこの環状壁12は、必ずしも円環状プレート8cの整流流路の出口側端部から延在されている必要はなく、例えば円環状プレート8cに連接して配設される構成としてもよい。
【0013】
図3乃至図5を用いてディフューザ8の詳細構成について説明する。図3に示すように、ディフューザ8は、回転軸4を貫通させる孔を中央に空けた樹脂性の円板8aと、この円板8aの上面に回転軸4を中心として放射状に等間隔で配された複数の下段ブレード8bと、これら下段ブレード8bの上面に重ねられた略円環状の樹脂性のプレート8cと、この円環状プレート8cの上面に回転軸4を中心として放射状に等間隔で配された複数の上段ブレード8dと、で構成されている。すなわち、本実施の形態におけるディフューザ8は、円環状プレート8cで上下2段の整流流路に分離された構成となっている。
【0014】
隣接する上段ブレード8dによって形成される上段流路の入口が上段吸込口であり、上段流路の出口が上段排出口である。また、隣接する下段ブレード8bによって形成される下段流路の入口が下段吸込口であり、下段流路の出口が下段排出口である。これら上段吸込口、下段吸込口は遠心ファン5の吐出口と対向しており、遠心ファンの吐出口から吐出された空気が上段吸込口と下段吸込口とにそれぞれ分割されて流入する。
【0015】
ディフューザ8の上段流路、下段流路はそれぞれ同じ回転軸4をとるが、上段ブレード8d及び下段ブレード8bはそれぞれ回転軸4の軸に対して遠心ファン5の回転方向に相互にずれて配置されたものである。従って、上段吸込口と下段吸込口についてもそれぞれ回転軸4の軸に対して遠心ファン5の回転方向に相互にずれたものとなっている。
【0016】
またディフューザ8は、図4及び図5に示すように、上段ブレード8dと下段ブレード8aとのブレード枚数は同じとし、上段ブレード8dは、隣接する下段ブレード8bによって形成される流路(整流流路)11の略中間を通る位置に配置されるような構成であってもよい。このような構成とすることにより、ディフューザ8の上段、下段でそれぞれ発生するNZ音は交互に等周期で発生するので、互いに逆位相をとり打ち消しあうこととなる。
【0017】
なお、ディフューザ8を多段構成としてもよい。図6に示すように、3段構成のディフューザ8は、2段構成の場合と比較して、上段ブレード8dと下段ブレード8bとの間に、2枚の円環状プレート8cを介して中段ブレード8eが設けられて3段構成となっている。また、各段のブレードはそれぞれ回転軸4の軸に対して遠心ファン5の回転方向に相互にずれている。こういったことから、多段のディフューザは、複数の円環状プレート8cを介して複数のブレードが多段となるとともに、各段におけるブレードがそれぞれ回転軸4の軸に対して遠心ファン5の回転方向に相互にずれることにより構成される。
【0018】
図2を用いて本実施の形態に係る電動送風機の動作について説明する。電動機2を運転すると、電動機2の回転軸4に取り付けられた遠心ファン5が高速に回転し、空気10が遠心ファン5の吸込口へ流入する。遠心ファン5の吐出口から吐出された空気10は、ディフューザ8の上段吸込口と下段吸込口とにそれぞれ空気10a、10bに分かれてディフューザ8内に流入する。上段吸込口を通過した空気10dは、上段排出口から出ていき、そのまま環状壁12の外周側とファンカバー7の内周側に沿って略90°転向してブラケット6に設けられたブラケット孔6aから排出される。一方、下段吸込口を通過した空気10eは、下段排出口から出て行き、環状壁12の内周側とリターンガイド9によって略180°転向して電動機2へ流入させられ、電動機2を冷却しながら電動送風機1の外に排出される。そのため、これら空気10dと空気10eは混合されることなく電動送風機1外に排出される。
【0019】
以上のように、本発明の実施の形態1に係る電動送風機1は、円環状プレート8cに設けられディフューザ8の下段流路を覆う環状壁12を備えるので、ディフューザの上段流路を流れる空気と下段流路を流れる空気が混合するのを防止し、各空気が衝突せず、乱流を生じさせない。そのため各空気の円滑な流れを阻害されることはなく、電動送風機としての送風性能の低下を防止することができる。
【0020】
また、ディフューザ8の下段吸込口で発生したNZ音の一部を環状壁12で吸収することにより、電動送風機として発生する騒音を低減することができる。
【0021】
また、ディフューザ8の上段流路を通過した空気10dについては、転向角が小さく、また電動機2を通過しないため、エネルギー損失を少なく排気することが可能となる。
【0022】
実施の形態2.
以下図面を用いて実施の形態2について説明する。図7は実施の形態2に係る電動送風機の断面斜視図を示す。図8は実施の形態2に係るディフューザの平面図を示す。実施の形態1と同一の構成については図1乃至図6と同一の符号を付してその説明を省略する。実施の形態2は、実施の形態1と比較して整流翼13を新たに加えた構成となっている。
【0023】
図7及び図8に示すように、この整流翼13は、ディフューザ8の上段排出口から排出された空気を整流するように環状壁12の外周面上に設けられる。図6において、ディフューザ8の上段排出口から排出された空気10dは、環状壁12の外周面側とファンカバー7の内周側に沿って転向した後、整流翼13によって整流されてから、ブラケットの外周側に形成されたブラケット孔6aから排出される。空気10dは排出される前に整流翼13によって整流されているので、実施の形態3と比較して、ブラケット孔6aとの衝突が緩やかになり、衝突による損失を抑え騒音の発生を抑制する。
【0024】
以上のように、本発明の実施の形態2に係る電動送風機1は、環状壁12の外周面上に複数の整流翼13が設けられており、それら整流翼13はディフューザの上段排出口から排出された空気10dを整流するので、ブラケット孔6aから排出される空気10dの損失を抑えて騒音の発生を抑制し、実施の形態1よりもさらに送風性能を向上させることができる。
【0025】
実施の形態3.
以下図面を用いて実施の形態3について説明する。図9は実施の形態3に係る電動送風機の分解斜視図を示す。実施の形態1と同一の構成については図1乃至図6と同一の符号を付してその説明を省略する。実施の形態3は、実施の形態1と同様に環状壁12を備える点で同じであるが、ディフューザ8の円環状プレート8c及び上段ブレード8dと、環状壁12と、が一体成型された一体型上段ブレード14として構成されている点で異なる。
【0026】
図9に示すように、この一体型上段ブレード14は、円環状プレート8c及び上段ブレード8dと、環状壁12と、が一体成型されることにより構成される。円環状プレート8c及び連続する環状壁12は薄肉の金属板材であり、円環状プレート8c上面には、合成樹脂製の上段ブレード8dが回転軸4を中心として等間隔で放射状に一体成型されている。また、一体型上段ブレード14は、位置決め部15を有しており、この位置決め部15をガイドとして、下段ブレード8bに対しての回転方向の位置決めを行う。
【0027】
以上のように、本発明の実施の形態3に係る電動送風機1は、ディフューザ8の円環状プレート8c及び上段ブレード8dと、環状壁12と、が一体成型された一体型上段ブレード14として構成されているので、電動送風機1の組み立てを行う際には、一体型上段ブレード14を、位置決め部15をガイドとしてブラケット6に嵌め込むだけでよいので、電動送風機1の組み立てが容易にできるとともに、上段ブレード8dの下段ブレード8bに対する位置決めについても容易にできる。
【0028】
また、本発明の実施の形態3に係る電動送風機1においては、円環状プレート8c及び環状壁12は薄肉の金属板材で構成されているので、これらが合成樹脂性である場合と比較して、ディフューザの上段、下段を通過する空気の流路を十分確保でき、送風性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 電動送風機
2 電動機
3 ナット
4 回転軸
5 遠心ファン
5a ファンブレード
5b 前面シュラウド
5c 後面シュラウド
6 ブラケット
6a ブラケット孔
7 ファンカバー
8 ディフューザ
8a 円板
8b 下段ブレード
8c 円環状プレート
8d 上段ブレード
8e 中段ブレード
9 リターンガイド
10 空気
11 流路
12 環状壁
13 整流翼
14 一体型上段ブレード
15 位置決め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、
この電動機の回転軸に取り付けられた遠心ファンと、
この遠心ファンの外周部に配設され該遠心ファンから吐出される空気を整流する整流風路が形成されたディフューザと、
前記遠心ファンと前記ディフューザとを覆ったファンケースとを備えた電動送風機であって、
前記ディフューザは、前記整流風路を仕切板により上下風路に区画するとともに、前記仕切板の前記風路の出口側端部に前記上側風路を流れる空気と前記下側風路を流れる空気が混合するのを防止する案内壁を連接して設けたことを特徴とする電動送風機。
【請求項2】
前記案内壁は、前記下側風路の出口側開口に対向して配設されたことを特徴とする請求項1記載の電動送風機。
【請求項3】
前記案内壁は、前記ファンケースと前記ディフューザの外周部との間に形成された風路内に前記回転軸の軸方向に延在して配設されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動送風機。
【請求項4】
前記ディフューザの下側風路を流れる空気を戻り風路を経て電動機に導くようにしたことを特徴とする請求項3記載の電動送風機。
【請求項5】
前記案内壁の外周面上に設けられ前記ディフューザの上側風路を流れる空気を整流する整流翼を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電動送風機。
【請求項6】
前記仕切板と前記案内壁は金属板材で一体成型されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電動送風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−193679(P2012−193679A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58697(P2011−58697)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】