説明

電場変更用電極内蔵イオントラップ

【課題】 四重極電場のずれを小さくすることができる四重極イオントラップを提供する。
【解決手段】 本発明の四重極イオントラップは、トラップ空間を画定する複数の主電極(15、16、45、46、47、48)であって、開口部(12、13、72)と少なくとも1つの曲面(17、18)とを有する第1の主電極(15、16、45)を含み、曲面がトラップ空間に隣接して配置されている複数の主電極(15、16、45、46、47、48)と、補正電極(20、22、40、42)であって、第1の主電極の一部が開口部と補正電極との間に介在するように、開口部を有する第1の主電極内に配置されている補正電極(20、22、40、42)とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、四重極イオントラップに関し、より詳細には、四重極イオントラップにおいて電場を補正するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元四重極イオントラップ(例えば3Dイオントラップ)は、質量分析計として利用される市販の装置である。3Dイオントラップは、単体の質量分析器として、又はタンデム質量分析計として使用することができる。線形四重極(例えば2Dイオントラップ)は、質量分析器として、及び/又はタンデム質量分析計のためのイオン蓄積要素及び/又はイオン衝突セルとして使用可能な別の市販の四重極装置である。通常、3D及び2Dいずれのイオントラップの場合でも、開口部を介してイオン及び/又は分子が導入される。
【0003】
3Dイオントラップ及び線形四重極いずれの場合でも、開口部が存在することによって、四重極電場内にある程度のずれが導入されるのは避けられない(例えば、理想的な四重極電位はもはや存在しない)。このずれは、多くの場合に、四重極の性能に悪影響を及ぼす。例えば、ずれによって、ピークの分割、質量シフト及び/又は質量分解能の低下が引き起こされる可能性がある。
【0004】
各開口部の内側端部の周囲に突出部を構成することによって双曲面を変更し、それによって、上記の問題に対処することが開示されている(例えば特許文献1参照)。突出部は、エンドキャップ内の穴(例えば開口部)によって引き起こされる本来の四重極電場からのずれを補正するように意図されている。理想的な双曲面に、そのような突出部を追加することは技術的に難しい。さらに、一旦、突出部を含むように表面が変更されると、四重極電位の分布が決定され、通常、それを変更又は調整するための都合の良い方法は存在しない。
【0005】
ずれを補正するために、開口部内に配置されている開口部補整電極を利用することが開示されている(例えば特許文献2参照)。補整レンズ電源が、主電極に対するのとは異なるRF電圧を補整電極に供給し、それにより、開口部が存在することによって引き起こされる四重極電場のずれが補正される。補整電極は、別の電源を利用して、イオントラップが使用されるときに電位分布が変更されることを含む、電位分布の変更の可能性をもたらす。しかしながら、開口部内での補整電極の配置は、開口部の寸法によって制限される。また、補整電極は、開口部の直ぐ周りの領域内の電位分布に影響を及ぼすが、他の場所ではその影響は小さくなる。
【0006】
また外部で生成されるイオンに関するイオントラップを改善するために、開口部において開口部補整電極を利用することが開示されている(例えば特許文献3参照)。
【0007】
電子工学的な手段によって調整することができるより高次の多重極電場を導入するために、円筒形状に対称に配置されている複数のリングから構成される組み合わせ式のイオントラップが開示されている(例えば特許文献4参照)。組み合わせ式のイオントラップは、製造するのが難しいという不都合がある。さらに、そのイオントラップでは、通常、その組み合わせ式の電極間の正確な幾何学的配列を維持するのが難しい。
【特許文献1】米国特許第6,087,658号
【特許文献2】米国特許第6,608,303号
【特許文献3】米国特許第5,650,617号
【特許文献4】米国特許第5,468,958号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、四重極電場のずれを小さくすることが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明で開示する装置は、トラップ空間を画定する複数の主電極からなる四重極イオントラップを含む。一実施形態では、主電極のうちの少なくとも1つが、開口部と、少なくとも1つの曲面とを有し、その曲面はトラップ空間に隣接して配置されている。また、その装置は、少なくとも1つの補正電極を含む。補正電極は、主電極の一部が開口部と補正電極との間に介在するように、開口部を有する主電極内に配置されている。
【0010】
さらに、四重極イオントラップは、補正電極に対する補助電圧供給源を含む。補助電圧供給源は、補正電極に対して補助電圧を印加するように動作する。補助電圧は調整可能である。1つ又はそれ以上のリング電極、又は複数のストリップ補正電極、又はそれらの電極の組み合わせを補正電極として利用することができる。
【0011】
四重極電位分布を改善するための方法を開示する。その方法は、トラップ空間を画定する複数の主電極を含む四重極イオントラップを設け、主電極のうちの少なくとも1つが、開口部及び少なくとも1つの補正電極を有し、少なくとも1つの補正電極が、主電極の一部が開口部と補正電極との間に介在するように、開口部を有する主電極内に配置され、及び、補正電極に補助電圧を印加することを含む。補助電圧は、主電極に印加される電圧とは異なる電圧に補助電圧を調整できるようにする調整手段を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
通常、3Dイオントラップ及び線形四重極は、イオントラップのトラップ空間に面する四重極の表面に対して理想的な双曲面に近い形状で構成されている。双曲面は、理想に近い四重極電位の生成を容易にする。理想的な四重極電位は以下の式から導出される。
【0013】
Φ=ΦO(x2-y2)/2rO2 :線形四重極の場合
Φ=ΦO(r2-2z2)/2rO2 :3Dイオントラップの場合
ただし、Φはエンドキャップ電極又は四重極ロッド表面に印加される電位であり、rOは四重極の内側寸法である。3Dイオントラップ及び線形四重極の性能は、主に、四重極電場の内側の電位分布によって画定される。したがって、エンドキャップ又はロッドの表面のわずかな変化でも四重極電場に影響を及ぼし、その性能に影響を及ぼす可能性がある。
【0014】
通常、3Dイオントラップ質量分析計では、イオンは外部イオン源において生成され、その後イオンはイオントラップの中に導入される。質量分析のために、イオンはトラップから放出され、また、イオントラップの外側に位置するイオン検出器で検出される。イオンをイオントラップ内に導入し、かつイオントラップから抽出するために、主四重極エンドキャップ電極内に、入口開口穴及び出口開口穴が必要とされる。これらの穴は、通常、エンドキャップの中央に配置されている。衝突セルとして利用される線形四重極の場合、イオン-イオン反応又はイオン-分子反応を容易にするために、さらに別のイオン及び/又は分子が必要とされる。これらのイオン及び/又は分子は、径方向注入技法を利用することにより、四重極電場内に導入される。径方向注入では、通常、四重極ロッドのうちの1つにスロットを開けて、イオン及び/又は分子を導入できるようにするための開口部を形成することにより、開口部を設ける必要がある。
【0015】
本発明が開示する装置及び方法は、主四重極電極内に開口部が存在することによって引き起こされる四重極イオントラップ内の四重極電場のずれを低減する。本発明は、3Dイオントラップ及び線形四重極イオントラップのどちらにも適用することができ、改善された四重極電位分布をもたらす(主四重極電極は、四重極イオントラップにおいて主四重極電場を生成する電極を含み、例えばロッド電極、エンドキャップ電極、リング電極等を含む)。
【0016】
より具体的には、本発明は、主電極の一部が補正電極と開口部との間に介在するような位置に、開口部を有する主電極内に取り付けられる1つ又はそれ以上の補正電極を利用することを含む。開口部が存在することに起因する四重極電場の電位のずれが、補正電極に電圧を印加することによって補正される。1つの例示的な実施形態では、補正電極は、開口部を有する四重極電極と同じ曲がり方をする双曲面を有する。この実施形態では、補正電極の曲がった表面が、主電極の曲がった表面と位置合わせされている。他の実施形態では、電位のずれは、主電極の双曲面よりも下方に、又は上方に位置する補正電極を利用して補正される。この実施形態では、補正電極の幾何学的配列及び幾何学的寸法に対する要件は、通常、補正電極の曲面が主電極の曲面に位置合わせされる場合よりも自由度が高い。
【0017】
補正電極装置は、主電極内の開口部の寸法によって制限されない。さらに、補正電極(単数又は複数)に対して別個の電源を使用することにより、補正電位を調整することができる。実施形態によっては、主電極内に複数の補正電極を配置して、電位分布を制御する際に、さらに大きな自由度を与えることができる。随意的に、補正電極は、主電極内に実装されている1つ又はそれ以上のプリント回路基板の一部として形成することができ、それによって電場を補正するための経済的な方法が提供される。
【0018】
補正装置及び補正方法を使用して、質量分解能を改善することができる。いくつかの例示的な応用形態において、高い質量分解能を達成することができる。
【0019】
図1は、3Dイオントラップの1つの例示的な実施形態の断面図を示す。トラップ10は、主電極、例えばエンドキャップ電極15、16と、主環状電極11とを有する。エンドキャップ電極15、16はそれぞれ、双曲面17、18を有する。エンドキャップ電極15、16は開口部12、13を有する。エンドキャップ電極15、16の一部が補正電極20、22と開口部12、13の間に介在するように、補正電極20、22がそれぞれエンドキャップ電極15、16内に配置されている。この実施形態では、補正電極20、22はリング状補正電極である。したがって、補正電極部分33、34はリング状補正電極20の一部であり、電極部分35、36はリング状補正電極22の一部である。
【0020】
図1に示す実施形態の場合、エンドキャップ電極15、16の双曲面内に円形の切込みが入れられて、各エンドキャップ内に溝が形成されている。溝25、27はそれぞれ、開口部12、13と同軸となるように位置合わせされている。この例示的な実施形態におけるリング状補正電極20、22は、双曲面を有するリング状補正電極である。リング状補正電極20、22は、リング状補正電極20、22の双曲面がエンドキャップ電極15、16の表面17、18の曲がった部分と位置合わせされるように、溝25、27内に配置されている。リング状補正電極20、22は、エンドキャップ電極15、16から電気的に絶縁されている。複数のピン30が、リング状補正電極20、22の背面に取り付けられ、エンドキャップ電極15、16内に穿孔されている穴を介して延在している。ピンはリング状補正電極20、22を適所に保持するのを容易にするだけでなく、リング状補正電極20、22と補助電圧供給源の間で電気的な接続をもたらす。ピンは、補助電圧供給源に接続するのに適した手段を例示している。その接続を達成するための他の手段も同様に適している。
【0021】
通常、従来のRF波形がエンドキャップ電極15、16に適用され、主四重極電位が生成される。リング状補正電極20、22に接続される別個の電圧供給源を利用して、さらに別の補正電位が生成される。リング状補正電極20、22に印加される電圧として、RF電圧、DC電圧又はそれらの電圧の組み合わせを利用することができ、主電極15、16に印加される電圧とは異なる電圧とすることができる。リング状補正電極20、22に印加される電圧及び/又は複数の電圧の一次結合によって、補正電位が生成され、エンドキャップ電極15、16内の開口部12、13によって引き起こされる電位のずれが補正される。補正電圧(単数又は複数)を適切に調整して、所望の概ね理想的な四重極電位場を達成することができる。
【0022】
図2は、エンドキャップ電極16及びリング状補正電極22の一部を拡大した図を示す。エンドキャップ電極16は、リング状補正電極22を収容するための溝25を有する。補正電極コネクタ(例えばピン)30が、リング状補正電極22の電源への接続をもたらす。リング状補正電極22の表面26は、エンドキャップ電極16の表面18の双曲面と適合するように曲がっている。図1及び図2に示す実施形態では、リング状補正電極22の曲面26は、エンドキャップ電極16の曲がった表面18と連続するように位置合わせされている。図示するような溝25は、リング状補正電極22とエンドキャップ16の間に細い隙間を作り出すが、曲がった表面の弧又は曲面は連続している。
【0023】
図3は、リング状補正電極22及び補正電極コネクタ30を備えているエンドキャップ電極16の斜視図である。この図は、リング状補正電極22を含むリング状電極の約半分を示す。図3に示すように、エンドキャップ電極16の部分50が、リング状補正電極22と開口部13の間に介在する。
【0024】
図1、図2及び図3の場合、リング状補正電極20、22の表面は、エンドキャップ電極15、16の双曲面と適合する曲面として示され、エンドキャップ電極15、16の双曲面の曲がった部分に位置合わせされている。この構成は応用形態によっては望ましい。しかしながら、これは不要である。リング状補正電極20、22の表面を平坦にすることができる。さらに、リング状補正電極20、22は、エンドキャップ電極15、16の曲面よりも上方に延在するように、又は代替的には、リング状補正電極20、22の表面がエンドキャップ電極の曲面よりも下方にあるように下方に延在するように配置することができる(エンドキャップ電極の表面より上方は、リング状補正電極が主電極によって画定されるトラップ空間の方向に主電極から延在することを意味しており、エンドキャップ電極の曲面より下方は、リング状補正電極がトラップ空間内に延在しないこと、及び/又は主電極の曲面と連続するように位置合わせされていることを意味する)。リング状補正電極20、22を主電極15、16の表面よりも下方に配置することは、補正電極を正確に機械加工する必要がないという実用上の利点を提供することができる。
【0025】
リング状補正電極20、22を、主電極と同じ材料、又は主電極とは異なる材料から構成することができる。適する電極材料は、例えば、金属、少なくとも1つの表面に金属層が適用されている非導電性材料等を含む。電極に調整可能なRF電圧及び/又はDC電圧を供給する従来の電源を、リング状補正電極20、22に補助電圧を供給するための電源として使用することもできる。
【0026】
図4は、線形四重極イオントラップ100における本発明の1つの例示的な実施形態を示す。線形四重極イオントラップ100は主電極45、46、47、48を有する。主電極45は、開口部72を備える主電極(例えば開口電極)である。開口電極45内に、ストリップ状補正電極40、42が配置されている。この例示的な実施形態では、ストリップ状補正電極40、42は2つの別個の電極である。開口電極45の一部が、ストリップ状補正電極40、42と開口部72の間に介在している。補正電極コネクタ41、43がストリップ状補正電極40、42に取り付けられ、開口電極45から突出し、ストリップ状補正電極40、42の電源への接続をもたらす。
【0027】
図4に示すイオントラップ100の斜視図である図5から明らかなように、開口部72を有する開口電極45は、開口電極ロッド45に沿ってスロットが形成されたロッドであり、開口電極45の主電極ロッド部分73と74の間に開口部72が形成されている。開口部72は、線形四重極トラップ100内にイオン又は分子を注入できるようにするために形成されている。平行な溝75、76が、開口部72のそれぞれの側に、かつ開口部72に対して実質上平行に、主電極ロッド部分73、74の中に構成されている。図5に示す実施形態では、双曲面51、52を有する2つのストリップ状補正電極40、42が、溝75、76の中に配置され、四重極ロッドから電気的に絶縁されている。ストリップ状補正電極40、42の背面にピンが取り付けられ、電極を適所に保持するとともに、補正電極コネクタ41、43を形成し、電気的な接続をもたらす。随意的に、ストリップ状補正電極40、42は、さらに、適切な非導電性接着剤を使用することにより、適所に固定することができる。
【0028】
ストリップ状補正電極40、42と開口電極45の間に適切な絶縁性基板を使用して、補正電極40、42を電気的に絶縁することができる。適切な絶縁性基板の一例はセラミックである。これは例示であり、他の絶縁性基板の材料も同じく適している場合がある。
【0029】
RF電圧、DC電圧又はそれらの電圧の組み合わせをストリップ状補正電極40、42に印加して、補正電位をもたらすことができる。調整可能なRF電圧及び/又はDC電圧を電極に供給する従来の電源を、補正電極40、42に補助電圧を供給するための電源として利用することもできる。補正電極40、42に印加される電圧は制御可能であり、主四重極電極45に対して利用される電圧とは異なる電圧に調整することができる。したがって、ストリップ状補正電極40、42は、さらに別の電位をもたらし、それによって、開口部72によって引き起こされる四重極電場の電位のずれを補正することができる。
【0030】
図6に示すように、ストリップ状補正電極60、62を、プリント回路基板とすることができる。プリント回路基板として、例えば、セラミック系プリント回路基板、又はポリイミド基板上のプリント回路基板のような可撓性のプリント回路基板を使用することができる。図6に示す実施形態では、ストリップ状補正電極60、62は、主電極45の表面より下方に取り付けられている。
【0031】
ストリップ状補正電極40、42の種々の変形形態を利用することができる。例えば、ストリップ状補正電極40、42の表面は、開口電極の表面の曲がった部分と適合するような曲面をなし、かつ主電極45の表面の曲がった部分と形状が合うように位置合わせされる。代替的には、リング状補正電極20、22の場合と同様に、ストリップ状補正電極40、42を、開口電極45の表面よりも上方又は下方に配置することができる。実施形態によっては、ストリップ状補正電極40、42の表面を平坦にすることができ、したがって、必ずしも開口電極45の表面の曲がった部分と形状が一致する必要はない。ストリップ状補正電極40、42は、開口電極45と同じ材料、又は開口電極45と異なる材料から構成することができる。例えば、金属、少なくとも1つの表面上に金属層を有する非導電性材料等のような電極を構成するのに適した種々の材料が存在する。
【0032】
ストリップ状補正電極40、42は、開口電極45から電気的に絶縁されていることが好ましく、開口電極45への電圧とは異なる電圧をストリップ状補正電極40、42に供給するための手段が設けられることが好ましい。実施形態によっては、電圧は調整可能であることが望ましい。随意的に、補正電極40、42への電圧は、イオントラップを利用する分析が進行中に調整可能である。電圧を供給し、制御し、調整するための従来の装置及び方法(例えば電源等)を、本発明を実施する際にも利用することができる。
【0033】
実施形態によっては、ストリップ状補正電極40、42を対で使用すること、及びそれらの電極を開口部72と対称に配列することが望ましい。本明細書では、開口部72に対して平行である配列を示す。この配列は例示であり、ストリップ状補正電極40、42が開口部に対して対称になるように配置される他の配列を利用することもできる。
【0034】
さらに、例示では、一対のストリップ状補正電極40、42を示す。実施形態によっては、複数対のストリップ状補正電極40、42を利用すること、あるいは1つ又はそれ以上のリング状補正電極20、22と組み合わせてストリップ状補正電極40、42を利用すること、あるいは1つ又はそれ以上のリング状補正電極20、22を利用することが望ましい場合もある。複数の補正電極が利用されるとき、全てのリング状補正電極20、22が開口部12、13と同軸となるように配置されていることが好ましく、ストリップ状補正電極40、42が開口部72に対して対称に配置されていることが好ましい。具体的な特徴を最適化するのを容易にするために、複数対のストリップ状補正電極、複数のリング状補正電極、又はリング状補正電極とストリップ状補正電極の組み合わせが望ましい場合もある。
【0035】
本明細書において記述する3Dイオントラップ及び線形イオントラップを質量分析計として利用することができる。質量分析計は、イオントラップの他に、イオン源及び検出器をさらに備えている。
【0036】
これまでの説明は、本発明の数多くの例示的な方法及び実施形態を開示し、記述している。本発明が、本発明の精神又は不可欠な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態において具現できることは当業者には理解されよう。したがって、本発明の開示は、添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲の例示を意図しており、限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の3Dイオントラップの一実施形態の概略的な断面図である。
【図2】補正電極の一実施形態を示すエンドキャップ電極の断面の一部を示す図である。
【図3】補正電極の一実施形態を示すエンドキャップ電極の斜視図である。
【図4】線形四重極イオントラップの一実施形態の概略的な断面図である。
【図5】線形四重極イオントラップの一実施形態の斜視図である。
【図6】プリント回路補正電極を利用する線形四重極の一実施形態の斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
11 主環状電極
12、13 開口部
15、16 主電極
17、18 曲面
20、22 補正電極
25、27 溝
40、42 ストリップ状補正電極
41、43 補正電極コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラップ空間を画定する複数の主電極(15、16、45、46、47、48)であって、開口部(12、13、72)と少なくとも1つの曲面(17、18)とを有する第1の主電極(15、16、45)を含み、該曲面が該トラップ空間に隣接して配置されている複数の主電極(15、16、45、46、47、48)と、
補正電極(20、22、40、42)であって、前記第1の主電極の一部が前記開口部と当該補正電極との間に介在するように、前記開口部を有する前記第1の主電極内に配置されている補正電極(20、22、40、42)とを含む四重極イオントラップ。
【請求項2】
さらに前記補正電極に補助電圧を印加する電圧供給源を含む請求項1に記載の四重極イオントラップ。
【請求項3】
前記補助電圧が、RF電圧、DC電圧、それらの電圧の組み合わせから選択される請求項2に記載の四重極イオントラップ。
【請求項4】
前記電圧供給源が、前記第1の主電極に印加される電圧とは異なる電圧を前記補正電極に印加するように調整可能である請求項2又は3に記載の四重極イオントラップ。
【請求項5】
前記電圧供給源が、前記四重極イオントラップの動作中に、前記補助電圧を変更するように調整可能である請求項2〜4のいずれか一項に記載の四重極イオントラップ。
【請求項6】
前記補正電極が少なくとも1つのリング状電極であり、該少なくとも1つのリング電極が前記開口部と同軸をなす請求項1〜5のいずれか一項に記載の四重極イオントラップ。
【請求項7】
前記補正電極が複数のストリップ状補正電極(40、42)を含み、該複数のストリップ状補正電極が前記開口部に対して対称に配置されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の四重極イオントラップ。
【請求項8】
前記補正電極の表面が平坦である請求項1〜7のいずれか一項に記載の四重極イオントラップ。
【請求項9】
前記補正電極が少なくとも1つの曲面を有し、該曲面が前記第1の主電極の前記曲面と実質上同じ曲がり方をし、前記曲面の曲がった表面が前記第1の主電極の前記曲面と実質上形状が合うように、前記補正電極が配置されている請求項1〜7のいずれか一項に記載の四重極イオントラップ。
【請求項10】
四重極電位分布を改善するための方法であって、
トラップ空間を画定する複数の主電極を含む四重極イオントラップを設け、該主電極が、開口部及び少なくとも1つの補正電極を有する第1の主電極を含み、前記主電極の一部が前記開口部と当該補正電極の間に介在するように、該補正電極が前記開口部を有する前記主電極内に配置され、及び
前記補正電極に補助電圧を印加し、前記補助電圧が、RF電圧、DC電圧、それらの電圧の組み合わせから選択され、かつ調整手段を備え、該調整手段が、前記第1の主電極に印加される電圧とは異なる電圧に前記補助電圧を調整できるようにし、それによって前記トラップ空間内で電場が補正されることを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−5306(P2007−5306A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172081(P2006−172081)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】