説明

電子カメラ

【課題】撮像準備動作の開始タイミングの最適化を図ることにより、撮像準備段階での無駄な電力消費を抑制しつつ、レリーズタイムラグの短縮化を図ることができる電子カメラを提供する。
【解決手段】デジタルカメラに撮像動作を開始させるためのレリーズボタン17を撮像者が押し下げ操作(オン操作)しようと意思決定した時点で、その撮像者の身体に流れる生体電流をグリップ部13に設けた一対の電極部19,20を介して検知回路34にて検知し、その検知信号の信号ベルが所定閾値レベルを超えている場合に、デジタルカメラにおける動作モードが撮像準備動作を開始させる準備モードとなるようにMPU28により制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を用いて被写体の撮像を行う電子カメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、デジタルスチルカメラ等の電子カメラにおいては、撮像者によりレリーズボタンの押し下げ操作がされてから実際に撮像動作が開始されるまでの時間差(所謂レリーズタイムラグ)が銀塩フィルムを用いたカメラの場合と比べて長いという問題がある。そこで、こうしたレリーズタイムラグの短縮化を図った電子カメラが従来から提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1の電子カメラにおいては、例えば電子カメラのグリップ部にタッチセンサを設け、撮像者が撮像操作のためにグリップ部を把持したことをタッチセンサが検知したときに自動露出や自動合焦等の撮像準備動作を開始させるようにしている。すなわち、特許文献1の電子カメラにおいては、撮像者によりレリーズボタンが押し下げ操作される前に撮像準備動作を開始することで、レリーズタイムラグの短縮化を図るようにしている。
【特許文献1】特開2000−333055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子カメラでは、撮像及び撮像準備の各動作が電子カメラに着脱可能な電池等で構成される電源からの電力供給に基づき行われる。そして、撮像準備段階では、撮像素子への通電の他に、自動露出装置、自動合焦装置、ストロボ装置等の比較的大電力を消費する各装置に対して電源から電力が供給されるようになっている。そのため、電子カメラにおいては、レリーズタイムラグの短縮化を図ることと共に、撮像準備段階での無駄な電力消費の抑制ということも重要な課題となっていた。
【0005】
この点、特許文献1の電子カメラにおいては、撮像者が撮像操作のためにグリップ部を把持した時点からレリーズボタンを押し下げ操作するまでの間に例えばアングル調整等のためにグリップ部を把持し直したりすると、そのような大電力を消費する撮像準備動作が繰り返されることになる。また、グリップ部を把持し直すことがなくても、グリップ部を把持した時点からレリーズボタンを押し下げ操作するまでの間にアングル調整等で時間を費やすと、その間は撮像素子への通電が継続していることになる。したがって、特許文献1の電子カメラでは、レリーズタイムラグの短縮化を図れたとしても、撮像準備段階での無駄な電力消費を抑制することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、撮像準備動作の開始タイミングの最適化を図ることにより、撮像準備段階での無駄な電力消費を抑制しつつ、レリーズタイムラグの短縮化を図ることができる電子カメラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の電子カメラは、撮像動作を開始させるときに撮像者によりオン操作される操作手段と、該操作手段を操作する前記撮像者の身体に流れる生体電流を検知する検知手段と、該検知手段の検知結果に基づき撮像のための動作モードを制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記操作手段を前記撮像者がオン操作しようと意思決定した時点での該撮像者における前記生体電流を前記検知手段が検知した場合に、前記動作モードを電源からの電力供給に基づく撮像準備動作を開始させる準備モードとなるように制御することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の電子カメラは、前記検知手段による前記生体電流の検知レベルを調整可能な調整手段を更に備えたことを特徴とする。
また、本発明の電子カメラは、前記制御手段の制御に基づき前記動作モードが前記準備モードになった時点から前記操作手段が前記撮像者によりオン操作された時点までの間に撮像素子を介して得られた被写体の画像データに基づき合成画像データを作成する合成手段を更に備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の電子カメラにおいて、前記制御手段は、前記動作モードを前記準備モードとなるように制御した後において、前記操作手段が予め設定した閾値時間内に前記撮像者によりオン操作されない場合には、前記動作モードを前記準備モードの前段階の動作モードである待機モードとなるように戻し制御することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の電子カメラにおいて、前記検知手段は、前記電子カメラにおける前記操作手段の近傍位置、該操作手段が前記撮像者により操作される際に該撮像者により把持されるグリップ部、及び前記制御手段に対して前記検知結果を出力可能とされた態様で前記撮像者の身体に対して装着自在とされた装着具のうち少なくとも一つに設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の電子カメラにおいて、前記撮像準備動作は、前記電源からの電力供給に基づく自動露出動作、自動合焦動作、自動ホワイトバランス調整動作、ストロボ充電動作、撮像素子通電動作のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、撮像準備動作の開始タイミングの最適化を図ることにより、撮像準備段階での無駄な電力消費を抑制しつつ、レリーズタイムラグの短縮化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を電子カメラの一種であるデジタルスチルカメラ(以下、「デジタルカメラ」という。)に具体化した一実施形態を図1〜図7に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態のデジタルカメラ11は、略直方体形状をなすカメラ本体12を有している。カメラ本体12の前面側右端部寄りの部分には、カメラ本体12を撮像者が撮像時に保持する際に右手の指先で把持するためのグリップ部13が前面側に膨らむように形成されている。また、カメラ本体12の前面側において、グリップ部13よりも左側となる平面領域の略中央部には撮像レンズ部14を内装した伸縮自在な鏡筒14aが設けられると共に、鏡筒14aよりも上側となる二位置にはストロボ発光部15及び合焦動作時に赤外線等を被写体に向けて照射するための照射窓部16が設けられている。
【0014】
また、カメラ本体12の上面右端部寄りの部分には、デジタルカメラ11に撮像動作を開始させるときに撮像者により押し下げ操作(すなわち、オン操作)される操作手段としてのレリーズボタン17が設けられると共に、レリーズボタン17の左側にはデジタルカメラ11を電源オン状態とするときに撮像者により押し下げ操作される電源ボタン18が設けられている。そして、撮像者が被写体を撮像するためにレリーズボタン17の押し下げ操作をする際において撮像者の右手の指先が接触するグリップ部13の前面側部分には導電性材料からなる左右で一対の電極部19,20が各々上下方向に沿って平行に延びるように露出形成されている。
【0015】
一方、カメラ本体12の後面側において前面側の平面領域と対応する領域には、矩形状をなす液晶表示のモニタ21が上下方向の略全域に亘るように設けられている。そして、モニタ21よりも右側の領域において上方寄りの位置にはズームボタン22が設けられ、そのズームボタン22よりも下方となる位置にはセレクトボタン23が設けられている。ズームボタン22は、主として撮像レンズ部14をズームアップ又はズームダウンさせるときに操作される。また、セレクトボタン23は、主としてモニタ21に表示される画面の切り替えや設定の変更を行う際に操作される。
【0016】
次に、本実施形態のデジタルカメラ11における回路構成を図3のブロック図に基づき説明する。
図3に示すように、デジタルカメラ11は、撮像レンズ部14のレンズ群(図3では図面の簡略化のため1つのみ図示)を通過した被写体光を撮像レンズ部14の像空間側において結像させるための撮像素子24をカメラ本体12内に有している。この撮像素子24は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、又はCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサからなり、その撮像面に結像した被写体像に対応した信号電荷を蓄積し、その蓄積した信号電荷を画素信号と呼ばれるアナログ信号として出力する。なお、撮像素子24は、電源ボタン18が押し下げ操作された後において、レリーズボタン17が押し下げ操作される前段階の待機モードにおいても、被写体の経時変化するスルー画像の画素信号を出力し得るように構成されている。
【0017】
撮像素子24の出力側にはA/D変換回路25と信号処理回路26が直列に接続されている。撮像素子24から出力されたアナログ信号からなる画素信号はA/D変換回路25においてデジタル信号に変換された後、信号処理回路26に入力されて各種の画像処理が施されるようになっている。すなわち、信号処理回路26はデジタル化された画素信号に対して例えばホワイトバランス調整等の画像処理を施すことにより所定の画像信号を生成する。そして、この信号処理回路26において生成された画像信号はバッファメモリとして機能する画像メモリ27に一時記憶されるようになっている。
【0018】
また、図3に示すように、デジタルカメラ11は、所定の制御プログラムに基づきデジタルカメラ11における各種動作を統括的に制御するMPU(Micro Processing Unit)28を備えている。そして、このMPU28に対して、既述したレリーズボタン17、電源ボタン18、モニタ21、ズームボタン22、セレクトボタン23、信号処理回路26の他に、デジタルカメラ11に着脱可能な電池等から構成される電源29、ストロボ30、AE(自動露出装置)31、AF(自動合焦装置)32、AWB(自動ホワイトバランス調整装置)33が接続されている。
【0019】
なお、AE31(自動露出装置)は、被写体のスルー画像の輝度度数分布に基づき必要な露出補正を行うことにより、被写体像が適正露出で撮像素子24の撮像面に結像されるようにする。また、AF(自動合焦装置)32は、撮像レンズ部14におけるレンズ群の少なくとも一つのレンズを移動させることにより、撮像レンズ部14を合焦状態にする。また、AWB(自動ホワイトバランス調整装置)33は、撮像時の光源(太陽光など)の状況に応じたホワイトバランス調整値に基づき信号処理回路26にホワイトバランス調整の画像処理を実行させる。
【0020】
さらに、MPU28にはグリップ部13に設けられた一対の電極部19,20が検知回路34を介して接続されている。そして、MPU28は、電源ボタン18が押し下げ操作されてデジタルカメラ11が電源オン状態となった場合には、レリーズボタン17等から入力される入力信号に応じて電源29からの電力供給に基づき後述する撮像のための動作モードを適宜に切り替え制御するようになっている。
【0021】
ここで、検知回路34の回路構成について説明する。
図4に示すように、検知回路34は、カメラ本体12のグリップ部13に露出するように設けられた一対の電極部19,20とカメラ本体12内に設けられたMPU28との間に介在する電圧差動検知回路であり、オペアンプ35とコンパレータ36とを主体に構成されている。オペアンプ35における一対の差動入力端子のうち一方の入力端子には前記両電極部19,20のうち一方の電極部19が抵抗R1を介して接続されると共に、他方の入力端子には他方の電極部20が抵抗R2を介して接続されている。そして、他方の電極部20と抵抗R2との間はGNDに接続されると共に、抵抗R2と他方の入力端子の間にはオペアンプ35の差動出力電圧が可変抵抗R3を介してフィードバック入力されるようになっている。
【0022】
すなわち、オペアンプ35は、図4に二点鎖線で示すように、撮像者が電源オン状態にあるデジタルカメラ11におけるカメラ本体12のグリップ部13を両電極部19,20に指先Fが跨る把持態様で把持している場合に、その撮像者の身体を流れる生体電流が各電極部19,20から各々対応する入力端子に対して差動入力されるようになっている。そして、オペアンプ35は、その両入力端子間の差動入力の電圧差を増幅し、その増幅により生成した差動出力電圧Voutをコンパレータ36における一対の比較入力端子のうち一方の比較入力端子に対して出力するようになっている。なお、本明細書中において記載する「生体電流」とは、脳が筋肉や内臓等の各器官へ指令を出すときに神経系統に流れる電位差を伴った信号のことを意味するものとする。
【0023】
一方、コンパレータ36における他方の比較入力端子には所定の基準電圧V0が入力されている。そして、コンパレータ36は、オペアンプ35により増幅されて一方の比較入力端子に入力された差動出力電圧Voutと他方の比較入力端子に入力された基準電圧V0とを比較し、その比較結果をMPU28に検知信号として出力するようになっている。すなわち、検知回路34は、一対の電極部19,20を介してオペアンプ35の両入力端子に入力された撮像者の身体に流れる生体電流の電位差レベルをコンパレータ36での所定の閾値レベル(基準電圧V0)との比較に基づき検知し、その検知結果を示す検知信号をMPU28に出力するようになっている。ここで、検知回路34は、差動出力電圧Vout≧基準電圧V0である場合にはH検知信号を出力する一方、差動出力電圧Vout<基準電圧V0である場合にはL検知信号を出力する。
【0024】
そして、このような撮像者における生体電流の検知信号が検知回路34からMPU28に入力されると、MPU28は、その検知信号に基づきデジタルカメラ11における撮像のための動作モードを制御する。すなわち、MPU28は、検知回路34から入力された検知信号がH検知信号である場合は、撮像者が被写体を撮像するためにレリーズボタン17の押し下げ操作(オン操作)を意思決定したと判断する。そして、その判断結果に基づき、MPU28はデジタルカメラ11における撮像のための動作モードを予め定めた撮像準備動作が開始する準備モードとなるように制御する。その結果、撮像準備動作の開始に伴い比較的大電力を消費するストロボ30、AE31、AF32、AWB33に対して電源29から電力供給がなされるようになる。
【0025】
その一方、MPU28は、検知回路34から入力された検知信号がL検知信号である場合には、未だ撮像者はレリーズボタン17の押し下げ操作(オン操作)を意思決定していないと判断し、デジタルカメラ11の動作モードを、その時点における動作モードである待機モードが維持されるように制御する。したがって、この場合には、撮像素子24に対する通電が継続されるだけで、電源29から比較的大電力を消費するストロボ30、AE31、AF32、AWB33に対して電力供給がなされることはない。また、MPU28は、検知回路34からのH検知信号の入力に基づきデジタルカメラ11の動作モードを準備モードとなるように制御した後において、予め設定した閾値時間内(例えば、1秒以内)に撮像者によってレリーズボタン17が押し下げ操作されない場合には、デジタルカメラ11の動作モードを準備モードの前段階である待機モードとなるように戻し制御するようになっている。
【0026】
以上のように、本実施形態のデジタルカメラ11では、カメラ本体12のグリップ部13を把持した撮像者における生体電流が一対の電極部19,20及び検知回路34を介して検知されると共に、その検知結果に基づきデジタルカメラ11の動作モードがMPU28により制御されるようになっている。この点で、グリップ部13に設けられた一対の電極部19,20と検知回路34は、操作手段としてのレリーズボタン17を押し下げ操作(オン操作)する撮像者の身体に流れる生体電流を検知する検知手段として機能する。また同様に、MPU28は、操作手段としてのレリーズボタン17を撮像者が押し下げ操作(オン操作)しようと意思決定した時点での撮像者における生体電流を検知手段(電極部19,20及び検知回路34)が検知した場合に、動作モードを電源29からの電力供給に基づく撮像準備動作を開始させる準備モードとなるように制御する制御手段として機能する。
【0027】
次に、検知回路34における生体電流の検知感度の調整方法について説明する。
さて、撮像者の身体を流れる生体電流は、デジタルカメラ11が電源ボタン18の押し下げ操作に基づき電源オン状態とされている場合において撮像者がグリップ部13を把持して指先Fを一対の電極部19,20に接触させている状態で検知される。そして、この場合に検知される生体電流の信号強度については、撮像者である人体の個体差やデジタルカメラ11が使用される環境差により強弱がある。
【0028】
すなわち、通常の場合、撮像者の生体電流の検知信号は図5において実線で示すA信号のように撮像者がt時点でレリーズボタン17の押し下げ操作(オン操作)を意思決定すると、その電位が急峻に立ち上がり、一定レベルまで立ち上がった後は次第にレベルが下降するような信号波形となる。そのため、検知信号がA信号の場合には、t時点から所定時間経過後のta時点で検知信号をH検知信号として出力するための閾値レベルVa(基準電圧V0に相当する)に達することになる。
【0029】
しかしながら、撮像者がt時点でレリーズボタン17の押し下げ操作(オン操作)を意思決定したとしても、その意思決定に伴い検知される撮像者の生体電流の強弱レベルを示すオペアンプ35からの差動出力電圧Voutが低レベルである場合には、その検知信号は図5において二点鎖線で示すB信号のようになる。すなわち、その場合の検知信号(B信号)はt時点から一応立ち上がるものの閾値レベルVaまで達することなく下降するような信号波形となり、この場合には、撮像者によるレリーズボタン17の押し下げ操作を意思決定した時点での生体電流の検知に基づきデジタルカメラ11の動作モードを準備モードとなるように制御できないことになる。そこで、こうした場合には、次のようにして生体電流の検知感度が調整される。
【0030】
すなわち、図6に示すように、カメラ本体12の後面に設けられたモニタ21にはセレクトボタン23の操作に基づき各種のメニュー画面のうちから検知感度調整画面が表示される。この検知感度調整画面は、図6に示すように、左から右への時系列的に所定間隔をおいて3つのマークM1,M2,M3が表示されている。マークM1は撮像者によってレリーズボタン17の押し下げ操作(オン操作)が意思決定される時点を表している。また、マークM2は撮像者によってレリーズボタン17が実際に押し下げ操作(オン操作)される時点を表している。また、マークM3はデジタルカメラ11において実際に被写体の撮像動作が開始される時点を表している。
【0031】
これら3つのマークM1〜M3のうち真ん中のマークM2は固定マークであるが、他の2つのマークM1とマークM3は両者の間隔を維持しつつズームボタン22の操作に基づき図6に矢印で示すように左右方向(つまり、時間的に早くなる方向及び遅くなる方向)に移動可能とされている。そして、ズームボタン22の操作に基づき2つのマークM1,マークM3を左右方向に移動させた場合には、検知回路34における可変抵抗R3の抵抗値が比例的に変化するようになっている。具体的には、マークM1,マークM3を左方向に移動させた場合には可変抵抗R3の抵抗値が小さくなってオペアンプ35からの差動出力電圧Voutが大きくなる一方、その逆に、マークM1,マークM3を右方向に移動させた場合には可変抵抗R3の抵抗値が大きくなってオペアンプ35からの差動出力電圧Voutが小さくなるように構成されている。
【0032】
したがって、例えば撮像者がレリーズボタン17の押し下げ操作(オン操作)を意思決定したにも拘わらず、デジタルカメラ11の動作モードが撮像準備動作を開始させる準備モードにならない場合(検知信号が図5のB信号の場合)には、撮像者によるズームボタン22の操作によりモニタ21上でマークM1とマークM3が左方向に移動させられる。すると、検知信号をH検知信号として出力するための閾値レベルに達したか否かを判別する時点が通常時のta時点からtb時点に早まり、図5に示すように閾値レベルが通常時の閾値レベルVaから低レベルの閾値レベルVbに低下する。
【0033】
その結果、撮像者における生体電流の信号強度が弱い(低い)場合にも、閾値レベルの調整により生体電流の検知感度が調整できるようになる。この点で、ズームボタン22は、検知手段(電極部19,20及び検知回路34)による生体電流の検知レベルを調整可能な調整手段として機能する。
【0034】
一方、撮像者がグリップ部13を把持して指先Fを電極部19,20に接触させている状態において未だレリーズボタン17の押し下げ操作(オン操作)を意思決定していないにも拘わらず、ノイズ信号などの影響でデジタルカメラ11の動作モードが撮像準備動作を開始させる準備モードになってしまう場合がある。このような場合には、撮像者によるズームボタン22の操作によりモニタ21上でマークM1とマークM3が右方向に移動させられる。すると、この場合には上記閾値レベルが高くなる結果、ノイズ信号が拾われる確率が低下し、撮像者の意思に反してデジタルカメラ11の動作モードが撮像準備動作を開始させる準備モードになってしまうことを抑制できるようになる。
【0035】
なお、撮像者がカメラ本体12のグリップ部13を把持していない場合、及び把持していても指先Fが一対の電極部19,20に接触していない場合には、撮像者の生体電流が検知されることはない。そして、撮像者がカメラ本体12のグリップ部13を把持しつつ指先Fを一対の電極部19,20に接触させた状態でレリーズボタン17の押し下げ操作(オン操作)を意思決定する前段階における生体電流の検知信号は図5において一点鎖線で示すC信号のように若干の上下変動はあるものの閾値レベルからは下方に乖離した低レベルで推移するようになる。
【0036】
そこで次に、以上のように構成されたデジタルカメラ11の作用について、特に撮像者によりレリーズボタン17が押し下げ操作(オン操作)される場合の作用に着目して図7(a)(b)(c)を参照しながら説明する。なお、図7(a)(b)(c)はデジタルカメラにおける動作モードの移り変わりを示すタイミングチャートであり、図7(a)は本実施形態のデジタルカメラ11におけるタイミングチャート、図7(b)は比較例1のデジタルカメラにおけるタイミングチャート、図7(c)は比較例2のデジタルカメラにおけるタイミングチャートを示している。ちなみに、図7(b)に示すように比較例1のデジタルカメラでは、レリーズボタンが実際に押し下げ操作(オン操作)されてから撮像準備動作が開始される。また、図7(c)に示すように比較例2のデジタルカメラでは、レリーズボタンにタッチ可能となるようにグリップ部が把持された時点から撮像準備動作が開始される。
【0037】
さて、本実施形態のデジタルカメラ11を使用して被写体を撮像する場合、まず、撮像者により電源ボタン18が押し下げ操作される。すると、デジタルカメラ11は、MPU28の制御に基づき動作モードがレリーズボタン17の押し下げ操作(オン操作)を待つ待機モードに制御される。そして、その待機モードにおいては、電源29から撮像素子24への通電が開始され、その撮像素子24の撮像面に結像した被写体の像がモニタ21上にスルー画像として動画表示される。
【0038】
そして、撮像者がカメラ本体12のグリップ部13を把持し、その指先Fが図7(a)に示すt時点で一対の電極部19,20に接触すると、その撮像者の身体を流れる生体電流が両電極部19,20から検知回路34に入力される。そして、検知回路34において信号レベルを示す差動出力電圧Voutが所定閾値レベルVa(基準電圧V0に相当する)と比較され、その比較結果が検知信号(H検知信号又はL検知信号)としてMPU28に出力される。この時点では、検知信号の信号波形は図5に示すC信号となるため、デジタルカメラ11の動作モードは待機モードが維持される。
【0039】
その後、撮像者がアングル調整等を済ませ、図7(a)に示すt時点で被写体を撮像するべくレリーズボタン17の押し下げ操作(オン操作)を意思決定すると、生体電流の電位差が大きくなるため、その生体電流の検知信号の信号波形は図5に示すA信号のようになる。その結果、検知回路34からH検知信号がMPU28に出力されることになり、デジタルカメラ11の動作モードは撮像準備動作を開始させる準備モードとなる。そのため、電源29からは撮像素子24への通電に加えて、比較的大電力を消費するストロボ30、AE31、AF32、AWB33に対する電力供給がなされるようになる。
【0040】
また、このt時点からデジタルカメラ11においては、撮像素子24を通じてモニタ21にスルー画像として動画表示される画像データのうちから所定の周期毎に静止画像の画像データがMPU28の制御に基づき画像メモリ27に蓄積される。そして、この撮像準備動作が行われている間に、図7(a)に示すt時点で撮像者により実際にレリーズボタン17が押し下げ操作(オン操作)されると、画像メモリ27に蓄積された複数の画像データに基づいた合成画像データがMPU28の制御により信号処理回路26において作成される。この点で、信号処理回路26は、デジタルカメラ11の動作モードが準備モードになった時点からレリーズボタン17が撮像者によりオン操作された時点までの間に撮像素子24を介して得られた被写体の画像データに基づき合成画像データを作成する合成手段として機能することになる。
【0041】
その後、図7(a)に示すt時点でAE31等の各装置における撮像準備が完了すると、デジタルカメラ11は、MPU28の制御に基づき動作モードが撮像を開始する撮像モードに制御される。すると、信号処理回路26により作成された合成画像データに対応した画像を撮像画像とする撮像が実行される。なお、t時点で撮像準備動作が開始されてから所定閾値時間内(例えば、1秒以内)に撮像者によるレリーズボタン17の押し下げ操作(オン操作)がなかった場合には、MPU28の制御に基づきデジタルカメラ11は動作モードが準備モードから待機モードに戻し制御される。
【0042】
以上のような本実施形態のデジタルカメラ11においては、図7(b)に示す比較例1のデジタルカメラの場合に比して、次のような利点を有する。
すなわち、比較例1のデジタルカメラでは、撮像者がレリーズボタンを実際に押し下げ操作(オン操作)したt時点から撮像準備動作が開始されるのに対し、本実施形態のデジタルカメラ11では、t時点よりも早い(例えば、100msec程度早い)t時点で撮像準備動作が開始される。そして、比較例1のデジタルカメラでは、図7(b)に示すt時点にならないと撮像開始をできないのに対し、本実施形態のデジタルカメラ11では、t時点よりも早い(例えば、100msec程度早い)t時点で撮像動作が開始される。
【0043】
この点で、本実施形態のデジタルカメラ11は、比較例1のデジタルカメラよりも実際にレリーズボタン17が押し下げ操作(オン操作)されてから撮像動作が開始されるまでの時間差であるレリーズタイムラグの短縮化が図られている。また、比較例1のデジタルカメラとの対比において、撮像準備動作を開始してから撮像開始に至るまでの電源29の電力消費を伴う通電時間は同じであり、この点で、本実施形態のデジタルカメラ11では撮像準備段階での無駄な電力消費の抑制も図られている。
【0044】
次に、本実施形態のデジタルカメラ11においては、図7(c)に示す比較例2のデジタルカメラの場合に比して、次のような利点を有する。
すなわち、比較例2のデジタルカメラでは、レリーズボタンにタッチ可能となるように撮像者によりグリップ部が把持されたt時点から撮像準備動作が開始されるのに対し、本実施形態のデジタルカメラ11では、t時点よりも所定時間遅いt時点で撮像準備動作が開始される。そして、比較例2のデジタルカメラでは、図7(c)に示すt時点から所定時間経過後のtp時点でAE31等における撮像準備動作が終了した後も撮像開始のt時点まで撮像素子に対する通電は長時間に亘り継続されるのに対し、本実施形態のデジタルカメラ11では、t時点からt時点までの撮像準備動作が行われる短時間しか電源29の電力消費を伴う通電は行われない。
【0045】
この点で、本実施形態のデジタルカメラ11は、比較例2のデジタルカメラの場合とは異なり、レリーズタイムラグの短縮化のみならず撮像準備段階での無駄な電力消費の抑制も図られている。
【0046】
以上説明した本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)撮像者がレリーズボタン17の押し下げ操作(オン操作)を意思決定したt時点での撮像者の身体に流れる生体電流の検知に基づきデジタルカメラ11の動作モードが撮像準備動作を開始させる準備モードに制御される。そのため、撮像者がレリーズボタン17を実際に押し下げ操作(オン操作)するt時点よりも所定時間だけ早く撮像準備を開始することができ、比較例1のようにt時点から撮像準備動作を開始する場合に比して撮像開始タイミングが早まるので、レリーズタイムラグの短縮化を図ることができる。また、この場合において撮像準備動作の終了に伴い電源29の電力消費を伴う通電時間も終了するので、撮像準備段階での無駄な電力消費を抑制することもできる。したがって、レリーズボタン17の押し下げ操作(オン操作)の意思決定時点(t時点)での撮像者の生体電流検知に基づき撮像準備動作の開始タイミングの最適化を図ることにより、撮像準備段階での無駄な電力消費を抑制しつつ、レリーズタイムラグの短縮化を図ることができる。
【0047】
(2)撮像者における生体電流の信号強度が弱いため検知回路34から出力される検知信号のHigh/Lowの判断ができないような場合には、ズームボタン22の操作に基づき生体電流の検知レベルとなる閾値レベルVaをそれよりも低レベルの閾値レベルVbに調整することができる。したがって、撮像者である人体の個体差やデジタルカメラ11が使用される環境差に応じて生体電流の検知レベル(検知感度)を自在に調整することができるので、柔軟にレリーズタイムラグの短縮化及び無駄な電力消費の抑制を図ることができる。
【0048】
(3)デジタルカメラ11の動作モードが撮像準備を開始させる準備モードになってから撮像者がレリーズボタン17を実際に押し下げ操作するまでのスルー画像から所定周期毎に画像メモリ27に蓄積された静止画像の画像データに基づき最適な合成画像データが信号処理回路26において作成される。そのため、撮像準備動作の準備モード中に被写体が動いた場合(例えば人物が目つぶりしたような場合)にも合成画像データにより最適な撮像画像を得ることができる。
【0049】
(4)撮像者がレリーズボタン17の押し下げ操作(オン操作)を意思決定したにも拘わらず、思い止まって実際にはレリーズボタン17を押し下げ操作しなかった場合には、動作モードが準備モードになってから所定時間(例えば、1秒)経過時点で動作モードが元の待機モードに戻されるので、無駄に電源29の電力が消費されることを抑制できる。
【0050】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、デジタルカメラ11の動作モードが準備モードになった場合に撮像準備動作として電源29から電力供給される装置は、ストロボ30、AE(自動露出装置)31、AF(自動合焦装置)32、AWB(自動ホワイトバランス調整装置)33のうち少なくとも一つであってもよい。
【0051】
・上記実施形態において、検知回路34と共に検知手段を構成する電極部19,20はグリップ部13ではなくカメラ本体12の上面におけるレリーズボタン17の近傍位置に設けてもよく、又は、カメラ本体12とは別体で撮像者の身体に装着自在なストラップ等からなる装着具に設けてもよい。すなわち、電極部19,20はカメラ本体12におけるグリップ部13、レリーズボタン17の近傍位置、及び装着具のうち少なくとも一箇所に設けられていればよい。
【0052】
・上記実施形態において、MPU28がデジタルカメラ11の動作モードを準備モードから待機モードに戻し制御する際の判定基準となる閾値時間は1秒に限定されるものではなく、その時間設定は任意である。
【0053】
・上記実施形態において、信号処理回路26は、撮像準備動作が開始されてから実際にレリーズボタン17が押し下げ操作(オン操作)されるまでの間に蓄積された静止画像の画像データに基づく合成画像データを作成しない構成であってもよい。
【0054】
・上記実施形態において、生体電流の検知感度を調整するために操作される調整手段はズームボタン22に代えてセレクトボタン23を使用するようにしてもよく、又は、それら以外の他の調整ボタンを設けるようにしてもよい。また、その調整の際にモニタ21上の2つのマークM1,M3は別々の調整手段を用いて個々に移動させる構成としてもよい。
【0055】
・上記実施形態において、一対の電極部19,20と共に検知手段を構成する検知回路34は、図4に示す回路構成以外で実現することも可能である。例えば、検知回路34においてコンパレータ36を省略し、オペアンプ35から差動出力電圧VoutがMPU28に直接入力されて、その入力された差動出力電圧VoutがMPU28により所定閾値レベルVaと比較されるようにしてもよい。
【0056】
・上記実施形態は本発明を電子カメラの一種であるデジタルスチルカメラに具体化したが、同じく電子カメラの一種であるデジタルビデオカメラにおいて本発明を具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】デジタルカメラの前面側斜視図。
【図2】デジタルカメラの後面側斜視図。
【図3】デジタルカメラの回路構成を示すブロック図。
【図4】検知回路を示す回路図。
【図5】生体電流の信号強度を示すグラフ。
【図6】モニタの表示画面の一例を示す説明図。
【図7】デジタルカメラにおける動作モードの移り変わりを示すタイミングチャートであり、(a)は本実施形態のデジタルカメラにおけるタイミングチャート、(b)は比較例1のデジタルカメラにおけるタイミングチャート、(c)は比較例2のデジタルカメラにおけるタイミングチャート。
【符号の説明】
【0058】
11…デジタルカメラ(電子カメラ)、13…グリップ部、17…レリーズボタン(操作手段)、19,20…検知手段を構成する電極部、22…ズームボタン(調整手段)、24…撮像素子、26…信号処理回路(合成手段)、28…MPU(制御手段)、29…電源、34…検知手段を構成する検知回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像動作を開始させるときに撮像者によりオン操作される操作手段と、
該操作手段を操作する前記撮像者の身体に流れる生体電流を検知する検知手段と、
該検知手段の検知結果に基づき撮像のための動作モードを制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、前記操作手段を前記撮像者がオン操作しようと意思決定した時点での該撮像者における前記生体電流を前記検知手段が検知した場合に、前記動作モードを電源からの電力供給に基づく撮像準備動作を開始させる準備モードとなるように制御することを特徴とする電子カメラ。
【請求項2】
前記検知手段による前記生体電流の検知レベルを調整可能な調整手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の電子カメラ。
【請求項3】
前記制御手段の制御に基づき前記動作モードが前記準備モードになった時点から前記操作手段が前記撮像者によりオン操作された時点までの間に撮像素子を介して得られた被写体の画像データに基づき合成画像データを作成する合成手段を更に備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子カメラ。
【請求項4】
前記制御手段は、前記動作モードを前記準備モードとなるように制御した後において、前記操作手段が予め設定した閾値時間内に前記撮像者によりオン操作されない場合には、前記動作モードを前記準備モードの前段階の動作モードである待機モードとなるように戻し制御することを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の電子カメラ。
【請求項5】
前記検知手段は、前記電子カメラにおける前記操作手段の近傍位置、該操作手段が前記撮像者により操作される際に該撮像者により把持されるグリップ部、及び前記制御手段に対して前記検知結果を出力可能とされた態様で前記撮像者の身体に対して装着自在とされた装着具のうち少なくとも一つに設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の電子カメラ。
【請求項6】
前記撮像準備動作は、前記電源からの電力供給に基づく自動露出動作、自動合焦動作、自動ホワイトバランス調整動作、ストロボ充電動作、撮像素子通電動作のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の電子カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−118830(P2010−118830A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289761(P2008−289761)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】