説明

電子キーシステムの警報停止装置

【課題】一旦なり始めた警報を速やかに止めることができる電子キーシステムの警報停止装置を提供する。
【解決手段】電子キーシステムの警報停止装置は、車両2と電子キー1との間で相互無線通信を介してID照合が可能で、同ID照合が成立したことを条件に、車両2に設置された車載機器の操作が可能であり、前記ID照合を車内において実施する車内照合の成立可否を見ることで、車両2のエンジン始動時又はエンジン稼働中に電子キー1が車内にあるか否かを確認し、当該車内照合が不成立の場合には、車内に電子キー1がない旨の警報を実行する。電子キーシステムの警報停止装置は、前記警報が動作した際、電子キー1を用いたキー照合の実行を使用者に促す報知を実行するセキュリティインジケータ及びブザーを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子キーと車両とにおいて車内照合の成立可否を見ることで車内に電子キーがあるか否かを確認し、電子キーがない場合には警報を実行可能な電子キーシステムの警報停止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの車両には、無線通信により車両に固有のIDコードを発信可能な電子キーを車両のキーとして使用する電子キーシステムが搭載されている。この電子キーシステムでは、電子キーから発信されたIDコードを車両が受信すると、車両が電子キーのIDコードと自身に予め登録されているIDコードとを照合するID照合を行い、これらIDコードが一致してID照合が成立すれば、車載機器の制御、例えば車両のドア錠の施解錠やエンジンの始動が許可又は実行される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この電子キーシステムは、電子キーからIDコードを発信するに際して電子キーにおいてボタン操作を必要としない、つまり電子キーからIDコードの発信を自動で行うものである。詳しくは、電子キーシステムでは、電子キーにIDコードの発信を要求するリクエストを間欠的に車両から発信させ、電子キーがこのリクエストを受信すると、これに応答する形で電子キーがIDコードを車両に向けて発信して、車両がこのIDコードでID照合を実行する。この電子キーシステムは、車両と電子キーとの間の無線通信が例えば数メートル程度の狭域無線通信を行う。
【0004】
また、電子キーシステムには、車内に設けられたエンジンスイッチをプッシュ操作するのみでエンジンを始動及び停止することが可能なワンプッシュエンジンスタートシステムが含まれている。このワンプッシュエンジンスタートシステムは、車内に入り込んだ電子キーとの間でID照合(車内照合)を行い、このID照合が成立したことを条件に、ブレーキペダルを踏み込み操作された状態でエンジンスイッチがプッシュ操作されると、エンジンが始動する。このため、運転者は、電子キーを衣服のポケットに入れたり、かばん等に入れたりして携帯していれば、エンジンの始動が実行されるようになっている。
【0005】
また、場合によっては、この電子キーシステムを利用してエンジン稼働中又は始動時に車内照合を行い、このときの車内照合の成立可否を見ることにより、電子キーが車内に置かれているかを確認し、キーがないことを認識すると車内に警報を鳴らす警報システムを搭載している車両もある。この警報システムは、エンジンが稼働中に例えばドアが開操作されたときに車内照合の成立可否を見に行くことで、使用者が車両からエンジンをかけたまま一時降車するときに車内に電子キーがあるか否かを確認したり、或いはエンジン始動操作時に車内照合の成立可否を見ることで、車内に電子キーがないにも拘わらずエンジンを始動しようとしたりすることを回避するためのシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−29385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、例えば車載装置と電子キーとの間の通信環境下に例えばノイズが存在したり、金属部材等の遮断部材によって遮断されたりすると、運転者が電子キーを携帯していても、車載装置が電子キーと車内照合を行うことができず、車内照合が不成立となる。この場合、警報システムは電子キーが車内に存在しないと判断して、警報を鳴らす動作をとってしまう。しかし、警報システムは警報を一旦鳴らし始めると、車内照合が再成立するまで警報を鳴らし続けることから、例えばノイズが長時間に亘り車内に発生する場合には、その間、警報を止めることができない問題があった。また、エンジン始動時においても、同様に運転者が電子キーを携帯していても警報システムは電子キーが車内にないと判断して、警報を鳴らす動作をとってしまうことも問題となり得る。
【0008】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、一旦なり始めた警報を速やかに止めることができる電子キーシステムの警報停止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、車両と電子キーとの間で相互無線通信を介してID照合が可能で、同ID照合が成立したことを条件に、前記車両に設置された車載機器の操作が可能であり、前記ID照合を車内において実施する車内照合の成立可否を見ることで、前記車両のエンジン始動時又はエンジン稼働中に前記電子キーが車内にあるか否かを確認し、当該車内照合が不成立の場合には、車内に前記電子キーがない旨の警報を実行する電子キーシステムの警報停止装置において、前記警報が動作した際、前記電子キーを用いたキー照合の実行を使用者に促す報知を実行する報知手段を備えたことをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、例えば車両及び電子キー間の相互無線通信を妨害するノイズや遮断部材等を原因として、電子キーが車内にあるにもかかわらず、車両及び電子キー間の車内照合が成立せず、電子キーが車内に存在しない旨を使用者に通知する警報が実行されてしまう場合がある。しかし、この警報動作時には、電子キーによるキー照合の実行が報知手段により使用者に促されるので、キー照合の実行を使用者に積極的にとらせられる。よって、警報を速やかに停止することが可能となり、警報が鳴り続けてこれが運転の妨げになるような問題も生じない。
【0011】
請求項2に記載の発明は、車両と電子キーとの間で相互無線通信を介してID照合が可能で、同ID照合が成立したことを条件に、前記車両に設置された車載機器の操作が可能であり、前記ID照合を車内において実施する車内照合の成立可否を見ることで、前記車両のエンジン始動時又はエンジン稼働中に前記電子キーが車内にあるか否かを確認し、当該車内照合が不成立の場合には、車内に前記電子キーがない旨の警報を実行する電子キーシステムの警報停止装置において、前記警報が動作した際、前記電子キーで実行可能な複数のキー照合のうち、少なくとも1つの照合が成立すれば、同警報を強制停止する停止手段を備えたことをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、例えば車両及び電子キー間の相互無線通信を妨害するノイズや遮断部材等を原因として、電子キーが車内にあるにもかかわらず、車両及び電子キー間の車内照合が成立せず、電子キーが車内に存在しない旨を使用者に通知する警報が実行されてしまう場合がある。しかし、この警報が実行に入っても、電子キーで実行可能なキー照合のうち少なくとも1つのキー照合を成立することができれば、警報が強制停止される。よって、例えば警報の自動停止を待つ前に警報を速やかに停止することが可能となるので、警報が煩わしく感じる問題を回避することが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、車両と電子キーとの間で相互無線通信を介してID照合が可能で、同ID照合が成立したことを条件に、前記車両に設置された車載機器の操作が可能であり、前記ID照合を車内において実施する車内照合の成立可否を見ることで、前記車両のエンジン始動時又はエンジン稼働中に前記電子キーが車内にあるか否かを確認し、当該車内照合が不成立の場合には、車内に前記電子キーがない旨の警報を実行する電子キーシステムの警報停止装置において、前記警報が動作した際、前記電子キーを用いたキー照合の実行を使用者に促す報知を実行する報知手段と、前記警報の動作時、前記電子キーで実行可能な複数のキー照合のうち、少なくとも1つの照合が成立すれば、同警報を強制停止する停止手段とを備えたことをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、例えば車両及び電子キー間の相互無線通信を妨害するノイズや遮断部材等を原因として、電子キーが車内にあるにもかかわらず、車両及び電子キー間の車内照合が成立せず、電子キーが車内に存在しない旨を使用者に通知する警報が実行されてしまう場合がある。しかし、この警報動作時には、電子キーによるキー照合の実行が報知手段により使用者に促されるので、キー照合の実行を使用者に積極的にとらせられる。よって、警報を速やかに停止することが可能となり、警報が鳴り続けてこれが運転の妨げになるような問題も生じない。また、このように警報が実行されても、電子キーで実行可能なキー照合のうち少なくとも1つのキー照合を成立することができれば、警報が強制停止される。よって、例えば警報の自動停止を待つ前に警報を速やかに停止することが可能となるので、警報が煩わしく感じる問題を回避することが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子キーシステムの警報停止装置において、前記キー照合は、前記電子キーに備えられた操作スイッチが操作されることで発信されるキーコードによって認証を行うワイヤレスキー照合であることをその要旨としている。
【0016】
同構成によれば、電子キーによるキー照合として、耐ノイズ性の高いRF帯の信号を使用することの多いワイヤレスキー照合を採用したので、電子キーの無線通信によって警報を解除する際に、この解除をより確実性高く行うことが可能となる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子キーシステムの警報停止装置において、前記キー照合は、前記電子キーを前記車両のイモビライザー通信機に極力近づける近距離無線通信により相互通信が可能で、同イモビライザー通信機から発信された駆動電波を電力として同電子キーが起動して同イモビライザー通信機との間で認証を行うイモビライザー照合であることをその要旨としている。
【0018】
同構成によれば、電子キーによるキー照合として、電子キー側で電力を不要とするイモビライザー照合を採用したので、電子キーの電池を使用せずに、警報を強制停止することが可能となる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子キーシステムの警報停止装置において、前記キー照合は、前記電子キーに備えられたメカニカルキーを、前記車両に設けられたシリンダに挿入してこれを回し操作することで認証を行うメカニカルキー照合であることをその要旨としている。
【0020】
同構成によれば、電子キーによるキー照合として、キー操作に際して実際のキー回し操作を必要とするメカニカルキー照合を採用したので、警報の強制停止の構造を、メカニカルキーとキーシリンダという簡素な構造のものによって実行することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、車内において電子キーが認識されない際の煩わしさを低減することができる電子キーシステムの警報停止装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】電子キーシステムの構成を示すブロック図。
【図2】車内照合不成立の際の動作を示すシーケンスチャート。
【図3】(a)セキュリティインジケータの表示を示す図、(b)電子キーの操作スイッチの操作を示す図。
【図4】車内照合不成立の際の動作を示すシーケンスチャート。
【図5】(a)セキュリティインジケータの表示を示す図、(b)電子キーのイモビライザー照合時の操作を示す図。
【図6】車内照合不成立の際の動作を示すシーケンスチャート。
【図7】(a)セキュリティインジケータの表示を示す図、(b)メカニカルキーによるキー照合の操作を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる電子キーシステムの警報停止装置を具体化した第1の実施形態について図1〜図3及び図5を参照して説明する。
【0024】
図1に示されるように、車両2には、例えば運転者が実際に車両キーを操作しなくてもドアロックの施解錠やエンジンの始動及び停止等の車両動作を行うことが可能な電子キーシステムが搭載されている。電子キーシステムは、キー固有のIDコードを無線通信で発信可能な電子キー1が車両キーとして使用されている。電子キーシステムは、車両2からIDコード返信要求としてリクエスト信号Srqを発信させ、このリクエスト信号Srqを電子キー1が受信すると、それに応答する形で電子キー1が自身のIDコードを含ませたIDコード信号Sidを狭域無線通信により車両2に返信し、電子キー1のIDコードが車両2のIDコードと一致すると、ドアロックの施解錠やエンジンの始動及び停止が許可又は実行されるシステムである。
【0025】
電子キーシステムを以下に説明すると、車両2には、電子キー1との間で狭域無線通信を行う際にID照合を行う照合ECU(Electronic Control Unit)21が設けられている。照合ECU21には、車両2の各ドアに埋設されて車外にLF(Low Frequency)帯の信号を発信可能な車外LF発信機22と、車内床下等に埋設されて車内にLF帯の無線信号を発信可能な車内LF発信機23と、車内後方の車体等に埋設されてRF(Radio Frequency)帯の無線信号を受信可能なRF受信機24とが接続されている。これら車外LF発信機22及び車内LF発信機23は、リクエスト信号Srqを車外LF発信アンテナ22a及び車内LF発信アンテナ23aから周囲に発信可能である。車外LF発信機22が車両2の周囲にリクエスト信号Srqの通信エリア(車外通信エリア)を形成し、車内LF発信機23が車内全域にリクエスト信号Srqの通信エリア(車内通信エリア)を形成する。RF受信機24は、自身のRF受信アンテナ24aで受信したLF帯の信号を復調するとともに、その復調後の信号を受信データとして照合ECU21に出力する。
【0026】
照合ECU21には、例えば車外ドアハンドル25に埋設されたタッチセンサ26が接続されている。タッチセンサ26は、運転者が施錠状態のドアロックを解除する時に車外ドアハンドル25をタッチする操作を検出する。照合ECU21には、例えば車外ドアハンドル25に設けられたロックボタン27が接続されている。ロックボタン27は、運転者が解錠状態のドアロックを施錠する時に押し操作される。照合ECU21には、例えばドアロック施解錠等を管理するメインボディECU33が車内LAN(Local Area Network)30を介して接続されている。メインボディECU33は、照合ECU21からの指令を基にドアロック装置46を駆動制御することでドアロックを施錠状態又は解錠状態にする。
【0027】
一方、電子キー1には、車両2との間で電子キーシステムに準じた無線通信を行う際のコントロールユニットとして通信制御部11が設けられている。通信制御部11には、外部で発信されたLF帯の信号を受信可能なLF受信部12と、通信制御部11の指令に従いRF帯の信号を発信可能なRF発信部13とが接続されている。LF受信部12は、自身のLF受信アンテナ12aで受信したLF帯の信号を復調するとともに、その復調後の信号を受信データとして通信制御部11に出力する。また、RF発信部13は、通信制御部11から得た通信データを変調し、電子キー1が持つ固有のIDコードを含ませたRF帯のIDコード信号SidをRF発信アンテナ13aから発信する。
【0028】
車両2が駐車状態(エンジン停止及びドアロック施錠状態)の際、照合ECU21は、車外LF発信機22からLF帯のリクエスト信号Srqを間欠的に発信させ、車両2の周辺に車外通信エリアを形成する。電子キー1がこの車外通信エリアに入り込んでリクエスト信号SrqをLF受信部12で受信すると、電子キー1はリクエスト信号Srqに応答する形で、自身のメモリ11aに登録されたIDコードを含ませたRF帯のIDコード信号SidをRF発信部13から返信する。照合ECU21は、RF受信機24でIDコード信号Sidを受信すると、自身のメモリ21aに登録されたIDコードと電子キー1のIDコードとを照らし合わせてID照合(車外照合)を行う。照合ECU21は、車外照合が成立すると、メモリ21aに車外照合フラグを一定時間立てて、待機状態のタッチセンサ26をその期間起動させる。照合ECU21は、車外ドアハンドル25がタッチ操作されたことを起動中のタッチセンサ26が検出すると、メインボディECU33にドアロックの解錠指令を出力する。解錠指令を受け付けたメインボディECU33は、ドアロック装置46を駆動させて、施錠状態のドアロックを解錠する。
【0029】
一方、車両2が停止状態(エンジン停止及びドアロック解錠状態)の際、照合ECU21は、ロックボタン27が押されたことを検出すると、車外LF発信機22からリクエスト信号Srqを発信させる。照合ECU21は、このリクエスト信号Srqを受けて電子キー1が返信してきたIDコード信号Sidにおいて車外照合が成立したことを認識すると、メインボディECU33にドアロックの施錠指令を出力する。施錠指令を受け付けたメインボディECU33は、ドアロック装置46を駆動させて、解錠状態のドアロックを施錠する。
【0030】
また、電子キーシステムには、エンジン始動停止操作の際に実際の車両キー操作を必要とせずに単なるスイッチ操作のみでエンジン始動停止操作を行うことが可能な機能としてワンプッシュエンジンスタートシステムがある。このワンプッシュエンジンスタートシステムを以下に説明すると、車両2には、エンジンの点火制御及び燃料噴射制御を行うエンジンECU31と、シフトレバーの操作を基に自動変速機を制御するシフトECU32と、車載電装品の電源管理を行うメインボディECU33とが設けられている。これらエンジンECU31と、シフトECU32と、メインボディECU33とは、車内LAN30を通じて照合ECU21等の各種ECUに接続されている。
【0031】
車両2の運転席には、例えば図5(b)に示されるように、車両2の電源状態(電源ポジション)を切り換える際に操作されるエンジンスイッチ35が設けられている。詳しくは、エンジンスイッチ35は、図示しないステアリングコラム近傍のインストルメントパネルに位置している。図1に示されるように、エンジンスイッチ35は、その操作箇所であるスイッチ操作部36を押し込み操作する押圧操作式であって、ハーネスを介してメインボディECU33に接続されている。このエンジンスイッチ35は、エンジンを始動状態又は停止状態に切り換えるエンジン始動停止操作機能と、車両2の電源状態をオフ状態からACC(Accessory)オン状態やIG(Ignition)オン状態に切り換える電源遷移操作機能とを持っている。
【0032】
照合ECU21は、車外照合が成立してドアロックが解錠された後、ドアが開けられて運転者が乗車したことを例えばカーテシスイッチ45で認識すると、車内LF発信機23からリクエスト信号Srqを発信して車内全域に車内通信エリアを形成する。照合ECU21は、電子キー1がこの車内通信エリアに入り込んで返信してきたIDコード信号SidをRF受信機24で受信すると、自身に登録されたIDコードと電子キー1のIDコードとを照らし合わせてID照合(車内照合)を行う。照合ECU21は、この車内照合が成立すると、メモリ21aに車内照合フラグを立てる。
【0033】
メインボディECU33は、運転者が車両2の電源状態を切り換えるべくエンジンスイッチ35を押圧操作したことを検出すると、まずは照合ECU21に車内照合成立の有無を確認する。このとき、メインボディECU33は、照合ECU21から車内照合が成立の旨の通知を受ければ車内照合が成立済みであることを認識するが、逆に照合ECU21から車内照合が不成立の旨の通知を受け付けると、照合ECU21に車内照合を再実行させて車内照合の成否を再確認する。メインボディECU33は、照合ECU21に車内照合を再実行させても、照合ECU21から車内照合が成立した旨の通知を受け付けないと、車内照合は不成立であると認識する。
【0034】
メインボディECU33は、エンジンが停止している際にブレーキペダルが踏み込み操作された状態でエンジンスイッチ35が押圧操作されたことを検出すると、車内照合の成立を条件として、停止状態のエンジンを始動すべく3つのACCリレー、IGリレー、及びスタータリレーをオンしつつ、エンジンECU31に起動信号を出力する。起動信号を受け付けたエンジンECU31は、車内照合結果の確認し、点火制御及び燃料噴射制御を開始してエンジンを始動する。一方、メインボディECU33は、エンジンが稼働中の際にエンジンスイッチ35が押圧操作されたことを検出すると、車両2が停止していることを条件に3つのACCリレー、IGリレー、及びスタータリレーを全てオフ状態にして、エンジンを停止状態にする。
【0035】
また、電子キーシステムには、電子キー1のスイッチ操作で車両2に無線で施錠信号Sl又は解錠信号Sulを発信してドアロックの施解錠を行うことが可能な機能としてワイヤレスキーシステムがある。ワイヤレスキーシステムを搭載した車両2には、ワイヤレスキーシステムのコントロールユニットとして前述の照合ECU21が設けられている。電子キー1には、施錠信号Slを発信させる施錠スイッチ14と、解錠信号Sulを発信させる解錠スイッチ15とが筐体の表面に露出して設けられている(図3(b)参照)。施錠スイッチ14と解錠スイッチ15とは、通信制御部11に接続されている。施錠スイッチ14と解錠スイッチ15とは、操作スイッチとして機能する。前述のRF発信部13は、通信制御部11から得た通信データを変調し、電子キー1が持つ固有のIDコードを含ませてRF帯の施錠信号Sl又は解錠信号SulをRF発信アンテナ13aから発信する。
【0036】
電子キー1は、施錠スイッチ14が操作されると、施錠信号SlをRF発信部13から発信する。照合ECU21は、RF受信機24で施錠信号Slを受信すると、自身のメモリ21aに登録されたIDコードと電子キー1のIDコードとを照らし合わせてID照合を行う。照合ECU21は、ID照合が成立すると、メインボディECU33にドアロックの施錠指令を出力する。施錠指令を受け付けたメインボディECU33は、ドアロック装置46を駆動させて、解錠状態のドアロックを施錠する。電子キー1は、解錠スイッチ15が操作されると、解錠信号SulをRF発信部13から発信する。照合ECU21は、RF受信機24で解錠信号Sulを受信すると、自身のメモリ21aに登録されたIDコードと電子キー1のIDコードとを照らし合わせてID照合を行う。照合ECU21は、ID照合が成立すると、メインボディECU33にドアロックの解錠指令を出力する。解錠指令を受け付けたメインボディECU33は、ドアロック装置46を駆動させて、施錠状態のドアロックを解錠する。
【0037】
また、車両2には、電子キー1と近距離無線通信によりID照合を行うイモビライザーシステムが設けられている。イモビライザーシステムを搭載した車両2には、イモビライザーシステムのコントロールユニットとして前述の照合ECU21が設けられている。照合ECU21には、イモビライザーコイル38を備えたイモビライザー通信機37が接続されている。このイモビライザーコイル38は、エンジンスイッチ35の筐体内においてスイッチ操作部36を囲むようにリング状に巻回された取り付け状態をとっている(図5(b)参照)。一方、電子キー1には、近距離無線を受信及び発信可能なトランスポンダ16が設けられている。また、トランスポンダ16には、イモビライザーシステムに用いるトランスポンダコードが登録されている。
【0038】
イモビライザーシステムは、ブレーキペダルを踏みながら電子キー1をイモビライザーコイル38にかざすように近づけることにより、イモビライザーコイル38から発信される駆動電波Sivで電子キー1を起動させ、起動した電子キー1が返信してきたトランスポンダコードを含むトランスポンダ信号Strを車両2側で照らし合わせてID照合(イモビライザー照合)を行う。エンジンスイッチ35を押圧操作してエンジンを始動する際、エンジン始動の前段階の認証動作として車内照合成立有無を確認する。なお、車内照合成立を条件とすることに限らず、イモビライザー照合が成立していれば、エンジン始動が許可される。
【0039】
また、車両2には、電子キーシステムの車内照合を利用して、エンジン始動時又はエンジン稼働中において車内に電子キー1が存在しているか否かを監視し、車内照合が成立せずに車内に電子キー1がないことを確認した際、車内に警報を鳴らす警報システムが搭載されている。警報システムは、エンジン稼働時(稼働中)の際には車内に必ず電子キー1が存在している必要があるので、エンジン始動操作の際に車内に電子キーが無いことを確認したり、或いはエンジン稼働中に例えば運転者が降車すべく車両ドアが開閉操作されたときに車内に電子キーが無いことを確認したりすると、警報を実行してその旨を使用者に通知する。この場合、車両2には、セキュリティの異常等を表示にて報知するセキュリティインジケータ41と、セキュリティの異常等を音声にて報知するブザー42とが設けられている。これらセキュリティインジケータ41とブザー42とは、照合ECU21に接続され、動作が照合ECU21によって管理されている。これらセキュリティインジケータ41とブザー42とは、報知手段として機能する。
【0040】
照合ECU21には、車内照合の成立可否に基づいて報知を行う報知判定部21bと、車内に電子キー1が無いことの警告動作をセキュリティインジケータ41やブザー42に実行させる警報実行部21cとが設けられている。報知判定部21bは、エンジン始動時又は稼働中において車内照合を実行させ、電子キー1が車内にあるか否かを逐次監視する。そして、報知判定部21bは、このときの車内照合が不成立になったことを確認すると、車内に電子キー1がなくなったと判断し、その旨を警報実行部21cに通知する。なお、報知判定部21bは、例えばドア開操作やエンジンスイッチによるエンジン始動操作があったことなどをトリガとして車内照合を実行させるとともに、エンジン稼働中は定期的に車内照合を実行させる。
【0041】
警報実行部21cは、報知判定部21bから車内照合不成立の旨の通知を受け付けると、セキュリティインジケータ41及びブザー42によって、車内に電子キー1がないことを使用者に通知する警報を実行する。この警報動作の一例として、警報実行部21cは、セキュリティインジケータ41に「電子キーが見つかりません」と表示させる(図3(a)参照)とともに、ブザー42から「ピー」という警報音を吹鳴させる。
【0042】
報知判定部21bは、警報を行っている間も、定期的に車内照合の成立可否を監視する。そして、報知判定部21bは、警報動作の実行中に、車内照合が再成立したことを確認すると、この旨の通知を警報実行部21cに送る。セキュリティインジケータ41及びブザー42は、報知判定部21bから車内照合再成立の通知を受け付けると、それまで実行していた警報動作を停止する。即ち、セキュリティインジケータ41の表示及びブザー42の警報は、車内照合の再成立を条件に停止する。なお、警報は、実行を始めてから一定時間後に自動停止するものでもよい。
【0043】
また、照合ECU21には、警報が実行されている最中に、電子キー1を用いたキー照合を促す報知を実行する報知実行部21dが設けられている。本例の報知実行部21dは、セキュリティインジケータ41及びブザー42で警報を行った後に、これに続けて、セキュリティインジケータ41に「施錠スイッチ又は解錠スイッチを操作してください」と表示させる(図3(a)参照)とともに、ブザー42から「ピーピー」という警報音を吹鳴させる。なお、セキュリティインジケータ41は、「電子キーが見つかりません」と「施錠スイッチ又は解錠スイッチを操作してください」とを交互に表示する。
【0044】
照合ECU21には、警報動作実行中に電子キー1と車両2との間において、車内照合以外のキー照合が成立したことを条件に警報を強制停止する警報強制停止部21eが設けられている。警報強制停止部21eが停止手段として機能する。この警報強制停止部21eは、電子キー1を用いたキー照合として施錠スイッチ14又は解錠スイッチ15が操作されたことによって電子キー1から発信された施錠信号Sl又は解錠信号SulをRF受信機24で受信すると、ID照合(車内照合)を行う。そして、警報強制停止部21eは、車内照合が成立した際には、電子キー1が車内に存在すると認識して、車内照合が不成立であることの警報を停止させる。すなわち、セキュリティインジケータ41の表示を消すとともに、ブザー42の警報音を停止する。
【0045】
次に、電子キーシステムの車内照合が不成立の際の動作を図2に示すシーケンスチャートに従って説明する。
まず、車両2のエンジンが始動される、又はエンジン稼働中において(ステップS1)、報知判定部21bは車内LF発信機23がリクエスト信号Srqを車内に発信する(ステップS2)。ここで、無線信号を妨害するノイズや遮断部材等が存在して通信することができないと、電子キー1はリクエスト信号Srqを受信することがないため、電子キー1からIDコード信号Sidが発信されない(ステップS3)。よって、報知判定部21bは、IDコード信号Sidを受信できないためID照合の成立を確認することができず、相互無線通信による車内照合を不成立として処理する(ステップS4)。このため、報知判定部21bは、エンジンが始動に切り換わろうとしている、又は稼働中であるにも拘わらず、電子キー1が車内に存在しないと判断する。
【0046】
車両2は、「車内照合が不成立である」旨の警報を行う(ステップS5)。すなわち、警報実行部21cは、報知判定部21bから車内照合不成立の旨の通知を受け付けると、セキュリティインジケータ41に「電子キーが見つかりません」と表示させるとともに、ブザー42に「ピー」という警報音を吹鳴させる。報知判定部21bは、警報を行っている間も、定期的に車内照合の成立可否を監視する。
【0047】
車両2は、警報が実行されている最中において、電子キー1で実行できるキー照合のうち、車内照合以外のキー照合の実行を促す報知として「施錠スイッチ14又は解錠スイッチ15の操作を促す」の旨、即ちワイヤレスキー照合の実行を促す旨を報知する(ステップS6)。本例の場合、報知実行部21dは、警報として行う動作(セキュリティインジケータ41での「電子キーが見つかりません」の表示、ブザー42での「ピー」という警報音)の後に、電子キー1を用いたキー照合を使用者に実行させる要求としてセキュリティインジケータ41に「施錠スイッチ又は解錠スイッチを操作してください」と表示させるとともに、ブザー42に「ピーピー」という警報音を吹鳴させる。そして、車内照合以外のキー照合を実行させる報知と、電子キー1が車内に無い警報とが繰り返し実行される。
【0048】
使用者は、セキュリティインジケータ41での「施錠スイッチ又は解錠スイッチを操作してください」の表示と、ブザー42による「ピーピー」という警報音とによって、ワイヤレスキー通信でキー照合を行えば、警報が停止することを把握する。よって、使用者は、ブザー42の警報音と、セキュリティインジケータ41の表示とによって電子キー1の施錠スイッチ14又は解錠スイッチ15を操作する(図3(b)参照)。施錠スイッチ14又は解錠スイッチ15が操作された電子キー1は、施錠信号Sl又は解錠信号SulをRF発信部13から発信する(ステップS7)。
【0049】
警報強制停止部21eは、電子キー1から発信された施錠信号Sl又は解錠信号SulをRF受信機24で受信すると、ID照合(ワイヤレスキー照合)を行う。そして、車両2は、ワイヤレスキー照合が成立する(ステップS8)と、車内に電子キー1が存在すると認識して、「車内照合が不成立である」旨の警報を停止する(ステップS9)。すなわち、警報強制停止部21eは、電子キー1を用いたキー照合として施錠信号Sl又は解錠信号Sulのキー照合が成立した際には、電子キー1が車内に存在すると認識して、セキュリティインジケータ41の「電子キーが見つかりません」と「施錠スイッチ又は解錠スイッチを操作してください」との表示を消すとともに、ブザー42の警報音を停止する。
【0050】
さて、車両2及び電子キー1間の相互無線通信を妨害するノイズや遮断部材等を原因として、電子キー1が車内にあるにもかかわらず、車両2及び電子キー1間の車内照合が成立せず、電子キー1が車内に存在しない旨を使用者に通知する警報が実行されてしまう場合がある。しかし、この警報動作時には、電子キー1によるキー照合として施錠スイッチ14又は解錠スイッチ15の操作の実行がセキュリティインジケータ41及びブザー42により使用者に促されるので、キー照合の実行を使用者に積極的にとらせられる。よって、施錠信号Sl又は解錠信号SulのID照合成立によって警報を速やかに停止することが可能となり、警報が鳴り続けてこれが運転の妨げになるような問題も生じない。また、このように警報が実行されても、電子キー1で実行可能なキー照合を成立することができれば、警報が強制停止される。よって、例えば警報の自動停止を待つ前に警報を速やかに停止することが可能となるので、警報が煩わしく感じる問題を回避することが可能となる。
【0051】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)車両2及び電子キー1間の相互無線通信を妨害するノイズや遮断部材等を原因として、電子キー1が車内にあるにもかかわらず、車両2及び電子キー1間の車内照合が成立せず、電子キー1が車内に存在しない旨を使用者に通知する警報が実行されてしまう場合がある。しかし、この警報動作時には、電子キー1によるキー照合の実行がセキュリティインジケータ41及びブザー42により使用者に促されるので、キー照合の実行を使用者に積極的にとらせられる。よって、警報を速やかに停止することが可能となり、警報が鳴り続けてこれが運転の妨げになるような問題も生じない。また、このように警報が実行されても、電子キー1で実行可能なキー照合のうち少なくとも1つのキー照合を成立することができれば、警報が強制停止される。よって、例えば警報の自動停止を待つ前に警報を速やかに停止することが可能となるので、警報が煩わしく感じる問題を回避することが可能となる。
【0052】
(2)電子キー1によるキー照合として、耐ノイズ性の高いRF帯の施錠信号Sl又は解錠信号Sulを使用するワイヤレスキー照合を採用したので、電子キー1の無線通信によって警報を解除する際に、この解除をより確実性高く行うことが可能となる。
【0053】
(3)例えば、もし仮に従来よりも大きな音量で警報を鳴らした場合を想定すると、本例の警報強制停止機能で警報を直ぐに停止すれば、この種の警報を煩わしく感じさせずに済むので、前述したように警報を大音量で警報しても何ら問題はない。また、このように警報を大音量で警報を鳴らすことが可能となれば、警報の発生をより確実に使用者に伝えることが可能となる。
【0054】
(第2の実施形態)
以下、本発明にかかる電子キーシステムの警報停止装置を具体化した第2の実施形態について、図4及び図5を参照して説明する。この実施形態の電子キーシステムは、車内照合が不成立の際に電子キー1を用いたキー照合としてイモビライザー照合を促す点が上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、この実施形態の電子キーシステムは、図1に示す第1の実施形態の電子キーシステムと同様の構成を備えている。また、図4に示すシーケンスチャートのステップS5まで第1の実施形態と同様の処理を行う。
【0055】
車両2は、警報が実行されている最中に、車内照合以外の電子キー1を用いたキー照合の実行を促す報知として「イモビライザー照合を促す」旨を報知する(ステップS16)。すなわち、報知実行部21dは、セキュリティインジケータ41に電子キー1を用いたキー照合として「ブレーキペダルを踏みながら電子キーをエンジンスイッチにかざしてください」と表示させる(図5(a)参照)とともに、ブザー42に「ピーピー」という警報音を吹鳴させる。使用者は、ブザー42の警報音と、セキュリティインジケータ41の表示とによってブレーキペダルを踏んで電子キー1をエンジンスイッチ35にかざす(図5(b)参照)。
【0056】
車両2は、ブレーキペダルを踏み込みながらの電子キー1のエンジンスイッチ35へのかざし操作を検出すると、イモビライザーコイル38から発信される駆動電波Sivで電子キー1を起動させる。起動した電子キー1は、トランスポンダコードを含むトランスポンダ信号Strを発信する(ステップS17)。車両2は、イモビライザーコイル38で受信すると、イモビライザー照合を行う。そして、車両2は、イモビライザー照合が成立する(ステップS8)と、車内に電子キー1が存在することを認識して、「車内照合が不成立である」旨の警報を停止する(ステップS9)。すなわち、警報強制停止部21eは、電子キー1を用いたキー照合としてイモビライザー照合が成立した際には、電子キー1が車内に存在すると認識して、セキュリティインジケータ41の「電子キーが見つかりません」と「ブレーキペダルを踏みながら電子キーをエンジンスイッチにかざしてください」との表示を消すとともに、ブザー42の警報音を停止する。
【0057】
さて、車両2及び電子キー1間の相互無線通信を妨害するノイズや遮断部材等を原因として、電子キー1が車内にあるにもかかわらず、車両2及び電子キー1間の車内照合が成立しない場合であっても、イモビライザー照合を成立させれば、一旦鳴り始めた警報を速やかに停止することが可能となる。
【0058】
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態に記載した(1),(3)と同様の効果が得られるとともに、以下の作用効果を奏することができる。
(4)警報を強制停止するときに必要とする車内照合以外の他のキー照合としてイモビライザー照合を採用したので、電子キー1の電池を使用せずに、警報を強制停止することが可能となる。
【0059】
(第3の実施形態)
以下、本発明にかかる電子キーシステムの警報停止装置を具体化した第3の実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。この実施形態の電子キーシステムは、車内照合が不成立の際に電子キー1を用いたキー照合としてメカニカルキーによる照合を促す点が上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、この実施形態の電子キーシステムは、図1に示す第1の実施形態の電子キーシステムとほぼ同様の構成を備えている。
【0060】
図1及び図7(b)に示されるように、電子キー1には、無線通信による車内照合ができない際に実際のキー回し操作を必要とするメカニカルキー17が備えられている。車両2には、同メカニカルキー17を挿入してこれを回し操作することで機械的に認証を行うキーシリンダ39が設けられている。また、図4に示すシーケンスチャートのステップS5まで第1の実施形態と同様の処理を行う。
【0061】
車両2は、警報が実行されている最中に、電子キー1を用いたキー照合を促す報知として「メカニカルキーによる照合を促す」旨を報知する(ステップS26)。すなわち、報知実行部21dは、セキュリティインジケータ41に電子キー1を用いたキー照合として「メカニカルキーをキーシリンダに挿入してまわしてください」と表示させる(図7(a)参照)とともに、ブザー42に「ピーピー」という警報音を吹鳴させる。
【0062】
使用者は、ブザー42の警報音と、セキュリティインジケータ41の表示とによってメカニカルキー17をキーシリンダ39に挿入して回し操作する(図7(b)参照)。
車両2は、メカニカルキー17がキーシリンダ39に挿入された状態で回すことでメカニカルキー17による照合が行われる。そして、車両2は、メカニカルキー照合が成立する(ステップS8)と、「車内照合が不成立である」旨の警報を停止する(ステップS9)。すなわち、警報強制停止部21eは、電子キー1を用いたキー照合としてメカニカルキー照合が成立した際には、電子キー1が車内に存在すると認識して、セキュリティインジケータ41の「電子キーが見つかりません」と「メカニカルキーをキーシリンダに挿入してまわしてください」との表示を消すとともに、ブザー42の警報音を停止する。
【0063】
さて、車両2及び電子キー1間の相互無線通信を妨害するノイズや遮断部材等を原因として、電子キー1が車内にあるにもかかわらず、車両2及び電子キー1間の車内照合が成立しない場合であっても、電子キー1に備え付けのメカニカルキーによってキー照合を成立させれば、一旦鳴り始めた警報を速やかに停止することが可能となる。
【0064】
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態に記載した(1),(3)と同様の効果が得られるとともに、以下の作用効果を奏することができる。
(5)警報を強制停止するときに必要とする車内照合以外の他のキー照合としてメカニカルキー照合を採用したので、警報の強制停止の構造を、メカニカルキー17とキーシリンダ39という簡素な構造のものによって実行することができる。
【0065】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態において、ブザー42の警報音は任意に変更してもよい。
・上記実施形態では、報知としてセキュリティインジケータ41に「車内照合が不成立である」旨と、「電子キー1を用いたキー照合を促す」旨とを表示させたが、車両2に設けられるスピーカを使用して、「車内照合が不成立である」旨と、「電子キー1を用いたキー照合を促す」旨とを音声出力するようにしてもよい。また、セキュリティインジケータ41とスピーカとを組み合わせて使用してもよい。
【0066】
・第3の実施形態において、回動タイプのエンジンスイッチと一体となったキーシリンダを利用してもよい。
・上記実施形態では、それぞれ異なる電子キー1を用いたキー照合を行うように報知したが、これらの電子キー1を用いたキー照合を組み合わせて順番に行うように報知してもよい。
【0067】
・上記実施形態では、相互無線通信による車内照合が不成立である際に電子キー1を用いたキー照合が成立すれば、車内照合不成立の警報を停止する停止手段として警報強制停止部21eを備えた。しかしながら、電子キー1を用いたキー照合を行うことで結果的に相互無線通信による車内照合が成立して、車内照合不成立が停止するのでよければ、停止手段を設けなくともよい。
【0068】
・上記実施形態では、相互無線通信による車内照合が不成立である際に電子キー1を用いたキー照合を行うように報知する報知手段としてセキュリティインジケータ41及びブザー42を設けた。しかしながら、使用者に予め電子キー1を用いたキー照合が行われると車内照合不成立の警報を停止することが周知されていれば、報知手段を設けなくともよい。
【0069】
・電子キー1が車内にない警報や、このときの代替照合実行の報知は、必ずしも車両2側で実行されることに限定されず、電子キー1側で行うようにしてもよい。この場合は、例えば通信環境下に発生するノイズによって車両2が電子キー1の存在を認識できていない状況を想定すると、ノイズに影響を受けていない周波数の信号により、警報や報知を実行する旨を車両2から電子キー1に伝える必要がある。
【0070】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(a)車両と電子キーとの間で相互無線通信を介してID照合が可能で、同ID照合が成立したことを条件に、前記車両に設置された車載機器の操作が可能であり、前記ID照合を車内において実施する車内照合の成立可否を見ることで、前記車両のエンジン始動時又はエンジン稼働中に前記電子キーが車内にあるか否かを確認し、当該車内照合が不成立の場合には、車内に前記電子キーがない旨の警報を実行する電子キーシステムの警報停止装置において、前記警報が動作した際、当該警報を速やかに止めるために、前記電子キーによって前記車内照合を再成立させる操作を使用者に促す報知を実行する報知手段を備えたことを特徴とする電子キーシステムの警報停止装置。
【0071】
同構成によれば、例えば車両及び電子キー間の相互無線通信を妨害するノイズや遮断部材等を原因として、電子キーが車内にあるにもかかわらず、車両及び電子キー間の車内照合が成立せず、電子キーが車内に存在しない旨を使用者に通知する警報が実行されてしまう場合がある。しかし、この警報動作時には、電子キーによる車内照合の再実行が報知手段により使用者に促されるので、例えば電波発信を遮る筐体等から電子キーを取り出すなど、車内照合を再実行させる動作を使用者に積極的にとらせられる。よって、警報を速やかに停止することが可能となり、警報が鳴り続けてこれが運転の妨げになるような問題が生じない。
【符号の説明】
【0072】
1…電子キー、2…車両、11…通信制御部、12…LF受信部、13…RF発信部、14…施錠スイッチ、15…解錠スイッチ、16…トランスポンダ、17…メカニカルキー、21…照合ECU、21a…メモリ、21b…報知判定部、21c…警報実行部、21d…報知実行部、21e…警報強制停止部、22…車外LF発信機、23…車内LF発信機、24…RF受信機、25…車外ドアハンドル、26…タッチセンサ、27…ロックボタン、30…車内LAN、31…エンジンECU、32…シフトECU、33…メインボディECU、35…エンジンスイッチ、36…スイッチ操作部、37…イモビライザー通信機、38…イモビライザーコイル、39…キーシリンダ、41…セキュリティインジケータ、42…ブザー、45…カーテシスイッチ、46…ドアロック装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と電子キーとの間で相互無線通信を介してID照合が可能で、同ID照合が成立したことを条件に、前記車両に設置された車載機器の操作が可能であり、前記ID照合を車内において実施する車内照合の成立可否を見ることで、前記車両のエンジン始動時又はエンジン稼働中に前記電子キーが車内にあるか否かを確認し、当該車内照合が不成立の場合には、車内に前記電子キーがない旨の警報を実行する電子キーシステムの警報停止装置において、
前記警報が動作した際、前記電子キーを用いたキー照合の実行を使用者に促す報知を実行する報知手段を備えた
ことを特徴とする電子キーシステムの警報停止装置。
【請求項2】
車両と電子キーとの間で相互無線通信を介してID照合が可能で、同ID照合が成立したことを条件に、前記車両に設置された車載機器の操作が可能であり、前記ID照合を車内において実施する車内照合の成立可否を見ることで、前記車両のエンジン始動時又はエンジン稼働中に前記電子キーが車内にあるか否かを確認し、当該車内照合が不成立の場合には、車内に前記電子キーがない旨の警報を実行する電子キーシステムの警報停止装置において、
前記警報が動作した際、前記電子キーで実行可能な複数のキー照合のうち、少なくとも1つの照合が成立すれば、同警報を強制停止する停止手段を備えた
ことを特徴とする電子キーシステムの警報停止装置。
【請求項3】
車両と電子キーとの間で相互無線通信を介してID照合が可能で、同ID照合が成立したことを条件に、前記車両に設置された車載機器の操作が可能であり、前記ID照合を車内において実施する車内照合の成立可否を見ることで、前記車両のエンジン始動時又はエンジン稼働中に前記電子キーが車内にあるか否かを確認し、当該車内照合が不成立の場合には、車内に前記電子キーがない旨の警報を実行する電子キーシステムの警報停止装置において、
前記警報が動作した際、前記電子キーを用いたキー照合の実行を使用者に促す報知を実行する報知手段と、
前記警報の動作時、前記電子キーで実行可能な複数のキー照合のうち、少なくとも1つの照合が成立すれば、同警報を強制停止する停止手段とを備えた
ことを特徴とする電子キーシステムの警報停止装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子キーシステムの警報停止装置において、
前記キー照合は、前記電子キーに備えられた操作スイッチが操作されることで発信されるキーコードによって認証を行うワイヤレスキー照合である
ことを特徴とする電子キーシステムの警報停止装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子キーシステムの警報停止装置において、
前記キー照合は、前記電子キーを前記車両のイモビライザー通信機に極力近づける近距離無線通信により相互通信が可能で、同イモビライザー通信機から発信された駆動電波を電力として同電子キーが起動して同イモビライザー通信機との間で認証を行うイモビライザー照合である
ことを特徴とする電子キーシステムの警報停止装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子キーシステムの警報停止装置において、
前記キー照合は、前記電子キーに備えられたメカニカルキーを、前記車両に設けられたシリンダに挿入してこれを回し操作することで認証を行うメカニカルキー照合である
ことを特徴とする電子キーシステムの警報停止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−241208(P2010−241208A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90452(P2009−90452)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】